説明

トイレ洗浄装置

【課題】便器の清掃の省力化に貢献し清掃の品質を均一化するためのトイレ洗浄装置を提供する。
【解決手段】トイレの男子用便器の清掃作業を補助する為のトイレ洗浄装置が、便器に対して移動可能に構成されたトイレ洗浄装置本体と、便器に付けるICチップ等の無線発信機器とを有し、トイレ洗浄装置本体には、高圧水の発生装置と高圧水を射出する為のノズルが配設され、前記ノズルを便器の長さに合わせ上下させる駆動装置を備え、前記ICチップ等の無線発信機器は便器近傍に付着され、該便器の情報やトイレ内の情報を記憶させ、トイレ洗浄装置本体には、無線機器からの情報を読み取る為の装置を備え、読み取った便器の情報に基づき前記ノズルを上下させるべく駆動装置を制御し、便器の大きさや形状に合わせた駆動範囲を変更し、読み取ったトイレ内の情報を隣の便器に移動する際に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男子用便器の清掃時の省力化に貢献し、作業員に因る清掃作業時間の違いや清掃の品質を均一化するためのトイレ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレの清掃は、モップやスポンジを使用して汚れを取り除き、その後ホースから出ている水道水で流す方法の清掃が行われている。
【0003】
作業員による手作業で行われている為、作業員個々により作業の時間が違いあり、また清掃の度合いも同じではない。
【0004】
トイレの清掃作業中は、水道水がホースから流れ出たままの状態で行われていることもあり、水道水の使用量は作業員により違っているし、無駄に流されている場合もある。
【0005】
男子用便器は、便器の長さや形状もメーカーによる違いがあり、このため自動機械装置による作業が難しい。
【0006】
また、産業用の「洗浄」と比べて、トイレの清掃作業で行われているモップやスポンジを使用して汚れを取り除く作業には洗浄効果に疑問がある。
【0007】
さらに、清掃時に流されている水道水には除菌も消臭の効果も期待できない。
【0008】
また、作業完了の確認は、作業員の目視と併せ嗅覚による確認のみで、一定の基準がない。
【0009】
さらに、鉄道の駅や自動車専用道路のトイレでは、便器が多数並んで設置されており、清掃作業は容易ではない。
【0010】
なお、本出願人は、本発明に関連する先行技術については、本出願時においてその存在を知らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【非特許文献】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記問題を解消するためになされたものであり、トイレの清掃作業(主として男子用便器)において、作業員の手作業により行われている清掃作業から作業員個々による違いをなくすことに着目してなされたものであり、作業に要する時間が同じとなり、結果として使用される水道水の量や清掃の品質を均一化すること出来るトイレ洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるトイレ洗浄装置は、トイレの便器の清掃作業、主として男子用便器の清掃作業を補助する為のトイレ洗浄装置において、このトイレ洗浄装置が、便器に対して移動可能に構成されたトイレ洗浄装置本体と、便器に付けるICチップ等の無線発信機器とを有し、前記トイレ洗浄装置本体には、高圧水の発生装置と高圧水を射出する為のノズルが配設されているとともに、前記ノズルを便器の長さに合わせ上下させる駆動装置が備えており、また前記ICチップ等の無線発信機器は、便器近傍に付着され、該便器の情報やトイレ内の情報を記憶させてあり、前記トイレ洗浄装置本体には、前記無線機器からの情報を読み取る為の装置を備え、かかる読み取った便器の情報に基づき前記高圧水を射出する為のノズルを上下させる前記駆動装置を制御し、便器の大きさや形状に合わせた駆動範囲を変更することや、読み取ったトイレ内の情報を隣の便器に移動する際に利用することを特徴とする。
【0013】
このように構成された本発明にかかるトイレ洗浄装置によれば、トイレの清掃作業は産業用機械などの洗浄にも用いられている高圧水による洗浄が行え、洗浄のための高圧水を射出する為のノズルは駆動装置により動作が制御されているので各便器に対する作業時間は一定となり作業員個々の個人差等の違いは少なくなる。
【0014】
また、前記トイレ洗浄装置において、前記トイレ洗浄装置本体の底面に車輪を配置しておくことにより、本トイレ洗浄装置本体の移動は容易となり、複数の便器間の移動や便所内の複数箇所に配置されている各便器の洗浄に対しても少ない台数で対応することが可能となる。
【0015】
また、男子用便器には「カエシ」と呼ばれる飛沫の飛散を防止する部分が設けられていることがある。
前記ICチップ等の無線機器に格納されている男子用便器の長さや形状等の情報の他にも情報として便器のカエシの有無もあり、男子用便器の形状の情報により、洗浄のための高圧水を射出する為のノズルを上下させる駆動装置と連動させ、ノズルの向きをカエシに対応した方向へ向くように動かす装置を配設することが望ましい構成となる。
【0016】
前記ICチップ等の無線機器に格納されている情報には、トイレ内の便器の配置位置の情報も格納されている。
本発明のトイレ洗浄装置本体を男子用便器の洗浄に用いれば、隣の男子用便器位置を数値(横方向に何ミリの位置にあるか)として認知することが出来る。
本発明のトイレ洗浄装置本体には、底部に移動を可能にする目的で車輪等が設置されていることは前述したが、底部に設置された車輪等を数値制御された駆動装置で動かすことにより、清掃作業が終了後は、隣の男子用便器に自走させるようにすると、本発明のトイレ洗浄装置本体の移動を容易にする。
【0017】
ところで、本発明のトイレ洗浄装置本体を男子用便器の洗浄に用いたときに、作業員によって移動させる場合は基より、前述の底部に設置された車輪等を数値制御された駆動装置で動かして移動させる場合においても配置位置には多少の違いが出る。
この違いを補正する為に、本発明のトイレ洗浄装置本体にはCCDカメラ等画像の撮影装置が画像認識装置として配設されることが望ましい。
前記CCDカメラ等画像の撮影装置等の画像認識装置で把握された画像データから、本発明のトイレ洗浄装置本体の男子用便器に対する位置を確認するように構成することが、本洗浄装置本体を正確な位置へ配置するのに好ましい。
具体的には、前記撮影装置で撮影された画像データから本トイレ洗浄装置本体の便器に対する位置を確定させる為の装置として、画像を解析する為の演算装置と解析された画像を比較する為の記憶装置を備えていることが望ましい構成となる。
【0018】
また、前記CCDカメラ等画像の撮影装置で撮影された画像データから本トイレ洗浄装置本体の男子用便器に対する配置位置を確定させるように構成すると、通常汚れの多い場所へ効率的に高圧水を射出する為のノズルを移動させることが出来、洗浄効果を高める上でも好ましい。
【0019】
ところで、前記高圧水を射出する為のノズルを上下させる駆動装置の駆動機構としては、具体的にはチェーン駆動やボールネジによる駆動を採用することが望ましい。
また、高圧水を射出する為のノズル向きを変えるアクチュエータとしては、シリンダーやモーターが使用される。
【0020】
前記高圧水を射出する為のノズルから射出される液体は扇型に広がるノズルが選択されていることが好ましく、清掃作業を行う時には上から下へ動くよう構成することが好ましい。
また、ノズルから射出される液体の圧力は便器に施されているコーティングを剥離してしまわない程度の設定とされる。
【0021】
また、本発明のトイレ洗浄装置を用い清掃作業を行った記録を記憶させておく為の記憶装置を備える。
前記記憶装置内の情報はSDカード、USBメモリーに書き出すことが出来、外部の記憶装置内に情報を移動させることが出来るようにする事が好ましい。
前記記憶装置内の情報に併せ、清掃作業の状況を無線装置等を用いて離れた場所から確認できるようにすることが好ましい。
【0022】
また、本発明のトイレ洗浄装置本体には臭いを感知するセンサーが配設されている。
清掃作業終了後、臭いを感知するセンサーが異常を示した場合には、洗浄用の液体(主には水道水)とは別の消臭に効果のある液体を噴霧する装置によって、消臭するように構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかわるトイレ洗浄装置によれば、清掃作業の省力化が可能となり、併せて清掃作業の品質を均一化することが出来る。
また、清掃作業の作業員個々の違いが無くなり、作業時間が一定し、且つ作業の効率化が図れる。
【0024】
さらに、清掃作業に使用する水道水の量も一定化され、無駄をなくすことが出来る。
【0025】
また、便所内の多数の便器を清掃する場合や多数の便所を清掃する場合において、作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかわるトイレ洗浄装置の全体の概略の構成を示す図である。
【図2】飛沫の飛散を防止する為のカエシのある男子用便器に対応するノズルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付する図面を参照しつつ本発明にかかるトイレ洗浄装置の実施形態を説明する。
【0028】
図1は本発明にかかるトイレ洗浄装置の全体の概略の構成を示した図である。
【0029】
図1に図示するように、トイレ洗浄装置は、トイレ洗浄機本体とICチップ等の無線発信機器とを有する。
前記トイレ洗浄装置本体には、洗浄のための高圧水を射出する為のノズルを上下させる駆動装置01と高圧水を射出する為のノズル02とCCDカメラ等画像の撮影装置04と無線機器からの情報を読み取る為の装置05と臭いを感知するセンサー06と駆動を制御する装置07と記憶装置10と清掃作業の状況を離れた場所から確認するために送信するための無線送信装置11と高圧水発生装置08と移動の為の車輪09とを備えている。
【0030】
前記ICチップ等の無線発信機器03は清掃作業の対象となる便器に付着される。
【0031】
前記トイレ洗浄機本体は、移動の為の前記車輪09を利用して作業員により容易に便器の所定の位置に移動させられ、その後、便器に付着されている前記ICチップ等の無線発信機器03内に記憶されている種々の情報は、無線機器によって読み取る為の装置05を介して駆動を制御する装置07へと送られる。
前記駆動を制御する装置07は、前記ICチップ等の無線発信機器03の情報をもとに洗浄のための高圧水を射出する為のノズルを上下させる駆動装置01と高圧水を射出する為のノズル02とを、該便器に適合した動きに制御する。
【0032】
前記ICチップ等の無線発信機器03の情報をもとに駆動を制御する装置07が洗浄のための高圧水を射出する為のノズルを上下させる駆動装置01と高圧水を射出する為のノズル02の動きを制御することは前述したが、前記駆動装置01とノズル02の具体的な動きは、駆動装置01によるノズル02の稼動範囲を変えることになる。
男性用便器には上下に長いタイプの便器と短いタイプの便器がある。
前記ICチップ等の無線発信機器03にはどちらのタイプの便器であるかの情報が格納されており、該情報に従い駆動装置01によるノズル02の稼動(動作)範囲が変わる。
長いタイプの便器の場合は稼動範囲が長くなる。
【0033】
また、男性用便器には「カエシ」と呼ばれる飛沫の飛散を防止する部分が有る便器と無い便器があり、該カエシの部分は特に汚れが残っている場合が多く、高圧水を射出による清掃が必要な部分である。
このカエシの有る便器の場合は、図2に記載しているように、高圧水を射出する為のノズル14aがノズル14bで示す位置へ高圧水を射出する方向を変えて清掃を行う。
かかるカエシの有る便器の場合は、ノズル13とノズル14bから高圧水を射出し、カエシの無い便器の場合は、前記ノズル13とノズル14aから高圧水を射出するが、カエシの有る便器の場合には便器の形状により、ノズル14aとノズル14bは高圧水を射出する方向を変えるのではなく、両方の位置に配設され、同時に高圧水を射出することもある。
【0034】
ところで、前記トイレ洗浄機本体に配設されているCCDカメラ等画像の撮影装置04により撮影された画像は、駆動を制御する装置07に配設されている演算装置やデータベースを介して、便器とトイレ洗浄機本体の相対的な位置関係を確認し、正しい位置関係であれば清掃作業を開始し、正しくない位置関係の場合には清掃作業を開始せず、この場合にはトイレ洗浄機本体に配設されたアラーム等で作業員に知らせる。
【0035】
前記車輪09にモーター等が連結され、前記制御する装置07を介して自走可能なように構成されている場合は、ICチップ等の無線発信機器03の中に格納されているトイレ内の便器の配置位置の情報をもとに、清掃作業修了後は、自走して清掃作業の行われていない隣の便器に移動することになるが、前述したCCDカメラ等画像の撮影装置04により撮影された画像により便器とトイレ洗浄機本体の位置関係を確認することにより、正しい位置への誘導が可能となる。
【0036】
前記CCDカメラ等画像の撮影装置04により撮影された画像により、トイレ洗浄機本体と便器の位置関係を確認することは前述したが、正しい位置にトイレ洗浄機本体を配置できれば、便器内の汚れの多い場所を集中的に清掃することが可能となる。
【0037】
前記記憶装置10には清掃作業の記録が格納されている。
前記ICチップ等の無線発信機器03の情報を無線機器からの情報を読み取る為の装置05で読み取り、清掃作業を行った履歴を記録する。
この履歴の情報はSDカード、USBメモリー等に書き出すことが出来、外部の記憶装置内に情報を移動させることが出来る。
また、前記記憶装置10には前記無線送信装置11が接続されており、清掃作業の状況を離れた場所から確認することが出来るようになっている。
【0038】
前記臭いを感知するセンサー06は、清掃作業の品質を数値として表すために配設されており、清掃作業終了時の臭いを測る。
前記臭いを感知するセンサー06が異常な数値を示した場合は、前記トイレ洗浄装置本体に配設されてアラーム等により、その異常を作業員に伝える。
【0039】
前述した臭いを感知するセンサー06が異常な数値を示した場合は、洗浄機本体に消臭効果のある液体と該液体を噴霧する為の装置が作動するように構成されている。
【0040】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明にかかるトイレ洗浄装置は、便器の洗浄作業やトイレ以外の被洗浄体の作業の効率化にも利用できる。
【符号の説明】
01・・・駆動装置
02・・・ノズル
03・・・ICチップ等の無線発信装置
04・・・撮影装置
05・・・無線機器から情報を読み取る装置
06・・・臭いを感知するセンサー
07・・・制御装置
08・・・高圧水発生装置
09・・・車輪
10・・・記憶装置
11・・・無線送信装置
12・・・取り付け板
13・・・ノズル
14a・・・ノズル
14b・・・ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレの便器の清掃作業、主として男子用便器の清掃作業を補助する為のトイレ洗浄装置において、このトイレ洗浄装置が、便器に対して移動可能に構成されたトイレ洗浄装置本体と、便器に付けるICチップ等の無線発信機器とを有し、前記トイレ洗浄装置本体には、高圧水の発生装置と高圧水を射出する為のノズルが配設されているとともに、前記ノズルを便器の長さに合わせ上下させる駆動装置が備えており、また前記ICチップ等の無線発信機器は、便器近傍に付着され、該便器の情報やトイレ内の情報を記憶させてあり、前記トイレ洗浄装置本体には、前記無線機器からの情報を読み取る為の装置を備え、かかる読み取った便器の情報に基づき前記高圧水を射出する為のノズルを上下させる前記駆動装置を制御し、便器の大きさや形状に合わせた駆動範囲を変更することや、読み取ったトイレ内の情報を隣の便器に移動する際に利用することを特徴とするトイレ洗浄装置。
【請求項2】
さらに、前記トイレ洗浄装置本体は、CCDカメラ等両像の撮影装置を有し、該トイレ洗浄装置本体の作業位置を確認することが出来るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のトイレ洗浄装置。
【請求項3】
さらに、本トイレ洗浄装置は、前記トイレ洗浄装置本体の稼動した記録を残す為の記憶装置を備え、清掃作業の状況を無線装置などを用いて離れた場所へ送信することが出来る請求項1又は2に記載のトイレ洗浄装置。
【請求項4】
さらに、前記トイレ洗浄装置本体は、臭いを感知するセンサーと消臭効果のある液体を射出する為の装置とを有しており、臭いに関する異常がある場合には、該トイレ洗浄装置本体は、前記消臭効果のある液体を射出する請求項1〜3のいずれか1の項に記載のトイレ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−115629(P2012−115629A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285117(P2010−285117)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(504445921)大田産業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】