説明

データ種別に応じて中継制御する無線中継装置

【課題】ネットワークを構成した中継装置にローカル接続された通信機器を、起動/停止を含めて効率的にリモート制御することが可能な、データ種別で中継制御できるマルチホップ式の無線中継装置を提供する。
【解決手段】マルチホップ式にデータを中継する無線中継装置1は、他無線中継装置とデータを中継する他無線中継装置部110と、受信したデータを中継制御するデータ中継制御部120と、他無線中継装置から受信したデータを複製するデータ複製部130と、他無線中継装置にデータを中継する方向を判別する無線通信判別部140と、複製したデータからデータ種別を抽出するデータ種別抽出部150と、抽出したデータと制御内容を登録するデータ種別登録部151と、自無線中継装置とローカル接続された機器を管理するローカル機器管理部152と、自無線中継装置とローカル接続された機器の動作を制御するローカル機器制御部170と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線中継装置間でマルチホップ式にデータを中継する無線中継ネットワークを構成する無線中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)等の無線電波の到達距離が比較的短い無線通信方式を用いてデータを多段中継(マルチホップ式)し、遠距離の通信機器間のデータを中継する中継装置および通信方式に関する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、従来のマルチホップ式の中継装置は、送信元の通信機器または前段の中継装置からの信号を次段の中継装置または送信先の通信機器へ単に中継するだけであり、送信元または送信先の中継装置にローカル接続された通信機器を効率的にリモート制御する配慮がされておらず、送信先の通信機器は常時自動受信可能な状態にあることが前提であった。このために中継装置にローカル接続される受信側の通信機器は、常時起動状態にしておく、または自動起動が可能なスタンバイモードを有する通信機器に限定する必要があった。
【0004】
また、中継装置にローカル接続された通信機器を動作させるために、中継装置が制御するための情報を受け取り、中継装置にローカル接続された通信機器を制御する技術が知られている。(例えば、特許文献2)
しかしながら、従来の中継装置にローカル接続された通信機器を動作させる方法は、Peer to Peerで通信する必要があるため、1つのローカル接続された通信機器を動作させるために、1つの制御情報を受け取る必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−191922号公報
【0006】
【特許文献2】特開2007−312056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、マルチホップ式のデータ中継において、データ中継先の中継装置およびローカル接続された通信機器に対して、効率的なデータの中継および効率的なリモート制御を行うことが可能な無線中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明は、複数の無線中継装置間でマルチホップ式にデータを中継する無線中継ネットワークを構成する無線中継装置であって、他無線中継装置と無線通信によりデータを中継する無線中継手段と、自無線中継装置とローカル接続された1以上のローカル機器と有線または無線によりデータを授受するローカル通信手段と、前記ローカル機器を制御するローカル機器制御手段と、他無線中継装置から受信したデータに含まれているデータ種別に係わる情報を抽出するデータ種別抽出手段と、前記データ種別と前記ローカル機器の機器種別とを関連付けて登録するデータ種別登録手段と、前記自無線中継装置と接続されているローカル機器を管理するローカル機器管理手段と、を有し、前記データ種別抽出手段は、前記データ中継手段が第1の他無線中継装置からデータを受信した場合に、当該受信したデータから前記データ種別に係わる情報を抽出し、前記ローカル機器制御手段は、前記データ種別登録手段を参照して、前記データ種別抽出手段が抽出したデータ種別に関連付けられた機器種別のローカル機器が自無線中継装置とローカル接続されているか否かを判定し、接続されていると判定した場合に、当該ローカル機器を起動し、前記ローカル通信手段は、前記受信したデータの複製を前記起動したローカル機器へ送信し、前記無線中継手段は、第2の他無線中継装置へ前記受信したデータを中継することを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、前記第1の発明の無線中継装置であって、前記無線中継手段が前記第1の他無線中継装置からデータを受信し、前記ローカル通信手段が前記受信したデータの複製を自無線中継装置とローカル接続されたいずれかのローカル機器へ送信した場合、または、前記受信したデータを中継した前記第2の他無線中継装置から送信先のローカル機器に係わる情報を通知された場合に、前記受信したデータまたは前記データの複製を送信した先のローカル機器に係わる情報を前記第1の他無線中継装置へ通知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、他中継装置との間で各種データをマルチホップ式に他中継装置に中継すると共に、各種データを複製し、ローカル接続されたローカル機器に通知することにより、効率のよいデータ中継をおこなうことができる。また、本発明によれば、ローカル接続されたローカル機器に通知する際にローカル機器を起動することで無用な電源消費を抑え効率的なリモート制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明装置の実施形態に係わる中継システムの全体構成図
【図2】本発明装置のブロック構成図
【図3】本発明装置の動作フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態として、各種センタと広範囲に分散している音声データ、センサデータ等の各種データの入出力機器との間を、複数の無線中継装置を介してマルチホップ式にデータを中継する無線中継ネットワークを例に、図面を用いて具体的に説明する。
【0013】
図1は、本発明装置の実施形態に係わる中継システムの全体構成図であって、1は本発明による無線中継装置(以下、本装置と略すこともある)であって、この例では1−1〜1−10の10台の無線中継装置でマルチホップ式無線中継ネットワークを構成している。なお、マルチホップ式中継ネットワークを構成する本装置1の台数は任意である。
【0014】
2は本装置1とローカル接続されている各種ローカル機器であって、ローカル機器のアドレス指定なしに動作させることができる。2−9は本装置1−9および、2−11は本装置1−10とローカル接続されたスピーカ、2−10は本装置1−9とローカル接続された表示装置、2−12は本装置1−10とローカル接続されたカメラの例である。
【0015】
3は各種データの配信元または収集元の各センタ5と繋がるゲートウェイであって、各種センタ5として、緊急情報を配信または収集する緊急情報センタ5−1,催事や広告等に係わる情報を配信する情報センタ5−2、電気、ガス、水道等の使用量に係わるデータを収集する検針センタ5−3を例示している。なお、本装置1と各種センタ5との間に設置されるゲートウェイ3は、本装置1から見てローカル接続されたローカル機器であって、アドレスを指定するによって動作させることができる。
【0016】
4は各戸に設置された、電気、ガス、水道等の検針装置であって、本装置1から見てローカル接続されたローカル機器である。検針装置4−4〜4−6、4−9、4−10は本装置1−4〜1−6、1−9、1−10のそれぞれとローカル接続されており、各検針装置4からの検針データは検針センタ5−3のアドレスを付与して、マルチホップ式に検針センタ5−3へ中継される。また、検針センタからのお知らせ等の情報がマルチホップ式に各検針装置4に中継される。
【0017】
各無線中継装置1−1〜1−10のそれぞれは、隣接する無線中継装置との距離が無線電波の到達距離(例えば100m)以下の間隔で、所定の管理単位の地域(例えば市町村)に分散しており、隣接する無線中継装置との間でデータを中継する。
【0018】
例えば、緊急情報センタ5−1からのデータは、音声データのデータ種別を付与して、無線中継装置1−1,1−2,1−3,・・・、1−9,1−10を経由して、Center to Endの方向(下方)に伝達する。そして、緊急情報センタ5−1からのデータの内、緊急通報音声(例えば津波発生等)は無線中継装置1−9を介して、街頭に設置されたスピーカ2−9から拡声再生される。また、無線中継装置1−9によって複製されたデータは無線中継装置1−9から無線中継装置1−10に伝達され、無線中継装置1−10を介して、街頭に設置されたスピーカ2−11からスピーカ2−9と同じ内容が拡声再生される。同様に、映像、文字から成る緊急通報情報は、映像、音声から成る緊急通報情報データ種別を付与して、無線中継装置1−9を介して、該当に設置された大型の表示装置2−10に表示される。また、無線中継装置1−9によって複製されたデータは無線中継装置1−9から1−10に伝達される。無線中継装置1−10に当該のローカル機器が接続されていない場合は伝達内容を破棄する。無線中継装置1−10の下方に無線中継装置が接続されている場合は、無線中継装置1−10によって複製されたデータを下方の無線中継装置に伝達し、伝達内容を破棄する。
【0019】
また、カメラ2−12からの映像と音声は、映像と音声のデータ種別を付与して、無線中継装置1−10,1−9・・・1−2,1−1を経由して、End to Centerの方向(上方)に伝達し、無線中継装置1−1を介して、緊急情報センタ5−1に届く。
【0020】
ここで、例えば、このカメラ2−10は常時稼働していてもよいし、緊急時に緊急情報センタ5−1からの遠隔制御で起動するようにしてもよい。
【0021】
図2は、本装置1のブロック構成図であって、110は隣接する他の無線中継装置と無線通信する他無線中継装置通信部、111はアンテナ、120は自無線中継装置と他無線中継装置またはローカル機器との間でデータを中継制御するデータ中継制御部、130は他無線中継装置から伝達されたデータを複製するデータ複製部、140はCenter to Endの無線通信なのか、End to Centerの無線通信なのかを判別する無線通信判別部、150は複製したデータからデータ種別を抽出するデータ種別抽出部、151は抽出したデータと制御内容の関連づけを登録するデータ種別登録部、152は接続されたローカル機器を管理するローカル機器管理部、160は機器制御コマンド抽出部、170はローカル機器制御部、180はローカル機器通信部、191、192、193、194はローカル機器と本装置1を接続するローカル接続ラインである。図2では説明の都合で4本の有線として説明するが、1本に重畳してものよいし、近距離無線方式(例えば、Bluetooth(登録商標))であってもよい。
【0022】
図4は本装置1の動作フローチャートである。以下、図1、図2、図3を併用し、本装置1の動作フローを説明する。本装置1の動作フローは便宜上、無線中継装置1−9を例について説明する。
【0023】
本フローは本装置1の電源が投入された時にスタートし(S300)、他無線中継装置通信部110またはローカル機器通信部180が隣接する他無線中継装置通信部または自無線中継装置とローカル接続されたローカル機器からのデータを監視する(S310)。
【0024】
データを受信した場合(S310、YES)、データ中継制御部120は、受信したデータをデータ複製部130でデータを複製する(S320)。すると、複製したデータは無線通信判別部140でCenter to Endのデータなのか、End to Centerのデータなのかを判別する(S330)。受信したデータがCenter to Endであった場合(S330、YES)、複製したデータを他無線中継装置通信部110から、無線中継装置1−10に複製したデータを送る。End to Centerで合った場合(S330、No)、複製したデータを他無線中継装置通信部110から無線中継装置1−8に送る。
【0025】
そして、データ複製部130で複製されたデータは、データ種別抽出部150によって複製されたデータの中から、データ種別を抽出する(S340)、抽出されたデータ種別はローカル機器管理部152で接続されているローカル機器とデータ種別登録部151に格納されているデータと関連付けられているか判断する(S350)。
【0026】
データ種別が接続されているローカル機器(2,3,4)と関連付けられていなかった場合(S350、NO)、受信したデータを破棄し、データ受信状態(S310)に戻る。データ種別が接続されているローカル機器(2,3,4)と関連付けられていた場合(S350、YES)、ローカル機器管理部152は、受信したデータの中にローカル機器のアドレス指定があるか判断する(S360)。アドレス指定があった場合、ローカル機器管理部152は、指定されてたアドレスのローカル機器が接続されているか判断する(S361)。指定されたアドレスのローカル機器が接続されていなかった場合(S361、NO)、受信したデータを破棄し、データ受信状態(S310)に戻る。指定されたアドレスのローカル機器が接続されていた場合(S361、YES)、当該のローカル機器を起動する。この時、ローカル機器の給電開始処理も含むものとする(S370)。
【0027】
また、アドレス指定がなかった場合(S360、NO)、当該のローカル機器を起動する。この時、ローカル機器の給電開始処理も含むものとする。当該ローカル機器は機器制御コマンド抽出部160によって、抽出されたコマンドにより、ローカル機器制御部170によって制御される(S380)。制御コマンドに従って、ローカル機器を制御した後、給電停止の処理があれば給電停止し、データ受信状態(S310)に戻る。
【0028】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。本実施形態において、本装置1によるマルチホップ式の中継ネットワークおよび、ローカル機器制御は、説明を簡単化するために、分枝の無いトポロジーとしたが、複数に分枝する無線中継装置を含む、ツリー構成のトポロジーであってもよい(図示せず)。
【0029】
また、スピーカ2−9、2−11、表示装置2−10、カメラ2−12が各1台の場合を例示したが、これらの設置台数は任意である。また、本装置1とローカル接続される機器として、図示した機器以外にも各通信機器(例えば、降雨計、地震計、火災センサ等の各種センサデータを送信する装置)を接続できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
1・・・無線中継装置
2・・・各種ローカル機器
3・・・各種センタと繋がるゲートウェイ
4・・・検針装置
5・・・各種センタ
191,192,193,194・・・ローカル接続ライン
110・・・他無線中継装置通信部
111・・・アンテナ
120・・・データ中継制御部
130・・・データ複製部
140・・・無線通信判別部
150・・・データ種別抽出部
151・・・データ種別登録部
152・・・ローカル機器管理部
160・・・機器制御コマンド抽出部
170・・・ローカル機器制御部
180・・・ローカル機器通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線中継装置間でマルチホップ式にデータを中継する無線中継ネットワークを構成する無線中継装置であって、
他無線中継装置と無線通信によりデータを中継する無線中継手段と、自無線中継装置とローカル接続された1以上のローカル機器と有線または無線によりデータを授受するローカル通信手段と、前記ローカル機器を制御するローカル機器制御手段と、他無線中継装置から受信したデータに含まれているデータ種別に係わる情報を抽出するデータ種別抽出手段と、前記データ種別と前記ローカル機器の機器種別とを関連付けて登録するデータ種別登録手段と、前記自無線中継装置と接続されているローカル機器を管理するローカル機器管理手段と、を有し、
前記データ種別抽出手段は、前記データ中継手段が第1の他無線中継装置からデータを受信した場合に、当該受信したデータから前記データ種別に係わる情報を抽出し、
前記ローカル機器制御手段は、前記データ種別登録手段を参照して、前記データ種別抽出手段が抽出したデータ種別に関連付けられた機器種別のローカル機器が自無線中継装置とローカル接続されているか否かを判定し、接続されていると判定した場合に、当該ローカル機器を起動し、
前記ローカル通信手段は、前記受信したデータの複製を前記起動したローカル機器へ送信し、
前記無線中継手段は、第2の他無線中継装置へ前記受信したデータを中継することを特徴とするデータ種別に応じて中継制御する無線中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線中継装置であって、
前記無線中継手段が前記第1の他無線中継装置からデータを受信し、前記ローカル通信手段が前記受信したデータの複製を自無線中継装置とローカル接続されたいずれかのローカル機器へ送信した場合、または、前記受信したデータを中継した前記第2の他無線中継装置から送信先のローカル機器に係わる情報を通知された場合に、前記受信したデータまたは前記データの複製を送信した先のローカル機器に係わる情報を前記第1の他無線中継装置へ通知することを特徴とするデータ種別に応じて中継制御する無線中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−138829(P2012−138829A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290848(P2010−290848)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】