データ処理方法、データ処理装置、マスク製造方法およびマスクパターン
【課題】異なる複数の色のインクを用い複数回の走査で画像を完成する分割記録に用いられるマスクであって、記録の途中におけるグレインの発生を抑制しビーディングによる画質劣化を軽減できるマスクを提供する。
【解決手段】斥力ポテンシャルの合計が計算される各記録許容画素の中で、例えば、記録許容画素Doが斥力ポテンシャルの合計が最も大きい場合、その移動前後の斥力ポテンシャルの変化を求め、移動前後で最も斥力ポテンシャルの合計が低くなる画素に記録許容画素Doを移動させる。このような処理を繰り返すことによって各プレーン全体の総エネルギーを下げることができ、各プレーンのマスクの重なりにおいて記録許容画素分布が、低周波数成分が少なく良好に分散された配置となる。
【解決手段】斥力ポテンシャルの合計が計算される各記録許容画素の中で、例えば、記録許容画素Doが斥力ポテンシャルの合計が最も大きい場合、その移動前後の斥力ポテンシャルの変化を求め、移動前後で最も斥力ポテンシャルの合計が低くなる画素に記録許容画素Doを移動させる。このような処理を繰り返すことによって各プレーン全体の総エネルギーを下げることができ、各プレーンのマスクの重なりにおいて記録許容画素分布が、低周波数成分が少なく良好に分散された配置となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理方法、データ処理装置、マスク製造方法およびマスクパターンに関し、詳しくは、記録画像を構成するインクドットを複数回の記録ヘッドの走査で分割して形成する際の当該ドット記録データ生成のためのマスク処理ないしマスクパターンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、いわゆるマルチパス記録方式が広く採用されている。マルチパス記録方式は、画像の任意の領域を見たときにその領域の画像を構成するインクドットを記録ヘッドの複数回の走査で分割して形成する方式である。この方式によれば、インクを吐出するノズル(ないし吐出口)ごとのインク吐出方向など吐出性能のばらつきや記録用紙の搬送誤差などに起因した濃度ムラなどを複数回の走査に分散することができる。これにより、濃度ムラが目立たない高品位の画像を記録することが可能となる。
【0003】
ところで、記録画像を構成する複数のインクドットを複数回の走査に分割して形成するためのドット記録データの生成は、一般にはマスクパターン(単に、「マスク」ともいう)を用いたマスク処理にて行う。マスクパターンは、後述する図5に示されるように、記録を許容する画素(以下、「記録許容画素」とも言う)と記録を許容しない画素(以下、「非記録許容画素」とも言う)とを配列したものである。記録許容画素は図5の黒で示される部分に相当し、非記録許容画素は白で示される部分に相当する。そして、このマスクパターンにおける記録許容画素の配置を工夫することによって、複数回のそれぞれの走査で記録するドット数を調整したり、上記濃度ムラを解消したりするなど様々な目的に応じた形態をとることができる。
【0004】
例えば、以下のような2種類のマスクパターンが画質上の問題に有効である。
【0005】
典型的なマスクパターンとして、ベイヤー型のパターンをベースにしたマスクパターンがある。しかしながら、このようなパターンは規則的であるため、画像データと干渉が起こりやすく、画質上の問題が起こる場合がある。
【0006】
そこで、特許文献2では、マスクパターンにおける記録許容画素の配置にランダム性をもたせ、このようなランダム性を有したマスクパターン(以下、ランダムマスクともいう)を用いることで画像データとの干渉が起こりにくくしている。これにより上記問題が向上する。
【0007】
一方、特許文献1では、マスクパターンにおける記録許容画素の配置を分散性に優れたものとし、このような分散性の高いマスクパターンを用いて双方向記録時のドット形成位置のずれによる画像品位の低下を抑制することが記載されている。すなわち、同文献に記載のマスクにおける記録許容画素の配置は、斥力ポテンシャルの概念を用いて良好に分散させたものである。換言すれば、このマスクパターンは、それを用いて形成されるドット同士が近接して配置されることをできるだけ避けるように生成され、これにより、記録許容画素の配置を周波数成分で見たとき低周波数成分が少ないものとなる。そして、このマスクを用いることにより、双方向記録でドット形成位置のずれが生じ、そのずれによって記録画像にマスクパターン自体の模様(テクスチャー)が仮に顕在化しても、それが良好に分散していることにより視認し難くすることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−144552号公報
【特許文献2】特開平7−052390号公報
【特許文献3】特開2002−96455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年のインクジェット記録システムでは、その高速化、高密度化、また、インクの種類の多様化に伴い、単位時間当たりに付与されるインク量や記録媒体の単位面積あたりに付与されるインクの量が増大する傾向にある。このため、これまで以上に重要な課題としてビーディング問題があげられる。ビーディングは、記録媒体で吸収しきれないインクが媒体上で接触して連なり、それが記録画像においてムラなどの原因となるものである。
【0010】
ビーディングを低減させるには、短い時間内に付与されるインクを極力異なる位置に配置することが重要である。このために、各色インク毎に、極力異なるマスクパターンを用いるのが有効である。こうすることで、異なる色のインク同士が同じ場所に打ち込まれる確率を下げることができる。
【0011】
しかしながら、マスクパターンを色毎に異ならせるだけでは、ビーディングの低減は十分ではない。
【0012】
図86(a)〜(c)はこの問題を説明する図である。同図は、マルチパス記録におけるある走査でシアン、マゼンタ、イエローの順でそれぞれのインクが記録媒体に打ち込まれて行く過程を示している。図86(a)に示すように、未だ何も打ち込まれていない記録媒体に先ずシアンインクが吐出される。このとき、それぞれのシアンインクが打ち込まれる位置は用いているマスクの記録許容画素の配置に従うことはもちろんである。そして、このインクが記録媒体に完全に吸収される前は、記録媒体上に上記マスクに従った配置でシアンインク滴10Cが存在する。次に、図86(b)に示すように、マゼンタインクが、同様に対応するマスクに従った位置に吐出され、同様に吸収前にはインク滴10Mを形成する。ここで、シアンインクとマゼンタインクについてそれぞれ用いるマスクの記録許容画素配置の関係によっては、シアンインク滴10Cとマゼンタインク滴10Mとが接して連結したインク滴10B(図中、×印を付したもの)を形成することがある。さらに、図86(c)に示すように、イエローインクが、同様に、対応するマスクに従った位置に吐出され吸収前にはインク滴10Yを形成する。この場合も、それぞれのインクについて用いるマスクの記録許容画素配置の関係によって、連結したインク滴10B(図中、×印を付したもの)を形成する。さらに走査が重ねられて、画素に対するインク滴の比率が高くとなると、同じ画素にインク滴が重ねて吐出されることもあり、同様の連結したインク滴を形成する。
【0013】
このように、順次吐出されるインク滴が隣接ないし近接する画素あるいは同じ画素に付与される場合には、互いが接触して相互の表面張力によって引き合い、2つ分あるいは3つ分の(あるいはそれ以上の)インク滴が合体した大きな滴10B(グレイン)を形成する。一度このようなグレインが形成されると、次に隣接ないし近接した位置に付与されたインク滴はそのグレインに引き寄せられ易くなる。すなわち、最初に発生したグレインが核となって徐々に成長し、やがて大きなグレインを生成する。そして、特に一様な画像領域では、このようなグレインが記録媒体に定着したものが不規則に散らばった状態で散在し、ビーディングとして視認されることとなる。
【0014】
また、マスクパターンは、一般にそのパターンを2次元方向に繰り返して用いる。このため、上述したグレインの分布は、マスクパターンの繰り返し周期の模様として人間の目に知覚されやすくなってしまう。
【0015】
これらの問題は、特許文献1、2に記載のマスクパターンでは解消できない。なぜなら、これら特許文献1,2では、異なる色のマスクパターン間で分散を考慮して設計をしていないからである。
【0016】
異なる色間でこのような関連性を持たせたマスク設計を行っていない特許文献1、2のマスクでは、異なる色同士のマスクを重ねたときの記録許容画素の配置はその分散が悪く、分割記録の途中の画像(中間画像)におけるドットの隣接やさらにはドットの重なりを避けることができない。
【0017】
本発明は、上述した問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、分割記録の途中におけるグレインが原因で生じるビーディングによる画質劣化を軽減できるデータ処理方法、データ処理装置、マスク製造方法およびマスクパターンを提供することにある。
【0018】
なお、上記グレインは、インク同士の表面張力によってのみ生じるものではない。例えば、インクとこれを凝集あるいは不溶化させる処理液など、互いに反応し合う液体が同じ走査で付与される場合、接触した各液滴は、より強固な化学反応によって結合され、これがグレインを形成する場合もある。また、同色のインクが同じ走査で付与される場合も、これらの間でグレインが発生する。従って、本発明の別の目的は、このようなグレインが原因で生じる問題点も解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための本発明は、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0020】
他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0021】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少なく、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0022】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0023】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0024】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0025】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0026】
また、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することで得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0027】
他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0028】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少なく、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0029】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0030】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、分割記録の途中におけるグレインが原因で生じるビーディングによる画質劣化を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0033】
本発明の実施形態は、マルチパス記録の各走査で用いる2値のドット記録データを生成するためのマスクの製造ないしそのマスクパターンに関するものである。本発明の具体的ないくつかの実施形態を説明する前に、マスクパターンを製造しあるいはマスクパターンを用いてドット記録データを生成するための構成について説明する。ここで、本明細書において「ドット記録データ」とは、ドットの記録を示すデータを意味する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係るホスト機器として機能するパーソナルコンピュータ(以下、単にPCとも言う)の主にハードウェアおよびソフトウェアの構成を示すブロック図である。このホスト機器は、プリンタ104で記録する画像データを生成する。
【0035】
図1において、ホストコンピュータであるPC100は、オペレーティングシステム(OS)102によって、アプリケーションソフトウェア101、プリンタドライバ103、モニタドライバ105の各ソフトウェアを動作させる。アプリケーションソフトウェア101は、ワープロ、表計算、インターネットブラウザなどに関する処理を行う。モニタドライバ105は、モニタ106に表示する画像データを作成するなどの処理を実行する。
【0036】
プリンタドライバ103は、アプリケーションソフトウェア101からOS102へ発行される各種描画命令群(イメージ描画命令、テキスト描画命令グラフィクス描画命令など)を描画処理して、最終的にプリンタ104で用いる2値の画像データを生成する。詳しくは、図2で後述される画像処理を実行することにより、プリンタ104で用いる複数のインク色それぞれの2値の画像データを生成する。
【0037】
ホストコンピュータ100は、以上のソフトウェアを動作させるための各種ハードウェアとして、CPU108、ハードディスク(HD)107、RAM109、ROM110などを備える。すなわち、CPU108は、ハードディスク107やROM110に格納されている上記のソフトウェアプログラムに従ってその処理を実行し、RAM109はその処理実行の際にワークエリアとして用いられる。
【0038】
本実施形態のプリンタ104は、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して走査し、その間にインクを吐出して記録を行ういわゆるシリアル方式のプリンタである。記録ヘッドは、C、M、Y、Kそれぞれのインクに対応して用意され、これらがキャリッジに装着されることにより、記録用紙などの記録媒体に対して走査することができる。それぞれの記録ヘッドは、吐出口の配列密度が1200dpiであり、それぞれの吐出口から3.0ピコリットルのインク滴を吐出する。また、それぞれの記録ヘッドの吐出口の数は512個である。
【0039】
プリンタ104はマルチパス記録を実行可能な記録装置である。そのために、後述の各実施形態で説明されるマスクを所定のメモリに格納しておき、記録の際は走査およびインク色ごとに定められたマスクを用いて2値の分割画像データを生成する処理を行う。
【0040】
また、マスクパターンが所定のメモリに予め格納されておらずPC100がマスク製造のためのデータ処理装置として機能するときは、後述の各実施形態でそれぞれ説明されるマスク製造処理を実行する。そして、製造したマスクデータは、プリンタ104の所定のメモリに格納される。
【0041】
図2は、図1に示した構成においてプリンタ104で記録を行う際のPC100およびプリンタ104における主なデータ処理過程を説明するブロック図である。本実施形態のインクジェットプリンタ104は、上述したようにシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクによって記録を行うものであり、そのためにこれら4色のインクを吐出する記録ヘッドJ0010を備える。
【0042】
ホストPC100のアプリケーション101を介して、ユーザはプリンタ104で記録する画像データを作成することができる。そして、記録を行うときはアプリケーション101で作成された画像データがプリンタドライバ103に渡される。
【0043】
プリンタドライバ103は、その処理として、前段処理J0002、後段処理J0003、γ補正J0004、2値化処理J0005、および印刷データ作成J0006をそれぞれ実行する。前段処理J0002では、アプリケーションによる画面を表示する表示器が持つ色域をプリンタ104の色域に変換する色域変換を行う。具体的には、R、G、B夫々が8ビットで表現された画像データR、G、Bを3次元LUTにより、プリンタの色域内の8ビットデータR、G、Bに変換する。次いで、後段処理J0003では、変換された色域を再現する色をインク色に分解する。具体的には、前段処理J0002にて得られた8ビットデータR、G、Bが表す色を再現するためのインクの組合せに対応した8ビットデータC、M、Y、Kを求める処理を行う。γ補正J0004では、色分解で得られたCMYKのデータ夫々についてγ補正を行う。具体的には、色分解で得られた8ビットデータCMYK夫々がプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。次いで、2値化処理J0005では、γ補正がなされた8ビットデータC、M、Y、Kそれぞれを1ビットデータC、M、Y、Kに変換する量子化処理を行う。最後に、印刷データ作成処理J0006では、2値化された1ビットデータC、M、K、Yを内容とする2値の画像データに印刷制御データなどを付して印刷データを作成する。ここで、2値の画像データは、ドットの記録を示すドット記録データと、ドットの非記録を示すドット非記録データを含む。なお、印刷制御データは、「記録媒体情報」、「記録品位情報」、および給紙方法等のような「その他制御情報」とから構成されている。以上のようにして生成された印刷データは、プリンタ4へ供給される。
【0044】
一方、プリンタ104は、入力されてきた印刷データに含まれる2値の画像データに対しマスクデータ変換処理J0008を行う。マスクデータ変換処理J0008では、予めプリンタの所定のメモリに格納されている、後述の各実施形態で説明されるマスクパターンを用い、入力されてきた2値の画像データに対しAND処理をかける。これにより、マルチパス記録におけるそれぞれの走査で用いられる2値の分割画像データが生成されると共に、実際にインクが吐出されるタイミングが決定される。なお、2値の分割画像データには、ドット記録データとドット非記録データが含まれる。
【0045】
図3は、インクジェットプリンタ104を示す斜視図である。キャリッジM4000は、記録ヘッドおよびこれにシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)それぞれのインクを供給するインクタンクH1900を搭載した状態で図のX方向(主走査方向)に移動し、記録ヘッドの各ノズルは、2値の分割画像データに基づき所定のタイミングでインクを吐出する。記録ヘッドの1回の主走査が終了すると、記録媒体は図のY方向(副走査方向)に所定量だけ搬送される。以上の記録主走査と副走査とを交互に繰り返すことにより、マルチパス記録による画像が順次形成されていく。
【0046】
以下では、上述の記録システムにおいて用いられあるいは製造される、マルチパス記録の画像を完成する走査(以下、パスとも言う)回数と記録許容画素の比率によって区別されるマスクパターンの製造方法およびそれによるマスクパターンのいくつかの実施形態を説明する。
【0047】
〔実施形態1:2パス記録用100%均等マスク〕
(1)本実施形態の概要
本実施形態は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インクについて2回の走査で画像を完成する2パスのマルチパス記録に関する。そして、この2パス記録に用いるインク色のそれぞれについて複数(本実施形態では2)回の走査それぞれに用いるマスク(以下では、「1プレーン」のマスクと言う)が良好に分散しているだけでなく、これらのマスクの任意の複数のプレーンを合わせたものも良好に分散したものである。
【0048】
図4は、2パス記録を説明するために、記録ヘッド、マスクパターンおよび記録媒体を模式的に示した図である。なお、この図では、図示および説明の簡略化のため、シアン、マゼンタ、イエローの3色で2パス記録を行う場合について説明する。以下で説明するマスクについても同様である。
【0049】
シアン、マゼンタ、イエローの各色ノズル群は第1グループおよび第2グループの2つのグループに分割され、各グループには256個ずつのノズルが含まれている。各グループには本実施形態のマスクパターン(C1、C2、M1、M2、Y1、Y2)が対応付けられており、各マスクパターンの副走査方向(搬送方向)の大きさは各グループのノズル個数と同じ256画素分となっている。また、走査方向の大きさも256画素分となっている。また、同色インクのノズル群に対応する2つのマスクパターン(C1とC2、あるいはM1とM2、あるいはY1とY2)は互いに補完の関係にあり、これらを重ね合わせると256×256画素に対応した領域の記録が完成される構成となっている。
【0050】
各色ノズル群はノズル配列方向と略直交する方向(図の矢印で示した「ヘッド走査方向」)へ走査しながら記録媒体にインクを吐出する。この例では、各領域に対してC,M,Yのインク吐出が行われる。また、走査が終了するたびに、記録媒体は走査方向と直交する方向(図の矢印で示した「記録媒体搬送方向」)に1つのブループの幅分(ここでは、256画素分)ずつ搬送される。これにより、記録媒体の各グループの幅に対応する大きさの領域は2回の走査によって画像が完成する。
【0051】
さらに具体的に説明すると、第1走査では記録媒体上の領域Aに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いてCMYの順番で記録が行われる。そして、この第1走査では領域Aに対してはマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0052】
次に、第2走査では、第1走査での記録が終了した領域Aに対して、Cノズル群の第2グループ、Mノズル群の第2グループ、Yノズル群の第2グループをYMCの順番で用いて残りの記録が行われるとともに、未記録状態の領域Bに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いてYMCの順番で記録が行われる。従って、第2走査では領域Aに対してマスクパターンC2、マスクパターンM2、マスクパターンY2が用いられるとともに、領域Bに対してマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。更に、このような動作を続けることで、C1M1Y1Y2M2C2の順番、あるいはY1M1C1C2M2Y2の順番で各領域について記録が行われていく。
【0053】
図5は、図4で説明した2パス記録に用いるマスクとその補完関係を概念的に説明する模式図である。図5において、P0001は、図4に示したC、M、Yのうち、1つの色の記録ヘッドを示し、ここでは、図示の簡略化のため8個のノズルを有するものとして示している。ノズルは、上述したように第1および第2の2つのグループに分割され、各ノズルグループにはそれぞれ4つのノズルが含まれる。P0002AおよびP0002Bは、この第1および第2グループのノズル列にそれぞれ対応したマスクパターンを示す。すなわち、第1走査で用いるマスクパターンP0002A(同図中、下側のパターン)と第2走査で用いるマスクパターンP0002B(同図中、上側のパターン)をである。これらがそれぞれ1プレーンのマスクとなる。それぞれのマスクパターンは、記録許容画素が黒塗りで示されており、非記録許容画素が白で示されている。第1走査用のマスクパターンP0002Aと第2走査用のマスクパターンP0002Bは互いに補完関係にあり、従って、これらを重ね合わせると記録許容画素が4×4のエリアを総て埋めるパターンとなる。なお、図に示すパターンは説明を容易にするため、以下で示す本実施形態のマスクパターンとは異なるパターンとして示している。この図では、記録許容画素の配置が千鳥、逆千鳥となっているが、このような配置のマスクパターンは本発明の範囲に含まれない。
【0054】
ここで、「記録許容画素」と「非記録許容画素」について定義する。「記録許容画素」とは、上述したように、ドットの記録(インクの吐出)を許容する画素のことである。この記録画素に対応する2値の画像データが吐出を示すデータであればドット記録が行われ、非吐出を示すデータならばドット記録は行われない。一方、「非記録許容画素」とは、2値の画像データに関わらず記録を許容しない画素のことである。従って、仮に、この非記録許容画素に対応する2値の画像データがインク吐出を示すデータであっても記録は行われない。
【0055】
P0003およびP0004は、2パス記録によって完成する画像を、それを構成するドット配置で示している。なお、この画像は、説明を容易にするため、総ての画素にドットを形成するいわゆるベタ画像であり、従って、そのドット記録データの生成に用いるマスクP0002の記録許容画素の配置がそのまま反映されたドット配置を示している。第1走査では、第1グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Aを用いて生成される。そして、記録媒体は図の矢印の方向にノズルグループの幅分ずつ搬送される。次の、第2走査では、上記搬送量分ずれた領域に対する第1グループのドット記録データは、同じくマスクパターンP0002Aを用いて生成され、上記第1グループで記録された領域に対する第2グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Aを用いて生成される。この2回の記録走査によって画像が完成する。
【0056】
図6は、C、M、Yのインクを用いて(上述したようにブラックKは説明の簡略化ため省かれている)、図4および図5で説明した2パス記録を行う場合を説明する図である。図6に示すように、マスクC1、M1、Y1、C2、M2、Y2を用い、2回の走査(図6に示す例では、往走査と復走査)でC、M、Yそれぞれのインクを吐出し、カラー画像を記録する。
【0057】
図6(a)は、往走査(図4の右方向への走査)、復走査(図4の左方向への走査)の順で記録される領域の画像が完成していく様子を示したものである。1回目の走査である往走査では、最初に、1パス目のシアン用マスク(マスクC1)を用いて生成したシアンの分割画像データのドット記録データに基づいてシアン画像を記録する。同じ走査で、マゼンタおよびイエローそれぞれのマスク(マスクM1、Y1)を用いて生成した分割画像データのドット記録データに基づき、マゼンタ画像をそれより前に記録したシアン画像に重ねて、さらに、イエロー画像をそれより前に記録したシアン、マゼンタ画像に重ねて順次記録する。記録媒体を所定量搬送した後の、2回目の走査である復走査では、同様に、順次、マスクY2、M2、C2を用いて生成したそれぞれイエロー、マゼンタおよびシアンのドット記録データに基づき、それより前に記録した画像に重ねて記録する。
【0058】
一方、図6(b)は、復走査(図4の左方向への走査)、往走査(図4の右方向への走査)の順で記録される領域の画像が完成していく様子を示したものである。1回目の走査である復走査では、最初に、1パス目のイエロー用マスク(マスクY1)を用いて生成したイエローの分割画像データのドット記録データに基づいてイエロー画像を記録する。同じ走査で、マゼンタおよびシアンそれぞれのマスク(マスクM1、C1)を用いて生成した分割画像データのドット記録データに基づき、マゼンタ画像をそれより前に記録したイエロー画像に重ねて、さらに、シアン画像をそれより前に記録したイエロー、マゼンタ画像に重ねて順次記録する。記録媒体を所定量搬送した後の、2回目の走査である往走査では、同様に、順次、マスクC2、M2、Y2を用いて生成したそれぞれシアン、マゼンタおよびイエローのドット記録データに基づき、それより前に記録した画像に重ねて記録する。
【0059】
このように、C、M、Yの3色を用い、2回の走査で画像を完成する2パス記録を行うときは、1パス目のシアン画像と1パス目のマゼンタ画像を合わせた画像、この画像にさらに1パス目のイエロー画像を重ねた画像、さらに、これら1パス目の画像に2パス目のイエロー画像を重ねた画像、といったマスクのプレーンごとの画像を重ねた中間画像が存在する。このような中間画像では、図86(a)〜(c)で説明したグレインが生じることがある。特に、記録の高速化、高密度化、また、用いるインクの種類の多様化に伴い、単位時間当たりに付与されるインク量や記録媒体の単位面積あたりに付与されるインクの量が増大する場合には、中間画像におけるこのグレインの発生は顕著となる。そして、中間画像で発生したグレインは、そのまま定着して完成した画像において不規則なまだら模様などのビーディングとして視認される。
【0060】
本実施形態では、このような中間画像におけるグレインの発生を避けるべく、それぞれのプレーンのマスクを重ねたときの記録許容画素の配置が低周波数成分が少ない特性を有するようにしている。低周波数成分が少ないため、各段階における中間画像におけるインクドットの偏りを少ない状態に保つことができる。また、重要な特性として、画像データやその他ノイズなどとの干渉を防ぐために、非周期なパターン特性をもたせる。つまり、プレーンのマスクを重ねたときの記録許容画素の配置が非周期で且つ低周波数成分が少ない特性を有するようにし、分散性の優れたものにしている。これにより、画像の完成に至る各段階の中間画像におけるドットの近接ないし隣接、また、ドットの重なりを、極力排除するようにする。また、仮に、ドットの重なりや隣接が排除しきれない場合でも、そのような重なり箇所などについても分散性の高いものとする。
【0061】
なお、「低周波数成分」とは、周波数成分(パワースペクトル)が存在する空間周波数領域のうち、半分より低周波側にある成分を指す。
【0062】
(2)マスクの製法
本発明の実施形態に係るマスクの製造方法は、大別して、複数パス分のマスクを同時に生成する方法(同時生成)と、パスごとに順次マスクを生成する方法(パスごとの生成)の2つの方法のいずれかで実施することができる。前者の同時生成方法は、(画像を完成するパス数(走査回数)−1)パス分のマスクを同時に生成し、残りの1パス分のマスクは、その記録許容画素が同時生成されたマスクの記録許容画素の配置に対して排他的になるように生成するものである。後者のパスごとの生成方法は、画像を完成する複数のパス(走査)ごとに順次マスクを生成する方法であり、最後のパス分のマスクは、前者の方法と同様に、記録許容画素がそれまでに生成されたマスクの記録許容画素の配置に対して排他的になるように生成する。なお、本実施形態の場合は、2パス記録に用いるマスクであることから、同時生成とパスごとの生成は同じものとなる。
【0063】
さらに、上記2つの生成方法それぞれについて、具体的に記録許容画素の配置を定める仕方として、マスクの総ての記録許容画素を予め所定の配置としこれらを移動させながら、生成されるマスク全体で分散性を上げて行く方法(以下、「配置移動法」)と、生成されるマスク全体で分散性を上げながら記録許容画素を1つずつ配置して行く方法(以下、「順次配置法」)とを実行することができる。
【0064】
図7は、本実施形態の2パス記録に用いるマスクの製法を概念的に示す図である。
【0065】
マスク生成のステップ1として、1パス目に用いるそれぞれのプレーンのマスクC1、M1、Y1を生成する。そして、ステップ2として、2パス目に用いるそれぞれのプレーンのマスクC2、M2、Y2を、上記1パス目のマスクC1、M1、Y1とそれぞれ補完の関係を持つように生成する。すなわち、色ごとに、2パス目のマスクは、その記録許容画素の配置は1パス目のマスクの記録許容画素の配置と排他的な関係となるように生成される。
【0066】
以上のマスクの製法において、1パス目のマスクC1、M1、Y1それぞれの記録許容画素の配置は、次のように行われる。最初に配置移動法について説明し、次に、順次配置法について説明する。なお、これらの配置方法のいずれを用いてもよいことはもちろんである。
【0067】
配置移動法
図8は、本実施形態の2パス記録に用いるマスクの記録許容画素の配置移動法による配置決定処理を示すフローチャートである。
【0068】
先ず、ステップS801で、1パス目のマスクC1、M1、Y1それぞれのプレーンのサイズに対応したC、M、Yそれぞれの50%濃度の画像を取得する。そして、ステップS802で、それぞれの画像について誤差拡散法などの2値化手法を用いて2値化を行う。これにより、マスクC1、M1、Y1それぞれのプレーンについて、1ビットのデータが“1”である記録許容画素がマスク画素全体の50%に配された初期配置を得ることができる。なお、この2値化の手法を用いて記録許容画素の初期配置を得るのは、その用いる2値化の手法に応じてある程度、初期状態で分散性のよい配置を得ることができるからであり、これにより、その後の最終的な配置決定までの演算時間ないし収束時間を短くできるからである。換言すれば、本発明を適用する上で初期配置を得る方法は本質ではなく、例えば、マスクのプレーンにおいて、1ビットのデータが“1”である記録許容画素をランダムに配置した初期配置であってもよい。
【0069】
次に、ステップS803で、上記のようにして得たマスクC1、M1、Y1それぞれのプレーンの総ての記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する。具体的には、
(i)同一プレーン内の記録許容画素間に距離に応じた斥力を与える。
(ii)さらに、異なるプレーン間の記録許容画素にも斥力を与える。
(iii)同一プレーンと異なるプレーン間に異なる斥力を与える。
(iv)異なるプレーンの記録許容画素の重なりを認め、記録許容画素の重なり(2つの記録許容画素重なり、3つの記録許容画素重なり、…)同士も組み合わせに応じた斥力を与える。
【0070】
図9は、本実施形態に係る基本斥力ポテンシャルE(r)の関数を模式的に示す図である。
【0071】
同図に示すように、本実施形態で規定する斥力関数は、その斥力が及ぶ範囲をr=16(画素;記録許容画素が配置されるマスクの画素)までとする。このような距離とともに減衰するポテンシャルを用いることにより、基本的に、記録許容画素が接近して配置されるとエネルギーが高い状態、すなわち不安定な状態となり、収束計算の結果、接近した配置はできるだけ選択されないようにすることができる。
【0072】
なお、この斥力の形状は、マスク画素全体に対する記録許容画素の割合により決定することがより望ましい。
【0073】
また、複数色のインクを用いて記録を行う場合、インクドットを配置できる位置(解像度1200場合の場合は、1インチ四方に1200×1200個の可能位置がある)以上に重ねてインクドットを配置するため、各記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する際には、記録許容画素の上に記録許容画素が重なることを考慮する。このため、r=0において有限の斥力ポテンシャルを持つように関数を定義する。これにより、記録許容画素の重なりをも考慮した分散が可能となる。
【0074】
本実施形態では、同一プレーンの記録許容画素同士に関してαE(r)、異なるプレーン間の記録許容画素同士に関してβE(r)、重なる記録許容画素同士に関してγs(n)E(r)の斥力ポテンシャルを与えて計算を行う。つまり、ある記録許容画素が存在することによるポテンシャルは、距離r以内の範囲にある、同プレーンの記録許容画素、異なるプレーンの記録許容画素、さらには異なるプレーンの重なる記録許容画素についての斥力ポテンシャルが加算される。
【0075】
なお、マスクパターンのサイズは有限であるが(本実施形態の場合、256×256画素となる)、ポテンシャル計算においては、256×256画素の同じパターンがあたかも繰り返しているような周期境界条件を用いる。よってマスクパターンの左端は右端と隣接しており、下は上と隣接していることとなる。
【0076】
上記の斥力ポテンシャルにおいて、係数α、β、γは重み付け係数であり、本実施形態では、α=3、β=1、γ=3の値を用いる。このα、β、γの値によって記録許容画素の分散性が影響を受ける。このα、β、γの値は、例えば、実際には実験を行い、マスクを用いて記録される記録画像を参照した最適化により求めることができる。
【0077】
また、係数s(n)は、重なる記録許容画素を分散させるためにγに加えてさらに積算する係数である。この係数s(n)は、重なりが多いほどそれらの記録許容画素をより分散させるべく重なりの数に応じた値とするものである。本願発明者の実験によれば、次の2つの式いずれかによって求められるs(n)を用いることにより、分散に関してよい結果を得ることができる。
【0078】
【数1】
【0079】
すなわち、nを重なりの数とするとき、組合せの数の和をs(n)とするものである。詳細には、斥力を計算する注目記録許容画素に対して重なる(同じプレーンまたは異なるプレーンにおける同じ位置の)記録許容画素を調べるとともに、注目記録許容画素から距離rに位置する記録許容画素を調べる。この場合に、注目記録許容画素およびその画素と同じ位置で重なる他のプレーンの記録許容画素と、距離rにある各プレーンのその画素で同じように重なる記録許容画素の共通する重なりの数をnとする。そして、これら2つの画素間の重なった記録許容画素同士による斥力を考える。
【0080】
この場合、例えば、ある2画素間で第1プレーン、第2プレーンおよび第3プレーンにそれぞれ共通に記録許容画素が存在する例を考えると、n=3となる。そして、それらの画素間には3つの記録許容画素の重なりに起因する斥力を作用させる。ここで、3つの記録許容画素の重なりによる斥力を考えるとき、3つの記録許容画素の重なりとともに、2つの記録許容画素の重なり同士や1つの記録許容画素同士の斥力が多重的に作用すると考える。換言すれば、第3プレーンを考えなければ、第1プレーンと第2プレーンの2つの記録許容画素の重なりと考えることができ、また、第2プレーンを考えなければ第1プレーンと第3プレーンの2つの記録許容画素の重なりとも考えられる。第1プレーンを考えなければ第2プレーンと第3プレーンの重なりと考えられる。このような記録許容画素が重なることの多重的な効果を計算するために、重なりの組合せによる斥力を定義し上記のようなs(n)を用いる。これによれば、分散性のよい記録許容画素配置を得ることができることが実験上確認されている。
【0081】
再び、図8を参照すると、ステップS803で、総ての記録許容画素の斥力ポテンシャルを合計した総エネルギーが求まっている。そして、この総エネルギーを減衰させる処理を行う。
【0082】
この処理では、総ての記録許容画素について順に、距離rが4以内の画素の中で斥力ポテンシャルが最も下がる画素に記録許容画素を移す。このような処理を繰り返していくことによって(ステップS804)、総ての記録許容画素の斥力ポテンシャルの合計値である総エネルギーを低下させて行く。すなわち、この総エネルギーが徐々に順次減少して行く過程は、記録許容画素の配置が順次分散性を高める過程、つまり記録許容画素配置の低周波数成分が順次少なくなって行く過程である。
【0083】
ステップS805では、ステップS804における総エネルギーの低下率を計算し、それが所定値以下であると判断すると、エネルギー減衰処理を終了する。なお、この所定値は、例えば、実際に印刷を行った結果をもとに、低周波数成分が適切に抑えられた画像を記録できる低下率として求めることができる。
【0084】
最後にステップS806で、上記のように総エネルギーの低下率が所定値以下となった状態の各プレーンを1パス目のマスクC1、M1、Y1として設定する。さらに、これらマスクの記録許容画素の配置に対するそれぞれ排他的位置を記録許容画素の配置とした2パス目のマスクC2、M2、Y2を設定する。
【0085】
なお、本実施形態では、ステップS805において総エネルギーの低下率が所定値以下となったか否かを判定し、低下率が所定値以下となったらステップS806へ移行するようにしている。しかし、本実施形態はこの例に限られるものではない。例えば、ステップS805において総エネルギーが所定値以下となったか否かを判定し、総エネルギーが所定値以下となったらステップS806へ移行するようにしてもよい。
【0086】
図10(a)〜(d)は、上述した斥力ポテンシャルの計算と総エネルギーの減衰処理を模式的に説明する図である。詳しくは、本実施形態に係るC1、M1、Y1の3プレーンを斜視図で示し、また、特に記録許容画素の移動を平面図で示す図である。ここで、最小の正方形はマスクの画素を示し、3プレーンの重なりにおいて重なる画素がプレーン間で同じ画素位置に対応する。
【0087】
図10(a)は、同一プレーンに記録許容画素が存在する場合にそれら記録許容画素間の斥力によってポテンシャルが加えられる(増す)ことを説明する図である。図に示す例では、プレーンC1の注目画素の記録許容画素Doと同じプレーンで距離r離れた画素に記録許容画素が1個存在する例であり、この場合、α=3が適用され、記録許容画素Doのポテンシャルとして1×αE(r)のポテンシャルが加えられる。
【0088】
図10(b)は、注目記録許容画素Doとは異なるプレーン(プレーンM1、Y1)に記録許容画素が存在する場合に、それら2個の記録許容画素との関係で加えられる斥力ポテンシャルを説明する図である。異なるプレーン間の記録許容画素との関係であるから、β=1が適用され記録許容画素Doのポテンシャルとして記録許容画素2個分の2×βE(r)のポテンシャルが加えられる。
【0089】
図10(c)は、上記の2つの場合である、同一プレーンに記録許容画素が存在する場合と異なるプレーンに記録許容画素が存在する場合に加え、異なるプレーンの同一画素に記録許容画素が存在して記録許容画素の重なりが存在する場合に、それらの記録許容画素との関係で加えられる斥力ポテンシャルを説明する図である。図10(a)および(b)の場合に加え、注目記録許容画素DoのプレーンC1と異なるプレーンY1の同じ画素に記録許容画素が存在することにより、同プレーンの斥力ポテンシャル1×αE(r)と、同じ画素の異なるプレーンの1個の記録許容画素による斥力ポテンシャル1×βE(0)と、異なるプレーンの2個の記録許容画素による斥力ポテンシャル2×βE(r)と、重なる数n=2でγ=3が適用される、重なりによる斥力ポテンシャルγs(2)×E(r)のポテンシャルが加えられる。この結果、図10(c)に示す記録許容画素配置において注目記録許容画素Doが存在することによる斥力ポテンシャルの合計は、1×βE(0)+1×αE(r)+2×βE(r)+γs(2)×E(r)となる。
【0090】
図10(d)は、図10(c)に示す記録許容画素配置において、記録許容画素Doを移動させることにより、その記録許容画素の斥力ポテンシャルの合計が変化することを説明する図である。図10(d)に示すように、記録許容画素Do(プレーンC1の記録許容画素)が同じプレーンの隣の画素に移ると、その記録許容画素Doが存在することによる斥力ポテンシャルの合計は、距離がr2、重なり同士の数nが0となることなどにより、βE(1)+1×αE(r2)+2×βE(r2)に変化する。そして、図10(c)に示す記録許容画素配置の場合の斥力ポテンシャルの合計1×βE(0)+2×αE(r)+1×βE(r)+γs(2)×E(r)と、図10(d)の記録許容画素Doが移動したことによる斥力の合計とを比較し、この移動前後の斥力ポテンシャルの合計の変化を知ることができる。
【0091】
なお、この斥力ポテンシャルの合計は、上記の説明では、2つの画素または記録許容画素移動させたときは3つの画素の記録許容画素によるエネルギーの合計を求めるものとしているが、これは説明を簡易にするためであり、実際は、これらの記録許容画素以外に存在し得る他の画素の記録許容画素を含めた記録許容画素との関係に基づく斥力ポテンシャルの積分として求められるものであることはもちろんである。
【0092】
図10(a)〜(c)に示したように斥力ポテンシャルの合計が計算される各記録許容画素の中で、例えば、記録許容画素Doが斥力ポテンシャルの合計が最も大きい場合、図10(d)で説明したようにその移動前後の斥力ポテンシャルの変化を求め、移動前後で最も斥力ポテンシャルの合計が低くなる画素に記録許容画素Doを移動させる。このような処理を繰り返すことによって3プレーン全体の総エネルギーを下げることができる。すなわち、3プレーンのマスクの重なりにおいて記録許容画素分布が、低周波数成分が少なく良好に分散された配置となる。
【0093】
そして、このように3プレーンのマスクC1、M1、Y1の重なりにおいて記録許容画素が良好に分散されることによって、これらとそれぞれ補完関係にあるマスクC2、M2、Y2もそれぞれ記録許容画素が良好に分散したものとなる。また、これら6プレーンのうち任意の数(2、3、4または5)のプレーンの重なりにおける記録許容画素の分布も、低周波数成分が少ない良好に分散されたものとなる。本実施形態の場合の往復の順で画像が記録される領域については、1パス目のマスクC1、1パス目のマスクM1、1パス目のマスクY1、2パス目のマスクY2、2パス目のマスクM2、2パス目のマスクC2の順で、それぞれのマスクパターンが重なるように用いられて記録が行われる。従って、中間画像である、「1パス目のC+1パス目のM」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY+2パス目のM」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY+2パス目のM+2パス目のC」それぞれのインクドットの分布は、低周波数成分が少なく分散性に優れたものとなる。同様に、復往の順で画像が記録される領域については、1パス目のマスクY1、1パス目のマスクM1、1パス目のマスクC1、2パス目のマスクC2、2パス目のマスクM2、2パス目のマスクY2の順で、それぞれのマスクパターンが重なるように用いられて記録が行われる。従って、中間画像である、「1パス目のY+1パス目のM」、「1パス目のY+1パス目のM+1パス目のC」、「1パス目のY+1パス目のM+1パス目のC+2パス目のC」、「1パス目のY+1パス目のM+1パス目のC+2パス目のC+2パス目のM」、「1パス目のY+1パス目のM+1パス目のC+2パス目のC+2パス目のM+2パス目のY」それぞれのインクドットの分布は、低周波数成分が少なく分散性に優れたものとなる。そして、このようなマスクを用いて生成される各パスのドット記録データによって記録されるドットも良好に分散したものとなる。すなわち、上述のとおり、マスクの記録許容画素の配置パターンはその低周波数成分が少ないことにより、そのマスクを用いて記録されるドットの配置パターンは、マスク処理される前の元の画像におけるドット配置パターンにおける偏りなどが現れないものとなる。つまり、各パスのマスクを用いて記録されるそれぞれのドットパターンも、マスクパターンと同様に低周波数成分が少なく分散性の良いものとなる。
【0094】
これにより、インクと記録媒体との相対的な関係から、仮に、中間画像の段階でインクの浸透が十分に行われなくても、インクドットが分散しているため浸透が不十分なインク同士が接触してグレインを作る確率は低いものとなり、いわゆるグレインインによるビーディングの発生を抑制することができる。また、仮に、グレインが発生しても、これらのグレインが良好に分散した分布となるので、それらグレインが記録画像の品位に及ぼす影響を少なくすることができる。
【0095】
そして、このように、結果として中間画像の段階でインク浸透が必ずしも十分に行われなくてもよいことを考慮すると、プリンタ104において、各プレーン間の記録時間差、つまり吐出時間差を短くすることが可能となる。例えば、キャリッジ速度もしくは吐出周波数を大きくでき、あるいはマルチパス記録におけるパス数を、例えばインクが十分に浸透することを考慮して4パスとしているところ、より少ない2パスにした印刷を実行することも可能となる。
【0096】
なお、上述の配置移動法は、2パスのマスクのうち1パス目に用いる3プレーンのマスクについて適用する場合に関するものであるが、この方法はこの態様に限られず、総てのプレーンに適用して記録許容画素の配置を決定してもよい。本実施形態の2パス記録に用いるマスクの場合、C、M、Yそれぞれの2パス分の6プレーンのマスクに配置移動法を適用してもよい。この場合は、記録許容画素を移動させる範囲を近傍画素に限定せずに、他のプレーンの記録許容画素との関係で配置画素を入れ替える移動を許すものとする。具体的には、例えば、あるプレーンの記録許容画素を同じプレーンの記録許容画素が配置されていない画素に移動させるとともに、その移動した画素に対応する他のプレーンの画素に配置される記録許容画素をその同じプレーンの、前者の記録許容画素があった画素に対応する画素に移動させる、といった入れ替えを行う。これにより、斥力ポテンシャルの計算に係わるプレーン総てにおける記録許容画素の配置関係が変化し、ポテンシャルエネルギーが最小となる入れ替え移動が可能となる。
【0097】
順次配置法
この方法は、上述したように、マスクのプレーンの記録許容画素が未だ配置されていない部分に順次記録許容画素を配置して行く方法である。
【0098】
図11は、本実施形態の順次配置法による記録許容画素の配置決定処理を示すフローチャートである。
【0099】
図11に示す処理は、3つのプレーンに順次1つずつ記録許容画素を配置し、それを繰り返すことにより、それぞれのプレートで50%の記録許容画素の配置を行うものである。先ず、ステップS1101で、記録許容画素を配置しようするときに、その記録許容画素とマスクC1、M1、Y1の各プレーンにおいて既に配置されている記録許容画素との間に発生する斥力ポテンシャルを計算する。
【0100】
斥力ポテンシャルの計算自体は、上述の配置移動法で説明したものと同じである。異なる点は、例えば、図10(a)〜(c)に示す例を参照して説明すると、上述の配置移動法とは異なり、記録許容画素Doが同図に示す画素が既に置いてあるのではなく、記録許容画素Doを新たに置くと仮定したときに、既に配置され同じプレーンC1や異なるプレーンM1、Y1の記録許容画素との関係基づいて斥力ポテンシャルを計算する。以上からも明らかなように、未だ記録許容画素が1つも配置されていない最初の段階では、記録許容画素をどこにおいても斥力ポテンシャルは同じ値となる。
【0101】
次に、ステップS1102で、それぞれのマスク画素に置いたとしたときに計算される斥力ポテンシャルの中で、最小のポテンシャルエネルギーとなるマスク画素を決定する。そして、ステップS1103では、その最小のエネルギーとなるマスク画素が複数あるか否かを判断する。複数ある場合には、ステップS1107で、乱数を用いてその複数の画素の中から1つのマスク画素を決定する。なお、本実施形態では、同じプレーンでは既に記録許容画素が配置されている画素には重ねて配置しないという条件の下で、最小エネルギーの画素を決定する。これは、重み付け係数や斥力ポテンシャル関数などのパラメータによっては、斥力ポテンシャルの計算において同じプレーンで重ねた場合の方が他のプレーンの記録許容画素との関係などでエネルギーが最小となることがあり、その場合に、マスクは1つのマスク画素に1つの記録許容画素のみが許されるので重なりを禁ずるようにするためである。
【0102】
ステップS1104では、決定した最小ポテンシャルエネルギーのマスク画素に記録許容画素を配置する。すなわち、その画素のマスクデータを“1”とする。
【0103】
ステップS1105では、C、M、Yのプレーンについて各1つずつ記録許容画素画が配置されたか否かを判定する。配置されていない場合には、ステップS1101からの処理を繰返す。
【0104】
プレーンC1、M1、Y1とこの順で1つずつ記録許容画素を配置すると、ステップS1106で、3つのプレーンそれぞれの全マスク画素に対して50パーセントまで記録許容画素が配置されか否かを判断する。それぞれのプレーンで50%まで記録許容画素の配置がなされていないときは、ステップS1101からの処理を繰返す。そして、3つのプレーンの総てで50%の記録許容画素が配置されると、本処理を終了する。以上のようにして1パス目のマスクC1、M1、Y1を設定すると、これらと補完関係にあるマスクC2、M2、Y2を続いて設定する。
【0105】
以上説明した順次配置法によっても上述した配置移動法と同様の特性を持つマスクを得ることができる。すなわち、順次配置法による3プレーンのマスクC1、M1、Y1は、それらの重なりにおいて記録許容画素が良好に分散されたものとなる。また、それによって、それぞれ補完関係にあるマスクC2、M2、Y2もそれぞれ記録許容画素が良好に分散したものとなる。また、これら6プレーンのうち任意の数(2、3、4または5)のプレーンの重なりにおける記録許容画素の分布も、低周波数成分が少ない良好に分散したものとなる。
【0106】
なお、上述したマスク製法の他の特徴として、記録許容画素の配置が規則的に繰り返されるような周期パターンが生成されることはない、ということがある。例えば、千鳥パターンやベイヤー型の配置が繰り返されるような周期性を持ったパターンは生成されない。万が一生成されたとしても、斥力ポテンシャルのパラメータを設定し直すことで周期パターンを避ける状態に収束させることができる。このように本実施形態のマスク製法によって生成されるマスクは非周期のパターンとなる。
【0107】
また、上述したマスク製法においては、各プレーンにおいて、特にどこかの記録許容画素を使わない設定は行っていない。しかしながら敢えて、各プレーンにおいて記録許容画素として使わない画素を設定したとしても、その画素をさけながらも低周波数成分が少ない良好に分散したものを得ることができる。
【0108】
(3)マスク特性評価
マスクにおける斥力ポテンシャルの重み付け係数α、β、γs(n)の効果
先ず、以上説明した本実施形態のマスク製法によって製造されたマスクに対して、斥力ポテンシャル計算の(距離の議論はしていない、係数の影響のみ)重み付け係数α、β、γs(n)それぞれがどのように影響しているかについて具体的に説明する。上述したように係数αは同一プレーンにおける記録許容画素の分散に影響し、係数βは異なるプレーン間の記録許容画素の分散に影響し、また、γs(n)は異なるプレーンの記録許容画素が同じ位置の画素にあって重なる場合のこの重なりの分散に影響している。
【0109】
なお、本実施形態では、E(r)として同じ関数(図9)を総ての項に用いているが、異なるポテンシャル関数をそれぞれの項に用いることもできる。この場合は、それぞれの関数E(r)と対応するそれぞれの重み付け係数α、β、γ(n)の積であるαE(r)、βE(r)´、γE(r)´´の違いが、本質的に以下で説明する、分散の違いとなって影響を及ぼすことはもちろんである。
【0110】
仮に、同一のプレーン内の記録許容画素間のみに斥力ポテンシャルを定義しエネルギーを減衰させて記録許容画素分布を決める場合、すなわち、αE(r)でα=1、β=γ=0とする場合、1つのプレーンの記録許容画素分布は、それぞれプレーンにおける記録許容画素の配置の分散性がよい。これはαE(r)の効果によるものである。しかし、2つ(複数)のプレーンを重ねたものから重なる記録許容画素(論理積、論理和)、のパターンを抽出したものは、記録許容画素の配置に偏りがあり低周波数成分の多いものとなる。2つのプレーン間でたまたま重なってしまう記録許容が素が発生してしまったり、2つのプレーン間に関連がないために偏りが生じたりするためである。
【0111】
なお、[論理積]パターンとは、文字通り、図12に示すように、複数プレーン間の同じ画素位置について論理積の演算を行うことで得られるパターンである。具体的には、複数(図に示す例では、2つ)のプレーンの対応する画素位置に記録許容画素(“1”)がともに存在するとき、その位置を抽出したパターンが論理積パターンである。この論理積パターンは、異なるプレーン間で記録許容画素の重なりがある場合にその分布を示すものである。
【0112】
なお、[論理和]パターンとは、文字通り、図13に示すように、複数プレーン間の同じ画素位置について論理和の演算を行うことで得られるパターンである。具体的には、複数(図に示す例では、2つ)のプレーンのいずれかの画素位置に記録許容画素(“1”)が存在するとき、その位置を抽出したパターンが論理和パターンである。この論理和パターンは、異なるプレーンそれぞれの記録許容画素の配置を1つのプレーンで示すものである。
【0113】
次に、3プレーンの総ての記録許容画素に同じ斥力ポテンシャルを加えた場合、すなわち、αE(r)およびβE(r)において、α=β=1、γ=0の場合を仮定する。この場合は、それぞれのプレーンの記録許容画素分布は、ある大きさの低周波数成分を持ち分布に偏りがある。一方、上記の3色のプレーンを重ねたものの記録許容画素分布(論理和)は分散がよい。これはα、βが同じ値であることによって、同一プレーンの記録許容画素を分散させる効果が、他のプレーンの記録許容画素を分散させる効果と同じであるため、結果として、それぞれのプレーンでは、記録許容画素分布の分散が不十分になるからである。
【0114】
そこで、同一プレーンと異なるプレーン間で斥力ポテンシャルを変えるべく、例えば、α=3、β=1とする。これにより、他のプレーンの影響を相対的に小さくでき同一プレーン内の分散性がよくなる。さらに、2つのプレーンを重ねたものの記録許容画素分布(論理和パターン)は、低周波数成分の少ない分散の良い分布となる。このように、同一プレーン、異なるプレーンの記録許容画素の分散性の両方がよくなる。つまり、αE(r)とβE(r)の項を作用させ、かつαとβの値を異ならせることにより、同一プレーン内、異プレーン内両方の分散性が良くなる。
【0115】
次に、記録許容画素の重なりがある場合において、先ず、γs(n)E(r)の項を用いない場合を考える。低周波数成分をもたない記録許容画素分布を持った2つのプレーンを、γs(n)E(r)の項を作用させずに、重ねて得られるものの記録許容画素分布から重なり記録許容画素を抽出したもの(論理積)は、低周波数成分が多い分散の悪い分布となる。
【0116】
これに対して、γs(n)E(r)の項を加えた場合、先ず、それぞれのプレーンについて、低周波数成分をもたない記録許容画素分布が得られる。そして、これらのプレーンを重ねたものの記録許容画素分布から重なり記録許容画素を抽出したもの(論理積)の分布も、低周波数成分をもたない記録許容画素の配置となる。
【0117】
このように、γs(n)E(r)の項は、基本的に、重なる記録許容画素同士が良好に分散する効果を与えるものであるが、図10(a)〜(d)にて説明したように、この項が、重なりが多いほどポテンシャルが高くなるよう設定され、そのポテンシャルに応じて記録許容画素を1つずつ移動し、または配置してエネルギーを減らすことにより、エネルギーを減らす処理の過程で重なりの数を減らす効果を与えている。これは、同じプレーンで隣接する記録許容画素について、αE(r)が隣接する記録許容画素の数を減らす効果を与えることと同じことを意味している。このように、γs(n)E(r)の項は、単に重なる記録許容画素同士をできるだけ分散させるようにするだけでなく、その重なりの数を減らす効果をも与えている。そして、この効果によって、隣接や重なりによる記録許容画素の塊における記録許容画素の数はできるだけ少なくし、結果として低周波数成分の少ない記録許容画素分布を得ることができる。
【0118】
以上の観点から、本実施形態では、上述したようにα=3、β=1、γ=3の値を用いる。
【0119】
なお、例えば、α、β<<γとして、複数のプレーンの重なりにおいて抽出される重なる記録許容画素に特に注目し、上記γs(n)E(r)の項の効果によって、重なる記録許容画素が、特に低周波数成分が少ない分散が良いものとすることも可能となる。
【0120】
また、本実施形態では、プレーン間の斥力はすべて、βE(r)としているが、相互作用の大きさなどを考えて各プレーン間で相互作用を異ならせることは有効である。例えば、プレーン数が多い場合になるべく近い時間に打ち込まれるインクに用いるマスクのプレーン間の斥力ポテンシャルを他の斥力ポテンシャルに対して大きくする、つまりβE(r)の係数やE(r)の形をプレーン間で変えることも有効である。また、例えば、反応系を用いた定着において、反応液またはそのような成分を有したインクを記録ヘッドによって吐出する場合に、その反応液等に用いるマスクのプレーンとその反応液等と反応作用が大きいインクに用いるマスクのプレーンの斥力ポテンシャルを通常より多くすることも有効である。斥力ポテンシャルの関数を変える具体例として、斥力が及ぶ範囲の距離rを変える例を挙げることができる。例えば、処理にかかる画像データの階調値が50%階調のとき、上記のようにr=16とし、階調値が50%より大きくまたは小さくなるほどrを大きくするようにすることができる。
【0121】
なお、本明細書では、記録許容画素ないしその重なりが均一に分散するほど、「より良好な分散」もしくは「分散がより良いこと」を意味する。そして、「均一な分散」とは、上記の斥力ポテンシャルの例で言えば総エネルギーを可能な限り低くした状態、すなわち、記録許容画素の重なりや隣接による塊があるときはそれらの重なりや隣接の数をできるだけ少なくした状態であり、さらに、このような状態で、記録許容画素を可能な限り均等に配置することである。さらに、「低周波数成分が少なくなる(小さくなる)」とは、上記のように分散が良いとき、その分布について後述されるパワースペクトルにおける、人間の視覚特性における感度の高い領域(低周波数領域)の周波数成分が、その分散が良い程度に応じて少なくなる(小さくなる)ことを意味する。
【0122】
本実施形態のマスクと従来例のマスク
図14〜図16は、上述した製法によって製造された本実施形態のマスクC1、M1、Y1(以下「積層マスク」という)それぞれの記録許容画素の配置パターンを示す図である。また、図17および図18は、従来例のマスクの同様のパターンを示す図である。詳細には、図17は、シアンインクの1パス目に用い得る特許文献1のように作成したマスク(「自プレーンのみの分散マスク」という)のパターンを示し、図18は、特許文献2に記載されたランダムマスクのパターンを示している。図14〜図18に示される各マスクパターンは、256×256の画素のエリアを有している。各パターンにおいて、白く示した画素は非記録許容画素(すなわちその画素の画像データによらずマスキングされてしまう画素)を、黒く示した画素は記録許容画素(すなわちその画素の画像データに応じてドット形成がなされることになる画素)をそれぞれ表している。
【0123】
これらの図に示すように、図18に示すランダムマスクのみが、他のマスクに比べて、視覚的なザラツキ感が高く、滑らかさに乏しい印象を受ける。これは、ランダムマスクパターンを作成する際に、特にそのプレーン内のドット配置の相関関係を考慮(係数α)することなしに、ランダムにドットの記録許容画素の配置を定めているからである。これに対し、「自プレーンのみの分散マスク」(図17)や本実施形態のマスクのパターン(図14〜図16)は、特に、係数αの効果によって同一プレーン内の分散性を考慮した記録許容画素が配置されているので、記録許容画素の分散に偏りが無く、全体的に滑らかな印象を受ける。
【0124】
図19および図20は、図14および図15に示した本実施形態の積層マスクC1、M1のそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図である。また、図21および図22は、図14、図15および図16に示した積層マスクC1、M1、Y1のそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図である。さらに、図23および図24は、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクのそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図であり、図25および図26は、同様に従来例に係るランダムマスクのそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図である。
【0125】
図19および図20に示すように、本実施形態の2つのマスクを重ねた場合の記録許容画素の配置(論理和)と、その中から記録許容画素が重なったものを抽出したものの配置(論理積)は、ともに分散がよくざらつき感のないものとなっている。これは、上述したように、2つのプレーン相互で記録許容画素の分散を考慮(係数β)するとともに、重なり自体の分散を考慮(係数γs(n))しているからである。
【0126】
また、図21に示すように、本実施形態の3つのマスクを重ねた場合の記録許容画素の論理和パターンは全体に隙間なく記録許容画素が配置されたものとなる。すなわち、本実施形態は3つのプレーン相互で記録許容画素の分散を考慮(係数β)していることから、3つのプレーン相互の記録許容画素は良好に分散し、その結果、全体に隙間なく配置されることとなる。さらに、それぞれのプレーンは2パス記録用の均等マスクであることから50%密度で記録許容画素を配置している。従って、3つのプレーンを重ねたものの密度は150%となって重なりを排除できないが、本実施形態はその重なりを、係数γs(n)によって2つの重なりまでとしている。その結果、図22に示すように、3つの重なりを抽出した論理積パターンではその重なりが存在しないものとなる。
【0127】
これに対し、特許文献1に開示される「自プレーンのみの分散マスク」について異なる色のプレーンを重ねたときの論理和パターンと論理積パターンは、それぞれ図23および図24に示すように、本実施形態のパターン(図19、図20)と較べて分散がよくないものとなっている。これは、上述したように特許文献1では、同じプレーン内の分散は考慮しているものの、プレーン相互の記録許容画素の分散(係数β)や記録許容画素の重なりの分散(係数γs(n))を考慮していないからである。従来例に係るランダムマスクの場合も、図25および図26に示すように、同様に論理和パターンおよび論理積パターンはいずれも分散が良くない。
【0128】
マスクパターンの他の評価方法として、「重ね合わせ」パターンを用いたものを定義する。この「重ね合わせ」パターンは、図27に示すように、複数(図に示す例では2つ)のプレーンのいずれかのマスク画素に記録許容画素(“1”)が存在するとき、その対応する画素に記録許容画素を示すデータ“1”が存在し、かつ記録許容画素が同じマスク画素で重なるときはその数に応じたデータが存在するパターンである。たとえば、重なりが2である場合は“2”、3である場合には“3”というようにする。そして、後述する「重ね合わせパターン」はそのデータが示す数に応じた濃度で表される。すなわち、記録許容画素の重なりが多いほど、黒濃度が濃くなるように示している。この重ね合わせパターンは、異なるプレーンそれぞれの記録許容画素の配置を1つのプレーンで示すとともに、記録許容画素の重なりの配置をその重なりの程度とともに示すことができる。
【0129】
図28および図29は、本実施形態の積層マスクをそれぞれ2つおよび3つ重ねたときの「重ね合わせ」パターンを示す図である。
【0130】
これらの図28、図29に示すパターンは、本実施形態のマスクを用いて記録を行うときのそれぞれ中間画像のインクドットのパターンに近いものを表している。従って、これらのパターンからも、中間画像におけるインクドットやそれらの重なりが良好に分散していることがわかる。
【0131】
図30および図31は、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクを2つ重ねたときの「重ね合わせ」パターンを示す図である。これらの図に示すように、従来例のマスクによる「重ね合わせ」パターンも、記録許容画素およびその重なりの分散性がよくないことがわかる。
【0132】
パワースペクトルによる評価
次に、マスクパターンの周波数特性を示すパワースペクトルによって本実施形態のマスクを評価する。以下で説明するパワースペクトルは、記録許容画素をドットの配置に置き換えたときに得られるものであり、256画素×256画素のサイズのプレーンについてパワースペクトルを求めたものである。ここで、パワースペクトルは、2次元空間周波数を1次元として扱える、「T. Mitsa and K. J. Parker, “Digital Halftoning using a Blue Noise Mask”, Proc. SPIE 1452, pp.47-56(1991)」に記載のradially averaged power spectrum である。
【0133】
図32は、本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクそれぞれについて、単独のマスクパターン(C1)の周波数特性を説明する図である。図33は、これら3種のマスクそれぞれについて、2つマスク(C1、M1)の論理和パターンの周波数特性を説明する図である。図34は、これら3種のマスクそれぞれについて、2つマスク(C1、M1)の論理積パターンの周波数特性を説明する図である。
【0134】
図32において、各曲線は、それぞれのマスクパターンの、空間周波数に対するパワースペクトルを示している。曲線aは、本実施形態の積層マスクのマスクパターン(図14)のパワースペクトルを、曲線bは、自プレーンのみの分散マスクのパターン(図17)のパワースペクトルを、また、曲線cは、ランダムマスクのパターン(図18)のパワースペクトルをそれぞれ示す。これら3つの曲線を比較すると、ランダムマスク(曲線c)は、空間周波数の全域に対し略一律なパワーを有していることがわかる。ランダムマスクは、ランダムに記録許容画素の配置を定めているために、記録許容画素が分散する間隔に特別な特徴を有していない。従って、低周波数領域から高周波数領域にかけて略一様な分布となる。一方、本実施形態の積層マスクおよび従来例に係る自プレーンのみの分散マスク(曲線aおよびb)は、低周波数の領域でのパワーが低く、パワーのピークが高周波に存在している。これは、記録許容画素同士がある程度の距離を維持しながらも、略均等に分散していることを示している。
【0135】
マスクパターンの性能評価として、マスクパターンのパワースペクトルが存在する周波数領域のうち、およそ半分より低周波数側にある「低周波数成分」に着目することが本発明の大きな特徴である。マスクパターンの低周波数成分が低く抑えられている状態で、上述したようにグレインの分布に起因するビーディングは現れにくく、また視認されにくい。結果として、記録した画像は視覚的にはざらつき感がないものとなる。また、特に、マスクパターンは、1つのパターンを記録する画像に対して2次元的に繰り返し用いる。この一定のマスクパターンを繰り返した場合は、マスクパターンの低周波数成分が多ければ多いほど、その繰り返しパターンの模様が人の目に認識されやすい。そして、その模様はビーデイングの発生および見え方に大きく影響するため、マスク周期に関連したザラツキ感が発生する。そこで、繰り返しパターンに着目して、マスクパターンの低周波数成分側を抑える設計が重要となる。つまり本発明では、視覚的にザラツキなどが気になる低周波数領域に焦点をあてて、その低周波域の成分を低く抑えるようにしている。すなわち、本発明のマスクパターンはそのような低周波数のパワーが低く抑えられていることが特徴である。
【0136】
さらに、人間の目の感度に関する周波数特性は、記録物と人の目の距離などに依存し、例えば、ドーリイ(Dooley)の文献(「R.P. Dooley:Prediction Brightness Appearance at Edges Using Linear and Non-Liner Visual Describing Functions, SPES annual Meeting (1975)」)などによってこれまで多く論じられている。様々な実験から記録物を見る場合には、およそ10cycles/mmより低い周波数領域の成分が人の目に認識しやすいと言われている。このことに関して、本発明者も実験的に確認している。そこで、10cycles/mmより低周波数側を含む領域(低周波数領域)に着目することが重要といえる。実際には記録物に目をさらに近づける場合もあるため、本発明者は、およそ20cycles/mmより低周波数側に着目し設計することが重要と考える。なお、後述する各実施形態のマスク評価(例えば、図50)で着目している低周波数領域は、おおよそこれらの範囲と重なっている。
【0137】
図33および図34に示す、マスクを重ねたときの論理和および論理積パターンのパワースペクトルでは、いずれの場合も、従来例に係るコーンマスク分散マスク(曲線b)の低周波数成分が本実施形態の積層マスク(曲線a)より多くなっている。すなわち、図23および図24に示したように、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクにおける記録許容画素の配置は、本実施形態の積層マスクに比べ、その分散が劣る。
【0138】
図35および図36は、本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクをそれぞれ2つおよび3つ重ねたときの「重ね合わせ」パターンのパワースペクトルを示す図である。それぞれの図において、曲線aは、本実施形態の積層マスクの重ね合わせパターン(図28、図29)のパワースペクトルを示し、曲線bは、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクの重ね合わせパターン(図30)のパワースペクトルを示し、曲線cは、同じく従来例に係るランダムマスクの重ね合わせパターン(図31)のパワースペクトルをそれぞれ示している。
【0139】
3つの曲線を比較すると、ランダムマスクは、上記単独マスク、論理和パターンおよび論理積パターンのパワースペクトルと同様に、空間周波数の全域に対し略一律なパワーを有している。一方、曲線bで示す自プレーンのみの分散マスクの重ね合わせパターンは、図32に示した単一の自プレーンのみの分散マスクに比べ、低周波数成分が多くなっている。また、曲線bで示す自プレーンのみの分散マスクマスクの重ね合わせパターンは、本実施形態の積層マスクの重ね合わせパターンに比べ、低周波数成分が多くなっている。すなわち、図30に示したように分散が悪くなりパターンのざらつき感が増す。
【0140】
これに対し、曲線aで示す本実施形態の積層マスクの重ね合わせパターンの低周波数成分は、図32に示した単一の積層マスクと比較しても殆ど変わっていない。これは、3つのプレーンを重ね合わせた状態においても、記録許容画素同士がある程度の距離を保ちながら、略均等に分散していることを示している。
【0141】
ずらしによる評価
本発明の実施形態に係るマスクが従来の1つのプレーンのみを考慮して得られるマスク(特許文献1に記載の自プレーンのみの分散マスク)と異なる点の1つは、異なるプレーンのマスクを正規の位置で重ねた場合と正規ではない位置で重ねた場合の分散性の変化である。本発明の実施形態に係るマスクは、異なるプレーンのマスクの重ね方を意図的にずらした場合、記録許容画素の分散性が大きく低下する。すなわち、本実施形態では、異なるプレーン間でも分散を考慮していることから、その分散を考慮するときの正規の重ね方とは異なる重ね方をすると分散性が大きく低下する。一方、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクの場合、異なるプレーン間での分散性は考慮していないため、正規の重ね方とは異なる重ね方をしても分散性に変化はない。
【0142】
このずれの評価は次のように行う。上述した製法によって作成したC1、M1、Y1を、それぞれから各色ラスター方向にずらす。このときマスク自体は周期的に並ぶためずらすことが可能である。
【0143】
図37〜図39は、マスクをずらして重ねた場合、C1、M1を重ねたときのそれぞれ論理和、論理積および「重ね合わせ」のパターンを示す図である。これらの図から明らかなように、本実施形態の積層マスクC1、M1の重ね位置をずらした重ねパターンの論理和、論理積、「重ね合わせ」のいずれも分散性が低下し、パターンを観察したときのざらつき感が増している。
【0144】
図40〜図42は、重ね位置をずらした場合と重ね位置をずらさない場合(つまり、正規の位置で重ねた場合)のパワースペクトルを比較した図であり、それぞれ本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクの論理和パターンのパワースペクトルを示す図である。
【0145】
図40に示す本実施形態の積層マスクは、ずらした場合の低周波数成分は、ずらし無しの場合に較べて比較的大きくなる。これは、上述したように、積層マスクは、異なるプレーン間でも分散を考慮していることから、その分散を考慮するときの正規の重ね方とは異なる重ね方としたときは、分散性が大きく低下するからである。
【0146】
これに対し、図41および図42に示す従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクは、ずらした場合とずらし無しの場合とでパワースペクトルの低周波数成分に殆ど変化がない。これは、これらのマスクが、もともと異なるプレーン間での記録許容画素の分散を考慮していないため、重ね位置がずれてもそれによって重ねたときのパターンにおける分散に大きな違いを生じないからである。
【0147】
図43〜図45は、図40〜図42に示す図と同様、重ね位置をずらした場合とずらさない場合のパワースペクトルの比較図である。図43〜図45は、それぞれ本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクの論理積パターンのパワースペクトルを示す図である。また、図46〜図48は、重ね位置をずらした場合とずらさない場合のパワースペクトルの比較図であり、それぞれ本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクの「重ね合わせ」パターンのパワースペクトルを示す図である。これらの図からも明らかなように、本実施形態の積層マスクは、ずらした場合の低周波数成分がずらし無しの場合に較べて大きく増す。一方、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクは、ずらした場合とずらし無しの場合とでパワースペクトルの低周波数成分に殆ど変化がない。図49に示す本実施形態の3つの積層マスクC1、M1、Y1をずらして重ねたときの「重ね合わせ」パターンのパワースペクトルでも、同様に、ずらしたときに周波数領域の全体としてパワーが増大する。
【0148】
図50〜図52は、以上のずらしによる評価を低周波数成分の量で表した図であり、それぞれ本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクに示している。ここで、低周波数成分の量は、パワースペクトルが存在する空間周波数領域のおよそ半分に相当する90以下の成分を積分したものである。
【0149】
図50に示すように、本実施形態の積層マスクの場合、ずらしたものは、マスクC1、M1のそれぞれ論理和、論理積、「重ね合わせ」のパターンおよびマスクC1、M1、Y1の「重ね合わせ」パターンのいずれにおいても、ずらしていない場合と比較して、低周波数成分の量が多くなることがわかる。
【0150】
これに対し、図51に示す自プレーンのみの分散マスクおよび図52に示すランダムマスクのいずれもずらした場合とずらしていない場合とで低周波数成分の量に変化はない。
【0151】
以上のように、マスクを重ね合わせる場合に、その重ね位置をずらしたとき分散性に係る評価値が大きく変化するか否かによって、本発明を適用したマスクか否かを判断することができる。すなわち、上述のずらしによる評価は、本発明を適用したマスクが重ね合わせにおける分散性を考慮してあることを証明するものである。
【0152】
〔実施形態2:4パス記録用100%均等マスク〕
(1)本実施形態の概要
本実施形態は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インクについて4回の走査で画像を完成する4パスのマルチパス記録に関する。そして、この4パス記録に用いるインク色のそれぞれについて複数(本実施形態では4)回の走査それぞれに用いるマスクが良好に分散しているだけでなく、これらのマスクの任意の複数のプレーンを合わせたものも良好に分散したものである。
【0153】
以下では、図示および説明の簡略化のため、シアン、マゼンタ、イエローの3色で4パス記録を行う場合について説明する。
【0154】
シアン、マゼンタ、イエローの各色ノズル群は、第1グループ〜第4グループの4つのグループに分割され、各グループには128個ずつのノズルが含まれている。各グループには本実施形態のマスクパターン(C1、C2、C3、C4、M1、M2、M3、M4、Y1、Y2、Y3、Y4)が対応付けられており、各マスクパターンの副走査方向(搬送方向)の大きさは各グループのノズル個数と同じ128画素分となっている。一方、走査方向の大きさは256画素分となっている。また、同色インクのノズル群に対応する4つのマスクパターン(C1、C2、C3およびC4、M1、M2、M3およびM4、Y1、Y2、Y3およびY4)はそれぞれ4つのパターンで補完して総ての画素に対応する関係にあり、これらを重ね合わせると128×256画素に対応した領域の記録が完成される構成となっている。
【0155】
これらのマスクを用いた記録動作では、各色ノズル群はノズル配列方向と略直交する方向へ走査しながら記録媒体にインクを吐出する。例えば、各領域に対してC,M,Yのインク吐出が行われる。また、走査が終了するたびに、記録媒体は走査方向と直交する方向に1つのブループの幅分(すなわち、128画素分)ずつ搬送される。これにより、記録媒体の各グループの幅に対応する大きさの領域は4回の走査によって画像が完成する。
【0156】
さらに具体的に説明すると、記録媒体におけるそれぞれノズルグループの幅に対応する大きさの連続した4つの領域を記録媒体の搬送方向に順に領域A、B、C、Dとするとき、第1走査では記録媒体上の領域Aに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いて記録が行われる。そして、この第1走査では領域Aに対してはマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0157】
次に、第2走査では、第1走査での記録が終了した領域Aに対して、Cノズル群の第2グループ、Mノズル群の第2グループ、Yノズル群の第2グループを用いて記録が行われるとともに、未記録状態の領域Bに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いて記録が行われる。従って、第2走査では領域Aに対してマスクパターンC2、マスクパターンM2、マスクパターンY2が用いられるとともに、領域Bに対してマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0158】
さらに、第3走査では、第2走査での記録が終了した領域Aに対して、Cノズル群の第3グループ、Mノズル群の第3グループ、Yノズル群の第3グループを用いて記録が行われるとともに、領域Bに対して、Cノズル群の第2グループ、Mノズル群の第2グループ、Yノズル群の第2グループを用いて記録が行われ、さらに、未記録状態の領域Cに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いて記録が行われる。従って、第3走査では領域Aに対してマスクパターンC3、マスクパターンM3、マスクパターンY3が用いられ、領域Bに対してマスクパターンC2、マスクパターンM2、マスクパターンY2が用いられ、領域Cに対してマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0159】
さらに、第4走査では、第3走査の記録が終了した領域Aに対して、Cノズル群の第4グループ、Mノズル群の第4グループ、Yノズル群の第4グループを用いて記録が行われるとともに、領域Bに対して、Cノズル群の第3グループ、Mノズル群の第3グループ、Yノズル群の第3グループを用いて記録が行われ、領域Cに対して、Cノズル群の第2グループ、Mノズル群の第2グループ、Yノズル群の第2グループを用いて記録が行われ、さらに、未記録状態の領域Dに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いて記録が行われる。従って、第4走査では領域Aに対してマスクパターンC4、マスクパターンM4、マスクパターンY4が用いられ、領域Bに対してマスクパターンC3、マスクパターンM3、マスクパターンY3が用いられ、領域Cに対してマスクパターンC2、マスクパターンM2、マスクパターンY2が用いられ、さらに、領域Dに対してマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0160】
以上説明したように、4回の走査で記録媒体上の領域Aに対する画像の記録が完成する。また、領域Bや後続の領域についても同様に記録が行われていく。
【0161】
本実施形態では、上述した実施形態1と同様、中間画像におけるグレインの発生を避けるべく、それぞれのプレーンのマスクを重ねたときの記録許容画素の配置を非周期で低周波数成分が少なく分散性の良いものとしている。これにより、画像の完成に至る各段階の中間画像におけるドットの近接ないし隣接、また、ドットの重なりを、極力排除するようにする。また、仮に、ドットの重なりや隣接が排除しきれない場合でも、そのような重なりなどについても分散性の高いものとするものである。
【0162】
(2)マスクの製法
本実施形態においても、マスクの製造方法として、実施形態1で説明した同時生成法とパスごとの生成法のいずれをも用いることができる。但し、本実施形態では、同時生成法とパスごとの生成法が同じものとはならない。以下、これらの方法について順に説明する。
【0163】
同時生成
図53は、本実施形態の同時生成法を概念的に説明する図である。
【0164】
同図に示すように、本実施形態の同時生成法は、1パス目〜3パス目用のマスクであるマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)および(C3、M3、Y3)を、ステップ1で同時に生成する。そして、ステップ2として、4パス目に用いるそれぞれのプレーンのマスク(C4、M4、Y4)を、上記1パス目〜3パス目のマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)および(C3、M3、Y3)とそれぞれの色が補完の関係を持つように生成する。すなわち、色ごとに、4パス目のマスクは、その記録許容画素の配置が1パス目〜パス目のマスクの記録許容画素の配置と排他的な関係となるように生成される。
【0165】
1パス目〜3パス目用のマスクの生成における記録許容画素の具体的な配置の仕方は、実施形態1にて説明した「配置移動法」または「順次移動法」のいずれかを以下に示すようにして用いることができる。
【0166】
(配置移動法)
この方法を用いるときの処理は、基本的に、実施形態1について図8にて説明して処理と同様である。すなわち、図8のステップS801と同様、1パス目〜3パス目のそれぞれの色のマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)、(C3、M3、Y3)それぞれのプレーンのサイズに対応したC、M、Yそれぞれの25%濃度の画像を取得する。そして、ステップS802と同様、それぞれの画像について誤差拡散法などの2値化手法を用いて2値化を行う。これにより、それぞれのマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)、(C3、M3、Y3)それぞれのプレーンについて、記録許容画素がマスク画素全体の25%に配された初期配置を得ることができる。
【0167】
次に、ステップS803と同様、上記のようにして得たマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)、(C3、M3、Y3)それぞれのプレーンの総ての記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する。
【0168】
この斥力ポテンシャルの計算で、実施形態1の処理と異なる点は次のとおりである。例えば、プレーンC2のある許容画素の斥力ポテンシャルを計算するとき、異なる色の他のプレーンの距離rにある記録許容画素による影響;βE(r)の重み付け係数βの値は実施形態と同じく1とする。一方、同じ色の異なるプレーンC1、C3おいて距離rにある記録許容画素からの影響;βE(r)の重み付け係数βの値は2とする。これにより、同じ色のマスクを重ねたときの記録許容画素の分散(βが2)が、異なる色の記録許容画素との分散(βが1)に優先して確保される。
【0169】
次に、図8のステップS804と同様、図10(a)〜(d)にて説明したように、エネルギー減衰を行う。ここで、実施形態1と異なる点は次の通りである。すなわち、それまでの処理で計算した9プレーンの総ての記録許容画素について順次、その記録許容画素からの距離rが4以内の画素の中で斥力ポテンシャルが最も下がる画素に記録許容画素を移すが、その際、同じ色(プレーン)での記録許容画素の重なりを禁止する点である。これにより、3パス用の同じ色のマスク相互の補完関係を得ることができる。
【0170】
(順次配置法)
同時生成における順次配置法は、実施形態1について図11で説明した処理と基本的に同じである。異なる点は、上記配置移動法で説明したことと同じである。すなわち、斥力ポテンシャルを計算する際の、異なる色の他のプレーンの記録許容画素による影響;βE(r)の重み付け係数βの値を1とするとともに、同じ色の異なるプレーンにある記録許容画素からの影響;βE(r)の重み付け係数βの値を2とする。また、斥力ポテンシャルが最も下がる画素にその注目記録許容画素を配置する際、同じ色(プレーン)での記録許容画素の重なりを禁止する。
【0171】
そして、この配置が各プレーン25%の数を配置する処理を終了する(図11のステップS1106参照)。
【0172】
パスごとの生成
図54は、本実施形態のパスごとの生成法を概念的に説明する図である。
【0173】
同図に示すように、本実施形態の同時生成法は、ステップ1で、1パス目用のマスク(C1、M1、Y1)を生成し、次のステップ2で、2パス目用のマスク(C2、M2、Y2)を生成し、さらにステップ3で、3パス目用のマスク(C3、M3、Y3)を生成する。そして、ステップ4として、4パス目に用いるそれぞれのプレーンのマスク(C4、M4、Y4)を、上記生成された1パス目〜3パス目のマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)および(C3、M3、Y3)とそれぞれの色が補完の関係を持つように生成する。すなわち、色ごとに、4パス目のマスクは、その記録許容画素の配置が1パス目〜パス目のマスクの記録許容画素の配置と排他的な関係となるように生成される。
【0174】
1パス目〜3パス目用のマスクの生成における記録許容画素の具体的な配置の仕方は、実施形態1にて説明した「配置移動法」または「順次移動法」のいずれかを以下に示すようにして用いることができる。
【0175】
(配置移動法)
この方法を用いるときの処理は、基本的に、実施形態1について図8にて説明して処理と同様である。すなわち、図8のステップS801と同様、1パス目のそれぞれの色のマスク(C1、M1、Y1)それぞれのプレーンのサイズに対応したC、M、Yそれぞれの25%濃度の画像を取得する。そして、ステップS802と同様、それぞれの画像について誤差拡散法などの2値化手法を用いて2値化を行う。これにより、それぞれのマスク(C1、M1、Y1)それぞれのプレーンについて、記録許容画素がマスク画素全体の25%に配された初期配置を得ることができる。
【0176】
次に、ステップS803と同様、上記のようにして得たマスク(C1、M1、Y1)それぞれのプレーンの総ての記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する。
【0177】
この斥力ポテンシャルの計算で、実施形態1の付与処理と異なる点は、上述の同時生成における配置移動法と同じである。すなわち、ある許容画素の斥力ポテンシャルを計算するとき、異なる色の他のプレーンの距離rにある他の記録許容画素による影響;βE(r)の重み付け係数βの値は実施形態と同じく1とする。一方、同じ色の異なるプレーンおいて距離rにある記録許容画素からの影響;βE(r)の重み付け係数βの値は3とする。これにより、同じ色のマスクを重ねたときの記録許容画素の分散(βが3)が、異なる色の記録許容画素との分散(βが1)に優先して確保される。また、異なる色のプレーンからの影響;βE(r)の係数βの値が実施形態1と同じく1であることにより、例えば、C、M、Yそれぞれの記録許容画素の集まりが分散性が高く配置されるようなパターンを求めることができる。
【0178】
以上のようにして1パス目のマスク(C1、M1、Y1)の記録許容画素の配置を得ると、以下、同様にして、2パス目(ステップ2)、3パス目(ステップ3)のマスクパターンを求める。この際、記録許容画素を配置する際(図8のステップS804参照)、それまで生成されたパスのパターン;記録許容画素の配置は固定する。これにより、1パス目〜3パス目までのマスクパターン相互の補完性を保証することができる。
【0179】
(順次配置法)
パスごとの生成における順次配置法は、実施形態1について図11で説明した処理と基本的に同じである。異なる点は、上記配置移動法で説明したことと同じである。すなわち、斥力ポテンシャルを計算する際の、異なる色の他のプレーンの記録許容画素による影響;βE(r)の重み付け係数βの値を1とするとともに、同じ色の異なるプレーンにある記録許容画素からの影響;βE(r)の重み付け係数βの値を3とする。また、斥力ポテンシャルが最も下がる画素にその注目記録許容画素を配置する際、それまで生成されたパスのパターン;記録許容画素の配置は固定する。これにより、1パス目〜3パス目までのマスクパターン相互の補完性を保証することができる。
【0180】
そして、この配置が各プレーン25%の数を配置する処理を終了する(図11のステップS1106参照)。
【0181】
(3)マスク特性評価
図55〜図57は、上述したいずれかの製法によって製造された本実施形態の1プレーン分の積層マスクC1、M1、Y1それぞれの記録許容画素の配置パターンを示す図である。各マスクパターンは、128×256の画素のエリアを有したものである。
【0182】
これらの図に示すように、本実施形態のマスクのパターンは、特に、係数αの効果によって同一プレーン内の分散性を考慮した記録許容画素が配置されているので、全体的としては滑らかな印象を受ける。
【0183】
図58〜図60は、本実施形態の積層マスクをそれぞれ3つ(C1、M1、Y1)、6つ(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2)および9つ(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2、C3、M3、Y3)を正規の位置で重ねたときの「重ね合わせ」パターンを示す図である。これらの積層マスクを複数重ねたときの「重ね合わせ」パターンは、それらのマスクの論理和パターンを薄い濃度で、論理積パターンをより濃い濃度で表している。
【0184】
これらの図に示す「重ね合わせ」のパターンは、本実施形態のマスクを用いて記録を行うときのそれぞれ中間画像のインクドットのパターンに近いものを表している。従って、これらのパターンからも、中間画像におけるインクドットやそれらの重なりが良好に分散していることがわかる。
【0185】
ずらしによる評価
本実施形態に係る4パス用積層マスクについても、上記の実施形態1と同様のずらしによる評価を行う。
【0186】
図61は、図58に示した3つの積層マスク(C1、M1、Y1)のそれぞれをずらして重ねたときの「重ね合わせ」のパターンを示す図である。また、図62は、図59に示した6つの積層マスク(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2)のそれぞれをずらして重ねたときの「重ね合わせ」のパターンを示す図である。さらに、図63は、図60に示した9つの積層マスク(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2、C3、M3、Y3)のそれぞれをずらして重ねたときの「重ね合わせ」のパターンを示す図である。
【0187】
これらの図から明らかなように、本実施形態の積層マスクの重ね位置をずらした重ね合わせパターン(図61〜図63)のいずれも、重ね位置をずらさないパターン(図58〜図60)に比べて分散性が低下し、パターンを観察したときのざらつき感が増している。
【0188】
図64は、以上のずらしによる評価を低周波数成分の量で表した図である。ここでは、上述した3つ(C1、M1、Y1)、6つ(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2)および9つ(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2、C3、M3、Y3)の積層マスクそれぞれについて、「重ね合わせ」パターンをずらした場合(図61〜図63)とずらさない場合(図58〜図60)の低周波数成分の量を比較して示している。
【0189】
同図に示すように、本実施形態の積層マスクの場合、ずらしたものは、いずれのパターンにおいても、ずらしていない場合(つまり、正規の位置で重ねた場合)と比較して、低周波数成分の量が多くなることがわかる。
【0190】
以上のように、マスクを重ね合わせる場合に、その重ね位置をずらしたとき分散性に係る評価値が大きく変化するか否かによって、本発明を適用したマスクか否かを判断することができることは前述したとおりである。
【0191】
なお、本実施形態におけるマスクパターンは、横:256画素×縦:128画素のサイズとなっており、縦横のサイズが異なる。このようなパターンについて周波数成分を求めるときは、マスクパターンの縦横サイズを揃えてから周波数成分を求めるようにする。本実施形態では、縦横サイズを長手方向のサイズ(本実施形態の場合、横方向の256画素)に揃えるため、縦にパターンを繰り返し、256画素×256画素のパターンとして周波数成分を評価した。
【0192】
その他のサイズの場合も同様であり、縦横サイズを長手方向のサイズに揃えたパターンについて周波数成分を評価する。具体的には、パターンの短手方向のサイズが長手方向のサイズ以上になるまで短手方向にパターンを繰り返し、その中からパターンを切り出し、その切り出したパターンについて評価する。その際、周波数変換を行うときに高速フーリエ変換を使えるよう、縦横サイズは2のn乗(nは正の整数)であることが好ましい。2のn乗でない場合には、長手方向のサイズに最も近い2のn乗を特定し、その特定した2のn乗のサイズで切り出せるようにパターンを縦横に繰り返す。そして、この繰り返しにより生成されたパターンの中から、上記特定した2のn乗のサイズのパターンを切り出し、その切り出したパターンについて評価を行う。例えば、マスクパターンが横:500画素×縦:320画素であった場合について考える。この場合、長手方向のサイズは「500」なので、この「500」に最も近い2のn乗を特定する。最も近い2のn乗は「512」と特定される。そこで、512画素×512画素のパターンを切り出すために、横方向と縦方向に1回づつパターンを繰り返し、1000画素×640画素のパターンを生成する。こうして生成された1000画素×640画素のパターンの中から512画素×512画素のパターンを切り出し、切り出したパターンについて評価を行う。
【0193】
〔実施形態3:2パス記録用100%グラデーションマスク〕
本実施形態は、いわゆるグラデーションマスクに関するものである。グラデーションマスクは、例えば、特許文献3によって知られたものである。グラデーションとは、ノズル列端部の記録率が低く、中央部の記録率が高く設定されているような、ノズル位置に応じて記録率が異なるマスクである。このマスクによれば、マルチパス記録で各パスの記録領域の境界で弊害の原因となりやすい端部ノズルの吐出をその頻度を相対的に少なくすることにより、画像品位を向上させる効果が得られる。
【0194】
ここで、上述したマスクパターンの「記録率」とは、マスクパターンにおける一定の領域に含まれる全画素数(記録許容画素と非記録許容画素の和)に対する記録許容画素数の割合である。例えば、単一ノズルに対応するマスクパターンの記録率とは、その単一ノズルに対応する領域(単一ラスタ領域)に含まれる全画素数に対する記録許容画素の割合である。
【0195】
このようなマスクの場合、ノズル列全体に対応したマスクパターンを空間周波数でみたとき、領域ごとの記録率の変化に起因した低周波数成分の増大が見られる。しかしながら、このような記録率が徐々に変化するような記録許容画素の配置を許容しつつ、それ以外の不必要な低周波成分が抑えられたマスクパターンが実現されれば、グレインの発生を抑えると言う本発明の効果を得ることはできる。従って、マスクにおいて変化する記録率のそれぞれに対応した複数の領域それぞれで分散性を高く保ちつつ、各領域間では記録率に変化を持たせたグラデーションマスクとすることによって、本発明と特許文献3に記載の双方の効果を得ることが可能となる。
【0196】
図65(a)および(b)は、本実施形態に係るグラデーションマスクのノズル位置に対応させた記録率、および2プレーンの相互に排他的なマスクパターンを示す図である。
【0197】
この2プレーンのマスクは、本実施形態の場合、シアンの2プレーンのマスクC1、C2、マゼンタの2プレーンのマスクM1、M2、またはイエローの2プレーンのマスクY1、Y2である。これらのマスクのうち、図では代表的にシアンのマスクC1、C2を示している。そして、上記の実施形態1で説明したように、これら6つのマスクの記録許容画素の配置は相互に分散したものとなっている。
【0198】
これらの図に示すように、各走査では、番号0〜255のノズルがマスクC2に対応し、番号256〜511のノズルがマスクC1に対応して記録が行われる。なお、上述の通り、マスクC1とマスクC2は補完関係にある。そして、走査と走査の間には、256個分のノズル配列の長さに対応した量だけ記録媒体が搬送される。このように走査と搬送を繰り返すことで、上記256個分のノズル配列に対応した領域をマスクC1とマスクC2で補完する、2パス記録が行われる。
【0199】
図65(a)に示すように、マスクC1およびマスクC2は、それぞれ記録率が0.3から0.7までラスター(ノズル)ごとに変化するとともに、それぞれのプレーン全体で合計50%の記録率を有する。これにより、マスクの各ラスターの記録許容画素の数は、上記記録率によって定まる。例えば、記録率が0.4(40%)のラスターでは、そのマスクのラスター方向サイズが1000画素あるとすると、約400個の記録許容画素が配置される。
【0200】
(2)マスクの製法
本実施形態に係るマスクの製造方法は、基本的に実施形態1で説明した方法と同じ方法を用いることができる。すなわち、全プレーンを同時に生成する方法と、パスごとに順次マスクを生成する方法の2つの方法のいずれでも実施することができる。本実施形態の2パス記録の場合、実施形態1で上述したように、同時生成とパスごとの生成の方法は同じものとなる。また、上記2つの生成方法それぞれについて、配置移動法と順次配置法のいずれも実施できることも同じである。以下、本実施形態に係る配置移動法と順次配置法を順に説明する。
【0201】
配置移動法
図66は、本実施形態の2パス記録に用いるグラデーションマスクの記録許容画素の配置移動法による配置決定処理を示すフローチャートである。同図に示す処理は、基本的に実施形態1に関して図8に示した処理と同様である。以下では、異なる点を主に説明する。
【0202】
ステップS6601、S6602の処理は、図8に示したステップS801、S802の処理と同様である。また、ステップS6603の処理も、ステップS803の処理と同様であり、マスクC1、M1、Y1それぞれのプレーンで上記のようにラスターごとに配置された総ての記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する。
【0203】
次に、ステップS6604で、図8のステップS804と同じく、各プレーンの記録許容画素について上記のようにして得ることができる斥力ポテンシャルを3つのプレーンC1、M1およびY1について合計して総エネルギーを求める。そして、図10(a)〜(d)にて上述したように、記録許容画素の配置を移動させて行く。
【0204】
その際、最もポテンシャルエネルギーが低い位置に移動させるとそのラスターの上述した配置数の制限を超えるときは、そのラスターへは移動させず配置数が制限以内となるラスターで、次にエネルギーの低い画素があるラスターのそのエネルギーの低い画素に移動させる。これにより、ラスターごとの記録率を保持しつつ分散性の高い記録許容画素の配置を得ることができる。
【0205】
以下は、図8の処理と同じように、総エネルギーの低下率を計算し、それが所定値以下であると判断すると、エネルギー減衰処理を終了する。そして、総エネルギーの低下率が所定値以下となった状態の各プレーンを1パス目のマスクC1、M1、Y1として設定する。さらに、これらマスクの記録許容画素の配置に対するそれぞれ排他的位置を記録許容画素の配置とした2パス目のマスクC2、M2、Y2を設定する。なお、ここでも、上述した実施形態1と同様、エネルギーの減衰処理を終了させるか否かの判断を、総エネルギーの低下率で判断するのではなく、総エネルギー所定置以下となったかどうかで判断するようにしてもよい。
【0206】
順次配置法
この方法も、基本的に実施形態1に関して図11にて上述した方法と同じである。図67は、本実施形態の順次配置法による記録許容画素の配置決定処理を示すフローチャートである。
【0207】
図67のステップS6701〜S6703、S6705、S6706およびS6707の処理は、図11のS1101〜S1103、S1105、S1106およびS1107の処理と同じである。
【0208】
異なる点は、ステップS6704で、プレーン内で最小エネルギーの画素に記録許容画素を置く際に、上述したように記録率に応じて定まるラスターごとの配置数を超えるときは、配置数の制限以内であるラスターで、次にエネルギーの低い画素があるラスターのそのエネルギーの低い画素に配置する点である。これにより、記録率をラスターごとに変化させながら、分散性の高いグラデーションマスクを得ることができる。
【0209】
なお、上述したいずれの製法の例でも、ラスターごとに配置数を管理するものとしたが、これに限られることはない。例えば、マスクパターンを所定の複数のラスターごとに記録率を定める場合は、その複数のラスターごとに配置数の制限を行うようにする。
【0210】
(3)マスク特性評価
図68〜図70は、上述したいずれかの製法によって製造された本実施形態の1プレーン分のマスクC1、M1、Y1それぞれの記録許容画素の配置パターンを示す図である。各マスクパターンは、256×256の画素のエリアを有したものである。
【0211】
これらの図に示すように、本実施形態のマスクのパターンは、特に、係数αの効果によって同一プレーン内の分散性を考慮した記録許容画素が配置されているので、グラーデーションが持つ記録許容画素の偏りを除いて、記録許容画素の分散に偏りが無く、全体的としては滑らかな印象を受ける。
【0212】
図71および図72は、図68および図69に示した本実施形態の積層マスクC1、M1のそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図である。
【0213】
図71および図72に示すように、本実施形態の2つのマスクを重ねた場合の記録許容画素の配置(論理和)と、その中から記録許容画素が重なったものを抽出したものの配置(論理積)は、グラデーションによる分散の偏りを除いて、ともに分散がよくざらつき感のないものとなっている。これは、上述したように、2つのプレーン相互で記録許容画素の分散を考慮(係数β)するとともに、重なり自体の分散を考慮(係数γs(n))しているからである。
【0214】
図73および図74は、本実施形態の積層マスクをそれぞれ2つおよび3つ重ねたときの「重ね合わせ」パターンを示す図である。積層マスクC1、M1を重ねたときの「重ね合わせ」パターンは、これら2つのマスクの論理和パターン(図71)を薄い濃度で、論理積パターン(図72)をより濃い濃度で表している。また、積層マスクC1、M1、Y1を重ねたときの「重ね合わせ」パターンは、これら3つのマスクの論理和パターンを薄い濃度で、論理積パターンをより濃い濃度で表している。
【0215】
図73および図74に示す「重ね合わせ」のパターンは、本実施形態のマスクを用いて記録を行うときのそれぞれ中間画像のインクドットのパターンに近いものを表している。従って、これらのパターンからも、中間画像におけるインクドットやそれらの重なりが良好に分散していることがわかる。
【0216】
ずらしによる評価
本実施形態に係るグラデーションマスクについても、上記の各実施形態と同様ずらしによる評価を行う。
【0217】
図75〜図77は、図68、図69に示したマスクC1、M1をずらして重ねたときの論理和、論理積および「重ね合わせ」のパターンを示す図である。これらの図から明らかなように、本実施形態の積層マスクC1、M1の重ね位置をずらした場合の論理和、論理積、「重ね合わせ」のパターンは、正規の位置で重ねた各種パターン(図71〜図73)に比べて、分散性が低下し、パターンを観察したときのざらつき感が増している。
【0218】
図78は、積層マスクC1、M1、Y1をずらして重ねたときの「重ね合わせ」のパターンを示す図である。この図から明らかなように、本実施形態の積層マスクC1、M1、Y1の重ね位置をずらした場合の「重ね合わせ」パターンも、正規の位置で重ねたパターン(図74)に比べて、分散性が低下し、パターンを観察したときのざらつき感が増している。
【0219】
図79〜図81は、重ね位置をずらした場合と重ね位置をずらさない場合(つまり、正規の位置で重ねた場合)のパワースペクトルを比較した図である。詳しくは、本実施形態の2つの積層マスクC1,M1の論理和、論理積、および[重ね合わせ]パターンをずらした場合とずらさない場合のパワースペクトルを示す図である。また、図82は、本実施形態の3つの積層マスクの[重ね合わせ]パターンをずらした場合とずらさない場合のパワースペクトルを示す図である。
【0220】
これらの図に示すように、本実施形態の積層マスクは、論理和、論理積、および[重ね合わせ]のいずれの場合も、ずらした場合の低周波数成分は、ずらし無しの場合に較べて大きくなる。これは、上述したように、積層マスクは、異なるプレーン間でも分散を考慮していることから、その分散を考慮するときの正規の重ね方とは異なる重ね方としたときは、分散性が大きく低下するからである。
【0221】
また、それぞれの図のずらし無しのパワースペクトルにおいて、空間周波数が1から20あたりでパワーが大きくなっている。これは、グラデーションマスクとして記録率を変化させていることに起因するものである。すなわち、このような比較的小さな空間周波数、つまり大きな周期の記録許容画素の配置の偏りは、とりもなおさずグラデーションとして認識されるものであり、これは本発明で制御しようとしている不必要な低周波数成分の偏りとして認識されるものではない。
【0222】
図83は、以上のずらしによる評価を低周波数成分の量で表した図である。ここでは、本実施形態の2つの積層マスクC1、M1の論理和、論理積、「重ね合わせ」のパターン、およびマスクC1、M1、Y1の「重ね合わせ」パターンについて、ずらした場合とずらさない場合の低周波数成分の量を比較して示している。
【0223】
同図に示すように、本実施形態の積層マスクの場合、ずらしたものは、マスクC1、M1のそれぞれ論理和、論理積、「重ね合わせ」のパターンおよびマスクC1、M1、Y1の「重ね合わせ」パターンのいずれにおいても、ずらしていない場合と比較して、低周波数成分の量が多くなることがわかる。
【0224】
以上のように、マスクを重ね合わせる場合に、その重ね位置をずらしたとき分散性に係る評価値が大きく変化するか否かによって、本発明を適用したマスクか否かを判断することができることは前述したとおりである。
【0225】
〔実施形態4:2パス記録用150%均等マスク〕
上述の各実施形態では、同じ色の複数のプレーンのマスクは相互に補完関係にあり、記録許容画素の配置はプレーン間で排他的なものである。本発明の適用はこのようなマスク限られない。同じ色の複数のマスクそれぞれの記録率を合わせたときに100%を超える複数プレーンのマスクにも本発明を適用することができる。100%を超えるマスクを使用すれば、画像データの解像度が低い場合であっても、最大インク打ち込み量を増やすことができる。
【0226】
本発明の第4の実施形態は、2パス記録に用いられる同色の2つのプレーンがそれぞれ75パーセントの記録率を持ち、合わせて150%の記録率となるマスクに関するものである。
【0227】
図84は、この2パス記録に用いるマスクを概念的に説明する模式図である。図84において、P0001は、C、M、Yのうち、1つの色の記録ヘッドを示し、ここでは、図示の簡略化のため8個のノズルを有するものとして示している。ノズルは、第1および第2の2つのグループに分割され、各ノズルグループにはそれぞれ4つのノズルが含まれる。P0002AおよびP0002Bは、この第1および第2グループのノズル列にそれぞれ対応したマスクパターンを示す。すなわち、第1走査で用いるマスクパターンP0002A(同図中、下側のパターン)と第2走査で用いるマスクパターンP0002B(同図中、上側のパターン)である。これらがそれぞれ1プレーンのマスクとなる。それぞれのマスクパターンは、記録許容画素が黒塗りで示されており、非記録許容画素が白で示されている。第1走査用のマスクパターンP0002Aと第2走査用のマスクパターンP0002Bはそれぞれ75%の記録率、すなわち、それぞれのパターンにおける全マスク画素に対する記録許容画素の数の割合が75%のパターンである。従って、これらを重ね合わせると記録許容画素が4×4のエリアに対して150%、すなわち、重なりを含んだパターンとなる。なお、図に示すパターンは説明を容易にするため、以下で示す本実施形態のマスクパターンとは異なり概念的に示すパターンとしている。
【0228】
P0003およびP0004は、2パス記録によって完成する画像を、それを構成するドット配置で示している。画素にドットが1個配置される場合は「1」、ドットが2個配置される場合は「2」として表している。なお、この画像は、説明を容易にするため、総ての画素にドットを形成するいわゆるベタ画像であり、従って、そのドット記録データの生成に用いるマスクP0002の記録許容画素の配置がそのまま反映されたドット配置を示している。第1走査では、第1グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Aを用いて生成される。これにより、ベタ画像の場合は全画素の75%のドットが埋まる画像が形成される。そして、記録媒体は図中、上方にノズルグループの幅分搬送される。
【0229】
次の、第2走査では、上記搬送量分ずれた領域に対する第1グループのドット記録データは、同じくマスクパターンP0002Aを用いて生成され、上記第1グループで記録された領域に対する第2グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Bを用いて生成される。この2回の記録走査によって画像が完成する。このとき、完成した画像は、ベタ画像の場合、全画素の150%のドットが埋まる画像が形成される。
【0230】
本実施形態のマスクの製造方法は、基本的に実施形態1と同様に行うことができる。
【0231】
異なる点は、同時生成法およびパスごとの生成のいずれの場合も(図7参照)、ステップ1で1パス目の75%マスクパターンを生成した後、ステップ2では、実施形態1のように排他位置に記録許容画素を配置するのではなく、ステップ1と同様の処理繰り返し75%の2パス目のマスクパターンを生成する。以下、さらに具体的に配置法である配置移動法と順次配置法について、実施形態1と異なる点について説明する。
【0232】
配置移動法
本実施形態の配置移動法も実施形態1に係る図8の処理と基本的に同様の処理を行う。異なるのは、ステップS801と同様の処理では、上記ステップ1および2のいずれの生成でも、初期配置として各プレーンについて、75%の2値データを求める。また、ステップ2の生成で、図8のステップS804と同様の処理では、記録許容画素の移動に際して、同じ色の異なるプレーンの記録許容画素との重なりを禁止しない。すなわち、エネルギーが最も低く位置に移動させようとしたとき、その位置で同じ色の他のプレーンの記録許容画素と重なってもそこに配置する。これにより、2つのマスクを重ねたものが100%の記録率を超えた150%の記録率のマスクを生成することができる。
【0233】
順次配置法
順次移動法についても実施形態1に係る図11に示した処理と基本的に同様の処理を行う。異なるのは、ステップS1106と同様の処理では、上記ステップ1および2のいずれの生成でも、75%まで記録許容画素が配置されたか否かを判断する。また、上記ステップ2の2パス目用のマスク生成では、図11のステップS1104と同様の処理で、記録許容画素を配置するに際して、同じ色の異なるプレーンの記録許容画素との重なりを禁止しない。すなわち、エネルギーが最も低く位置に配置しようとしたとき、その位置で同じ色の他のプレーンの記録許容画素と重なってもそこに配置する。これにより、2つのマスクを重ねたものが100%の記録率を超えた150%の記録率のマスクを生成することができる。
【0234】
以上の製法により製造したマスクを用いれば、ドットが2個配置される場所(画素の位置)の分散性を向上させることができる。
【0235】
〔実施形態5:クラスタサイズがm×nのマスク〕
本発明は、m×n個の記録許容画素を1つの単位とする、いわゆるクラスタマスクについても適用することができる。
【0236】
図85は、2パス記録用の、クラスタサイズが1×2の100%均等マスクの概念を説明する図である。図85において、P0001は、C、M、Yのうち、1つの色の記録ヘッドを示し、ここでは、図示の簡略化のため8個のノズルを有するものとして示している。ノズルは、第1および第2の2つのグループに分割され、各ノズルグループにはそれぞれ4つのノズルが含まれる。P0002AおよびP0002Bは、この第1および第2グループのノズル列にそれぞれ対応したマスクパターンを示す。すなわち、第1走査で用いるマスクパターンP0002A(同図中、下側のパターン)と第2走査で用いるマスクパターンP0002B(同図中、上側のパターン)である。これらがそれぞれ1プレーンのマスクとなる。それぞれのマスクパターンは、1×2のサイズのクラスタ記録許容画素が黒塗りで示されており、1×2のサイズのクラスタ非記録許容画素が白で示されている。第1走査用のマスクパターンP0002Aと第2走査用のマスクパターンP0002Bはそれぞれ50%の記録率のパターンである。従って、これらを重ね合わせるとクラスタ記録許容画素が4×4のエリアに対して100%のパターンとなる。
【0237】
P0003およびP0004は、2パス記録によって完成する画像を、それを構成する1×2個のドットを単位とする配置で示している。なお、この画像は、説明を容易にするため、総ての画素にドットを形成するいわゆるベタ画像であり、従って、そのドット記録データの生成に用いるマスクP0002の記録許容画素の配置がそのまま反映されたドット配置となる。第1走査では、第1グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Aを用いて生成される。これにより、ベタ画像の場合は全画素の50%のドットが埋まる画像が形成される。そして、記録媒体は図中、上方にノズルグループの幅分搬送される。次の、第2走査では、上記搬送量分ずれた領域に対する第1グループのドット記録データは、同じくマスクパターンP0002Aを用いて生成され、上記第1グループで記録された領域に対する第2グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Bを用いて生成される。この2回の記録走査によって画像が完成する。このとき、完成した画像は、ベタ画像の場合、全画素の100%に1×2個の単位のドットが埋まる画像が形成される。
【0238】
以上の説明からも明らかなように、m×n(本実施形態では、1×2)のサイズの記録許容画素を1単位とするとき、実施形態1で説明したのと同様にマスクを製造できることは容易に理解できる。また、本実施形態のマスクは、実施形態1で説明した効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0239】
〔他の実施形態〕
上述した実施形態以外に、例えば、実施形態2に示した4パスの態様とそれぞれ実施形態3、実施形態4、実施形態5との組み合わせも可能であり、また、実施形態3に示したグラデーションの態様とそれぞれ実施形態4、実施形態5との組み合わせも可能である。さらに、実施形態4と実施形態5との組み合わせも可能であり、これらの組み合わせは、それぞれの実施形態の説明からように実施することができる。
【0240】
また、本発明で適用できるインクの種類は、上述の実施形態で説明したインクの種類に限定されるものではない。例えば、CMYの基本色よりも濃度の低い淡インク(淡シアンインク、淡マゼンタインク)やレッド、ブルー、グリーンなどの特色インクをさらに加えて用いることができる
また、本発明は、記録装置で用いる複数種類のインク全てについて、上述の実施形態で説明した積層マスクを適用してもよいし、あるいは、記録装置で用いる複数種類のインクの一部のインクの組み合わせについて、積層マスクを適用してもよい。
【0241】
例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)の6色インクを用いる場合、これら6色全てに対して積層マスクを適用してもよい。この場合、6色分の積層マスクを上記実施形態で説明した製法によって生成することになる。
【0242】
一方、これら6色のうち一部の色(2色、3色、4色、5色)の組み合わせについて積層マスクを適用してもよい。この場合、2つの形態が考えられる。第1の形態は、上記一部の色分だけ積層マスクを生成し、それ以外の色についてのマスク製法を問わない形態である。例えば、6色のうち3色(例えば、CMY)については上述の実施形態で説明した製法によって積層マスクを生成し、それ以外の3色(KLcLm)については周知の製法によってマスクを生成する。第2の形態は、上記一部の色分だけ積層マスクを生成し、それ以外の色については上記一部の色のために生成した積層マスクの中から選択したものを割り当てる形態である。例えば、6色のうちCMYの3色については上述の実施形態で説明した製法によって積層マスクを生成し、それ以外の3色(KLcLm)についてはCMYのために生成した積層マスクの中なら選択したものを適用する。
【0243】
また、上述の実施形態では、異なるインク色の組み合わせについて積層マスクを適用する場合について説明したが、本発明は、この形態に限られるものではない。同じ色で径の異なるドット(吐出体積の異なる同色インク)を用いて記録を行う形態にも適用可能である。この場合、同色で径の異なるドット(例えば、大ドット、小ドット)について上述の積層マスクを適用してもよい。例えば、大シアン、小シアン、大マゼンタ、小マゼンタ、イエロー、ブラックの6種類のドットを用いる場合を考える。この場合、大シアンと小シアン、あるいは大マゼンタと小マゼンタについて、上述の実施形態で説明した製法により積層マスクを生成する。
【0244】
さらには、同色で径の異なるドット(例えば、大ドット、小ドット)を用いる形態において、異色ドットの組み合わせについては上述の積層マスクを適用し、径の異なる同色ドットの組み合わせについては同じマスクを適用する形態であってもよい。例えば、上述の6種類のドットを用いる場合において、大シアンと大マゼンタについて上記実施形態で説明した製法により積層マスクを生成し、且つ小シアンについては大シアンと同じマスクを適用し、小マゼンタについては大マゼンタと同じマスクを適用するのである。
【0245】
なお、同色で径の異なるドットの種類数は、大小2種類に限られるものではなく、大中小の3種類であってもよいし、それ以上であってもよい。また、本発明は、色および大きさの少なくとも一方が異なるドットについて適用した場合においてのみ効果を発揮するものではなく、例えば、離間したノズル群から異なるタイミングで吐出される同色インクについて適用しても効果を発揮する。例えば、ヘッドの主走査方向に沿ってCMYMCの順でノズル群が配列されている形態にあっては、離間した同色ノズル群(Cノズル群、Mノズル群)に対して上記製法によって製造した積層マスクを適用するのである。
【0246】
また、本発明は、上述した通り、インク以外の液体を用いる形態においても適用可能である。インク以外の液体としては、インク中の色材を凝集あるいは不溶化させる反応液が挙げられる。この場合、少なくとも、ある1種のインクと反応液について、上記実施形態で説明した製法により積層マスクを生成することになる。
【0247】
なお、本発明では、色材として染料を含有する染料インク、色材として顔料を含有する顔料インク、色材として染料および顔料を含有する混合インクのいずれについても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置としてのPCのハードウェアおよびソフトウェアの構成を主に示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態のインクジェット記録システムにおける、画像データ変換処理の流れを説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に適用可能なインクジェット記録装置を示した斜視図である。
【図4】2パス記録を説明するために、記録ヘッド、マスクパターンおよび記録媒体を模式的に示した図である。
【図5】2パスのマルチパス記録を説明するために、記録ヘッドおよび記録パターンを模式的に示した図である。
【図6】(a)および(b)は、C、M、Yそれぞれの2分割記録に係る6つのプレーンの2値データを模式的に示す図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るマスク製法を説明する図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係るマスク製法の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る基本斥力ポテンシャルE(r)の関数を模式的に示す図である。
【図10】(a)〜(d)は、本発明の第一の実施形態にかかる斥力ポテンシャルの付与と総エネルギーの減衰処理を模式的に説明する図である。
【図11】本発明の第一の実施形態に係る他のマスク製法の手順を示すフローチャートである。
【図12】マスクパターンの論理積を説明する図である。
【図13】マスクパターンの論理和を説明する図である。
【図14】本発明の第一の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図15】本発明の第一の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図16】本発明の第一の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図17】比較例に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図18】他の比較例に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図19】本発明の第一の実施形態に係る2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図20】本発明の第一の実施形態に係る2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図21】本発明の第一の実施形態に係る3つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図22】本発明の第一の実施形態に係る3つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図23】比較例に係る2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図24】比較例に係る2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図25】他の比較例に係る2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図26】他の比較例に係る2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図27】マスクパターンの「重ね合わせ」パターンを説明する図である。
【図28】本発明の第一の実施形態に係る2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図29】本発明の第一の実施形態に係る3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図30】比較例に係る2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図31】他の比較例に係る2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図32】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて1つのマスクの周波数特性を説明する図である。
【図33】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて2つのマスクの論理和の周波数特性を説明する図である。
【図34】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて2つのマスクの論理積の周波数特性を説明する図である。
【図35】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて2つのマスクの「重ね合わせ」の周波数特性を説明する図である。
【図36】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて3つのマスクの「重ね合わせ」の周波数特性を説明する図である。
【図37】本発明の第一の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図38】本発明の第一の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図39】本発明の第一の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図40】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理和のパワースペクトルを示す図である。
【図41】比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理和のパワースペクトルを示す図である。
【図42】他の比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理和のパワースペクトルを示す図である。
【図43】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理積のパワースペクトルを示す図である。
【図44】比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理積のパワースペクトルを示す図である。
【図45】他の比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理積のパワースペクトルを示す図である。
【図46】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図47】比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図48】他の比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図49】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの3つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図50】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの論理和、論理積および[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図51】比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの論理和、論理積および[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図52】他の比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの論理和、論理積および[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図53】本発明の第二の実施形態に係るマスク製法を説明する図である。
【図54】本発明の第二の実施形態に係るマスク製法を説明する図である。
【図55】本発明の第二の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図56】本発明の第二の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図57】本発明の第二の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図58】本発明の第二の実施形態に係る3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図59】本発明の第一の実施形態に係る6つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図60】本発明の第二の実施形態に係る9つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図61】本発明の第二の実施形態のマスクをずらしたときの3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図62】本発明の第二の実施形態のマスクをずらしたときの6つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図63】本発明の第二の実施形態のマスクをずらしたときの9つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図64】本発明の第二の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図65】(a)および(b)は、本発明の第三の実施形態に係るマスクを説明する図である。
【図66】本発明の第三の実施形態に係るマスク製法の手順を示すフローチャートである。
【図67】本発明の第三の実施形態に係る他のマスク製法の手順を示すフローチャートである。
【図68】本発明の第三の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図69】本発明の第三の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図70】本発明の第三の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図71】本発明の第三の実施形態に係る2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図72】本発明の第三の実施形態に係る2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図73】本発明の第三の実施形態に係る2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図74】本発明の第三の実施形態に係る3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図75】本発明の第三の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図76】本発明の第三の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図77】本発明の第三の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図78】本発明の第三の実施形態のマスクをずらしたときの3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図79】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理和のパワースペクトルを示す図である。
【図80】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理積のパワースペクトルを示す図である。
【図81】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図82】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの3つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図83】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの論理和、論理積および[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図84】本発明の第四の実施形態に係る2パスのマルチパス記録に用いるマスクを説明する図である。
【図85】本発明の第五の実施形態に係る2パスのマルチパス記録に用いるマスクを説明する図である。
【図86】従来技術の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
【0249】
100 ホストコンピュータ(PC)
101、J0001 アプリケーション
102 OS
103 プリンタドライバ
104 プリンタ
107 HD
108 CPU
109 RAM
110 ROM
J0005 2値化処理
J0006 印刷データ作成
J0008 マスクデータ変換処理
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理方法、データ処理装置、マスク製造方法およびマスクパターンに関し、詳しくは、記録画像を構成するインクドットを複数回の記録ヘッドの走査で分割して形成する際の当該ドット記録データ生成のためのマスク処理ないしマスクパターンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、いわゆるマルチパス記録方式が広く採用されている。マルチパス記録方式は、画像の任意の領域を見たときにその領域の画像を構成するインクドットを記録ヘッドの複数回の走査で分割して形成する方式である。この方式によれば、インクを吐出するノズル(ないし吐出口)ごとのインク吐出方向など吐出性能のばらつきや記録用紙の搬送誤差などに起因した濃度ムラなどを複数回の走査に分散することができる。これにより、濃度ムラが目立たない高品位の画像を記録することが可能となる。
【0003】
ところで、記録画像を構成する複数のインクドットを複数回の走査に分割して形成するためのドット記録データの生成は、一般にはマスクパターン(単に、「マスク」ともいう)を用いたマスク処理にて行う。マスクパターンは、後述する図5に示されるように、記録を許容する画素(以下、「記録許容画素」とも言う)と記録を許容しない画素(以下、「非記録許容画素」とも言う)とを配列したものである。記録許容画素は図5の黒で示される部分に相当し、非記録許容画素は白で示される部分に相当する。そして、このマスクパターンにおける記録許容画素の配置を工夫することによって、複数回のそれぞれの走査で記録するドット数を調整したり、上記濃度ムラを解消したりするなど様々な目的に応じた形態をとることができる。
【0004】
例えば、以下のような2種類のマスクパターンが画質上の問題に有効である。
【0005】
典型的なマスクパターンとして、ベイヤー型のパターンをベースにしたマスクパターンがある。しかしながら、このようなパターンは規則的であるため、画像データと干渉が起こりやすく、画質上の問題が起こる場合がある。
【0006】
そこで、特許文献2では、マスクパターンにおける記録許容画素の配置にランダム性をもたせ、このようなランダム性を有したマスクパターン(以下、ランダムマスクともいう)を用いることで画像データとの干渉が起こりにくくしている。これにより上記問題が向上する。
【0007】
一方、特許文献1では、マスクパターンにおける記録許容画素の配置を分散性に優れたものとし、このような分散性の高いマスクパターンを用いて双方向記録時のドット形成位置のずれによる画像品位の低下を抑制することが記載されている。すなわち、同文献に記載のマスクにおける記録許容画素の配置は、斥力ポテンシャルの概念を用いて良好に分散させたものである。換言すれば、このマスクパターンは、それを用いて形成されるドット同士が近接して配置されることをできるだけ避けるように生成され、これにより、記録許容画素の配置を周波数成分で見たとき低周波数成分が少ないものとなる。そして、このマスクを用いることにより、双方向記録でドット形成位置のずれが生じ、そのずれによって記録画像にマスクパターン自体の模様(テクスチャー)が仮に顕在化しても、それが良好に分散していることにより視認し難くすることができる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−144552号公報
【特許文献2】特開平7−052390号公報
【特許文献3】特開2002−96455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年のインクジェット記録システムでは、その高速化、高密度化、また、インクの種類の多様化に伴い、単位時間当たりに付与されるインク量や記録媒体の単位面積あたりに付与されるインクの量が増大する傾向にある。このため、これまで以上に重要な課題としてビーディング問題があげられる。ビーディングは、記録媒体で吸収しきれないインクが媒体上で接触して連なり、それが記録画像においてムラなどの原因となるものである。
【0010】
ビーディングを低減させるには、短い時間内に付与されるインクを極力異なる位置に配置することが重要である。このために、各色インク毎に、極力異なるマスクパターンを用いるのが有効である。こうすることで、異なる色のインク同士が同じ場所に打ち込まれる確率を下げることができる。
【0011】
しかしながら、マスクパターンを色毎に異ならせるだけでは、ビーディングの低減は十分ではない。
【0012】
図86(a)〜(c)はこの問題を説明する図である。同図は、マルチパス記録におけるある走査でシアン、マゼンタ、イエローの順でそれぞれのインクが記録媒体に打ち込まれて行く過程を示している。図86(a)に示すように、未だ何も打ち込まれていない記録媒体に先ずシアンインクが吐出される。このとき、それぞれのシアンインクが打ち込まれる位置は用いているマスクの記録許容画素の配置に従うことはもちろんである。そして、このインクが記録媒体に完全に吸収される前は、記録媒体上に上記マスクに従った配置でシアンインク滴10Cが存在する。次に、図86(b)に示すように、マゼンタインクが、同様に対応するマスクに従った位置に吐出され、同様に吸収前にはインク滴10Mを形成する。ここで、シアンインクとマゼンタインクについてそれぞれ用いるマスクの記録許容画素配置の関係によっては、シアンインク滴10Cとマゼンタインク滴10Mとが接して連結したインク滴10B(図中、×印を付したもの)を形成することがある。さらに、図86(c)に示すように、イエローインクが、同様に、対応するマスクに従った位置に吐出され吸収前にはインク滴10Yを形成する。この場合も、それぞれのインクについて用いるマスクの記録許容画素配置の関係によって、連結したインク滴10B(図中、×印を付したもの)を形成する。さらに走査が重ねられて、画素に対するインク滴の比率が高くとなると、同じ画素にインク滴が重ねて吐出されることもあり、同様の連結したインク滴を形成する。
【0013】
このように、順次吐出されるインク滴が隣接ないし近接する画素あるいは同じ画素に付与される場合には、互いが接触して相互の表面張力によって引き合い、2つ分あるいは3つ分の(あるいはそれ以上の)インク滴が合体した大きな滴10B(グレイン)を形成する。一度このようなグレインが形成されると、次に隣接ないし近接した位置に付与されたインク滴はそのグレインに引き寄せられ易くなる。すなわち、最初に発生したグレインが核となって徐々に成長し、やがて大きなグレインを生成する。そして、特に一様な画像領域では、このようなグレインが記録媒体に定着したものが不規則に散らばった状態で散在し、ビーディングとして視認されることとなる。
【0014】
また、マスクパターンは、一般にそのパターンを2次元方向に繰り返して用いる。このため、上述したグレインの分布は、マスクパターンの繰り返し周期の模様として人間の目に知覚されやすくなってしまう。
【0015】
これらの問題は、特許文献1、2に記載のマスクパターンでは解消できない。なぜなら、これら特許文献1,2では、異なる色のマスクパターン間で分散を考慮して設計をしていないからである。
【0016】
異なる色間でこのような関連性を持たせたマスク設計を行っていない特許文献1、2のマスクでは、異なる色同士のマスクを重ねたときの記録許容画素の配置はその分散が悪く、分割記録の途中の画像(中間画像)におけるドットの隣接やさらにはドットの重なりを避けることができない。
【0017】
本発明は、上述した問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、分割記録の途中におけるグレインが原因で生じるビーディングによる画質劣化を軽減できるデータ処理方法、データ処理装置、マスク製造方法およびマスクパターンを提供することにある。
【0018】
なお、上記グレインは、インク同士の表面張力によってのみ生じるものではない。例えば、インクとこれを凝集あるいは不溶化させる処理液など、互いに反応し合う液体が同じ走査で付与される場合、接触した各液滴は、より強固な化学反応によって結合され、これがグレインを形成する場合もある。また、同色のインクが同じ走査で付与される場合も、これらの間でグレインが発生する。従って、本発明の別の目的は、このようなグレインが原因で生じる問題点も解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための本発明は、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0020】
他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0021】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少なく、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0022】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0023】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0024】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0025】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0026】
また、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することで得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0027】
他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0028】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少なく、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0029】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【0030】
さらに他の形態では、第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、分割記録の途中におけるグレインが原因で生じるビーディングによる画質劣化を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0033】
本発明の実施形態は、マルチパス記録の各走査で用いる2値のドット記録データを生成するためのマスクの製造ないしそのマスクパターンに関するものである。本発明の具体的ないくつかの実施形態を説明する前に、マスクパターンを製造しあるいはマスクパターンを用いてドット記録データを生成するための構成について説明する。ここで、本明細書において「ドット記録データ」とは、ドットの記録を示すデータを意味する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係るホスト機器として機能するパーソナルコンピュータ(以下、単にPCとも言う)の主にハードウェアおよびソフトウェアの構成を示すブロック図である。このホスト機器は、プリンタ104で記録する画像データを生成する。
【0035】
図1において、ホストコンピュータであるPC100は、オペレーティングシステム(OS)102によって、アプリケーションソフトウェア101、プリンタドライバ103、モニタドライバ105の各ソフトウェアを動作させる。アプリケーションソフトウェア101は、ワープロ、表計算、インターネットブラウザなどに関する処理を行う。モニタドライバ105は、モニタ106に表示する画像データを作成するなどの処理を実行する。
【0036】
プリンタドライバ103は、アプリケーションソフトウェア101からOS102へ発行される各種描画命令群(イメージ描画命令、テキスト描画命令グラフィクス描画命令など)を描画処理して、最終的にプリンタ104で用いる2値の画像データを生成する。詳しくは、図2で後述される画像処理を実行することにより、プリンタ104で用いる複数のインク色それぞれの2値の画像データを生成する。
【0037】
ホストコンピュータ100は、以上のソフトウェアを動作させるための各種ハードウェアとして、CPU108、ハードディスク(HD)107、RAM109、ROM110などを備える。すなわち、CPU108は、ハードディスク107やROM110に格納されている上記のソフトウェアプログラムに従ってその処理を実行し、RAM109はその処理実行の際にワークエリアとして用いられる。
【0038】
本実施形態のプリンタ104は、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して走査し、その間にインクを吐出して記録を行ういわゆるシリアル方式のプリンタである。記録ヘッドは、C、M、Y、Kそれぞれのインクに対応して用意され、これらがキャリッジに装着されることにより、記録用紙などの記録媒体に対して走査することができる。それぞれの記録ヘッドは、吐出口の配列密度が1200dpiであり、それぞれの吐出口から3.0ピコリットルのインク滴を吐出する。また、それぞれの記録ヘッドの吐出口の数は512個である。
【0039】
プリンタ104はマルチパス記録を実行可能な記録装置である。そのために、後述の各実施形態で説明されるマスクを所定のメモリに格納しておき、記録の際は走査およびインク色ごとに定められたマスクを用いて2値の分割画像データを生成する処理を行う。
【0040】
また、マスクパターンが所定のメモリに予め格納されておらずPC100がマスク製造のためのデータ処理装置として機能するときは、後述の各実施形態でそれぞれ説明されるマスク製造処理を実行する。そして、製造したマスクデータは、プリンタ104の所定のメモリに格納される。
【0041】
図2は、図1に示した構成においてプリンタ104で記録を行う際のPC100およびプリンタ104における主なデータ処理過程を説明するブロック図である。本実施形態のインクジェットプリンタ104は、上述したようにシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクによって記録を行うものであり、そのためにこれら4色のインクを吐出する記録ヘッドJ0010を備える。
【0042】
ホストPC100のアプリケーション101を介して、ユーザはプリンタ104で記録する画像データを作成することができる。そして、記録を行うときはアプリケーション101で作成された画像データがプリンタドライバ103に渡される。
【0043】
プリンタドライバ103は、その処理として、前段処理J0002、後段処理J0003、γ補正J0004、2値化処理J0005、および印刷データ作成J0006をそれぞれ実行する。前段処理J0002では、アプリケーションによる画面を表示する表示器が持つ色域をプリンタ104の色域に変換する色域変換を行う。具体的には、R、G、B夫々が8ビットで表現された画像データR、G、Bを3次元LUTにより、プリンタの色域内の8ビットデータR、G、Bに変換する。次いで、後段処理J0003では、変換された色域を再現する色をインク色に分解する。具体的には、前段処理J0002にて得られた8ビットデータR、G、Bが表す色を再現するためのインクの組合せに対応した8ビットデータC、M、Y、Kを求める処理を行う。γ補正J0004では、色分解で得られたCMYKのデータ夫々についてγ補正を行う。具体的には、色分解で得られた8ビットデータCMYK夫々がプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。次いで、2値化処理J0005では、γ補正がなされた8ビットデータC、M、Y、Kそれぞれを1ビットデータC、M、Y、Kに変換する量子化処理を行う。最後に、印刷データ作成処理J0006では、2値化された1ビットデータC、M、K、Yを内容とする2値の画像データに印刷制御データなどを付して印刷データを作成する。ここで、2値の画像データは、ドットの記録を示すドット記録データと、ドットの非記録を示すドット非記録データを含む。なお、印刷制御データは、「記録媒体情報」、「記録品位情報」、および給紙方法等のような「その他制御情報」とから構成されている。以上のようにして生成された印刷データは、プリンタ4へ供給される。
【0044】
一方、プリンタ104は、入力されてきた印刷データに含まれる2値の画像データに対しマスクデータ変換処理J0008を行う。マスクデータ変換処理J0008では、予めプリンタの所定のメモリに格納されている、後述の各実施形態で説明されるマスクパターンを用い、入力されてきた2値の画像データに対しAND処理をかける。これにより、マルチパス記録におけるそれぞれの走査で用いられる2値の分割画像データが生成されると共に、実際にインクが吐出されるタイミングが決定される。なお、2値の分割画像データには、ドット記録データとドット非記録データが含まれる。
【0045】
図3は、インクジェットプリンタ104を示す斜視図である。キャリッジM4000は、記録ヘッドおよびこれにシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)それぞれのインクを供給するインクタンクH1900を搭載した状態で図のX方向(主走査方向)に移動し、記録ヘッドの各ノズルは、2値の分割画像データに基づき所定のタイミングでインクを吐出する。記録ヘッドの1回の主走査が終了すると、記録媒体は図のY方向(副走査方向)に所定量だけ搬送される。以上の記録主走査と副走査とを交互に繰り返すことにより、マルチパス記録による画像が順次形成されていく。
【0046】
以下では、上述の記録システムにおいて用いられあるいは製造される、マルチパス記録の画像を完成する走査(以下、パスとも言う)回数と記録許容画素の比率によって区別されるマスクパターンの製造方法およびそれによるマスクパターンのいくつかの実施形態を説明する。
【0047】
〔実施形態1:2パス記録用100%均等マスク〕
(1)本実施形態の概要
本実施形態は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インクについて2回の走査で画像を完成する2パスのマルチパス記録に関する。そして、この2パス記録に用いるインク色のそれぞれについて複数(本実施形態では2)回の走査それぞれに用いるマスク(以下では、「1プレーン」のマスクと言う)が良好に分散しているだけでなく、これらのマスクの任意の複数のプレーンを合わせたものも良好に分散したものである。
【0048】
図4は、2パス記録を説明するために、記録ヘッド、マスクパターンおよび記録媒体を模式的に示した図である。なお、この図では、図示および説明の簡略化のため、シアン、マゼンタ、イエローの3色で2パス記録を行う場合について説明する。以下で説明するマスクについても同様である。
【0049】
シアン、マゼンタ、イエローの各色ノズル群は第1グループおよび第2グループの2つのグループに分割され、各グループには256個ずつのノズルが含まれている。各グループには本実施形態のマスクパターン(C1、C2、M1、M2、Y1、Y2)が対応付けられており、各マスクパターンの副走査方向(搬送方向)の大きさは各グループのノズル個数と同じ256画素分となっている。また、走査方向の大きさも256画素分となっている。また、同色インクのノズル群に対応する2つのマスクパターン(C1とC2、あるいはM1とM2、あるいはY1とY2)は互いに補完の関係にあり、これらを重ね合わせると256×256画素に対応した領域の記録が完成される構成となっている。
【0050】
各色ノズル群はノズル配列方向と略直交する方向(図の矢印で示した「ヘッド走査方向」)へ走査しながら記録媒体にインクを吐出する。この例では、各領域に対してC,M,Yのインク吐出が行われる。また、走査が終了するたびに、記録媒体は走査方向と直交する方向(図の矢印で示した「記録媒体搬送方向」)に1つのブループの幅分(ここでは、256画素分)ずつ搬送される。これにより、記録媒体の各グループの幅に対応する大きさの領域は2回の走査によって画像が完成する。
【0051】
さらに具体的に説明すると、第1走査では記録媒体上の領域Aに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いてCMYの順番で記録が行われる。そして、この第1走査では領域Aに対してはマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0052】
次に、第2走査では、第1走査での記録が終了した領域Aに対して、Cノズル群の第2グループ、Mノズル群の第2グループ、Yノズル群の第2グループをYMCの順番で用いて残りの記録が行われるとともに、未記録状態の領域Bに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いてYMCの順番で記録が行われる。従って、第2走査では領域Aに対してマスクパターンC2、マスクパターンM2、マスクパターンY2が用いられるとともに、領域Bに対してマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。更に、このような動作を続けることで、C1M1Y1Y2M2C2の順番、あるいはY1M1C1C2M2Y2の順番で各領域について記録が行われていく。
【0053】
図5は、図4で説明した2パス記録に用いるマスクとその補完関係を概念的に説明する模式図である。図5において、P0001は、図4に示したC、M、Yのうち、1つの色の記録ヘッドを示し、ここでは、図示の簡略化のため8個のノズルを有するものとして示している。ノズルは、上述したように第1および第2の2つのグループに分割され、各ノズルグループにはそれぞれ4つのノズルが含まれる。P0002AおよびP0002Bは、この第1および第2グループのノズル列にそれぞれ対応したマスクパターンを示す。すなわち、第1走査で用いるマスクパターンP0002A(同図中、下側のパターン)と第2走査で用いるマスクパターンP0002B(同図中、上側のパターン)をである。これらがそれぞれ1プレーンのマスクとなる。それぞれのマスクパターンは、記録許容画素が黒塗りで示されており、非記録許容画素が白で示されている。第1走査用のマスクパターンP0002Aと第2走査用のマスクパターンP0002Bは互いに補完関係にあり、従って、これらを重ね合わせると記録許容画素が4×4のエリアを総て埋めるパターンとなる。なお、図に示すパターンは説明を容易にするため、以下で示す本実施形態のマスクパターンとは異なるパターンとして示している。この図では、記録許容画素の配置が千鳥、逆千鳥となっているが、このような配置のマスクパターンは本発明の範囲に含まれない。
【0054】
ここで、「記録許容画素」と「非記録許容画素」について定義する。「記録許容画素」とは、上述したように、ドットの記録(インクの吐出)を許容する画素のことである。この記録画素に対応する2値の画像データが吐出を示すデータであればドット記録が行われ、非吐出を示すデータならばドット記録は行われない。一方、「非記録許容画素」とは、2値の画像データに関わらず記録を許容しない画素のことである。従って、仮に、この非記録許容画素に対応する2値の画像データがインク吐出を示すデータであっても記録は行われない。
【0055】
P0003およびP0004は、2パス記録によって完成する画像を、それを構成するドット配置で示している。なお、この画像は、説明を容易にするため、総ての画素にドットを形成するいわゆるベタ画像であり、従って、そのドット記録データの生成に用いるマスクP0002の記録許容画素の配置がそのまま反映されたドット配置を示している。第1走査では、第1グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Aを用いて生成される。そして、記録媒体は図の矢印の方向にノズルグループの幅分ずつ搬送される。次の、第2走査では、上記搬送量分ずれた領域に対する第1グループのドット記録データは、同じくマスクパターンP0002Aを用いて生成され、上記第1グループで記録された領域に対する第2グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Aを用いて生成される。この2回の記録走査によって画像が完成する。
【0056】
図6は、C、M、Yのインクを用いて(上述したようにブラックKは説明の簡略化ため省かれている)、図4および図5で説明した2パス記録を行う場合を説明する図である。図6に示すように、マスクC1、M1、Y1、C2、M2、Y2を用い、2回の走査(図6に示す例では、往走査と復走査)でC、M、Yそれぞれのインクを吐出し、カラー画像を記録する。
【0057】
図6(a)は、往走査(図4の右方向への走査)、復走査(図4の左方向への走査)の順で記録される領域の画像が完成していく様子を示したものである。1回目の走査である往走査では、最初に、1パス目のシアン用マスク(マスクC1)を用いて生成したシアンの分割画像データのドット記録データに基づいてシアン画像を記録する。同じ走査で、マゼンタおよびイエローそれぞれのマスク(マスクM1、Y1)を用いて生成した分割画像データのドット記録データに基づき、マゼンタ画像をそれより前に記録したシアン画像に重ねて、さらに、イエロー画像をそれより前に記録したシアン、マゼンタ画像に重ねて順次記録する。記録媒体を所定量搬送した後の、2回目の走査である復走査では、同様に、順次、マスクY2、M2、C2を用いて生成したそれぞれイエロー、マゼンタおよびシアンのドット記録データに基づき、それより前に記録した画像に重ねて記録する。
【0058】
一方、図6(b)は、復走査(図4の左方向への走査)、往走査(図4の右方向への走査)の順で記録される領域の画像が完成していく様子を示したものである。1回目の走査である復走査では、最初に、1パス目のイエロー用マスク(マスクY1)を用いて生成したイエローの分割画像データのドット記録データに基づいてイエロー画像を記録する。同じ走査で、マゼンタおよびシアンそれぞれのマスク(マスクM1、C1)を用いて生成した分割画像データのドット記録データに基づき、マゼンタ画像をそれより前に記録したイエロー画像に重ねて、さらに、シアン画像をそれより前に記録したイエロー、マゼンタ画像に重ねて順次記録する。記録媒体を所定量搬送した後の、2回目の走査である往走査では、同様に、順次、マスクC2、M2、Y2を用いて生成したそれぞれシアン、マゼンタおよびイエローのドット記録データに基づき、それより前に記録した画像に重ねて記録する。
【0059】
このように、C、M、Yの3色を用い、2回の走査で画像を完成する2パス記録を行うときは、1パス目のシアン画像と1パス目のマゼンタ画像を合わせた画像、この画像にさらに1パス目のイエロー画像を重ねた画像、さらに、これら1パス目の画像に2パス目のイエロー画像を重ねた画像、といったマスクのプレーンごとの画像を重ねた中間画像が存在する。このような中間画像では、図86(a)〜(c)で説明したグレインが生じることがある。特に、記録の高速化、高密度化、また、用いるインクの種類の多様化に伴い、単位時間当たりに付与されるインク量や記録媒体の単位面積あたりに付与されるインクの量が増大する場合には、中間画像におけるこのグレインの発生は顕著となる。そして、中間画像で発生したグレインは、そのまま定着して完成した画像において不規則なまだら模様などのビーディングとして視認される。
【0060】
本実施形態では、このような中間画像におけるグレインの発生を避けるべく、それぞれのプレーンのマスクを重ねたときの記録許容画素の配置が低周波数成分が少ない特性を有するようにしている。低周波数成分が少ないため、各段階における中間画像におけるインクドットの偏りを少ない状態に保つことができる。また、重要な特性として、画像データやその他ノイズなどとの干渉を防ぐために、非周期なパターン特性をもたせる。つまり、プレーンのマスクを重ねたときの記録許容画素の配置が非周期で且つ低周波数成分が少ない特性を有するようにし、分散性の優れたものにしている。これにより、画像の完成に至る各段階の中間画像におけるドットの近接ないし隣接、また、ドットの重なりを、極力排除するようにする。また、仮に、ドットの重なりや隣接が排除しきれない場合でも、そのような重なり箇所などについても分散性の高いものとする。
【0061】
なお、「低周波数成分」とは、周波数成分(パワースペクトル)が存在する空間周波数領域のうち、半分より低周波側にある成分を指す。
【0062】
(2)マスクの製法
本発明の実施形態に係るマスクの製造方法は、大別して、複数パス分のマスクを同時に生成する方法(同時生成)と、パスごとに順次マスクを生成する方法(パスごとの生成)の2つの方法のいずれかで実施することができる。前者の同時生成方法は、(画像を完成するパス数(走査回数)−1)パス分のマスクを同時に生成し、残りの1パス分のマスクは、その記録許容画素が同時生成されたマスクの記録許容画素の配置に対して排他的になるように生成するものである。後者のパスごとの生成方法は、画像を完成する複数のパス(走査)ごとに順次マスクを生成する方法であり、最後のパス分のマスクは、前者の方法と同様に、記録許容画素がそれまでに生成されたマスクの記録許容画素の配置に対して排他的になるように生成する。なお、本実施形態の場合は、2パス記録に用いるマスクであることから、同時生成とパスごとの生成は同じものとなる。
【0063】
さらに、上記2つの生成方法それぞれについて、具体的に記録許容画素の配置を定める仕方として、マスクの総ての記録許容画素を予め所定の配置としこれらを移動させながら、生成されるマスク全体で分散性を上げて行く方法(以下、「配置移動法」)と、生成されるマスク全体で分散性を上げながら記録許容画素を1つずつ配置して行く方法(以下、「順次配置法」)とを実行することができる。
【0064】
図7は、本実施形態の2パス記録に用いるマスクの製法を概念的に示す図である。
【0065】
マスク生成のステップ1として、1パス目に用いるそれぞれのプレーンのマスクC1、M1、Y1を生成する。そして、ステップ2として、2パス目に用いるそれぞれのプレーンのマスクC2、M2、Y2を、上記1パス目のマスクC1、M1、Y1とそれぞれ補完の関係を持つように生成する。すなわち、色ごとに、2パス目のマスクは、その記録許容画素の配置は1パス目のマスクの記録許容画素の配置と排他的な関係となるように生成される。
【0066】
以上のマスクの製法において、1パス目のマスクC1、M1、Y1それぞれの記録許容画素の配置は、次のように行われる。最初に配置移動法について説明し、次に、順次配置法について説明する。なお、これらの配置方法のいずれを用いてもよいことはもちろんである。
【0067】
配置移動法
図8は、本実施形態の2パス記録に用いるマスクの記録許容画素の配置移動法による配置決定処理を示すフローチャートである。
【0068】
先ず、ステップS801で、1パス目のマスクC1、M1、Y1それぞれのプレーンのサイズに対応したC、M、Yそれぞれの50%濃度の画像を取得する。そして、ステップS802で、それぞれの画像について誤差拡散法などの2値化手法を用いて2値化を行う。これにより、マスクC1、M1、Y1それぞれのプレーンについて、1ビットのデータが“1”である記録許容画素がマスク画素全体の50%に配された初期配置を得ることができる。なお、この2値化の手法を用いて記録許容画素の初期配置を得るのは、その用いる2値化の手法に応じてある程度、初期状態で分散性のよい配置を得ることができるからであり、これにより、その後の最終的な配置決定までの演算時間ないし収束時間を短くできるからである。換言すれば、本発明を適用する上で初期配置を得る方法は本質ではなく、例えば、マスクのプレーンにおいて、1ビットのデータが“1”である記録許容画素をランダムに配置した初期配置であってもよい。
【0069】
次に、ステップS803で、上記のようにして得たマスクC1、M1、Y1それぞれのプレーンの総ての記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する。具体的には、
(i)同一プレーン内の記録許容画素間に距離に応じた斥力を与える。
(ii)さらに、異なるプレーン間の記録許容画素にも斥力を与える。
(iii)同一プレーンと異なるプレーン間に異なる斥力を与える。
(iv)異なるプレーンの記録許容画素の重なりを認め、記録許容画素の重なり(2つの記録許容画素重なり、3つの記録許容画素重なり、…)同士も組み合わせに応じた斥力を与える。
【0070】
図9は、本実施形態に係る基本斥力ポテンシャルE(r)の関数を模式的に示す図である。
【0071】
同図に示すように、本実施形態で規定する斥力関数は、その斥力が及ぶ範囲をr=16(画素;記録許容画素が配置されるマスクの画素)までとする。このような距離とともに減衰するポテンシャルを用いることにより、基本的に、記録許容画素が接近して配置されるとエネルギーが高い状態、すなわち不安定な状態となり、収束計算の結果、接近した配置はできるだけ選択されないようにすることができる。
【0072】
なお、この斥力の形状は、マスク画素全体に対する記録許容画素の割合により決定することがより望ましい。
【0073】
また、複数色のインクを用いて記録を行う場合、インクドットを配置できる位置(解像度1200場合の場合は、1インチ四方に1200×1200個の可能位置がある)以上に重ねてインクドットを配置するため、各記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する際には、記録許容画素の上に記録許容画素が重なることを考慮する。このため、r=0において有限の斥力ポテンシャルを持つように関数を定義する。これにより、記録許容画素の重なりをも考慮した分散が可能となる。
【0074】
本実施形態では、同一プレーンの記録許容画素同士に関してαE(r)、異なるプレーン間の記録許容画素同士に関してβE(r)、重なる記録許容画素同士に関してγs(n)E(r)の斥力ポテンシャルを与えて計算を行う。つまり、ある記録許容画素が存在することによるポテンシャルは、距離r以内の範囲にある、同プレーンの記録許容画素、異なるプレーンの記録許容画素、さらには異なるプレーンの重なる記録許容画素についての斥力ポテンシャルが加算される。
【0075】
なお、マスクパターンのサイズは有限であるが(本実施形態の場合、256×256画素となる)、ポテンシャル計算においては、256×256画素の同じパターンがあたかも繰り返しているような周期境界条件を用いる。よってマスクパターンの左端は右端と隣接しており、下は上と隣接していることとなる。
【0076】
上記の斥力ポテンシャルにおいて、係数α、β、γは重み付け係数であり、本実施形態では、α=3、β=1、γ=3の値を用いる。このα、β、γの値によって記録許容画素の分散性が影響を受ける。このα、β、γの値は、例えば、実際には実験を行い、マスクを用いて記録される記録画像を参照した最適化により求めることができる。
【0077】
また、係数s(n)は、重なる記録許容画素を分散させるためにγに加えてさらに積算する係数である。この係数s(n)は、重なりが多いほどそれらの記録許容画素をより分散させるべく重なりの数に応じた値とするものである。本願発明者の実験によれば、次の2つの式いずれかによって求められるs(n)を用いることにより、分散に関してよい結果を得ることができる。
【0078】
【数1】
【0079】
すなわち、nを重なりの数とするとき、組合せの数の和をs(n)とするものである。詳細には、斥力を計算する注目記録許容画素に対して重なる(同じプレーンまたは異なるプレーンにおける同じ位置の)記録許容画素を調べるとともに、注目記録許容画素から距離rに位置する記録許容画素を調べる。この場合に、注目記録許容画素およびその画素と同じ位置で重なる他のプレーンの記録許容画素と、距離rにある各プレーンのその画素で同じように重なる記録許容画素の共通する重なりの数をnとする。そして、これら2つの画素間の重なった記録許容画素同士による斥力を考える。
【0080】
この場合、例えば、ある2画素間で第1プレーン、第2プレーンおよび第3プレーンにそれぞれ共通に記録許容画素が存在する例を考えると、n=3となる。そして、それらの画素間には3つの記録許容画素の重なりに起因する斥力を作用させる。ここで、3つの記録許容画素の重なりによる斥力を考えるとき、3つの記録許容画素の重なりとともに、2つの記録許容画素の重なり同士や1つの記録許容画素同士の斥力が多重的に作用すると考える。換言すれば、第3プレーンを考えなければ、第1プレーンと第2プレーンの2つの記録許容画素の重なりと考えることができ、また、第2プレーンを考えなければ第1プレーンと第3プレーンの2つの記録許容画素の重なりとも考えられる。第1プレーンを考えなければ第2プレーンと第3プレーンの重なりと考えられる。このような記録許容画素が重なることの多重的な効果を計算するために、重なりの組合せによる斥力を定義し上記のようなs(n)を用いる。これによれば、分散性のよい記録許容画素配置を得ることができることが実験上確認されている。
【0081】
再び、図8を参照すると、ステップS803で、総ての記録許容画素の斥力ポテンシャルを合計した総エネルギーが求まっている。そして、この総エネルギーを減衰させる処理を行う。
【0082】
この処理では、総ての記録許容画素について順に、距離rが4以内の画素の中で斥力ポテンシャルが最も下がる画素に記録許容画素を移す。このような処理を繰り返していくことによって(ステップS804)、総ての記録許容画素の斥力ポテンシャルの合計値である総エネルギーを低下させて行く。すなわち、この総エネルギーが徐々に順次減少して行く過程は、記録許容画素の配置が順次分散性を高める過程、つまり記録許容画素配置の低周波数成分が順次少なくなって行く過程である。
【0083】
ステップS805では、ステップS804における総エネルギーの低下率を計算し、それが所定値以下であると判断すると、エネルギー減衰処理を終了する。なお、この所定値は、例えば、実際に印刷を行った結果をもとに、低周波数成分が適切に抑えられた画像を記録できる低下率として求めることができる。
【0084】
最後にステップS806で、上記のように総エネルギーの低下率が所定値以下となった状態の各プレーンを1パス目のマスクC1、M1、Y1として設定する。さらに、これらマスクの記録許容画素の配置に対するそれぞれ排他的位置を記録許容画素の配置とした2パス目のマスクC2、M2、Y2を設定する。
【0085】
なお、本実施形態では、ステップS805において総エネルギーの低下率が所定値以下となったか否かを判定し、低下率が所定値以下となったらステップS806へ移行するようにしている。しかし、本実施形態はこの例に限られるものではない。例えば、ステップS805において総エネルギーが所定値以下となったか否かを判定し、総エネルギーが所定値以下となったらステップS806へ移行するようにしてもよい。
【0086】
図10(a)〜(d)は、上述した斥力ポテンシャルの計算と総エネルギーの減衰処理を模式的に説明する図である。詳しくは、本実施形態に係るC1、M1、Y1の3プレーンを斜視図で示し、また、特に記録許容画素の移動を平面図で示す図である。ここで、最小の正方形はマスクの画素を示し、3プレーンの重なりにおいて重なる画素がプレーン間で同じ画素位置に対応する。
【0087】
図10(a)は、同一プレーンに記録許容画素が存在する場合にそれら記録許容画素間の斥力によってポテンシャルが加えられる(増す)ことを説明する図である。図に示す例では、プレーンC1の注目画素の記録許容画素Doと同じプレーンで距離r離れた画素に記録許容画素が1個存在する例であり、この場合、α=3が適用され、記録許容画素Doのポテンシャルとして1×αE(r)のポテンシャルが加えられる。
【0088】
図10(b)は、注目記録許容画素Doとは異なるプレーン(プレーンM1、Y1)に記録許容画素が存在する場合に、それら2個の記録許容画素との関係で加えられる斥力ポテンシャルを説明する図である。異なるプレーン間の記録許容画素との関係であるから、β=1が適用され記録許容画素Doのポテンシャルとして記録許容画素2個分の2×βE(r)のポテンシャルが加えられる。
【0089】
図10(c)は、上記の2つの場合である、同一プレーンに記録許容画素が存在する場合と異なるプレーンに記録許容画素が存在する場合に加え、異なるプレーンの同一画素に記録許容画素が存在して記録許容画素の重なりが存在する場合に、それらの記録許容画素との関係で加えられる斥力ポテンシャルを説明する図である。図10(a)および(b)の場合に加え、注目記録許容画素DoのプレーンC1と異なるプレーンY1の同じ画素に記録許容画素が存在することにより、同プレーンの斥力ポテンシャル1×αE(r)と、同じ画素の異なるプレーンの1個の記録許容画素による斥力ポテンシャル1×βE(0)と、異なるプレーンの2個の記録許容画素による斥力ポテンシャル2×βE(r)と、重なる数n=2でγ=3が適用される、重なりによる斥力ポテンシャルγs(2)×E(r)のポテンシャルが加えられる。この結果、図10(c)に示す記録許容画素配置において注目記録許容画素Doが存在することによる斥力ポテンシャルの合計は、1×βE(0)+1×αE(r)+2×βE(r)+γs(2)×E(r)となる。
【0090】
図10(d)は、図10(c)に示す記録許容画素配置において、記録許容画素Doを移動させることにより、その記録許容画素の斥力ポテンシャルの合計が変化することを説明する図である。図10(d)に示すように、記録許容画素Do(プレーンC1の記録許容画素)が同じプレーンの隣の画素に移ると、その記録許容画素Doが存在することによる斥力ポテンシャルの合計は、距離がr2、重なり同士の数nが0となることなどにより、βE(1)+1×αE(r2)+2×βE(r2)に変化する。そして、図10(c)に示す記録許容画素配置の場合の斥力ポテンシャルの合計1×βE(0)+2×αE(r)+1×βE(r)+γs(2)×E(r)と、図10(d)の記録許容画素Doが移動したことによる斥力の合計とを比較し、この移動前後の斥力ポテンシャルの合計の変化を知ることができる。
【0091】
なお、この斥力ポテンシャルの合計は、上記の説明では、2つの画素または記録許容画素移動させたときは3つの画素の記録許容画素によるエネルギーの合計を求めるものとしているが、これは説明を簡易にするためであり、実際は、これらの記録許容画素以外に存在し得る他の画素の記録許容画素を含めた記録許容画素との関係に基づく斥力ポテンシャルの積分として求められるものであることはもちろんである。
【0092】
図10(a)〜(c)に示したように斥力ポテンシャルの合計が計算される各記録許容画素の中で、例えば、記録許容画素Doが斥力ポテンシャルの合計が最も大きい場合、図10(d)で説明したようにその移動前後の斥力ポテンシャルの変化を求め、移動前後で最も斥力ポテンシャルの合計が低くなる画素に記録許容画素Doを移動させる。このような処理を繰り返すことによって3プレーン全体の総エネルギーを下げることができる。すなわち、3プレーンのマスクの重なりにおいて記録許容画素分布が、低周波数成分が少なく良好に分散された配置となる。
【0093】
そして、このように3プレーンのマスクC1、M1、Y1の重なりにおいて記録許容画素が良好に分散されることによって、これらとそれぞれ補完関係にあるマスクC2、M2、Y2もそれぞれ記録許容画素が良好に分散したものとなる。また、これら6プレーンのうち任意の数(2、3、4または5)のプレーンの重なりにおける記録許容画素の分布も、低周波数成分が少ない良好に分散されたものとなる。本実施形態の場合の往復の順で画像が記録される領域については、1パス目のマスクC1、1パス目のマスクM1、1パス目のマスクY1、2パス目のマスクY2、2パス目のマスクM2、2パス目のマスクC2の順で、それぞれのマスクパターンが重なるように用いられて記録が行われる。従って、中間画像である、「1パス目のC+1パス目のM」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY+2パス目のM」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY+2パス目のM+2パス目のC」それぞれのインクドットの分布は、低周波数成分が少なく分散性に優れたものとなる。同様に、復往の順で画像が記録される領域については、1パス目のマスクY1、1パス目のマスクM1、1パス目のマスクC1、2パス目のマスクC2、2パス目のマスクM2、2パス目のマスクY2の順で、それぞれのマスクパターンが重なるように用いられて記録が行われる。従って、中間画像である、「1パス目のY+1パス目のM」、「1パス目のY+1パス目のM+1パス目のC」、「1パス目のY+1パス目のM+1パス目のC+2パス目のC」、「1パス目のY+1パス目のM+1パス目のC+2パス目のC+2パス目のM」、「1パス目のY+1パス目のM+1パス目のC+2パス目のC+2パス目のM+2パス目のY」それぞれのインクドットの分布は、低周波数成分が少なく分散性に優れたものとなる。そして、このようなマスクを用いて生成される各パスのドット記録データによって記録されるドットも良好に分散したものとなる。すなわち、上述のとおり、マスクの記録許容画素の配置パターンはその低周波数成分が少ないことにより、そのマスクを用いて記録されるドットの配置パターンは、マスク処理される前の元の画像におけるドット配置パターンにおける偏りなどが現れないものとなる。つまり、各パスのマスクを用いて記録されるそれぞれのドットパターンも、マスクパターンと同様に低周波数成分が少なく分散性の良いものとなる。
【0094】
これにより、インクと記録媒体との相対的な関係から、仮に、中間画像の段階でインクの浸透が十分に行われなくても、インクドットが分散しているため浸透が不十分なインク同士が接触してグレインを作る確率は低いものとなり、いわゆるグレインインによるビーディングの発生を抑制することができる。また、仮に、グレインが発生しても、これらのグレインが良好に分散した分布となるので、それらグレインが記録画像の品位に及ぼす影響を少なくすることができる。
【0095】
そして、このように、結果として中間画像の段階でインク浸透が必ずしも十分に行われなくてもよいことを考慮すると、プリンタ104において、各プレーン間の記録時間差、つまり吐出時間差を短くすることが可能となる。例えば、キャリッジ速度もしくは吐出周波数を大きくでき、あるいはマルチパス記録におけるパス数を、例えばインクが十分に浸透することを考慮して4パスとしているところ、より少ない2パスにした印刷を実行することも可能となる。
【0096】
なお、上述の配置移動法は、2パスのマスクのうち1パス目に用いる3プレーンのマスクについて適用する場合に関するものであるが、この方法はこの態様に限られず、総てのプレーンに適用して記録許容画素の配置を決定してもよい。本実施形態の2パス記録に用いるマスクの場合、C、M、Yそれぞれの2パス分の6プレーンのマスクに配置移動法を適用してもよい。この場合は、記録許容画素を移動させる範囲を近傍画素に限定せずに、他のプレーンの記録許容画素との関係で配置画素を入れ替える移動を許すものとする。具体的には、例えば、あるプレーンの記録許容画素を同じプレーンの記録許容画素が配置されていない画素に移動させるとともに、その移動した画素に対応する他のプレーンの画素に配置される記録許容画素をその同じプレーンの、前者の記録許容画素があった画素に対応する画素に移動させる、といった入れ替えを行う。これにより、斥力ポテンシャルの計算に係わるプレーン総てにおける記録許容画素の配置関係が変化し、ポテンシャルエネルギーが最小となる入れ替え移動が可能となる。
【0097】
順次配置法
この方法は、上述したように、マスクのプレーンの記録許容画素が未だ配置されていない部分に順次記録許容画素を配置して行く方法である。
【0098】
図11は、本実施形態の順次配置法による記録許容画素の配置決定処理を示すフローチャートである。
【0099】
図11に示す処理は、3つのプレーンに順次1つずつ記録許容画素を配置し、それを繰り返すことにより、それぞれのプレートで50%の記録許容画素の配置を行うものである。先ず、ステップS1101で、記録許容画素を配置しようするときに、その記録許容画素とマスクC1、M1、Y1の各プレーンにおいて既に配置されている記録許容画素との間に発生する斥力ポテンシャルを計算する。
【0100】
斥力ポテンシャルの計算自体は、上述の配置移動法で説明したものと同じである。異なる点は、例えば、図10(a)〜(c)に示す例を参照して説明すると、上述の配置移動法とは異なり、記録許容画素Doが同図に示す画素が既に置いてあるのではなく、記録許容画素Doを新たに置くと仮定したときに、既に配置され同じプレーンC1や異なるプレーンM1、Y1の記録許容画素との関係基づいて斥力ポテンシャルを計算する。以上からも明らかなように、未だ記録許容画素が1つも配置されていない最初の段階では、記録許容画素をどこにおいても斥力ポテンシャルは同じ値となる。
【0101】
次に、ステップS1102で、それぞれのマスク画素に置いたとしたときに計算される斥力ポテンシャルの中で、最小のポテンシャルエネルギーとなるマスク画素を決定する。そして、ステップS1103では、その最小のエネルギーとなるマスク画素が複数あるか否かを判断する。複数ある場合には、ステップS1107で、乱数を用いてその複数の画素の中から1つのマスク画素を決定する。なお、本実施形態では、同じプレーンでは既に記録許容画素が配置されている画素には重ねて配置しないという条件の下で、最小エネルギーの画素を決定する。これは、重み付け係数や斥力ポテンシャル関数などのパラメータによっては、斥力ポテンシャルの計算において同じプレーンで重ねた場合の方が他のプレーンの記録許容画素との関係などでエネルギーが最小となることがあり、その場合に、マスクは1つのマスク画素に1つの記録許容画素のみが許されるので重なりを禁ずるようにするためである。
【0102】
ステップS1104では、決定した最小ポテンシャルエネルギーのマスク画素に記録許容画素を配置する。すなわち、その画素のマスクデータを“1”とする。
【0103】
ステップS1105では、C、M、Yのプレーンについて各1つずつ記録許容画素画が配置されたか否かを判定する。配置されていない場合には、ステップS1101からの処理を繰返す。
【0104】
プレーンC1、M1、Y1とこの順で1つずつ記録許容画素を配置すると、ステップS1106で、3つのプレーンそれぞれの全マスク画素に対して50パーセントまで記録許容画素が配置されか否かを判断する。それぞれのプレーンで50%まで記録許容画素の配置がなされていないときは、ステップS1101からの処理を繰返す。そして、3つのプレーンの総てで50%の記録許容画素が配置されると、本処理を終了する。以上のようにして1パス目のマスクC1、M1、Y1を設定すると、これらと補完関係にあるマスクC2、M2、Y2を続いて設定する。
【0105】
以上説明した順次配置法によっても上述した配置移動法と同様の特性を持つマスクを得ることができる。すなわち、順次配置法による3プレーンのマスクC1、M1、Y1は、それらの重なりにおいて記録許容画素が良好に分散されたものとなる。また、それによって、それぞれ補完関係にあるマスクC2、M2、Y2もそれぞれ記録許容画素が良好に分散したものとなる。また、これら6プレーンのうち任意の数(2、3、4または5)のプレーンの重なりにおける記録許容画素の分布も、低周波数成分が少ない良好に分散したものとなる。
【0106】
なお、上述したマスク製法の他の特徴として、記録許容画素の配置が規則的に繰り返されるような周期パターンが生成されることはない、ということがある。例えば、千鳥パターンやベイヤー型の配置が繰り返されるような周期性を持ったパターンは生成されない。万が一生成されたとしても、斥力ポテンシャルのパラメータを設定し直すことで周期パターンを避ける状態に収束させることができる。このように本実施形態のマスク製法によって生成されるマスクは非周期のパターンとなる。
【0107】
また、上述したマスク製法においては、各プレーンにおいて、特にどこかの記録許容画素を使わない設定は行っていない。しかしながら敢えて、各プレーンにおいて記録許容画素として使わない画素を設定したとしても、その画素をさけながらも低周波数成分が少ない良好に分散したものを得ることができる。
【0108】
(3)マスク特性評価
マスクにおける斥力ポテンシャルの重み付け係数α、β、γs(n)の効果
先ず、以上説明した本実施形態のマスク製法によって製造されたマスクに対して、斥力ポテンシャル計算の(距離の議論はしていない、係数の影響のみ)重み付け係数α、β、γs(n)それぞれがどのように影響しているかについて具体的に説明する。上述したように係数αは同一プレーンにおける記録許容画素の分散に影響し、係数βは異なるプレーン間の記録許容画素の分散に影響し、また、γs(n)は異なるプレーンの記録許容画素が同じ位置の画素にあって重なる場合のこの重なりの分散に影響している。
【0109】
なお、本実施形態では、E(r)として同じ関数(図9)を総ての項に用いているが、異なるポテンシャル関数をそれぞれの項に用いることもできる。この場合は、それぞれの関数E(r)と対応するそれぞれの重み付け係数α、β、γ(n)の積であるαE(r)、βE(r)´、γE(r)´´の違いが、本質的に以下で説明する、分散の違いとなって影響を及ぼすことはもちろんである。
【0110】
仮に、同一のプレーン内の記録許容画素間のみに斥力ポテンシャルを定義しエネルギーを減衰させて記録許容画素分布を決める場合、すなわち、αE(r)でα=1、β=γ=0とする場合、1つのプレーンの記録許容画素分布は、それぞれプレーンにおける記録許容画素の配置の分散性がよい。これはαE(r)の効果によるものである。しかし、2つ(複数)のプレーンを重ねたものから重なる記録許容画素(論理積、論理和)、のパターンを抽出したものは、記録許容画素の配置に偏りがあり低周波数成分の多いものとなる。2つのプレーン間でたまたま重なってしまう記録許容が素が発生してしまったり、2つのプレーン間に関連がないために偏りが生じたりするためである。
【0111】
なお、[論理積]パターンとは、文字通り、図12に示すように、複数プレーン間の同じ画素位置について論理積の演算を行うことで得られるパターンである。具体的には、複数(図に示す例では、2つ)のプレーンの対応する画素位置に記録許容画素(“1”)がともに存在するとき、その位置を抽出したパターンが論理積パターンである。この論理積パターンは、異なるプレーン間で記録許容画素の重なりがある場合にその分布を示すものである。
【0112】
なお、[論理和]パターンとは、文字通り、図13に示すように、複数プレーン間の同じ画素位置について論理和の演算を行うことで得られるパターンである。具体的には、複数(図に示す例では、2つ)のプレーンのいずれかの画素位置に記録許容画素(“1”)が存在するとき、その位置を抽出したパターンが論理和パターンである。この論理和パターンは、異なるプレーンそれぞれの記録許容画素の配置を1つのプレーンで示すものである。
【0113】
次に、3プレーンの総ての記録許容画素に同じ斥力ポテンシャルを加えた場合、すなわち、αE(r)およびβE(r)において、α=β=1、γ=0の場合を仮定する。この場合は、それぞれのプレーンの記録許容画素分布は、ある大きさの低周波数成分を持ち分布に偏りがある。一方、上記の3色のプレーンを重ねたものの記録許容画素分布(論理和)は分散がよい。これはα、βが同じ値であることによって、同一プレーンの記録許容画素を分散させる効果が、他のプレーンの記録許容画素を分散させる効果と同じであるため、結果として、それぞれのプレーンでは、記録許容画素分布の分散が不十分になるからである。
【0114】
そこで、同一プレーンと異なるプレーン間で斥力ポテンシャルを変えるべく、例えば、α=3、β=1とする。これにより、他のプレーンの影響を相対的に小さくでき同一プレーン内の分散性がよくなる。さらに、2つのプレーンを重ねたものの記録許容画素分布(論理和パターン)は、低周波数成分の少ない分散の良い分布となる。このように、同一プレーン、異なるプレーンの記録許容画素の分散性の両方がよくなる。つまり、αE(r)とβE(r)の項を作用させ、かつαとβの値を異ならせることにより、同一プレーン内、異プレーン内両方の分散性が良くなる。
【0115】
次に、記録許容画素の重なりがある場合において、先ず、γs(n)E(r)の項を用いない場合を考える。低周波数成分をもたない記録許容画素分布を持った2つのプレーンを、γs(n)E(r)の項を作用させずに、重ねて得られるものの記録許容画素分布から重なり記録許容画素を抽出したもの(論理積)は、低周波数成分が多い分散の悪い分布となる。
【0116】
これに対して、γs(n)E(r)の項を加えた場合、先ず、それぞれのプレーンについて、低周波数成分をもたない記録許容画素分布が得られる。そして、これらのプレーンを重ねたものの記録許容画素分布から重なり記録許容画素を抽出したもの(論理積)の分布も、低周波数成分をもたない記録許容画素の配置となる。
【0117】
このように、γs(n)E(r)の項は、基本的に、重なる記録許容画素同士が良好に分散する効果を与えるものであるが、図10(a)〜(d)にて説明したように、この項が、重なりが多いほどポテンシャルが高くなるよう設定され、そのポテンシャルに応じて記録許容画素を1つずつ移動し、または配置してエネルギーを減らすことにより、エネルギーを減らす処理の過程で重なりの数を減らす効果を与えている。これは、同じプレーンで隣接する記録許容画素について、αE(r)が隣接する記録許容画素の数を減らす効果を与えることと同じことを意味している。このように、γs(n)E(r)の項は、単に重なる記録許容画素同士をできるだけ分散させるようにするだけでなく、その重なりの数を減らす効果をも与えている。そして、この効果によって、隣接や重なりによる記録許容画素の塊における記録許容画素の数はできるだけ少なくし、結果として低周波数成分の少ない記録許容画素分布を得ることができる。
【0118】
以上の観点から、本実施形態では、上述したようにα=3、β=1、γ=3の値を用いる。
【0119】
なお、例えば、α、β<<γとして、複数のプレーンの重なりにおいて抽出される重なる記録許容画素に特に注目し、上記γs(n)E(r)の項の効果によって、重なる記録許容画素が、特に低周波数成分が少ない分散が良いものとすることも可能となる。
【0120】
また、本実施形態では、プレーン間の斥力はすべて、βE(r)としているが、相互作用の大きさなどを考えて各プレーン間で相互作用を異ならせることは有効である。例えば、プレーン数が多い場合になるべく近い時間に打ち込まれるインクに用いるマスクのプレーン間の斥力ポテンシャルを他の斥力ポテンシャルに対して大きくする、つまりβE(r)の係数やE(r)の形をプレーン間で変えることも有効である。また、例えば、反応系を用いた定着において、反応液またはそのような成分を有したインクを記録ヘッドによって吐出する場合に、その反応液等に用いるマスクのプレーンとその反応液等と反応作用が大きいインクに用いるマスクのプレーンの斥力ポテンシャルを通常より多くすることも有効である。斥力ポテンシャルの関数を変える具体例として、斥力が及ぶ範囲の距離rを変える例を挙げることができる。例えば、処理にかかる画像データの階調値が50%階調のとき、上記のようにr=16とし、階調値が50%より大きくまたは小さくなるほどrを大きくするようにすることができる。
【0121】
なお、本明細書では、記録許容画素ないしその重なりが均一に分散するほど、「より良好な分散」もしくは「分散がより良いこと」を意味する。そして、「均一な分散」とは、上記の斥力ポテンシャルの例で言えば総エネルギーを可能な限り低くした状態、すなわち、記録許容画素の重なりや隣接による塊があるときはそれらの重なりや隣接の数をできるだけ少なくした状態であり、さらに、このような状態で、記録許容画素を可能な限り均等に配置することである。さらに、「低周波数成分が少なくなる(小さくなる)」とは、上記のように分散が良いとき、その分布について後述されるパワースペクトルにおける、人間の視覚特性における感度の高い領域(低周波数領域)の周波数成分が、その分散が良い程度に応じて少なくなる(小さくなる)ことを意味する。
【0122】
本実施形態のマスクと従来例のマスク
図14〜図16は、上述した製法によって製造された本実施形態のマスクC1、M1、Y1(以下「積層マスク」という)それぞれの記録許容画素の配置パターンを示す図である。また、図17および図18は、従来例のマスクの同様のパターンを示す図である。詳細には、図17は、シアンインクの1パス目に用い得る特許文献1のように作成したマスク(「自プレーンのみの分散マスク」という)のパターンを示し、図18は、特許文献2に記載されたランダムマスクのパターンを示している。図14〜図18に示される各マスクパターンは、256×256の画素のエリアを有している。各パターンにおいて、白く示した画素は非記録許容画素(すなわちその画素の画像データによらずマスキングされてしまう画素)を、黒く示した画素は記録許容画素(すなわちその画素の画像データに応じてドット形成がなされることになる画素)をそれぞれ表している。
【0123】
これらの図に示すように、図18に示すランダムマスクのみが、他のマスクに比べて、視覚的なザラツキ感が高く、滑らかさに乏しい印象を受ける。これは、ランダムマスクパターンを作成する際に、特にそのプレーン内のドット配置の相関関係を考慮(係数α)することなしに、ランダムにドットの記録許容画素の配置を定めているからである。これに対し、「自プレーンのみの分散マスク」(図17)や本実施形態のマスクのパターン(図14〜図16)は、特に、係数αの効果によって同一プレーン内の分散性を考慮した記録許容画素が配置されているので、記録許容画素の分散に偏りが無く、全体的に滑らかな印象を受ける。
【0124】
図19および図20は、図14および図15に示した本実施形態の積層マスクC1、M1のそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図である。また、図21および図22は、図14、図15および図16に示した積層マスクC1、M1、Y1のそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図である。さらに、図23および図24は、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクのそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図であり、図25および図26は、同様に従来例に係るランダムマスクのそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図である。
【0125】
図19および図20に示すように、本実施形態の2つのマスクを重ねた場合の記録許容画素の配置(論理和)と、その中から記録許容画素が重なったものを抽出したものの配置(論理積)は、ともに分散がよくざらつき感のないものとなっている。これは、上述したように、2つのプレーン相互で記録許容画素の分散を考慮(係数β)するとともに、重なり自体の分散を考慮(係数γs(n))しているからである。
【0126】
また、図21に示すように、本実施形態の3つのマスクを重ねた場合の記録許容画素の論理和パターンは全体に隙間なく記録許容画素が配置されたものとなる。すなわち、本実施形態は3つのプレーン相互で記録許容画素の分散を考慮(係数β)していることから、3つのプレーン相互の記録許容画素は良好に分散し、その結果、全体に隙間なく配置されることとなる。さらに、それぞれのプレーンは2パス記録用の均等マスクであることから50%密度で記録許容画素を配置している。従って、3つのプレーンを重ねたものの密度は150%となって重なりを排除できないが、本実施形態はその重なりを、係数γs(n)によって2つの重なりまでとしている。その結果、図22に示すように、3つの重なりを抽出した論理積パターンではその重なりが存在しないものとなる。
【0127】
これに対し、特許文献1に開示される「自プレーンのみの分散マスク」について異なる色のプレーンを重ねたときの論理和パターンと論理積パターンは、それぞれ図23および図24に示すように、本実施形態のパターン(図19、図20)と較べて分散がよくないものとなっている。これは、上述したように特許文献1では、同じプレーン内の分散は考慮しているものの、プレーン相互の記録許容画素の分散(係数β)や記録許容画素の重なりの分散(係数γs(n))を考慮していないからである。従来例に係るランダムマスクの場合も、図25および図26に示すように、同様に論理和パターンおよび論理積パターンはいずれも分散が良くない。
【0128】
マスクパターンの他の評価方法として、「重ね合わせ」パターンを用いたものを定義する。この「重ね合わせ」パターンは、図27に示すように、複数(図に示す例では2つ)のプレーンのいずれかのマスク画素に記録許容画素(“1”)が存在するとき、その対応する画素に記録許容画素を示すデータ“1”が存在し、かつ記録許容画素が同じマスク画素で重なるときはその数に応じたデータが存在するパターンである。たとえば、重なりが2である場合は“2”、3である場合には“3”というようにする。そして、後述する「重ね合わせパターン」はそのデータが示す数に応じた濃度で表される。すなわち、記録許容画素の重なりが多いほど、黒濃度が濃くなるように示している。この重ね合わせパターンは、異なるプレーンそれぞれの記録許容画素の配置を1つのプレーンで示すとともに、記録許容画素の重なりの配置をその重なりの程度とともに示すことができる。
【0129】
図28および図29は、本実施形態の積層マスクをそれぞれ2つおよび3つ重ねたときの「重ね合わせ」パターンを示す図である。
【0130】
これらの図28、図29に示すパターンは、本実施形態のマスクを用いて記録を行うときのそれぞれ中間画像のインクドットのパターンに近いものを表している。従って、これらのパターンからも、中間画像におけるインクドットやそれらの重なりが良好に分散していることがわかる。
【0131】
図30および図31は、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクを2つ重ねたときの「重ね合わせ」パターンを示す図である。これらの図に示すように、従来例のマスクによる「重ね合わせ」パターンも、記録許容画素およびその重なりの分散性がよくないことがわかる。
【0132】
パワースペクトルによる評価
次に、マスクパターンの周波数特性を示すパワースペクトルによって本実施形態のマスクを評価する。以下で説明するパワースペクトルは、記録許容画素をドットの配置に置き換えたときに得られるものであり、256画素×256画素のサイズのプレーンについてパワースペクトルを求めたものである。ここで、パワースペクトルは、2次元空間周波数を1次元として扱える、「T. Mitsa and K. J. Parker, “Digital Halftoning using a Blue Noise Mask”, Proc. SPIE 1452, pp.47-56(1991)」に記載のradially averaged power spectrum である。
【0133】
図32は、本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクそれぞれについて、単独のマスクパターン(C1)の周波数特性を説明する図である。図33は、これら3種のマスクそれぞれについて、2つマスク(C1、M1)の論理和パターンの周波数特性を説明する図である。図34は、これら3種のマスクそれぞれについて、2つマスク(C1、M1)の論理積パターンの周波数特性を説明する図である。
【0134】
図32において、各曲線は、それぞれのマスクパターンの、空間周波数に対するパワースペクトルを示している。曲線aは、本実施形態の積層マスクのマスクパターン(図14)のパワースペクトルを、曲線bは、自プレーンのみの分散マスクのパターン(図17)のパワースペクトルを、また、曲線cは、ランダムマスクのパターン(図18)のパワースペクトルをそれぞれ示す。これら3つの曲線を比較すると、ランダムマスク(曲線c)は、空間周波数の全域に対し略一律なパワーを有していることがわかる。ランダムマスクは、ランダムに記録許容画素の配置を定めているために、記録許容画素が分散する間隔に特別な特徴を有していない。従って、低周波数領域から高周波数領域にかけて略一様な分布となる。一方、本実施形態の積層マスクおよび従来例に係る自プレーンのみの分散マスク(曲線aおよびb)は、低周波数の領域でのパワーが低く、パワーのピークが高周波に存在している。これは、記録許容画素同士がある程度の距離を維持しながらも、略均等に分散していることを示している。
【0135】
マスクパターンの性能評価として、マスクパターンのパワースペクトルが存在する周波数領域のうち、およそ半分より低周波数側にある「低周波数成分」に着目することが本発明の大きな特徴である。マスクパターンの低周波数成分が低く抑えられている状態で、上述したようにグレインの分布に起因するビーディングは現れにくく、また視認されにくい。結果として、記録した画像は視覚的にはざらつき感がないものとなる。また、特に、マスクパターンは、1つのパターンを記録する画像に対して2次元的に繰り返し用いる。この一定のマスクパターンを繰り返した場合は、マスクパターンの低周波数成分が多ければ多いほど、その繰り返しパターンの模様が人の目に認識されやすい。そして、その模様はビーデイングの発生および見え方に大きく影響するため、マスク周期に関連したザラツキ感が発生する。そこで、繰り返しパターンに着目して、マスクパターンの低周波数成分側を抑える設計が重要となる。つまり本発明では、視覚的にザラツキなどが気になる低周波数領域に焦点をあてて、その低周波域の成分を低く抑えるようにしている。すなわち、本発明のマスクパターンはそのような低周波数のパワーが低く抑えられていることが特徴である。
【0136】
さらに、人間の目の感度に関する周波数特性は、記録物と人の目の距離などに依存し、例えば、ドーリイ(Dooley)の文献(「R.P. Dooley:Prediction Brightness Appearance at Edges Using Linear and Non-Liner Visual Describing Functions, SPES annual Meeting (1975)」)などによってこれまで多く論じられている。様々な実験から記録物を見る場合には、およそ10cycles/mmより低い周波数領域の成分が人の目に認識しやすいと言われている。このことに関して、本発明者も実験的に確認している。そこで、10cycles/mmより低周波数側を含む領域(低周波数領域)に着目することが重要といえる。実際には記録物に目をさらに近づける場合もあるため、本発明者は、およそ20cycles/mmより低周波数側に着目し設計することが重要と考える。なお、後述する各実施形態のマスク評価(例えば、図50)で着目している低周波数領域は、おおよそこれらの範囲と重なっている。
【0137】
図33および図34に示す、マスクを重ねたときの論理和および論理積パターンのパワースペクトルでは、いずれの場合も、従来例に係るコーンマスク分散マスク(曲線b)の低周波数成分が本実施形態の積層マスク(曲線a)より多くなっている。すなわち、図23および図24に示したように、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクにおける記録許容画素の配置は、本実施形態の積層マスクに比べ、その分散が劣る。
【0138】
図35および図36は、本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクをそれぞれ2つおよび3つ重ねたときの「重ね合わせ」パターンのパワースペクトルを示す図である。それぞれの図において、曲線aは、本実施形態の積層マスクの重ね合わせパターン(図28、図29)のパワースペクトルを示し、曲線bは、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクの重ね合わせパターン(図30)のパワースペクトルを示し、曲線cは、同じく従来例に係るランダムマスクの重ね合わせパターン(図31)のパワースペクトルをそれぞれ示している。
【0139】
3つの曲線を比較すると、ランダムマスクは、上記単独マスク、論理和パターンおよび論理積パターンのパワースペクトルと同様に、空間周波数の全域に対し略一律なパワーを有している。一方、曲線bで示す自プレーンのみの分散マスクの重ね合わせパターンは、図32に示した単一の自プレーンのみの分散マスクに比べ、低周波数成分が多くなっている。また、曲線bで示す自プレーンのみの分散マスクマスクの重ね合わせパターンは、本実施形態の積層マスクの重ね合わせパターンに比べ、低周波数成分が多くなっている。すなわち、図30に示したように分散が悪くなりパターンのざらつき感が増す。
【0140】
これに対し、曲線aで示す本実施形態の積層マスクの重ね合わせパターンの低周波数成分は、図32に示した単一の積層マスクと比較しても殆ど変わっていない。これは、3つのプレーンを重ね合わせた状態においても、記録許容画素同士がある程度の距離を保ちながら、略均等に分散していることを示している。
【0141】
ずらしによる評価
本発明の実施形態に係るマスクが従来の1つのプレーンのみを考慮して得られるマスク(特許文献1に記載の自プレーンのみの分散マスク)と異なる点の1つは、異なるプレーンのマスクを正規の位置で重ねた場合と正規ではない位置で重ねた場合の分散性の変化である。本発明の実施形態に係るマスクは、異なるプレーンのマスクの重ね方を意図的にずらした場合、記録許容画素の分散性が大きく低下する。すなわち、本実施形態では、異なるプレーン間でも分散を考慮していることから、その分散を考慮するときの正規の重ね方とは異なる重ね方をすると分散性が大きく低下する。一方、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクの場合、異なるプレーン間での分散性は考慮していないため、正規の重ね方とは異なる重ね方をしても分散性に変化はない。
【0142】
このずれの評価は次のように行う。上述した製法によって作成したC1、M1、Y1を、それぞれから各色ラスター方向にずらす。このときマスク自体は周期的に並ぶためずらすことが可能である。
【0143】
図37〜図39は、マスクをずらして重ねた場合、C1、M1を重ねたときのそれぞれ論理和、論理積および「重ね合わせ」のパターンを示す図である。これらの図から明らかなように、本実施形態の積層マスクC1、M1の重ね位置をずらした重ねパターンの論理和、論理積、「重ね合わせ」のいずれも分散性が低下し、パターンを観察したときのざらつき感が増している。
【0144】
図40〜図42は、重ね位置をずらした場合と重ね位置をずらさない場合(つまり、正規の位置で重ねた場合)のパワースペクトルを比較した図であり、それぞれ本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクの論理和パターンのパワースペクトルを示す図である。
【0145】
図40に示す本実施形態の積層マスクは、ずらした場合の低周波数成分は、ずらし無しの場合に較べて比較的大きくなる。これは、上述したように、積層マスクは、異なるプレーン間でも分散を考慮していることから、その分散を考慮するときの正規の重ね方とは異なる重ね方としたときは、分散性が大きく低下するからである。
【0146】
これに対し、図41および図42に示す従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクは、ずらした場合とずらし無しの場合とでパワースペクトルの低周波数成分に殆ど変化がない。これは、これらのマスクが、もともと異なるプレーン間での記録許容画素の分散を考慮していないため、重ね位置がずれてもそれによって重ねたときのパターンにおける分散に大きな違いを生じないからである。
【0147】
図43〜図45は、図40〜図42に示す図と同様、重ね位置をずらした場合とずらさない場合のパワースペクトルの比較図である。図43〜図45は、それぞれ本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクの論理積パターンのパワースペクトルを示す図である。また、図46〜図48は、重ね位置をずらした場合とずらさない場合のパワースペクトルの比較図であり、それぞれ本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクの「重ね合わせ」パターンのパワースペクトルを示す図である。これらの図からも明らかなように、本実施形態の積層マスクは、ずらした場合の低周波数成分がずらし無しの場合に較べて大きく増す。一方、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクは、ずらした場合とずらし無しの場合とでパワースペクトルの低周波数成分に殆ど変化がない。図49に示す本実施形態の3つの積層マスクC1、M1、Y1をずらして重ねたときの「重ね合わせ」パターンのパワースペクトルでも、同様に、ずらしたときに周波数領域の全体としてパワーが増大する。
【0148】
図50〜図52は、以上のずらしによる評価を低周波数成分の量で表した図であり、それぞれ本実施形態の積層マスク、従来例に係る自プレーンのみの分散マスクおよびランダムマスクに示している。ここで、低周波数成分の量は、パワースペクトルが存在する空間周波数領域のおよそ半分に相当する90以下の成分を積分したものである。
【0149】
図50に示すように、本実施形態の積層マスクの場合、ずらしたものは、マスクC1、M1のそれぞれ論理和、論理積、「重ね合わせ」のパターンおよびマスクC1、M1、Y1の「重ね合わせ」パターンのいずれにおいても、ずらしていない場合と比較して、低周波数成分の量が多くなることがわかる。
【0150】
これに対し、図51に示す自プレーンのみの分散マスクおよび図52に示すランダムマスクのいずれもずらした場合とずらしていない場合とで低周波数成分の量に変化はない。
【0151】
以上のように、マスクを重ね合わせる場合に、その重ね位置をずらしたとき分散性に係る評価値が大きく変化するか否かによって、本発明を適用したマスクか否かを判断することができる。すなわち、上述のずらしによる評価は、本発明を適用したマスクが重ね合わせにおける分散性を考慮してあることを証明するものである。
【0152】
〔実施形態2:4パス記録用100%均等マスク〕
(1)本実施形態の概要
本実施形態は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インクについて4回の走査で画像を完成する4パスのマルチパス記録に関する。そして、この4パス記録に用いるインク色のそれぞれについて複数(本実施形態では4)回の走査それぞれに用いるマスクが良好に分散しているだけでなく、これらのマスクの任意の複数のプレーンを合わせたものも良好に分散したものである。
【0153】
以下では、図示および説明の簡略化のため、シアン、マゼンタ、イエローの3色で4パス記録を行う場合について説明する。
【0154】
シアン、マゼンタ、イエローの各色ノズル群は、第1グループ〜第4グループの4つのグループに分割され、各グループには128個ずつのノズルが含まれている。各グループには本実施形態のマスクパターン(C1、C2、C3、C4、M1、M2、M3、M4、Y1、Y2、Y3、Y4)が対応付けられており、各マスクパターンの副走査方向(搬送方向)の大きさは各グループのノズル個数と同じ128画素分となっている。一方、走査方向の大きさは256画素分となっている。また、同色インクのノズル群に対応する4つのマスクパターン(C1、C2、C3およびC4、M1、M2、M3およびM4、Y1、Y2、Y3およびY4)はそれぞれ4つのパターンで補完して総ての画素に対応する関係にあり、これらを重ね合わせると128×256画素に対応した領域の記録が完成される構成となっている。
【0155】
これらのマスクを用いた記録動作では、各色ノズル群はノズル配列方向と略直交する方向へ走査しながら記録媒体にインクを吐出する。例えば、各領域に対してC,M,Yのインク吐出が行われる。また、走査が終了するたびに、記録媒体は走査方向と直交する方向に1つのブループの幅分(すなわち、128画素分)ずつ搬送される。これにより、記録媒体の各グループの幅に対応する大きさの領域は4回の走査によって画像が完成する。
【0156】
さらに具体的に説明すると、記録媒体におけるそれぞれノズルグループの幅に対応する大きさの連続した4つの領域を記録媒体の搬送方向に順に領域A、B、C、Dとするとき、第1走査では記録媒体上の領域Aに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いて記録が行われる。そして、この第1走査では領域Aに対してはマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0157】
次に、第2走査では、第1走査での記録が終了した領域Aに対して、Cノズル群の第2グループ、Mノズル群の第2グループ、Yノズル群の第2グループを用いて記録が行われるとともに、未記録状態の領域Bに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いて記録が行われる。従って、第2走査では領域Aに対してマスクパターンC2、マスクパターンM2、マスクパターンY2が用いられるとともに、領域Bに対してマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0158】
さらに、第3走査では、第2走査での記録が終了した領域Aに対して、Cノズル群の第3グループ、Mノズル群の第3グループ、Yノズル群の第3グループを用いて記録が行われるとともに、領域Bに対して、Cノズル群の第2グループ、Mノズル群の第2グループ、Yノズル群の第2グループを用いて記録が行われ、さらに、未記録状態の領域Cに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いて記録が行われる。従って、第3走査では領域Aに対してマスクパターンC3、マスクパターンM3、マスクパターンY3が用いられ、領域Bに対してマスクパターンC2、マスクパターンM2、マスクパターンY2が用いられ、領域Cに対してマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0159】
さらに、第4走査では、第3走査の記録が終了した領域Aに対して、Cノズル群の第4グループ、Mノズル群の第4グループ、Yノズル群の第4グループを用いて記録が行われるとともに、領域Bに対して、Cノズル群の第3グループ、Mノズル群の第3グループ、Yノズル群の第3グループを用いて記録が行われ、領域Cに対して、Cノズル群の第2グループ、Mノズル群の第2グループ、Yノズル群の第2グループを用いて記録が行われ、さらに、未記録状態の領域Dに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いて記録が行われる。従って、第4走査では領域Aに対してマスクパターンC4、マスクパターンM4、マスクパターンY4が用いられ、領域Bに対してマスクパターンC3、マスクパターンM3、マスクパターンY3が用いられ、領域Cに対してマスクパターンC2、マスクパターンM2、マスクパターンY2が用いられ、さらに、領域Dに対してマスクパターンC1、マスクパターンM1、マスクパターンY1が用いられる。
【0160】
以上説明したように、4回の走査で記録媒体上の領域Aに対する画像の記録が完成する。また、領域Bや後続の領域についても同様に記録が行われていく。
【0161】
本実施形態では、上述した実施形態1と同様、中間画像におけるグレインの発生を避けるべく、それぞれのプレーンのマスクを重ねたときの記録許容画素の配置を非周期で低周波数成分が少なく分散性の良いものとしている。これにより、画像の完成に至る各段階の中間画像におけるドットの近接ないし隣接、また、ドットの重なりを、極力排除するようにする。また、仮に、ドットの重なりや隣接が排除しきれない場合でも、そのような重なりなどについても分散性の高いものとするものである。
【0162】
(2)マスクの製法
本実施形態においても、マスクの製造方法として、実施形態1で説明した同時生成法とパスごとの生成法のいずれをも用いることができる。但し、本実施形態では、同時生成法とパスごとの生成法が同じものとはならない。以下、これらの方法について順に説明する。
【0163】
同時生成
図53は、本実施形態の同時生成法を概念的に説明する図である。
【0164】
同図に示すように、本実施形態の同時生成法は、1パス目〜3パス目用のマスクであるマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)および(C3、M3、Y3)を、ステップ1で同時に生成する。そして、ステップ2として、4パス目に用いるそれぞれのプレーンのマスク(C4、M4、Y4)を、上記1パス目〜3パス目のマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)および(C3、M3、Y3)とそれぞれの色が補完の関係を持つように生成する。すなわち、色ごとに、4パス目のマスクは、その記録許容画素の配置が1パス目〜パス目のマスクの記録許容画素の配置と排他的な関係となるように生成される。
【0165】
1パス目〜3パス目用のマスクの生成における記録許容画素の具体的な配置の仕方は、実施形態1にて説明した「配置移動法」または「順次移動法」のいずれかを以下に示すようにして用いることができる。
【0166】
(配置移動法)
この方法を用いるときの処理は、基本的に、実施形態1について図8にて説明して処理と同様である。すなわち、図8のステップS801と同様、1パス目〜3パス目のそれぞれの色のマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)、(C3、M3、Y3)それぞれのプレーンのサイズに対応したC、M、Yそれぞれの25%濃度の画像を取得する。そして、ステップS802と同様、それぞれの画像について誤差拡散法などの2値化手法を用いて2値化を行う。これにより、それぞれのマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)、(C3、M3、Y3)それぞれのプレーンについて、記録許容画素がマスク画素全体の25%に配された初期配置を得ることができる。
【0167】
次に、ステップS803と同様、上記のようにして得たマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)、(C3、M3、Y3)それぞれのプレーンの総ての記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する。
【0168】
この斥力ポテンシャルの計算で、実施形態1の処理と異なる点は次のとおりである。例えば、プレーンC2のある許容画素の斥力ポテンシャルを計算するとき、異なる色の他のプレーンの距離rにある記録許容画素による影響;βE(r)の重み付け係数βの値は実施形態と同じく1とする。一方、同じ色の異なるプレーンC1、C3おいて距離rにある記録許容画素からの影響;βE(r)の重み付け係数βの値は2とする。これにより、同じ色のマスクを重ねたときの記録許容画素の分散(βが2)が、異なる色の記録許容画素との分散(βが1)に優先して確保される。
【0169】
次に、図8のステップS804と同様、図10(a)〜(d)にて説明したように、エネルギー減衰を行う。ここで、実施形態1と異なる点は次の通りである。すなわち、それまでの処理で計算した9プレーンの総ての記録許容画素について順次、その記録許容画素からの距離rが4以内の画素の中で斥力ポテンシャルが最も下がる画素に記録許容画素を移すが、その際、同じ色(プレーン)での記録許容画素の重なりを禁止する点である。これにより、3パス用の同じ色のマスク相互の補完関係を得ることができる。
【0170】
(順次配置法)
同時生成における順次配置法は、実施形態1について図11で説明した処理と基本的に同じである。異なる点は、上記配置移動法で説明したことと同じである。すなわち、斥力ポテンシャルを計算する際の、異なる色の他のプレーンの記録許容画素による影響;βE(r)の重み付け係数βの値を1とするとともに、同じ色の異なるプレーンにある記録許容画素からの影響;βE(r)の重み付け係数βの値を2とする。また、斥力ポテンシャルが最も下がる画素にその注目記録許容画素を配置する際、同じ色(プレーン)での記録許容画素の重なりを禁止する。
【0171】
そして、この配置が各プレーン25%の数を配置する処理を終了する(図11のステップS1106参照)。
【0172】
パスごとの生成
図54は、本実施形態のパスごとの生成法を概念的に説明する図である。
【0173】
同図に示すように、本実施形態の同時生成法は、ステップ1で、1パス目用のマスク(C1、M1、Y1)を生成し、次のステップ2で、2パス目用のマスク(C2、M2、Y2)を生成し、さらにステップ3で、3パス目用のマスク(C3、M3、Y3)を生成する。そして、ステップ4として、4パス目に用いるそれぞれのプレーンのマスク(C4、M4、Y4)を、上記生成された1パス目〜3パス目のマスク(C1、M1、Y1)、(C2、M2、Y2)および(C3、M3、Y3)とそれぞれの色が補完の関係を持つように生成する。すなわち、色ごとに、4パス目のマスクは、その記録許容画素の配置が1パス目〜パス目のマスクの記録許容画素の配置と排他的な関係となるように生成される。
【0174】
1パス目〜3パス目用のマスクの生成における記録許容画素の具体的な配置の仕方は、実施形態1にて説明した「配置移動法」または「順次移動法」のいずれかを以下に示すようにして用いることができる。
【0175】
(配置移動法)
この方法を用いるときの処理は、基本的に、実施形態1について図8にて説明して処理と同様である。すなわち、図8のステップS801と同様、1パス目のそれぞれの色のマスク(C1、M1、Y1)それぞれのプレーンのサイズに対応したC、M、Yそれぞれの25%濃度の画像を取得する。そして、ステップS802と同様、それぞれの画像について誤差拡散法などの2値化手法を用いて2値化を行う。これにより、それぞれのマスク(C1、M1、Y1)それぞれのプレーンについて、記録許容画素がマスク画素全体の25%に配された初期配置を得ることができる。
【0176】
次に、ステップS803と同様、上記のようにして得たマスク(C1、M1、Y1)それぞれのプレーンの総ての記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する。
【0177】
この斥力ポテンシャルの計算で、実施形態1の付与処理と異なる点は、上述の同時生成における配置移動法と同じである。すなわち、ある許容画素の斥力ポテンシャルを計算するとき、異なる色の他のプレーンの距離rにある他の記録許容画素による影響;βE(r)の重み付け係数βの値は実施形態と同じく1とする。一方、同じ色の異なるプレーンおいて距離rにある記録許容画素からの影響;βE(r)の重み付け係数βの値は3とする。これにより、同じ色のマスクを重ねたときの記録許容画素の分散(βが3)が、異なる色の記録許容画素との分散(βが1)に優先して確保される。また、異なる色のプレーンからの影響;βE(r)の係数βの値が実施形態1と同じく1であることにより、例えば、C、M、Yそれぞれの記録許容画素の集まりが分散性が高く配置されるようなパターンを求めることができる。
【0178】
以上のようにして1パス目のマスク(C1、M1、Y1)の記録許容画素の配置を得ると、以下、同様にして、2パス目(ステップ2)、3パス目(ステップ3)のマスクパターンを求める。この際、記録許容画素を配置する際(図8のステップS804参照)、それまで生成されたパスのパターン;記録許容画素の配置は固定する。これにより、1パス目〜3パス目までのマスクパターン相互の補完性を保証することができる。
【0179】
(順次配置法)
パスごとの生成における順次配置法は、実施形態1について図11で説明した処理と基本的に同じである。異なる点は、上記配置移動法で説明したことと同じである。すなわち、斥力ポテンシャルを計算する際の、異なる色の他のプレーンの記録許容画素による影響;βE(r)の重み付け係数βの値を1とするとともに、同じ色の異なるプレーンにある記録許容画素からの影響;βE(r)の重み付け係数βの値を3とする。また、斥力ポテンシャルが最も下がる画素にその注目記録許容画素を配置する際、それまで生成されたパスのパターン;記録許容画素の配置は固定する。これにより、1パス目〜3パス目までのマスクパターン相互の補完性を保証することができる。
【0180】
そして、この配置が各プレーン25%の数を配置する処理を終了する(図11のステップS1106参照)。
【0181】
(3)マスク特性評価
図55〜図57は、上述したいずれかの製法によって製造された本実施形態の1プレーン分の積層マスクC1、M1、Y1それぞれの記録許容画素の配置パターンを示す図である。各マスクパターンは、128×256の画素のエリアを有したものである。
【0182】
これらの図に示すように、本実施形態のマスクのパターンは、特に、係数αの効果によって同一プレーン内の分散性を考慮した記録許容画素が配置されているので、全体的としては滑らかな印象を受ける。
【0183】
図58〜図60は、本実施形態の積層マスクをそれぞれ3つ(C1、M1、Y1)、6つ(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2)および9つ(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2、C3、M3、Y3)を正規の位置で重ねたときの「重ね合わせ」パターンを示す図である。これらの積層マスクを複数重ねたときの「重ね合わせ」パターンは、それらのマスクの論理和パターンを薄い濃度で、論理積パターンをより濃い濃度で表している。
【0184】
これらの図に示す「重ね合わせ」のパターンは、本実施形態のマスクを用いて記録を行うときのそれぞれ中間画像のインクドットのパターンに近いものを表している。従って、これらのパターンからも、中間画像におけるインクドットやそれらの重なりが良好に分散していることがわかる。
【0185】
ずらしによる評価
本実施形態に係る4パス用積層マスクについても、上記の実施形態1と同様のずらしによる評価を行う。
【0186】
図61は、図58に示した3つの積層マスク(C1、M1、Y1)のそれぞれをずらして重ねたときの「重ね合わせ」のパターンを示す図である。また、図62は、図59に示した6つの積層マスク(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2)のそれぞれをずらして重ねたときの「重ね合わせ」のパターンを示す図である。さらに、図63は、図60に示した9つの積層マスク(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2、C3、M3、Y3)のそれぞれをずらして重ねたときの「重ね合わせ」のパターンを示す図である。
【0187】
これらの図から明らかなように、本実施形態の積層マスクの重ね位置をずらした重ね合わせパターン(図61〜図63)のいずれも、重ね位置をずらさないパターン(図58〜図60)に比べて分散性が低下し、パターンを観察したときのざらつき感が増している。
【0188】
図64は、以上のずらしによる評価を低周波数成分の量で表した図である。ここでは、上述した3つ(C1、M1、Y1)、6つ(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2)および9つ(C1、M1、Y1、C2、M2、Y2、C3、M3、Y3)の積層マスクそれぞれについて、「重ね合わせ」パターンをずらした場合(図61〜図63)とずらさない場合(図58〜図60)の低周波数成分の量を比較して示している。
【0189】
同図に示すように、本実施形態の積層マスクの場合、ずらしたものは、いずれのパターンにおいても、ずらしていない場合(つまり、正規の位置で重ねた場合)と比較して、低周波数成分の量が多くなることがわかる。
【0190】
以上のように、マスクを重ね合わせる場合に、その重ね位置をずらしたとき分散性に係る評価値が大きく変化するか否かによって、本発明を適用したマスクか否かを判断することができることは前述したとおりである。
【0191】
なお、本実施形態におけるマスクパターンは、横:256画素×縦:128画素のサイズとなっており、縦横のサイズが異なる。このようなパターンについて周波数成分を求めるときは、マスクパターンの縦横サイズを揃えてから周波数成分を求めるようにする。本実施形態では、縦横サイズを長手方向のサイズ(本実施形態の場合、横方向の256画素)に揃えるため、縦にパターンを繰り返し、256画素×256画素のパターンとして周波数成分を評価した。
【0192】
その他のサイズの場合も同様であり、縦横サイズを長手方向のサイズに揃えたパターンについて周波数成分を評価する。具体的には、パターンの短手方向のサイズが長手方向のサイズ以上になるまで短手方向にパターンを繰り返し、その中からパターンを切り出し、その切り出したパターンについて評価する。その際、周波数変換を行うときに高速フーリエ変換を使えるよう、縦横サイズは2のn乗(nは正の整数)であることが好ましい。2のn乗でない場合には、長手方向のサイズに最も近い2のn乗を特定し、その特定した2のn乗のサイズで切り出せるようにパターンを縦横に繰り返す。そして、この繰り返しにより生成されたパターンの中から、上記特定した2のn乗のサイズのパターンを切り出し、その切り出したパターンについて評価を行う。例えば、マスクパターンが横:500画素×縦:320画素であった場合について考える。この場合、長手方向のサイズは「500」なので、この「500」に最も近い2のn乗を特定する。最も近い2のn乗は「512」と特定される。そこで、512画素×512画素のパターンを切り出すために、横方向と縦方向に1回づつパターンを繰り返し、1000画素×640画素のパターンを生成する。こうして生成された1000画素×640画素のパターンの中から512画素×512画素のパターンを切り出し、切り出したパターンについて評価を行う。
【0193】
〔実施形態3:2パス記録用100%グラデーションマスク〕
本実施形態は、いわゆるグラデーションマスクに関するものである。グラデーションマスクは、例えば、特許文献3によって知られたものである。グラデーションとは、ノズル列端部の記録率が低く、中央部の記録率が高く設定されているような、ノズル位置に応じて記録率が異なるマスクである。このマスクによれば、マルチパス記録で各パスの記録領域の境界で弊害の原因となりやすい端部ノズルの吐出をその頻度を相対的に少なくすることにより、画像品位を向上させる効果が得られる。
【0194】
ここで、上述したマスクパターンの「記録率」とは、マスクパターンにおける一定の領域に含まれる全画素数(記録許容画素と非記録許容画素の和)に対する記録許容画素数の割合である。例えば、単一ノズルに対応するマスクパターンの記録率とは、その単一ノズルに対応する領域(単一ラスタ領域)に含まれる全画素数に対する記録許容画素の割合である。
【0195】
このようなマスクの場合、ノズル列全体に対応したマスクパターンを空間周波数でみたとき、領域ごとの記録率の変化に起因した低周波数成分の増大が見られる。しかしながら、このような記録率が徐々に変化するような記録許容画素の配置を許容しつつ、それ以外の不必要な低周波成分が抑えられたマスクパターンが実現されれば、グレインの発生を抑えると言う本発明の効果を得ることはできる。従って、マスクにおいて変化する記録率のそれぞれに対応した複数の領域それぞれで分散性を高く保ちつつ、各領域間では記録率に変化を持たせたグラデーションマスクとすることによって、本発明と特許文献3に記載の双方の効果を得ることが可能となる。
【0196】
図65(a)および(b)は、本実施形態に係るグラデーションマスクのノズル位置に対応させた記録率、および2プレーンの相互に排他的なマスクパターンを示す図である。
【0197】
この2プレーンのマスクは、本実施形態の場合、シアンの2プレーンのマスクC1、C2、マゼンタの2プレーンのマスクM1、M2、またはイエローの2プレーンのマスクY1、Y2である。これらのマスクのうち、図では代表的にシアンのマスクC1、C2を示している。そして、上記の実施形態1で説明したように、これら6つのマスクの記録許容画素の配置は相互に分散したものとなっている。
【0198】
これらの図に示すように、各走査では、番号0〜255のノズルがマスクC2に対応し、番号256〜511のノズルがマスクC1に対応して記録が行われる。なお、上述の通り、マスクC1とマスクC2は補完関係にある。そして、走査と走査の間には、256個分のノズル配列の長さに対応した量だけ記録媒体が搬送される。このように走査と搬送を繰り返すことで、上記256個分のノズル配列に対応した領域をマスクC1とマスクC2で補完する、2パス記録が行われる。
【0199】
図65(a)に示すように、マスクC1およびマスクC2は、それぞれ記録率が0.3から0.7までラスター(ノズル)ごとに変化するとともに、それぞれのプレーン全体で合計50%の記録率を有する。これにより、マスクの各ラスターの記録許容画素の数は、上記記録率によって定まる。例えば、記録率が0.4(40%)のラスターでは、そのマスクのラスター方向サイズが1000画素あるとすると、約400個の記録許容画素が配置される。
【0200】
(2)マスクの製法
本実施形態に係るマスクの製造方法は、基本的に実施形態1で説明した方法と同じ方法を用いることができる。すなわち、全プレーンを同時に生成する方法と、パスごとに順次マスクを生成する方法の2つの方法のいずれでも実施することができる。本実施形態の2パス記録の場合、実施形態1で上述したように、同時生成とパスごとの生成の方法は同じものとなる。また、上記2つの生成方法それぞれについて、配置移動法と順次配置法のいずれも実施できることも同じである。以下、本実施形態に係る配置移動法と順次配置法を順に説明する。
【0201】
配置移動法
図66は、本実施形態の2パス記録に用いるグラデーションマスクの記録許容画素の配置移動法による配置決定処理を示すフローチャートである。同図に示す処理は、基本的に実施形態1に関して図8に示した処理と同様である。以下では、異なる点を主に説明する。
【0202】
ステップS6601、S6602の処理は、図8に示したステップS801、S802の処理と同様である。また、ステップS6603の処理も、ステップS803の処理と同様であり、マスクC1、M1、Y1それぞれのプレーンで上記のようにラスターごとに配置された総ての記録許容画素について斥力ポテンシャルを計算する。
【0203】
次に、ステップS6604で、図8のステップS804と同じく、各プレーンの記録許容画素について上記のようにして得ることができる斥力ポテンシャルを3つのプレーンC1、M1およびY1について合計して総エネルギーを求める。そして、図10(a)〜(d)にて上述したように、記録許容画素の配置を移動させて行く。
【0204】
その際、最もポテンシャルエネルギーが低い位置に移動させるとそのラスターの上述した配置数の制限を超えるときは、そのラスターへは移動させず配置数が制限以内となるラスターで、次にエネルギーの低い画素があるラスターのそのエネルギーの低い画素に移動させる。これにより、ラスターごとの記録率を保持しつつ分散性の高い記録許容画素の配置を得ることができる。
【0205】
以下は、図8の処理と同じように、総エネルギーの低下率を計算し、それが所定値以下であると判断すると、エネルギー減衰処理を終了する。そして、総エネルギーの低下率が所定値以下となった状態の各プレーンを1パス目のマスクC1、M1、Y1として設定する。さらに、これらマスクの記録許容画素の配置に対するそれぞれ排他的位置を記録許容画素の配置とした2パス目のマスクC2、M2、Y2を設定する。なお、ここでも、上述した実施形態1と同様、エネルギーの減衰処理を終了させるか否かの判断を、総エネルギーの低下率で判断するのではなく、総エネルギー所定置以下となったかどうかで判断するようにしてもよい。
【0206】
順次配置法
この方法も、基本的に実施形態1に関して図11にて上述した方法と同じである。図67は、本実施形態の順次配置法による記録許容画素の配置決定処理を示すフローチャートである。
【0207】
図67のステップS6701〜S6703、S6705、S6706およびS6707の処理は、図11のS1101〜S1103、S1105、S1106およびS1107の処理と同じである。
【0208】
異なる点は、ステップS6704で、プレーン内で最小エネルギーの画素に記録許容画素を置く際に、上述したように記録率に応じて定まるラスターごとの配置数を超えるときは、配置数の制限以内であるラスターで、次にエネルギーの低い画素があるラスターのそのエネルギーの低い画素に配置する点である。これにより、記録率をラスターごとに変化させながら、分散性の高いグラデーションマスクを得ることができる。
【0209】
なお、上述したいずれの製法の例でも、ラスターごとに配置数を管理するものとしたが、これに限られることはない。例えば、マスクパターンを所定の複数のラスターごとに記録率を定める場合は、その複数のラスターごとに配置数の制限を行うようにする。
【0210】
(3)マスク特性評価
図68〜図70は、上述したいずれかの製法によって製造された本実施形態の1プレーン分のマスクC1、M1、Y1それぞれの記録許容画素の配置パターンを示す図である。各マスクパターンは、256×256の画素のエリアを有したものである。
【0211】
これらの図に示すように、本実施形態のマスクのパターンは、特に、係数αの効果によって同一プレーン内の分散性を考慮した記録許容画素が配置されているので、グラーデーションが持つ記録許容画素の偏りを除いて、記録許容画素の分散に偏りが無く、全体的としては滑らかな印象を受ける。
【0212】
図71および図72は、図68および図69に示した本実施形態の積層マスクC1、M1のそれぞれ論理和パターンおよび論理積パターンを示す図である。
【0213】
図71および図72に示すように、本実施形態の2つのマスクを重ねた場合の記録許容画素の配置(論理和)と、その中から記録許容画素が重なったものを抽出したものの配置(論理積)は、グラデーションによる分散の偏りを除いて、ともに分散がよくざらつき感のないものとなっている。これは、上述したように、2つのプレーン相互で記録許容画素の分散を考慮(係数β)するとともに、重なり自体の分散を考慮(係数γs(n))しているからである。
【0214】
図73および図74は、本実施形態の積層マスクをそれぞれ2つおよび3つ重ねたときの「重ね合わせ」パターンを示す図である。積層マスクC1、M1を重ねたときの「重ね合わせ」パターンは、これら2つのマスクの論理和パターン(図71)を薄い濃度で、論理積パターン(図72)をより濃い濃度で表している。また、積層マスクC1、M1、Y1を重ねたときの「重ね合わせ」パターンは、これら3つのマスクの論理和パターンを薄い濃度で、論理積パターンをより濃い濃度で表している。
【0215】
図73および図74に示す「重ね合わせ」のパターンは、本実施形態のマスクを用いて記録を行うときのそれぞれ中間画像のインクドットのパターンに近いものを表している。従って、これらのパターンからも、中間画像におけるインクドットやそれらの重なりが良好に分散していることがわかる。
【0216】
ずらしによる評価
本実施形態に係るグラデーションマスクについても、上記の各実施形態と同様ずらしによる評価を行う。
【0217】
図75〜図77は、図68、図69に示したマスクC1、M1をずらして重ねたときの論理和、論理積および「重ね合わせ」のパターンを示す図である。これらの図から明らかなように、本実施形態の積層マスクC1、M1の重ね位置をずらした場合の論理和、論理積、「重ね合わせ」のパターンは、正規の位置で重ねた各種パターン(図71〜図73)に比べて、分散性が低下し、パターンを観察したときのざらつき感が増している。
【0218】
図78は、積層マスクC1、M1、Y1をずらして重ねたときの「重ね合わせ」のパターンを示す図である。この図から明らかなように、本実施形態の積層マスクC1、M1、Y1の重ね位置をずらした場合の「重ね合わせ」パターンも、正規の位置で重ねたパターン(図74)に比べて、分散性が低下し、パターンを観察したときのざらつき感が増している。
【0219】
図79〜図81は、重ね位置をずらした場合と重ね位置をずらさない場合(つまり、正規の位置で重ねた場合)のパワースペクトルを比較した図である。詳しくは、本実施形態の2つの積層マスクC1,M1の論理和、論理積、および[重ね合わせ]パターンをずらした場合とずらさない場合のパワースペクトルを示す図である。また、図82は、本実施形態の3つの積層マスクの[重ね合わせ]パターンをずらした場合とずらさない場合のパワースペクトルを示す図である。
【0220】
これらの図に示すように、本実施形態の積層マスクは、論理和、論理積、および[重ね合わせ]のいずれの場合も、ずらした場合の低周波数成分は、ずらし無しの場合に較べて大きくなる。これは、上述したように、積層マスクは、異なるプレーン間でも分散を考慮していることから、その分散を考慮するときの正規の重ね方とは異なる重ね方としたときは、分散性が大きく低下するからである。
【0221】
また、それぞれの図のずらし無しのパワースペクトルにおいて、空間周波数が1から20あたりでパワーが大きくなっている。これは、グラデーションマスクとして記録率を変化させていることに起因するものである。すなわち、このような比較的小さな空間周波数、つまり大きな周期の記録許容画素の配置の偏りは、とりもなおさずグラデーションとして認識されるものであり、これは本発明で制御しようとしている不必要な低周波数成分の偏りとして認識されるものではない。
【0222】
図83は、以上のずらしによる評価を低周波数成分の量で表した図である。ここでは、本実施形態の2つの積層マスクC1、M1の論理和、論理積、「重ね合わせ」のパターン、およびマスクC1、M1、Y1の「重ね合わせ」パターンについて、ずらした場合とずらさない場合の低周波数成分の量を比較して示している。
【0223】
同図に示すように、本実施形態の積層マスクの場合、ずらしたものは、マスクC1、M1のそれぞれ論理和、論理積、「重ね合わせ」のパターンおよびマスクC1、M1、Y1の「重ね合わせ」パターンのいずれにおいても、ずらしていない場合と比較して、低周波数成分の量が多くなることがわかる。
【0224】
以上のように、マスクを重ね合わせる場合に、その重ね位置をずらしたとき分散性に係る評価値が大きく変化するか否かによって、本発明を適用したマスクか否かを判断することができることは前述したとおりである。
【0225】
〔実施形態4:2パス記録用150%均等マスク〕
上述の各実施形態では、同じ色の複数のプレーンのマスクは相互に補完関係にあり、記録許容画素の配置はプレーン間で排他的なものである。本発明の適用はこのようなマスク限られない。同じ色の複数のマスクそれぞれの記録率を合わせたときに100%を超える複数プレーンのマスクにも本発明を適用することができる。100%を超えるマスクを使用すれば、画像データの解像度が低い場合であっても、最大インク打ち込み量を増やすことができる。
【0226】
本発明の第4の実施形態は、2パス記録に用いられる同色の2つのプレーンがそれぞれ75パーセントの記録率を持ち、合わせて150%の記録率となるマスクに関するものである。
【0227】
図84は、この2パス記録に用いるマスクを概念的に説明する模式図である。図84において、P0001は、C、M、Yのうち、1つの色の記録ヘッドを示し、ここでは、図示の簡略化のため8個のノズルを有するものとして示している。ノズルは、第1および第2の2つのグループに分割され、各ノズルグループにはそれぞれ4つのノズルが含まれる。P0002AおよびP0002Bは、この第1および第2グループのノズル列にそれぞれ対応したマスクパターンを示す。すなわち、第1走査で用いるマスクパターンP0002A(同図中、下側のパターン)と第2走査で用いるマスクパターンP0002B(同図中、上側のパターン)である。これらがそれぞれ1プレーンのマスクとなる。それぞれのマスクパターンは、記録許容画素が黒塗りで示されており、非記録許容画素が白で示されている。第1走査用のマスクパターンP0002Aと第2走査用のマスクパターンP0002Bはそれぞれ75%の記録率、すなわち、それぞれのパターンにおける全マスク画素に対する記録許容画素の数の割合が75%のパターンである。従って、これらを重ね合わせると記録許容画素が4×4のエリアに対して150%、すなわち、重なりを含んだパターンとなる。なお、図に示すパターンは説明を容易にするため、以下で示す本実施形態のマスクパターンとは異なり概念的に示すパターンとしている。
【0228】
P0003およびP0004は、2パス記録によって完成する画像を、それを構成するドット配置で示している。画素にドットが1個配置される場合は「1」、ドットが2個配置される場合は「2」として表している。なお、この画像は、説明を容易にするため、総ての画素にドットを形成するいわゆるベタ画像であり、従って、そのドット記録データの生成に用いるマスクP0002の記録許容画素の配置がそのまま反映されたドット配置を示している。第1走査では、第1グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Aを用いて生成される。これにより、ベタ画像の場合は全画素の75%のドットが埋まる画像が形成される。そして、記録媒体は図中、上方にノズルグループの幅分搬送される。
【0229】
次の、第2走査では、上記搬送量分ずれた領域に対する第1グループのドット記録データは、同じくマスクパターンP0002Aを用いて生成され、上記第1グループで記録された領域に対する第2グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Bを用いて生成される。この2回の記録走査によって画像が完成する。このとき、完成した画像は、ベタ画像の場合、全画素の150%のドットが埋まる画像が形成される。
【0230】
本実施形態のマスクの製造方法は、基本的に実施形態1と同様に行うことができる。
【0231】
異なる点は、同時生成法およびパスごとの生成のいずれの場合も(図7参照)、ステップ1で1パス目の75%マスクパターンを生成した後、ステップ2では、実施形態1のように排他位置に記録許容画素を配置するのではなく、ステップ1と同様の処理繰り返し75%の2パス目のマスクパターンを生成する。以下、さらに具体的に配置法である配置移動法と順次配置法について、実施形態1と異なる点について説明する。
【0232】
配置移動法
本実施形態の配置移動法も実施形態1に係る図8の処理と基本的に同様の処理を行う。異なるのは、ステップS801と同様の処理では、上記ステップ1および2のいずれの生成でも、初期配置として各プレーンについて、75%の2値データを求める。また、ステップ2の生成で、図8のステップS804と同様の処理では、記録許容画素の移動に際して、同じ色の異なるプレーンの記録許容画素との重なりを禁止しない。すなわち、エネルギーが最も低く位置に移動させようとしたとき、その位置で同じ色の他のプレーンの記録許容画素と重なってもそこに配置する。これにより、2つのマスクを重ねたものが100%の記録率を超えた150%の記録率のマスクを生成することができる。
【0233】
順次配置法
順次移動法についても実施形態1に係る図11に示した処理と基本的に同様の処理を行う。異なるのは、ステップS1106と同様の処理では、上記ステップ1および2のいずれの生成でも、75%まで記録許容画素が配置されたか否かを判断する。また、上記ステップ2の2パス目用のマスク生成では、図11のステップS1104と同様の処理で、記録許容画素を配置するに際して、同じ色の異なるプレーンの記録許容画素との重なりを禁止しない。すなわち、エネルギーが最も低く位置に配置しようとしたとき、その位置で同じ色の他のプレーンの記録許容画素と重なってもそこに配置する。これにより、2つのマスクを重ねたものが100%の記録率を超えた150%の記録率のマスクを生成することができる。
【0234】
以上の製法により製造したマスクを用いれば、ドットが2個配置される場所(画素の位置)の分散性を向上させることができる。
【0235】
〔実施形態5:クラスタサイズがm×nのマスク〕
本発明は、m×n個の記録許容画素を1つの単位とする、いわゆるクラスタマスクについても適用することができる。
【0236】
図85は、2パス記録用の、クラスタサイズが1×2の100%均等マスクの概念を説明する図である。図85において、P0001は、C、M、Yのうち、1つの色の記録ヘッドを示し、ここでは、図示の簡略化のため8個のノズルを有するものとして示している。ノズルは、第1および第2の2つのグループに分割され、各ノズルグループにはそれぞれ4つのノズルが含まれる。P0002AおよびP0002Bは、この第1および第2グループのノズル列にそれぞれ対応したマスクパターンを示す。すなわち、第1走査で用いるマスクパターンP0002A(同図中、下側のパターン)と第2走査で用いるマスクパターンP0002B(同図中、上側のパターン)である。これらがそれぞれ1プレーンのマスクとなる。それぞれのマスクパターンは、1×2のサイズのクラスタ記録許容画素が黒塗りで示されており、1×2のサイズのクラスタ非記録許容画素が白で示されている。第1走査用のマスクパターンP0002Aと第2走査用のマスクパターンP0002Bはそれぞれ50%の記録率のパターンである。従って、これらを重ね合わせるとクラスタ記録許容画素が4×4のエリアに対して100%のパターンとなる。
【0237】
P0003およびP0004は、2パス記録によって完成する画像を、それを構成する1×2個のドットを単位とする配置で示している。なお、この画像は、説明を容易にするため、総ての画素にドットを形成するいわゆるベタ画像であり、従って、そのドット記録データの生成に用いるマスクP0002の記録許容画素の配置がそのまま反映されたドット配置となる。第1走査では、第1グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Aを用いて生成される。これにより、ベタ画像の場合は全画素の50%のドットが埋まる画像が形成される。そして、記録媒体は図中、上方にノズルグループの幅分搬送される。次の、第2走査では、上記搬送量分ずれた領域に対する第1グループのドット記録データは、同じくマスクパターンP0002Aを用いて生成され、上記第1グループで記録された領域に対する第2グループのドット記録データは、マスクパターンP0002Bを用いて生成される。この2回の記録走査によって画像が完成する。このとき、完成した画像は、ベタ画像の場合、全画素の100%に1×2個の単位のドットが埋まる画像が形成される。
【0238】
以上の説明からも明らかなように、m×n(本実施形態では、1×2)のサイズの記録許容画素を1単位とするとき、実施形態1で説明したのと同様にマスクを製造できることは容易に理解できる。また、本実施形態のマスクは、実施形態1で説明した効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0239】
〔他の実施形態〕
上述した実施形態以外に、例えば、実施形態2に示した4パスの態様とそれぞれ実施形態3、実施形態4、実施形態5との組み合わせも可能であり、また、実施形態3に示したグラデーションの態様とそれぞれ実施形態4、実施形態5との組み合わせも可能である。さらに、実施形態4と実施形態5との組み合わせも可能であり、これらの組み合わせは、それぞれの実施形態の説明からように実施することができる。
【0240】
また、本発明で適用できるインクの種類は、上述の実施形態で説明したインクの種類に限定されるものではない。例えば、CMYの基本色よりも濃度の低い淡インク(淡シアンインク、淡マゼンタインク)やレッド、ブルー、グリーンなどの特色インクをさらに加えて用いることができる
また、本発明は、記録装置で用いる複数種類のインク全てについて、上述の実施形態で説明した積層マスクを適用してもよいし、あるいは、記録装置で用いる複数種類のインクの一部のインクの組み合わせについて、積層マスクを適用してもよい。
【0241】
例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、淡シアン(Lc)、淡マゼンタ(Lm)の6色インクを用いる場合、これら6色全てに対して積層マスクを適用してもよい。この場合、6色分の積層マスクを上記実施形態で説明した製法によって生成することになる。
【0242】
一方、これら6色のうち一部の色(2色、3色、4色、5色)の組み合わせについて積層マスクを適用してもよい。この場合、2つの形態が考えられる。第1の形態は、上記一部の色分だけ積層マスクを生成し、それ以外の色についてのマスク製法を問わない形態である。例えば、6色のうち3色(例えば、CMY)については上述の実施形態で説明した製法によって積層マスクを生成し、それ以外の3色(KLcLm)については周知の製法によってマスクを生成する。第2の形態は、上記一部の色分だけ積層マスクを生成し、それ以外の色については上記一部の色のために生成した積層マスクの中から選択したものを割り当てる形態である。例えば、6色のうちCMYの3色については上述の実施形態で説明した製法によって積層マスクを生成し、それ以外の3色(KLcLm)についてはCMYのために生成した積層マスクの中なら選択したものを適用する。
【0243】
また、上述の実施形態では、異なるインク色の組み合わせについて積層マスクを適用する場合について説明したが、本発明は、この形態に限られるものではない。同じ色で径の異なるドット(吐出体積の異なる同色インク)を用いて記録を行う形態にも適用可能である。この場合、同色で径の異なるドット(例えば、大ドット、小ドット)について上述の積層マスクを適用してもよい。例えば、大シアン、小シアン、大マゼンタ、小マゼンタ、イエロー、ブラックの6種類のドットを用いる場合を考える。この場合、大シアンと小シアン、あるいは大マゼンタと小マゼンタについて、上述の実施形態で説明した製法により積層マスクを生成する。
【0244】
さらには、同色で径の異なるドット(例えば、大ドット、小ドット)を用いる形態において、異色ドットの組み合わせについては上述の積層マスクを適用し、径の異なる同色ドットの組み合わせについては同じマスクを適用する形態であってもよい。例えば、上述の6種類のドットを用いる場合において、大シアンと大マゼンタについて上記実施形態で説明した製法により積層マスクを生成し、且つ小シアンについては大シアンと同じマスクを適用し、小マゼンタについては大マゼンタと同じマスクを適用するのである。
【0245】
なお、同色で径の異なるドットの種類数は、大小2種類に限られるものではなく、大中小の3種類であってもよいし、それ以上であってもよい。また、本発明は、色および大きさの少なくとも一方が異なるドットについて適用した場合においてのみ効果を発揮するものではなく、例えば、離間したノズル群から異なるタイミングで吐出される同色インクについて適用しても効果を発揮する。例えば、ヘッドの主走査方向に沿ってCMYMCの順でノズル群が配列されている形態にあっては、離間した同色ノズル群(Cノズル群、Mノズル群)に対して上記製法によって製造した積層マスクを適用するのである。
【0246】
また、本発明は、上述した通り、インク以外の液体を用いる形態においても適用可能である。インク以外の液体としては、インク中の色材を凝集あるいは不溶化させる反応液が挙げられる。この場合、少なくとも、ある1種のインクと反応液について、上記実施形態で説明した製法により積層マスクを生成することになる。
【0247】
なお、本発明では、色材として染料を含有する染料インク、色材として顔料を含有する顔料インク、色材として染料および顔料を含有する混合インクのいずれについても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置としてのPCのハードウェアおよびソフトウェアの構成を主に示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態のインクジェット記録システムにおける、画像データ変換処理の流れを説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に適用可能なインクジェット記録装置を示した斜視図である。
【図4】2パス記録を説明するために、記録ヘッド、マスクパターンおよび記録媒体を模式的に示した図である。
【図5】2パスのマルチパス記録を説明するために、記録ヘッドおよび記録パターンを模式的に示した図である。
【図6】(a)および(b)は、C、M、Yそれぞれの2分割記録に係る6つのプレーンの2値データを模式的に示す図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るマスク製法を説明する図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係るマスク製法の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る基本斥力ポテンシャルE(r)の関数を模式的に示す図である。
【図10】(a)〜(d)は、本発明の第一の実施形態にかかる斥力ポテンシャルの付与と総エネルギーの減衰処理を模式的に説明する図である。
【図11】本発明の第一の実施形態に係る他のマスク製法の手順を示すフローチャートである。
【図12】マスクパターンの論理積を説明する図である。
【図13】マスクパターンの論理和を説明する図である。
【図14】本発明の第一の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図15】本発明の第一の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図16】本発明の第一の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図17】比較例に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図18】他の比較例に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図19】本発明の第一の実施形態に係る2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図20】本発明の第一の実施形態に係る2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図21】本発明の第一の実施形態に係る3つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図22】本発明の第一の実施形態に係る3つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図23】比較例に係る2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図24】比較例に係る2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図25】他の比較例に係る2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図26】他の比較例に係る2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図27】マスクパターンの「重ね合わせ」パターンを説明する図である。
【図28】本発明の第一の実施形態に係る2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図29】本発明の第一の実施形態に係る3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図30】比較例に係る2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図31】他の比較例に係る2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図32】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて1つのマスクの周波数特性を説明する図である。
【図33】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて2つのマスクの論理和の周波数特性を説明する図である。
【図34】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて2つのマスクの論理積の周波数特性を説明する図である。
【図35】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて2つのマスクの「重ね合わせ」の周波数特性を説明する図である。
【図36】本発明の第一の実施形態のマスクと従来例に係るマスクそれぞれについて3つのマスクの「重ね合わせ」の周波数特性を説明する図である。
【図37】本発明の第一の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図38】本発明の第一の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図39】本発明の第一の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図40】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理和のパワースペクトルを示す図である。
【図41】比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理和のパワースペクトルを示す図である。
【図42】他の比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理和のパワースペクトルを示す図である。
【図43】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理積のパワースペクトルを示す図である。
【図44】比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理積のパワースペクトルを示す図である。
【図45】他の比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理積のパワースペクトルを示す図である。
【図46】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図47】比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図48】他の比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図49】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの3つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図50】本発明の第一の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの論理和、論理積および[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図51】比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの論理和、論理積および[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図52】他の比較例のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの論理和、論理積および[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図53】本発明の第二の実施形態に係るマスク製法を説明する図である。
【図54】本発明の第二の実施形態に係るマスク製法を説明する図である。
【図55】本発明の第二の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図56】本発明の第二の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図57】本発明の第二の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図58】本発明の第二の実施形態に係る3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図59】本発明の第一の実施形態に係る6つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図60】本発明の第二の実施形態に係る9つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図61】本発明の第二の実施形態のマスクをずらしたときの3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図62】本発明の第二の実施形態のマスクをずらしたときの6つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図63】本発明の第二の実施形態のマスクをずらしたときの9つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図64】本発明の第二の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図65】(a)および(b)は、本発明の第三の実施形態に係るマスクを説明する図である。
【図66】本発明の第三の実施形態に係るマスク製法の手順を示すフローチャートである。
【図67】本発明の第三の実施形態に係る他のマスク製法の手順を示すフローチャートである。
【図68】本発明の第三の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図69】本発明の第三の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図70】本発明の第三の実施形態に係るマスクパターンの記録許容画素の配置を示す図である。
【図71】本発明の第三の実施形態に係る2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図72】本発明の第三の実施形態に係る2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図73】本発明の第三の実施形態に係る2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図74】本発明の第三の実施形態に係る3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図75】本発明の第三の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの論理和の記録許容画素の配置を示す図である。
【図76】本発明の第三の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの論理積の記録許容画素の配置を示す図である。
【図77】本発明の第三の実施形態のマスクをずらしたときの2つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図78】本発明の第三の実施形態のマスクをずらしたときの3つのマスクパターンの「重ね合わせ」の記録許容画素の配置を示す図である。
【図79】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理和のパワースペクトルを示す図である。
【図80】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの論理積のパワースペクトルを示す図である。
【図81】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの2つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図82】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの3つのマスクパターンの[重ね合わせ]のパワースペクトルを示す図である。
【図83】本発明の第三の実施形態のマスクおよびそれをずらしたマスクそれぞれの論理和、論理積および[重ね合わせ]の低周波数成分の違いを示す図である。
【図84】本発明の第四の実施形態に係る2パスのマルチパス記録に用いるマスクを説明する図である。
【図85】本発明の第五の実施形態に係る2パスのマルチパス記録に用いるマスクを説明する図である。
【図86】従来技術の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
【0249】
100 ホストコンピュータ(PC)
101、J0001 アプリケーション
102 OS
103 プリンタドライバ
104 プリンタ
107 HD
108 CPU
109 RAM
110 ROM
J0005 2値化処理
J0006 印刷データ作成
J0008 マスクデータ変換処理
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少なく、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンは、それぞれ、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ない特性を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
前記第1の種類のドットはシアンのドットであり、
前記第2の種類のドットはマゼンタのドットであり、
前記第3の種類のドットはイエローのドットであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記第1、第2および第3の種類のドットは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、淡シアン、淡マゼンタのドットから選ばれる3種類のドットであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項11】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することで得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項12】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項13】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少なく、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項14】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項15】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項1】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少なく、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンにおける低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有するインクジェット記録ヘッドを記録媒体の所定領域に対して複数回走査して、前記所定領域に画像を記録するための記録装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンは、それぞれ、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ない特性を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
前記第1の種類のドットはシアンのドットであり、
前記第2の種類のドットはマゼンタのドットであり、
前記第3の種類のドットはイエローのドットであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記第1、第2および第3の種類のドットは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、淡シアン、淡マゼンタのドットから選ばれる3種類のドットであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項11】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することで得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項12】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項13】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを記録時の対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理積することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少なく、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分は、前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンを前記記録時の対応関係とは異なる対応関係に基づいて論理和することによって得られる記録許容画素の配列パターンの低周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項14】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理積によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項15】
第1の種類のドットを形成するための第1のノズル群と第2の種類のドットを形成するための第2のノズル群と第3の種類のドットを形成するための第1のノズル群とを少なくとも有する記録ヘッドの、記録媒体の所定領域に対する複数回の走査それぞれで用いられる画像データを生成するデータ処理装置であって、
前記複数回の走査に対応した複数の第1マスクパターンを用いて、前記第1のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第1手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第2マスクパターンを用いて、前記第2のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第2手段と、
前記複数回の走査に対応した複数の第3マスクパターンを用いて、前記第3のノズル群によって前記所定領域に記録されるべき画像データを前記複数回の走査それぞれで用いられる画像データに分割する第3手段とを有し、
前記複数の第1マスクパターンのうち所定の走査で用いられる所定の第1マスクパターン、前記複数の第2マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第2マスクパターンおよび前記複数の第3マスクパターンのうち前記所定の走査で用いられる所定の第3マスクパターンは、それぞれ、記録許容画素の配列が異なり、
前記所定の第1マスクパターンと前記所定の第2マスクパターンと前記所定の第3マスクパターンの論理和によって得られる記録許容画素の配列パターンは、非周期で且つ低周波数成分が高周波数成分よりも少ないことを特徴とするデータ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図81】
【図82】
【図83】
【図84】
【図85】
【図86】
【公開番号】特開2009−83503(P2009−83503A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300064(P2008−300064)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【分割の表示】特願2005−197873(P2005−197873)の分割
【原出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【分割の表示】特願2005−197873(P2005−197873)の分割
【原出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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