説明

トイレ

【課題】 背もたれと椅子型本体との間に作業スペースを確保しつつ、簡易さ操作でカバー部の開閉を行うことができる。
【解決手段】 トイレ10は、便器本体18を備えた椅子型本体12と、便器本体18の上方に設置される便座20と、椅子型本体12に揺動自在に取り付けられて便座20の開口部を開閉自在に覆うカバー部14と、椅子型本体12に支持された背もたれ16とを備えている。カバー部14は、2カ所で相互に揺動自在に連結された3つの分割片14A乃至14Cから成っている。これらの分割片14A乃至14Cは、揺動により水平状態に保持された第一片14Aを底辺とする三角形を形成するように折り畳まれて、椅子型本体12と背もたれ16との間の空間を通過して椅子型本体12の後方に変位することにより便座20の開口部を開き状態とすると同時に、作業スペース26を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に介護用の簡易型トイレ等として使用されるトイレの改良に関し、特に、簡易に製造することができると同時に、取扱いの容易性を向上することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、病気や怪我、老齢等の理由により、固定型の水洗トイレまで赴くことが困難である人が、排泄を円滑に行うことができるように、任意の箇所に設置可能な簡易型のポータブルトイレが使用されることがある。このようなポータブルトイレは、通常の居室空間に設置される関係上、一般のソファや椅子としても使用することができる家具調の形態を備え、通常では便器本体や便座を覆う座面となるカバー部を有すると共に、身体が不自由な方でも安心して使用することができるように、背もたれが設置されていることが多い。
【0003】
従来のこの種のトイレにおいては、このカバー部は、2つに折り畳むことにより開閉できるように設置され、便座の開口部を開き状態としたときには、2つに折り畳まれたカバー部が、トイレ本体と背もたれとの間の空間に配置されるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このように、2つに折り畳まれたカバー部が、背もたれとトイレ本体の間の空間を塞ぐようにして配置されると、介護者が、この背もたれとトイレ本体の間の空間に後方から手や腕等を差し入れて、介護作業に当たることが困難となる問題がある。
【0004】
一方、2つに折り畳まれたカバー部が、この背もたれとトイレ本体との間の空間を塞がないように、カバー部をスライド機構等により便座面よりも下方にまで退避させれば、介護者の作業スペースを確保することはできる(例えば、特許文献2及び3参照)。しかし、排泄終了後に、再びカバー部を閉め状態とするときには、下方まで退避したカバー部を上方に持ち上げる作業が必要となるため、カバー部を持ち上げた上で更に手前に引き出す2段階での操作が必要となると共に、とりわけ、介護が必要な方にとっては、このような大きな力を必要とする作業は困難となる問題が発生する。
【0005】
加えて、カバー部を下方まで退避させると、そのためのスライド機構等の設置作業を要し製造が複雑となるため、手間とコストを要するばかりか、カバー部があまりに後方に飛び出すと見栄えが低下すると同時に、介護者が被介護者に近付いて適切に作業することが困難となる。
【0006】
これらの取扱いや製造の困難性は、介護用以外の移動可能なポータブルトイレにおいても、同様に回避されるべきであるのは勿論のこと、更には、移動可能なポータブルトイレのみならず、介護施設等において固定して設置される水洗トイレにおいても、同様に回避すべき問題点であるといえる。
【特許文献1】特開2004−97341号公報
【特許文献2】特許第3648421号公報
【特許文献3】特開2006−43309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、介護者や被介護者による取扱い性の容易性を確保しつつ、同時に簡易に製造することができるトイレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、便器本体を備えた椅子型本体と、便器本体の上方に設置される便座と、椅子型本体に揺動自在に取り付けられて便座の開口部を開閉自在に覆うカバー部と、椅子型本体に支持された背もたれとを備えたトイレにおいて、カバー部は、2カ所以上で相互に揺動自在に連結された複数の分割片から成っていることを特徴とするトイレを提供するものである。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、カバー部を構成する複数の分割片は、揺動により多角形を形成するように折り畳まれて、椅子型本体と背もたれとの間の空間を通過して椅子型本体の後方に変位することにより便座の開口部を開き状態とすることを特徴とするトイレを提供するものである。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、カバー部を構成する複数の分割片は、椅子型本体に直結された第一片により他の分割片を支持するように折り畳まれることを特徴とするトイレを提供するものである。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第1乃至第3のいずれかの解決手段において、カバー部を構成する複数の分割片のうち椅子型本体に直結された第一片は、椅子型本体に対して揺動することにより便座とは反対方向を向くように保持されて椅子型本体から突出することを特徴とするトイレを提供するものである。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1乃至第4のいずれかの解決手段において、カバー部を構成する複数の分割片は、便座の開口部を開き状態とした状態で、背もたれと椅子型本体との間に、腕を入れることができる作業スペースを形成するように折り畳まれることを特徴とするトイレを提供するものである。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第1乃至第5のいずれかの解決手段において、カバー部を構成する各分割片の揺動方向における幅は、椅子型本体と背もたれとの間の距離よりも短く形成されていることを特徴とするトイレを提供するものである。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するための第7の手段として、上記第1乃至第6のいずれかの解決手段において、カバー部を構成する複数の分割片のうち椅子型本体に直結された第一片は、他の分割片よりも揺動方向における幅が長く形成されていることを特徴とするトイレを提供するものである。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するための第8の手段として、上記第1乃至第7のいずれかの解決手段において、カバー部を構成する複数の分割片のうち椅子型本体に直結された第一片とは最も反対側の最終片は引き手を有し、この最終片は、便座の開口部を開き状態としたときに引き手が椅子型本体と背もたれとの間の空間に臨むように配置されることを特徴とするトイレを提供するものである。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するための第9の手段として、上記第1乃至第8の解決手段において、カバー部は、2カ所で連結された3つの分割片から成り、揺動により、複数の分割片のうち椅子型本体に連結されて水平方向に保持された第一片により他の分割片を支持する三角形状に折り畳まれて、便座の開口部を開き状態とすることを特徴とするトイレを提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、2カ所以上で相互に揺動自在に連結された複数の分割片からカバー部を構成しているため、折り畳んでも高さ方向に嵩張ることがなく、背もたれと椅子型本体の間に介護者が手や腕等を差し入れることができる作業スペースを容易に確保することができる実益がある。
【0018】
この場合、本発明によれば、上記のように、カバー部を構成する複数の分割片は、揺動により三角形等の多角形を形成するように折り畳むことができるため、開き状態とした場合にも、カバー部が嵩張ることがなく、作業スペースを容易に確保することができると同時に、カバー部が後方に過分に突出して介護作業の支障となることがない実益がある。
【0019】
また、本発明によれば、上記のように、更に、複数の分割片のうち椅子型本体に直結された第一片により、他の分割片を支持するように折り畳むことができるため、開き状態を安定的に保持することができる実益がある。
【0020】
本発明によれば、上記のように、開き状態において、カバー部を構成する複数の分割片のうち椅子型本体に直結された第一片を、便座とは反対方向、即ち、便座と略水平となるように保持しているため、簡易な構成として容易に製造することが可能でありながら、カバー部を下方から持ち上げる作業が必要なくなり、大きな力を要することなく、かつ、手前に引き出すという1つの操作のみで、簡易に閉め状態とすることができる実益がある。
【0021】
本発明によれば、上記のように、カバー部を構成する各分割片の揺動方向における幅を、椅子型本体と背もたれとの間の距離よりも短く形成しているため、カバー部を、折り畳みながら椅子型本体と背もたれとの間の空間を円滑に通過させて、排泄の支障とはならない椅子型本体の後方にまで円滑に変位させることができる実益がある。
【0022】
本発明によれば、上記のように、カバー部を構成する複数の分割片のうち椅子型本体に直結された第一片は、他の分割片よりも揺動方向における幅が長く形成されているため、折り畳み時における他の分割片の高さを抑制して作業スペースを容易に確保することができると同時に、当該他の分割片を安定的に、かつ、確実に保持することができる実益がある。
【0023】
本発明によれば、上記のように、カバー部を構成する複数の分割片のうち椅子型本体に直結された第一片とは最も反対側の最終片、即ち、閉め状態において最先端に位置する最終片に引き手を設け、この引き手を椅子型本体と背もたれとの間の空間に臨むように配置しているため、この引き手を簡易に把持することができ、手前に引き倒すだけで閉め作業を簡易に行うことができる実益がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1乃至図3は、本発明のトイレ10を示し、このトイレ10は、主に、通常の居室等の任意の箇所に設置されて、介護が必要な方の排泄に使用される。但し、その用途や設置形態は特に問わず、その他、キャンプ場等の屋外施設や、災害時等における緊急用等の簡易型トイレ等として使用することもできる。また、このような可搬的な使用のみならず、介護施設等において固定的に設置される水洗トイレ等として使用することもできる。
【0025】
このトイレ10は、図1乃至図3に示すように、椅子型本体12と、この椅子型本体12に揺動自在に取り付けられたカバー部14と、椅子型本体に支持された背もたれ16とを備えている。
【0026】
<1.椅子型本体>
椅子型本体12は、図1乃至図3に示すように、通常の居室にも違和感なく設置できるように、家具調の外観を有し、通常では、家具として使用することができる。なお、この場合、椅子型本体12の椅子としての形態には特に限定はなく、ユーザーが腰掛けることができ背もたれ16を有すれば、図示とは異なり、ソファ状の形態とすることもできる。
【0027】
一方、この椅子型本体12は、特に図2及び図3に示すように、腰掛け位置の下方に、便器本体18と、この便器本体18の上方に設置される便座20とを備えている。この便器本体18は、図5に示すように、バケツ状の便槽18Aと、この便槽18Aを覆う蓋18Bとから成り、椅子型本体12の内部に着脱自在に設置されて、排泄物を廃棄する際等には、椅子型本体12から取り出すことができる。
【0028】
この蓋18Bは、便槽18A内の臭気が外部に流出するのを防止する役割を有する。また、この蓋18Bは、図5に示すように、介護が必要な方や力の弱い方であっても蓋18Bの開閉や着脱、運搬を容易に行うことができるように、指を挿入することができる取っ手孔18aが形成されている。この取っ手孔18aは、蓋18Bの前方において、便槽18Aの周縁に係合する部分よりも外周側にはみ出して形成されたフランジ部分に左右の2カ所に形成されている。これにより、臭気を遮断しつつ、容易に着脱することができる。この取っ手孔18aを有する蓋18Bは、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂製材料を射出成形することにより製造することができる。なお、この蓋部18Bには、この取っ手孔18aの他に、図5に示すように、取っ手突起18bを設置することもできる。更には、便槽18Aに、図示しない揺動自在な持ち手を取り付けることにより、着脱や運搬作業を容易に行うことができる。
【0029】
なお、便座20は、椅子型本体12に揺動自在に取り付けられ、使用時には、一旦上方へ揺動させて、便器本体18の蓋部18Bを取り外してから、再度、下方に揺動させることにより、ユーザーが、便座20に着座して、その開口部を通じて排泄を行うことができる。
【0030】
<2.背もたれ>
背もたれ16は、図1乃至図3に示すように、椅子型本体12の背部において、脚立により支持されて、椅子型本体12の着座面との間に空間が形成されるように保持されている。なお、この背もたれ16は、ユーザーの腰部、あるいは、腰部直上付近の背中に当接するような高さに設置することができる。これにより、ユーザーが心地よさを感じることができると同時に、使用時においてユーザーを確実に支えることができる。
【0031】
<3.カバー部>
カバー部14は、図1乃至図3に示すように、便座20の開口部を開閉自在に覆い、通常では、図1に示すように、家具調の外観を有するトイレ10の座面として使用される。従って、ある程度の厚み及びクッション性を有し、椅子としての使用にも充分に耐えることができるように形成する。但し、後述する開閉作業を容易に行うためにも、充分な強度を確保しつつも、可能な限り、軽量化することが望ましい。
【0032】
このカバー部14は、本発明においては、図1乃至図4に示すように、2カ所以上で相互に揺動自在に連結された複数の分割片から成っている。図示の実施の形態では、より具体的には、2ヵ所で揺動自在に連結された3つの分割片、即ち、椅子型本体12に揺動自在に直結された第一片14Aと、この第一片14Aに揺動自在に連結された第二片14Bと、この第二片14Bに更に揺動自在に連結されて最終片となる第三片14Cとから成っている。
【0033】
これらの3つの分割片のうち、椅子型本体12に直結された第一片14Aは、特に、図2及び図3に示すように、椅子型本体12の座面部の後端付近に揺動自在に取り付けられ椅子型本体12に対して、椅子型本体12の前後方向に向けて揺動する。また、図1乃至図4に示すように、次の第二片14Bは、この第一片14Aの揺動方向における端面に揺動自在に連結され、更に続く第三片14Cも、同様に、第二片14Bの揺動方向における第1片14Aとは反対側の端面に揺動自在に連結されている。従って、第一片14Aと同方向に向けて揺動自在に連結された第二片14B及び第三片14Cも、椅子型本体12の前後方向に向けて揺動することができ、これにより、カバー部14全体として、椅子型本体12に対して、その前後方向に揺動することができる。
【0034】
この場合、これらの複数の分割片のうち、特に、椅子型本体12に直結された第一片14Aは、図2及び図3に示すように、トイレ10の後方へ揺動後、トイレ10の背面において、便座20とは反対方向を向くように保持されて椅子型本体12から突出する。より具体的には、L型ヒンジ22により、トイレ10の後方に向けて水平となるように揺動自在に椅子型本体12に取り付けられ、その水平位置より下方には揺動しないように設定されている。但し、この第一片は、設定上水平状態となるように設置されていれば、カバー部14の自重により多少下方に撓むことがあってもよい。
【0035】
一方、他の分割片14B、14Cは、図2乃至図4に示すように、それぞれ隣接する他の分割片とは、ヒンジ24により揺動自在に連結されている。この場合、これらの分割片14A乃至14Cは、上記の通り、ある程度の厚みを有するため、第二片14B及び第三片Cも、それぞれ隣接する他の分割片の端面に当接することにより、それ以上の揺動が規制される。従って、水平方向に向けて突出するように設定された第1片14Aに連結された他の分割片14B、14Cも、第1片14Aを、その裏面が上方を向いて便座20とは反対方向に向けて水平に保持された状態では、同様に、それより下方に向けて(カバー部14の表面側に向けて)揺動することが規制され、カバー部14の裏面側に向けて内側にのみ揺動することができる状態となる。
【0036】
これにより、カバー部14を構成する複数の分割片14A乃至14Cは、トイレ10の後方へ向けて揺動させることにより、図2及び図3に示すように、少なくとも第一片14Aを底辺とする多角形を形成するように、具体的には、2ヵ所で揺動自在に連結された3つの分割辺14A乃至14Cから成る図示の実施の形態のカバー部14においては、第二片14B及び第三片14Cがカバー部14の裏面側に向けてそれぞれ揺動することにより、トイレ10を側面から見た場合に三角形を形成するように折り畳まれて、椅子型本体12と背もたれ16との間の空間を通過して、椅子型本体12の後方に変位することができ、これにより、便座20の開口部を、図1に示す閉め状態から、図2及び図3に示す開き状態とすることができる。
【0037】
この場合、カバー部14を構成する複数の分割片は、椅子型本体12に直結された第一片14Aにより他の分割片14B、14Cを支持するように折り畳まれ、第二片14B及び第三片14Cは、椅子型本体12に直結されて水平に保持される第一片14Aの上方に位置することになる。従って、この第一片14Aは、特に図3及び図4から解るように、他の分割片14B、14Cよりも揺動方向における幅が長く形成することが望ましい。これにより、相対的に他の分割片14B及び14Cの揺動方向における幅を小さくすることができ、折り畳み時における他の分割片14B及び14Cの高さを抑制して、後述する作業スペース26を容易に確保することができると同時に、これらの他の分割片14B及び14Cを安定的に、かつ、確実に保持することができる。
【0038】
また、これらの各分割片14A乃至14Cの揺動方向における幅は、図1乃至図3に示すように、椅子型本体12と背もたれ16との間の距離よりも短く形成されている。従って、カバー部14を、折り畳みながら椅子型本体12と背もたれ16との間の空間を円滑に通過させて、図2及び図3に示すように、排泄の支障とはならない椅子型本体12の後方にまで円滑に変位させることができる。
【0039】
加えて、このように各分割片14A乃至14Cの幅を短く設定し、かつ、2ヵ所以上で相互に揺動自在に連結さらたこれらの複数の分割片14A乃至14Cを、更に上記のように、いわば第一片14Aを底辺とする多角形状(図示の実施の形態では、三角形状)に折り畳んで保持することにより、折り畳まれた各分割片14A乃至14Cが高さ方向に嵩張ることがない。これにより、カバー部14を構成する複数の分割片14A乃至14Cは、図2及び図3に示すように、便座20の開口部を開き状態とした状態で、背もたれ16と椅子型本体12との間に、介護者がトイレ10の後方から腕を入れることができる作業スペース26を形成するように、折り畳むことができる。この場合、同時に、三角形等の多角形を形成するように折り畳むことができるため、開き状態とした場合にも、カバー部14が嵩張ることがなく、カバー部14が後方に過分に突出して介護作業の支障となることもない。
【0040】
更に、カバー部14を構成する複数の分割片14A乃至14Cのうち、椅子型本体12に直結された第一片14Aとは最も反対側の最終片、即ち、図示の実施の形態においては、第三片14Cは、図1乃至図4に示すように、その表面上にベルト状に設置された引き手28を有する。この引き手28は、ユーザー等がカバー部14を揺動させる際に手を差し入れて、カバー部14を把持するためのものである。
【0041】
この場合、本発明においては、上記のように、複数の分割片14A乃至14Cを裏面側に折り曲げて形成される多角形状(図示の実施の形態では、三角形状)に折り畳んでいるため、この持ち手28を有する最終片(第三片14C)が、図2及び図3に示すように、便座20の開口部を開き状態としたときに引き手28が椅子型本体12と背もたれ16との間の空間に臨むように配置される。これにより、図1に示す閉め状態では勿論のこと、図2及び図3に示す開き状態においても、持ち手28を容易に把持することができ、開閉作業を円滑に行うことができる。なお、この最終片(第三片14C)の端面は、図3に示すように、第一片14Aに係合させることもができるが、揺動による開閉角度を調整して、椅子型本体12の後端部に係合させることもできる。これにより、より安定的に、開き状態とした場合のカバー部14を支持することができる。
【0042】
なお、図示の実施の形態においては、カバー部14を、2ヵ所において相互に揺動自在に連結される3つの分割片14A乃至14Cから形成したが、作業スペース26の確保や円滑な開閉作業に影響を与えなければ、3ヵ所以上において揺動自在に連結される4つ以上の分割片とすることができるのは、勿論である。
【0043】
<4.使用方法>
次に、本発明のトイレ10の使用状態について説明すると、通常時では、図1に示すように、カバー部14を閉め状態として、いわば椅子等の家具として使用することができる。一方、排泄等のトイレ10としての使用をする場合には、引き手28を把持して、カバー部14を、後方へ押しやることにより、図2及び図3に示すように、トイレ10の後方において三角形状に折り畳んで保持することにより、便座20の開口部を開き状態として使用する。この場合、介護者が、作業スペースから腕などを差し入れて、排泄後の拭き取り処理等の介護作業を円滑に行うことができる。
【0044】
一方、使用後に、再び、カバー部14を、閉め状態とする場合には、引き手28を把持して、手前に引き倒すという1つの操作のみで、便座20の開口部を閉め状態とすることができる。この場合、特筆すべきは、上記のように、作業スペース26を確保しつつ、同時に、カバー部14を下方から持ち上げる作業が必要なくなり、大きな力を要することなく容易に閉め状態とすることができると同時に、持ち上げ及び引き倒しという複数の異なる作業をすることなく、手前に引き出すという1つの操作のみで、簡易に閉め状態とすることができる点である。更には、これらの利便性を、溝やレール等の複雑な機構を要せず、ヒンジ22、24という簡易な構成のみで達成しているため、簡易な構成で、かつ、低コストで製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、主に、居室等の任意の箇所に設置可能な介護用の簡易型トイレとして使用することができるほか、介護施設における固定式の水洗トイレや、また、キャンプ場等の屋外施設におけるトイレ、災害時における非常用のトイレ等として広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のトイレの閉め状態を示し、同図(A)はその斜視図、同図(B)はその側面図である。
【図2】本発明のトイレの開け状態における斜視図である。
【図3】本発明のトイレの開け状態における側面図である。
【図4】本発明のトイレに使用されるカバー部を示し、同図(A)は、その平面図、同図(B)はその底面図である。
【図5】本発明のトイレに使用される便器本体の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10 トイレ
12 椅子型本体
14 カバー部
14A 第一片(分割片)
14B 第二片(分割片)
14C 第三片(分割片)
16 背もたれ
18 便器本体
18A 便槽
18B 蓋
18a 取っ手孔
18b 取っ手突起
20 便座
22 L型ヒンジ
24 ヒンジ
26 作業スペース
28 引き手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体を備えた椅子型本体と、前記便器本体の上方に設置される便座と、前記椅子型本体に揺動自在に取り付けられて前記便座の開口部を開閉自在に覆うカバー部と、前記椅子型本体に支持された背もたれとを備えたトイレにおいて、前記カバー部は、2カ所以上で相互に揺動自在に連結された複数の分割片から成っていることを特徴とするトイレ。
【請求項2】
請求項1に記載されたトイレであって、前記カバー部を構成する前記複数の分割片は、揺動により多角形を形成するように折り畳まれて、前記椅子型本体と前記背もたれとの間の空間を通過して前記椅子型本体の後方に変位することにより前記便座の開口部を開き状態とすることを特徴とするトイレ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載されたトイレであって、前記カバー部を構成する前記複数の分割片は、前記椅子型本体に直結された第一片により他の前記分割片を支持するように折り畳まれることを特徴とするトイレ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたトイレであって、前記カバー部を構成する前記複数の分割片のうち前記椅子型本体に直結された第一片は、前記椅子型本体に対して揺動することにより前記便座とは反対方向を向くように保持されて前記椅子型本体から突出することを特徴とするトイレ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたトイレであって、前記カバー部を構成する前記複数の分割片は、前記便座の開口部を開き状態とした状態で、前記背もたれと前記椅子型本体との間に、腕を入れることができる作業スペースを形成するように折り畳まれることを特徴とするトイレ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載されたトイレであって、前記カバー部を構成する各前記分割片の揺動方向における幅は、前記椅子型本体と前記背もたれとの間の距離よりも短く形成されていることを特徴とするトイレ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載されたトイレであって、前記カバー部を構成する前記複数の分割片のうち前記椅子型本体に直結された第一片は、他の前記分割片よりも揺動方向における幅が長く形成されていることを特徴とするトイレ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載されたトイレであって、前記カバー部を構成する前記複数の分割片のうち前記椅子型本体に直結された第一片とは最も反対側の最終片は引き手を有し、前記最終片は、前記便座の開口部を開き状態としたときに前記引き手が前記椅子型本体と前記背もたれとの間の空間に臨むように配置されることを特徴とするトイレ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載されたトイレであって、前記カバー部は、2カ所で連結された3つの分割片から成り、揺動により、前記複数の分割片のうち前記椅子型本体に連結されて水平方向に保持された第一片により他の前記分割片を支持する三角形状に折り畳まれて、前記便座の開口部を開き状態とすることを特徴とするトイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−212217(P2008−212217A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50128(P2007−50128)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(391001457)アイリスオーヤマ株式会社 (146)
【Fターム(参考)】