説明

デパレタイズロボットのロボットハンド

【課題】平面視長方形である複数の移載物を同一平面に並べた積載位置から搬出位置へ前記移載物を移し替えるデパレタイズロボットのロボットハンドを提供する。
【解決手段】移載物3の厚みより長い抱え込み爪22,22を、移載物3の一辺より長い間隔で前後一対配し、各抱え込み爪22の下端部に抱え込みロッド23を架け渡して抱え込み枠21を構成し、互いの抱え込みロッド23を平行にし、鉛直線に対して左右対称に対向させた左右一対の抱え込み枠21,21それぞれを、各抱え込み爪22の上端部に設けた揺動軸226を本体部24に軸着して前記本体部24に支持させ、前記抱え込みロッド23,23が平行を保ったまま各抱え込み枠21を揺動させるエアシリンダ26を本体部24に設けたデパレタイズロボット1のロボットハンド2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面視長方形である複数の移載物を同一平面に並べた積載位置から搬出位置へ前記移載物を移し替えるデパレタイズロボットのロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
平面視長方形である複数の移載物を同一平面に並べた積載位置(移載物を同一平面内に並べ、更に積層している場合もあり、この場合は最上層が積載位置となる)から搬出位置へ前記移載物を移し替える積み降ろし作業は、作業内容自体が単純かつ単調なことから、自動化しやすいと考えられ、従来から様々なデパレタイズロボットが提案されている(特許文献1)。デパレタイズロボットは、多関節ロボットアームの先端に、移載物を保持及び解放できるロボットハンドを装着した構成にすることにより、前記多関節ロボットアームの自由度を利用して、積載位置と搬出位置との位置関係を問わず、ロボットハンドの移動して姿勢を変化させることができ、様々な移載物の積み降ろしができるようにしている。
【0003】
特許文献1は、接近離反する一対の把持爪(クランプ部材)の一方に吸着パッドを設けたデパレタイズロボットのロボットハンドを開示する。特許文献1が開示するロボットハンドは、吸着パッドで移載物(物品)を吸着することで、接近離反する把持爪の下端に鉤部を設けることなく、把持爪をそれぞれ移載物の側面に接面させて挟み、移載物を持ち上げることができるようにしている。これにより、吸着パッドを設けない側の把持爪を非常に薄い板面にすることができ、積み降ろして並べる移載物相互の隙間を最小限に留めることができる(特許文献1[0007][0009][0014][0016])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平04-122485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ロボットハンドで保持する移載物を明示していないが、図示から、おそらく直方体外形の箱体を想定していると思われる。平面視長方形である移載物が箱体である場合、移載物相互の隙間を考えなければ、特許文献1が示す従来技術のように、把持爪の下端に鉤部を設けることが、最も安易かつ確実に移載物を保持できると考えられる。また、特許文献1が目的とする移載物相互の隙間を抑えるには、箱体である移載物のいずれかの面を吸着し、積み降ろし後に前記吸着を解除する吸着パッド等が適当だとも言える。
【0006】
しかし、平面視長方形である移載物が袋体である場合、袋体が紙製又は樹脂フィルム製で可撓性を有し、また内容物が粒状物等で動性を有することから、把持爪に鉤部又は吸着パッドを設けたロボットハンドではうまく保持できない。把持爪の先端に鉤部を設けたロボットハンドの場合、鉤部が袋体の下に回り込めば確かに袋体を抱え込み、持ち上げやすいと考えられるが、鉤部が袋体を傷つける虞が否めない。更に、鉤部を袋体の下に回り込ませることが難しい。また、把持爪に吸着パッドを設けたロボットハンドの場合、袋体の表面が凸凹で一様な平面でないため、うまく吸着パッドを吸着できない虞がある。
【0007】
平面視長方形である移載物が箱体である場合、箱体は積載位置に整然と同一平面に並べることができるため、特許文献1が開示するロボットハンドを備えたロボットアームからデパレタイズロボットを構成しやすい。しかし、デパレタイズロボットは、多少の荷崩れがあり、必ずしも整然と並べることのできない袋体を移載物とする場合、作業者に代わって用いること、すなわち自動化の有用性が高くなる。そこで、平面視長方形である移載物が袋体である場合に焦点を絞り、袋体を破らずに、確実に持ち上げることのできるロボットハンドを備えたロボットアームからデパレタイズロボットを構成するため、前記ロボットハンドを検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果、平面視長方形である複数の移載物を同一平面に並べた積載位置から搬出位置へ前記移載物を移し替えるデパレタイズロボットのロボットハンドであって、移載物の厚みより長い抱え込み爪を、移載物の一辺より長い間隔で前後一対配し、各抱え込み爪の下端部に抱え込みロッドを架け渡して抱え込み枠を構成し、互いの抱え込みロッドを平行にし、鉛直線に対して左右対称に対向させた左右一対の抱え込み枠それぞれを、各抱え込み爪の上端部に設けた揺動軸を本体部に軸着して前記本体部に支持させ、前記抱え込みロッドが平行を保ったまま各抱え込み枠を揺動させる爪揺動手段を本体部に設けたデパレタイズロボットのロボットハンドを開発した。ここにいう「前後」「左右」は、説明の便宜上直交する2方向を指すものであり、また「鉛直線」は水平面内に含まれる前記「前後」「左右」両方に対する直交方向の線を意味する。
【0009】
抱え込み爪は、左右一対に配した抱え込み枠それぞれの抱え込みロッドが、移載物の他辺の間隔より離れた開位置と、移載物の他辺の間隔より近づいた閉位置との間で揺動する。抱え込み爪の「下端部」は、抱え込み爪の最下端のほか、後述するように、抱え込みロッド下方に緩衝ローラ等を取り付ける余白を設ける最下端近傍を含む。抱え込み爪の「上端部」も同様である。爪揺動手段は、従来同種のロボットハンドに見られるステッピングモータや油圧シリンダ又はエアシリンダを例示できる。ステッピングモータは、本体部に軸着された抱え込み爪の揺動軸に直接又は間接に回転軸を連結し、前記揺動軸を所定角度の範囲で回転させて抱え込み爪を揺動させる。油圧シリンダ又はエアシリンダは、本体部に軸着された抱え込み爪の揺動軸より上又は下にロッドを接続し、前記ロッドを伸縮させて抱え込み爪を揺動させる。
【0010】
本発明のロボットハンドは、抱え込み爪で移載物を挟むのではなく、前後一対の抱え込み爪の下端部に架け渡した抱え込みロッドを移載物の下面側に潜り込ませ、前記移載物を抱え込むように持ち上げる。このため、抱え込みロッドを移載物の下面側に潜り込ませる際に抱え込み爪が移載物と干渉しないように、抱え込み枠を構成する前後一対の抱え込み爪は、それぞれが移載物の厚みより長く、また平面視長方形である移載物の一辺(例えば長辺)より長い間隔で離れている必要がある。抱え込みロッドは、移載物の下面側に潜りませる際に移載物を傷つける虞のある角部のない表面が好ましいが、持ち上げた移載物がずり落ちないように、抱え込み爪に対して回動不能に固定されていることが望ましい。
【0011】
抱え込み爪は、抱え込みロッドを架設した部位を、揺動軸から前記抱え込みロッドが互いに接近する向きに曲げるとよい。曲がった部分から上、本体部に軸着された部位を上爪部、逆に曲がった部分から下、抱え込みロッドを架設した部位を下爪部とした場合、下爪部は上爪部に対して抱え込みロッドが互いに接近する向きに曲がっていることになる。抱え込み爪は、抱え込みロッドが移載物の他辺より離れた開位置から移載物の他辺より近づいた閉位置まで揺動することにより、前記抱え込みロッドを移載物の下面側に潜り込ませる。このとき、抱え込み爪が下爪部を前記抱え込みロッドが互いに接近する向きに曲げていると、抱え込みロッドを移載物の下面側に潜り込ませやすい。上爪部に対する下爪部の曲がりは、抱え込み爪を湾曲させたり、折り曲げたりして、抱え込みロッドが互いに接近する向きに近づく側面視形状により実現する。
【0012】
また、抱え込み爪は、抱え込みロッドを架設した部位を、揺動軸から前記抱え込みロッドが互いに接近する向きに屈曲自在にするとよい。ここにいう「抱え込みロッドを架設した部位」を上述した下爪部とし、前記下爪部を上爪部に対して屈曲自在にしてもよい。しかし、前記下爪部を分割した下方である先端爪部を、前記分割した下爪部の上方に対して屈曲自在にする方が好ましい。このように下爪部又は先端爪部を屈曲自在とした場合、ロボットハンドを下降させると、持ち上げたい移載物の両隣に置かれた別の移載物や一段下に積層された別の移載物に下爪部又は先端爪部や抱え込みロッドが当たり、前記下爪部又は先端爪部が抱え込みロッドを互いに接近させる向きに屈曲して、破砕爪を閉位置に向けて揺動させた際、抱え込みロッドを持ち上げたい移載物の下面側に潜り込ませやすくなる。このとき、下爪部の上方に対して先端爪部を屈曲自在にすると、下爪部がもともと上爪部に対して抱え込みロッドを互いに接近させる向きに曲がっているので、先端爪部を前記抱え込みロッドを互いに接近させる向きに屈曲させやすい。
【0013】
屈曲自在とした下爪部又は先端爪部は、持ち上げたい移載物以外の移載物に当接して屈曲状態を維持するので、下支えローラを移載物の下面側に潜り込ませてからロボットハンドを上昇させると、重力に従って屈曲前の姿勢(例えば下爪部と同一直線状に揃う姿勢)に向けて復帰させることができる。しかし、より確実に前記姿勢に復帰させるため、屈曲自在とした下爪部又は先端爪部は、復帰方向(抱え込みロッドを互いに遠ざける向き)に付勢しておくとよい。下爪部又は先端爪部の付勢は、弾性体、例えば下爪部との間に介装したコイルスプリングや、屈曲軸に遊嵌した捻りコイルスプリングを利用できる。
【0014】
移載物の下面側に抱え込みロッドを潜り込ませる観点から、抱え込み爪は、抱え込みロッドより下方で、各抱え込み枠の抱え込みロッドが接近する向き又は離反する向きの一方又は双方に前記抱え込みロッドより張り出した緩衝ローラを架け渡すとよい。緩衝ローラは、移載物の下面側に当接する抱え込みロッドの上面側を除いて、前記抱え込みロッドがと右折する前に、持ち上げる移載物以外の移載物(隣り合う移載物又は下層の移載物)の表面に接触して、抱え込みローラが持ち上げる移載物以外に接触して破損する虞を低減すると共に、緩衝ローラが持ち上げる移載物以外の移載物に沿って転動して、抱え込み爪が移載物の隙間を塗って下降し、抱え込みロッドを持ち上げる移載物の下面側に潜り込みやすくする。緩衝ローラは、抱え込みロッドと連結板で繋ぎ、前記抱え込みロッドに中間を支持させると、撓みを抑制又は防止しやすい。
【0015】
同じく移載物の下面側に抱え込みロッドを潜り込ませる観点から、抱え込み爪は、抱え込みロッドに回動自在な当接ローラを設けるとよい。当接ローラは、抱え込みロッドに外嵌したり、抱え込みロッドの途中に軸着したりする。抱え込みロッドは、持ち上げた移載物がずり落ちないように回動しないことが望ましい。しかし、移載物の下面に潜り込ませる際、回動しない抱え込みロッドは摺接抵抗が大きくなり、移載物の下面に潜り込ませにくい。そこで、抱え込みロッドに1又は複数の当接ローラを設け、移載物の下面に抱え込みロッドが潜り込みやすくする。移載物の下面に潜り込んだ抱え込みロッドは、前記下面が撓むことにより直接接触し、前記下面との摩擦抵抗により移載物が抱え込みロッドからずり落ちることを防止する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のロボットハンドは、平面視長方形である移載物が袋体であっても、移載物の下面側に潜り込ませた抱え込みロッドにより前記移載物を持ち上げるため、移載物である袋体を破らずに、確実に持ち上げることができる。抱え込みロッドが互いに接近する向きに曲げったり、屈曲自在とした抱え込み爪や、抱え込みロッド近傍に配置する緩衝ローラや前記抱え込みロッドに外嵌する当接ローラは、いずれも移載物である紙袋を破ることなく、抱え込みロッドを移載物の下面側に潜り込ませやすくする。こうして、本発明により、従来のロボットハンドでは難しかった袋体を移載物とするデパレタイズロボットが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のロボットハンドを有するデパレタイズロボットの一例を表す側面図である。
【図2】本例のロボットハンドの側面図である。
【図3】本例のロボットハンドの平面図である。
【図4】本例のロボットハンドの正面図である。
【図5】本例のロボットハンドが、積層した移載物に向けて下降している段階を表した正面図である。
【図6】本例のロボットハンドが、隣り合う移載物の間に抱え込み爪を差し込み、先端爪を内向きに屈曲させた段階を表した正面図である。
【図7】本例のロボットハンドが、抱え込み爪を閉位置に向けて揺動させ、抱え込みロッドを移載物の下面側に潜り込ませた段階を表した正面図である。
【図8】本例のロボットハンドが、移載物持ち上げた段階を表した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明のロボットハンド2は、図1に見られるように、設置ベース12により位置固定された多関節のロボットアーム11の先端に装着されてデパレタイズロボット1を構成する。デパレタイズロボット1は、、移載位置に積層された紙袋の移載物3を、適当な搬出位置(図示略)に1個ずつ移し替える装置である。本例は、ロボットハンド2の自由度を確保するため、多関節のロボットアーム11に装着する構成であるが、このほかクレーンによりロボットハンド2を吊り下げたり、直交軌道に沿って鉛直面内を移動する移動ベースにロボットハンド2を装着して、デパレタイズロボット1を構成することもできる。
【0019】
本例のロボットハンド2は、図2〜図4(図4中、接続部25や奥側に位置するエアシリンダ26の図示略)に見られるように、ロボットアーム11の先端に接続する接続部25、前記接続部25に支持された本体部24、そして前記本体部24に揺動軸226を介して軸着した左右一対の抱え込み枠21,21から構成される。本例のロボットハンド2は、説明の便宜上、接続部25及び本体部24を水平にして各抱え込み枠21を鉛直方向に吊り下げる姿勢を基本として、抱え込み枠21を構成する抱え込み爪22が並ぶ方向(図2及び図3中紙面左右方向)を左右方向、対となる抱え込み枠21,21それぞれの抱え込み爪22が対向する方向(図3中紙面上下方向、図4中紙面直交方向)を前後方向とする。
【0020】
接続部25は、ロボットアーム11の先端に接続される接続板251と、本体部24に接続される介装板252とを鉛直方向に離して平行に並べ、接続板251の下面と介装板252の上面との間にコイルスプリングからなる接続部弾支用スプリング254を介装して構成される。これにより、接続板251に対して本体部24及抱え込み枠21が一体となって鉛直方向に弾支され、移載物3に押されて抱え込み枠21が押し上げられる力を、接続板251に対して本体部24及抱え込み枠21が上方に変位して、前記接続部弾支用スプリング254が吸収できるようにしている。
【0021】
接続板251は、後述する爪揺動手段であるエアシリンダ26を避けて本体部24より水平方向に取付ブラケット271をはみ出し、移載物3の位置を計測する3次元センサ27を設けている。3次元センサは、空間コード法、光切断法やステレオ法等により移載物3の位置を算出するために必要な画像を撮像するカメラやラインレーザー光を照射及び検知するレーザーセンサである。本例の3次元センサ27は、ロボットハンド2を使用する姿勢(図2の姿勢)で右方向を向いており、移載物3の位置を計測する際、ロボットハンド2を90度引き起こして下向きにする。
【0022】
本体部24は、抱え込み枠21を囲む大きさの平面視長方形を点対称に半割した左右一対の本体板241,241から構成される。各本体板241は、各抱え込み枠21に近い位置に短い棒体からなる前後レール242を、抱え込み枠21から遠い位置に長い棒体からなる前後レール242をそれぞれ上面に設けている。接続部25は、介装板252の下面に設けた接続スライダ253を前記各前後レール242に外嵌させて摺動自在とし、本体部24と接続している。本例の接続スライダ253は、短い前後レール242に1基、長い前後レール242に2基、合計3基である。
【0023】
本例の本体部24は、長い棒体からなる前後レール242に外嵌した2基の接続スライダ253,253の間に、各接続スライダ253に対向するスプリング受けブロック245を各本体板241に設け、それぞれ接続スライダ253とスプリング受けブロック245との間に、コイルスプリングからなる本体部弾支用スプリング244を介装している。これにより、接続板251に対して各本体板241が水平方向に弾支され、移載物3に押されて抱え込み枠21が前後方向に押される力を、接続板251に対して本体板241が前後方向に変位して、前記本体部弾支用スプリング244が吸収できるようにしている。
【0024】
抱え込み枠21は、移載物3の厚みより長い抱え込み爪22を、移載物3の長辺の長さWLより長い間隔FLだけ離して前後一対配し、各抱え込み爪22,22の下端部に抱え込みロッド23を架け渡して構成される。これにより、抱え込み枠21が開閉する際に揺動する抱え込み爪22が、移載物3に干渉しなくなる。左右一対の抱え込み枠21,21は、互いの抱え込みロッド23,23を平行にし、鉛直線に対して左右対称に対向させ、各本体板241の上面に設けた前後一対の支持ブロック243に揺動軸226を架設し、前記揺動軸226の左右両端に抱え込み爪22の上爪部221の上端を接続している。各抱え込み枠21は、各本体板241に対して揺動自在に支持された爪揺動手段であるエアシリンダ26のロッド261を、一方の抱え込み爪22の上爪部221から上方に延長した揺動レバー262に軸着し、前記ロッド261の伸縮に応じて抱え込み爪22を揺動させる。
【0025】
抱え込み爪22は、揺動軸226に上端を接続する上爪部221と、前記上爪部221に対して、対向する抱え込み枠21それぞれの抱え込みロッド23が互いに接近する向きに曲がった下爪部222と、前記下爪部222に軸着され、対向する抱え込み枠21それぞれの抱え込みロッド23が互いに接近する向きに屈曲自在とした先端爪部223とから構成される。本例の抱え込み爪22は、下爪部222を上下に分割してコイルスプリングである爪弾支用スプリング225を介装することにより、移載物3に押されて抱え込み爪22個々が上方に押される力を、上爪部221に対して先端爪部223が上方に変位して、前記爪弾支用スプリング225が吸収できるようにしている。
【0026】
先端爪部223は、下爪部222と間にコイルスプリングである爪復帰用スプリング224を介装し、常時復帰方向(抱え込みロッド23を互いに遠ざける向き)に付勢している。本例の先端爪部223は、中央に当接ローラ233を回動自在に外嵌した断面円形の棒体である抱え込みロッド23を回動不能に架設し、前記抱え込みロッド23より下方で、各抱え込み枠21の抱え込みロッド23が接近する向き及び離反する向きに前記抱え込みロッドより張り出した左右一対の緩衝ローラ231,231を回動自在に架け渡している(図4中拡大部分参照)。各緩衝ローラ231は、前記当接ローラ233を挟んで抱え込みロッド23に支持された連結板232,232に貫通しており、前記連結板232を介して抱え込みロッド23及び緩衝ローラ231相互の位置関係が拘束されている。
【0027】
本例のデパレタイズロボット1による移載物3の持ち上げを、図4〜図5(図4以下、接続部25や奥側に位置するエアシリンダ26の図示略)により説明する。3次元センサ27による移載物3の位置の計測を終えたデパレタイズロボット1は、ロボットアーム11を動かし、ロボットハンド2を持ち上げる移載物3上方に移動させる。このとき、ロボットハンド2は、図4に見られるように、抱え込み爪22を移載物の短辺の間隔より離れた開位置まで開き、各抱え込みロッド23が持ち上げる移載物3の平面視形状に合わせて移載物の長辺と平行になり、各抱え込み枠21が隣り合う移載物3,3の隙間上方に位置するように、姿勢(水平面内での向き)を調整している。これにより、前記姿勢を維持したままロボットハンド2を下降させると、各抱え込み枠21(正確には抱え込みロッド23)が前記隙間に進入していく。
【0028】
しかし、実際の移載物3は必ずしも整然と積層されていないので、ロボットハンド2を下降させると、図5に見られるように、抱え込みロッド23に外嵌した当接ローラ233や緩衝ローラ231が移載物3の表面を押しのけるようにして、各抱え込み枠21を下降させていく。このとき、接続部25に対して本体部24及び抱え込み枠21が一体に上方へ変位したり、各抱え込み枠21を構成する抱え込み爪22の上爪部221に対して下爪部222及び先端爪部223が一体に上方へ変位したり、更に下爪部222に対して先端爪部223が屈曲したりして、移載物3に当接して受ける力を各部が吸収し、抱え込み枠21が隙間を縫って下降していく。
【0029】
緩衝ローラ231が持ち上げる移載物3より下層にある別の移載物3の上面に触れた後、更にロボットハンド2を下降させると、図6に見られるように、爪復帰用スプリング224に抗して先端爪部223が大きく屈曲し、抱え込みロッド23を移載物3の側面から下面側へと潜り込ませる。このとき、各抱え込み枠21は、抱え込み爪22を移載物の短辺の間隔より離れた開位置まで開いているので、前記抱え込みロッド23の移載物3の下面側への潜り込みは、限定的なものである。このため、仮にこの状態でロボットハンド2を上昇させると、移載物3が変形する紙袋等であれば、うまく持ち上げることができない。
【0030】
ここから、図7に見られるように、エアシリンダ26のロッド261を伸ばして各抱え込み枠21の抱え込み爪22を、各抱え込みロッド23が移載物3の短辺の間隔より近づいた閉位置まで揺動させる(図7中黒塗り矢印参照)と、下爪部222に対して屈曲した先端爪部223は復帰しながら(下爪部222に対して真っすぐになりながら)、抱え込みロッド23を移載物3の下面側に大きく潜り込ませる。このように、抱え込みロッド23が移載物3の下面側に潜り込むことから、抱え込み爪22(本例の場合、本体板241の下面側から突出する部分)が移載物3の厚みより長いことが理解される。実際に先端爪部223が復帰するか否かは、ロボットハンド2の下降位置や移載物3の変形具合にもよる。しかし、抱え込みロッド23は、先端爪部223が下爪部222に対して屈曲する範囲でしか自由度ないため、抱え込み爪22の揺動に応じて移載物3の下面側へ確実に潜り込む。
【0031】
このとき、抱え込みロッド23は、抱え込み爪22の揺動軸226に接近する方向、すなわち上方に変位するが、抱え込み爪22の揺動だけで移載物3を持ち上げることはできず、接続部25の接続板251に対して介装板252、本体部24及び抱え込み枠21が一体となって下方に変位する(図7中破線白抜き矢印参照)。このように、爪復帰用スプリング224、爪弾支用スプリング225、本体部弾支用スプリング244及び接続部弾支用スプリング254は、それぞれ移載物3から受ける力を逃がす緩衝部材であるとともに、抱え込みロッド23を移載物3の下面側に潜り込ませる際に必要な抱え込み枠21又は抱え込み爪22の微小位置調整部材にもなっている。
【0032】
こうして抱え込みロッド23が移載物3の下面側に潜り込んだ状態でロボットハンド2を上昇させると、図8に見られるように、左右一対の抱え込みロッド23,23に跨がった移載物3を持ち上げることができる。移載物3は、断面円形の抱え込みロッド23,23の上に跨がっているだけなので、たとえ紙袋であっても破れる虞はない。また、本例の抱え込みロッド23は回動不能なので、ロボットハンド2を水平移動させた際に移載物3が抱え込みロッド23,23からずれ落ちる心配もない。実際には、可撓性のある紙袋は、抱え込みロッド23を噛み込ませるように下面を変形させているので、およそ移載物3が抱え込みロッド23,23からずれ落ちる虞はない。
【0033】
ロボットハンド2から移載物3を降ろす手順は、図示を省略するが、上述までの逆となる。このとき、抱え込みロッド23は回動不能で、移載物3の下面に噛み込ませているが、左右一対の抱え込み枠21の対向する抱え込み爪22が同期して開くことにより、各抱え込みロッド23は相対的に先行して離れる側に移載物3の荷重が加わるため、最終的には同時に移載物3の下面から外れるので、移載物3が傾いて搬出位置に移される虞はない。このように、本発明のロボットハンド2を用いたデパレタイズロボット1は、破れやすい紙袋等から構成される移載物3を破損させることなく、安定して移載できるようにする。
【符号の説明】
【0034】
1 デパレタイズロボット
2 ロボットハンド
21 抱え込み枠
22 抱え込み爪
23 抱え込みロッド
24 本体部
25 接続部
26 エアシリンダ
27 3次元センサ
3 移載物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視長方形である複数の移載物を同一平面に並べた積載位置から搬出位置へ前記移載物を移し替えるデパレタイズロボットのロボットハンドであって、
移載物の厚みより長い抱え込み爪を、移載物の一辺より長い間隔で前後一対配し、各抱え込み爪の下端部に抱え込みロッドを架け渡して抱え込み枠を構成し、
互いの抱え込みロッドを平行にし、鉛直線に対して左右対称に対向させた左右一対の抱え込み枠それぞれを、各抱え込み爪の上端部に設けた揺動軸を本体部に軸着して前記本体部に支持させ、
前記抱え込みロッドが平行を保ったまま各抱え込み枠を揺動させる爪揺動手段を本体部に設けてなる
デパレタイズロボットのロボットハンド。
【請求項2】
抱え込み爪は、抱え込みロッドを架設した部位を、揺動軸から前記抱え込みロッドが互いに接近する向きに曲げている請求項1記載のデパレタイズロボットのロボットハンド。
【請求項3】
抱え込み爪は、抱え込みロッドを架設した部位を、揺動軸から前記抱え込みロッドが互いに接近する向きに屈曲自在にしている請求項1又は2いずれか記載のデパレタイズロボットのロボットハンド。
【請求項4】
抱え込み爪は、抱え込みロッドより下方で、各抱え込み枠の抱え込みロッドが接近する向き又は離反する向きの一方又は双方に前記抱え込みロッドより張り出した緩衝ローラを架け渡した請求項1〜3いずれか記載のデパレタイズロボットのロボットハンド。
【請求項5】
抱え込み爪は、抱え込みロッドに回動自在な当接ローラを設けた請求項1〜4いずれか記載のデパレタイズロボットのロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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