説明

デジタル伝送装置及び方法

【課題】PCR付きパケットを含む入力ストリームTSをメモリ10に書込み、早い速度で読出す際のPCRジッタを改善する。
【解決手段】発振器44は入力TSの基準クロックの周波数の局部クロック信号を発生し、カウンタ46は局部クロック信号を計数する。PCR検出部38が入力TS内のPCRを検出した時にラッチ回路42はカウンタの計数値をラッチし、PCR置換部40は入力TS内のPCRからラッチされた計数値を減算した値をPCRと置換する。制御手段14は読出し速度及び書込み速度差が許容範囲外となったときにダミー・パケットを出力TSに挿入する。PCR検出部52が出力TS内にPCRを検出した時に、ラッチ回路48がカウンタの計数値をラッチする。PCR置換部54は出力TS内のPCRにラッチ計数値を加算して、この加算結果を新たなPCRとした出力TSを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、デジタル・データを伝送する装置及び方法、例えば、MPEG(Moving Pictures Expert Group)−2デジタル映像データを伝送する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル・データの伝送には種々の装置及び方法がある。例えば、デジタル・データがMPEG−2システムの場合に、このMPEG−2システムには、プログラム・ストリーム(PS:Program Stream)とトランスポート・ストリーム(TS:Transport Stream)の2つがある。プログラム・ストリームは、比較的エラーのない環境で使用されるように設計されている。一方、トランスポート・ストリームは、エラーの生じやすい環境で使用されるように設計されており、複数のプログラム(番組)を1本のストリームにすることができる。デジタル放送では、トランスポート・ストリームが使用されている。トランスポート・ストリームは、エレメンタリー・ストリーム(ES:Elementary Stream)などをトランスポート・ストリーム・パケット(TSパケット)と呼ばれる伝送単位で時分割したものである。図1Aは、トランスポート・ストリームの一例を示す。TSパケットA〜Cの各々は、TSヘッダ及びペイロードなどから構成されており、特定のTSパケット(例えば、パケットB)のTSヘッダには、時刻基準を表す時間情報であるPCR(Program Clock Reference)が設定されている。このPCRは、例えば、27MHzのクロックを計数して求めた時間情報が送信側で挿入されたものである。よって、受信側で、このPCRの時間情報を参照することにより、同期を行うことができる。
【0003】
このようなデジタル伝送システムにおいて、特に、MPEG−2システムにおいて、受信側では、図2に示すように、FIFO(First-In First-Out)メモリ10が、入力用TSクロックに応じて入力トランスポート・ストリームをFIFO(First-In First-Out)メモリ10に書込み、出力用TSクロックに応じて書込まれたトランスポート・ストリームを読出して、出力トランスポート・ストリームとすることにより、バッファの役目を果たしている。入力用TSクロック信号は、入力トランスポート・ストリームに基づいて発生する。ここで、入力用TSクロックの周波数と出力用TSクロックの周波数とが等しい場合は、FIFOメモリ10の書込み速度と読出し速度が同じため問題が生じない。しかし、受信側のデータ処理の都合により、出力用TSクロック周波数が入力用TSクロック周波数よりも高い場合、即ち、読出し速度が書込み速度よりも早い場合、FIFOメモリ10に入力トランスポート・ストリームが空になり、受信待ちが生じてしまう。そこで、図3に示すような装置が提案されている。ここでは、ダミー・パケットであるヌル・パケットを発生するヌル・パケット発生器12を設け、制御手段14がFIFOメモリ10の書込み速度及び読出し速度を監視し、これら読出し速度及び書込み速度の差が許容範囲外となったときに、電子スイッチ16を制御して、ヌル・パケットをFIFOメモリからの出力トランスポート・ストリームに挿入することが提案されている。なお、読出し速度及び書込み速度の差が許容範囲内のときは、スイッチ16はFIFOメモリ10を選択する。ここで、許容範囲外とは、読出し速度及び書込み速度の速度差により、FIFOメモリ10に蓄積された入力(トランスポート)ストリームの量が一定値以下となり、速度差によりFIFOメモリからストリームを読み出すことが少なくとも困難になる前の状態をいう。
【0004】
図1を参照して、図3の動作を更に説明する。なお、図1において、入力トランスポート・ストリームAと出力トランスポート・ストリームBとの各パケットのデータ量は同じであるが、読出し速度が書込み速度よりも速いため、出力トランスポート・ストリームBの各パケットの長さが入力トランスポート・ストリームAの各パケットの長さよりも短くなっている。また、図3のブロックのうち、図2と同じブロックは同じ参照符号で示し、その動作説明は省略する。まず、電子スイッチ16は、FIFOメモリ10を選択する。図1Aに示す入力トランスポート・ストリームが入力用TSクロックによりFIFOメモリ10に書き込まれる。パケットAが完全に書き込まれた後、図1Bの出力トランスポート・ストリームに示すように、パケットAが出力用TSクロックにより読出される。パケットAが読出された後、パケットBのFIFOメモリ10への書込みが完了していないので、制御手段14がこの許容範囲外状態を検出して、電子スイッチ16をヌル・パケット発生器12に切り換えて、出力トランスポート・ストリームBにヌル・パケットを挿入する。ヌル・パケットの挿入が完了した時点で、入力トランスポート・ストリームのパケットBはFIFOメモリ10に書き込まれているので、制御手段14が電子スイッチ16をFIFOメモリ10に切り換えて、パケットBをFIFOメモリ10から読出して出力トランスポート・ストリームとする。パケットBの読出しが終了した時点では、入力トランスポート・ストリームのパケットCのFIFOメモリ10への書込みも終了しているので、引き続き、FIFOメモリ10の読出しを行って、パケットCを出力トランスポート・ストリームとする。
【0005】
この例では、パケットBには、時刻基準を表す時間情報であるPCRが設定されている。しかし、出力トランスポート・ストリームBでは、パケットAとパケットBとの間に、ダミーであるヌル・パケットが挿入されている。よって、パケットBのPCRの時間情報は、挿入されたダミー・パケットの時間を考慮していないため、PCRジッタが発生するという欠点があった。
【0006】
この欠点を改善した装置として、例えば、図4に示すような装置が提案されている。図4のブロックのうち、図2及び3と同じブロックは同じ参照符号で示し、その動作説明は省略する。第1PCR検出手段18は、入力トランスポート・ストリームからPCR値を検出する。比較手段20は、PCR検出手段18が検出したPCR値とPCR用カウンタ24の計数値とを比較し、これら値の差に応じて電圧制御発振器(VCO)22の発振周波数(例えば、27MHz)を制御する。カウンタ24は、VCO22からのパルス信号を計数する。よって、ブロック20、22及び24は、カウンタ24の計数値が入力トランスポート・ストリームのPCRに同期するように動作する。第2PCR検出手段26は、電子スイッチ16からのトランスポート・ストリーム内のPCRを検出する。PCR検出手段28は、第2PCR検出手段26からの検出信号(PCRの検出時点を表す信号)に応じて、電子スイッチ16からのトランスポート・ストリーム内のPCR値をカウンタ24の計数値と置換する。よって、図1Bに示すように、パケットA及びパッケージBの間にヌル(ダミー)パケットが挿入されても、その間の時間は、PCR用カウンタ24が計数しているため、パケットBのPCRは、ヌル・パケットの時間を考慮したPCR値に置換される。かかる装置は、例えば、特開平11−239179号公報に記載された発明と同様である。図4に示すようなデジタル伝送装置では、伝送が中断した場合、PCR付きパケットのPCRが異常値になるので、VCOの発振周波数が大幅に狂い、PCR用カウンタ24の計数値も狂い、PCR置換手段28は、正しいPCRへの置換を行えなくなる。さらに、カウンタ24から出力される計数値とPCR検出手段18で検出されるPCR値とのオフセットが不定なため、PCR値だけではなくPTS(Presentaion Time Stamp)/DTS(Decoding Time Stamp)値も修正する必要がある。このためには、PTS/DTS値を修正する回路も別途必要となる。
【0007】
図4の装置の欠点を改善するため、図5に示すような装置が提案されている。図5のブロックのうち、図2、3及び4と同じブロックは同じ参照符号で示し、その動作説明は省略する。第1PCR検出手段30は、入力トランスポート・ストリームからPCRを検出し、PCR値をカウンタ34のロード端子に供給すると共に、PCRの検出時点を示す検診をカウンタ34のプリセット端子PRと同期発振器32に供給する。同期発振器32は、PCRの検出時点に同期した27MHzのパルス信号を発生する。カウンタ34は、PCR検出手段30が入力トランスポート・ストリーム内のPCRを検出する毎に、そのPCRをロードし、このロード値から発振器32の出力パルスを計数する。よって、カウンタ34は、入力トランスポート・ストリームのPCR付きパケットを検出する毎に、そのPCR値にリセットされ、このリセットされたPCR値から発振器32のパルスを計数してPCR値を再生する。PCR置換手段28は、第2PCR検出手段26がスイッチ16の出力にPCRを検出する毎に、出力トランスポート・ストリームのPCR値をカウンタ34が発生したPCR値に置換する。かかる装置は、例えば、特開2005−151153号公報に記載された発明と同様である。
【0008】
【特許文献1】特開平11−239179号公報
【特許文献2】特開2005−151153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5に示すデジタル伝送装置では、トランスポート・ストリームの特徴の1つである複数のプログラム(番組)を1本のストリームにした場合、各プログラム毎にPCRの連続性が異なるため、第1PCR検出手段30は、どのプログラムのPCRであるかも検出しなければならず、また、カウンタ34も各プログラム毎に用意しなければならない。さらに、PCR置換手段28も、第2PCR検出手段26がどのプログラムのPCRを検出したかに応じて、複数のカウンタの1つを選択して、PCRの置換を行わなければならない。よって、PCRジッタを改善できるが、構成が複雑となり高価となった。上述では、MPEG−2システムについて説明したが、MPEG−2システム以外のデジタル・データの伝送においても同様な課題が存在する。
【0010】
よって、本発明は、時刻基準を表す時間情報、例えば、PCRが設定されたパケットを含むパケット列から成る入力ストリームを書込み速度によりメモリに記憶させ、この書込み速度よりも早い読出し速度によりメモリから出力ストリームを読み出す際に、時間情報のジッタを改善すると共に、複数のストリーム系列、例えば、複数のプログラムから成るトランスポート・ストリームであっても簡単な構成で安価に実現できるデジタル伝送装置及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、時刻基準を表す時間情報が設定されたパケットを含むパケット列から成る入力ストリームを書込み速度によりメモリ(10)に記憶させ、書込み速度よりも早い読出し速度によりメモリから出力ストリームを読み出すデジタル伝送装置であって;入力ストリーム内に時間情報を検出した時に第1検出信号を発生する第1検出手段(38)と;入力ストリームの基準クロックの周波数の局部クロック信号を発生する発振手段(44)と;この発振手段からの局部クロック信号を計数するカウンタ(46)と;第1検出信号に応じてカウンタの計数値をラッチする第1ラッチ手段(42)と;入力ストリーム内の時間情報から第1ラッチ手段にラッチされた計数値を減算して、この減算結果を新たな時間情報とした入力ストリームをメモリに供給する第1置換手段(40)と;読出し速度及び書込み速度差が許容範囲外となったときに、ダミー・パケット(12の出力)をメモリからの出力ストリームに挿入するダミー挿入手段(12、14、16)と;このダミー挿入手段からの出力ストリーム内に時間情報を検出した時に第2検出信号を発生する第2検出手段(52)と;第2検出信号に応じてカウンタの計数値をラッチする第2ラッチ手段(48)と;ダミー挿入手段からの出力ストリーム内の時間情報に、第2ラッチ手段にラッチされた計数値を加算して、この加算結果を新たな時間情報とした出力ストリームを発生する第2置換手段(54)とを具えている。なお、括弧内は、実施例との対応関係を単に示すのみであり、本発明を実施例に限定するものではない。
また、本発明は、時刻基準を表す時間情報が設定されたパケットを含むパケット列から成る入力ストリームを書込み速度によりメモリ(10)に記憶させ、書込み速度よりも早い読出し速度によりメモリから出力ストリームを読み出すデジタル伝送方法であって;入力ストリームの基準クロックの周波数信号を計数するカウンタ(46)の計数値を、入力ストリーム内に時間情報を検出した時にラッチして第1ラッチ値を求め;入力ストリーム内の時間情報から第1ラッチ値を減算して、この減算結果を新たな時間情報とした入力ストリームをメモリ(10)に供給し;読出し速度及び書込み速度差が許容範囲外となったときに、ダミー・パケットをメモリ(10)からの出力ストリームに挿入し;ダミー・パケットが挿入された出力ストリーム内に時間情報を検出した時に、カウンタ(46)の計数値をラッチして第2ラッチ値を求め;出力ストリーム内の時間情報に第2ラッチ値を加算して、この加算結果を新たな時間情報とした出力ストリームを発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、時刻基準を表す時間情報が設定されたパケットを含むパケット列から成る入力ストリームをメモリに書込んで読出す際に、時間情報のジッタを改善すると共に、複数のストリーム系列であっても簡単で安価な構成にできるという利点がある。
【実施例】
【0013】
図6は、本発明の好適実施例のブロック図であり、本発明をMPEG−2システムに適用した場合について以下に説明する。図6のブロックのうち、図2〜5と同じブロックは同じ参照符号で示す。時刻基準を表す時間情報であるPCRを検出及び置換する第1PCR置換回路36は、PCR検出部(第1検出手段)とPCR置換部(第1置換手段)40とから構成される。PCR検出部38は、入力トランスポート・ストリームのパケットのヘッダに設定されているPCRを検出した時に第1検出信号を発生する。この第1検出信号は、ラッチ回路(第1ラッチ手段)42にそのラッチ・タイミング信号として供給されると共に、同期発振器(発振手段)44にその同期信号として供給される。発振器44は、例えば、図4に示す比較手段20及びVCO22と、このVCOの出力信号を比較手段に戻す帰還路とから構成されており、PCR検出部38からの検出信号に同期した局部クロック信号、例えば、27MHzのクロック信号を発生する。カウンタ46は、例えば、42ビット・カウンタであり、発振器44からの局部クロック信号を計数して、計数値(デジタル・データ)をラッチ回路42及びラッチ回路(第2ラッチ手段)48に供給する。ラッチ回路42は、PCR検出部38からの第1検出信号を受けた時点、即ち、入力トランスポート・ストリーム内のPCRを検出した時点のカウンタ46の計数値(C0)をラッチする。PCR置換部40は、PCR検出部38の検出信号に応じて、入力トランスポート・ストリーム内のPCRの値からラッチ回路42にラッチされた計数値を減算して、この減算結果を入力トランスポート・ストリームの本来のPCR値(P0)と置換する。よって、新たなPCR値(P1)は、P1=P0−C0となる。
【0014】
メモリ10は、PCR置換部40からのトランスポート・ストリームを入力用TSクロックにより書込み、出力用TSクロックにより読み出すFIFOメモリである。ここで、出力用TSクロック周波数が入力用TSクロック周波数よりも高いので、読出し速度が書込み速度よりも速くなる。FIFOメモリ10に入力トランスポート・ストリームの1パケット分が記憶されていないと、受信待ち状態となる。制御手段14は、FIFOメモリ10の動作状態をモニタし、このように書込み速度及び読出し速度の差が許容範囲外になると、電子スイッチ16をFIFOメモリ10側からヌル(ダミー)パケット発生器12に切り換え、図1Bに示すようにヌル・パケットをメモリ10からのトランスポート・ストリームに挿入する。また、書込み速度及び読出し速度の差が許容範囲内の戻ると、制御手段14は、電子スイッチ16をFIFOメモリ10に切り換える。このように、ヌル・パケット発生器12、制御手段14及び電子スイッチ16は、ダミー挿入手段として機能する。このように、書込み速度及び読出し速度の差が許容範囲外になるということは、読出し速度及び書込み速度の速度差により、FIFOメモリ10に蓄積された入力トランスポート・ストリームの量が一定値以下になり、この速度差によりFIFOメモリ10からトランスポート・ストリームを読み出すことが少なくとも困難になる前の状態をいう。
【0015】
電子スイッチ16の出力端は、第2PCR置換回路50に接続される。この第2PCR置換回路50は、PCR検出部(第2検出手段)52と、PCR置換部(第2置換手段)54を具えている。PCR検出部52は、電子スイッチ16からの出力トランスポート・ストリームからPCRを検出したときに第2検出信号を発生する。なお、カウンタ46は、循環型カウンタであり、発振器44からの局部クロック信号を計数し続けている。ラッチ回路48は、PCR検出部52からの第2検出信号に応じてカウンタ46の計数値C1をラッチする。PCR置換部54は、PCR検出部52の検出信号に応じて、出力トランスポート・ストリーム内のPCR値P2にラッチ回路48にラッチされた計数値C1を加算して、新たなPCR値を発生し、この新たな値を出力トランスポート・ストリームの本来のPCR値(P2)と置換する。よって、新たなPCR値(P3)は、P3=P2+C1となる。PCRを置換したトランスポート・ストリームを最終的な出力とする。
【0016】
ヌル・パケットが挿入されない場合、即ち、電子スイッチ16がFIFOメモリ10に接続されている場合に、PCR付きパケットBが第1PCR置換回路36、FIFOメモリ10、第1PCR置換回路50を通過すると、第1PCR置換部40でトランスポート・ストリームのPCR値がオリジナルのP0からP1(=P0−C0)に置換され、第2PCR置換部54でPCR値P1がP3に置換される。なお、この場合、P2=P1である。ここで、出力トランスポート・ストリームのP3は、P3=P1+C1=(P0−C0)+C1=P0+(C1−C0)となる。C0及びC1は、PCR検出部38及び52がPCRを検出したときのカウンタ46の計数値であるので、C1−C0は、トランスポート・ストリームが第1PCR置換回路36(PCR検出部38)から第2PCR置換回路50(PCR置換部54)までの伝搬遅延時間に対応する。この伝搬時間が無視できる場合、C1−C0が略ゼロであるので、出力トランスポート・ストリームのPCRは、入力トランスポート・ストリームのPCRと同じになる。
【0017】
図1Bに示すように、PCR付きパケットBの前にヌル(ダミー)パケットが挿入された場合、C1−C0は、ヌル・パケットの挿入期間と、第1PCR置換回路36から第2PCR置換回路50までの伝搬遅延時間との和である。この伝搬時間が無視できる場合、C1−C0がヌル・パケットの挿入期間に対応するので、出力トランスポート・ストリームのPCRは、入力トランスポート・ストリームのPCRに、挿入されたヌル・パケットの期間を加算した値となる。よって、ヌル・パケットが挿入されたのみかかわらず、PCRの連続性が保持され、PCRジッタを改善できる。なお、ヌル・パケットがPCR付きパケットの直前ではなく挿入された場合も同様である。
【0018】
上述では、第1PCR置換回路36(PCR検出部38)から第2PCR置換回路50(PCR置換部54)までの伝搬遅延時間を無視できる場合について説明したが、この伝搬遅延時間を無視できない場合は、伝搬時間を補正する補正値Hを第2PCR置換部54で減算すればよい。すなわち、PCR置換部54では、P3=P2+C1−Hを求め(P2:第2PCR置換回路50に入力するトランスポート・ストリームのPCR値、C1:ラッチ回路48の値)、出力トランスポート・ストリームのPCRをP3に置換すればよい。なお、伝搬遅延時間は、固定値である。ダミーのPCR付きトランスポート・ストリームを入力トランスポート・ストリームとして供給することにより、実測により補正値Hを求めてもよい。
【0019】
上述の如く、本発明のデジタル伝送装置を流れるトランスポート・ストリームのPCR値は、置換を行った場合でも、常に、オリジナルのPCRに基づいており、ダミー・パケットの補償に対して、オリジナルのPCRと全く別のPCRと置換するものではない。よって、各プログラム毎にPCRの連続性が異なる複数のプログラムを1本のストリームにした場合でも、各プログラム毎に専用の回路を設けることなく、総てのプログラムに対して、PCRの連続性を維持したまま、第1及び第2PCR置換回路、ラッチ回路、カウンタなどを共用できる。
【0020】
上述では、発振器44は、入力トランスポート・ストリームのPCRに同期している。しかし、入力トランスポート・ストリームが256kbpsで、このPCRの確度が(MPEG標準に対して)+30ppmの場合、27MHzの発振周波数の発振器44は、50ppm確度の非同期発振器であってもよい。この場合、第1PCR検出部38からの検出信号を発振器44に供給する必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
上述では、MPEG−2システムについて説明したが、MPEG−2システム以外であっても、時刻基準を表す時間情報が設定されたパケットを含むパケット列から成る入力ストリームをメモリに書込み読出すシステムにも、本発明を適用できる。電子スイッチ16は、デジタル・マルチプレクサでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トランスポート・ストリームを説明する図である。
【図2】従来技術を説明するブロック図である。
【図3】図2を改善した従来技術を説明するブロック図である。
【図4】図3を改善した従来技術を説明するブロック図である。
【図5】図4を改善した従来技術を説明するブロック図である。
【図6】本発明の好適実施例のブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
10 FIFOメモリ
12 ヌル(ダミー)パケット発生器(ダミー挿入手段の一部)
14 制御手段(ダミー挿入手段の一部)
16 電子スイッチ(ダミー挿入手段の一部)
36 第1PCR置換回路
38 PCR検出部(第1検出手段)
40 PCR置換部(第1置換手段)
42、48 ラッチ手段
44 発振手段
46 カウンタ
50 第2PCR置換回路
52 PCR検出部(第2検出手段)
54 PCR置換部(第2置換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻基準を表す時間情報が設定されたパケットを含むパケット列から成る入力ストリームを書込み速度によりメモリに記憶させ、上記書込み速度よりも早い読出し速度により上記メモリから出力ストリームを読み出すデジタル伝送装置であって、
上記入力ストリーム内に上記時間情報を検出した時に第1検出信号を発生する第1検出手段と、
上記入力ストリームの基準クロックの周波数の局部クロック信号を発生する発振手段と、
該発振手段からの上記局部クロック信号を計数するカウンタと、
上記第1検出信号に応じて上記カウンタの計数値をラッチする第1ラッチ手段と、
上記入力ストリーム内の上記時間情報から上記第1ラッチ手段にラッチされた上記計数値を減算して、この減算結果を新たな時間情報とした入力ストリームを上記メモリに供給する第1置換手段と、
上記読出し速度及び上記書込み速度差が許容範囲外となったときに、ダミー・パケットを上記メモリからの上記出力ストリームに挿入するダミー挿入手段と、
該ダミー挿入手段からの出力ストリーム内に上記時間情報を検出した時に第2検出信号を発生する第2検出手段と、
上記第2検出信号に応じて上記カウンタの計数値をラッチする第2ラッチ手段と、
上記ダミー挿入手段からの出力ストリーム内の上記時間情報に上記第2ラッチ手段にラッチされた上記計数値を加算して、この加算結果を新たな時間情報とした出力ストリームを発生する第2置換手段と
を具えたデジタル伝送装置。
【請求項2】
上記第2置換手段は、上記ストリームが上記第1検出手段から上記第2置換手段まで伝搬する時間に対応する補正値を更に上記時間情報に加算して、この加算結果を新たな時間情報とした出力ストリームを発生することを特徴とする請求項1のデジタル伝送装置。
【請求項3】
上記ダミー挿入手段は、上記読出し速度及び上記書込み速度差により、上記メモリに蓄積された上記入力ストリームの量が一定値以下になったとき許容範囲外とすることを特徴とする請求項1のデジタル伝送装置。
【請求項4】
上記発振手段は、上記第1検出信号に位相拘束されることを特徴とする請求項1のデジタル伝送装置。
【請求項5】
上記メモリは、FIFOメモリであることを特徴とする請求項1〜4のデジタル伝送装置
【請求項6】
上記入力ストリームは、MPEG2システム信号であることを特徴とする請求項1〜5のデジタル伝送装置。
【請求項7】
時刻基準を表す時間情報が設定されたパケットを含むパケット列から成る入力ストリームを書込み速度によりメモリに記憶させ、上記書込み速度よりも早い読出し速度により上記メモリから出力ストリームを読み出すデジタル伝送方法であって、
上記入力ストリームの基準クロックの周波数信号を計数するカウンタの計数値を、上記入力ストリーム内に上記時間情報を検出した時にラッチして第1ラッチ値を求め、
上記入力ストリーム内の上記時間情報から上記第1ラッチ値を減算して、この減算結果を新たな時間情報とした入力ストリームを上記メモリに供給し、
上記読出し速度及び上記書込み速度差が許容範囲外となったときに、ダミー・パケットを上記メモリからの上記出力ストリームに挿入し、
上記ダミ・パケットが挿入された上記出力ストリーム内に上記時間情報を検出した時に、上記カウンタの計数値をラッチして第2ラッチ値を求め、
上記出力ストリーム内の上記時間情報に上記第2ラッチ値を加算して、この加算結果を新たな時間情報とした出力ストリームを発生する
ことを特徴とするデジタル伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−34905(P2008−34905A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202749(P2006−202749)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000108409)日本テクトロニクス株式会社 (32)
【Fターム(参考)】