説明

データ記録再生装置

【課題】光電変換で発生する高調波の影響を低減したデータ記録再生装置を提供する。
【解決手段】空間光変調器102で空間変調された光をフーリエ変換するための第1のレンズ1031と、第1のレンズ1031でフーリエ変換された光の一部を透過するアパーチャー1033と、アパーチャー1033を透過した光を逆フーリエ変換するための第2のレンズ1032とを備え、アパーチャー1033の光を透過する空間のサイズは、コヒーレントな光の波長と、空間光変調器102のピクセルピッチと、第1のレンズ1031の焦点距離とによって決定される空間光変調器102のナイキスト周波数に対応する空間のサイズ以上であり、且つコヒーレントな光の波長と、第2のレンズ1032の焦点距離と、イメージセンサー105のピクセルピッチとによって決定される、イメージセンサー105のナイキスト周波数に対応する空間のサイズより小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学データ記録再生装置に関し、特にホログラフィックを記録媒体に用いたデータ記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチメディア化が進み扱うデータが増大している。この大容量のデータを記録するために、ホログラフィックを用いた記録装置(以下ホログラムメモリ)の研究が成されている。
【0003】
ホログラムメモリは2次元に配置されたデータ(ページデータ)を一度に記録再生できることから、データの転送速度が非常に高速であり、また、多重記録という技術を用いることで、記憶容量の大容量化も実現できるといわれている。
【0004】
ホログラムメモリにある問題点として、記録再生に用いる空間光変調器の最小変調単位であるセルとイメージセンサーの画素が1対1に対応できないことがある。これは、レンズの収差、ホログラムディスクのチルトなどによって1セルに対して1画素のセンシングができない可能性があるからである。1セルに対して1画素以上のセンシングができない場合にはサンプリングの定理により、元のイメージを再現できないため、エラーの数が増大してしまう。
【0005】
それに対して、従来から在る2次元のバーコドリーダーなどは、空間光変調器の1セルに対してイメージセンサーの画素が3x3〜5x5画素程度となるようにオーバーサンプリングを行っている為、後で余分な画素を省くことで、1対1に対応させていた。
【0006】
しかし、ホログラムメモリなど1枚のページデータに例えば1024x1024セルのデータを記録する時、イメージセンサーで1セル当たり3x3画素のオーバーサンプリングを行うと、3072x3072画素ものセンサー領域が必要となり、非常にコストが増加する。
【0007】
これに対して、ホログラムメモリにおいて、空間光変調器の1セルに対してイメージセンサーで1画素に対応したサンプリングを行い、画素がマッチしていない時には、隣接画素からの影響を考慮することで、画素をマッチした値に補正するシステムがある。隣接画素からの影響は非マッチング量に対応した値で、予め記憶されたものを用いている。図16に、このシステムのフローチャートを示す。ステップS161で再生するか否かを選択する。再生を選択した場合、ステップS162で空間光変調器の1セルに対してイメージセンサーで1画素に対応したイメージの検出を行う。
【0008】
次にステップS163で非マッチング量δを検出する。次にステップS164で、非マッチング量δの大きさが0.5より大きいか否かを判断する。次にステップS164での判断が0.5より大きい場合、イメージセンサーのピクセルの右方向にイメージの輝度値を補正する。ステップS164での判断が0.5以下の場合、イメージセンサーのピクセルの左方向にイメージの輝度値を補正する。この様に、空間光変調器の1セルに対してイメージセンサーで1画素に対応したイメージの検出を行った後、隣接画素からの影響を考慮して、画素をマッチする(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、イメージセンサーでサンプリングした後に、補間を用いることで、イメージセンサーの1画素より擬似的に多い分解能で計算し、最終的に空間光変調器の1セルに対してイメージセンサーが1画素となるように対応させる技術が在る。図17に、この技術のフローチャートを示す。ステップS171でイメージ中のどの領域にデータが記録されているかを判定する。次に、ステップS172で、既知の位置合せ用のパターン(マーク)をテンプレートマッチングを使って粗い精度で検出する。次に、ステップS173で、擬似的にイメージの解像度を増加する。次に、ステップS174で、増加した解像度の単位であるサブピクセルで高精度のテンプレートマッチングを行い、マークの位置を高精度に検出する(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2006−11363号公報(第5−9頁、第6図)
【特許文献2】特開2003−150898号公報(第5−8頁、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の技術では、光電変換時に発生する高調波による空間周波数帯域への折り返し誤差の影響を低減することが出来ず、データ記録再生の誤り率が悪いという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高調波による影響を低減したデータ記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明のデータ記録再生装置は、コヒーレントな光を空間変調する空間光変調器と、前記空間光変調器で空間変調された光を、媒体へ記録及び媒体から読み出す干渉光学部と、前記干渉光学部によって読み出された光を光電変換するためのイメージセンサーと、前記イメージセンサーでの光電変換によって得られたデジタルイメージを信号処理するための信号処理部とを備え、前記干渉光学部は、前記空間光変調器で空間変調された光をフーリエ変換するための第1のレンズと、前記第1のレンズでフーリエ変換された光の一部を透過するアパーチャーと、前記アパーチャーを透過した光を逆フーリエ変換するための第2のレンズとを備え、前記アパーチャーの光を透過する空間のサイズは、前記コヒーレントな光の波長と、前記空間光変調器のピクセルピッチと、前記第1のレンズの焦点距離とによって決定される前記空間光変調器のナイキスト周波数に対応する空間のサイズ以上であり、且つ前記コヒーレントな光の波長と、前記第2のレンズの焦点距離と、前記イメージセンサーのピクセルピッチとによって決定される、前記イメージセンサーのナイキスト周波数に対応する空間のサイズより小さいことを特徴としたものである。
【0013】
さらにデータ記録再生装置において、前記コヒーレントな光の波長をλ、前記空間光変調器のピクセルピッチをΔd1、前記第1のレンズの焦点距離をf1、前記イメージセンサーのピクセルピッチをΔd2、前記第2のレンズの焦点距離をf2とした時、 前記アパーチャーの光を透過する空間のサイズDは式
【0014】
【数1】

を満たすことを特徴としたものである。
【0015】
さらにデータ記録再生装置において、前記信号処理部は、前記デジタルイメージを空間フィルタリングするフィルタと、前記フィルタによってフィルタリングされたデジタルイメージの適切なサンプリングを行うための座標を演算する座標演算手段と、前記座標演算手段で演算された座標に前記デジタルイメージをリサンプリングするリサンプリング手段を備え、リサンプリングより前に、空間フィルタリングすることを特徴としたものである。
【0016】
さらにデータ記録再生装置において、前記フィルタと前記リサンプリング手段を同一の空間フィルタで構成することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明のデータ記録再生装置によれば、光電変換時に発生する高調波による折り返し誤差を低減してデータ記録再生のエラーを低減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明のデータ記録再生装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるデータ記録再生装置の構成図を示す。図1において、光源部101は、コヒーレントな光を生成する光源から照射される光を2つに分割し出力するものである。空間光変調器102は光源部101から照射された2つの光の一方を受け、記録するデータに基づいた空間変調を行う。干渉光学部103は空間光変調器102で空間変調された光である信号光と、光源部101から出力された、もう一方の光を参照光として受け、信号光と参照光の干渉を媒体104へ記録する。再生時には、干渉光学部103へ参照光のみを入力し、媒体104へ照射することで、その回折光を再生光として読み出す。読み出された再生光はイメージセンサー105へ照射され、デジタルイメージが得られる。デジタルイメージは、信号処理部106へ入力され、信号処理を行うことによって、媒体104に書き込まれていたデータが再生できる。
【0020】
図2に本発明の第1の実施の形態におけるデータ記録再生装置の概念図を示す。図2は光の光路や、光源部101の構成、干渉光学部103の構成、媒体104への記録再生の様子などを示した図1を概念化した図であり、図1と同じ要素には同じ符号を付けている。以下に本発明について詳細に説明する。
【0021】
光源部101は、2つの光束を出力する光源である。図2において、レーザー光源1011から照射されたコヒーレントな光は、偏光ビームスプリッター1012によって、2つの光束に分割される。分割された光の一方は、コリメーター1014に入力され、コリメーター1014は、波面を整形すると共に光の径を広げる。径の広げられた光は光源部101から出力され、空間光変調器102へ入力される。また、偏光ビームスプリッター1012によって分割された、もう一方の光はミラー1013a、1013bによって光路が変化し光源部101から出力され、参照光として干渉光学部1013へ入力される。
【0022】
空間光変調器102は、記録するデータに基づいて、光の振幅または位相の空間変調を行う。本実施の形態では、光の振幅のみ空間変調する。空間光変調器102は、液晶素子と偏光パネルで構成されたLCD(Liquid Crystal Display)を用いる。LCDは最小変調単位であるセルごとに光を透過するか遮断するかを設定できる。例えば、あるセルにおいてデータ”1”が設定された時には、そのセルに入射した光は透過し、データ”0”が設定された時には、そのセルに入射した光は遮断される。以下に、記録データに基づいて、LCDにページデータを設定するまでの流れを説明する。
【0023】
まず、記録するデータの系列は誤り訂正符号化される。本実施の形態の誤り訂正符号は一般的なリードソロモン符号を用いる。誤り訂正符号化されたデータ系列は、変調符号化される。本実施の形態では、変調符号には1−4符号(1light bit on 4cells coding)を用いる。1−4符号とは、4セルの内1セルだけ”1”で他の3セルは”0”になる制約を付加する符号であって、”1”の数が少ないときにSNRの改善が得られるシステムで用いられる。
【0024】
図3に1−4符号化され、ページデータが生成される様子を示す。記録するデータの系列から2ビットづつ抜き出して、符号化部で符号化テーブルを参照することで符号化を行い、2x2ビットづつ出力する。その2x2ビットの符号語を縦横に並べていくことでページデータを生成することができる。ここで、図3においてページデータの黒はデータ”0”であり、それに対応する空間光変調器102であるLCDのセルには遮断を設定する。また、ページデータの白はデータ”1”であり、それに対応する空間光変調器102であるLCDのセルには透過を設定する。この様にすることで、記録するデータに基づいたページデータを空間光変調器102に設定し、入力される光を空間変調することができる。空間変調された光は信号光として、干渉光学部103へ入力される。
【0025】
なお、空間光変調器102は光の振幅や位相を空間変調できるものであれば、例えばDMD(Digital Micromirror Device)を用いても良く、本実施の形態に限定されるものではない。DMDはLCDと異なり反射型の素子であるので、光の照射方向は変化するが、同業者であれば適宜構成できる。なお、変調符号として、1−4符号を用いたが、3−16符号(3light bits on 16cells coding)などを用いても良く本実施の形態に限定されるものではない。
【0026】
干渉光学部103は信号光と参照光を受け、この2つの光の干渉を媒体104へ記録するための光学構成である。また、参照光を入力し、媒体104へ照射することで、媒体104からの回折光を読出す光学構成である。干渉光学部103に入力された信号光は第1のレンズ1031であるフーリエ変換レンズによってフーリエ変換される。本実施の形態では、図2に示すように、第1のレンズ1031の焦点からデフォーカスした位置で、媒体104へ干渉を記録する。
【0027】
本実施の形態では図2に示すように、第1のレンズ1031を通った信号光と参照光を媒体104上で重なるように照射し、2つの光束の干渉を記録することで、2光束干渉記録を実現する。この様にして、媒体104に干渉が記録される。次に読出しを行う場合について説明する。読出し時には媒体104のホログラムに参照光のみを照射し、その時の媒体104からの回折光を読み出す。媒体からの回折光は、第1のレンズの焦点に設置されたアパーチャー1033によって、光の一部が遮断され、一部が透過するようになっていて、高次の回折光を取り除く。高次の回折光が取り除かれた光は第2のレンズ1032である逆フーリエ変換レンズによって逆フーリエ変換される。逆フーリエ変換された光は干渉光学部103から出力されイメージセンサー105に像を結ぶ。
【0028】
媒体104はフォトリラクティブポリマーなどの材質で構成されたものであって、光の干渉を記録することができる。
【0029】
イメージセンサー105はCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)受光素子を2次元アレイ状に構成したものであって、光電変換を行うことによりデジタルイメージを取得できる。なお、受光素子はCCD(Charge Coupled Devices)などを用いてもよく本実施の形態に限定されるものではない。干渉光学部103から出力された光はイメージセンサー105に像を結び光電変換によってデジタルイメージを出力する。
【0030】
以下に、本発明の特徴となる光学系の各要素の最適化について述べる。図4は、図2の光学系の各要素をさらに詳細に示した概念図であって、同じ要素には同じ符号を付けている。
【0031】
まず説明を容易にする為に、光学系の各要素の設定項目に記号を付ける。光の波長をλ、空間光変調器102の最小変調単位であるセル構成において、隣接セル間の距離である空間光変調器102のピクセルピッチをΔd1、第1のレンズ1031の焦点距離をf1、第2のレンズ1032の焦点距離をf2、アパーチャー1033の光を透過する空間のサイズであるアパーチャーサイズをD、イメージセンサー105の隣接画素間の距離であるイメージセンサー105のピクセルピッチをΔd2とする。
【0032】
図5(a)に空間光変調器102のセルの構成の概念図と、空間光変調器102のピクセルピッチをΔd1を示す。図中の四角い白の部分がセルであって透過と遮断を設定できる。また、図5(b)にイメージセンサー105の画素の構成の概念図と、イメージセンサーのピクセルピッチをΔd2を示す。図中の四角い白の部分が画素で受光する部分である。
【0033】
また、図6にアパーチャーの構成と、アパーチャーサイズDを示す。図中の四角い白の部分が光の透過領域で、黒い部分が光の遮断領域である。アパーチャー1033はフーリエ面で高次の回折光を遮断し、必要な帯域の光のみを透過する光学フィルターの役割を果たすものである。光の波長がλ、空間光変調器102のピクセルピッチがΔd1、第1のレンズ1031の焦点距離がf1の時、フーリエ面での一次回折光の像高Yは数2の様になる。
【0034】
【数2】

【0035】
図7に1次回折光の様子を示した概念図を示す。図2と同じ要素は同じ符号で示している。空間光変調器102の遮断(0)、透過(1)で表される信号の最高周波数fmaxに対応するフーリエ面での像高は、フーリエ面での1次回折光の像高の1/2となる。ただし、回折光は光軸を中心に対照的に現れるので、最高周波数fmaxに対応するフーリエ面のサイズ、つまり、空間光変調器102のナイキスト周波数に対応するアパーチャーのサイズD01は数3となり、1次回折光の像高Yと等しくなる。ここで、最高周波数fmaxの信号とはすなわち”・・・01010101・・・”の系列で表される信号である。
【0036】
【数3】

【0037】
アパーチャー1033で光を透過する空間のサイズであるアパーチャーサイズDは、数4に示すようにD01以上でなければならない、なぜなら、アパーチャーサイズDをD01より小さくすると、信号が存在する周波数成分も遮断してしまうことになるからである。
【0038】
【数4】

【0039】
サンプリングの定理によれば、信号の最高周波数fmaxの2倍以上のサンプリング周波数でサンプリングを行えば全ての信号の情報が収集できる。例として、アパーチャーサイズDを空間光変調器102のナイキスト周波数に対応するアパーチャーのサイズD01と同じ(D=D01)にし、第2のレンズ1032からの光をイメージセンサー105で信号の最高周波数fmaxの2.0倍のサンプリング周波数でサンプリングする場合には、数5が成り立つ。
【0040】
【数5】

【0041】
この時、規格化アパーチャーサイズD/D01は1.0となり、空間光変調器102に対するイメージセンサー105のサンプリングの倍率magは数6で表され、数5の条件では1.0倍となる。
【0042】
【数6】

【0043】
つまり、単純にサンプリングの定理に従えば、規格化アパーチャーサイズD/D01を1.0にし、空間光変調器102に対するイメージセンサー105のサンプリング倍率を1.0倍にすれば、元のデータを復元できることになる。この時、イメージセンサー105のナイキスト周波数に対応するアパーチャーサイズD02は空間光変調器102のナイキスト周波数に対応するアパーチャーサイズD01と等しくなっている。イメージセンサー105のナイキスト周波数に対応するアパーチャーサイズD02は数7で表される。
【0044】
【数7】

【0045】
しかしながら、この条件では性能の良い再生はできない。その原因の一つに、イメージセンサー105の光電変換の時に発生する高調波の影響が在る。
【0046】
図8にイメージセンサーの光電変換の時に発生する高調波の影響について示す。図8(a)は規格化アパーチャーサイズD/D01を1.0にし、空間光変調器102に対するイメージセンサー105のサンプリング倍率を1.0倍に設定した時、つまりD01=D=D02のときの空間周波数特性の変化の様子を示している。アパーチャーサイズDを信号の最高周波数fmaxに対応するアパーチャーサイズD01にし、高域の雑音成分をカットする。高域の雑音成分がカットされた光はイメージセンサー105によってサンプリングされるのであるが、CMOSで構成されたイメージセンサーは電界のパワーに比例した値(輝度値)を出力する。電界のパワーは電界の2乗で表される。この2乗の影響によって、高調波成分が発生する。高調波成分が発生した電界のパワーをD02=Dの条件でサンプリングすると折返し誤差が発生し、その折返し誤差は、信号が存在する空間周波数帯域に折り返す。つまり、高調波は全て雑音となり、SNRが非常に悪化してしまう。
【0047】
数式を用いて高調波が発生する一例を示す。空間光変調器102の変調パターンが、最高周波数の信号である”・・・10101010101010・・・”の時、アパーチャーサイズD=D01のアパーチャー1033を通し、第2のレンズ1032で逆フーリエ変換された光の電界Eは、数8で現される。つまり電界はコサイン波になる。この時の輝度Iは、電界のパワーである電界Eの2乗に比例するので数9で現される。
【0048】
【数8】

【0049】
【数9】

【0050】
数9を見ると、cos(x)の項に加えて、cos(2x)の項が新たに発生している。このcos(2x)の項は2乗によって発生した高調波である。以上の様に、空間光変調器102に対してイメージセンサー105のサンプリングを1倍にしたのでは、イメージセンサー105の光電変換の時に発生する高調波の影響で、SNRが劣化し精度の良いデータの再生ができない。つまり、単純にサンプリングの定理に従ったのでは、SNRが劣化してしまう。
【0051】
本発明は、この高調波の影響も考慮し、適切な光学系の設定を行う。本発明は、図8(b)に示すように高調波による折返し誤差を、信号が存在する空間周波数帯域に折り返させないように、または、信号が存在する空間周波数帯域への折返し誤差を少なくすることで、SNRを劣化させない。
【0052】
図8(b)は規格化アパーチャーサイズD/D01を1.0にし、空間光変調器102に対するイメージセンサー105のサンプリング倍率を1.5倍に設定した時、つまりD01=D<D02のときの空間周波数特性の変化の様子を示している。アパーチャーサイズDを信号の最高周波数fmaxに対応するアパーチャーサイズD01にし、高域の雑音成分をカットする。高域の雑音成分がカットされた光はイメージセンサー105によってサンプリングされるのであるが、CMOSで構成されたイメージセンサーは電界のパワーに比例した値(輝度値)を出力する。電界のパワーは電界の2乗で表される。この2乗の影響によって、高調波成分が発生する。高調波成分が発生した電界のパワーをD02=D*1.5条件でサンプリングする。図8では、イメージセンサー105のピクセルピッチΔd2を小さくすることで、1.5倍のサンプリングを行っている。この様に数10を満たすように各要素を設定することで、信号が存在する空間周波数帯域への折返し誤差を少なくできる。
【0053】
【数10】

【0054】
数10は数3を参照することで、数11のようにも変形できる。
【0055】
【数11】

【0056】
最終的に、数3及び、数4及び、数10を満たすように光学系の各要素の項目を設定すれば、高調波の影響を削減し、SNRを劣化を抑えてデジタルイメージを取得することができる。また、数3及び、数4及び、数11を満たすように設定しても良い。すなわち、次式の関係を満足するように設定する。
【0057】
【数1】

【0058】
イメージセンサー105で取得されたデジタルイメージは信号処理部106へ入力される。信号処理部106は、デジタルイメージを補間することによって、空間光変調器102の1セルに対して、1画素のデータにリサンプリングし、リサンプリングされたデジタルイメージを二値化することによって、媒体104へ記録されたページデータを再生することができる。再生されたページデータは1−4符号の復調、リードソロモン符号による誤り訂正などを行い記録したデータの系列を再生しホストへ送信する。
【0059】
なお、本実施の形態では、信号光と参照光の光軸が異なる2光束干渉の記録再生について説明したが、例えば、信号光と参照光の光軸を同じに設定したコリニア方式で構成してもよく、この場合、光学系の構成が簡単になる効果があり、フーリエ面でホログラムを記録再生する方式であれば、本実施の形態に限定されるものではない。
【0060】
なお、本実施の形態では、再生時に媒体104の参照光を照射した側(図2では媒体104の左側)とは反対側(図2では媒体104の右側)から透過した回折光を読み出す透過型のホログラム記録再生方式について説明したが、参照光を照射した側と同じ側(図2では媒体104の左側)に回折光を読み出す反射型の方式でもよく、この場合、第1のレンズ1031と第2のレンズ1032を同一のレンズとすることにより、光学系が簡単になるという効果があり、また、同一のレンズであるので、ディストーションなどのレンズによる収差の影響を削減することができる。
【0061】
以上の様に、イメージセンサー105の光電変換の時に発生する高調波の影響を考慮した上で、光学系の各要素の項目を決定することで、再生時にSNRの劣化を抑え精度の高いデータの再生を行うことができる。
【0062】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2のデータ記録再生装置の信号処理部106の構成図である。実施の形態1と同じ要素は同じ符号で示し説明は省略する。本実施の形態は、実施の形態1で説明した光学系において、イメージセンサー105によって取得されたデジタルイメージを信号処理する信号処理部106に特徴を有する。
【0063】
イメージセンサー105で取得されたデジタルイメージは、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062へ格納される。メモリ1062に格納されたデジタルイメージは、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062から読み出され、フィルタ1063によって空間フィルタリングが行われる。空間フィルタリングされたデジタルイメージは、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062に格納される。メモリ1062に格納された空間フィルタリングされたデジタルイメージは、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062から読み出され、座標検出手段1064は、空間フィルタリングされたデジタルイメージから適切なサンプリングを行う為の座標を演算する。
【0064】
次に、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062から読み出された空間フィルタリングされたデジタルイメージと、座標検出手段1064で演算された座標は、リサンプリング手段1065に入力され、リサンプリング手段1065は、座標検出手段1064から入力された座標に基づいて、空間フィルタリングされたデジタルイメージをリサンプリングする。リサンプリングされたデジタルイメージは、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062に格納される。リサンプリングされたデジタルイメージは、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062から読み出され、復号部1066は、リサンプリングされたデジタルイメージに対して、2値化、復調、誤り訂正などを施すことで再生データを生成し、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062へ格納する。再生データは、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062から読み出され、ホストインターフェイス1067を介してホストへ送信される。
【0065】
イメージセンサー105は、図10(b)に示すようなデジタルイメージを取得する。図10(a)には、記録されたページデータを示す。なお、図10(b)は表示のために誤差拡散を用いて2値化し概念化されたイメージであり、実際は多値の例えば8bitで表されるイメージである。
【0066】
イメージセンサー105で取得したデジタルイメージは、メモリインターフェイス1061を介してメモリ1062へ格納される。メモリインターフェイス1061はメモリ1062と他の要素とのイメージの入出力を仲介するものである。メモリ1062は例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)であって、デジタルイメージを格納できる。
【0067】
フィルタ1063はデジタルイメージを空間フィルタリングするものである。デジタルイメージの空間フィルタリングの順番は、図10(b)に示すように、1行目を左から右へ走査した後、2行目を左から右へ走査し、N行すべてを走査する。図11にデジタルイメージの座標を示す。フィルタ1063のタップ数を5x5の場合、現在フィルタリングを行っている注目画素の座標を(x,y)とした時のタップ入力の画素の座標は、(x−2,y−2)、(x−1,y−2)、(x,y−2)、(x+1,y−2)、(x+2,y−2)、(x−2,y−1)、(x−1,y−1)、(x,y−1)、(x+1,y−1)、(x+2,y−1)、(x−2,y)、(x−1,y)、(x,y)、(x+1,y)、(x+2,y)、(x−2,y+1)、(x−1,y+1)、(x,y+1)、(x+1,y+1)、(x+2,y+1)、(x−2,y+2)、(x−1,y+2)、(x,y+2)、(x+1,y+2)、(x+2,y+2)の25画素となる。この25画素の値(輝度値)をタップ入力とし、空間フィルタの5x5個の係数と畳込みを行うことで、注目画素の座標の出力を得ることができる。図12にフィルタ1063の構成を示す。25個のタップ入力端子からタップ入力を入力し、25個の乗算器で25個の係数とタップ入力をそれぞれ乗算する。25個の乗算結果は加算器に入力され、その総和が計算される。加算器の出力を注目画素のフィルタリング結果として出力する。
【0068】
フィルタ1063の特性について説明する。実施の形態1において、高調波の折返し誤差が信号の空間周波数帯域に折り返さないような光学系の設定について述べた。本実施の形態では、イメージセンサー105でデジタルイメージを取得後に信号処理部で、高調波を処理することに特徴をもつ。図13は、実施の形態1の図8(b)で説明した空間周波数特性の変化と同様に、イメージセンサー105でサンプリングした後にフィルタ1063で空間フィルタリングし、その後、空間光変調器102の1セルに対して1.0画素に対応させるリサンプリングを行うまでの空間周波数特性の変化を示している。高調波の折返し誤差が信号の空間周波数帯域に折り返していないので、フィルタ1063で高調波成分をカットすることで、リサンプリング後の高調波の折返し誤差を削減している。つまり、フィルタ1063は、高調波成分をカットするローパスフィルターとなる。
【0069】
また、フィルタ1063は、等化器の役割も果たす。等化器とは、雑音を遮断するだけでは無く、デジタルイメージを2値化しやすいように、信号の空間周波数特性を望みの特性にフィルタリングするものである。等化器は一般的に、パーシャルレスポンスと呼ばれる方式を用いて等化するのが良い。例えば、信号の高域成分を余りカットしないホログラムメモリなどではPR(1)と呼ばれる特性に等化すればよい、PR(1)は信号が存在する周波数帯域で、信号の大きさが一定となるような特性である。パーシャルレスポンス方式については、従来から一般的に用いられているので詳細な説明は割愛する。以上の様に、フィルタ1063で高調波成分をカットと共に、2値化が容易になるような等化を行うことで、SNRが良好で2値化が容易なデジタルイメージを得ることができる。
【0070】
座標検出手段1064は、フィルタ1063で空間フィルタリングされたデジタルイメージから、適切な座標を検出するものである。実施の形態1では、空間光変調器102の1セルに対して、イメージセンサーの画素は1画素より多くサンプリングしているが、最終的には、記録したデータ系列を再生する為に、空間光変調器102の1セルに対して1画素のサンプリングをしたデジタルイメージが必要である。このために、後で説明するリサンプリング手段1065で1対1に対応するようにリサンプリングを行う。このリサンプリングを行う為には、1対1に対応するデジタルイメージの座標が必要となる。座標検出手段1064は、この座標を空間フィルタリングされたデジタルイメージから演算する。座標演算の一般的な方法は、複数の特徴的なデータ(マーク)を記録する時にページデータに埋め込み、再生時にそれを検出し、既知のマーク間距離と比較演算する方法があり、座標検出手段1064はこの方法を使用すればよい。
【0071】
リサンプリング手段1065は前述したように、デジタルイメージを空間光変調器102の1セルに対して1画素でリサンプリングをするものであって、座標検出手段1064から入力される座標に基づいて、空間フィルタリングされたデジタルイメージをリサンプリングする。リサンプリングを行う方法としては、一般的に補間フィルタを用いる。補間フィルタは空間フィルタであって、フィルタ1063と同じ図12の構成で実現できる。補間フィルタは、その係数によって様々な補間方法が選択可能であるが、本実施の形態では、ナイキストフィルタと呼ばれるフィルタの係数を用いる。ナイキストフィルタは、信号のゲイン特性がどの周波数でも一定なフィルタであるので、信号の大きさを変えずに、位相(座標)のみ変更することができ補間に適している。
【0072】
復号部1066は、リサンプリングされたデジタルイメージに2値化、復調、誤り訂正などを施し、記録されたデータ系列を再生するものである。2値化、復調、誤り訂正の方法は色々あるが、本実施の形態では2値化にはレベル検出を用い、変調符号の復調は1−4符号の復調で、誤り訂正はリードソロモン符号を利用して誤り訂正を行うものとする。2値化にはレベル検出は最も簡単な2値化の方法で、閾値より大きい時に”1”それ以外は”0”を出力して2値化する。復調は1−4符号の復調であって、実施の形態1で説明した図3で説明した方法でページデータが生成されている場合の復調で、図3の符号化テーブルにしたがって復調する。誤り訂正は、リードソロモン符号の冗長ビットを利用することで誤りを訂正する。
【0073】
再生されたデータ系列は、ホストインターフェイス1067を介してホストへ送信される。
【0074】
なお、フィルタ1063とリサンプリング手段1065は別の要素として説明したが、各空間フィルタの係数行列を畳込むことによって、1つのフィルタ係数行列を演算し、このフィルタ係数を用いた1つの空間フィルタで実現しても良い。図14にフィルタ1063とリサンプリング手段1065を同一の空間フィルタで構成した信号処理部106の構成を示す。図9とはフィルタ&リサンプリング手段141が異なっている。各空間フィルタの係数行列を畳込み1つのフィルタ係数行列を演算する方法は広く知られている。例えば、図15(a)の3x3タップの係数Aを持つ空間フィルタと、図15(b)の3x3タップの係数Bを持つ空間フィルタを一つに統合する為に、両係数の畳込みを行うと、図15(c)の5x5タップの畳込まれた係数となる。タップ数を削減する為に、5x5タップの係数を3x3タップにするには窓関数を適用する。窓関数には色々あるが、例えば、方形窓を使った場合には、図15(d)の様に、5x5タップの畳込まれた係数の内、中心の3x3タップの係数が新たな係数となる。この様に2つのフィルタを一つに統合し、窓関数を適用することで、回路規模が削減できる。
【0075】
以上の様に、フィルタ1063で高調波成分をカットし、また、2値化が容易になるような等化を行うことで、SNRが良好で2値化が容易なデジタルイメージを得ることができ、精度の良いデータ再生ができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明にかかるデータ記録再生装置は、光電変換時の高調波の影響を低減した技術を有し、ストレージ機器等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1におけるデータ記録再生装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1におけるデータ記録再生装置の概念図
【図3】本発明の実施の形態1における1−4符号化及びページデータを説明する図
【図4】本発明の実施の形態1におけるデータ記録再生装置の光学要素の項目を示す概念図
【図5】本発明の実施の形態1における空間光変調器とイメージセンサーの概念図
【図6】本発明の実施の形態1におけるアパーチャーの概念図
【図7】本発明の実施の形態1における空間光変調器からの回折光を示す図
【図8】本発明の実施の形態1における空間周波数特性の変化を示す概念図
【図9】本発明の実施の形態2における信号処理部の構成図
【図10】本発明の実施の形態2におけるページデータとデジタルイメージの図
【図11】本発明の実施の形態2におけるデジタルイメージの画素の座標を示す概念図
【図12】本発明の実施の形態2における空間フィルタの構成図
【図13】本発明の実施の形態2における空間周波数特性の変化を示す概念図
【図14】本発明の実施の形態2における信号処理部の構成図
【図15】本発明の実施の形態2におけるフィルタ係数の畳み込みを示す図
【図16】従来の位置合わせのフローチャート
【図17】従来の位置合わせのフローチャート
【符号の説明】
【0078】
101 光源部
1011 レーザー光源
1012 偏光ビームスプリッター
1013a ミラー
1013b ミラー
1014 コリメーター
102 空間光変調器
103 干渉光学部
1031 第1のレンズ(フーリエ変換レンズ)
1032 第2のレンズ(逆フーリエ変換レンズ)
1033 アパーチャー
104 媒体
105 イメージセンサー
106 信号処理部
1061 メモリインターフェイス
1062 メモリ
1063 フィルタ
1064 座標検出手段
1065 リサンプリング手段
1066 復号部
1067 ホストインターフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレントな光を空間変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器で空間変調された光を、媒体へ記録及び媒体から読み出す干渉光学部と、
前記干渉光学部によって読み出された光を光電変換するためのイメージセンサーと、
前記イメージセンサーでの光電変換によって得られたデジタルイメージを信号処理するための信号処理部とを備え、
前記干渉光学部は、前記空間光変調器で空間変調された光をフーリエ変換するための第1のレンズと、
前記第1のレンズでフーリエ変換された光の一部を透過するアパーチャーと、
前記アパーチャーを透過した光を逆フーリエ変換するための第2のレンズとを備え、
前記アパーチャーの光を透過する空間のサイズは、前記コヒーレントな光の波長と、前記空間光変調器のピクセルピッチと、前記第1のレンズの焦点距離とによって決定される前記空間光変調器のナイキスト周波数に対応する空間のサイズ以上であり、且つ前記コヒーレントな光の波長と、前記第2のレンズの焦点距離と、前記イメージセンサーのピクセルピッチとによって決定される、前記イメージセンサーのナイキスト周波数に対応する空間のサイズより小さい
ことを特徴とするデータ記録再生装置。
【請求項2】
前記コヒーレントな光の波長をλ、前記空間光変調器のピクセルピッチをΔd1、前記第1のレンズの焦点距離をf1、前記イメージセンサーのピクセルピッチをΔd2、前記第2のレンズの焦点距離をf2とした時、 前記アパーチャーの光を透過する空間のサイズDは式
【数1】

を満たすことを特徴とするデータ記録再生装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記デジタルイメージを空間フィルタリングするフィルタと、
前記フィルタによってフィルタリングされたデジタルイメージの適切なサンプリングを行うための座標を演算する座標演算手段と、
前記座標演算手段で演算された座標に前記デジタルイメージをリサンプリングするリサンプリング手段を備え、
リサンプリングより前に、空間フィルタリングすることを特徴とする請求項1に記載のデータ記録再生装置。
【請求項4】
前記フィルタと前記リサンプリング手段を同一の空間フィルタで構成することを特徴とする請求項3に記載のデータ記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−15987(P2009−15987A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177926(P2007−177926)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】