説明

デジタル振幅変調送信機

【課題】 フィルタが急峻でなくともよい低廉な従前のフィルタを用い、S/Nも改善できるデジタル振幅変調送信機を提供する。
【解決手段】 本発明に係るデジタル振幅変調送信機は、入力する変調信号HSをサンプリング信号の周波数に基づいてA/D変換器11がA/D変換し、そのA/D変換した信号によって搬送波信号CAに振幅変調をかける。この場合、サンプリング信号生成器12は、周波数F0の搬送波信号CAから搬送波信号CAの2倍の周波数2F0を持つ信号を生成し、生成した信号を前記サンプリング信号SAとしてA/D変換器11に供給する。したがって、発生するスプリアスは、搬送波信号の奇数倍の周波数を有しているので、スプリアスは広帯域に拡散し、急峻でなくとも域増幅器PA1〜PA32のために用意されたフィルタ16を共用化でき、S/Nも改善でき、フィルタの部品点数も増加させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル振幅変調送信機に関し、特に、入力する変調信号をサンプリング信号の周波数に基づいてA/D変換器がA/D変換し、そのA/D変換した信号によって、スイッチング動作の増幅器をスイッチングし、搬送波信号に振幅変調をかけるデジタル振幅変調送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、この種のデジタル振幅変調送信機の従来例を示すブロック図である。図2のデジタル振幅変調送信機において、A/D変換器21は、変調信号入力にDC加算が行なわれた変調信号GSを周波数S0のサンプリング信号SBで11bitのバイナリ信号にA/D変換している。
【0003】
このようにA/D変換された11bitのバイナリ信号のうち、上位5bitは、増幅器選択回路23(PA選択回路23)に引き渡される。PA選択回路23は、引き渡されるバイナリ信号の上位5ビットが表す数の等振幅電圧出力増幅器PA1〜PA26を動作させるように、“ON”あるいは“OFF”の制御信号を送る。“ON”の制御信号を受けた等振幅電圧出力増幅器PA1〜PA26のそれぞれは、周波数F0の搬送波信号CAを等振幅(例えば、振幅A〔V〕)に増幅して加算合成部25に引き渡す。
【0004】
A/D変換された11bitのうち、下位6bitのバイナリ信号は、各ビットが対応する増幅器PA27〜PA32を制御する“ON”あるいは“OFF”の制御信号を送る。“ON”の制御信号を受けた増幅器PA27〜PA32は、バイナリ信号の各ビットの表す値に対応した振幅(A/2〔V〕,A/4〔V〕,〜,A/64〔V〕)に搬送波信号CAを増幅して加算合成部25に引き渡す。加算合成部25は、増幅器PA1〜PA26,PA27〜PA32の出力を加算合成してフィルタ26を通して出力する。
【0005】
上述の送信機の例においては、等振幅電圧を出力する等振幅電圧出力増幅器PA1〜PA26の26個と、バイナリ振幅電圧を出力する増幅器の6個とで構成され、それぞれの増幅器は搬送波信号CAを増幅している。この場合、各増幅器は独立してその増幅をON/OFFすることができる。各増幅器のON/OFFの組み合わせにより加算合成される出力は、(26+1)×26=1728通りある。つまり、1728通りの振幅をもった搬送波を出力できる。変調信号入力をA/D変換し、1728通りの増幅器のON/OFFに割り振りを行なうことによって、搬送波信号を振幅変調した信号が得られる。
【0006】
なお、ON/OFFの組み合わせ変化させる周期について、この例では、変調信号GSをA/D変換する際のサンプリング周波数の逆数(サンプリング周期)がON/OFFの組み合わせを変化させる周期と同じである。このサンプリング周波数S0は、任意に設定される。このサンプリング周波数S0については、通常、変調信号に含まれる周波数成分の最大周波数の2倍以上に設定される。上限周波数は、ハードウェアの制限によるが、搬送波周波数F0には関係なく搬送波周波数F0より高い周波数に設定することも可能である。なお、類似した技術を開示している資料に特開平6−164242号公報がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のデジタル振幅変調送信機においては、サンプリング周波数S0が変調信号の周波数成分より十分高い周波数の場合、変調信号GSをA/D変換すると、サンプリング周波数S0のN倍(N=整数)の近傍にイメージ成分が発生する。そのため、その後に前記のように振幅変調した信号を得ると、振幅変調出力に対して上記のサンプリング周波数のN倍(N=整数)離れた周波数(F0±NS0)付近にスプリアス(不要波)が発生する。これらのスプリアスをフィルタによって除去し、必要な振幅変調出力を得るが、このフィルタが急峻になることにより部品点数が増えコスト高になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、スプリアスやノイズの発生が低減でき、フィルタが急峻でなくてもよい低廉なデジタル振幅変調送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明に係るデジタル振幅変調送信機は、入力する変調信号をサンプリング信号の周波数に基づいてA/D変換器がA/D変換し、そのA/D変換した信号によって、スイッチング動作の増幅器をスイッチングし、搬送波信号に振幅変調をかけるデジタル振幅変調送信機において、前記搬送波信号から搬送波信号の2倍の周波数を持つ信号を生成し、生成した信号を前記サンプリング信号としてA/D変換器に供給するサンプリング信号生成器を有する。
【0010】
この発明は上述したように構成されているので、デジタル振幅変調送信機の出力には搬送波信号の奇数倍の周波数のスプリアスが発生し、そのスプリアスは既設のスイッチング動作の増幅器のためのフィルタを共用して除去することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上に詳述したように本発明によれば、デジタル振幅変調送信機の出力には搬送波の奇数倍の周波数のスプリアスが発生し、そのスプリアスは既設のスイッチング動作の増幅器のためのフィルタを共用して除去することができ、ひいては、新たに部品点数を増加させずにスプリアスを除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、この発明のデジタル振幅変調送信機の実施の形態を示すブロック図である。図1のデジタル振幅変調送信機において、変調信号入力にDC加算が行なわれた変調信号HSがA/D変換器11に入力される。A/D変換器11は、サンプリング信号生成部12から受け取った周波数2F0のサンプリング信号SAに基づいて、入力した変調信号HSを11bitのバイナリ信号にA/D変換している。この場合、サンプリング信号生成部12は、周波数F0の搬送波信号CAから周波数2F0のサンプリング信号SAを生成している。
【0013】
このようにA/D変換された11bitのバイナリ信号のうち、上位5bitは、増幅器選択回路13(PA選択回路13)に引き渡される。PA選択回路13は、引き渡されるバイナリ信号の上位5ビットが表す数の等振幅電圧出力増幅器PA1〜PA26をスイッチング動作させるように、“ON”あるいは“OFF”の制御信号を送る。“ON”の制御信号を受けた等振幅電圧出力増幅器PA1〜PA26は、周波数F0の搬送波信号CAをそれぞれ等振幅(A〔V〕)に増幅して加算合成部15に引き渡す。
【0014】
A/D変換された11bitのうち、下位6bitのバイナリ信号は、各ビットが対応する増幅器PA27〜PA32をスイッチング動作させる“ON”あるいは“OFF”の制御信号を送る。増幅器PA27〜PA32は、バイナリ信号の各ビットの表す値に対応した振幅(A/2〔V〕,A/4〔V〕,〜,A/64〔V〕)に搬送波信号CAを増幅して加算合成部15に引き渡す。加算合成部15は、増幅器PA1〜PA26,PA27〜PA32の出力を加算合成してフィルタ16を通して出力する。
【0015】
上述したように、制御信号ON/OFFの組み合わせを変化させる周期を搬送波信号の半分にするために、サンプリング信号生成器12によって搬送波信号の2倍の周波数を生成する。それをサンプリング信号SAとして使用することにより周期は半分になる。
【0016】
ON/OFFの組み合わせを変化させる周期を搬送波信号の半分にすることにより、イメージ成分の周波数が搬送波周波数F0の2N倍(N=整数)となる。そのため、発生するスプリアス成分は(F0±2NF0)の付近となる。これは各増幅器PA1〜PA32から発生する高調波成分の3倍波、5倍波、7倍波・・・の周波数に一致することになる。
【0017】
上述の場合、各増幅器PA1〜PA32から発生する高調波成分は、通常、ローウパスフィルタやトラップなどで減衰するように製作している。そのため、このフィルタと、イメージ成分に対するフィルタを共通化することができる。その結果、出力フィルタの部品数を減らすことができコスト削減となる。
【0018】
また、この振幅変調方式では高効率化のため、各増幅器PA1〜PA32は、スイッチング動作の各増幅器を用いることが多い。その場合、スイッチングの状態の変化は搬送波周期の半分の周期で状態が変化するため、その変化点でON/OFFの組み合わせを変化させることによってロスを減少させることが可能となる。さらに、搬送波周波数は、一般的に変調信号の周波数成分より十分に高い周波数である。そのため、量子化ノイズが広帯域に拡散し、出力フィルタ16で減衰されるため送信出力のS/Nが改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明のデジタル振幅変調送信機の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】デジタル振幅変調送信機の従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
11 A/D変換器、12 サンプリング信号生成器、13 増幅器選択回路(PA選択回路)、15 加算合成部、16 フィルタ、PA1〜PA32 増幅器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力する変調信号をサンプリング信号の周波数に基づいてA/D変換器がA/D変換し、そのA/D変換した信号によって、スイッチング動作の増幅器をスイッチングし、搬送波信号に振幅変調をかけるデジタル振幅変調送信機において、
前記搬送波信号から搬送波信号の2倍の周波数を持つ信号を生成し、生成した信号を前記サンプリング信号としてA/D変換器に供給するサンプリング信号生成器を有することを特徴とするデジタル振幅変調送信機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−17273(P2008−17273A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187799(P2006−187799)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】