説明

データ転送装置

【課題】アドレス参照でデータ転送するプロトコルにおいて、パケットの形式を変えず、かつ、通信負荷を増すこと無く、受信確認が行えるデータ転送装置を得る。
【解決手段】メモリまたはレジスタのアドレスとして複数のアドレス空間のアドレスを設定する。マスタ10は、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えた場合は、次のアクセス要求で異なるアドレス空間のアドレスを使用し、正常なデータアクセスが行えなかった場合は、前回と同じアドレス空間のアドレスを使用する。スレーブ20の受信確認手段22は、アクセス要求が前回アクセス要求時のアドレス空間のアドレスと同じ場合は正常終了していないと判定し、異なる場合は正常終了したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アドレス参照でデータ転送を行い、かつ、誤り検出機能を持つ既存のプロトコルに則ってデータ転送を行うデータ転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誤り検出機能があるデータ通信では、転送パケットの誤りを検出した際、再送することで、パケットの到達性を実現する。
これに対し、例えば特許文献1に示されたデータ通信方法では、専用の信号線を設けること無く、送信側において、受信側が受信できたかどうかを確認できる手段を提供している。この文献に示されたデータ通信方法では、パケットのヘッダに再送表示フラグという情報を付加し、これを操作することで、送信側で受信側が受信できたかどうかを確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−190770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のデータ通信方法では、パケットのヘッダに情報を埋め込む必要があった。このため、埋め込みに対する拡張性を持つプロトコルでしか利用できないという問題があった。例えば、アドレス参照で読み書きを行うプロトコルでは、ヘッダとボディの両方の形式が規定されおり、情報を埋め込むことができず、このようなプロトコルを用いるデータ転送では適用することができない。
【0005】
他の方法として、送信側にアドレス参照可能なフラグを用意し、受信側が受信できた際に受信側がこのフラグに書き込むことで、受信確認とする方法も考えられる。しかし、この方法では、別途データ転送を行う必要があり、通信負荷が増加するという問題点を有していた。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、アドレス参照でデータ転送するプロトコルにおいて、パケットの形式を変えず、かつ、通信負荷を増すこと無く、受信確認が行えるデータ転送装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るデータ転送装置は、一方の装置から他方の装置のメモリまたはレジスタに対してデータアクセス要求を行う場合、メモリまたはレジスタをアドレスによって指定し、他方の装置は、指定されたアドレスに基づいてメモリまたはレジスタへのデータアクセスを行うデータ転送装置において、メモリまたはレジスタのアドレスとして複数のアドレス空間のアドレスを設定し、一方の装置は、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えた場合は、次のアクセス要求で異なるアドレス空間のアドレスを使用し、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えなかった場合は、次のアクセス要求で前回と同じアドレス空間のアドレスを使用するアクセス要求手段を備え、他方の装置は、一方の装置からアクセス要求を受けた場合、アクセス要求が前回のアクセス要求時のアドレス空間のアドレスであるか否かを判定し、異なるアドレス空間のアドレスであった場合は前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了したと判定し、前回のアクセス要求時と同じアドレス空間のアドレスであった場合は、前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了していないと判定する受信確認手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明のデータ転送装置は、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えた場合は、次のアクセス要求で異なるアドレス空間のアドレスを使用し、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えなかった場合は、次のアクセス要求で前回と同じアドレス空間のアドレスを使用するようにしたので、アドレス参照でデータ転送するプロトコルにおいても、パケットの形式を変えることなく、かつ、通信負荷を増すこと無く、受信確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1によるデータ転送装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるデータ転送装置のデータ転送用アドレス空間を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるデータ転送装置の通信例を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態2によるデータ転送装置を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態3によるデータ転送装置のデータ転送用アドレス空間を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるデータ転送装置を示す構成図である。
図1に示すデータ転送装置は、マスタ(一方の装置)10とスレーブ(他方の装置)20が信号線30を介して接続されることで構成されている。このデータ転送装置は、マスタ10からスレーブ20のメモリまたはレジスタに対してデータアクセス要求を行う場合、そのメモリまたはレジスタをアドレスによって指定し、スレーブ20は、指定されたアドレスに基づいてメモリまたはレジスタへのデータアクセスを行うよう構成されている。
【0011】
また、実施の形態1のデータ転送装置では、スレーブ20側でデータ転送の対象となるレジスタやメモリに転送用のアドレスを割り振る。これを「本来のアドレス」、または、「第1アドレス」と呼ぶ。その上で、転送用のアドレスとして、同じレジスタやメモリを指定できる別のアドレスを割り振る。これを「ミラーアドレス」、または、「第2アドレス」と呼ぶ。図2は、これらのアドレス空間を示す説明図である。
【0012】
図1に戻り、マスタ10は、データ転送でデータを参照/更新する装置であり、制御モジュール11と送受信モジュール12とを備えている。制御モジュール11は、マスタ10におけるデータ通信の制御を行うモジュールであり、アクセス要求手段13を備えている。このアクセス要求手段13は、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えた場合は、次のアクセス要求で異なるアドレス空間のアドレスを使用し、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えなかった場合は、次のアクセス要求で前回と同じアドレス空間のアドレスを使用する手段である。送受信モジュール12は、制御モジュール11からのアクセス要求を元にパケットを生成してスレーブ20に送信すると共に、スレーブ20からのパケットを受け取ってその誤り検出を行い、誤りを検出した場合はこれを破棄し、誤りが無ければ、パケットを分解し、読み出し結果を制御モジュール11に渡す機能を有している。
【0013】
スレーブ20は、データ転送でそのデータを保有する装置であり、送受信モジュール21と受信確認手段22を備えている。送受信モジュール21は、マスタ10からのパケットを受け取ってその誤り検出を行い、誤りを検出した場合はこれを破棄し、誤りが無ければパケットに示すアクセス要求に従ってメモリまたはレジスタにアクセスを行い、その結果に基づいてパケットを生成してマスタ10宛に送信する機能を有している。受信確認手段22は、スレーブ20が返信したパケットの受信状況を判定する手段である。即ち、受信確認手段22は、マスタ10からアクセス要求を受けた場合、そのアクセス要求が前回のアクセス要求時のアドレス空間のアドレスであるか否かを判定し、異なるアドレス空間のアドレスであった場合は前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了したと判定し、前回のアクセス要求時と同じアドレス空間のアドレスであった場合は、前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了していないと判定するよう構成されている。
【0014】
次に、このように構成された実施の形態1のデータ転送装置の動作について説明する。
先ず、データ転送装置における基本動作として、マスタ10がスレーブ20のレジスタを参照する例について説明する。
●制御モジュール11のアクセス要求手段13は、対象レジスタを第1アドレスで指定し、送受信モジュール12に読み出しを要求する。
●送受信モジュール12は、読み出し要求を元にパケットを生成し、信号線30を介してスレーブ20へ送る。
●スレーブ20の送受信モジュール21は、マスタ10からのパケットを受け取り、誤り検出を行い、誤りを検出した場合はこれを破棄する。誤りが無ければ、パケットに示す読み出し要求に従ってレジスタの値を読み出す。
●受信確認手段22は、パケットで指定されたアドレスを記憶する。
●送受信モジュール21は、読み出したレジスタの値を元にパケットを生成し、信号線30を介してマスタ10へ送る。
【0015】
●送受信モジュール12は、パケットを受け取り、誤り検出を行い、誤りを見つけた場合は、これを破棄する。誤りが無ければ、パケットを分解し、読み出し結果を制御モジュール11に渡す。
尚、マスタ10の送受信モジュール12は、パケット送信後、一定時間以上スレーブ20からの返信が無いと、送信したパケットを再送する。
【0016】
以上の基本動作により、信号線の増加や、転送時のパケットの形式変更を行うこと無く、スレーブ20側において、マスタ10側で受信に成功したかどうかを知ることができる。
なお、ここではレジスタの読み出しを例としたが、レジスタへの書き込みも同様である。また、メモリへのデータアクセスであっても同様である。
【0017】
次に、図3に示すように、同じレジスタを2回読み出す例を用いて、データ転送における誤り検出と再送の動作について説明する。
先ず、ケースAは、転送時に誤りが生じないケースである。この場合、マスタ10側がパケットを受信したのを確認するまでの流れは、次のようになる。
●マスタ10が「第1アドレスを使用した読出要求#1」を送信する。
●スレーブ20が「第1アドレスを使用した読出要求#1」を受信する。
●スレーブ20が「読出結果#1」を返信する。
●マスタ10が「読出結果#1」を受信する。
●マスタ10が「第2アドレスを使用した読出要求#2」を送信する。
●スレーブ20が「読出結果#1」をマスタ10が受信できたことを確認する。即ち、受信確認手段22は、指定されているアドレスが第1と第2で異なるので、受信できたと判断する。
【0018】
次に、ケースBは、マスタ10が送信する際に1度誤りが生じたケースである。この場合の流れは、次のようになる。
●マスタ10が「第1アドレスを使用した読出要求#1」を送信する。
●スレーブ20が「第1アドレスを使用した読出要求#1」を受信するが、送受信モジュール21は誤りを検出したので破棄する。
●マスタ10がスレーブ20からの返信が無いので「第1アドレスを使用した読出要求#1」を再送する。
●スレーブ20が「第1アドレスを使用した読出要求#1」を受信する。
●スレーブ20が「読出結果#1」を返信する。
●マスタ10が「読出結果#1」を受信する。
●マスタ10が「第2アドレスを使用した読出要求#2」を送信する。
●スレーブ20が「読出結果#1」をマスタ10が受信できたことを確認する。即ち、受信確認手段22は指定されているアドレスが第1と第2で異なるので、受信できたと判断する。
【0019】
最後に、ケースCは、スレーブが返信する際に1度誤りが生じたケースである。この場合の流れは、次のようになる。
●マスタ10が「第1アドレスを使用した読出要求#1」を送信する。
●スレーブ20が「第1アドレスを使用した読出要求#1」を受信する。
●スレーブ20が「読出結果#1」を返信する。
●マスタ10が「読出結果#1」を受信するが、誤りを検出したので破棄する。
●マスタ10がスレーブ20からの返信が無い(受信したパケットを破棄した)ので、「第1アドレスを使用した読出要求#1」を再送する。
●スレーブ20が「第1アドレスを使用した読出要求#1」を受信する。
●スレーブ20が「読出結果#1」をマスタ1が“受信できなかったこと”を確認する。即ち、受信確認手段22は指定されているアドレスが共に第1アドレスで同じなので、受信できなかったと判断する。
【0020】
●スレーブ20が「読出結果#1’」を返信する。ここで、読出結果#1’とは1回目の読出要求#1から時間が経過し、2回目の読出要求#1を受けた時点でのレジスタの値である。例えばマスタ10が読み出すのが、発生したエラーを保持するレジスタであるとした場合、「読出結果#1」は1回目の読出要求時の値で、「読出結果#1’」は2回目の読出要求時の値である。この2回の読出要求の間に新たなエラーが発生していれば、この「読出結果#1」と「読出結果#1’」は、発生したエラーの分、異なる値となる。新たなエラーが発生していなければ両者は同じ値となる。
●マスタ10が「読出結果#1’」を受信する。
●マスタ10が「第2アドレスを使用した読出要求#2」を送信する。
●スレーブ20が「読出結果#1’」をマスタ10が“受信できたことを”確認する。即ち、受信確認手段22は指定されているアドレスが第1と第2で異なるので、受信できたと判断する。
【0021】
このように、スレーブ20の受信確認手段22は、1回目のアドレスと2回目のアドレスを比較することで、マスタ10が1回目の受信に成功したかどうかを確認することができる。
【0022】
以上説明したように、実施の形態1のデータ転送装置によれば、一方の装置から他方の装置のメモリまたはレジスタに対してデータアクセス要求を行う場合、メモリまたはレジスタをアドレスによって指定し、他方の装置は、指定されたアドレスに基づいてメモリまたはレジスタへのデータアクセスを行うデータ転送装置において、メモリまたはレジスタのアドレスとして複数のアドレス空間のアドレスを設定し、一方の装置は、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えた場合は、次のアクセス要求で異なるアドレス空間のアドレスを使用し、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えなかった場合は、次のアクセス要求で前回と同じアドレス空間のアドレスを使用するアクセス要求手段を備え、他方の装置は、一方の装置からアクセス要求を受けた場合、アクセス要求が前回のアクセス要求時のアドレス空間のアドレスであるか否かを判定し、異なるアドレス空間のアドレスであった場合は前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了したと判定し、前回のアクセス要求時と同じアドレス空間のアドレスであった場合は、前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了していないと判定する受信確認手段を備えたので、アドレス参照でデータ転送するプロトコルにおいても、パケットの形式を変えることなく、かつ、通信負荷を増すこと無く、受信確認を行うことができる。
【0023】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2のデータ転送装置を示す構成図である。
実施の形態2におけるデータ転送装置は、マスタ10、スレーブ20a及び信号線30からなり、マスタ10及び信号線30の構成は実施の形態1と同様であるため、マスタ10側の内部構成については省略している。
【0024】
スレーブ20aは、送受信モジュール21、受信確認手段22、状態レジスタ23を備えている。送受信モジュール21及び受信確認手段22は、実施の形態1と同様の構成である。状態レジスタ23は、データ転送でマスタ10が参照するレジスタであり、レジスタ本体24とレジスタバックアップ25を備えている。レジスタ本体24は、エラー要因など、各種一過性の信号をラッチし、その要因の発生の有無を保持するレジスタである。レジスタバックアップ25は、状態レジスタ23としてのバックアップを行うためのレジスタである。
【0025】
次に、実施の形態2のデータ転送装置の動作について説明する。
先ず、基本的な動作としてマスタ10がスレーブ20aの状態レジスタ23を参照する例を説明する。
●マスタ10は、状態レジスタ23を第1アドレスで指定し、読み出し要求を送出する。
●送受信モジュール21は、パケットを受け取り、誤り検出を行い、誤りを見つけた場合は、これを破棄する。誤りが無ければ、パケットが示す読み出し要求に従って、状態レジスタ23の値を読み出す。
●状態レジスタ23は、読み出し要求があった際、以下のように動作する。
・レジスタ本体24とレジスタバックアップ25の論理和をレジスタバックアップ25に代入する。
・レジスタ本体24を0クリアする。
・このレジスタバックアップ25の値を状態レジスタ23の値として送受信モジュール21に返す。
【0026】
●送受信モジュール21は、受け取った値を元に、パケットを生成し、マスタ10へ読み出し結果を返す。
●マスタ10は、読み出し結果を受け取る。
●マスタ10は、別の読み出し要求(または書き込み要求)を出す。この時、対象を指定するアドレスとして、第2アドレスを指定する。
●送受信モジュール21は、パケットを受け取り、誤り検出を行い、誤りを見つけた場合は、これを破棄する。誤りが無ければ、パケットが示す要求に従う。
●受信確認手段22は、前回記憶したアドレスと、今回指定されたアドレスを比較する。
比較の結果、アドレスの第1・第2が切り替わっていれば、前回マスタ10へ送信したパケットがマスタ10側で受信できたと判断する。逆に、切り替わってなければ、前回マスタ10へ送信したパケットは、受信されなかったと判断する。前回記憶したアドレスで、状態レジスタ23が指定されており、かつ、受信できたと判断した場合は、受信確認信号を状態レジスタ23に送る。
●状態レジスタ23は、受信確認手段22から受信確認信号を受け取った際、レジスタバックアップ25の値を0クリアする。なお、マスタ10が今回も状態レジスタ23の読み出しを指定している場合、このレジスタクリアが最初に行われるものとする。前述の論理和によるレジスタ更新は、この後に行われるものとする。
【0027】
図3のケースCを例に、実施の形態2のデータ転送装置の動作について更に説明する。
●マスタ10が、状態レジスタ23への読出要求#1を送信する。
●スレーブ20aが、状態レジスタ23の読出要求#1を受信する。
●スレーブ20aが、状態レジスタ23の読出結果#1を送信する。
この時、状態レジスタ23においては、レジスタ本体24の値は0クリアされる。また、レジスタバックアップ25には、読出結果#1と同じ値が保持されている。
●マスタ10が、読出結果#1の受信に失敗する(誤りを検出する)。
●マスタ10が、再度、状態レジスタ23への読出要求#1を送信する。
●スレーブ20aが、状態レジスタ23の読出要求#1を受信する。
この時、受信確認手段22は、マスタ10側が受信に失敗していることを検出する。このため、受信に成功したことを示す信号は送られず、状態レジスタ23では、レジスタバックアップ25の0クリアは行われない。
●スレーブ20aが、状態レジスタ23の読出結果#1’を送信する。
この時、レジスタ本体24の値は、また0クリアされる。また、レジスタバックアップ25には、読出結果#1’と同じ値が保持されている。この読出結果#1’は、読出結果#1に、読出結果#1を送信した後、新たにレジスタ本体24へセットされた値を加えたものになっている。もし、レジスタ本体24の値をそのまま返すと、読出要求#1で読み出されるはずだった値が取りこぼしとなる。
【0028】
●マスタ10が、状態レジスタ23の読出結果#1’を受信する。
●マスタ10が、状態レジスタ23への読出要求#2を送信する。
●スレーブ20aが、状態レジスタ23の読出要求#2を受信する。
この時、受信確認手段22は、マスタ10側が受信に成功したことを検出し、状態レジスタ23に信号を送る。これにより、レジスタバックアップ25は、0クリアされる。
●スレーブ20aが、状態レジスタ23の読出結果#2を送信する。
この時、レジスタ本体24の値は0クリアされる。また、レジスタバックアップ25には、読出結果#2と同じ値が保持されている。この読出結果#2は、読出結果#1’を送信した後、新たにレジスタ本体24へセットされた値が入る。
●マスタ10が、読出結果#2を受信する。
【0029】
以上の動作により、状態レジスタ23の値は、マスタ10側が読み出す毎にクリアされる。また、その際、値を取りこぼすことも、重複して読むことも無い。また、マスタ10は、読み出し要求に対する返信が届かない場合、読み出し要求を必ずしも再送する必要は無い。その時の読み出しを諦め、他のアクセスを行い、状態レジスタ23の参照を次の読み出しタイミングに先送りすることもできる。即ち、マスタ10はスレーブ20aに保持されているエラーの定期的な読み出しといったアクセスを行うため、次の読み出しタイミングであっても、最初に読み出し要求を行った時点の値を必ず取得することができる。
【0030】
実施の形態2のデータ転送装置では、読み出したレジスタの値を自動でクリアすることができるため、明示的にレジスタをクリアする書き込みをマスタ10側から行う必要が無い。これにより、マスタ−スレーブ間でのデータ転送回数を減らすことができる。
【0031】
以上説明したように、実施の形態2のデータ転送装置によれば、他方の装置は、レジスタとして、前回のデータアクセス時のデータと、それ以降の新たなデータとを保持するレジスタバックアップを有し、受信確認手段が正常終了であると判定した場合はレジスタバックアップのデータをクリアし、正常終了していないと判定した場合はレジスタバックアップのデータを一方の装置への応答データとする状態レジスタを備えたので、アクセス要求を行った時点の値を確実に得ることができる共に、装置間でのデータ転送回数を減らすことができる。
【0032】
実施の形態3.
実施の形態1、2では、データ転送用のアドレスとして、全てのレジスタやメモリにミラー領域を設けていたが、アドレスのミラー領域を用意する対象をレジスタのみとする等、一部に限定することもでき、実施の形態3はこのような例である。
図5は、レジスタに対してのみミラー領域を設けた例である。
実施の形態3において、データ転送装置としての図面上の構成は実施の形態1または実施の形態2に示すものと同様であるため、各部の構成の説明は省略する。
図5におけるレジスタの領域(第1アドレス)とレジスタのミラー領域(第2アドレス)は、実施の形態2における状態レジスタ23(参照後、自動でクリアするレジスタ)に対して割り当てるか、あるいは、状態レジスタ23を含む一部のアドレスにのみ割り当ててもよい。
【0033】
例えば、レジスタが50個あり、そのうちの4個だけ状態レジスタ23であるとする。ここで、アドレスの0〜49番地をこの50個のレジスタに割り当てるだけなら、ミラー領域がない、通常の割り当てと同様である。これに対し、50〜53番地を状態レジスタ23にアクセスできるミラー領域として設定するというのが、第1の方法である。また、第2の方法として、状態レジスタ23を48〜51番地に割り当て、その上で、48〜55番地のミラー領域として56〜63番地を割り当てることもできる。この場合、48〜55番地は、状態レジスタ23を一部に含むアドレスであり、56〜63番地は、このミラー領域になる。この割り当てでは、アドレスの割り当てを変えずに、状態レジスタ23を4つ追加することができる。
このように、一部だけミラー領域がある方式では、64個の番地があればよく、アドレスは、6bitで足りるが、全部にミラー領域を用意した場合は、100個の番地を使うことになり、アドレスは、7bit必要になる。
【0034】
以上説明したように、実施の形態3のデータ転送装置によれば、一方の装置から他方の装置のメモリまたはレジスタに対してデータアクセス要求を行う場合、メモリまたはレジスタをアドレスによって指定し、他方の装置は、指定されたアドレスに基づいてメモリまたはレジスタへのデータアクセスを行うデータ転送装置において、レジスタのアドレスとして複数のアドレス空間のアドレスを設定し、一方の装置は、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えた場合は、次のアクセス要求で異なるアドレス空間のアドレスを使用し、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えなかった場合は、次のアクセス要求に前回と同様のアドレス空間のアドレスを使用するアクセス要求手段を備え、他方の装置は、一方の装置からアクセス要求を受けた場合、アクセス要求が前回のアクセス要求時のアドレス空間のアドレスであるか否かを判定し、異なるアドレス空間のアドレスであった場合は前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了したと判定し、前回のアクセス要求時と同じアドレス空間のアドレスであった場合は、前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了していないと判定する受信確認手段と、前回のデータアクセス時のデータと、それ以降の新たなデータとを保持するレジスタバックアップを有し、受信確認手段が正常終了であると判定した場合はレジスタバックアップのデータをクリアし、正常終了していないと判定した場合はレジスタバックアップのデータを一方の装置への応答データとする状態レジスタをレジスタとして備えたので、必要とするアドレス空間を大幅に削減することができる。
【0035】
尚、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 マスタ、11 制御モジュール、12,21 送受信モジュール、13 アクセス要求手段、20,20a スレーブ、22 受信確認手段、23 状態レジスタ、24 レジスタ本体、25 レジスタバックアップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の装置から他方の装置のメモリまたはレジスタに対してデータアクセス要求を行う場合、前記メモリまたはレジスタをアドレスによって指定し、前記他方の装置は、指定されたアドレスに基づいて前記メモリまたはレジスタへのデータアクセスを行うデータ転送装置において、
前記メモリまたはレジスタのアドレスとして複数のアドレス空間のアドレスを設定し、
前記一方の装置は、
前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えた場合は、次のアクセス要求で異なるアドレス空間のアドレスを使用し、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えなかった場合は、次のアクセス要求で前回と同じアドレス空間のアドレスを使用するアクセス要求手段を備え、
前記他方の装置は、
前記一方の装置からアクセス要求を受けた場合、当該アクセス要求が前回のアクセス要求時のアドレス空間のアドレスであるか否かを判定し、異なるアドレス空間のアドレスであった場合は前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了したと判定し、前回のアクセス要求時と同じアドレス空間のアドレスであった場合は、前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了していないと判定する受信確認手段を備えたことを特徴とするデータ転送装置。
【請求項2】
他方の装置は、レジスタとして、
前回のデータアクセス時のデータと、それ以降の新たなデータとを保持するレジスタバックアップを有し、受信確認手段が正常終了であると判定した場合は前記レジスタバックアップのデータをクリアし、正常終了していないと判定した場合は前記レジスタバックアップのデータを一方の装置への応答データとする状態レジスタを備えたことを特徴とする請求項1記載のデータ転送装置。
【請求項3】
一方の装置から他方の装置のメモリまたはレジスタに対してデータアクセス要求を行う場合、前記メモリまたはレジスタをアドレスによって指定し、前記他方の装置は、指定されたアドレスに基づいて前記メモリまたはレジスタへのデータアクセスを行うデータ転送装置において、
前記レジスタのアドレスとして複数のアドレス空間のアドレスを設定し、
前記一方の装置は、
前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えた場合は、次のアクセス要求で異なるアドレス空間のアドレスを使用し、前回のアクセス要求に対して正常なデータアクセスが行えなかった場合は、次のアクセス要求に前回と同様のアドレス空間のアドレスを使用するアクセス要求手段を備え、
前記他方の装置は、
前記一方の装置からアクセス要求を受けた場合、当該アクセス要求が前回のアクセス要求時のアドレス空間のアドレスであるか否かを判定し、異なるアドレス空間のアドレスであった場合は前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了したと判定し、前回のアクセス要求時と同じアドレス空間のアドレスであった場合は、前回のアクセス要求に対してデータアクセスが正常終了していないと判定する受信確認手段と、
前回のデータアクセス時のデータと、それ以降の新たなデータとを保持するレジスタバックアップを有し、前記受信確認手段が正常終了であると判定した場合は前記レジスタバックアップのデータをクリアし、正常終了していないと判定した場合は前記レジスタバックアップのデータを一方の装置への応答データとする状態レジスタを前記レジスタとして備えたことを特徴とするデータ転送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−182718(P2012−182718A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45035(P2011−45035)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】