説明

デシカント空調装置

【課題】コジェネレーションシステム等による熱を再生熱源として利用できない場合であっても、デシカントロータの通気性吸湿体を良好に再生して空調できると共に、除湿冷房運転に加えて加湿暖房運転も実行することができる。
【解決手段】第1気体を第1空調流路R1にて空調した後に第1加湿機111にて加湿して空調用空気SAとして空調対象空間Sへ導くと共に、再生用空気を第2空調流路R2へ導く第1運転状態と、第2気体を第2空調流路R2にて空調した後に第1加湿機111にて加湿して空調用空気SAとして空調対象空間Sへ導くと共に、吸湿用空気をデシカントロータ112の吸湿部12aへ導く第2運転状態とを、択一的に切り替える切替手段110、117が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
回転駆動する通気性吸湿体からなり、吸湿部に通流させる気体の水分を吸着すると共に、吸着した水分を再生部に通流させる気体に放出するデシカントロータと、前記デシカントロータの前記吸湿部を通流した気体を冷却用媒体との熱交換により冷却する冷却用熱交換器と、気体を加熱用媒体との熱交換により加熱する加熱用熱交換器とを備えたデシカント空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図15に示すように、特に夏季等において、室外空気OAをデシカントロータを用いて除湿冷却して空調対象空間Sに供給して除湿冷房運転を実行可能なデシカント空調装置が知られている(特許文献1を参照)。
当該デシカント空調装置は、第1吸湿部12aに通流させる気体の水分を吸着すると共に、吸着した水分を第1再生部12bに通流させる気体に放出する第1デシカントロータ12を備えると共に、第1デシカントロータ12の第1吸湿部12aを通流した気体を冷却用媒体との熱交換により冷却させる第1冷却用熱交換器50と、第2吸湿部13aに通流させる気体の水分を吸着すると共に、吸着した水分を第2再生部13bに通流させる気体に放出する第2デシカントロータ13と、当該第2デシカントロータ13の第2吸湿部13aを通流した後の気体を冷却用媒体との熱交換により冷却させる第2冷却用熱交換器14と、気体を加熱用熱媒体との熱交換により加熱させる加熱用熱交換器15とを備えている。
当該デシカント空調装置では、室外空気OAを第1デシカントロータ12の吸湿部12aを通流させて除湿し、これにより昇温した室外空気OAを第1冷却用熱交換器50にて冷却し、第2デシカントロータ13の第2吸湿部13aを通過させて除湿し、これにより昇温した室外空気OAを第2冷却用熱交換器14にて冷却し、最後に、室外空気OAを、第1デシカントロータ12の第1再生部12bを通過させて冷却することで、除湿冷却された空調用空気SAを生成し、空調対象空間Sに導く。
さらに、第2デシカントロータ13を再生すべく、室内空気RAを、冷却用媒体として第1冷却用熱交換器50及び第2冷却用熱交換器14とに通流して加熱し、加熱用熱交換器15にて加熱用媒体と熱交換して加熱した後、第2デシカントロータ13の第2再生部13bを通流させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−57953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示のデシカント空調装置では、加熱用熱交換器15に供給される加熱用媒体は、コジェネレーションシステムにて供給される熱や太陽パネルにて供給される太陽熱等によって加熱されるように構成されているのであるが、コジェネレーションシステムでは電力負荷が小さいとき等に十分な熱が供給できない場合があり、太陽パネルによる太陽熱の供給は天候に左右される場合があった。このため、加熱用媒体の温度は変動し、加熱用熱交換器15にて加熱される室内空気RAの温度も変動して、第2デシカントロータ13の通気性吸湿体13cの再生が十分にできない場合があるという問題があった。
また、上記特許文献1に開示のデシカント空調装置では、除湿冷房機能しか有しないため、冬場に加湿暖房を行うことができなかった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コジェネレーションシステムや太陽パネルにより供給される熱を再生熱源として利用できない場合(即ち、再生用の熱を十分に確保できない場合)でも、デシカントロータの通気性吸湿体を良好に再生して空調できると共に、除湿冷房運転に加えて加湿暖房運転も実行することができるデシカント空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのデシカント空調装置は、
回転駆動する通気性吸湿体からなり、吸湿部に通流させる気体の水分を吸着すると共に、吸着した水分を再生部に通流させる気体に放出するデシカントロータと、
前記デシカントロータの前記吸湿部を通流した気体を冷却用媒体との熱交換により冷却する第1冷却用熱交換器と、気体を加熱用媒体との熱交換により加熱する加熱用熱交換器とを備えたデシカント空調装置であり、その特徴構成は、
気体を加湿する第1加湿機と、前記デシカントロータの再生に用いる気体を加熱自在な加熱手段とを備えると共に、
気体を前記デシカントロータの前記吸湿部と前記第1冷却用熱交換器とを記載順に通流させる第1空調流路と、気体を前記冷却用媒体として前記第1冷却用熱交換器へ導き、前記加熱用熱交換器及び前記加熱手段へ導いた後、前記デシカントロータの前記再生部を通流させる第2空調流路とを形成可能に構成され、
第1気体を前記第1空調流路にて空調した後に前記第1加湿機にて加湿して空調用空気として空調対象空間へ導くと共に、再生用空気を前記第2空調流路へ導く第1運転状態と、
第2気体を前記第2空調流路にて空調した後に前記第1加湿機にて加湿して空調用空気として空調対象空間へ導くと共に、吸湿用空気を前記デシカントロータの前記吸湿部へ導く第2運転状態とを、択一的に切り替える切替手段が設けられている点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、除湿冷房運転を行う夏場にあっては、切替手段により第1運転状態に切り替えることで、第1気体を、デシカントロータの吸湿部にて除湿し、第1冷却用熱交換器にて冷却した後に、第1加湿機にて水分を供給してその水分の蒸発潜熱が奪われる形態で冷却し、適切に除湿冷却された第1気体を空調用空気として空調対象空間へ供給できる。
特に、このとき、再生用空気は、冷却用媒体として第1冷却用熱交換器に導かれて加熱され、加熱用熱交換器にて加熱用媒体との熱交換にて加熱され、加熱手段によっても加熱された後、デシカントロータの再生部を通流して、デシカントロータの通気性吸湿体を再生している。このような構成を採用することにより、例え、コジェネレーションシステムや太陽パネルにより供給できる熱が十分でなく、当該供給される熱にて加熱される加熱用媒体が十分に昇温されない状態で加熱用熱交換器に導かれ、加熱用熱交換器にて再生用空気を十分に昇温できない場合でも、再生用空気を加熱手段にて加熱して、デシカントロータの通気性吸湿体を再生可能な程度まで昇温させることができる。
【0008】
一方、加湿暖房運転を行う冬場にあっては、切替手段により第2運転状態に切り替えることで、第2気体を、冷却用媒体として第1冷却用熱交換器に導いて加熱し、加熱用熱交換器にて加熱し、加熱手段によっても加熱し、デシカントロータの再生部にて加湿した後、第1加湿機にてさらに加湿して、適切に加湿加熱された第2気体を空調用空気として空調対象空間へ供給できる。即ち、加湿暖房運転にあっても、コジェネレーションシステムや太陽パネルによる供給できる熱が十分でなくで、当該供給される熱にて加熱される加熱用媒体が十分に昇温されない状態で加熱用熱交換器に導かれる場合でも、第2気体を加熱手段にて加熱して、空調用空気として求められる温度にまで適切に昇温できる。
尚、上記特徴構成によれば、コジェネレーションシステムや太陽パネルによる供給される熱が十分で、当該供給される熱により十分に昇温された熱用熱媒体を加熱用熱交換器に供給可能であり、加熱用熱媒体にて十分に再生用空気を昇温可能な場合には、加熱手段による加熱を省略しても、除湿・冷房運転、加湿暖房運転の双方を良好に実行することができる。
ここで、第1運転状態で除湿冷房運転を実行している場合、第1空調流路を通流する第1気体は、室外空気が好適に用いられ、第2運転状態で加湿暖房運転を実行している場合、第2空調流路を通流する第2気体についても、室外空気が好適に用いられる。
ここで、第1気体及び第2気体は、同じ気体であっても良いし、異なる気体であっても良い。
【0009】
本発明のデシカント空調装置の更なる特徴構成は、
前記切替手段が、運転状態を前記第1運転状態に切り替えているときで、前記第1気体として室外空気を用いている場合に、
前記再生用空気として前記第2空調流路に導かれる室内空気の一部を、前記第1空調流路に導く第3空調流路が設けられている点にある。
【0010】
今日、一般に知られているエアコン等の空調機にあっては、700m3/h程度の空調用空気を供給可能となっており、使用者の使用感を高める観点からは、デシカント空調装置においても、この程度の流量を供給できることが好ましい。
しかしながら、デシカントロータを用いたデシカント空調装置にあっては、空調用空気は、デシカントロータ及び熱交換器等の圧力損失の大きい機器を複数通流する必要があるため、省エネの観点から送風ファンの出力を抑えた状態では、十分な流量とすることができない状況にあった。
上記特徴構成によれば、第1運転(除湿・冷房運転)を実行しているときに、第1空調流路に通流する室外空気に、再生用空気として第2空調流路に導かれる室内空気の一部が、第3空調流路により、第1空調流路に導かれることとなるので、空調用空気として、室外空気と共に室内空気の一部が供給されることになる。これにより、特に、送風ファン等の出力を増加させることなく、空調対象空間に導かれる空調用空気の流量を増加させることができる。
尚、通常、空調用空気の絶対湿度を下げる場合、デシカントロータの再生部を通流する再生用空気を昇温させる必要がある。しかしながら、上述の如く、室外空気に室内空気を混合して空調用空気を生成することで、再生用空気を昇温させなくとも、空調用空気の絶対湿度を下げることができる。
【0011】
本発明のデシカント空調装置の更なる特徴構成は、
前記第3空調流路には、前記室内空気の通流量を制御する流量制御弁が設けられている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、第3空調流路に流量制御弁を設けているので、第2空調流路の圧力を第1空調流路の圧力よりも高めておき、上記流量制御弁の開度を制御するという、簡易な構成により、第3空調流路により第2空調流路から第1空調流路へ供給される室内空気の通流量を調整できる。
【0013】
本発明のデシカント空調装置の更なる特徴構成は、
室外空気を加湿する第2加湿機を備え、
前記第2加湿機にて加湿された室外空気と、前記第1空調流路の前記第1冷却用熱交換器を通流した後の空調用空気とを熱交換可能な第2冷却用熱交換器が設けられている点にある。
【0014】
真夏等で室外空気の温度が高くなる場合等には、空調用空気の十分な冷却が望まれる場合がある。
上記特徴構成によれば、第2冷却用熱交換器において、第1空調流路でデシカントロータの吸湿部にて除湿され、第1冷却用熱交換器にて冷却された空調用空気を、第2加湿機にて水分が供給されその水分の蒸発潜熱が奪われる形態で冷却された室外空気と、熱交換させることで、空調用空気の温度を、より一層低下させることができる。
これにより、室外空気の温度が高くなる場合でも、適切な除湿冷房運転を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】デシカント空調装置の回路が除湿冷房運転状態である場合の回路図である。
【図2】図1の回路の所定の点における各気体の温度状態及び湿度状態の変化を示す空気線図である。
【図3】図1の回路の所定の点における各気体の温度・湿度等の値を示す表である。
【図4】循環温水の温度変化に対する除湿冷房性能の変化を示すグラフ図である。
【図5】デシカントロータの通気性吸湿体を再生する再生空気の温度の変化に対する除湿冷房性能の変化を示すグラフ図である。
【図6】デシカント空調装置の回路が加湿暖房運転状態である場合の回路図である。
【図7】図6の回路の所定の点における各気体の温度状態及び湿度状態の変化を示す空気線図である。
【図8】図6の回路の所定の点における各気体の温度・湿度等の値を示す表である。
【図9】循環温水の温度変化に対する加湿暖房性能の変化を示すグラフ図である。
【図10】デシカント空調装置の回路が除湿運転状態である場合の回路図である。
【図11】図10の回路の所定の点における各気体の温度状態及び湿度状態の変化を示す空気線図である。
【図12】図10の回路の所定の点における各気体の温度・湿度等の値を示す表である。
【図13】室外空気の相対湿度の変化に対する除湿性能の変化を示すグラフ図である。
【図14】デシカントロータの通気性吸湿体を再生する再生空気の温度の変化に対する室内空気の除湿量の変化を示すグラフ図である。
【図15】従来技術のデシカント空調装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔デシカント空調装置〕
デシカント空調装置100につき、図面に基づいて説明する。
当該デシカント空調装置100は、通気性吸湿体112cから成るデシカントロータ112の再生熱源として、コジェネレーションシステム等にて発生した熱を利用すると共に、その熱が不足する場合に、補助熱源であるガス焚きバーナ120にて熱を補う点を特徴としている。
また、当該デシカント空調装置100は、除湿冷房運転、加湿暖房運転、及び除湿運転を、実行可能に構成されており、特に、除湿冷房運転にあっては、空調対象空間Sに供給する空調用空気SAの流量を、170〜360m3/h程度の大流量にできる点も特徴としている。
【0017】
以下、そのデシカント空調装置100について、図面に基づいて説明する。
デシカント空調装置100は、第1四方弁110及び第2四方弁117を切り替えることにより、その回路状態を、図1に示す第1運転状態として除湿冷房運転を実行可能に構成されていると共に、図6に示す第2運転状態として加湿暖房運転を実行可能に構成されている。さらに、デシカント空調装置100は、第1四方弁110及び第2四方弁117を切り替えることにより、図10に示す第3運転状態として除湿運転をも実行可能に構成されている。
そして、当該デシカント空調装置100では、除湿冷房運転、加湿暖房運転、除湿運転を実行するべく、後述する第1空調流路R1、第2空調流路R2、第3空調流路R3、及び第4空調流路R4を形成可能に構成されており、これらの第1空調流路R1〜第4空調流路R4に、室外空気OA又は室内空気RAを通流させることで、温度及び湿度が適切に調整された空調用空気SAを生成している。
そこで、まず、これら第1空調流路R1〜第4空調流路R4について、図面に基づいて説明する。
【0018】
第1空調流路R1(図1、8、12で、二点鎖線で示す流路)は、図1、8、12に示すように、気体を、第1ファン118にて圧送することにより、デシカントロータ112の吸湿部112a、第1冷却用熱交換器114の被冷却側流路、第2冷却用熱交換器121の被冷却側流路の夫々を通流させる流路である。
尚、第1冷却用熱交換器1143の冷却側流路には、第2空調流路R2(図1、8、12で、一点鎖線で示す流路)を流れる比較的低温の気体が通流するように構成されており、第2冷却用熱交換器121の冷却側流路には、第4空調流路R4を流れる比較的低温の気体が通流するように構成されている。
これにより、第1空調流路R1を通流する気体は、デシカントロータ112の吸湿部112aにて除湿され、第1冷却用熱交換器114の被冷却側流路にて冷却され、第2冷却用熱交換器121の被冷却側流路にてさらに冷却されることとなる。
【0019】
第2空調流路R2(図1、8、12で、一点鎖線で示す流路)は、図1、8、12に示すように、気体を、第2ファン116にて圧送することにより、第1冷却用熱交換器114の冷却側流路、加熱用熱交換器115、ガス焚きバーナ120、デシカントロータ112の再生部112bの夫々を通流させる流路である。
尚、加熱用熱交換器115は、コジェネレーションシステム等にて発生した熱を有する湯水と、気体とを熱交換させるものである。ガス焚きバーナ120は、外部から導かれた燃料ガスを燃焼させて気体を直接昇温するものである。
これにより、第2空調流路R2を通流する気体は、第1冷却用熱交換器114の冷却側流路にて昇温し、加熱用熱交換器115にて加熱され、ガス焚きバーナ120にて直接昇温され、デシカントロータ112の再生部112bにて加湿されることとなる。
【0020】
ここで、デシカントロータ112は、第1空調流路R1に気体を通流させると共に第2空調流路R2へ気体を通流させることで、その吸湿部112aにて気体を除湿すると共に再生部112bにて気体に湿分を放湿する形態で、湿分の吸放湿サイクルを実行するようになっている。
【0021】
第3空調流路R3は、図1に示すように、第1空調流路R1のデシカントロータ112の吸湿部112aの上流側と、第2空調流路R2の第1冷却用熱交換器114の上流側とを連通する流路である。第3空調流路R3は、第1空調流路R1及び第2空調流路R2に気体を通流させているときに、第1空調流路R1及び第2空調流路R2の圧力の関係から、第2空調流路R2から第1空調流路R1へ気体が通流するようになっている。ここで、第3空調流路R3には、当該第3空調流路R3を通流する気体の流量を調整する流量調整弁122が設けられている。
これにより、第3空調流路R3が開放されている状態で、第3空調流路R3が設けられている部位において第1空調流路R1の圧力よりも第2空調流路R2の圧力が高い場合にあっては、第1空調流路R1にて空調される気体の流量を増加できることとなり、その流量は流量調整弁122により自在に調整可能となっている。
【0022】
第4空調流路R4は、図1、12に示すように、気体を、第3ファン123にて圧送することにより、気体を加湿する第2加湿機124及び第2冷却用熱交換器121の冷却側流路を通流する流路である。
これにより、第4空調流路R4を通流する気体は、第2加湿機124にて加湿されその湿分が蒸発することによる蒸発潜熱が奪われる形態で冷却され、第2冷却用熱交換器121の冷却側流路を通流して、その被冷却側流路を通流する気体を冷却する。
【0023】
次に、除湿冷房運転・加湿暖房運転・除湿運転の夫々を実行する場合に、上記第1空調流路R1〜第4空調流路R4夫々への気体の通流状態、及び空調用空気SAの生成過程について説明する。
【0024】
〔除湿冷房運転〕
除湿冷房運転にあっては、図1に示すように、室外空気OA(第1気体)を第1空調流路R1に通流させると共に、室内空気RAを第2空調流路R2に通流させるように、第1四方弁110及び第2四方弁117を切り替え制御される。
このときに、第3空調流路R3の流量調整弁122は全開に設定されており、第2空調流路R2を通流する室内空気RAが、第1空調流路R1に導かれるように構成されている。第3空調流路R3を通流する流量、即ち、第2空調流路R2から第1空調流路R1に導かれる室内空気RAの流量は、第1空調流路R1を通流する室外空気OAの流量と略同程度の流量である。これにより、第1空調流路R1を通流する気体は、略2倍に増加する。
尚、第4空調流路R4には、第1空調流路R1に気体(室外空気OAと室内空気RAの混合気)を通流させている状態において、第2加湿機124にて加湿され冷却された室外空気OAが通流され、当該室外空気OAが第2冷却用熱交換器121の冷却側流路を通流しており、第1空調流路R1を通流する気体の冷却を促進する。
そして、第1空調流路R1にて空調された室外空気OAは、第2四方弁117を介して、第1加湿機111に導かれ、第1加湿機111にて加湿され、その湿分が蒸発するときの蒸発潜熱が奪われる形態で冷却された後、空調用空気SAとして空調対象空間Sに導かれる。
一方、第2空調流路R2を通流した室内空気RAは、第1四方弁110を介して排気VAとして室外空間へ放出される。
【0025】
以上の如く、室外空気OA及び室内空気RAを通流させることで、除湿・冷却された空調用空気SAを空調対象空間Sに導いて、空調対象空間Sを適切に除湿冷房できる。
また、除湿冷房運転を実行すれば、室内空気RAと室外空気OAとが入れ替わり換気が実行されるので、この除湿冷房運転を24時間実行することにより、24時間換気を実現することができる。
【0026】
〔除湿冷房運転の空調性能〕
次に、図1の回路状態における除湿冷房運転の空調性能を、図2の空気線図、図3の気体の性質の一覧表に基づいて説明する。
図1で、室外空気OAが第1空調流路R1を介して空調用空気SAへと空調される流れにおいて、P1〜P6に示す位置における温度・絶対湿度・相対湿度等を、図2、図3の夫々に示している。
図1で、室外空気OAが第4空調流路R4を介して排気VAとして排出される流れにおいて、P7〜P10に示す位置における温度・絶対湿度・相対湿度等を、図3に示している。
図1で、室内空気RAが第2空調流路R2を介して排気VAとして排出される流れにおいて、P11〜P17に示す位置における温度・絶対湿度・相対湿度等を、図2、図3の夫々に示している。
【0027】
まず、図2の空気線図において、特徴的な箇所について説明すると、室外空気OAが空調用空気SAに空調される流れ(P1〜P6の流れ)において、P1.5〜P2間において、絶対湿度及び温度が共に低下していることがわかる。これは、第3空調流路R3を設けることで、室外空気OAに比較的湿度・温度の低い室内空気RAを混合したためである。これにより、空調用空気SAの湿度・温度は、P6に示すように、十分に低くなっている。即ち、室外空気OAに室内空気RAを混合することで、デシカントロータ112の通気性吸湿体112cを再生する再生温度を変化させていないにも関わらず、空調用空気の絶対湿度を低下できている。
また、図2に示すように、空調用空気SAの絶対湿度(P6)を、室内空気RAの絶対湿度(P11)よりも低くなるように設定しているので、空調対象空間Sにおける呼気や発生水分の除湿が可能になっている。
【0028】
空調用空気SAの流量は、図3の一覧表で、P1.5からP2への変化を見ると分かるように、略2倍程度に増加している。これは、第3空調流路R3を設けることで、室外空気OAにそれと同程度の室内空気RAを混合したためである。これにより、空調対象空間Sに導かれる空調用空気SAの流量は、図3でP6に示すように、532m3/hの大流量とすることができている。
【0029】
〔除湿冷房運転の循環温水温度及び再生空気温度に基づく評価〕
以下、循環温水温度及び再生空気温度を変化させた場合の除湿冷房運転の性能評価を、図4、図5に基づいて行う。
尚、当該性能評価の条件は、室内空気RAの温度が27℃、相対湿度55%、デシカントロータ112の除湿性能を80%で実施している。また、第1ファン118、第2ファン116、第3ファン123の合計電力消費量は、310Wである。
【0030】
図4は、ガス焚きバーナ120を作動させない評価結果である。(a)が湯水循環路204を循環する湯水の温度を変化させた場合の冷房能力(W)、(b)が温水熱負荷(W)、(c)が空調用空気SAの温度(℃)、(d)がデシカントロータ112の除湿量(kg/h)を示している。
図4(d)により、循環湯水の温度が60℃以上であれば、室外空気OAが2.5kg/h以上除湿できており、適切な除湿が可能であることがわかる。しかしながら、当該循環湯水の温度が低下すると、再生空気の温度が低下し、デシカントロータ112での除湿量が低下するため、第1加湿機111での噴霧量を減らさざるを得ず、図4(a)に示すように、冷房能力が低下すると共に、図4(c)に示すように、空調用空気SAの温度が上がってしまう。
【0031】
一方、図5に、ガス焚きバーナ120を作動させた場合の評価結果を示す。循環湯水の温度を75℃に固定した場合において、(a)がデシカントロータ112の通気性吸湿体112cを再生する再生空気の温度を変化させた場合の冷房能力(W)、(b)がガス焚きバーナ120の熱負荷(W)、(c)空調用空気SAの温度(℃)を示している。
図5(a)より、再生空気の温度を85℃以上とすることで、顕熱だけの冷房能力として1000Wが得られており、図5(c)より、18.6℃の空調用空気SAを得ることができる。図5(b)より、この場合のガス焚きバーナ120の熱負荷は、630Wである。
このように、ガス焚きバーナ120を適切に働かせることにより、デシカント空調装置100にて、適切に冷房能力を発揮することができる。
【0032】
〔加湿暖房運転〕
加湿暖房運転にあっては、図6に示すように、室外空気OA(第2気体)を第2空調流路R2に通流させると共に、室内空気RAを第1空調流路R1に通流させるように、第1四方弁110及び第2四方弁117を切り替え制御される。尚、ここで、第2空調流路R2におけるガス焚きバーナ120は作動させていない。
このときに、第3空調流路R3の流量調整弁122は全閉に設定されており、第2空調流路R2から第1空調流路R1へ気体が導かれないようになっている。
また、第4空調流路R4には、室外空気OAが通流しない。
そして、第2空調流路R2にて空調された室外空気OAは、第2四方弁117を介して、第1加湿機111に導かれ、第1加湿機111にて加湿された後、空調用空気SAとして空調対象空間Sに導かれる。
一方、第1空調流路R1通流した室内空気RAは、第1四方弁110を介して排気VAとして室外空間へ放出される。
【0033】
以上の如く、室外空気OA及び室内空気RAを通流させることで、加湿・加熱された空調用空気SAを空調対象空間Sに導いて、空調対象空間Sを適切に加湿暖房できる。
また、加湿暖房運転を24時間実行することにより、除湿冷房運転を同様に、24時間換気が実行される。
【0034】
〔加湿暖房運転の空調性能〕
次に、図6の回路状態における図6の加湿暖房運転の空調性能を、図7の空気線図、図8の気体の性質の一覧表に基づいて説明する。
図6で、室外空気OAが第2空調流路R2を介して空調用空気SAへと空調される流れで、P11〜P17に示す位置における温度・絶対湿度・相対湿度等を、図7、10の夫々に示している。
図6で、室内空気RAが第1空調流路R1を介して排気VAとして排出される流れで、P1〜P6に示す位置における温度・絶対湿度・相対湿度等を、図7、10に示している。
【0035】
図7、10において、P14、15の温度は同じであることからわかるように、加湿暖房運転においては、ガス焚きバーナ120を作動させていない。この場合であっても、空調用空気SAの温度を55、6℃まで昇温できると共に、その絶対湿度を9.52g/kg乾燥空気まで加湿できる。
尚、室外空気OAの温度が低い場合には、当然にガス焚きバーナ120を作動させて、空調用空気SAの温度を上昇させることができる。
【0036】
〔加湿暖房運転の循環温水温度に基づく評価〕
以下、循環温水温度を変化させた場合の加湿暖房運転の性能評価を、図9に基づいて行う。
尚、当該性能評価の条件は、室外空気OAの温度7℃、相対湿度65%、室内空気RAの温度が20℃、相対湿度35%、換気風量170m3/hである。このときの第1ファン118、第2ファン116の合計消費電力は、約100Wである。
【0037】
図9において、(a)が湯水循環路204を循環する湯水の温度を変化させた場合の温水熱負荷(W)、(b)が室内空気RAからの回収湿分(g/h)、(c)が空調用空気SAの温度(℃)、(d)が水噴霧による加湿分(g/h)を示している。
図9(a)に示すように、温水熱負荷を1500Wとした場合、循環温水の温度を55℃にでき、図9(c)に示すように、循環温水温度55℃のときには、空調用空気SAの温度を、35℃程度に維持できる。そして、循環温水温度55℃にした場合には、図9(b)に示すように、デシカントロータ112における室内空気RAからの回収湿分としての640g/hと、図9(d)に示すように、水噴霧による加湿分400g/hとを合わせて、1000g/h以上の加湿を行うことができる。
【0038】
しかしながら、循環温水の温度が低下した場合、デシカントロータ112における室内空気RAからの回収湿分が低下するので、それを補うべく、水噴霧を行った場合、空調用空気SAの温度が低下するという問題が生じる。
この場合であっても、本発明によれば、ガス焚きバーナ120を作動させることにより、空調用空気SAの温度の低下を防ぐことができる。
【0039】
〔除湿運転〕
除湿運転にあっては、図10に示すように、室外空気OA(第1気体)を第1空調流路R1に通流させると共に、室内空気RAを第2空調流路R2に通流させるように、第1四方弁110及び第2四方弁117を切り替え制御される。
このときに、第3空調流路R3の流量調整弁122は全閉に設定されており、第2空調流路R2を通流する室内空気RAは、第1空調流路R1に導かれない。これにより、除湿運転において、第1空調流路R1にて空調される気体、即ち、空調用空気SAとして空調対象空間Sに供給される気体の流量は、除湿冷房運転の場合のそれと比べて、小さいもの(略半分程度)となる。
また、第4空調流路R4では、第3ファン123を作動させず、室外空気OAを通流させない。
そして、第1空調流路R1にて除湿・冷却された室外空気OAは、第2四方弁117を介して、第1加湿機111に導かれ、第1加湿機111にて加湿され、その湿分が蒸発するときの蒸発潜熱が奪われる形態で冷却された後、空調用空気SAとして空調対象空間Sに導かれる。
一方、第2空調流路R2を通流した室内空気RAは、第1四方弁110を介して排気VAとして室外空間へ放出される。
【0040】
以上の如く、室外空気OA及び室内空気RAを通流させることで、除湿された空調用空気SAを空調対象空間Sに導いて、空調対象空間Sを適切に除湿できる。
また、除湿運転を実行すれば、除湿冷房運転の場合と同様に、室内空気RAと室外空気OAとが入れ替わり換気が実行されるので、この除湿運転を24時間実行することにより、24時間換気を実現できる。
【0041】
〔除湿運転の空調性能〕
次に、図10の回路状態における除湿運転の空調性能を、図11の空気線図、図12の気体の性質の一覧表に基づいて説明する。
図10で、室外空気OAが第1空調流路R1を介して空調用空気SAへと空調される流れにおいて、P1〜P6に示す位置における温度・絶対湿度等を、図11、14に示している。
図10で、室内空気RAが第2空調流路R2を介して排気VAとして排出される流れにおいて、P11〜P17に示す位置における温度・絶対湿度等について、図11、14に示している。
【0042】
図11、14において、空調用空気SAの温度(P6)は、室内空気RAの温度(P11)と略同程度の温度に調整でき、且つ、空調用空気SAの湿度(P6)は、室内空気RAの湿度(P11)よりも低下できていることがわかり、適切に除湿運転が実行できていることがわかる。
【0043】
〔除湿運転の循環温水温度及び再生空気温度に基づく評価〕
以下、室外空気OAの相対湿度及び再生空気温度を変化させた場合の除湿運転の評価を、図13、16に基づいて行う。
尚、当該性能評価の条件は、循環温水の温度が75℃、室内空気RAの温度が27℃、相対湿度が55%、室外空気OAの温度が25℃である。第1ファン118、第2ファン116合計電力は、120Wである。
【0044】
図13は、ガス焚きバーナ120を作動させなかった場合のグラフである。図13(a)に示すように、室外空気OAの相対湿度が85%以上になると、その絶対湿度は、16g/kgDA以上となる。そして、そのときの冷房能力は、図13(d)に示すように、20W以下となり、図13(c)に示すように、空調用空気SAの温度も、27℃以上と高くなってしまう。
【0045】
一方、ガス焚きバーナ120を作動させた場合で、デシカントロータ112の再生空気の温度を変化させたときの、室内空気RAの除湿量の変化を図14に示す。
図14から、ガス焚きバーナ120を作動させて、デシカントロータ112の再生空気の温度を上昇させることで、室内空気RAの除湿能力を高められていることがわかる。このように、除湿運転においても、ガス焚きバーナ120を作動させることにより、再生空気の温度を室外空気OAの相対湿度に応じて高めて、室内空気RAの湿度を快適な値に調整することができる。
【0046】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、加熱用熱交換器115に供給される湯水は、コジェネレーションシステム等にて発生した熱を有するものであるとして、説明した。当該湯水を加熱する熱源は、コジェネレーションシステム以外のものであっても良く、例えば、燃料電池等も適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のデシカント空調装置は、コジェネレーションシステムや太陽パネルによる供給熱を再生熱源として利用できない場合(即ち、再生用の熱を十分に確保できない場合)でも、デシカントロータの通気性吸湿体を良好に再生して空調できると共に、除湿冷房運転に加えて加湿暖房運転も実行することができるデシカント空調装置として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
111 :第1加湿機
112 :デシカントロータ
112a :吸湿部
112b :再生部
112c :通気性吸湿体
114 :第1冷却用熱交換器
115 :加熱用熱交換器
120 :ガス焚きバーナ(燃焼装置の一例)
121 :第2冷却用熱交換器
122 :流量調整弁
124 :第2加湿機
100 :デシカント空調装置
OA :室外空気
RA :室内空気
SA :空調用空気
S :空調対象空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する通気性吸湿体からなり、吸湿部に通流させる気体の水分を吸着すると共に、吸着した水分を再生部に通流させる気体に放出するデシカントロータと、
前記デシカントロータの前記吸湿部を通流した気体を冷却用媒体との熱交換により冷却する第1冷却用熱交換器と、気体を加熱用媒体との熱交換により加熱する加熱用熱交換器とを備えたデシカント空調装置であって、
気体を加湿する第1加湿機と、前記デシカントロータの再生に用いる気体を加熱自在な加熱手段とを備えると共に、
気体を前記デシカントロータの前記吸湿部と前記第1冷却用熱交換器とを記載順に通流させる第1空調流路と、気体を前記冷却用媒体として前記第1冷却用熱交換器へ導き、前記加熱用熱交換器及び前記加熱手段へ導いた後、前記デシカントロータの前記再生部を通流させる第2空調流路とを形成可能に構成され、
第1気体を前記第1空調流路にて空調した後に前記第1加湿機にて加湿して空調用空気として空調対象空間へ導くと共に、再生用空気を前記第2空調流路へ導く第1運転状態と、
第2気体を前記第2空調流路にて空調した後に前記第1加湿機にて加湿して空調用空気として空調対象空間へ導くと共に、吸湿用空気を前記デシカントロータの前記吸湿部へ導く第2運転状態とを、択一的に切り替える切替手段が設けられているデシカント空調装置。
【請求項2】
前記切替手段が、運転状態を前記第1運転状態に切り替えているときで、前記第1気体として室外空気を用いている場合に、
前記再生用空気として前記第2空調流路に導かれる室内空気の一部を、前記第1空調流路に導く第3空調流路が設けられている請求項1に記載のデシカント空調装置。
【請求項3】
前記第3空調流路には、前記室内空気の通流量を制御する流量制御弁が設けられている請求項2に記載のデシカント空調装置。
【請求項4】
室外空気を加湿する第2加湿機を備え、
前記第2加湿機にて加湿された室外空気と、前記第1空調流路の前記第1冷却用熱交換器を通流した後の空調用空気とを熱交換可能な第2冷却用熱交換器が設けられている請求項1乃至3の何れか一項に記載のデシカント空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−96605(P2013−96605A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237883(P2011−237883)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】