説明

デルモピノールとその誘導体の製造方法

デルモピノール(3−(4−プロピルヘプチル)−4−モルホリンエタノール)またはデルモピノール誘導体、もしくはその薬学的に許容可能な塩、もしくは水和物を含む溶媒和物の製造方法であって、オキサゾリジン[2、3−c]モルホリンとグリニャール試薬とを反応させることを含み、かつ必要に応じ、前記デルモピノール(もしくはデルモピノール誘導体)の遊離塩基を薬学的に許容可能な塩に変換することをさらに含む該方法。前記オキサゾリジン[2、3−c]モルホリンおよび前記グリニャール試薬は、前記製造方法において中間体として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デルモピノールまたはデルモピノール誘導体の製造方法、および該製造方法において有効な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
デルモピノールは、3−(4−プロピルヘプチル)−4−モルホリンエタノール(CAS No 79874−76−3)の国際一般名称(INN)である。デルモピノール塩酸塩(CAS No 98092−92−3)は、歯肉炎の治療に使用されることを目的としている。デルモピノール塩酸塩の構造は、下記化学式に示すとおりである。
【化10】

【0003】
デルモピノールおよびデルモピノール塩類の種々の製造方法については、当技術分野において周知である。欧州公開公報第038785号には、当該化合物を製造するためのいくつかの製造方法が記載されている。欧州公開公報第038785号には、3位置換モルホリンのアルキル化、置換ビス(ハロエチル)エーテルもしくは置換ジエチレングルコール二硫酸塩を用いた1級アミンのジアルキル化、ジケトモルホリンの還元、またはモルホロンのN−置換基のヒドロキシエチル基への変換による、デルモピノールの調製が開示されている。欧州公開公報第0426826号には、モルホリン−イソ−オキサゾリジンを得るためのモルホリン酸化物からの付加環化、還元的開環、およびそれに続く側鎖中の官能基の変換と、デルモピノールを取得するための最終的な窒素のアルキル化とからなる、デルモピノールの製造方法が記載されている。
【0004】
前記の周知のデルモピノール製造方法では、長い時間がかかるうえ、きわめて毒性の強い試薬を使用しなくてはならないため、その産業的開発が困難かつ費用が嵩む。そのため、デルモピノールを製造するための新規な方法の提供が、強く望まれている。
【特許文献1】欧州公開公報第038785号
【特許文献2】欧州公開公報第0426826号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オキサゾリジン[2、3−c]モルホリン化合物とグリニャール化合物との反応によって起こる短時間の収束的合成により、デルモピノールおよびデルモピノール誘導体を得ることが可能であるという驚くべき知見に基づいてなされたものである。
【0006】
本発明の第一の態様によれば、下記化学式(I)で表される化合物、薬学的に許容可能なその塩、または水和物を含むその溶媒和物の製造工程は、下記化学式(II)で表される化合物と下記化学式(III)で表されるグリニャール化合物とを反応させる工程を含み、かつ必要に応じ、得られた化学式(I)で表される化合物の遊離塩基を薬学的に許容可能な塩へ変換する工程をさらに含む。
【化11】

【化12】

式(I)中、R1は、アルキル部位もしくはアリール部位であり、式(III)中、Xは、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲンであり、R1は、アルキル部位もしくはアリール部位である。
【0007】
本発明の発明者らは、高い収率と純度で製造を進めることができる、市販のジエタノールアミンを出発材料とした、新規のオキサゾリジン[2、3−c]モルホリン(II)の効率的な製造方法も見いだした。したがって、本発明の第二の態様は、既知の4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン−3−オンを得るジエタノールアミンと(C1−C4)−アルキルハロアセテートとの反応、それに次ぐ、オキサゾリジン[2、3−c]モルホリンを得るための還元反応からなる、オキサゾリジン[2、3−c]モルホリンの製造方法を提供する。これらの二つの工程をワンポット反応において組み合わせて、4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン−3−オンの単離を回避することもできる。
【0008】
【化13】

本発明の第三の態様によれば、特定のグリニャール化合物(IIIA)の製造は、1−ハロ−4−プロピルヘプタンをマグネシウムで処理することによって行われる。
【0009】
本発明の第四の態様によれば、化合物(II)および化合物(IIA)が提供される。これらの化合物は、下記化学式(IA)で表される化合物を生産するための中間体として有用である。
【化14】

【0010】
本発明の第五の態様によれば、化合物(II)及び化合物(III)は、化学式(I)で表される化合物の製造に使用される。
【0011】
本発明の方法は、デルモピノール、デルモピノール誘導体類および/またはその薬学的に許容可能な塩類を工業規模で製造するための簡便かつ効率的な代替法である。該方法は、短時間の収束的合成であること、有毒試薬や可燃性試薬の使用を回避していること、穏やかな反応条件を用いること、および高い収率と高い純度でデルモピノールを取得できることなどの点で、有利な方法である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、下記化学式(I)で表される化合物が製造される。
【化15】

化学式(I)で表される化合物において、R1はアルキル部位もしくはアリール部位である。このアルキル部位もしくはアリール部位は、直鎖または分岐鎖のいずれでもよく、さらに置換されていても(すなわち、炭素骨格に炭素以外の原子を含んでいても)よい。本明細書で使用される、「アルキル」と「アリール」という用語は、本技術分野における通常の該用語の意味で解釈される。前記アルキル基部位もしくはアリール部位は、好ましくは1〜30個の炭素原子を有し、より好ましくは、たとえば6、7、8、9もしくは10個の炭素原子など、2〜20個の炭素原子を有する。化学式(I)で表される化合物類は、R1基が、1−プロピル基、ベンジル基、1−オクチル基、1−ヘプチル基、1−(2−エチル)ヘキシル基もしくは1−(2−プロピル)ヘキシル基となるよう調製されている。これらの化合物類の調製については、実施例6〜11に記載されている。
【0013】
化学式(I)で表される化合物は、好ましくは下記化学式(IA)で表されるデルモピノールである。デルモピノールにおいて、R1は、4−プロピルヘプチル鎖である。
【化16】

【0014】
本発明によれば、化学式(I)で表される化合物は、オキサゾリジン[2、3−c]モルホリン(II)と、グリニャール化合物(III)との反応により得られる。式(I)中、XはCl、BrおよびIから選択されるハロゲンであり、R1は、上記に定義されたアルキル部位もしくはアリール部位であり、もっとも好ましくは4−プロピルヘプチル鎖である。化学式(III)で表される好ましい化合物は、下記化学式(IIIA)で表されるような、R1が4−プロピルヘプチル鎖である化合物である。
【化17】

【0015】
もっとも好ましくは、化学式(III)で表される化合物は、4−プロピルヘプチルマグネシウムブロミドである。本明細書で使用される「グリニャール化合物」という用語は、本技術分野における通常の該用語の意味、すなわち有機マグネシウム化合物を表す。
【0016】
誤解を避けるため、化学式(I)で表される化合物は、化学式(II)で表される化合物と、化学式(III)で表されるグリニャール化合物との反応により調製される。この一般的反応の好ましい実施形態は、化学式(II)で表される化合物と化学式(IIIA)で表される好ましいグリニャール化合物とを反応させることによる、化学式(IIIA)で表されるデルモピノールの製造工程を含む。
【0017】
グリニャール化合物(IIIA)の精製ならびに、それに続くオキサゾリジン(II)との反応は、エーテル類(C4−C12)、該エーテル類と(C5−C8)脂肪族炭化水素、もしくは該エーテル類と(C6−C8)芳香族炭化水素との混合液などの好適な溶媒中で行われる。好ましくは、該溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、および、下記混合液からなる群から選択される:テトラヒドロフラン−トルエン、テトラヒドロフラン−キシレン、メチルテトラヒドロフラン−トルエン、メチルテトラヒドロフラン−キシレン、ジブチルエーテル−キシレン、ジブチルエーテル−トルエン。
【0018】
本発明の方法により得られる、化学式(I)で表される化合物、たとえばデルモピノールは、薬学的に許容可能な塩、好ましくは塩酸塩に、また、デルモピノール塩類は、デルモピノールに、本技術分野において記載されている既知の方法でそれぞれ変換されてもよい。一例として、デルモピノール塩酸塩は、任意の好適な溶媒中での塩酸との反応により、デルモピノールから調製できる。好適な溶媒の例としては、たとえば、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、エチルアセテート、および、それらの混合液などが挙げられる。
【0019】
化学式(II)で表される化合物は、2段階反応もしくはワンポット反応で実施可能な、手順Iにまとめられている工程によって得られる。本明細書で使用される「ワンポット反応」という用語は、本技術分野における通常の該用語の意味、すなわち、化合物(V)および化合物(VI)の少なくとも一部が化合物(IV)に、続いて化合物(II)に、中間体を単離することなく変換され、単一の反応容器内で化合物(II)が製造されるものとして解釈すべきである。
【0020】
ワンポット反応に対する代替法は、2段階反応であり、第一段階において化学式(IV)で表される化合物が生産され、第二段階において化合物(IV)の化合物(II)への変換が別途に行われる。
【0021】
手順1:
【化18】

【0022】
化学式(VI)中、Xは、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲンであり、R1は、(C1−C4)−アルキルラジカルである。好ましくは、化学式(VI)で表される化合物は、クロロ酢酸メチルである。
【0023】
ジエタノールアミン(V)と、化学式(VI)で表されるハロアセテートとの反応は、好適な塩基と好適な溶媒との存在下で実施することが好ましい。好適な塩基の例としては、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシドおよびナトリウムtert−ブトキシドが挙げられる。カリウムtert−ブトキシドを用いたときに、最適な結果が得られる。好適な溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、キシレン、トルエンもしくはジブチルエーテルである。
【0024】
ジエタノールアミン(V)とハロアセテート(VI)との反応は、室温と、使用される溶媒の環流温度との間の温度で行うことができる。好ましくは、該反応は、低温におけるジエタノールアミンアルコキシドの不溶性によって未精製混合液が高粘度になるのを避けるため、高温(すなわち、溶媒の環流温度よりやや低い温度、たとえば、環流温度の50%以上、好ましくは環流温度の60%、70%、80%もしくは90%の温度)で行われる。化合物(IV)は、油分として反応溶剤から高い収率で単離され、次の段階において精製処理を行わずに使用できる。必要に応じて、化合物(IV)は、蒸留により精製され得る。
【0025】
3−モルホリノン(IV)も、文献(Australian Journal of Chemistry、 1996、 Vol.49、 pp.1235−1242)に記載されている工程で調製することができる。ただし、この工程は、過剰なアシル化試薬を使用し、不安定な中間体を経由し、収率は低い。
【0026】
オキサゾリジン(II)を得るための3−モルホリノン(IV)の還元は、還元剤を使用して行われる。還元剤の例としては、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Vitride)、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムおよび水素化ビスエトキシアルミニウムナトリウムなどがあげられる。好ましい還元剤は、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムである。還元反応は、トルエンもしくはキシレンなどの(C6−C8)芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルおよびジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類(C4−C12)から選択された溶媒中で行われる。
【0027】
化学式IIで表される化合物を製造する工程がワンポット反応で行われる場合には、還元剤を添加する前に、ジエタノールアミンと化学式(VI)で表される化合物との反応時に生じるアルコール類を蒸留することが好ましい。
【0028】
化学式(III)で表される化合物は、ハロゲン化アルキルもしくはハロゲン化アリールをマグネシウムと反応させることによって製造可能である。ハロゲン化物は、末端もしくは2位に位置していることが好ましい。好ましい実施形態では、手順IIに示されているように、化学式(IIIA)で表される化合物は、XがCl、BrおよびIから選択されたハロゲンである化学式(II)で表される化合物をマグネシウムで処理することによって先に調製される。グリニャール化合物の形成には、エーテル類(C4−C12)、該エーテルと(C5−C8)脂肪族炭化水素との混合液、もしくは該エーテルと(C6−C8)芳香族炭化水素との混合液のような、グリニャール反応に好適な溶媒を使用することができる。化学式(III)で表されるグリニャール化合物は単離されず、溶液中で使用される。前記グリニャール化合物の形成は、マグネシウムの消失、および、茶色味がかった溶液の色により容易に検知できる。
手順II
【化19】

【0029】
化学式(VII)で表される化合物は、化学式(VIII)で表される対応するヒドロキシ化合物から、ハロゲン化反応によって調製される。
【化20】

【0030】
好ましくは、化学式(VII)で表される化合物において、Xは臭素であり、化合物(VIII)を臭化水素酸溶液により臭素化反応させて得られることが好ましい。化学式(VIII)で表される化合物は、本明細書にその内容が援用される、Justus Liebigs Annalen Chemie、1966、vol.693、p.90に記載されている方法によって調製することができる。
【0031】
本明細書の説明および請求項を通じて、「含む」という用語および、「含んでいる」などの前記用語の変形語は、他の技術的特徴、添加剤、成分もしくは工程を除外することを意図していない。本発明のさらなる目的、利点および特徴は、本明細書の記載の検討によって当業者に明白となり、また本発明の実施により習得されるであろう。
【0032】
以下の実施例は、例として取り上げたにすぎず、本発明を制限することを意図してはいない。
【実施例】
【0033】
実施例1:4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン−3−オン(IV)の製造
【化21】

1440mlのトルエンに、カリウムtert−ブトキシド(176g、1.1当量)を添加した。前記懸濁液を75℃まで加熱し、白色の固形物が完全に溶解するまで、30分間保持した。該温度で、ジエタノールアミン(150g、1当量)をゆっくりと添加した。濃い黄白色の懸濁液を、30分間、激しく撹拌したまま維持し、クロロ酢酸メチル(163g、1.05当量)をゆっくりと添加した。該溶液を、同じ温度で2時間保った。温かい該混合液に、メタノール(600ml)を添加し、室温で冷却し、塩類を濾過し、有機層を濃縮して乾燥させた。化合物(IV)は、オレンジ色の油分(204g、98%)として得られ、高真空下で蒸留して、高純度の無色の油分(80%、bp5 180℃)を得た。IR(フィルム)(n cm−1):3410、2934、2874、1633、1501、1350、1141。MS(EI)、(m/z、%):145(M+.、12)、114(M−CH2OH、100)、86(M−NC2H4OH、65)、74(M−71、7)、56(M−89、41)、42(M−103、44)。
【0034】
実施例2:オキサゾリジン[2、3−c]モルホリン(II)の製造
【化22】

トルエン(1450ml)中に3−モルホリノン(IV)(207g、1当量)を含有する溶液に、Vitride溶液(412g、2当量、トルエン中70%)を、室温でゆっくりと添加した。該温度で15分間、反応を維持した。混合液を室温に保ちながら、50%の水酸化ナトリウム水溶液(360g、3.15当量)をゆっくりと添加した。該混合液を50〜60℃に温め、同じ温度において、トルエン(924ml)を用いて水層を分離、抽出した。両有機層をともに濃縮して、乾燥させた。オキサゾリジン(II)(154.5g、84%)は、茶色味がかった油分として得られ、該油分を蒸留して高純度の無色の油分(65g、bp2 80℃)を得た。IR(フィルム)、(n cm−1):2865、1676、1457、1297、1113、1046。MS(EI)、(m/z、%):129(M+.、50)、99(M−CH2O、100)、98(M−CH3O、90)、84(M−C2H5O、10)、71(M−C3H6O、51)、56(M−73、37)、42(M−87、47)、41(M−88、65)。
【0035】
実施例3:ジエタノールアミンを出発材料とした、ワンポット反応でのオキサゾリジン[2、3−c]モルホリン(II)の製造
カリウムtert−ブトキシド(176g、1.1当量)を1440mlのトルエンに添加した。この懸濁液を75℃まで加熱し、白色の固形物が完全に溶解するまで、30分間保持した。この温度で、ジエタノールアミン(150g、1当量)をゆっくりと添加した。濃い黄白色の懸濁液を、30分間、激しく撹拌したまま保持し、クロロ酢酸メチル(163g、1.05当量)をゆっくりと添加した。この溶液を、2時間、同じ温度で保持した。反応混合液を30℃で冷却し、ビトリド溶液(412g、2当量、トルエン中70%)を室温でゆっくりと添加した。この温度で、30分間、反応を維持した。該混合液を室温に保ちながら、50%の水酸化ナトリウム水溶液(360g、3.15当量)をゆっくりと添加した。該混合液を50℃まで温め、同じ温度において、トルエン(924ml)を用いて水層を分離、抽出した。両有機層をともに濃縮し、乾燥させた。オキサゾリジン(147g、80%)を、茶色味がかった油分として得た。
【0036】
実施例4:4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(4−プロピルヘプチル)モルホリン(IA)の生産
【化23】

24mlのトルエンおよび18mlのテトラヒドロフラン中に1.3gのマグネシウム(1当量)を含有する懸濁液に、少量のヨウ素の結晶を添加した。この混合液を64℃で加熱し、反応における発熱を制御しながら、12gの1−ブロモ−4−プロピルヘプタン(VII)(1当量)をゆっくりと添加した。該混合液を、2時間、同じ温度に保ち、室温で冷却したのち、化合物(III)の溶液を得た。7mlのトルエン中にオキサゾリジン(II)7g(1当量)を含有する溶液を、事前に調製しておいたグリニャール化合物(III)に室温で30分間後に添加した。50mlのトルエンと50mlの塩化アンモニウム飽和水溶液とを添加し、生成された混合液を40℃で撹拌して塩類を完全に溶解させて、二相混合液を取得した。有機層を40℃で分離した。水層は、40℃で、50mlのトルエンを用いて抽出した。有機層をともに濃縮して、乾燥させ、8.8gの4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(4−プロピルヘプチル)モルホリンを、オレンジ色の油分として取得した。IR(フィルム)、(n cm−1):3446、2951、2925、2859、1628、1458、1128、1048。MS(EI)、(m/z、%):271(M+.、1)、270(M−H、1)、240(M−CH2OH、46)、130(M−141、100)、100(M−171、29)。
【0037】
実施例5:4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(4−プロピルヘプチル)モルホリン塩酸塩の製造
【化24】

22mlのメチルイソブチルケトン中に7.4gの未精製4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(4−プロピルヘプチル)モルホリンを含有する溶液に、室温で濃塩酸(2.7g、1当量)を添加した。該溶液を60℃で濃縮して乾燥させた。油分を、21mlのメチルイソブチルケトン中に再度溶解し、該溶液に種結晶導入し(seeded)、0℃で2時間撹拌した。白色の固形物を濾過し、20mlの冷メチルイソブチルケトンで洗浄し、乾燥させて5.9gの4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(4−プロピルヘプチル)モルホリン塩酸塩(デルモピノール塩酸塩)を得た。1H−NMR(CDCl3、400MHz)、(d ppm):0.88(6H、m、H15)、1.2−1.4(13H、m)、1.8−2.0(2H、m)、2.8−3.4(5H、m)、3.4−4.4(6H、m)。13C−NMR(CDCl3、400MHz)、(d ppm):14.26(C15)、19.47、19.52(C14)、22.87(C10)、27.11(C9)、33.25(C11)、35.54、35.62(C13)、36.59(C12)、49.25(C5)、53.20(C7)、55.93(C3)、57.08、59.89(C8)、63.1、63.2、65.0(C6)、67.7(C2)。
【0038】
実施例6:4−(2−ヒドロキシエチル)−3−プロピルモルホリン(IB)の合成
【化25】

43gのオキサゾリジン(II)を、215mlのTHFに溶解させた。室温で、THF(172g、1当量)中にn−プロピルマグネシウムクロライドを20%含有する溶液をゆっくりと添加した。該混合液を、15分間撹拌した。混合液を真空圧下で濃縮して乾燥させ、100mlのトルエンと64gの塩化アンモニウム飽和水溶液を添加し、得られた混合液を、塩類が完全に溶解するまで室温で撹拌し、二相混合液を得た。有機層を分離し、水層は、室温で、265mlのトルエンを用いて抽出した。有機層をともに濃縮して乾燥させ、オレンジ色の油様の4−(2−ヒドロキシエチル)−3−プロピルモルホリン33.4gを得、さらにシリカゲル中でカラムクロマトグラフィーを行ってCH2Cl2/MeOH/NH3(99/1/1)混合液で溶出して精製し、無色の油分として上記の生成物を得た。1H−NMR(CDCl3、300MHz)、(d ppm):0.92(3H、t、J=7.2Hz、H11)、1.36(4H、m、H9/H10)、2.36(3H、m、H3/H7)、2.82(1H、ddd、J1=12.3、J2=4.9、J3=3.0Hz、H5)、2.94(1H、ddd、J1=12.3、J2=7.8、J3=4.8Hz、H5)、3.44(1H、dd、J1=11.2、J2=6.9Hz、H2)、3.88(1H、dd、J1=11.2、J2=4.9Hz、H2)、3.62(1H、dd、J1=4.8、J2=7.8Hz、H6)、3.67(1H、dd、J1=7.8、J2=4.9Hz、H6)、3.75(2H、m、H8)。13C−NMR(CDCl3、75MHz)、(d ppm):14.3(C11)、19.3(C10)、29.2(C9)、49.9(C5)、54.6(C7)、57.7(C8)、59.5(C3)、66.9(C6)、70.4(C2)。IR(フィルム)、(n cm−1):3444、2958、2863、1456、1366、1129、1052。MS(EI)、(m/z、%):173(M+.、42)、142(M−CH2OH、100)、130(M−C3H7、100)、112(M−C3H7−H2O、14)、100(M−73、48)、84(10)、71(5)、56(20)、42(14)。
【0039】
実施例7:4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(1−ヘプチル)モルホリン(IC)の合成
【化26】


182mlのTHFおよび400mlのトルエンからなる混合液中に、32.6gのマグネシウム、0.5gのヨウ素および2.4mlのジブロモエタンを含む懸濁液に、200gの1−ブロモヘプタンを65℃で添加した。該反応混合液を、同じ温度で3時間、撹拌した。対応するグリニャール化合物の形成が完了した時点で、該混合液を室温で冷却し、500mlのトルエン中に158gのオキサゾリジン(II)を含有する溶液を1時間後に添加した。該混合液を30分間撹拌してから、795mlの5%HCl水溶液に添加した。有機層を静かに注ぎ出し、濃縮して乾燥させた。化合物(IC)は、オレンジ色の油分(179g)として得られた。MS(EI)、(m/z、%):229(M+.、1)、198(M−CH2OH、25)、130(M−C7H15、100)、112(M−C7H15−H2O、4)、100(M−73、30)、86(5 56(10)、41(8)。
【0040】
実施例8:4−(2−ヒドロキシエチル)−3−ベンジルモルホリン(ID)の合成
【化27】

(IC)に関して記載した手順と同じ手順に従い、10gの塩化ベンジルおよび11gのオキサゾリジン(II)を出発材料として、7.9gの化合物(ID)を黄白色の油分として得た。MS(EI)、(m/z、%):221(M+.、1)、190(M−CH2OH、5)、130(M−C7H7、100)、91(CH2C6H5、8)。
【0041】
実施例9:4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(1−オクチル)モルホリン(IE)の合成
【化28】


41mlのTHF中に3.5gのマグネシウムと7.5gのヨウ素とを含有する懸濁液に、25gの1−ブロモオクタンを65℃でゆっくりと添加した。該反応混合液を、同じ温度で2時間撹拌した。対応するグリニャール化合物が調製された時点で、該混合液を5℃に冷却し、40mlのトルエン中に16.7gのオキサゾリジン(II)を含有する溶液を、1時間後に添加した。該混合液を、5℃で30分間撹拌し、該反応液を室温まで温めた。さらに該混合液を5%HCl水溶液に添加し、30分間撹拌した。有機層を静かに注ぎ出し、濃縮して乾燥させ、所望の化合物19gを茶色の油分として得た。MS(EI)、(m/z、%):243(M+.、5)、242(M−H、5)、212(M−CH2OH、50)、198(M−(CH2)2OH、8)、130(M−C8H17、100)、112(M−C8H17−H2O、8)、100(M−73、30)、86(8)、71(8)、56(9)、41(14)。
【0042】
実施例10:4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(1−(2−エチルヘキシル))モルホリン(IF)の合成
【化29】

(IE)に関して記載した手順と同じ手順に従い、25.5gの1−ブロモ−2−臭化エチルヘキサンおよび16.2gのオキサゾリジン(II)を出発材料として、19.8gの化合物(IF)を暗いオレンジ色の油分として得た。MS(EI)、(m/z、%):243(M+.、1)、214(M−C2H5、6)、212(M−CH2OH、11)、186(M−C4H9、4)、156(8)、130(M−C8H17、100)、100(46)。
【0043】
実施例11:4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(1−(2−プロピルペンチル))モルホリン(IG)の合成
【化30】

(IE)に関して記載した手順と同じ手順に従い、5.8gの1−ブロモ−2−プロピルペンタンおよび4gのオキサゾリジン(II)を出発材料として、3.3gの化合物(IF)を暗い黄色の油分として得た。MS(EI)、(m/z、%):243(M+.、1)、212(M−CH2OH、8)、200(M−C3H7、6)、170(10)、130(M−C8H17、100)、100(50)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、もしくは水和物を含む溶媒和物の製造方法であって、下記化学式(II)で表される化合物と、下記化学式(III)で表されるグリニャール化合物とを反応させる工程を含み、かつ必要に応じ、得られた前記化学式(I)で表される化合物の遊離塩基を、薬学的に許容可能な塩に変換する工程をさらに含むことを特徴とする、該方法。
【化1】

【化2】

式(I)中、R1は、アルキル部位もしくはアリール部位であり、式(III)中、Xは、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲンであり、R1は、アルキル部位もしくはアリール部位である。
【請求項2】
前記化学式(III)のXが臭素であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学式(III)が、下記化学式(IIIA)であることを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の方法。
【化3】

【請求項4】
生産される前記化学式(I)で表される化合物が、下記化学式(IA)で表される化合物であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【化4】

【請求項5】
前記反応が、エーテル類(C4−C12)、該エーテル類と(C5−C8)脂肪族炭化水素との混合液、該エーテル類と(C6−C8)芳香族炭化水素との混合液、又はそれらの組み合わせから選択される溶媒中で行われることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記化学式(II)で表される化合物が、下記化学式(IV)で表される化合物の還元反応により得られることを特徴とする、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【化5】

【請求項7】
前記還元反応が、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビスエトキシアルミニウムナトリウムから選択される還元剤を用いて行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記還元剤が、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記還元反応が、(C6−C8)芳香族炭化水素およびエーテル(C4−C12)から選択される溶媒中で行われることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記化学式(IV)で表される化合物が、下記化学式(VI)で表される化合物と、下記化学式(V)のジエタノールアミンとの、塩基存在下での反応により得られることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【化6】

式(VI)中、Xは、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲンであり、R1は、(C1−C4)−アルキルラジカルである。
【請求項11】
前記塩基が、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシドから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記化学式(VI)で表される化合物が、クロロ酢酸メチルであることを特徴とする、請求項10または11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
単一の反応容器内で行われることを特徴とする、請求項6〜12のいずれか1項に記載の化学式(II)で表される化合物の製造方法。
【請求項14】
前記化学式(IIIA)で表されるグリニャール化合物が、下記化学式(VII)で表される化合物とマグネシウムとの反応により事前に調製されることを特徴とする、請求項3〜13のいずれか1項に記載の方法。
【化7】


式(VII)中、Xは、Cl、BrおよびIからなる群より選択されるハロゲンである。
【請求項15】
下記化学式(II)で表される化合物。
【化8】

【請求項16】
下記化学式(IIIA)で表される化合物。
【化9】


式(IIIA)中、Xは、Cl、BrおよびIから選択されるハロゲンである。
【請求項17】
前記Xが、臭素であることを特徴とする、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
デルモピノールの製造における、請求項15〜17のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−516674(P2009−516674A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540690(P2008−540690)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004293
【国際公開番号】WO2007/057681
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(508022067)シンクレア ファーマシューティカルズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】