説明

トイレ装置

【課題】 すっきりとした外観で清掃性にも優れたトイレ装置を提供する。
【解決手段】 便器と、便器の上部後方に設置され、給水源から供給される水を前記便器に供給することにより水洗洗浄を可能とした便器洗浄バルブを内装する本体部と、前記本体部に回転可能に軸支された便座と、前記本体部に回転可能に軸支された便蓋と、前記本体部に設けられ、人体を検知可能な人体検知センサと、を備え、前記便蓋を開閉する便蓋電動開閉装置が前記本体部に設けられ、前記便器洗浄バルブと前記便蓋電動開閉装置は、前記本体部の後部において隣接して設置され、前記人体検知センサは、前記本体部の上面の後部に、当該上面から突出させて設け、前記便蓋は、閉じた状態において前記便座及び前記本体部の上面の略全体を覆うことを特徴とするトイレ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ装置に関し、より具体的には、開閉自在な便蓋を備えたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗トイレのなかで、「水道直圧式」などと呼ばれる形式のトイレ装置がある。これは、ロータンクなどを用いず、水道から供給される水をそのまま洗浄水として便器に流すことにより水洗洗浄を可能としたものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
水道直圧式のトイレ装置は、ロータンクなどを設ける必要がないため、コンパクトですっきりとしたデザインとすることが容易であり、狭いトイレ空間などに設置しても圧迫感がない点で優れる。しかし、トイレ装置の後方に設けられる本体カバーとその前方の便蓋との間に隙間が生ずるので、ゴミなどが溜まりやすく清掃性に欠けていた。
【0004】
一方、使用者の接近あるいは存在を検知する人体検知センサの検出結果に基づき、便蓋を自動開閉する便蓋装置が開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−193132号公報
【特許文献2】特開2004−267348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、すっきりとした外観で表面の清掃性にも優れたトイレ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
便器と、
前記便器の上部後方に設置され、給水源から供給される水を前記便器に供給することにより水洗洗浄を可能とした便器洗浄バルブを内装する本体部と、
前記本体部に回転可能に軸支された便座と、
前記本体部に回転可能に軸支された便蓋と、
前記本体部に設けられ、人体を検知可能な人体検知センサと、
を備え、
前記便蓋を開閉する便蓋電動開閉装置が前記本体部に設けられ、
前記便器洗浄バルブと前記便蓋電動開閉装置は、前記本体部の後部において隣接して設置され、
前記人体検知センサは、前記本体部の上面の後部に、当該上面から突出させて設け、
前記便蓋は、閉じた状態において前記便座及び前記本体部の上面の略全体を覆うことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、
便器と、
前記便器の上部後方に設置され、給水源から供給される水を前記便器に供給することにより水洗洗浄を可能とした便器洗浄バルブを内装する本体部と、
前記本体部に回転可能に軸支された便座と、
前記本体部に回転可能に軸支された便蓋と、
前記本体部に設けられ、人体を検知可能な人体検知センサと、
を備え、
前記便座に座った使用者に向けて吐水口から水を噴射するノズルユニットと、前記便蓋を開閉する便蓋電動開閉装置と、が前記本体部に設けられ、
前記ノズルユニットは、前記本体部の前部に配置され、
前記便器洗浄バルブと前記便蓋電動開閉装置は、前記本体部の後部において隣接して設置され、
前記人体検知センサは、前記本体部の上面の後部に、当該上面から突出させて設け、
前記便蓋は、閉じた状態において前記便座及び前記本体部の上面の略全体を覆うことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、すっきりとした外観で清掃性にも優れたトイレ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の模式斜視図である。
すなわち、本実施形態のトイレ装置100は、洋式腰掛便器800と、その後方に設けられた本体部400と、を有する。本具体例のトイレ装置は、「水道直圧式」であり、便器に流す洗浄水を制御するためのバルブ機構が本体部400に内装されている。
【0010】
また、本体部400には、「衛生洗浄装置」としての機能がさらに付与されている。すなわち、使用者のスイッチ操作などに応じて、本体部400から吐水ノズル(図示せず)が便器800のボウル内に伸出し、その先端付近に設けられた吐水口から水を噴射して、使用者の「おしり」などを洗浄可能としている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
また、本体部400には、さらに「脱臭ユニット」や「温風ユニット」、「室暖ユニット」などの各種の機構を適宜設けてもよい。この場合、本体部400の側面には、排気孔440及び排出孔450が適宜設けられる。本体部400の内部構成については、後に詳述する。
【0011】
一方、本体部400には、便座200及び便蓋300がそれぞれ開閉自在に軸支されている。便座200は本体部400において相対的に前方に軸支され、一方、便蓋300は本体部400において相対的に後方に軸支されている。つまり、便座200の回転軸と便蓋300の回転軸は、前後方向に離間して設けられている。図1に表したように便蓋300が開いた状態においては、本体部400と便座200はほぼ完全に露出し、使用者は便蓋300に干渉することなく便座200に座ることができる。また、便蓋300を本体部400の後方で軸支することにより、便座200に座る使用者から便蓋300を遠ざけることができる。その結果として、便座200に座る使用者に開放感を与え、快適な使用感が得られる。また、例えば、厚手の上着や丈の長いワンピースなどをまくし上げて便座200に座るような場合でも、これら上着やワンピースなどが便蓋300に接触しにくくなり、使用者に圧迫感や衛生的な不快感を与えることもない。
【0012】
一方、図2に表したように便蓋300が閉じると、便座200だけでなく本体部400もほぼ完全に便蓋300に覆われた状態となる。本実施形態のトイレ装置は、「水道直圧式」であるから、図示したトイレ装置のうしろにロータンクなどは配置されず、このままの状態でトイレ空間に配置される。このように便蓋300でトイレ装置のほぼ全体を覆うようにすると、非常にスマート且つシンプルで見栄えがすっきりとする。また、トイレ装置100の全体を便蓋300で覆うことにより、使用されていない状態において便座200のみならず本体部400の上にも埃やチリなどが積もることはない。さらに、便蓋300を閉じた状態において、トイレ装置100の上面に「隙間」や「凹凸」などがなくなるため、濡らした雑巾などで拭き掃除をする際にも、便蓋300の上面全体を滑らかにサッと拭くことができ、清掃性が良好になる。
【0013】
また、本具体例においては、本体部400の側面に段部405が形成されている。この段部405は、便蓋300が閉じた状態において、便蓋300の側面下端305と当接または近接した状態で整合し、本体部400の側面と便蓋300の側面とはほぼ連続した同一面を形成する。その結果として、便蓋300が閉じた状態において、衛生洗浄装置100の側面にも便蓋300から本体部400に至る連続平面が形成され、見栄えがさらにすっきりとするとともにホコリや汚れが堆積することも防止できる。また、便蓋300を閉じた状態でトイレ装置100の側面を拭き掃除した場合にも、雑巾がひっかかることなく滑らかにサッと拭くことができる。
【0014】
一方、本具体例のトイレ装置の本体部400は、便座200の軸支部と便蓋300の軸支部との間に、閉じた状態の便蓋300とほぼ並行な面となる上面を有しており、その上面に人体検知センサ500が設けられている。また、便蓋300の後部には透過窓310が設けられている。便蓋300が閉じた状態において、人体検知センサ500は透過窓310を介して使用者の存在を検知可能とされている。そして、使用者を検知すると、例えば便蓋300を自動的に開くことができる。
【0015】
次に、本具体例のトイレ装置の本体部400の内部構造について説明する。
図3は、本体部400の内部を前方から眺めた斜視図である。
また、図4は、本体部400の内部を後方から眺めた斜視図である。
ケースカバー430の上面には、人体検知センサ500の近傍に表示部670が適宜設けられている。表示部670は、例えばトイレ装置100に対する電源の投入状態などを適宜表示する役割を有する。また、ケースカバー430の前部の上部においては、便座200を自動開閉させるための電動開閉ユニット780が突出して設けられている。
【0016】
一方、ケースカバー430の内部の前部には、ノズルユニット610、温風ユニット620、脱臭ユニット630、が併設されている。ノズルユニット610は、進退自在の吐水ノズルを有し、便座200に座った使用者の「おしり」などに水を噴射して洗浄する役割を有する。温風ユニット620は、便座200に座った使用者の「おしり」などに温風をあてて乾燥させる役割を有する。脱臭ユニット630は、便器800のボウル内の空気を吸引し、脱臭して排気孔440から排出する役割を有する。
【0017】
また、ケースカバー430の内部の前部にはAC(交流)コントローラ640が設けられ、その後部には、ポンプユニット650と熱交換ユニット660が設けられている。熱交換ユニット660に供給された水が加熱され、ポンプユニット650で水に脈動を付与し、ノズルユニット610にこの脈動水を供給する。
【0018】
また、ケースカバー430の側面には、補助操作ユニット680が設けられている。補助操作ユニット680には、便器800に洗浄水を流したり、ノズルユニット610による「おしり」の洗浄などを操作するスイッチが設けられ、例えば、リモコン(図示せず)による操作が不可能な状態においてもトイレ装置100の動作を制御可能としたものである。また、ケースカバー430の下方後部には、バルブユニット690が設けられている。バルブユニット690は、水道から供給された水のポンプユニット650への供給を制御する役割を有する。
【0019】
一方、ケースカバー430の内部の前部上部には、DC(直流)コントローラ700とドライバユニット710とが併設されている。そして、ケースカバー430の内部の後部には、電動開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット730とが隣接して設置されている。電動開閉ユニット720は、便蓋300を開閉する役割を有する。便器洗浄バルブユニット730は、便器800に流す洗浄水の供給を制御する役割を有する。すなわち、水道から供給される水は、便器洗浄バルブユニット730を介して便器800に供給され水洗洗浄が実施される。
【0020】
一方、ケースカバー430の内部の最後部には、室暖ユニット740が設けられている。室暖ユニット740は、温風を排出孔450から排出することによりトイレ装置が設置されたトイレ空間を暖房する役割を有する。また、下端には、電源コードが配設され、外部からトイレ装置に交流100ボルトなどの電源を供給する。
【0021】
図5は、便器洗浄バルブユニット730の取り付け構造を説明するための斜視図である。 また、図6は、便器洗浄バルブユニット730の取り付け部を上方から眺めた模式図である。
【0022】
便器洗浄バルブユニット730は、便器800の後ろ側に固定された便器側ベースプレート760に支持され、給水配管735により便器800に接続されている。便器800の上面には、本体部400の取付基板770が固定される。そして、便器洗浄バルブユニット730は、取付基板770に設けられた開口775を貫通してその上方に突出している。
図7は、電動開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット730との配置関係を表す斜視図である。
また、図8は、これら要素を後ろ側から眺めた模式図である。
電動開閉ユニット720は、取付基板770に立設された複数のピン772の上にビス止め固定されている。このようにして、電動開閉ユニット720と取付基板770との間にスペースを空け、そのスペースに給水配管735を配置している。すなわち、便器洗浄バルブユニット730の給水配管735の一方をまたぐようにして電動開閉ユニット720が取付けられている。そして、電動開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット730とは、本体部400の後部において隣接して設置されている。また、図3及び図4に関して前述したように、トイレ装置100のノズルユニット610をはじめとする各機能部は、取付基板770の前部と電動開閉ユニット720の下に適宜配置されている。
【0023】
以上説明したように本具体例のトイレ装置は、種々の機能を有する複数のユニット類を内蔵するが、本具体例によれば、図3及び図4に関して前述したように、ノズルユニット610、温風ユニット620、脱臭ユニット630、ポンプユニット650、熱交換ユニット660、バルブユニット690などが本体部400の下方に設けられている。また、本体部400の後部には便器洗浄バルブユニット730が内装され、電動開閉ユニット720がこれと隣接して本体部400の後部に設けられている。このように、電動開閉ユニット720を本体部400の後部に設けることにより、便蓋300を本体部400の後部で軸支し、便蓋300が閉じた時に、本体部400の上面の略全体を覆うようにすることができる。また、電動開閉ユニット730をピン772によって取付基板770の上方にもちあげて、その下方に便器洗浄バルブ720に接続される給水配管735を収めたので、限られたスペースを有効に活用できる。なお、電動開閉ユニット730を複数のピン772で取付基板770から離間させる代わりに、電動開閉ユニット730に複数の長脚を設けて取付基板770に取付けるようにしてもよい。
【0024】
また、便器洗浄バルブユニット730を本体部400の後部に内装し、その上方に人体検知センサ500を設けることにより、本体部400のサイズをコンパクトにしつつ、人体検知センサ500を本体部400の上面に設置できる。この点については、後に詳述する。なお、人体検知センサ500を便器洗浄バルブユニット720の上方ではなく、電動開閉ユニット720の上方に設けても、同様の作用効果を得ることができる。つまり、電動開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット730を本体部400の後部に内装し、そのいずれかの上方に人体検知センサ500を設けることにより、本体部400のサイズをコンパクトにしつつ、透過窓310を介して確実な人体検知が可能となる。
【0025】
以下、本実施形態のトイレ装置に設けられる人体検知センサ500について説明する。
【0026】
図9は、本実施形態のトイレ装置100を正面から眺めた斜視図である。
図10至図12は、人体検知センサ500の取り付け部を表す拡大斜視図であり、図10は便蓋300が閉じた状態、図11及び図12は便蓋300が開いた状態をそれぞれ表す。
また、図13は、便蓋300が開いた状態においてその軸支部を正面から眺めた拡大斜視図である。
【0027】
本体部400の上面に凹設部410が形成され、人体検知センサ500は、その一部が凹設部410に埋め込まれるように設けられている。後に詳述するように、人体検知センサ500としては、赤外線検知方式のセンサを用いることができ、例えば焦電センサを用いると使用者の存在を高い確度で検知できる。焦電センサの場合、その前方の所定の検知範囲内における発熱体の移動を検知可能とされている。
【0028】
図10に表したように便蓋300が閉じた状態においては、人体検知センサ500は、透過窓310を介してトイレ装置100の前方にいる使用者の存在を検知する。すなわち、透過窓310は、人体検知センサ500が検知する赤外線を透過する。人体検知センサ500として例えば焦電センサを用いた場合、波長約10マイクロメータ程度の遠赤外線を検知する。従って、透過窓310は、この波長帯の赤外線に対してある程度の透過率を有する材料からなる。透過窓310の材料として例えばポリエチレンを用いることにより、便蓋300が閉じた状態においても、使用者の接近や存在を透過窓310を介して高い感度で検知できる。
【0029】
一方、透過窓310を支持する便蓋300は、赤外線に対して透過窓310よりも低い透過率を有する材料により形成できる。便蓋300を透過窓310よりも硬くて丈夫な材料により形成すれば、たわみや変形が少なく、またキズも付きにくくなる。また、便蓋300の色も自由に選択でき、便器800や本体部400の色に合わせることも容易となる。これらの要求を満たす便蓋300の材料としては、例えば、ポリプロピレンなどを挙げることができる。
【0030】
便蓋300が閉じた状態で人体検知センサ500が使用者を検知すると、例えば本体部400に内蔵された電動開閉ユニットを動作させて便蓋300を自動的に開くことができる。また、例えば、便座200を急速暖房したり、本体部400に設けられた室内暖房ユニット740を動作させてトイレを暖めたり、便器800に予め少量の洗浄水を流してボウルを濡らすことにより汚れの付着を抑制する処理などを実行することが可能となる。
【0031】
そして、図11及び図12に表したように便蓋300が開くと、人体検知センサ500の前方に遮蔽体はなくなるので、そのまま使用者の存在を検知することができる。また、本体部400には、着座センサ420が設けられ、便座200に座った使用者の存在を検知可能としている。なお、着座センサ420としては、例えば、赤外線を放射しその反射光量により検知する方式の赤外線センサを用いることができる。
【0032】
図14は、人体検知センサ500の構造を例示する模式図である。すなわち、図14は、人体検知センサ500として焦電センサを用いた場合の構造を表す。
焦電センサは、基板530に実装された焦電素子510と、その受光面に対向配置されたレンズ520と、を有する。焦電素子510は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)系、LiTaO3(タンタル酸リチウム)系、PbTaO3(タンタル酸鉛)系などの焦電物質を用い、複数の検知領域に分割されている。また、レンズ520も、複数のレンズ部520Lに分割されている。人体などの発熱源が移動すると、これらレンズ体520による赤外線の集光パターンも焦電素子510の受光面を移動するので、その変化を検知することができる。
【0033】
図15は、人体検知センサ500を埋め込んだ本体部400の一部拡大縦断面図である。
【0034】
本具体例においては、図9に表したように、人体検知センサ500を、本体部400の上面のケースカバー430の後部すなわち便蓋300の軸支部に近接させて、本体部400の上面にやや突出させて設ける。こうすることにより、透過窓310と人体検知センサ500との距離を小さくできる。その結果として、透過窓310のサイズを小さくしつつ幅広い範囲を検知することが可能となる。つまり、人体検知センサ500からみた時に、小さな透過窓310を介して広角の範囲を検知できる。
【0035】
前述したように、透過窓310は、便蓋300よりも赤外線に対する透過率の高い材料で形成する必要があり、このために便蓋300とは色や質感が異なり、硬度が低く、変形したりキズなどがつきやすい場合がある。このような場合でも、本実施形態によれば、透過窓310を小さくでき、また便蓋300の後端付近に設けることができるので、目立たず、また人手に触れにくくなるため変形やキズ付きも抑制できるという効果が得られる。
【0036】
また、図15に表したように、本体部400に凹設部410を設け、人体検知センサ500の一部分をこの凹設部410を埋め込むことにより、人体検知センサ500を本体部のケースカバー430の上面から大きく突出させることなく、幅広い角度を検知することが可能となる。つまり、ケースカバー430の上面の清掃性を維持しつつ、確実な人体検知が可能となる。
【0037】
図16及び図17は、本具体例のトイレ装置100において人体検知センサ500により人体を検知可能な範囲を例示する模式図である。すなわち、図16は水平方向、図17は垂直方向の検知可能範囲を表す。
【0038】
図16から分かるように、人体検知センサ500により水平方向に40度の範囲内で人体900の検知が可能である。また、図17から分かるように、垂直方向には33度の範囲内で衛生洗浄装置の前方上方の人体900の検知が可能である。これは、通常の広さのトイレ空間において、トイレ装置100に接近する使用者や、トイレ装置100の前方に立つ使用者の存在を検知するのに十分な範囲である。また、図17に表したように、通常の背丈の大人が便器800の後端から2.5メータの距離に接近すると検知可能となる。そして、通常の背丈の大人が便器800の直前に立ったときの頭部も検知可能である。また、一般に、一人でトイレの使用ができる身長が1メータ弱の子供910の場合にも、トイレ装置100の前端から100ミリメータ程度まで接近すると検知可能となる。むろん、その子供910が便器800の直前に立った時の頭部も検知可能である。つまり、便器800(衛生洗浄装置100)を使用する大人から子供までの使用者の存在を確実に検知することが可能である。
【0039】
次に、本具体例において用いる透過窓310とその取り付け構造についてさらに詳細に説明する。
図18は、透過窓310を取り付ける便蓋300の取付部を表す斜視図である。
便蓋300の後端には、透過窓310を取り付ける開口340が形成されている。開口340の前方側壁と左右両側壁には、薄板状のレール350が設けられている。一方、開口340の後端には、支持橋360が設けられている。透過窓310は、便蓋300の後ろ側から、支持橋360の上を通過し、レール350に沿って矢印Aの方向にスライド挿入される。
【0040】
図19は、透過窓310を斜め上方から眺めた斜視図である。
また、図20は、透過窓310を斜め下方から眺めた斜視図であり、
図21は、透過窓310を横方向に切断した断面斜視図である。
【0041】
また、図22は、透過窓310の取り付け部の断面を表す拡大断面図である。
【0042】
透過窓310の前方の側面と左右の両側面には、便蓋300のレール350と係合するレール溝312が設けられている。透過窓310は、図18及び図19に矢印Aで表したように、便蓋300の後端から、両側端のレール350にレール溝312を係合させつつ前方にスライドさせることにより、開口340を塞ぐように取り付けることができる。透過窓310を前端までスライドさせると、その前方端のレール溝312が開口340の前方端のレール350に係合する。このようにして透過窓310が便蓋300に取り付けられた状態において、透過窓310の上面と便蓋300の上面とは連続し、これらの間に「段差」や「つなぎ目」は殆どない状態とされる。見栄えがすっきりとし、拭き掃除なども滑らかに行うことができる。
【0043】
なお、図18乃至図22においては、開口340の側壁にレール350が設けられ、透過窓310の側面にレール溝312が設けられた具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。例えば、これとは逆に、開口340の側壁にレール溝が設けられ、透過窓310の側面にレールが設けられた構造でもよい。
【0044】
一方、透過窓310の後部の裏面側の両側には、フック(係合凸部)314が設けられている。本具体例においては、フック314は鈎状に形成され、レール溝312の一部を切り欠くことによって上下に弾性変形が可能とされている。一方、図18に表したように、便蓋300の支持橋360の両端部には、フック用凹部(係合凹部)365が設けられている。透過窓310をレール350に沿って前端までスライドさせると、フック314がフック用凹部365に係合し固定される。このようにして、確実且つ容易に透過窓310を便蓋300に取り付け固定することができる。また、便蓋300に取り付けられた透過窓310を所定以上の力で後方に引くと、フック314が弾性的に後退してフック314とフック用凹部365との係合が解除される。従って、レール350に沿って透過窓310を後方にスライドさせ便蓋300から引き抜くことができる。従って、透過窓310が破損したり汚れたような場合には、便蓋300から簡単に取り外して交換できる点でも便利であり、経済性にも優れる。
【0045】
また、このようにフック314を透過窓310の後端付近に設けることにより、図12に表したように、便蓋300を開いた状態においても、使用者からフック314は殆ど見えず、見栄えをすっきりとさせることができる。
【0046】
なお、図18乃至図22においては、透過窓310にフック(係合凸部)314を設け、支持橋360にフック用凹部(係合凹部)365を設けた具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。例えば、これとは逆に、透過窓310にフック用凹部(係合凹部)を設け、支持橋360にフック(係合凸部)を設けた構造でもよい。
【0047】
一方、本具体例においては、便蓋300を閉じた状態において、人体検知センサ500は透過窓310を介して使用者の存在を検知するので、透過窓310はできるだけ赤外線を透過しやすい構造にすることが望ましい。このために、透過窓310の材料としては、前述したように例えばポリエチレンを用いる。さらに、図21及び図22に表したように、肉薄の窓部320を設けて赤外線の透過率を高くし、その周囲には肉厚のフランジ部330を設けて支持補強する構造とした。
【0048】
透過窓310を高密度ポリエチレンで形成した場合、窓部320の厚みを0.5ミリメータ程度まで薄くすると、人体検知センサ500として焦電センサを用いた場合でも十分な検出感度が得られた。一方、窓部320の周囲に設けるフランジ部330の厚みを1.5ミリメータ程度とすれば、通常の使用態様において透過窓310の外れや破損を防止できる。
【0049】
また、図15に関して前述したように、本具体例においては、透過窓310の下には人体検知センサ500が突出して設けられ、図15に表したようにケースカバー430の上端と透過窓310との間隔Sは約1ミリメータとされている。従って、便蓋300を閉じた状態で透過窓310に押圧力が負荷されると窓部320が変形するが、その変形量は1ミリメータまでに制限され、それ以上の押圧力に対してはケースカバー430が力を受けることにより透過窓310の破損や外れを防止できる。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図1乃至図22に関して前述した各具体例は、技術的に可能な範囲において適宜組み合わせることができ、これらも本発明の範囲に包含される。
また、トイレ装置の構造や動作の内容についても、図1乃至図22に関して前述したものには限定されず、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の模式斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の模式斜視図である。
【図3】本体部400の内部を前方から眺めた斜視図である。
【図4】本体部400の内部を後方から眺めた斜視図である。
【図5】便器洗浄バルブユニット730の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図6】便器洗浄バルブユニット730の取り付け部を上方から眺めた模式図である。
【図7】電動開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット730との配置関係を表す斜視図である。
【図8】電動開閉ユニット720と便器洗浄バルブユニット730を後ろ側から眺めた模式図である。
【図9】本具体例のトイレ装置を正面から眺めた斜視図である。
【図10】便蓋300が閉じた状態の人体検知センサ500の取り付け部を表す拡大斜視図である。
【図11】便蓋300が開いた状態の人体検知センサ500の取り付け部を表す拡大斜視図である。
【図12】便蓋300が開いた状態の人体検知センサ500の取り付け部を表す拡大斜視図である。
【図13】便蓋300が開いた状態においてその軸支部を正面から眺めた拡大斜視図である。
【図14】人体検知センサ500を埋め込んだ本体部400の一部拡大縦断面図である。
【図15】人体検知センサ500を埋め込んだ本体部400の一部拡大縦断面図である。
【図16】本具体例のトイレ装置100において人体検知センサ500により人体を検知可能な範囲を例示する模式図である。
【図17】本具体例のトイレ装置100において人体検知センサ500により人体を検知可能な範囲を例示する模式図である。
【図18】透過窓310を取り付ける便蓋300の取付部を表す斜視図である。
【図19】透過窓310を斜め上方から眺めた斜視図である。
【図20】透過窓310を斜め下方から眺めた斜視図である。
【図21】透過窓310を横方向に切断した断面斜視図である。
【図22】透過窓310の取り付け部の断面を表す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
100 トイレ装置、200 便座、300 便蓋、305 後部下端、310 透過窓、312 レール溝、314 フック、320 窓部、330 フランジ部、340 開口、350 レール、360 支持橋、365 フック用凹部、400 本体部、405 段部、410 凹設部、420 着座センサ、430 ケースカバー、440 排気孔、450 排出孔、500 人体検知センサ、510 焦電素子、520 レンズ、530 基板、610 ノズルユニット、620 温風ユニット、630 脱臭ユニット、640 コントローラ、650 ポンプユニット、660 熱交換ユニット、670 表示部、680 補助操作ユニット、690 バルブユニット、700 コントローラ、710 ドライバユニット、720 便器洗浄バルブユニット、720 電動開閉ユニット、730 便器洗浄バルブユニット、735 給水配管、740 室暖ユニット、760 便器側ベースプレート、770 取付基板、772 ピン、775 開口、780 電動開閉ユニット、800 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と、
前記便器の上部後方に設置され、給水源から供給される水を前記便器に供給することにより水洗洗浄を可能とした便器洗浄バルブを内装する本体部と、
前記本体部に回転可能に軸支された便座と、
前記本体部に回転可能に軸支された便蓋と、
前記本体部に設けられ、人体を検知可能な人体検知センサと、
を備え、
前記便蓋を開閉する便蓋電動開閉装置が前記本体部に設けられ、
前記便器洗浄バルブと前記便蓋電動開閉装置は、前記本体部の後部において隣接して設置され、
前記人体検知センサは、前記本体部の上面の後部に、当該上面から突出させて設け、
前記便蓋は、閉じた状態において前記便座及び前記本体部の上面の略全体を覆うことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
便器と、
前記便器の上部後方に設置され、給水源から供給される水を前記便器に供給することにより水洗洗浄を可能とした便器洗浄バルブを内装する本体部と、
前記本体部に回転可能に軸支された便座と、
前記本体部に回転可能に軸支された便蓋と、
前記本体部に設けられ、人体を検知可能な人体検知センサと、
を備え、
前記便座に座った使用者に向けて吐水口から水を噴射するノズルユニットと、前記便蓋を開閉する便蓋電動開閉装置と、が前記本体部に設けられ、
前記ノズルユニットは、前記本体部の前部に配置され、
前記便器洗浄バルブと前記便蓋電動開閉装置は、前記本体部の後部において隣接して設置され、
前記人体検知センサは、前記本体部の上面の後部に、当該上面から突出させて設け、
前記便蓋は、閉じた状態において前記便座及び前記本体部の上面の略全体を覆うことを特徴とするトイレ装置。
【請求項3】
前記便蓋の後部に設けられ、前記便蓋とは異なる材料により形成された透過窓をさらに備え、
前記人体検知センサは、前記便蓋が閉じた状態において前記透過窓を介して人体を検知可能とされたことを特徴とする請求項1または2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記人体検知センサは、人体が発する赤外線を集光するレンズと、前記赤外線を検知する焦電素子と、を有することを特徴とする請求項3記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記本体部の前記上面には、周囲よりも凹ませた凹設部が設けられ、
前記レンズは、少なくともその一部が前記凹設部に埋め込まれてなることを特徴とする請求項4記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−218075(P2007−218075A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252748(P2006−252748)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【分割の表示】特願2006−34731(P2006−34731)の分割
【原出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】