説明

データ送受信方法,データ送信装置,及びデータ受信装置

【課題】 本発明は,データの集約化に伴うオーバーヘッドを低減することができるデータ送受信方法などを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のデータ送受信方法では,無線を用いて,複数の個別データを集約化した集約化データが送受信される。データ送信装置は,集約化データをデータ受信装置に送信する際に,個別のデータの区切りに関する区切り情報と,複数の個別データのうち最初に送信される個別データに関する冒頭データ情報とを,集約化データとともに無線信号として送信する。データ受信装置は,冒頭データ情報と,区切り情報とに基づいて,複数の個別データを読み出す順序を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,データ送受信方法,データ送信装置,及びデータ受信装置に関し,無線を用いて,集約化されたデータを送受信するデータ送受信方法,並びに,集約化したデータを送信するデータ送信装置,及び集約化されたデータを受信するデータ受信装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは,無線送信機側でデータの集約化(aggregation)を行って,無線受信機へと送信することが行われている(たとえば,非特許文献1参照。)。データを集約化することで,無線通信のスループットが高まり,高速化を実現することができる。
【0003】
ところで,集約化したデータを構成する個々のデータを互いに関連付けるためには,さまざまな制御情報が必要となる。この制御情報は,無線受信機側において,集約化されたデータを再現するための処理に必要となるものであり,この制御情報がない場合,無線受信機は,受信したデータを再現することができなくなる。
【0004】
通常,集約化スキームの大部分に関しては,多重化されたMSDU(MACサービスデータユニット)やMPDU(MACプロトコルデータユニット)がまとめられ,一群のヘッダーセットとともに無線信号として送信される。ここで,MPDUは,MSDUと,それに関連するヘッダーとで構成されている。
【0005】
そこで,無線信号には,MSDU番号を示すフィールドが定められている。ここで,MSDU番号とは,MSDUやMPDUをそれぞれ特定するための番号である。そして,そのフィールドに含まれる情報が上記制御情報となる。
【0006】
MPDUを特定するためには,MSDUで用いた識別情報と同じ識別情報を用いることが可能である。そのため,従来のMSDU特定方法では,データ集積化処理で生成されたMSDUのそれぞれに対して1つのMSDU番号を割り当てている。通常は,MSDU番号を示すために確保されたビット数は,小さくはない。ビット数が小さい場合には,MSDUの範囲が極めて限定的なものとなることとなる。
【0007】
さらに,データの集積化には,通常,フラグメンテーションを伴う。フラグメンテーションは,アプリケーションレイヤーからの膨大なデータブロックを扱うために設計されたものである。MAC(media access control)では,MACレイヤーのデータフレームの限界を超えるほどの膨大なデータブロックが送信されてきた場合に,そのデータブロックが小さなフラグメントに分割される。そのため,各フラグメントに対しても同様に識別情報が必要となる。識別情報がないと,無線受信機は,オリジナルのMSDUを再構築することができなくなる。
【0008】
ところで,集積化しようとしているデータのブロックは,通常,サブフレームと称される。サブフレームは,アプリケーションレイヤーからの直接的なMSDUの全体にもなり得るし,フラグメンテーションが利用された場合には,MSDUからのフラグメントにもなり得る。サブフレームを特定するために,2次元識別情報が利用される。2次元識別情報の一方は,MSDU番号であり,他方は,フラグメント番号である。このようにしてフラグメントに対しても識別情報を与えることができる。
【0009】
しかしながら,これらの識別情報(制御情報)は,無線送信機にとっても無線受信機にとってもオーバーヘッドとなる。
【0010】
たとえば,サブフレームを構成するMSDUが0から512までの範囲内にあるMSDU番号で特定される場合,9ビットが必要である。また,MSDUを構成するフラグメントが0から128までの範囲内にあるフラグメント番号で特定される場合,7ビットが必要である。まとめると,各サブフレームを特定するためには,16ビット(2オクテット)ものビット数が必要となる。そして,MSDUが1メガオクテットにもおよぶデータ長をもつ場合,無線信号は,20ビットのフィールドをもつ必要がある。
【0011】
もう一方のオーバーヘッドは,サブフレーム長を示すフィールドに由来するものである。たとえば,256個のサブフレームを集約化して単一のフレームにする場合,MSDUの識別情報とMSDU長の提示に必要となるオーバーヘッドは,1280オクテット(=256×(2+3))にもなってしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】IEEE,「IEEE 802.15 WPAN Task Group 3c (TG3c) Millimeter Wave Alternative PHY」,[online],平成21年3月31日,IEEE,(平成21年3月31日検索),インターネット,<URL:http://www.ieee802.org/15/pub/TG3c.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は,データの集約化に伴うオーバーヘッドを低減することができるデータ送受信方法,データ送信装置,及びデータ受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は,基本的には,データ送受信方法などに関する。本発明のデータ送受信方法では,複数の個別データを集約化したデータが,無線を用いて送受信される。
【0015】
データ送信装置は,データを送信可能な装置であり,集約化データをデータ受信装置に送信する際に,個別のデータの区切りに関する区切り情報と,複数の個別データのうち最初に送信される個別データに関する冒頭データ情報とを,集約化データとともに無線信号として送信する。データ受信装置は,データを受信可能な装置であり,冒頭データ情報と,区切り情報とに基づいて,複数の個別データを読み出す順序を決定する。
【0016】
本発明によれば,データ送信装置は,個別データに関する情報の全てを送信する必要がない。また,データ受信装置においても,個別データに関する情報の全てを扱う必要がない。そのため,オーバーヘッドを低減させることができる。このため,データ送受信(無線通信)のスループットが高まり,パフォーマンスが高い。
【0017】
また,本発明の側面では,上記無線信号が,ヘッダーと,サブフレームとを含む。ヘッダーは,データ受信装置に最初に送信されるものである。サブフレームは,ヘッダーに続いて送信されるものであり,集約化データを含んでいる。
【0018】
ここで,上記ヘッダーは,第1のヘッダーと,当該第1のヘッダーに続いて送信される第2のヘッダーとを含む。この第1のヘッダーは,上記冒頭データ情報を含み,データ受信装置によって最初に受信される。第2のヘッダーは,区切り情報を含み,データ受信装置が冒頭データ情報を受信した後に受信される。このように,データ受信装置が受信する順序に合わせて情報が送信されるので,処理負荷と処理時間を軽減することができる。
【0019】
また,本発明の他の側面では,個別データが,データユニット,又はデータユニットを分割したフラグメントであり,この場合,上記区切り情報は,フラグメントビットの末尾に割り当てられた1ビットのデータである。区切り情報が1ビットのデータで済むので,処理負荷や処理時間を軽減することができる。
【0020】
さらに,本発明のさらに他の側面では,個別データが,MSDU,又はMSDUを分割したフラグメントであり,この場合,上記冒頭データ情報は,第1番目のMSDUの番号を示す情報と,当該第1番目のMSDUを構成するフラグメントのうちの第1番目のフラグメントの番号を示す情報であり,また,上記区切り情報は,フラグメントビットの末尾に割り当てられた1ビットのデータである。これにより,第2番目以降のMSDUやフラグメントは,冒頭データ情報を基準にして1ビットのデータで順次特定することができる。
【0021】
また,本発明のまた他の側面では,上記区切り情報が,個別データのオフセット値を示す情報を含んでいる。これにより,データ受信装置は,個別データを読み出す順序を容易に特定することができる。
【0022】
また,本発明の別の側面は,データ受信装置に関する。このデータ受信装置は,無線を用いて,複数の個別データを集約化した集約化データをデータ送信装置から受信するデータ受信装置であって,データ送信装置から,集約化データをデータ受信装置に送信する際に,個別のデータの区切りに関する区切り情報と,複数の個別データのうち最初に送信される個別データに関する冒頭データ情報とを,集約化データとともに受信し,冒頭データ情報と,区切り情報とに基づいて,複数の個別データを読み出す順序を決定する。このデータ受信装置によれば,上述したデータ送受信方法と同等の方法で無線信号を受信して,読み出す順序を決定するので,オーバーヘッドの低減に寄与することとなる。
【0023】
さらに,本発明のさらに別の側面は,データ送信装置に関する。このデータ送信装置は,無線を用いて,複数の個別データを集約化した集約化データを送信するデータ送信装置であって,集約化データをデータ受信装置に送信する際に,個別のデータの区切りに関する区切り情報と,複数の個別データのうち最初に送信される個別データに関する冒頭データ情報とを,集約化データとともに無線信号として送信する。このデータ送信装置によれば,上述したデータ送受信方法と同等の方法で無線信号を送信するので,オーバーヘッドの低減に寄与することとなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば,データの集約化に伴うオーバーヘッドを低減することができる。その結果,データ送受信のスループットが高まり,パフォーマンスを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のデータ送受信方法の流れを示すフローチャートである。
【図2】図2は,本発明のデータ送受信方法で送受信されるデータに適用されるフレームフォーマットを示す模式図である。
【図3】図3は,図1の図1のステップS10で送信対象となる集積化データを無線送信機が作成するときに行う集積化処理を説明するための図である。
【図4】図4は,図1のステップS20における受信データのデコード処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下,図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。しかしながら,以下説明する形態はある例であって,当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
【0027】
図1は,本発明のデータ送受信方法の流れを示すフローチャートである。図1の処理は,無線通信システムを構成する無線送信機と無線受信機との間でデータの送受信(無線通信)を行う際に行われる。
【0028】
図1において,まず,ステップS10において,データ送信装置としての無線送信機は,無線を用いて,集積化データを無線受信機へと送信する。無線送信機は,集積化データを生成するにあたり,送信対象のデータの集積化を後述するように行う。
【0029】
続いて,ステップS20では,データ受信装置としての無線受信機は,無線送信機からの集積化データを受信して,そのデータのデコード(de−aggregation)を行う。集積化データのデコード方法については後述する。以上のようにして,データの送受信が行われる。
【0030】
まず,本発明のデータ送受信方法で送受信されるデータに適用されるフレームフォーマットについて説明する。図2は,本発明のデータ送受信方法で送受信されるデータに適用されるフレームフォーマットを示す模式図である。このフレームフォーマットを用いることにより,データ集積化に伴うオーバーヘッドを低減させることができる。
【0031】
図2に示されるように,フレームフォーマットで定められるフィールドには,プリアンブル(preamble:前提部)と,PHYヘッダー(PHY header)と,MACヘッダー(MAC header)と,MACヘッダー用のヘッダーチェックシーケンス(HCS)と,MACサブヘッダー(MAC subheader)と,MACサブヘッダー用のHCSと,複数のサブフレーム(subframe)とがある。
【0032】
プリアンブルは,物理層(PHY:physical layer)において実行されるものであり,時間の同期化と,チャネルの推定とを可能にするためにデータに添付される。プリアンブルは,PHYに合わせて設計される。PHYは,ネットワークの物理的な接続や伝送方式を定めたものである。
【0033】
PHYヘッダーは,物理層での処理に必要な情報を書き込むためのものである。PHYレイヤー処理に必要な情報としては,変調及び符号化スキーム(MCSs:modulation and coding schemes)がある。PHYヘッダーも,PHYに合わせて設計される。
【0034】
MACヘッダーは,MAC処理に必要な情報(ソースのアドレス及び宛先のアドレスや,QoS情報など)を書き込むためのものである。なお,MACヘッダーにおいてこれらの情報が書き込まれるフィールドは,Other Control Imformation fieldと称されることもある。
【0035】
また,本態様では,MACヘッダーに対して,上記フィールドとは別に,2つのフィールドが設計される。1つのフィールドは,参照MSDU番号フィールドであり,もう1つのフィールドは,参照フラグメント番号である。参照MSDU番号フィールドには,第1サブフレームのMSDU番号が書き込まれる。参照フラグメント番号フィールドには,第1サブフレームのフラグメント番号が書き込まれる。これらのフィールドは,データの集積化に際し,オーバーヘッドの軽減を実現するために設計されたものである。このようにして,MACヘッダーには,第1番目のMSDU(個別データ)及び第1番目のフラグメント(個別データ)に関する情報(冒頭データ情報)が含まれていることとなる。
【0036】
MACサブヘッダーは,複数のサブヘッダーから構成されるように,また,各サブヘッダーがサブフレームと対応付けられるように設計されたものである。
【0037】
ここで,各サブヘッダーは,図2に示すように,MCS情報フィールド(MCS information)と,FCS情報(FCS information)フィールドと,リトライ(Retry)フィールドと,解像度提示(Resolution indication)フィールドと,サブフレーム長(Subframe length)フィールドと,MSDUオフセット(MSDU offset)フィールドと,最終フラグメント(Last fragment)フィールドと,予備(Reserved)フィールドとを含んでいる。最終フラグメントフィールドには,フラグメントビットの末尾に後述する1ビットの情報(区切り情報)が書き込まれる。
【0038】
各サブフレームは,図2に示すように,サブフレームのペイロードと,FCSフィールドとから構成される。
【0039】
次に,図1のステップS10で送信対象となる集積化データを無線送信機が作成するときに行う集積化処理について,図3を用いて説明する。図3は,図1の図1のステップS10で送信対象となる集積化データを無線送信機が作成するときに行う集積化処理を説明するための図である。
【0040】
図3に示すように,無線送信機は,アプリケーションレイヤーからの複数のMSDUを集積化する。図3に示す例では,4つのMSDUを集積化しようとする。これらのMSDUは,サブフレームのペイロードにマッピングされる。フラグメントを利用する場合,サブフレームのペイロードは,MSDU全体ではなく,MSDUのフラグメントを含むことが好ましい。図3に示す例では,MSDU番号♯2のMSDUと♯3のMSDUについてフラグメントが利用されている。
【0041】
続いて,無線送信機は,各サブフレームについて,サブヘッダーを生成する。生成された全てのサブヘッダーは,互いに結合され,MACサブヘッダーを形成する。したがって,MACサブヘッダーには,MSDUオフセットなどの情報が含まれていることになる。そして,このように形成されたMACサブヘッダーは,保護用の分離HCS(sparated HCS)に添付される。
【0042】
ここで,MACサブヘッダーに例えば8つのサブヘッダーを設定可能な場合において,4つのサブヘッダーしか用いないときは,無線送信機は,残りの4つのサブフレームのサブフレーム長フィールドに0をセットする。これにより,無線送信機は,対応するサブフレームが現在のフレーム(送信データ)に存在しないことを,無線受信機に示すことが可能となる。
【0043】
また,無線送信機は,PHYヘッダーとMACヘッダーも生成する。このとき,MACサブヘッダーには,第1サブフレーム(Subframe♯1)のMSDU番号とフラグメント番号が書き込まれている。なお,第1サブフレームに,フラグメントがない場合には,フラグメント番号として♯1がセットされる。
【0044】
以上のようにして,無線送信機は,データの集積化を完了する。図3に示す例では,4つのMSDUのうち,MSDU♯1と,MSDU♯2と,MSDU♯3の一部が集積されている。そして,無線送信機は,まず,電波(無線)を用いて,プリアンブルと,それに続くPHYヘッダー及びMACヘッダーとを送信する。続いて,無線送信機は,MACサブヘッダーと,それに続くサブフレームとを送信する。
【0045】
次に,図1のステップS20における受信データのデコード処理(de−aggregation procedure)について,図4を用いて詳細に説明する。図4は,図1のステップS20における受信データのデコード処理を説明するための図である。
【0046】
無線受信機は,無線送信機からデータ(無線)を受信すると,受信したデータの冒頭にあるプリアンブルを検知することで,無線送信機からさらにフレームが続いて送信されてくることを把握する。そして,無線受信機は,MACヘッダー用のHCSが正常に通った後に,PHYヘッダーとMACヘッダーとを読み込み,データ集積化済みの第1サブフレームのMSDU番号とフラグメント番号とを取得する。
【0047】
続いて,無線受信機は,MACサブヘッダー用のHCSが通った後,MACサブヘッダーを読み込むことで,各サブフレームに対応するサブヘッダーに含まれている情報を取得する。これにより,各サブフレームを受信するための準備が整うこととなる。
【0048】
各サブフレームに対応するデータ(MSDU)を再現するために,無線受信機は,以下の手順で,各サブフレームのMSDU番号やフラグメント番号を特定する。
【0049】
まず,無線受信機は,MACヘッダーから,第1サブフレームのMSDU番号とフラグメント番号を取得する(上述のとおり)。
【0050】
続いて,無線受信機は,MACヘッダーから取得したMSDU番号に,MSDUオフセットの値を加算することで,サブフレームのMSDU番号を算出する。MSDUオフセットの値は,MACサブヘッダー内に格納されている。MSDUオフセットは,複数のデータを読み出すタイミングをずらすためのものであり,無線受信機にとっては容易にタイミングを決定することができる情報である。また,このように,冒頭のサブフレームの情報を得た後に,後続のサブフレームの情報を得ることができるので,サブフレームを読み出す順序の決定を円滑に行うことができる。
【0051】
また,無線受信機は,サブフレームのフラグメント番号を算出する。具体的には,第1サブフレームのフラグメント番号は,MACヘッダーから取得したフラグメント番号に相当する。また,第2サブフレーム以降のサブフレームのフラグメント番号は,前回のサブフレームのフラグメントビットの末尾1ビットが0(ゼロ)にセットされている場合,前回のサブフレームのフラグメント番号に1を加算することで算出される。なお,前回のサブフレームのフラグメントビットの末尾が0(ゼロ)にセットされていない場合,フラグメント番号は,1にリセットされる。これにより,次のサブフレームにフラグメントが利用されている場合,第1フラグメントのフラグメント番号は,♯1(=0+1)となる。
【0052】
ところで,無線受信機は,MACヘッダー内のMSDU番号やフラグメント番号とともに,フラグメントビットの末尾を用いることで,各サブフレームのMSDU番号やフラグメント番号を,MSDUオフセットを用いることなく,算出することができる。具体的には,無線受信機は,MACヘッダー内のMSDU番号と,フラグメントビットの末尾が1にセットされていた回数とで,MSDU番号を算出することができる。また,フラグメント番号は,MACヘッダー内のフラグメント番号と,フラグメントビットの末尾が0にセットされていた回数とで算出することができる。たとえば,MSDU番号1のMSDUにフラグメンテーションが利用されておらず,MSDU番号♯2のMSDUがフラグメンテーションにより2つのフラグメントに分割されていた場合,第3サブフレームのMSDU番号は,♯2であり,これは,MACヘッダー内のMSDU番号♯1と,フラグメントビットの末尾が1にセットされていた回数:1回との和に相当する。その場合のフラグメント番号は,♯2であり,MACヘッダー内のフラグメント番号♯1と,フラグメントビットの末尾が0にセットされていた回数:1回との和に相当する。
【0053】
言い換えると,無線送信機は,フラグメントビットの末尾を1にセットすることで,無線受信機側において,MSDU番号が1つインクリメントされるように集積化データを作成しており,また,フラグメントビットの末尾を0にセットすることで,無線受信機側において,フラグメント番号が1つインクリメントされるように集積化データを作成している。
【0054】
したがって,無線受信機は,MSDUオフセットを用いてMSDU番号を算出した場合と,フラグメントビットの末尾を用いてMSDU番号を算出した場合とを比較することで,MSDU番号を二重にチェックすることができる。これにより,データのデコードの再現性を確かめることができる。なお,二重チェックの結果,算出したMSDU番号が互いに一致しない場合には,対応するサブフレームを,エラーとみなして排除(drop)するように無線受信機を構成してもよい。
【0055】
また,無線受信機は,サブフレームにおいてエラーが検出された場合,Blk−ACKビットマップを用いて,無線送信機に対して再送信を行うよう通知することが好ましい(再送信制御)。その場合,無線送信機は,無線受信機が再送信のデータを特定可能な程度にオリジナルの順序と同じ順序でデータの再送信を行う。
【0056】
そして,無線受信機は,エラーを検出することなく,各サブフレームのMSDU番号とフラグメント番号を特定することができたら,その順序に従ってサブフレームを読み出すことにより,オリジナルのデータをデコード(再現)することができる。
【0057】
以上詳細に説明したことから明らかなように,本態様では,MSDU番号とフラグメント番号をサブフレームの各々に対して付与することに代えて,たった1つのビットをフラグメントビットの末尾に割り当てる。これにより,本発明によれば,無線送信機は,個別のデータに関する情報の全てを送信する必要がない。また,無線受信機においても,個別データに関する情報の全てを扱う必要がない。したがって,各サブフレームを特定するために必要なMSDUオフセット用のビットのビット数を非常に小さくすること,具体的にはほとんどなくすことができる。その結果,処理負荷と処理時間の大幅な軽減を図ることができ,データ集積化に伴うオーバーヘッドを低減することができる。
【0058】
したがって,上述したデータ送受信方法を採用した無線通信システムでは,無線通信のスループットが高まり,パフォーマンスが高い。また,データ集積化に際しオーバーヘッドが少ないデータ送信機や,集積化データをオーバーヘッドが少ない状態でデコード(再現)することができるデータ受信装置を提供することができる。
【0059】
さらには,上述した態様において,分解能ビットを利用することで,サブフレーム長を示に必要なビット数も大幅に小さくすることができる。分解能ビットは,解像度提示(Resolution indication)フィールドに書き込まれている。したがって,本態様では,この点においてもオーバーヘッドを低減することができる。
【0060】
また,上述した態様は,主に,データ送受信方法に関するものであった。しかし,上記態様において説明したフィールドを含むデータのフォーマットやフレーム構造も本発明又は本発明の一部を構成することとなる。また,上述した処理(データ集積化処理や集積化データのデコード処理)の一部又は全部に対応するプログラム(アルゴリズム)や当該プログラムを記憶した情報記憶媒体も,本発明又は本発明の一部を構成するのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は,無線通信を行う分野で好適に利用することができ,特に,高速の無線通信システムに適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線を用いて,複数の個別データを集約化した集約化データを送受信するためのデータ送受信方法であって,
データ送信装置は,
前記集約化データをデータ受信装置に送信する際に,
前記個別のデータの区切りに関する区切り情報と,前記複数の個別データのうち最初に送信される個別データに関する冒頭データ情報とを,前記集約化データとともに無線信号として送信し,
前記データ受信装置は,
前記冒頭データ情報と,前記区切り情報とに基づいて,前記複数の個別データを読み出す順序を決定する,
データ送受信方法。
【請求項2】
前記無線信号は,
前記データ受信装置に最初に送信されるヘッダーと,当該ヘッダーに続いて送信されるサブフレームとを含み,
前記ヘッダーは,
第1のヘッダーと,当該第1のヘッダーに続いて送信される第2のヘッダーとを含み,
前記第1のヘッダーは,
前記冒頭データ情報を含み,
前記第2のヘッダーは,
前記区切り情報を含み,
前記サブフレームは,
前記集約化データを含む,
請求項1に記載のデータ送信方法。
【請求項3】
前記個別データは,
データユニット,又はデータユニットを分割したフラグメントであり,
前記区切り情報は,
フラグメントビットの末尾に割り当てられた1ビットのデータである,
請求項1に記載のデータ送受信方法。
【請求項4】
前記個別データは,
MSDU,又はMSDUを分割したフラグメントであり,
前記冒頭データ情報は,
第1番目のMSDUの番号を示す情報と,当該第1番目のMSDUを構成するフラグメントのうちの第1番目のフラグメントの番号を示す情報であり,
前記区切り情報は,
フラグメントビットの末尾に割り当てられた1ビットのデータである,
請求項1に記載のデータ送受信方法。
【請求項5】
前記区切り情報は,
前記個別データのオフセット値を示す情報を含む,
請求項1に記載のデータ送受信方法。
【請求項6】
無線を用いて,複数の個別データを集約化した集約化データをデータ送信装置から受信するデータ受信装置であって,
前記データ送信装置から,前記集約化データをデータ受信装置に送信する際に,
前記個別のデータの区切りに関する区切り情報と,前記複数の個別データのうち最初に送信される個別データに関する冒頭データ情報とを,前記集約化データとともに受信し,
前記冒頭データ情報と,前記区切り情報とに基づいて,前記複数の個別データを読み出す順序を決定する,
データ受信装置。
【請求項7】
無線を用いて,複数の個別データを集約化した集約化データを送信するデータ送信装置であって,
前記集約化データをデータ受信装置に送信する際に,
前記個別のデータの区切りに関する区切り情報と,前記複数の個別データのうち最初に送信される個別データに関する冒頭データ情報とを,前記集約化データとともに無線信号として送信する,
データ送信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−251990(P2010−251990A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98365(P2009−98365)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】