説明

デジタル顕微鏡

【課題】 光源が点灯した後の一定時間において照度が安定しないという課題を解決し、従来にはなかったデジタル顕微鏡を提供する。
【解決手段】
デジタル顕微鏡1は、発光ダイオード34と、発光ダイオード34から出射された光を試料に照射するための光学系と、試料にて反射または散乱した光を光電変換して試料を撮像する撮像素子と、試料を複数回撮像するように撮像素子を制御する制御部35と、撮像素子にて撮像された画像を表示する表示部31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD等の撮像素子によって撮像した画像をモニタに表示するデジタル顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に示すように、CCD等の撮像素子によって試料を撮像し、撮像した画像をモニタに表示するデジタル顕微鏡が知られていた。このようなデジタル顕微鏡の光源として、従来は、ハロゲンランプ等のランプが用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−214790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハロゲンランプは、ランプを点灯してから安定するまでにある程度の時間(製品によっても異なるが、およそ5〜10分程度)を要する。このため、ランプの点灯後の一定の時間内に、複数の画像を撮像するときには、同じ条件で撮像できない場合があった。本発明は、上記背景に鑑み、従来にはなかったデジタル顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のデジタル顕微鏡は、発光ダイオードと、発光ダイオードから出射された光を試料に照射するための光学系と、試料にて反射または散乱した光を光電変換して前記試料を撮像する撮像部と、前記試料を複数回撮像するように前記撮像部を制御する制御部と、前記撮像部にて撮像された画像を表示する表示部とを備える。
【0006】
発光ダイオードは、ハロゲンランプに比べて、点灯してから照度が安定するまでの時間が短い。本発明の構成によれば、光源として発光ダイオードを用いているので、点灯後すぐに複数回の撮像を行っても同じ照射条件で撮像でき、同じ照射条件で撮像した画像を表示部にて表示することができる。表示部は、異なる時刻に撮像された撮像データに基づく画像を並べるまたは合成するなどして、同時に表示してもよい。このように異なる時刻に撮像された画像が同時に表示されるときにも、同じ照射条件で撮像しているので、撮像条件の差に起因する違和感が生じにくい。
【0007】
本発明のデジタル顕微鏡は、前記撮像部にて撮像する箇所をずらしつつ撮像された複数の画像をつなぎ合わせる処理を行う画像処理部を備え、前記表示部は、前記画像処理部にてつなぎ合わされた画像を表示してもよい。また、前記制御部は、撮像する箇所をずらしつつ前記試料を撮像するように前記試料を載置したステージを移動する制御を行ってもよい。
【0008】
撮像する箇所(撮像領域)を少しずつずらした複数の画像をつなぎ合わせて、広範囲の画像を作成するいわゆる「タイリング」を行う場合には、複数の各画像を同じ条件で撮像することが必要である。本発明の構成によれば、同じ照射条件で撮像した複数の画像をつなぎ合わせることができるので、適切なタイリング画像を生成することができる。
【0009】
本発明のデジタル顕微鏡は、撮像スケジュールの設定を受け付ける操作部と、前記操作部にて受け付けた撮像スケジュールを記憶する記憶部とを備え、前記撮像部は、前記記憶部に記憶された撮像スケジュールに基づいて撮像を行ってもよい。
【0010】
例えば、カビの繁殖の様子を撮像する場合などのように、撮像スケジュールに基づいて所定の時間をおいて繰り返し撮像を行う場合には、経時的な変化を適切に把握するために、同じ条件で撮像をすることが必要である。本発明の構成によれば、同じ照射条件で撮像を行えるので、撮像画像から試料の経時的な変化を適切に把握することができる。
【0011】
本発明のデジタル顕微鏡は、前記撮像部にて撮像を行う直前に発光ダイオードを点灯させ、前記撮像後に発光ダイオードを消灯してもよい。
【0012】
発光ダイオードは、点灯直後から輝度レベルが安定しているので、撮像を行う直前に点灯することにより省電力化を図れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、光源として発光ダイオードを用いることにより、点灯直後から、時間間隔をあけて複数回の撮像を行っても同じ照射条件で撮像することができ、その画像を表示部に表示できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態のデジタル顕微鏡の外観を示す図である。
【図2】撮像機器の構成を模式的に示す図である。
【図3】本体装置の構成を示す図である。
【図4】タイリング処理の動作を示す図である。
【図5】タイマー撮像の動作を示す図である。
【図6】(a)従来のタイリング画像を示す図である。(b)本実施の形態のデジタル顕微鏡によるタイリング画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態にかかるデジタル顕微鏡について説明する。図1は、実施の形態のデジタル顕微鏡の外観を示す図である。デジタル顕微鏡1は、試料を撮像する撮像機器10と、撮像された画像の加工、管理等を行う本体装置30とを有する。撮像機器10と本体装置30とは、光ファイバ束19およびデータケーブル20によって接続されている。本実施の形態では、撮像機器10と本体装置30とが分離された態様について説明しているが、デジタル顕微鏡1は、撮像機器10と本体装置30とを一体とし、撮像機器10に撮像画像を処理する機能や画像を表示する画面を備えてもよい。
【0016】
光ファイバ束19は、本体装置30が有する光源からの光を撮像機器10に供給する。データケーブル20は、撮像機器10で撮像した画像データ、および、ズーム倍率やステージ11の位置を示すデータを本体装置30に送信する。なお、図1では、1本のデータケーブル20を示しているが、画像データを送信するケーブル、ズーム倍率のデータを送信するケーブル、ステージ11の位置を示すデータを送信するケーブルをそれぞれ設けてもよい。
【0017】
図2は、撮像機器10の構成を模式的に示す図である。撮像機器10は、基本的には光学顕微鏡と同じ構成を有している。撮像機器10は、試料を載置するステージ11と、ステージ11上に載置された試料を撮像する撮像素子15とを有している。ステージ11と撮像素子15とを結ぶ光軸(以下、「撮像光軸A」という)上には、対物レンズ12、ハーフミラー13、拡大光学系14が配置されている。
【0018】
ハーフミラー13は、撮像光軸Aに対して垂直方向から入射される光を反射する。反射された光は、明視野照射光としてステージ11に照射される。また、ハーフミラー13は、ステージ11上の試料によって反射または散乱され、撮像素子15へ向かう光を透過する。また、対物レンズ12には、リングレンズ16が取り付けられている。リングレンズ16には、光ファイバが接続されており、光ファイバを通じて光が供給される。リングレンズ16は、ステージ11に対して側方から暗視野照明光を供給する。リングレンズ16には、図示しないリング状のプリズムが取り付けられており、プリズムによってリングレンズ16からの光を、ステージ11に載置される試料に向ける。
【0019】
本体装置30と撮像機器10とを接続する光ファイバ束19は、撮像機器10において分岐されている。光ファイバ束19の出光端の近傍には2本の光ファイバ束17,18が同方向を向けて隣接して配置されている。光ファイバ束19の出光端と光ファイバ束17,18の入光端とは対向しており、光ファイバ束19から出射した光が光ファイバ束17,18に入光する。2本の光ファイバ束17,18のうちの1本は、ハーフミラー13へ光を供給する光ファイバ束17である。この光ファイバ束17の出光端には、複数のレンズとミラーからなる照射光学系21が配置されている。他方の光ファイバ束18は、リングレンズ16へ光を供給する光ファイバである。この光ファイバ束18は、リングレンズ16が取り付けられた対物レンズ12に延びている。
【0020】
光ファイバ束19は、保持部材22によって保持されている(図2参照)。この保持部材22は、操作部23(図1参照)の操作によってスライドする。スライドの方向は、光ファイバ束19の出光端と光ファイバ束17及び光ファイバ束18の入光端とが対向した状態を保つ平面内で、光ファイバ束17の入光端の中心と光ファイバ束18の入光端の中心を結ぶ直線方向である。この構成により、光ファイバ束19から、光ファイバ束17及び光ファイバ束18に入光する光量を変えて、明視野照明光と暗視野照明光の混合割合を変えることができる。
【0021】
光ファイバ束19の移動量は、撮像機器10に設けられた操作部23の操作量に応じて決まる。本実施の形態では、操作部23は、図1に示すようにダイヤル式の操作部23である。なお、本実施の形態では、明視野照射と暗視野照射の両方を行えるデジタル顕微鏡1を例としているが、本発明は、明視野照明のみ、もしくは暗視野照明のみ行うデジタル顕微鏡に適用することも可能である。
【0022】
図3は、デジタル顕微鏡1の本体装置30の構成を示す図である。本体装置30は、画像を表示する表示部31と、必要な情報等の入力を受け付ける操作部32と、撮像機器10にて撮像された画像等を記憶する記憶部33と、光源としての発光ダイオード34と、本体装置30の動作を制御する制御部35とを有している。
【0023】
発光ダイオード34は、コリメートレンズを介して、光ファイバ束19の開口端と接続されている。コリメートレンズは、発光ダイオード34からの出射光を光ファイバ束19の開口端のN/Aに合わせるように配置されている。
【0024】
制御部35は、発光ダイオード34の点灯を制御する点灯制御部36と、ステージ11の動作を制御するステージ制御部37と、撮像素子15を制御する撮像素子制御部38と、撮像された画像に対して処理を行う画像処理部39と、撮像タイミングを管理するタイマー管理部40とを有している。ここでは、本実施の形態のデジタル顕微鏡1の説明に必要な構成に言及しているが、制御部35は、ここに記載した機能の他にも、デジタル顕微鏡1を動作させるための機能を有している。
【0025】
画像処理部39は、撮像した画像を拡大、縮小したり、複数の方向から撮像した画像を用いて試料の立体画像を生成したりするなどの画像処理機能を有するが、このような画像処理の一つとしてタイリング機能を有する。タイリングとは、並んだ画像をつなぎ合わせて大きな画像を生成する機能である。
【0026】
図4は、タイリングの処理を示すフローチャートである。まず、本体装置30の制御部35は、ステージ制御部37により試料を載置したステージ11を少しずつ移動しながら、撮像素子制御部38の制御により撮像素子15に撮像を行わせる。そして、本体装置30は、撮像した画像を記憶部33に記憶していく(S10)。これにより、撮像領域が連続した複数の画像が得られる。
【0027】
次に、画像処理部39は、隣接する画像どうしで画像マッチングを行い、対応する画素を求める(S12)。このとき、画像を撮像した際のステージ11の移動量に基づいて対応画素が存在する範囲を予測することにより、マッチングを行う範囲を限定することができ、計算量を低減できる。続いて、画像処理部39は、マッチングの結果に基づいて、対応する画素が一致するようにして、隣接する画像どうしを合成する(S14)。画像処理部39は、撮像した全画像の合成が終了したか否かを判定し(S16)、全画像の合成が終了していないと判定された場合には(S16でNO)、次の画像の合成処理を行う。全画像の合成が終了したと判定された場合には(S16でYES)、タイリング処理を終了する。以上の動作により、ステージ11を移動しつつ撮像した複数の画像から、ひとつのタイリング画像を生成することができる。なお、本実施の形態では、ステージ制御部37による制御によってステージ11を移動させ、撮像する箇所をずらした画像を撮像する例について説明したが、ステージ11は手動によって移動することとしてもよい。この場合にも、画像処理部39は、手動でステージ11を移動して撮像した複数の画像から対応画素を求め、隣接する画像どうしを合成する。
【0028】
タイマー管理部40は、撮像を行うタイミングをタイマーによって管理する。タイマー管理部40は、撮像素子15に対して撮像タイミングを指示する信号を送信する。タイマー管理部40により撮像タイミングを管理することにより、あらかじめ定められたタイミングで撮像を行うタイマー撮像を実現できる。
【0029】
図5は、タイマー撮像の処理を示すフローチャートである。まず、本体装置30は、撮像タイミングを規定する設定値(例えば、撮像間隔と終了時刻)の入力を受け付ける(S20)。操作部32より設定値が入力されると、本体装置30は、設定値を記憶部33に記憶しておく。タイマー管理部40は、記憶部33に記憶された設定値を参照し、撮像時刻が到来したか否かを判定する(S22)。撮像時刻が到来した場合(S22でYES)、タイマー管理部40は、撮像素子15に撮像指示信号を送信し、撮像を行う(S24)。タイマー管理部40は、終了時刻になったか否かを判定し(S26)、終了時刻になった場合には(S26でYES)、タイマー撮像を終了する。終了時刻になっていない場合には(S26でNO)、撮像時刻が到来したか否かの判定に戻り、タイマー撮像を継続して行う。
【0030】
以上、本実施の形態のデジタル顕微鏡1の構成について説明した。本実施の形態のデジタル顕微鏡1は、光源として発光ダイオード34を用いているので、従来用いられていたハロゲンランプに比べて、照度が安定するまでに要する時間が短い。これにより、点灯直後の異なる時刻に撮像を行った場合にも、同じ照射条件の画像が得られる。表示部31は、異なる時刻に撮像した複数の画像を表示するが、照射条件が同じであるため、適切に比較を行ったり、適切に合成したりすることができる。
【0031】
本実施の形態のデジタル顕微鏡1は、同じ照射条件で撮像した複数の画像を用いてタイリングを行うので、適切なタイリング画像を生成することができる。図6(a)は、従来のデジタル顕微鏡1で撮像した画像を用いて生成したタイリング画像の問題点を示す図、図6(b)は、本実施の形態のデジタル顕微鏡1で撮像した画像を用いて生成したタイリング画像を示す図である。
【0032】
図6(a)に示すように、従来のデジタル顕微鏡1では、光源の点灯後一定の時間が経過するまでは照度が安定しないので、輝度レベルが低くなったところでは、画像が暗くなってしまう。このような箇所がある場合に、当該箇所の輝度補正を行うことは好ましくない。なぜなら、照度が安定しなかったために暗くなっているのか、実際に何らかの欠陥があったのかを判別することは困難であり、画像の補正を行ってしまうと、実際に存在する欠陥を見落としてしまう可能性があるためである。従って、このような場合には、画像を撮り直すことが必要になり、非常に効率が悪い。これに対し、本実施の形態のデジタル顕微鏡1では、図6(b)に示すように、同じ輝度レベルで撮像した画像をつなぎ合わせて適切なタイリング画像を生成することができる。
【0033】
本実施の形態のデジタル顕微鏡1は、時間をおいても同じ照射条件で撮像を行うことができるので、所定の間隔で撮像を行うタイマー撮像において、同一の照射条件により、試料の経時的変化の観察に適した画像を撮像することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上、本発明は、時間間隔をあけて複数回撮像しても同じ照射条件で撮像を行えるという効果を有し、撮像した画像を表示部に表示するデジタル顕微鏡として有用である。
【符号の説明】
【0035】
10 撮像機器
11 ステージ
12 対物レンズ
13 ハーフミラー
14 拡大光学系
15 撮像素子
16 リングレンズ
17〜19 光ファイバ束
20 データケーブル
21 照射光学系
22 保持部材
23 操作部
30 本体装置
31 表示部
32 操作部
33 記憶部
34 発光ダイオード
35 制御部
36 点灯制御部
37 ステージ制御部
38 撮像素子制御部
39 画像処理部
40 タイマー管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードと、
発光ダイオードから出射された光を試料に照射するための光学系と、
試料にて反射または散乱した光を光電変換して前記試料を撮像する撮像部と、
前記試料を複数回撮像するように前記撮像部を制御する制御部と、
前記撮像部にて撮像された画像を表示する表示部と、
を備えたデジタル顕微鏡。
【請求項2】
前記撮像部にて撮像する箇所をずらしつつ撮像された複数の画像をつなぎ合わせる処理を行う画像処理部を備え、
前記表示部は、前記画像処理部にてつなぎ合わされた画像を表示する請求項1に記載のデジタル顕微鏡。
【請求項3】
前記制御部は、撮像する箇所をずらしつつ前記試料を撮像するように前記試料を載置したステージを移動する制御を行う請求項2に記載のデジタル顕微鏡。
【請求項4】
撮像スケジュールの設定を受け付ける操作部と、
前記操作部にて受け付けた撮像スケジュールを記憶する記憶部と、
を備え、
前記撮像部は、前記記憶部に記憶された撮像スケジュールに基づいて撮像を行う請求項1に記載のデジタル顕微鏡。
【請求項5】
前記撮像部にて撮像を行う直前に発光ダイオードを点灯させ、前記撮像後に発光ダイオードを消灯する請求項1ないし4のいずれかに記載のデジタル顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185210(P2012−185210A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46470(P2011−46470)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(591226346)株式会社ハイロックス (7)
【Fターム(参考)】