説明

デリバリーデバイス

【課題】デリバリーデバイスの提供。
【解決手段】固体前駆体化合物を気相で反応装置に送るためのデリバリーデバイスが提供される。かかるデバイスには、充填材の層が上に配置された固体前駆体化合物の前駆体組成物が含まれる。また、前駆体化合物で飽和したキャリアガスを移送して、かかるCVD反応装置中に送るための方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、蒸着装置で使用する気相デリバリーシステムに関する。詳細には、本発明は、気相エピタキシーおよび他の化学蒸着装置の必要条件に対応して設計された気相デリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな組成を有し、且つマイクロメータの数分の1から数マイクロメータの範囲の厚さを有する、種々の単結晶層を含むIII〜V族化合物の半導体材料は、レーザや発光ダイオード(LEDS)や光検出器といった数多くの電子デバイスおよび光電子デバイスを製造する際に用いられる。典型的に、有機金属化合物を用いた化学蒸着法(「CVD」)が、金属薄膜または例えばIII〜V族化合物膜などの半導体薄膜を堆積するために用いられている。このような有機金属化合物は、液体あるいは固体のいずれであってもよい。
【0003】
CVD法では典型的に、所望の膜を堆積するために、反応ガス流が反応装置に送達される。反応ガス流は典型的に、前駆体化合物蒸気で飽和した、水素をはじめとするキャリアガスからなる。前駆体化合物が液体である場合、反応ガス流は、典型的には、デリバリーデバイス(すなわちバブラー)内の液体前駆体化合物にキャリアガスを通過させること(すなわちバブリング)によって得られる。固体前駆体は、典型的には、円筒形容器又は箱内に置かれ、一定温度に付され、固体前駆体を蒸発させる。キャリアガスは、前駆体化合物蒸気を捕獲し、それを堆積システムに移送するために用いられる。ほとんどの固体前駆体は、従来のバブラー・タイプの前駆体デリバリーデバイスで用いられると、送達速度が低下し且つ不安定になる。このような従来のバブラーシステムは、特に固体有機金属の前駆体化合物を用いる場合、前駆体蒸気の流量が不安定で不均一になり得る。不均一な有機金属の気相濃度は、有機金属気相成長(「MOVPE」)反応装置内で成長する膜、特に半導体膜の組成に悪影響を与える。
【0004】
固体前駆体化合物を反応装置に送達する問題を解決しようとしたデリバリーデバイスが開発されてきた。これらのデリバリーデバイスのうちのいくつかは、均一な流量を提供することが明らかとなったが、前駆体物質を常に高濃度で提供することはできなかった。固体前駆体から常に高濃度で、安定して供給蒸気を供給することを達成し得ないことは、このような装置の使用者にとって、特に半導体デバイスの製造において、問題である。前駆体の不安定な流量は、様々な要因によるものであり得る。これらの要因には、化学物質の全表面積(この表面から蒸発が生じる)の漸進的な低減、並びに固体前駆体化合物および前駆体の固体物質の昇華を通り抜け送達システムの各部へいたる、キャリアガスとの効率的な接触が難しいかまたは不可能である通路形成(channeling)が挙げられる。
通路(channel)が固体前駆体化合物のベッドを通って発達すると、キャリアガスは、前駆体化合物のベッドを通るよりむしろ、かかる通路を通って優先的に流れ、その結果、キャリアガスと前駆体化合物との接触が減少する。このような通路形成によって、固体前駆体化合物の気相濃度が減少し、結果的にデリバリーデバイス内に未使用の固体前駆体化合物が残ることとなる。
【0005】
固体前駆体のベッドに通路形成が成立されることを低減するために、様々な方法が開発されてきた。例えば、特公平第6−020051号(宇部興産株式会社に付与)は、金属充填剤をシリンダ内に充填し、金属充填剤の表面上に有機金属化合物を昇華によって充填することによって、送達シリンダを固体有機金属化合物で充填する方法が開示されている。金属充填剤の別の層がその有機金属化合物上に置かれている。この特許で開示されたシリンダは、ディップチューブ(dip−tube)を含み、有機金属化合物が2つの金属充填層間に挟まれている3層系を有している。ディップチューブは、一番上の金属充填層と有機金属化合物層とを貫通して、一番下の金属充填層内で終端している。この方法では、高反応性の有機金属化合物と共に使用される特定の金属充填剤が、所望の有機金属化合物と一緒に気相で移動され得、本質的に有害な金属不純物の生成の可能性を増加させるという問題を避けられない。例えばニッケルやクロムといった特定の金属は、III族の有機金属化合物の分解を促進させることが知られている。さらに、ディップチューブは、従来は、流れまたはキャリアガスをシリンダの底部に送るために用いられている。キャリアガスは、その後、前駆体化合物を通って上方に進む。前駆体化合物が固体である場合、ディップチューブの端部は、キャリアガス流の点状源であり、それによって、前駆体化合物のベッド内で通路が形成される可能性が増える。
【特許文献1】特公平6−020051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
気相において固体前駆体化合物を送る従来の方法では、デリバリーデバイスから固体前駆体化合物が消耗されるまでのプロセス全体を通して、均一で高濃度の前駆体蒸気が十分に提供されない。デリバリーデバイスから固体前駆体化合物が消耗され、固体前駆体化合物の蒸気濃度が均一且つ十分に高い濃度で維持され、固体前駆体化合物のベッド内での通路の形成が低減される、固体前駆体化合物の蒸気を送るための改良されたデリバリーデバイスおよび方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
固体前駆体化合物とその固体前駆体化合物の上に配置された充填材の層とを含む前駆体組成物を含む気相デリバリーデバイスが、このような充填材がない同一のシステムと比較して、高流量、低圧、または高流量と低圧とが合わさったときでさえ、気相における前駆体化合物のより一定且つ安定した濃度を提供することが見出された。かかる前駆体化合物のベッド内の通路形成は低減される。前駆体は、デリバリーデバイスのチャンバ内に含まれる。ディップチューブが、デリバリーデバイスのチャンバ内に含まれる。ディップチューブは、チャンバのガス出口と流体連通し、そのガス出口から延びている。固体前駆体化合物をその分解温度または分解温度近くまで加熱する必要なく、気相における前駆体の一定且つ安定した濃度が達成される。
【0008】
本発明は、前駆体組成物を含むチャンバ;ガス入口;ガス出口;注入口;およびガス出口に接続されたディップチューブ;を含むシリンダを含む、固体前駆体化合物のための気相デリバリーデバイスであって、前駆体組成物は、固体前駆体化合物と、該固体前駆体化合物の上に配置された充填材の層とを含む、気相デリバリーデバイスを提供する。使用されるガスは、固体前駆体化合物のためのキャリア(「キャリアガス」)である。本発明では、ディップチューブが、ガス出口と流体連通し、且つガス出口からチャンバの底部に延びている。本発明のデリバリーデバイスでは、キャリアガスが、ガス入口を通ってチャンバに入り、充填材の層を通って進み、固体前駆体化合物のベッドを通って進み、この固体前駆体化合物のベッドでは、キャリアガスが前駆体化合物蒸気を捕獲し、その後、キャリアガスは、ディップチューブを経由してガス出口を通ってチャンバを出る。従来の使用とは反対に、キャリアガスの流れは、正確に言えば、ディップチューブを通ってチャンバを出る。かかる装置は、キャリアガスがディップチューブを通ってチャンバに入るのではなく、チャンバから出るため、「逆流」であると記載されることがある。本出願人らは、驚くべきことに、固体前駆体化合物上に配置された充填材の層の使用を伴うこの逆流の方法は、気相における一定の濃度の前駆体化合物を提供し、デリバリーデバイスから前駆体化合物の90%以上を消耗すことができることを見出した。
【0009】
固体前駆体化合物と充填材とを含む前駆体組成物を含むデリバリーデバイスであって、充填材は安定化剤を含んでいるデリバリーデバイスが提供される。一態様においては、固体前駆体化合物は、有機金属化合物である。
【0010】
本発明によりさらに、a)上記のデリバリーデバイスを提供し、b)ガス入口を通してデリバリーデバイス中へキャリアガスを導入し、c)キャリアガスを、充填材および固体前駆体化合物を通して流し、キャリアガスを前駆体化合物で実質的に飽和させ、d)前駆体化合物飽和キャリアガスを、ディップチューブを経由してガス出口を通してデリバリーデバイスから出し、e)前駆体化合物飽和キャリアガスを、基体を含む反応容器に送り、f)前駆体化合物飽和キャリアガスを、前駆体化合物を分解して基体上に膜を形成するのに十分な条件に付すことを含む、膜を堆積する方法が提供される。
【0011】
本明細書全体を通して用いられている場合、以下の省略形は、特に他に明記しない限り、以下の意味を有する:℃=摂氏温度;sccm=立方センチメートル毎分;cm=センチメートル;mm=ミリメートル;μm=ミクロン=マイクロメートル;g=グラム;kPa=キロパスカル;PTFE=ポリテトラフルオロエチレン;HDPE=高密度ポリエチレン;TMI=トリメチルインジウム。
【0012】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味し、「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードを意味する。同様に、「ハロゲン化」とは、フッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化を意味する。「アルキル」には、直鎖、分枝、環状アルキルが含まれる。本明細書で用いられ場合、「前駆体化合物」の用語は、基体上で膜が成長する際に使用される成分の気相濃度を提供する、任意の固体化合物を意味する。全ての数値範囲は、境界値を含み、かかる数値範囲が合計で最大100%までに制限されていることが明らかな場合を除いて、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0013】
本発明の蒸気発生器またはデリバリーデバイスは、既知の設計によって示される不充分且つ不安定な送達速度を解消するように、並びに固体前駆体化合物が全面的に均一に消耗されないことを解消するように設計されている。多種多様のデリバリーデバイスが、本発明から利益を享受し得る。デリバリーデバイスは、前駆体組成物を含有するチャンバと、ガス入口と、ガス出口と、注入口と、ディップチューブ(ディップチューブはガス出口に接続され、且つガス出口と流体連通している)とを含むシリンダを含み、前駆体組成物は、固体前駆体化合物と、固体前駆体化合物の上に配置された充填材の層とを含んでいる。ディップチューブは任意に多孔質フリット(porous frit)を含有してもよく、多孔質フリットは、ガス出口の近位に位置するディップチューブの端部で、またはガス出口から遠位に位置するディップチューブの端部で、またはディップチューブの長さに沿ったいずれの場所に位置してもよい。
【0014】
一態様において、好適なデリバリーデバイスは、細長の円筒形部分を有するデリバリーデバイスであり、円筒形部分は、チャンバーを規定する、円筒部分の長さ全体に亘って断面がほぼ一定の内面、先端の閉鎖部分および底部の閉鎖部分を有し、かつ注入栓、ガス入口、およびガス出口を有しており、注入栓、ガス入口およびガス出口はそれぞれ、チャンバーと、並びにガス出口に接続され流体連通するディップチューブと流体連通している。
【0015】
これらのデリバリーデバイス(またはシリンダ)は、デリバリーデバイス内に収容された前駆体化合物に対して不活性で且つ使用中の温度および圧力条件に耐えることができる物質であれば、任意の好適な物質で構成されることができ、例えば、これらに限定されないが、ガラスやPTFE、金属などで構成され得る。典型的には、シリンダは金属で構成される。例示的な金属としては、これらに限定されないが、ニッケル合金やステンレス鋼が挙げられる。好適なステンレス鋼としては、これらに限定されないが、304、304L、316、316L、321、347および430が挙げられる。例示的なニッケル合金としては、これらに限定されないが、インコネル、モネルおよびハステロイが挙げられる。当業者には、このようなシリンダを製造する際に物質の混合物が用いられ得ることは理解される。
【0016】
デリバリーデバイス(シリンダ)の断面寸法は、広範囲に亘って変化し得る。しかし、断面寸法は、通常、特定用途のシリンダ性能にとって重要である。それ以外ではシリンダの寸法は重要ではなく、とりわけ、キャリアガス流と、使用される固体前駆体化合物と、使用される特定の化学蒸着システムとに依存する。断面寸法は、熱伝達に影響を与え、所与の圧力および流量における、シリンダ内のガスの線速度を決定し、言い換えれば、固体前駆体化合物とキャリアガスとの間の接触時間、それ故にキャリアガスの飽和度を制御する。典型的には、シリンダは、5cm(2インチ)〜15cm(6インチ)、より典型的には、5cm、7.5cm(3インチ)または10cm(4インチ)の断面寸法(直径)を有する。個々のシリンダに対する他の寸法は、当業者の能力範囲内で十分に対応可能である。好適なシリンダは、ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー.(マサチューセッツ州マールボロ)から販売されている。
【0017】
固体前駆体化合物は、チャンバ内に含有されている。かかる固体前駆体化合物は、前駆体化合物蒸気の発生源である。蒸気送達システムで用いられるのに好適な任意の固体前駆体化合物を本発明で使用することができる。好適な前駆体化合物としては、これらに限定されないが、インジウム化合物、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物およびガリウム化合物が挙げられる。例示的な前駆体化合物としては、これらに限定されないが、トリメチルインジウムやトリターシャリーブチルインジウムなどのトリアルキルインジウム化合物;トリアルキルインジウムアミン付加物;ジメチルクロロインジウムなどのジアルキルハロインジウム化合物;メチルジクロロインジウムなどのアルキルジハロインジウム化合物;シクロペンタジエニルインジウム;トリメチルインジウムトリメチルアルシン付加物などのトリアルキルインジウムトリアルキルアルシン付加物;トリメチルインジウムトリメチルホスフィン付加物などのトリアルキルインジウムトリアルキルホスフィン付加物;ヨウ化亜鉛エチルなどのアルキル亜鉛ハライド;シクロペンタジエニル亜鉛;エチルシクロペンタジエニル亜鉛;アランアミン付加物;メチルジクロロアルミニウムなどのアルキルジハロアルミニウム化合物;メチルジクロロガリウムなどのアルキルジハロガリウム化合物;ジメチルクロロガリウムやジメチルブロモガリウムなどのジアルキルハロガリウム化合物;ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(「CpMg」);四臭化炭素;ハフニウム、ジルコニウム、タンタルおよびチタンのβ−ジケトン酸塩などの金属β−ジケトン酸塩;テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウムなどの金属ジアルキルアミド化合物;ビス(ビス(トリメチルシリル)アミノ)ゲルマニウムなどのケイ素化合物とゲルマニウム化合物が挙げられる。上記の前駆体化合物で、「アルキル」の用語は、(C−C)アルキルを意味する。前駆体化合物の混合物を、本発明のデリバリーデバイスに用いてもよい。
【0018】
固体前駆体化合物は、任意にフリットされてもよい。本明細書で用いられる場合、「フリットする(フリッティング)」は、固体前駆体化合物の溶融を指す。シリンダ内の固体前駆体化合物のフリットによって、従来の技術と比較して、気相における前駆体化合物のより一定で安定した濃度が可能となり、且つシリンダから固体前駆体化合物をより良好に消耗することが見出された。「固体前駆体化合物のフリット」とは、固体前駆体化合物の溶融ケーク(fused cake)が実質的に平らな上面を有し、且つキャリアガスが該ケークを通過することができる十分な多孔性を有することを意味する。一般的に、固体前駆体化合物のフリットが最初に形成される場合、フリットはシリンダの内側寸法と合致し、すなわちフリットは、インレットチャンバの内側寸法とほぼ等しい幅を有する。フリットの高さは、使用される固体前駆体化合物の量に依存する。
【0019】
典型的には、本質的に平らな表面を有する固体前駆体化合物のフリットを提供する条件に固体前駆体化合物を付すことによって、フリッティングが達成される。典型的には、最初に固体前駆体化合物をシリンダ(例えばチャンバ)に加え、シリンダを攪拌して実質的に平らな表面を有する固体前駆体化合物を提供し、次に、固体前駆体化合物をフリットして、固体前駆体化合物のフリットを形成する。このようなフリッティング工程は、場合によっては加熱して実行してもよく、好ましくは、加熱を伴って実行される。別の態様では、攪拌工程は加熱と共に実行されてもよい。前駆体化合物の平らな上面を得るために、攪拌は、任意の好適な手段によって、例えば、これらに限定されないが、タッピング、振動、回転、周期的振動(oscillating)、揺動、攪拌、加圧、電歪変換器もしくは磁気歪変換器による振動、またはシリンダを振ることによって実行され得る。これらの攪拌方法は組み合わせて用いられてもよい。
【0020】
加熱工程は、固体前駆体化合物の分解温度を下回る温度で実行される。加熱工程は典型的に、最大で、固体前駆体化合物の分解温度より下5℃までの温度で実行され、より典型的には、最大で、固体前駆体化合物の分解温度より下10℃までの温度で実行される。例えば、TMIは、35〜50℃の温度でフリットされ得る。このような制御された加熱は、水浴、油浴、温風、加熱マントルなどを用いて行われ得る。フリッティング工程は、固体前駆体化合物をフリットに溶融するのに十分な期間実行される。フリッティング工程が用いられる時間は、いくつかある要因の中でも特に、使用される個々の固体前駆体化合物、固体前駆体化合物の量、使用される個々の温度に依存する。あるいは、フリッティング工程は、減圧下で実行されてもよい。
【0021】
個々の前駆体化合物フリットの多孔性は、いくつかある要因の中でも特に、使用されるフリッティング温度、使用される個々の前駆体化合物、および前駆体化合物の開始粒子サイズに依存する。典型的には、同じ固体前駆体化合物のより大きい粒子から形成されたフリットと比較して、固体前駆体化合物の粒子が小さいほど、孔が小さいフリットが生成される。本明細書で用いられる場合、「孔」とは、溶融された固体前駆体化合物の粒子間の空間を意味する。
【0022】
固体前駆体化合物の所望の粒径は、これらに限定されないが、結晶化、研削、ふるい分けなどの様々な方法によって得られえうる。固体前駆体化合物は、溶媒に溶解し、並びに冷却、非溶媒の添加、またはこの両方によって結晶化されて、所望の粒子を生成してもよい。研削は、乳鉢と乳棒を用いて手動で、または粉砕機を用いるなど機械によって実行してもよい。固体前駆体化合物の粒子は、実質的に均一な粒子サイズを有する固体前駆体化合物を得るために、ふるいにかけられてもよい。前駆体化合物を所望の粒径で得るために、これらの方法を組み合わせて採用してもよい。別の態様では、粒子サイズが異なる粒子を有した固体前駆体化合物を用いることもできる。このような種々の粒子サイズを用いることによって、様々な孔サイズを有する固体前駆体化合物のフリットを得ることができる。
【0023】
さらなる態様においては、固体前駆体化合物のフリットは、多孔率の勾配、すなわち孔サイズの勾配を含んでいてもよい。このような孔サイズの勾配は、様々なサイズを有する固体前駆体化合物の粒子の勾配をフリットすることによって得られる。このような勾配は、増加したサイズ(または減少したサイズ)の粒子をシリンダに順次加え、シリンダを揺り動かして、平らな表面を有する固体前駆体化合物を得て、固体前駆体化合物を溶解することによって形成され得る。
【0024】
さらに別の態様では、固体前駆体化合物のフリットは、異なる孔サイズの領域を含んでいてもよい。例えば、フリットは、孔サイズが相対的に大きい領域(例えば5μm)や孔サイズが相対的に小さい領域(例えば2μm)を含んでもよい。各領域が1以上あってもよい。各領域が1より多くある場合、このような領域は交互に並んでいてもよい。これに加えて、孔サイズがさらに異なった1つまたは複数の他の領域があってもよい。
【0025】
固体前駆体化合物のフリットの孔サイズは、特定の多孔性形成補助剤(例えば、有機溶媒または他の除去可能な薬剤)のうちの1つまたは複数を用いて制御することもできる。前駆体化合物と反応しない任意の有機溶媒が使用され得る。典型的な有機溶媒としては、これらに限定されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アミン、エステル、アミド、アルコールが挙がられる。かかる有機溶媒は、固体前駆体化合物を溶解する必要はないが、溶解してもよい。一態様においては、前駆体化合物および溶媒のスラリーがシリンダに加えられる。スラリーの実質的に平らな表面が形成される。その後、溶媒は除去され、固体前駆体化合物がフリットされる。溶媒はフリッティング工程の前、最中または後に除去されてもよいことは当業者には理解される。
【0026】
広範囲の充填材(フィラー)が、使用条件下でそれらが固体前駆体化合物およびシリンダに対して不活性であることを条件に、本発明で用いられ得る。典型的に、充填材は流動性である。例えば、前駆体化合物がシリンダから消耗されると、シリンダ内の前駆体化合物の高さが下がり、前駆体化合物層の表面におけるどのような窪みも埋めるように充填材が流れる必要がある。好適な充填材として、これらに限定されないが、セラミック、ガラス、粘土、グラファイトおよび有機高分子が挙げられる。例示的な充填材としては、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ホウケイ酸塩、アルミナシリケート、バッキーボール(Bucky Ball)などのグラファイトボールが挙げられる。種々の充填材を混合して用いてもよい。一態様においては、充填材は、ニッケルなどの元素金属または、ステンレス鋼などの金属合金ではない。充填材には、前駆体化合物層、並びに非金属元素と組み合わせた金属を含有する他物質が包含される。別の態様では、充填材として用いられる有機金属化合物は、前駆体化合物層と同じであってもよい。例えば、粉末の固体前駆体化合物が圧縮されてペレットを形成してもよい。ペレット状の前駆体化合物は、(ペレット状にされていない)同じ前駆体化合物層の上に充填材として用いられてもよい。
【0027】
別の態様では、安定化剤などの追加の利点を提供する充填材が、固体前駆体化合物とシリンダに対して使用条件下で不活性であるならば、本発明で採用されてもよい。例示的な安定化剤としては、これらに限定されないが、脱酸素剤(ゲッタ(getter))、熱安定化剤、抗酸化剤、帯電防止剤、フリーラジカル補足剤および標識(マーキング)剤が挙げられる。好適なゲッタ物質としては、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アルミニウム、インジウム、ガリウム、マンガン、コバルト、銅、バリウム、カルシウム、ランタン、トリウム、マグネシウム、クロム、ジルコニウムなどの酸素反応金属の化合物を含有した化合物や配合物が挙げられる。一態様においては、安定化剤は、有機アルミニウムと混合されたテトラオルガニルアンモニウム化合物などの非極性で不揮発性のイオン性塩;アルミニウム、インジウムおよびガリウムの塩;オルガノリチウム;マグネシウム、ジルコニウムおよびランタンのメタロセン;アルミニウム、インジウム、ガリウム、バリウム、ストロンチウムおよび銅のジピバロイルメタナト(「dpm」)化合物、並びにアルミニウム、インジウム、ガリウム、バリウム、ストロンチウムおよび銅のヘキサフルオロアセチルアセトナト(「hfac」)化合物を包含する金属β−ジケトン酸塩;の種類の一員である。充填材は、任意に、安定化剤を含有してもよく、または充填材自体が安定化剤であってもよい。
【0028】
充填材は、任意の多種多様な形状であってもよく、例えばこれらに限定されないが、ビーズ状、ロッド状、管状、馬蹄形、リング状、サドル状、ディスク状、受皿状または任意の他の好適な形状、例えば針形状、十字形およびらせん形(コイルおよびらせん状)などであってもよい。充填材は、一般に、様々な入手源から商業的に入手することができる。充填材は、そのままで用いることもできるが、一般には、例えば溶媒洗浄および乾燥によって、使用前に洗浄される。
【0029】
様々なサイズ(例えば直径)、例えば0.05mm以上、例えば最大5mmまで、あるいはそれ以上のサイズを有した充填材が用いら得る。充填材に好適な範囲のサイズは、0.1〜5mmである。充填材は、均一なサイズであってもよく、または複数のサイズが混合されていてもよい。一態様においては、充填材のサイズは、前駆体化合物の粒子サイズとほぼ同じになるように、すなわち充填材の平均サイズが前駆体化合物の平均粒子サイズの25%内にあるように選択される。典型的には充填材の平均サイズは、前駆体化合物の粒子サイズの20%以内、より典型的には15%以内、さらに典型的には10%以内にある。
【0030】
前駆体組成物は典型的に、固体前駆体化合物の層(またはベッド)を、デリバリーデバイスのチャンバに導入し、次いで充填材の層を固体前駆体化合物の表面上に堆積することによって調製される。固体前駆体物質は、昇華および機械的手段を含む任意の好適な手段によって、デリバリーデバイスに添加されてもよい。同様に、充填材は、任意の好適な手段によって固体前駆体化合物上に層状にされてもよい。固体前駆体化合物がフリットされるとき、充填材は、フリッティング工程の前、最中、または後に添加することができる。別の態様では、前駆体組成物は、固体前駆体化合物と充填材の両方をデリバリーデバイスに導入し、次いで、デリバリーデバイスを、固体前駆体化合物の最下層と充填材の上部層(または「最上層」)を生成する条件に付すことによって、調製される。「最上層」とは、キャリアガスが最初に通過しなければならない物質層を意味する。
【0031】
充填材に対する固体前駆体化合物の容積比は、広範囲(例えば10:1から1:10など)に亘って変化することができる。典型的には、体積比は、1:4から4:1の範囲内である。
【0032】
任意の好適なキャリアガスを、それが前駆体化合物と反応しない限り、本発明のシリンダで用いることができる。キャリアガスの個々の選択は、多様な要因、例えば、数ある中でも特に、使用される前駆体化合物や採用される個々の化学蒸着システムに依存する。好適なキャリアガスとして、これらに限定されないが、水素、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。キャリアガスは、本発明のシリンダにおいて、様々な流量で用いることができる。かかる流量は、シリンダの断面寸法および圧力の関数である。断面寸法が大きければ大きいほど、所与圧力で、大きいキャリアガス流れ(すなわち線速度)が可能になる。例えば、シリンダが5cmの断面寸法を有する場合、最大500sccm以上のキャリアガスの流量を使用できる。シリンダに入る、シリンダから出る、またはシリンダに出入りするキャリアガスの流れは、制御手段によって調節することができる。任意の従来の制御手段、例えば手動で作動する制御弁またはコンピュータ作動制御弁などが用いられ得る。
【0033】
デリバリーデバイスは、様々な温度で用いられ得る。個々の温度は、使用される個々の前駆体化合物や所望の用途に依存する。温度は、前駆体化合物の蒸気圧を制御し、この蒸気圧が、特定の成長率または合金組成に必要な物質の流束を制御する。かかる温度選択は、当業者の能力範囲内で十分に対応可能である。例えば、前駆体化合物がトリメチルインジウムである場合、シリンダの温度は10〜60℃であり得る。他の好適な温度範囲には、35〜55℃および35〜50℃が含まれる。本発明のシリンダは様々な加熱手段によって、例えば、シリンダを恒温槽内に置くことによって、またはシリンダを加熱した油浴に直接浸漬することによって、またはシリンダを取り囲む金属管(例えば銅管など)を通るハロカーボンオイルの流れを用いることによって、加熱され得る。
【0034】
キャリアガスは、典型的にはシリンダの上部、例えばシリンダ側面の上部またはシリンダの上部閉鎖部内にあるガス流入口を通ってシリンダチャンバに入る。キャリアガスは、充填材の層を通過し、その後、固体前駆体化合物の層を通過し、蒸発した前駆体化合物を捕獲して、キャリアガスと混合された蒸発した前駆体化合物を含むガス流を形成する。キャリアガスによって捕獲された蒸発化合物の量は制御することができる。キャリアガスは蒸発した前駆体化合物で飽和することが好ましい。蒸気飽和キャリアガスは、ディップチューブを経由してガス出口に導かれる。その後、蒸発飽和キャリアガスはガス出口を通ってチャンバから出て、化学蒸着システムに導かれる。本発明のデリバリーデバイスは、任意の好適な化学蒸着システムと共に用いることができる。
【0035】
固体前駆体化合物がシリンダから消耗された後、充填材がシリンダ内に残る。かかる充填材は、リサイクルされ、再利用されてもよい。充填材に、脱酸素剤などの安定化剤が含まれる場合、かかる充填材はそれが適切な場合には再利用する前に再生され、リサイクルされてもよい。一般的に、全ての充填材は再利用前に洗浄される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図面を参照すると、同一の参照符号は、同様の構成要素を表している。図1は、ガス出口に接続されたディップチューブと、TMIなどの固体前駆体化合物とを有し、且つチャンバ内に含有され、固体前駆体化合物上に配置された充填材の層を有する本発明のデリバリーデバイスを示した断面図である。この態様では、デリバリーデバイスは、チャンバ12を規定する、全長に亘ってほぼ一定の断面を有した細長い円筒形容器10と、上部閉鎖部15と、底部閉鎖部16とから構成されている。上部閉鎖部15は、注入口18と、ガス入口19と、ガス出口20と、ガス出口20に接続され、出口20と連通しているディップチューブ21とを有する。ガス入口管19を通って容器に入るキャリアガス流は、第1制御弁によって調節される。ガス出口20を通って容器から出るキャリアガス流は、第2制御弁によって調節される。TMIなどの固体前駆体化合物27と、固体前駆体化合物27上に配置された、シリカ、ホウケイ酸ガラスまたはアルミナなどの充填材層26とを含んだ前駆体組成物が、チャンバ12内に位置される。固体前駆体化合物27は任意にフリットされてもよい。
【0037】
キャリアガスは、ガス入口19を通って、固体前駆体化合物/充填材組成物を含んだチャンバ12内に至り容器に入る。キャリアガスは、充填材層26を通過し、その後、固体前駆体化合物27を通過し、蒸発した前駆体化合物を捕獲して、ガス流を生成する。ガス流は、ディップチューブ21を通ってチャンバ12を出て、その後ガス出口20を通り、次いで、化学蒸着システムに導かれる。
【0038】
図2は、ガス出口に接続されたディップチューブを有し、且つディップチューブの下端に配置された多孔質フリットと、チャンバ内に収容され、前駆体化合物上に配置された充填材層を有する固体前駆体化合物とを有する、本発明のデリバリーデバイスを示した断面図である。この態様では、同一の参照符号は、図1と同一の構成要素を表している。ディップチューブ21は、ガス出口20から遠位に位置したディップチューブの端部に位置する多孔質要素22を含む。あるいは、多孔質要素22は、ガス出口20の近位に位置するディップチューブ21の端部に配置されてもよく、または多孔質要素22は、ディップチューブ21の長さに沿ったどの場所に位置してもよい。多孔質要素22の代替配置は図示されていない。多孔質要素は、典型的には、調節された多孔率を有するフリットである。様々な多孔率を有する多孔質要素が、本発明において用いられ得る。詳細な多孔率は、当業者の能力範囲内で、様々な要因に依存して適切に変化する。典型的には、多孔質要素は、1〜100μmの、より典型的には1〜10μmの孔サイズを有する。しかし、100μmを超える孔を有する多孔質要素が、一定の用途に好適であり得る。同様に、1μm未満の孔を有する多孔質要素は、一定の用途に好適であり得る。使用条件下で、用いられる有機金属化合物に対して不活性で、所望の多孔率が調節可能であることを条件に、任意の物質が多孔質要素を構成するのに用いられ得る。多孔質要素を形成するのに好適な物質としては、これらに限定されないが、ガラス、PTFE、および金属、例えばステンレス鋼やニッケル合金などが挙げられる。上記ステンレス鋼およびニッケル合金のいずれも好適に用いられ得る。典型的に、多孔質要素は焼結金属であり、より典型的には、ステンレス鋼である。
【0039】
図2を参照すると、キャリアガスは、ガス入口19を通って、固体前駆体化合物/充填材組成物を収容したチャンバ12に至り容器に入る。キャリアガスは、充填材層26を通過し、その後、固体前駆体化合物27を通過し、蒸発した前駆体化合物を捕獲して、ガス流を形成する。ガス流は、多孔質要素22とディップチューブ21を通過し、その後ガス出口20を通りチャンバ12を出て、次いで、化学蒸着システムに導かれる。
【0040】
別の態様では、図1または図2の充填材26に、脱酸素剤などの安定化剤が含まれている。充填材に安定化剤が含まれる場合、充填材層は、キャリアガスが固体前駆体化合物と接触する前にキャリアガスを乾燥および/または浄化(例えば酸素除去)してもよい。安定化剤含有充填材が、固体前駆体化合物と混合されると、さらなる利益が得られ得る。例えば、固体前駆体化合物と酸素除去充填材とを混合することによって、蒸気/ガス流と充填材との間の接触が高められ、それによって、充填材が、前駆体化合物から酸素を除去する能力を増す。
【0041】
したがって、本発明は、前駆体化合物で飽和したキャリアガスで構成される流体ガス流を化学蒸着システムに提供する方法であって、a)上記デリバリーデバイスを提供する工程、b)ガス入口を通ってキャリアガスをデリバリーデバイスに導入する工程、c)充填材と固体前駆体化合物を通してキャリアガスを流して、キャリアガスを前駆体化合物で実質的に飽和させる工程、およびd)該化合物飽和キャリアガスがガス出口を通ってデリバリーデバイスから出る工程を含む方法を提供する。典型的には、キャリアガスは、十分な流量で、充填材と前駆体化合物とを通過し、それによって、キャリアガスは、CVD反応装置内の膜成長に用いられるのに十分な量の気相中の前駆体化合物(すなわち実質的に飽和)を含む。
【0042】
別の態様においては、本発明は、前駆体化合物で飽和したキャリアガスで構成される流体ガス流を化学蒸着システムに供給する方法であって、a)上記のデリバリーデバイスを提供する工程、b)ガス入口を通ってキャリアガスをインレットチャンバに導入する工程、c)充填材層を通してキャリアガスを流し、固体前駆体化合物と接触させて、キャリアガスを前駆体化合物で実質的に飽和させる工程、d)前駆体化合物飽和キャリアガスがディップチューブを経由してガス出口を通ってチャンバから出る工程を含む方法を提供する。
【0043】
化学蒸着システムは堆積チャンバを含み、堆積チャンバは、典型的には、少なくとも1つ、可能であれば複数の基体がその中に配置された加熱容器である。堆積チャンバは出口を備え、出口は、典型的にチャンバから副生成物を取り出し、適切な減圧を与えるために、吸引ポンプに接続されている。MOCVDが、大気圧または減圧で行われ得る。堆積チャンバは、蒸発した前駆体化合物の分解を引き起こすのに十分高い温度で維持される。典型的な堆積チャンバの温度は、300℃から1000℃であり、効率的な堆積を実現するために最適化された正確な温度が選択さる。基体が高温度で維持される場合、または高周波(RF)エネルギーなど他のエネルギーがRF源によって生成される場合、任意に、堆積チャンバ内の温度は全体に下げることができる。
【0044】
電子デバイスを製造する場合の例示的な堆積用基体は、ケイ素、ガリウム砒素およびインジウム燐であり得る。他の物質をはじめとする基体も好適に使用することができる。かかる基体は、特に、集積回路を製造する際に有用である。
【0045】
堆積は、所望の特性を有する金属膜を生成するのを望む限り続けられる。典型的には、膜厚は、堆積が停止されたときに、数百から数千オングストローム以上になる。
【0046】
また、本発明は、a)上記のデリバリーデバイスを提供する工程、b)ガス入口を通ってキャリアガスをデリバリーデバイス中に導入する工程、c)充填材と固体前駆体化合物を通ってキャリアガスを流して、キャリアガスを前駆体化合物で実質的に飽和させる工程、d)前駆体化合物飽和キャリアガスがディップチューブを経由してガス出口を通ってデリバリーデバイスから出る工程、e)前駆体化合物飽和キャリアガスを、基体を含有する反応容器に送る工程、およびf)前駆体化合物飽和キャリアガスを、前駆体化合物を分解するのに十分な条件に付して、基体上に膜を形成する工程を含む、膜を堆積する方法も提供する。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、a)容器を提供する工程であって、容器が、チャンバを規定する、細長い円筒形状部分、上部閉鎖部分、および底部閉鎖部分を有する容器であって;上部閉鎖部分は、注入口とガス入口とガス出口とを有し;ディップチューブが、チャンバ内に位置して、ガス出口に接続され、ガス出口と流体連通しており;注入口およびガス入口はチャンバと連通し;および、前駆体組成物がチャンバ内に含有され、前駆体組成物は固体前駆体化合物と、固体前駆体化合物上に配置された充填材層とを含む、工程;b)ガス入口を通してキャリアガスをチャンバに導入する工程;c)充填材層を通してキャリアガスを流し、固体前駆体化合物と接触させて、キャリアガスを前駆体化合物で実質的に飽和させる工程、d)前駆体化合物飽和キャリアガスがディップチューブを経由してガス出口を通ってチャンバから出る工程、e)前駆体化合物飽和キャリアガスを、基体を含有する反応容器に送る工程、およびf)前駆体化合物飽和キャリアガスを、前駆体化合物を分解するのに十分な条件に付して、基体上に膜を形成する工程;を含む、膜を堆積する方法を提供する。
【0048】
本発明は、様々なシステム圧力、温度および流量で用いられ得る。本発明のデリバリーデバイスは、充填された固体前駆体化合物/充填材の層状化組成物を通って流れる均一なキャリアガスを、一貫した最大飽和で提供するというさらなる利点を有している。本発明のさらなる利点は、充填材の最下層が回避される点である。充填材の「最下層」とは、シリンダチャンバの底と、固体有機前駆体化合物のベッドとの間に配置された充填材の層を意味する。
【0049】
以下の実施例は、本発明のさらなる各種の態様を示すと期待される。
【実施例】
【0050】
実施例1
TMI(100g)が、ガス入口、ガス出口、注入口およびガス出口に接続されたディップチューブを備えている5cm(2インチ)の通常のシリンダ(ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー.から販売されている)に添加される。シリンダに添加する前に、TMIは細粉に粉砕される。室温においてシリンダの硬い表面を軽く叩くことによってシリンダーを揺り動かし、ほぼ平らな表面を有するTMIのベッドを提供する。新たに洗浄された乾燥石英充填剤(直径0.3mm、145g)が、TMI上の最上層として配置される。
【0051】
質量流制御装置、圧力制御器、EPISON(商標)超音波モジュール、恒温槽、吸引ポンプ並びに結合された弁および配管からなる試験装置を用いて、流れの安定性と飽和蒸気流とを測定する。シリンダをシステム内に取り付ける。恒温槽は30℃に維持され、システムの圧力は80kPa(600mmHg)に維持され、水素キャリアガス流は400sccmに維持される。評価過程では、流量および圧力の両方は、一定に維持されるべきである。水素中でTMI蒸気の安定した濃度は、超音波監視器で測定すると、130時間以上にわたると予測される。130時間を経て、気相中のTMI濃度は低下すると予測される。130時間後に90%より多くの量のTMIが消耗されることが予測される。
【0052】
実施例2
TMIが充填材を加える前にフリットされる点を除いて、実施例1の手順が繰り返される。シリンダを恒温槽内で一晩中(およそ12時間)、30℃で放置することによって、TMIがフリットされる。
【0053】
実施例3
CpMgを用いる点を除いて、実施例1の手順が繰り返される。CpMgは、最初に、3〜4mmのほぼ均一な大きさに粉砕される。CpMgの粉末を精密なふるいにかけることによって、一定の粒径が保証される。#5のふるいを通過するが、#7のふるいに残る物質がシリンダに移される。実施例1と同様の条件を用いて、同様の結果が得られることが予測される。
【0054】
実施例4
四臭化炭素を固体前駆体化合物として用いる点を除き、実施例3の手順が繰り返される。25℃において、シリンダから90〜95%の量の四臭化炭素が消耗されるまで、気相における四臭化炭素の安定した濃度が予測される。
【0055】
実施例5
恒温槽が17℃に維持され、システムの圧力が40kPa(300mmHg)に維持され、水素キャリアガス流が1000sccmに維持される点を除き、実施例1の手順が繰り返される。超音波監視器で測定すると、水素キャリアガス中の安定した濃度のTMI蒸気が維持されると予測される。90%以上の量のTMIが消耗されることが予測される。
【0056】
実施例5〜26
以下の固体前駆体化合物(「PC」)と充填材(「PM」)とを用いる点を除き、実施例1の手順が繰り返される。固体有機金属化合物がフリットされるかどうかが、以下の表に示されている。なお、「Y」は「された」であり、「N」は「されていない」である。
【0057】
【表1】

【0058】
表中の組成物は、充填材を使用していないシステムと比べて、前駆体化合物を長期間、一定の安定した気相濃度で提供することが予測される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ガス出口に接続されたディップチューブと、TMIなどの固体前駆体化合物とを有し、並びにチャンバ内に収容され、固体前駆体化合物上に配置された充填材の層を有する、本発明のデリバリーデバイスの断面図である。
【図2】ガス出口に接続されたディップチューブを有し、ディップチューブの下端部に配置された多孔質フリットを有し、且つチャンバ内に収容され、固体前駆体化合物上に配置された充填材の層を有する固体前駆体化合物を有する、本発明のデリバリーデバイスの断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 円筒形容器
12 チャンバ
15 上部閉鎖部
16 底部閉鎖部
18 注入口
19 ガス入口
20 ガス出口
21 ディップチューブ
22 多孔質要素
26 充填材層
27 固体前駆体化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体組成物を含むチャンバ;ガス入口;ガス出口;注入口;およびガス出口に接続されたディップチューブ;を含むシリンダを含む、固体前駆体化合物のための気相デリバリーデバイスであって、前駆体組成物が、固体前駆体化合物と、固体前駆体化合物の上に配置された充填材の層とを含む、気相デリバリーデバイス。
【請求項2】
固体前駆体化合物が、トリアルキルインジウム化合物;トリアルキルインジウム−アミン付加物;ジアルキルハロインジウム化合物;アルキルジハロインジウム化合物;シクロペンタジエニルインジウム;トリアルキルインジウム−トリアルキルアルシン付加物;トリアルキルインジウム−トリアルキル−ホスフィン付加物;アルキル亜鉛ハライド;シクロペンタジエニル亜鉛;エチルシクロペンタジエニル亜鉛;アルキルジハロアルミニウム化合物;アラン−アミン付加物;アルキルジハロガリウム化合物;ジアルキルハロガリウム化合物;ビスシクロペンタジエニルマグネシウム;ケイ素化合物;ゲルマニウム化合物;四臭化炭素;金属ジアルキルアミド;および金属β−ジケトン酸塩から選択される、請求項1記載の気相デリバリーデバイス。
【請求項3】
充填材が、セラミック、ガラス、粘土、グラファイトおよび有機高分子から選択される、請求項1記載の気相デリバリーデバイス。
【請求項4】
ディップチューブが、多孔質要素をさらに含んでいる、請求項1記載の気相デリバリーデバイス。
【請求項5】
固体前駆体化合物がフリットされている、請求項1記載の気相デリバリーデバイス。
【請求項6】
充填材が安定化剤を含んでいる、請求項1記載の気相デリバリーデバイス。
【請求項7】
膜を堆積する方法であって:a)請求項1の気相デリバリーデバイスを提供する工程;b)ガス入口を通してデリバリーデバイス中にキャリアガスを導入する工程;c)キャリアガスを充填材と固体前駆体化合物とを通して流して、キャリアガスを前駆体化合物で実質的に飽和させる工程;d)前駆体化合物飽和キャリアガスが、ディップチューブを経由してガス出口を通ってデリバリーデバイスから出る工程;e)前駆体化合物飽和キャリアガスを、基体を含有する反応容器に送る工程;およびf)前駆体化合物飽和キャリアガスを、前駆体化合物を分解して基体上に膜を形成するのに十分な条件に付す工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−314878(P2007−314878A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−133907(P2007−133907)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】