説明

デッキ材

【課題】木質感と長手方向の十分な剛性とを備え、補強材を設けるのに高い精度を必要とせず、更に長期の使用において短手方向の変形の恐れの小さいデッキ材を提供する。
【解決手段】被覆層1の表面の木粉及び芯材2により、木質感と長手方向αの十分な剛性とが備えられるが、芯材2の外周に被覆層1を設けるので成形における高い精度が必要とされず、また上面全体を下方から一体の芯材2により支持できることで、長期の使用においてもクリープ現象等による短手方向βの変形の恐れは小さいものとなり得る。
【参照図】 図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、遊歩道や公園施設において設置されるベンチやテーブル,八ツ橋,ボードウォークの他、競技場観覧席、或いはベランダやテラスの直張りタイプのデッキに仕上材として使用されるデッキ材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表層に木粉を配合されることで木質感が具備されると共に、内部に金属材料からなる補強材を備えることで長手方向の剛性を高めたデッキ材としては、例えば特許文献1に、長手方向に沿って中空部が形成され中空部に金属製棒状体又は板状体が嵌挿され、木粉入り合成樹脂からなるデッキ材が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−173087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の如き従来のデッキ材は、成形後のデッキ材に補強材を嵌挿するものであり、補強材を隙間無く嵌挿するためには中空部内面の成形において高い精度が必要とされ、成形における条件設定や金型の加工精度が煩雑となるものであった。また補強材による補強は長手方向に対してのみ行われており、合成樹脂のクリープ現象によって長期の使用において短手方向での変形が生じる恐れのあるものであった。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、木質感と長手方向の十分な剛性とを備え、補強材を設けるのに高い精度を必要とせず、更に長期の使用において短手方向の変形の恐れの小さいデッキ材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わるデッキ材は、中空部を備え金属材料からなる一体の芯材の、外周全体に合成樹脂を用いて被覆層が設けられ、該被覆層の少なくとも表面は木粉が10〜60重量%配合された熱可塑性合成樹脂を用いて形成されると共に、前記被覆層の厚みが1〜5mmとなされていることを特徴とするものである。
【0007】
また前記被覆層は、表面層と内部層とからなり、前記内部層を形成する熱可塑性合成樹脂は、前記表面層を形成する熱可塑性合成樹脂より低い硬度となされていることを特徴とするものである。
【0008】
また前記芯材は、前記中空部を横断して設けられたリブを備えたアルミニウム押出形材からなり、断面二次モーメントが85000mm以上となされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明に係わるデッキ材によれば、被覆層の表面の木粉及び芯材により、木質感と長手方向の十分な剛性とが備えられるが、芯材の外周に被覆層を設けるので成形における高い精度が必要とされず、また上面全体を下方から一体の芯材により支持できることで、長期の使用においてもクリープ現象等による短手方向の変形の恐れは小さいものとなり得る。
【0010】
また請求項2の発明によれば、内部層を形成する熱可塑性合成樹脂の硬度が表面層を形成する熱可塑性合成樹脂の硬度より低くなされていることで、表面層上を歩行者等が歩行した際に内部層により被覆層の割れの発生が抑えられ、被覆層を長期に亘って維持することができ好ましい。
【0011】
また請求項3の発明によれば、アルミニウム押出形材を用いることで中空部にリブが設けられ、高い強度を有しつつ軽量化が図られた芯材を容易に得ることができ、また芯材の断面二次モーメントが85000mm以上となされていることで、従来のデッキ材より根太材の間隔を広くすることができ好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係わるデッキ材の、実施の一形態を説明するもので、図1は斜視図、図2は図1のA−A線における断面の詳細を示す断面図である。まず図1において、デッキ材10は芯材2の全周に亘って被覆層1が設けられて形成され、断面の短手方向βは138mm、厚み方向γは45mmである。芯材2は一体のアルミニウム押出形材からなり、その断面は中空部21を厚み方向γに横断してリブ22が短手方向に2枚設けられており、かかる断面が長手方向αに延設されていることで、断面矩形で一枚のリブ22が長手方向αに備えられることで中空部21が二つに分割された角パイプ状の芯材2が形成されている。芯材2の中空部21にリブ22が設けられることで断面二次モーメントが高められ、またアルミニウム押出形材を用いることで長手方向αに同一断面を備えた芯材2を容易に得ることができる。芯材2の下側内面には凸部23が設けられ、デッキ材10への根太材への取付時のビス固定を強固に行うことができるようになされている。
【0014】
被覆層1は、芯材2上に1〜5mmの厚みで形成することができ、被覆層1の厚みが1mmを下回ると被覆層1による木質感等の特性が損なわれて金属的な感触の表面となる。被覆層1表面への太陽光の照射等に由来する表面温度の上昇を引き起こす熱や、被覆層1表面に積もった雪を融解させる外気からの熱は、中空部21に通る外気と、中空部21内面においてその外気と接触している芯材2の熱伝導により出入がなされるが、被覆層1の厚みが5mmを上回ると、被覆層1表面から芯材2への熱伝導を妨げる度合いが大きくなり、デッキ材10の表面温度の上昇や積もった雪が融けにくくなることに繋がる。またアルミニウムは比較的廉価で且つ熱伝導性が高い材料であり、芯材2にアルミニウム押出形材を用いることで上述の熱の出入は高い効率で行うことができ得る。
【0015】
図2は被覆層1の詳細を示す断面図である。芯材2の外面に設けられた被覆層1は、表面層11及び内部層12からなるもので、内部層12はポリエチレン樹脂のみを用いて形成されたもので、表面層11は木粉を25重量%配合したポリエチレン樹脂を用いて形成されたものである。表面層11及び内部層12は、芯材2の表面に二層押出成形により同時に形成され、表面層11の厚みは0.6mm、内部層の厚みは0.6mmで被覆層1全体の厚みは1.2mmとなされている。
【0016】
ここで、表面層11及び内部層12を形成する熱可塑性合成樹脂として用いられるポリエチレン樹脂は、いずれも硬度はJIS規格K7215(プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法)のタイプDによる試験において、D硬さ35のものであるが、表面層11を形成する熱可塑性合成樹脂は木粉が25重量%配合されていることでD硬さが58となっている。かかる表面層11のみが被覆層1として形成されると、歩行者が歩行することによって直接又は芯材2のたわみにより表面層11にせん断応力がかかり、長期の使用において表面層11に割れが発生する恐れがあるが、内側に表面層11より硬度の低い内部層12が形成されていることで表面層11にかかるせん断応力が緩和され、被覆層1の割れの発生が抑えられ、被覆層1を長期に亘って維持することができる。
【0017】
内部層12のD硬さは、表面層11より低い硬さであればよいが、本実施形態の如く木粉が配合されることで表面層11のD硬さが55以上となった場合には、内部層12のD硬さを10〜50と、D硬さの上限を表面層11のD硬さの9割程度、D硬さの下限を表面層11のD硬さの2割程度するのが好ましい。D硬さが上記下限を下回ると内部層12が柔らかくなりすぎて逆に表面層11の割れに繋がったり、また被覆層1の形状を保持できなくなったりする恐れが生じる。D硬さが上記上限を上回ると、内部層12が堅くなり過ぎ、せん断応力が十分に緩和されなくなって表面層11の割れの発生を防止できなくなる。
【0018】
被覆層1は、押出成形により芯材2表面に被着するのみでもよく、被覆層1と芯材2との間に接着層を設けたり、内部層12に変性ポリエチレン等接着性を備えたものを用いるか又は配合して成形したりすることで被覆層1と芯材2との密着性を更に高め、温度変化による被覆層1と芯材2との線膨張率に起因する剥離や被覆層1の割れの発生を防止できるようにしてもよい。
【0019】
被覆層1を形成する合成樹脂は、押出成形が可能なものが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ABS、AAS等の熱可塑性合成樹脂を好適に用いることができる。配合される木粉は、スギ、ヒノキ、ベイツガ等がよく使用され、その粒径は60〜100メッシュ程度のものが好適である。デッキ材10表面における配合量が10重量%を下回ると木質感が乏しくなり、60重量%を上回るとデッキ材として使用されるにおいては汚れ等の不具合が起こりやすくなる。
【0020】
芯材2については、押出成形が可能なアルミニウムであれば純アルミニウム、アルミニウム合金を問わず使用することができ、例えばJIS−K4100に規定される記号A1100S、A3003S、A6061S、A6063S等を好適に用いることができる。
【0021】
図3は芯材2の詳細を示す断面図であり、芯材2と被覆層1とはヤング率に極めて大差があり、デッキ材10の断面二次モーメントはほぼ全てが芯材2に依存するものである。芯材2の形成に用いられるアルミニウム合金は、JIS−K4100に規定されるA6063S−T4であり、芯材2の外形は幅133mm、厚み40mmである。芯材2の外周の肉厚は1.2mm、リブ22は肉厚1.2mmとなされ、中空部21を等分に分割するようになされている。かかる芯材2により、デッキ材10の断面二次モーメントは133260mmとなされる。
【0022】
一般に建材の柱や根太の設置間隔は六尺(約1800mm)単位となっており、従来の合成木材を用いたデッキ材では、たわみやクリープが起こることから六尺の間に二本の根太を設けて600mm間隔で根太材を設ける必要がある。しかしながら、デッキ材の断面二次モーメントを高めることで、六尺の間に一本の根太を設けるのみでたわみやクリープの発生を押さえることができる。図4に900mm間隔に設置された根太材間に設置するデッキ材に必要な断面二次モーメントを示す。図中の式(1)に示す如く、デッキ材が自由端支持されているとして、上述の如くデッキ材すなわち芯材のヤング率は7000kgf・mmであり、デッキ材の中央に体重70kgの歩行者が乗った場合を想定して、たわみ量が1.8mm以内であれば一般にデッキ材として良好な強度を有していると考えられている。式(1)にこれらの数値を代入すると、断面二次モーメントIは84375mmとなり、断面二次モーメントが85000mm以上であればデッキ材として概ね良好な強度を有することが推定できる。
【0023】
次に、以下の実施例及び比較例に基づき、本発明に係わるデッキ材の熱伝導性について説明する。
【0024】
(実施例1)
図1〜図3に示したデッキ材において、表面層の厚みを0.6mm、内部層の厚みを0.6mmとして、被覆層の厚みを1.2mmとした本発明に係わるデッキ材を得た。
【0025】
(実施例2)
図1〜図3に示したデッキ材において、表面層の厚みを1.5mm、内部層の厚みを3.0mmとして、被覆層の厚みを4.5mmとした本発明に係わるデッキ材を得た。
【0026】
(比較例1)
図1〜図3に示したデッキ材において、表面層のみを設けると共にその厚みを0.6mmとして、比較例1に係わるデッキ材を得た。
【0027】
(比較例2)
図1〜図3に示したデッキ材において、表面層の厚みを2.5mm、内部層の厚みを3.5mmとして、被覆層の厚みを6.0mmとした比較例2に係わるデッキ材を得た。
【0028】
実施例1及び2、比較例1及び2について、木質感及び熱伝導性の検証を行う。
【0029】
木質感の検証は、25歳から60歳の男女20人が、デッキ材上を素足で歩行したときに、木質感を、高(3点)、中(2点)、低(1点)と評価し、その評点の平均値にて行う。
【0030】
熱伝導性の検証は、滋賀県内で、快晴の気温37℃の日にデッキ材を直射日光下に放置し、午後0時にデッキ材の表面温度を測定することで行う。デッキ材の色調は、木肌に近似する通常のデッキ材として用いられる色調で、JIS規格Z8730に規定されるLab系による測定において、L=57、a=5、b=23であるものである。尚、デッキ材の両端に蓋体は取り付けているが、中空部は密閉されていない状態となされている。
【0031】
実施例及び比較例による木質感及び熱伝導性の検証結果を、下記の表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
木質感については、比較例1において評点上顕著な低下が見られ、被覆層の厚みが1mm以下となることで芯材の金属感が強くなって木質感が失われることが示されている。また熱伝導性については、比較例2の表面温度が60℃を超えるものとなっており、素足の歩行者にとっては極めて歩行が困難な表面温度であるが、実施例1及び2は55℃を超えることがなく、高い熱伝導性を備えることで真夏でもその上を素足で歩行可能なものとなされ、デッキ材として良好な性能が備えられたものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係わるデッキ材の、実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面の詳細を示す断面図である。
【図3】図1に示したデッキ材の、芯材の詳細を示す断面図である。
【図4】デッキ材に必要な断面二次モーメントを示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 被覆層
11 表面層
12 内部層
2 芯材
21 中空部
22 リブ
10 デッキ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を備え金属材料からなる一体の芯材の、外周全体に合成樹脂を用いて被覆層が設けられ、該被覆層の少なくとも表面は木粉が10〜60重量%配合された熱可塑性合成樹脂を用いて形成されると共に、前記被覆層の厚みが1〜5mmとなされていることを特徴とするデッキ材。
【請求項2】
前記被覆層は、表面層と内部層とからなり、前記内部層を形成する熱可塑性合成樹脂は、前記表面層を形成する熱可塑性合成樹脂より低い硬度となされていることを特徴とする請求項1に記載のデッキ材。
【請求項3】
前記芯材は、前記中空部を横断して設けられたリブを備えたアルミニウム押出形材からなり、断面二次モーメントが85000mm以上となされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のデッキ材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−45938(P2006−45938A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229389(P2004−229389)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】