説明

トナーの製造方法

【課題】OHPシート上に形成された画像の透明性が良好であり、軽圧定着の定着手段を用いた場合でも色再現性に優れ、着色力及び帯電性が良好であり、フィルミングの発生が抑制されたイエロートナーを製造する方法を提供する。また、画像形成装置の構成の簡略化や小型化に貢献できる耐久性に優れたイエロートナーを製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、着色剤と結着樹脂の一部とを水の存在下で加熱混合して、含水率が5〜25質量%の含水着色剤マスターバッチを得る工程;少なくとも該含水着色剤マスターバッチと残りの結着樹脂とを溶融混練し、混練物を得る工程;及び該混練物を粉砕してトナーを得る工程;を有するトナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法及びトナージェット法のような画像形成方法に用いられるイエロートナー、該イエロートナーを用いた画像形成装置及びトナーの製造方法に関する。本発明は、特にオイルレス定着方法を用いた画像形成方法に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
フルカラー複写装置やプリンターにおいては、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー及びブラックトナーなどを用い、減色混合作用を利用して各色のトナーを重ね合わせることで現像し、現像により形成された各色のトナー画像をOHPシートや普通紙等の転写材上に最終的に重ね合わせて転写し、転写材上に重ね合わせたトナー画像を転写材に定着させることで所望のカラー画像を形成している。このためカラートナーでは、混色した際に上部のトナー層が下部のトナー層の色を妨げない透明性を有することが必要である。トナーの透明性が悪い場合には、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)用のシートに画像を形成し、この画像をOHPで投影したときの投影画像の色度が変化し、目的の色彩を得られなくなったり、トナーを重ね合わせた時に下部のトナーの色が出ないなど、色再現範囲が狭くなったりしてしまう。また、昨今のエコロジーの観点からスタンバイ時に殆ど電力を使わないオンデマンド定着が好ましく用いられるが、オンデマンド定着では通常のローラー定着と比して軽圧での定着になりがちであり、透明性の悪いトナーを用いると色再現範囲が更に狭くなってしまう傾向がある。
【0003】
更に近年、複写装置やプリンターは、省スペース、省エネルギーなどの要求から、より小型、より軽量そしてより高速、より高信頼性が厳しく追求されてきており、機械は種々な点でよりシンプルな要素で構成されるようになってきている。その結果、トナーに要求される性能はより高度になり、トナーの性能向上が達成できなければより優れた画像形成が成り立たなくなってきている。例えば、本体構成の重要な部分である電源に関しては、各色の現像における現像バイアスを共通化することができれば、必要電源の数を減らすことができ、これを実現するためには、各色トナーの帯電性を同じように制御することが必要とされる。
【0004】
以上の色や帯電性の検討において、カラートナーの中でも特にイエロートナーはその色相角の変化に対する人間の感度が高く、透過光の色度変化が感じられやすい。また帯電性についてもシアントナーやマゼンタトナーと比較するとかなり高いものであり、できるだけイエロー着色剤のトナーへの添加量を減らす工夫をするなどの改善を必要とするものであった。そこで、このような問題点を解決するために、下記式(1)で表されるモノアゾ系のイエロー顔料が反射色の色彩や着色力に優れていることからカラートナーに利用することが望まれるが、合成後に乾燥や加熱した際に顔料の一次粒子の結晶成長が生じやすく、透明性に問題が生じやすいため、トナーに十分に活用されるには至っていない。よって顔料の凝集及び一次粒子の成長を抑制し、顔料粒径を小さいままで、如何にトナー中に分散するかが課題となっていた。
【0005】
【化1】

【0006】
このような顔料分散の課題に対しては、一般に顔料合成後、粉末にすることなく含水状態(ペースト顔料)で樹脂と加熱混合後、乾燥ペレット化したり、粉末顔料を水及び樹脂と加熱混合後、乾燥ペレット化したりすることにより、顔料分散性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0007】
また、顔料に添加剤を加えて顔料分散性を向上させることや、顔料と樹脂との混練時に添加剤を入れることなども提案されている(例えば、特許文献5〜7参照)。
【0008】
しかしながら、本発明者等の検討によると、上記のようなペースト顔料の形態として用いる方法、樹脂と顔料の混練時に水を添加する方法、或いは、樹脂と顔料の混練時に添加剤を用いる方法では、顔料の一次粒子の成長を十分に抑制することはできず、透過性や色相に関して、未だ改善の余地があった。またその他、帯電の立ち上がりが悪いものであったり、帯電性を他色と揃えるようにコントロールできるものではなかった。また分散性を高めようと異種の原料(添加剤)を顔料に混合する方法では、分散性は改良されるが、顔料自体の色味が変化したり、感光ドラムへのフィルミングが起こったりするなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2910945号明細書
【特許文献2】特開平6−148937号公報
【特許文献3】特開平6−161154号公報
【特許文献4】特開2002−129089号公報
【特許文献5】特開平7−128911号公報
【特許文献6】特開平7−28277号公報
【特許文献7】特開平9−258487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みなされたものであり、OHPシート上に形成された画像の透明性が良好であり、軽圧定着の定着手段を用いた場合でも色再現性に優れ、着色力及び帯電性が良好であり、フィルミングの発生が抑制されたイエロートナー、画像形成装置の構成の簡略化や小型化に貢献できる耐久性に優れたイエロートナーを製造し得るトナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)少なくとも、着色剤と結着樹脂の一部とを水の存在下で加熱混合して、含水率が5〜25質量%の含水着色剤マスターバッチを得る工程;少なくとも該含水着色剤マスターバッチと残りの結着樹脂とを溶融混練し、混練物を得る工程;及び該混練物を粉砕してトナーを得る工程;を有するトナーの製造方法。
(2)前記混練物を得る工程における混練樹脂温度Tmix(℃)が、前記結着樹脂の軟化点温度Tm(℃)に対して、Tmix≦Tm+20の関係を満足する、(1)に記載の
トナーの製造方法。
(3)前記トナーを得る工程により得られるトナーが結着樹脂及び着色剤を含有し、
前記結着樹脂が少なくともポリエステルユニットを含有し、
粉体状態における明度LがL>87を満足し、且つ色度bが106<b<120を満足するイエロートナーである、(1)又は(2)に記載のトナーの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、OHPシート上に形成された画像の透明性が良好であり、軽圧定着の定着手段を用いた場合でも色再現性に優れ、着色力及び帯電性が良好であり、フィルミングの発生が抑制されたイエロートナーを提供することができる。
また、本発明によれば、画像形成装置の構成の簡略化や小型化に貢献できる耐久性に優れたイエロートナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】摩擦帯電量を測定する装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、特定の結着樹脂を用い、且つ、粉体状態でのトナーの明度及び色度を特定の範囲とすることで、優れた透明性と着色力を有し且つ画像形成装置の構成の簡略化や小型化に貢献できるトナーに到達したものである。
【0015】
本発明のイエロートナー(以下、単に「トナー」と表記することがある)は、粉体状態における明度LがL>87を満足し、且つ色度bが106<b<120を満足する。画像形成装置本体の構成はトナーにとって当然大きな影響を与えるものである。特に色に関しては定着システム、例えば定着温度、定着圧力、定着速度、定着ローラーなどの材質硬度等により、同一トナーを用いても光沢があるものやないもの、明るい画像や暗い画像など、様々な反射画像が得られる。即ち、同じトナーを用いた場合でも、画像形成に用いた装置の構成や環境などの外的要因の影響を受けるため、常に同一の定着画像を得ることが難しい。従って、トナー自体の色に関する表現力の評価は、該トナーの定着画像を用いて行うよりも、トナー自体の色を直接測定して評価することが有効である。
【0016】
色を数値化して表すもの(色空間)にL表色系がある。このL表色系は明度Lと色度を表すaとbからなり、aは赤方向、bは黄方向の色度を示す。イエロートナーに関して重要な項目は、Lとbである。即ちイエロートナーにおいて、Lは透明性に関与するパラメータと捉えることができ、bは着色力に関与するパラメータとして捉えることができる。本発明のイエロートナーは、粉体状態において87<Lであり、且つ106<b<120である。L及びbを上記範囲に特定することにより、優れた透明性と着色力を有するイエロートナーを得ることができる。このような本発明の効果をより発揮する上で、明度Lは好ましくは88<L、より好ましくは90<Lであり、色度bは好ましくは108<b<120、より好ましくは112<b<120である。
【0017】
87≧Lだと透明性に欠けるため、色を重ね合わせた時の混色性が劣り、色再現範囲が狭くなる。bに関しては数値が上がるほど着色力が高くなるため、画像上における黄色の再現だけに着目すると、bが高いことは好ましいものであるが、b≧120のように高すぎると、多色画像を作る上で必要なイエロートナーが少なすぎ、他色のトナーとの混色のバランスが悪くなり、色ムラが発生してしまうことがある。例えばグリーンを表現する場合、イエローとシアンを混色させてグリーンを表現するが、その時イエローの使用量がシアンに対して非常に少なく、シアントナー中にイエロートナーがまばらに存在す
るようになるため、シアンのドットが発生してしまうことがある。
【0018】
よってLとbに関しては、混色、色ムラの点で、87<L且つ106<b<120を同時に満たすことが重要となる。
【0019】
なお、本発明におけるイエロートナーとは、例えばシアン、マゼンタ、イエローの3色又はそれにブラックを加えた4色を用いてフルカラー画像を形成する際に用いられるトナーであるが、上記以外の他色のトナーと合わせて用いることも可能である。
【0020】
粉体状態において87<Lであり、且つ106<b<120であるイエロートナーを得るためには、トナー中におけるイエロー着色剤の分散状態が、従来以上に細かく且つ均一になっていることが必要である。
【0021】
従来、トナーの製造方法としては、一部の結着樹脂と着色剤とを前混合し、着色剤濃度の高い着色剤分散樹脂、所謂、“着色剤マスターバッチ”を調製してから、その後、該着色剤マスターバッチと残りの結着樹脂及びその他の成分とを混合することによって、着色剤のトナー中の分散性を向上させる方法が知られていた。着色剤マスターバッチの調製としては、例えば、着色剤合成後、粉末状態を経ていない(乾燥させていない)含水状態の着色剤(ペースト着色剤)と樹脂とを加熱混合後、乾燥ペレット化してマスターバッチを調製したり、粉末着色剤、水及び樹脂を加熱混合後、乾燥ペレット化したりしてマスターバッチを調製する、フラッシング処理による方法が挙げられる。確かにフラッシング処理を行うことにより着色剤の分散性は向上するが、樹脂との加熱混合後、乾燥ペレット化するための熱量によってイエロー着色剤の粒子を成長させている弊害があった。またこの着色剤マスターバッチと樹脂や荷電制御剤、そして離型剤を混合する混練工程を行う工程において必要以上に熱量を与えることで、更にイエロー着色剤の粒子を成長させている弊害もあった。
【0022】
本発明のイエロートナーを製造するためには、例えば、次のような製造方法が挙げられる。
先ず、着色剤マスターバッチを調製するに際し、ペースト着色剤を用いたり水を添加したりするなどして、水の存在下にて樹脂と着色剤とを加熱混合し、樹脂中に着色剤を分散させる。その後、通常ならば水を蒸発させて着色剤マスターバッチを乾燥させてしまうところを、必要最低限の熱量を付与するに留め、着色剤マスターバッチ中の水を完全に蒸発させずに、水分を残したままとし、次工程(通常は、溶融混練工程)に用いる。できるだけイエロー着色剤に熱量を与えないことで、着色剤の成長を抑制し、微小な着色剤をトナー粒子中に分散させることができるようになる。
【0023】
水を含有する着色剤マスターバッチ(含水着色剤マスターバッチ)の含水量は、トナー品質にも大きな影響を与える。本発明における所望の着色剤マスターバッチの含水量は5〜25質量%であり、好ましくは8〜20質量%である。5質量%未満まで含水量を減らした場合には、余分な熱量をイエロー着色剤に与えてしまい、結果として粒子成長させる弊害を起こしてしまうことがある。逆に、含水量が25質量%より多いと、トナーの原材料の混合時に装置壁面への付着物や不均一な凝集塊などが発生したり、また混練機への投入安定性が低下したりするために、トナー粒子への着色剤の良好な分散が困難となり、色均一性や帯電均一性が低下してしまいやすい。
【0024】
即ち、本発明においては、少なくとも、着色剤と結着樹脂の一部とを水の存在下で加熱混合して、含水率が5〜25質量%の含水着色剤マスターバッチを得る工程;少なくとも該含水着色剤マスターバッチと残りの結着樹脂とを溶融混練し、混練物を得る溶融混練工程;及び該混練物を粉砕してトナーを得る粉砕工程;を経てトナーを製造することが好ま
しい。
【0025】
また、含水着色剤マスターバッチと他のトナー材料(結着樹脂、離型剤、荷電制御剤など)との溶融混練工程においては、混練樹脂温度Tmix(℃)を、結着樹脂の軟化点温度Tm(℃)に対して、Tmix ≦ Tm+20を満たす範囲とすることが好ましい。混練樹脂温度Tmixを上記のような値とすることによって、過度の熱量がイエロー着色剤に付与されるのを防ぎ、イエロー着色剤の粒子成長を抑制することができる。通常用いられる乾燥した着色剤マスターバッチを用いて他のトナー材料との混練を行った場合には、Tmix ≦ Tm+20を満足するように混練樹脂温度Tmixを制御することは極めて困難であり、混練を続けるにつれて温度上昇し、Tmix > Tm+20となってしまうことがある。また、温度を過度に低く設定した場合には、樹脂粘度が高く混練自体が困難となる。それに対し、上述したような適度な含水量の着色剤マスターバッチを用いると、混練温度の設定やスクリュー回転数などの調整と共に、水の気化熱により低温での混練制御が可能となる。
【0026】
尚、本発明における“混練樹脂温度(Tmix)”とは、溶融混練工程終了直後の樹脂温度のことであり、混練機より排出された直後の樹脂温度を測定することにより求める。
【0027】
結着樹脂の軟化点温度Tm(℃)は、高すぎると定着性に劣り、低すぎるとトナーの保存性が悪くなることから、90≦Tm≦140が好ましく、より好ましくは95≦Tm≦130である。
【0028】
更に、結着樹脂と着色剤とを混練する際、或いは、着色剤マスターバッチを経る場合には着色剤マスターバッチを作製する際に、用いる着色剤の粒度分布をコントロールすることにより、上述してきた着色剤の粒子を成長させない効果が一層強められることが分かった。本発明における樹脂と混練する際の着色剤の粒度分布は、個数基準の粒度分布におけるメジアン径Dが100nm以下であり、且つ粒径150nm以上の粒子頻度D150が12%以下であることが好ましい。このような粒度分布の着色剤を出発材料として用いることにより、マスターバッチ作製工程及びトナー材料の溶融混練工程における着色剤の粒子成長を抑制する効果をより発揮することができる。このような本発明の効果を更に強調するためには、上記粒径分布におけるメジアン径Dが40〜90nmであり、粒子頻度D150が8%以下であることがより好ましい。D150>12%だと大きな粒子が多数存在しているため、それら大きな粒子が成長の核となり、かなり大きな着色剤粒子を形成してしまうことがある。このため、できるだけ大きな粒径の粒子を含まないものが好ましい。また、メジアン径Dが100nmを超えると、着色剤自体の粒径が大きすぎるため、透明性と着色力に関して劣るようになる。逆に、Dが40nmだと耐候性に劣る傾向があり、好ましくない。
【0029】
上記のようにして製造されたイエロートナーは、トナー粒子中におけるイエロー着色剤の分散状態が、従来以上に細かく且つ均一になっているため、106<bのように高着色力なものとしながらもトナー中のイエロー着色剤の量自体を少なくすることができる。一般にイエロー着色剤は、他色の着色剤に比べて帯電性が高いため、イエロートナーを用いた現像においては、他色とほぼ同じ現像コントラストにして他色と共通の現像バイアスを用いて行うことが困難であったが、本発明のイエロートナーは、イエロー着色剤の含有量を減らしても十分な着色力が得られるため、イエロー着色剤の含有量を減らして帯電への影響を最小限に抑えることができる。これによって、他色とほぼ同じ現像コントラストが達成でき、結果、他色と共通化した現像バイアス供給手段によって印加される現像バイアスを用いることができ、画像形成装置の構成の簡略化、小型化が可能となる。
【0030】
また、トナーの帯電性を制御するために、トナーの大部分である結着樹脂の帯電性を制
御していくことも重要である。特に、帯電の立ち上がりに関しては結着樹脂が大きく関与するため、立ち上がり性に優れたポリエステルユニットを含有する結着樹脂を用いることが有効である。本発明のトナーに用いられるポリエステルユニットを含有する結着樹脂は、帯電の立ち上がり性と離型剤の分散性から、(a)ポリエステル樹脂、(b)ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとが化学的に結合したハイブリッド樹脂、(c)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(d)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、(e)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、又は(f)ポリエステル樹脂、ハイブリッド樹脂、及びビニル系共重合体との混合物、のいずれかから選択される樹脂が好ましい。
【0031】
更に、上記本発明で用いる結着樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるTHF(テトラヒドロフラン)可溶分の分子量分布において、メインピークを分子量3,500〜30,000の領域に有しており、より好ましくは分子量5,000〜20,000の領域に有しており、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが5.0以上であることが好ましい。
【0032】
メインピークが分子量3,500未満の領域にある場合には、トナーの耐ホットオフセット性が不十分となる傾向がある。一方、メインピークが分子量30,000超の領域にある場合には、十分な低温定着性が得られなくなり、高速定着への適用が難しくなる。また、Mw/Mnが5.0未満である場合には良好な耐オフセット性を得ることが難しくなる。
【0033】
なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系共重合体ユニット」とはビニル系共重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分が挙げられる。
【0034】
結着樹脂としてポリエステルユニットを含むポリエステル樹脂を用いる場合は、多価アルコールと多価のカルボン酸、カルボン酸無水物又はカルボン酸エステル等が原料モノマーとして使用できる。具体的には、例えば2価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、又はエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0035】
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0036】
酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換されたこはく酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
【0037】
それらの中でも、特に、下記一般式(2)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして良好な帯電特性を有するので好ましい。
【0038】
【化2】

(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を示し、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2〜10である。)
【0039】
また、本発明で用いる結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、該樹脂は架橋構造を有していてもよい。架橋部位を有するポリエステル樹脂を形成するための3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、及びこれらの無水物やエステル化合物が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸成分の使用量は、ポリエステル樹脂を構成する全モノマーを基準として0.1〜1.9mol%が好ましい。
【0040】
更に、結着樹脂としてポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを有するハイブリッド樹脂を用いる場合、更に良好なワックス分散性と、低温定着性,耐オフセット性の向上が期待できる。本発明に用いられる「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系共重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合されてなる樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルのようなカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系共重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系共重合体ユニットを幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(又はブロック共重合体)を形成するものである。また、本発明において「ハイブリッド樹脂成分」とは、上記ハイブリッド樹脂を構成する成分(即ち、ビニル系共重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された構造を有する樹脂成分)を示す。
【0041】
ビニル系共重合体ユニット及びビニル系共重合体を生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなものが挙げられる。スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンなどのスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンなどの不飽和ポ
リエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0042】
更に、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物などの不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルなどの不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸などの不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸などのα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物などのα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルなどのカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0043】
更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンなどのヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
【0044】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル系共重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0045】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0046】
本発明においてビニル重合体を製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート,ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
【0047】
ハイブリッド樹脂中のポリエステルユニットを合成する際に用いられる酸成分及びアルコール成分としては、上記のポリエステル樹脂を合成する際に用いられる酸成分及びアルコール成分を用いることができる。
【0048】
本発明のトナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
【0049】
(1)ビニル系共重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って合成することができる。
【0050】
(2)ビニル系共重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系共重合体
ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/又はポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0051】
(3)ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系共重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/又はビニル系共重合体ユニットとの反応により製造される。
【0052】
(4)ビニル系共重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂成分が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0053】
(5)ハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及び/又はポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系共重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂成分は上記(2)〜(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。更に、適宜有機溶剤を使用することができる。
【0054】
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系共重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分が製造される。更に、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0055】
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル系共重合体ユニット及び/又はポリエステルユニットは複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
【0056】
なお、本発明のイエロートナーに含有される結着樹脂は、上記ポリエステルとビニル系共重合体との混合物、上記ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、上記ポリエステル樹脂と上記ハイブリッド樹脂との混合物、又は上記ポリエステル樹脂、ハイブリッド樹脂及びビニル系共重合体の混合物を使用しても良い。好ましくはハイブリッド樹脂を含有することである。
【0057】
本発明のトナーに含有される結着樹脂のガラス転移温度は40〜90℃であることが好ましく、より好ましくは45〜85℃である。樹脂の酸価は1〜40mgKOH/gであることが好ましい。
【0058】
また本発明のイエロートナーには、公知の電荷制御剤を使用することもできる。例えば、有機金属錯体、金属塩、キレート化合物で、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体などが挙げられる。その他には、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類などのカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体なども挙げられる。また、ビスフェノール類、カリックスアレーンなどのフェノール誘導体なども用いられる。これら電荷制御剤の中では、芳香族カルボン酸の金属化合物が帯電立ち上がりの観点から好ましく用いられる。
【0059】
本発明に用いられる電荷制御剤は、結着樹脂100質量部に対する含有量が0.2〜1
0質量部、好ましくは0.3〜7質量部となるように使用することが好ましい。0.2質量部未満であると帯電立ち上がりの効果が得られず、10質量部より多いと環境変動が大きくなるためである。
【0060】
本発明のイエロートナーは、以下に挙げるような離型剤を含有していてもよい。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系ワックスのブロック共重合物;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものなどが挙げられる。
【0061】
また、ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。特に好ましく用いられるワックスとしては、分子鎖が短く、且つ立体障害が少なくモビリティに優れる、パラフィンワックス、ポリエチレン、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスである。
【0062】
離型剤の分子量分布では、メインピークが分子量350〜2,400の領域にあることが好ましく、400〜2,000の領域にあることがより好ましい。このような分子量分布をもたせることによりトナーに好ましい熱特性を付与することができる。
【0063】
本発明に用いられる離型剤の示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲に1個又は複数の吸熱ピークを有し、該吸熱ピーク中の最大吸熱ピークの温度Tscが、60℃<Tsc<110℃の範囲であることが好ましく、70℃<Tsc<90℃の範囲であることがより好ましい。Tscが60℃以下だとトナーのブロッキング特性に劣り、110℃以上だと省エネの観点から望まれる低温定着を十分には行うことができない。
【0064】
本発明に用いられる離型剤の添加量として、結着樹脂100質量部に対して1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部使用するのが良い。1質量部より少ないと添加量が少ないため、溶融時に離型剤がトナー表面に出てその離型性を発揮するためにはかなりの熱量及び圧力をかけなければならないためである。逆に10質量部を超えるとトナー中での離型剤量が多すぎるので、透明性や帯電特性が劣ってしまうことがあり、好ましくない。
【0065】
上述したように、結着樹脂、着色剤及び離型剤は、それぞれ互いに帯電性が大きく異なるものであり、故にトナーの大部分である結着樹脂の帯電性を制御することにより、トナーの帯電性を制御していくことが大切である。同時に、イエロー着色剤の添加量をできるだけ少なくして、イエロー着色剤の帯電性のトナーへの影響を最小限にして他色のトナーの帯電性と同等にすることが有効である。よって、本発明に用いられるイエロートナーの着色剤としては、着色力が高く、また顔料合成直後は比較的分子量が低いため粒径が小さい、モノアゾ基を有するものが好適である。例えば、モノアゾ顔料であればC.I.ピグメントイエロー1,2,3,5,6,65,73,74,75,97,98,120,151,168,169,191,194等が挙げられる。その中でも下記式(3)で表される構造を有するのもの、例えばC.I.ピグメントイエロー74,97,194が好ましい。
【0066】
【化3】

(式中、R〜Rのうち少なくとも1つは−OCHであり、残りは−H、−NO、−CH、−Cl、−SOH及び−SONHCから選ばれる基を示す。R〜R10は−H、−CH、−OCH、−OC、−NO、−Cl及び−SOHから選ばれる基を示す。また、RとRで−NH−CO−NH−を形成してもよい。)
【0067】
上記式(3)で表される着色剤のうち、特に好ましくは下記構造を有するC.I.ピグメントイエロー74である。
【0068】
【化4】

【0069】
なお、着色剤の使用量は結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部、好ましくは3〜8質量部である。
【0070】
また、上述したように、本発明のトナーを製造する際に、着色剤マスターバッチを作製して他のトナー材料と混合させる際には、出発材料としての着色剤の粉体状態及び含水ペースト状態でのメジアン粒径が100nm以下(より好ましくは40〜90nm)、個数粒径分布における粒径150nm以上の粒子頻度D150が12%以下(より好ましくは8%以下)であることが好ましい。
【0071】
即ち、粉体状態における明度LがL>87を満足し、且つ色度bが106<b<120を満足する本発明のイエロートナーを製造する好適な方法の一つとして、着色剤に上記モノアゾ基を有する顔料(モノアゾ顔料)を用い、且つ特定のマスターバッチ化工程を経てトナーを製造する方法が挙げられる。このときのマスターバッチ化工程とは、結着樹脂の一部に着色剤を均一分散させる加熱混合時に、材料に加える熱量を最低限に留めて着色剤の粒子成長を抑制し、特定範囲の含水量(5〜25質量%、好ましくは8〜20質量%)を有する含水マスターバッチを製造することである。
【0072】
次に、本発明のイエロートナーを製造する手順について説明する。
本発明のイエロートナーは、トナーの原料(内添剤)を混合する原料混合工程、原料混合工程で混合された原料を溶融混練し、着色剤等を分散することにより着色樹脂組成物を得る溶融混練工程、得られた着色樹脂組成物を冷却する冷却工程、及び冷却された樹脂組成物を所定粒径まで粉砕する粉砕工程を含む製造方法によって、好ましく製造することができる。
【0073】
まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも樹脂及び上述の含水の着色剤マスターバッチを所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキ
サー、ナウターミキサー等がある。
【0074】
次に、上記原料混合工程で混合したトナー原料を溶融混練することにより樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。この溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。なお、このとき、上述したように、着色剤の粒子成長を抑えてトナー中での着色剤の分散状態を良好にするために、混練樹脂温度Tmixを[結着樹脂の軟化点温度Tm+20℃]以下に設定することが好ましい。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0075】
次いで、上記冷却工程において得られた着色樹脂組成物の冷却物は、一般的には粉砕工程において所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、川崎重工業社製のクリプトロンシステム、日清エンジニアリング社製のスーパーローター等で更に粉砕される。その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機等の篩分機を用いて分級し、重量平均粒子径が3〜11μmの分級品を得る。この時、必要に応じて、表面改質工程で表面改質、即ち球形化処理を行って分級品を得ても良い。このような表面改質に用いられる装置として、例えば奈良機械製作所製のハイブリタイゼーションシステム、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムなどが挙げられる。また、必要に応じて風力式篩のハイボルター(新東京機械社製)等の篩分機を用いても良い。
【0076】
上記得られた粉砕品又は分級品、即ちトナー粒子には、必要に応じて公知の外添剤が混合され、本発明のトナーが得られる。外添剤をトナー粒子に外添処理する方法とは以下の通りである。粉砕又は分級されてなるトナー粒子に、シリカ、酸化チタンなどの外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサー等の、粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合することによりトナーを得ることができる。
【0077】
トナー粒子に混合される外添剤としては、従来公知のものを用いることができ、特に限定されないが、そのうち本発明に好ましく用いられるものとして、流動化剤が挙げられる。流動化剤は、トナー粒子に添加することによりその流動性が添加前に比べて増加し得るものであれば、どのようなものでも使用可能である。例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したもの全てが使える。
【0078】
例えば乾式製法シリカは、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl+2H+O→ SiO+4HCl
【0079】
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。その粒径は、平均一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.002〜
0.2μmである。特には、0.002〜0.2μmの平均一次粒径を有するシリカ微粉体が好ましい。
【0080】
更には、該ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理を施してなる処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体の中でも、メタノール疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応又は物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理する方法が挙げられる。
【0081】
そのような有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種又は2種以上の混合物で用いられる。また、本発明において、処理剤としては、アミノ基を有するカップリング剤又はシリコーンオイルを用いることもできる。
【0082】
本発明に用いられる流動化剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m/g以上、好ましくは50m/g以上のものが良好な結果を与える。トナー100質量部に対して流動化剤を0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部使用するのが良い。
【0083】
本発明のトナーを二成分系現像剤として用いる場合は、トナーは磁性キャリアと混合して使用される。磁性キャリアとしては、例えば表面酸化又は未酸化の鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子及びフェライト等が使用できる。上記磁性キャリア粒子の表面を樹脂で被覆した被覆キャリアは、現像スリーブに交流バイアスを印加する現像法において特に好ましい。被覆方法としては、樹脂の如き被覆材を溶剤中に溶解若しくは懸濁させて調製した塗布液を磁性キャリアコア粒子表面に付着させる方法、磁性キャリアコア粒子と被覆材とを粉体で混合する方法等、従来公知の方法が適用できる。
【0084】
磁性キャリアコア粒子表面への被覆材料としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が挙げられる。これらは、単独で又は複数が用いられる。上記被覆材料の処理量は、キャリアコア粒子に対し0.1〜30質量%(好ましくは0.5〜20質量%)が好ましい。これらキャリアの重量平均粒径は10〜100μm、好ましくは20〜70μmを有することが好ましい。
【0085】
本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
【0086】
また上述してきたイエロートナーは非磁性一成分現像にも好適に使用できるものである

【0087】
本発明のイエロートナーは、従来公知の電子写真装置等の画像形成装置に用いることが可能であり、特に限定されないが、静電潜像を担持する像担持体、該像担持体を帯電させる帯電手段、該帯電手段によって帯電された像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段、及び上記像担持体上に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像手段を少なくとも有する画像形成装置であって、上記現像手段が、イエロートナーを用いて現像する現像手段Aと、イエロートナー以外のトナーを用いて現像する現像手段Bと、現像時に現像バイアスを印加する現像バイアス供給手段を有し、該現像手段Aによる現像時の現像バイアスと該現像手段Bによる現像時の現像バイアスとが、共通の現像バイアス供給手段によって印加される画像形成方法に適用されることが好ましい。
【0088】
本発明のイエロートナーはカラートナーであることから、マゼンタ、シアン、及び必要に応じてブラックトナーと共にフルカラー画像形成装置に好適に用いることができる。ここでフルカラー画像形成装置としては、各色のトナー毎に潜像担持体、帯電手段、潜像形成手段及び現像手段を含むユニットを有し、各色の潜像担持体にそれぞれの色のトナー像を形成し、これを転写材上に重ねて転写して定着することによってフルカラー画像を得る、いわゆるタンデム方式ものであっても良い。また、一つの潜像担持体に対して用いるトナーの数に応じた複数の現像手段を用い、潜像担持体上に各色のトナー画像を作成してこれを順次中間転写体上に重ねて転写し、中間転写体上に転写されたトナー画像を転写材上に転写することによってフルカラー画像を得るものであっても良い。また、上記した色以外の他色のトナーと共に用いられるものであっても良いことは、言うまでもない。
【0089】
ここで、本発明のイエロートナーは、他色のトナーと帯電性を同程度とすることができるため、各色の現像手段に用いる現像バイアスを共通化でき、必要電源を減らすことが可能となる。即ち、上述したように、各色の現像手段は共通の現像バイアス供給手段から印加される現像バイアスによって現像を行うことができる。従って、画像形成装置の構成を簡略化及び小型化することができ、好ましい。
【0090】
また、静電潜像を担持する像担持体、該像担持体を帯電させる帯電手段、該帯電手段によって帯電された像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段、上記像担持体上に形成された静電潜像をイエロートナーによって現像してイエロートナー画像を形成する現像手段、該イエロートナー画像を転写材に転写する転写手段、並びに回転加熱部材及び該回転加熱部材に圧接する回転加圧部材とを有し、前記イエロートナー画像を転写材上に加熱加圧定着する定着手段を有する画像形成装置であって、該定着手段において、前記回転加圧部材が前記転写材を介して線圧490〜980N/mで回転加熱部材に対して押圧されている画像形成装置にも好適に使用することができる。即ち、本発明のイエロートナーは、軽圧定着の定着手段を用いた場合でも色再現性に優れた画像を形成することができるため、上記のような比較的線圧の低い定着手段を用いた画像形成装置にも好適に使用することができる。
【0091】
本発明で用いる各種物性の測定法について以下に説明する。
1)離型剤及びトナーの極大吸熱ピークの測定
トナーの最大吸熱ピークは、示差走査熱量計(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)やDSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)を用い、ASTM D3418−82に準じて測定する。
【0092】
測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。それをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定範囲を30〜200℃、昇温速度10℃/minとして常温常湿下で測定を行う。測定時の温度曲線は以下の通りである
。トナーの最大吸熱ピークは、昇温IIの過程で、結着樹脂のガラス転移温度Tgを示す吸熱ピーク以上の領域のベースラインからの高さが一番高いピークとする。
【0093】
温度曲線:昇温I(30℃〜200℃、昇温速度10℃/min)
降温I(200℃〜30℃、降温速度10℃/min)
昇温II(30℃〜200℃、昇温速度10℃/min)
【0094】
2)離型剤の分子量測定
装置 :GPC−150C(ウォーターズ社)
カラム:GMH−HT30cm、2連(東ソー社製)
温度 :135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.1質量%アイオノール添加)
流速 :1.0ml/min
試料 :0.15質量%のワックスを0.4ml注入
【0095】
以上の条件で測定し、ワックスの分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。更に、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式に基づいてポリエチレン換算することで離型剤の分子量を算出する。
【0096】
3)トナー及び結着樹脂のGPCによる分子量分布の測定
トナー及び結着樹脂の樹脂成分におけるGPCによる分子量分布は、下記の通り、トナー又は結着樹脂をTHF溶媒に溶解させて得られたTHF可溶成分を用いて、GPCにより測定する。
【0097】
すなわち、トナーをTHF中に入れ、数時間放置した後十分に振とうしTHFと良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。このときTHF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルタ(ポアサイズ
0.45〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマンサイエンスジャパン社製などが利用できる)を通過させたものを、GPCの試料とする。また試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0098】
上記の方法で調製された試料のGPCの測定は以下の通り行う。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料を約50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製又はPressure Chemical Co.製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0099】
カラムとしては、1×10〜2×10の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel 500、10、10、10の組み合わせを挙げることができる。
【0100】
4)トナー粒度分布の測定
本発明において、トナーの平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用いて行うが、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることも可能である。電解液には1級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液を用いる。このような電解液として、例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、粒径2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。
【0101】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
【0102】
5)粉体状態におけるL及びbの測定
粉体状態のイエロートナーにおけるL及びbは、JIS Z−8722に準拠する分光式色差計「SE−2000」(日本電色工業社製)を用い、光源はC光源2度視野で測定する。測定は付属の取り扱い説明書に沿って行うが、標準版の標準合わせには、オプションの粉体測定用セル内に2mm厚で直径30mmのガラスを介した状態で行うのが良い。より詳しくは、前記分光式色差計の粉体試料用試料台(アタッチメント)上に、試料粉体を充填したセルを設置した状態で測定を行う。なお、セルを粉体試料用試料台に設置する以前に、セル内の内容積に対して80%以上粉体試料を充填し、振動台上で1回/秒の振動を30秒間加えた上で、L及びbの測定を行う。
【0103】
6)樹脂の軟化点測定方法
JIS K 7210に則り、高化式フローテスターにより測定されるものを指す。具体的な測定方法を以下に示す。高化式フローテスター(島津製作所製)を用いて1cmの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1960N/m(20kg/cm)の荷重を与え、直径1mm,長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これにより、プランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を樹脂の軟化点(Tm)とする。
【0104】
7)着色剤の粒度測定方法
顔料をノニオン系界面活性剤と4:6の割合で、ガラス板(フーバーマーラー)に挟んで混合分散する(JIS K 5101)。この界面活性剤と顔料の混合分散液を、顔料濃度が5質量%となるように水で希釈し、超音波をかけて5分間混合した後、動的光散乱式粒径分布測定((株)堀場製作所製 LB−500)を行い、メジアン径と粒度分布(個数基準)を求める。尚、ペースト顔料の粒度を測定する場合は、なるべく熱をかけないように60℃で真空脱気し、乾燥顔料としたものを測定試料として用いる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0106】
〈ハイブリッド樹脂製造例〉
ビニル系共重合体ユニットを形成するためのモノマーとして、スチレン:2.0mol、2−エチルヘキシルアクリレート:0.21mol、フマル酸:0.14mol、α−メチルスチレンの2量体:0.03mol、ジクミルパーオキサイド:0.05molを滴下ロートに入れた。また、ポリエステル樹脂ユニットを形成するためのモノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:7.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:3.0mol、テレフタル酸:3.0mol、無水トリメリット酸:1.9mol、フマル酸:5.0mol及び酸化ジブチル錫0.2gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付けマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、145℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系単量体及び重合開始剤を4時間かけて滴下した。これを200℃に昇温し、4時間反応させてハイブリッド樹脂(Tm=110℃)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
【0107】
〈ポリエステル樹脂製造例〉
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:3.6mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:1.6mol、テレフタル酸:1.7mol、無水トリメリット酸:1.4mol、フマル酸:2.4mol及び酸化ジブチル錫:0.12gをガラス製の4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付けマントルヒーター内においた。窒素雰囲気下、215℃で5時間反応させ、ポリエステル樹脂(Tm=105℃)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
【0108】
〈スチレン−アクリル樹脂製造例〉
・スチレン 70質量部
・アクリル酸n−ブチル 24質量部
・マレイン酸モノブチル 6質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 1質量部
4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し120℃に昇温させた後、3.5時間かけて上記各成分を滴下した。更にキシレン還流後下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去し、スチレン−アクリル樹脂(Tm=105℃)を得た。GPCによる分子量測定の結果を表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
〈実施例1〉
ハイブリッド樹脂70質量部と、P.Y.(ピグメントイエロー)74を含有する顔料スラリーから水をある程度除去し、合成後、一度も乾燥工程を経ずに得た固形分30質量%のペースト状顔料(残りの70質量%は水)100質量部とを用いて、含水イエローマスターバッチを作製した(第一の混練工程)。
【0111】
上記の原材料をまずニーダー型ミキサーに仕込み、混合しながら非加圧下で昇温させた。最高温度(ペースト中の溶媒の沸点により必然的に決定される。この場合は80〜100℃程度)に達した時点で水相中(顔料スラリー)の顔料が溶融樹脂相に分配又は移行し、これを確認した後、更に15分間90〜100℃加熱溶融混練させ、ペースト中の顔料を充分に溶融樹脂相に移行させた。その後、一旦ミキサーを停止し、熱水を排出した後、非加熱で10分間混合して水分を留去後冷却し、ピンミル粉砕で約1mm程度に粉砕して含水イエローマスターバッチを得た。この含水イエローマスターバッチの含水量は15質量%、顔料分は30質量%、樹脂分が55質量%であった。
【0112】
次に、以下に示す処方で十分にヘンシェルミキサーにより予備混合を行い、二軸押出し混練機で、混練機から排出された直後の混練樹脂温度が120℃(=Tm+10℃)になるよう溶融混練(第二混練)した。
・上記ハイブリッド樹脂(Tm=110℃) 86.25質量部
・精製ノルマルパラフィン(極大吸熱ピーク温度78℃) 4質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
・上記含水イエローマスターバッチ(顔料分30質量%) 25質量部
【0113】
得られた混練物を冷却後、ハンマーミルを用いて粒径約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で20μm以下の粒径に微粉砕した。更に、得られた微粉砕物を分級装置(エルボージェット分級機)を用いてイエロートナー母粒子1(分級品)を得た。得られた分級品の帯電立ち上がり率を、以下のように評価した。
【0114】
[分級品における帯電立ち上がり率の測定]
分級品3.5gとシリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(Mn−Mgフェライト;平均粒径45μm)46.5gとを秤量し、50mlのポリビンに入れ、常温低湿度環境下(23℃/5%)に18時間以上静置した。その後、ヤヨイ式振とう器(モデル:YS−LD)により200rpmで2分間振とうさせたものと、30分間振とうさせたものを作った。振とうする角度は、振とう器の真上(垂直)を0度とした時、前方に15度、後方に20度、振とうする支柱が動くようにした。ポリビンは支柱の先に取り付けた固定用ホルダー(サンプルビンの蓋が支柱中心の延長上に固定されたもの)に固定した。作製したそれぞれのサンプルを後述のトナーの摩擦帯電量の測定方法と同様に図1の摩擦帯電量を測定する装置にて測定を行い、次式により帯電立ち上がり率を算出した。
【0115】
帯電立ち上がり率(%)
={(2分間振とうさせたサンプルの摩擦帯電量)
/(30分間振とうさせたサンプルの摩擦帯電量)}×100
【0116】
得られた帯電立ち上がり率を、以下の評価項目に従い評価した。
A:75%以上
B:65%以上75%未満
C:55%以上、65%未満
D:40%以上、55%未満
E:40%未満
【0117】
評価結果を表3に示す。このように、イエロートナー母粒子1の帯電立ち上がりは良好なものであった。
【0118】
上記イエロートナー母粒子1の100質量部に対して、針状酸化チタン微粉体(MT−100T:テイカ社製、BET=62m/g、イソブチルトリメトキシシラン10質量
%処理)1.2質量部をヘンシェルミキサーにより外添してイエロートナー1とした。イエロートナー1の重量平均粒径は7.0μmであった。得られたイエロートナー1に関し、粉体状態でのL及びbの測定を行った。
【0119】
更に、イエロートナー1と、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(Mn−Mgフェライト:重量平均粒径45μm)とを、トナー濃度が7.0質量%になるように混合し、二成分系現像剤1とした。
【0120】
この二成分系現像剤1を、カラー複写機CLC−1000(キヤノン(株)製)の定着ユニットのオイル塗布機構を取り外した改造機に充填し、単色モードで常温低湿度環境(N/L環境、23℃/5%RH)下で画像面積比率5%のオリジナル原稿を用いて1万枚の耐刷試験を行った。そして、耐刷試験前後の帯電量の変化、耐刷試験終了時のフィルミング、カブリの評価を以下のようにして行った。またその他、OHP透過度、色ムラの評価を以下のようにして行った。
【0121】
[フィルミング]
常温低湿度環境下(23℃/5%)耐刷1万枚後、A3用紙に全面にイエローベタ画像(濃度1.6程度)を5枚連続複写して、白く筋状に抜けている箇所を数え、A3用紙1枚当たりの平均個数を算出し、以下の評価基準に従い評価した。
【0122】
A:全くなし
B:1個以内
C:1個より多く3個以内
D:3個より多く5個以内
E:5個より多い
【0123】
[摩擦帯電量の変化]
図1は摩擦帯電量を測定する装置の説明図である。底に500メッシュ(25μm開口)のスクリーン53のある金属製の測定容器52に、複写機又はプリンターの現像スリーブ上から採取した二成分系現像剤を約0.5〜1.5g入れ金属製のフタ54をした。この時の測定容器52全体の重量を秤り、これをW1とした。次に、吸引機51(測定容器52と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口57から吸引し風量調節弁56を調整して真空計55の圧力を4kPaとした。この状態で充分、好ましくは2分間吸引を行い、二成分現像剤を吸引除去した。この時の電位計59の電位をVとする。ここで58はコンデンサーであり容量をCとする。また、吸引後の測定容器全体の重量を秤り、これをW2とする。この試料の摩擦帯電量(mC/kg)を下式より算出した。
試料の摩擦帯電量(mC/kg) = C×V/(W1−W2)
(但し、測定条件は23℃、60%RHとする)
【0124】
スタート時と1万枚の耐刷試験終了後に同様の測定を行い、試験前後の帯電変化を求め、下記の評価基準に従い評価した。
【0125】
A:2mC/kg未満
B:2mC/kg以上4mC/kg未満
C:4mC/kg以上6mC/kg未満
D:6mC/kg以上8mC/kg未満
E:8mC/kg以上
【0126】
[カブリ]
耐久試験後に以下のようにしてカブリの評価を行った。カブリの測定方法としては、イ
エロー画像の場合、画出し前の普通紙の平均反射率Dr(%)を、ブルーフィルターを搭載したリフレクトメーター(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって測定した。一方、普通紙上にベタ白画像を画出しし、次いでベタ白画像の反射率Ds(%)を測定した。カブリ(%)を下記式より算出し、下記の評価基準に従い評価した。
カブリ(%)=Dr−Ds
【0127】
A:0.7%未満
B:0.7以上1.2%未満
C:1.2以上1.5%未満
D:1.5以上2.0%未満
E:2.0%以上
【0128】
[OHP透過度]
カラー複写機CLC−1000(キヤノン製)を用いて、OHPシート上にA4半面イエローベタ画像の未定着画像を作成し、iRC3200(キヤノン(株)製)の定着機を線圧784N/mにして用いて定着した。その時OHP定着画像のイエローベタ部分が、次式を満たす画像濃度になるよう現像コントラストを調整して画像を作成した。
【0129】
D(ベタ紙上)−D(REF紙上) = 1.6
〔D(ベタ紙上):普通紙上にOHPシートをのせ、イエローベタ画像部分の反射濃度を測定した値
D(REF紙上):普通紙上にOHPシートをのせ、ベタ白部分(非画像部)の反射濃度を測定した値〕
【0130】
反射濃度測定にはX−rite504を使用し、イエロー濃度を測定した。
そして、OHP透過度の値は上記のイエローOHP画像を用いて、次式より算出した。
【0131】
OHP透過度(%) = {D(イエローベタ)/D(REF)}×100
〔D(イエローベタ):X−rite404の校正板の黒部分にOHPシートをのせ、イエローベタ画像部分におけるブラック濃度としての反射濃度を測定したもの
D(REF):X−rite404の校正板の黒部分にOHPシートをのせ、ベタ白部分(非画像部)におけるブラック濃度としての反射濃度を測定したもの〕
【0132】
反射濃度測定にはX−rite504を使用した。得られたOHP透過度を、以下の評価基準に従い評価した。尚、この評価においては、イエローベタ画像の透過度が高い場合には、校正板の黒部のブラック濃度が強く観察され、一方、イエローベタ画像の透過度が低い場合には、校正板の黒部のブラック濃度が弱く観察されるということを利用したものである。
【0133】
A:90%以上
B:80%以上90%未満
C:70%以上80%未満
D:50%以上70%未満
E:50%未満
【0134】
[色ムラ]
カラー複写機CLC−1000(キヤノン製)を用いて、A4用紙上にイエロー及びシアン画像の重ね画像を作成した。この時、シアン画像の形成には、後述する現像コントラスト差の測定に用いた対比用のシアントナーを用いた。各色紙上のトナー量を0.3mg
/cmずつ重ねて未定着画像を作成し、iRC3200(キヤノン(株)製)の定着機において、回転加熱部材に対する回転加圧部材の線圧を784N/mに調整して定着した。定着させて得られたグリーン画像を以下の評価基準に従い評価した。
【0135】
A:均一なグリーンで優秀。
B:シアンの色調が殆どなくて良好。
C:部分的にシアンとグリーンの階調が見られる。
D:全面にシアンとグリーンの階調が見られる。
E:全面にシアンとグリーンの階調がはっきり見られる。
【0136】
[イエロートナーとシアントナーにおける現像コントラスト差の測定]
対比するシアントナーは以下のようにして作製した。ハイブリッド樹脂70質量部と、P.B.(ピグメントブルー)15:3を30質量部含有する顔料スラリーから水をある程度除去し、ただの一度も乾燥工程を経ずに得た固形分30質量%のペースト状顔料(残りの70質量%は水)100質量部を用いて、含水着色剤マスターバッチを作製した。
【0137】
上記の原材料をまずニーダー型ミキサーに仕込み、混合しながら非加圧下で昇温させた。80〜100℃程度に達した時点で水相中の顔料が、溶融樹脂相に分配又は移行し、これを確認した後、更に15分間90〜100℃加熱溶融混練させ、ペースト中の顔料を充分に溶融樹脂相に移行させた。その後、一旦、ミキサーを停止させ、熱水を排出した後、120℃で加熱混合を15分間行うことで水分を除去し、ピンミル粉砕で約1mm程度に粉砕して乾燥シアンマスターバッチ(含水量0.7質量%)を得た。
【0138】
・ハイブリッド樹脂 86質量部
・精製ノルマルパラフィン(極大吸熱ピーク温度78℃) 4質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
・乾燥シアンマスターバッチ(顔料分30質量%) 20質量部
上記の処方を用いた以外はイエロートナー1の製造方法と同様の方法により、シアントナーを得た。
【0139】
イエロートナーを含む二成分系現像剤を常温低湿度環境下(23℃/5%)にて18時間以上静置した後、カラー複写機CLC−1000(キヤノン(株)製)を用いて、普通紙上にA4半面イエローベタ画像の未定着画像を作成し、iRC3200(キヤノン(株)製)の定着機を用いて定着した。そのイエローベタ部分の反射濃度が1.6になるよう現像コントラストを調整し、この時の現像コントラストをV(イエロー)とした。シアントナーについても同様にキャリアと混合して二成分現像剤を得、現像コントラストが調整されたシアンベタ画像を作成した。この時のシアントナーについての現像コントラストをV(シアン)とした時、現像コントラスト差(V)を{V(イエロー)−V(シアン)}として求め、以下の評価基準に従い評価した。
【0140】
A:10V未満
B:10V以上、20V未満
C:20V以上、30V未満
D:30V以上、40V未満
E:40V以上
【0141】
評価結果を表3に示す。表3に示すように、トナー粉体状態でのLとbの値が共に高く、OHP透過度も非常に良いものであった。また、色ムラもなく初期の現像コントラストもシアントナーとほぼ同等で良いものであった。更に、1万枚の耐刷後でも初期との帯電変動も小さく、フィルミングも問題なく、カブリのないオリジナル原稿を忠実に再現
するイエロー画像が得られた。
【0142】
〈実施例2〉
実施例1において、第二の混練工程における処方を以下のように変更した以外は、上記実施例1と同様の方法を用いてイエロートナー2を得た。実施例1と同様に、得られたイエロートナー2とキャリアを混合して二成分系現像剤を作製し、実施例1と同様に各種評価したところ、表3に示すように色ムラが劣るものの良好な結果であった。
【0143】
・ハイブリッド樹脂 83.5質量部
・精製ノルマルパラフィン(極大吸熱ピーク温度78℃) 4質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
・含水イエローマスターバッチ(顔料分30質量%) 30質量部
【0144】
〈実施例3〉
実施例1において、第一の混練工程を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の方法を用いてイエロートナー3を作製した。
ハイブリッド樹脂55質量部と、粉体のP.Y.74を30質量部と、更に蒸留水20質量部を用いてニーダー型ミキサーに仕込み、混合しながら非加圧下で昇温させた。あとは実施例1と同様にして含水イエローマスターバッチを作製した。この含水イエローマスターバッチの含水量は15質量%、顔料分は30質量%、樹脂分が55質量%であった。
【0145】
上記含水イエローマスターバッチを用いた以外は、実施例1と同様にしてイエロートナー3を得た。実施例1と同様に各種評価したところ、表3に示すようにOHP透過度がやや劣るものの良好な結果が得られた。
【0146】
〈実施例4〉
実施例3において、表2に示すように第一の混練工程におけるハイブリッド樹脂の代わりにポリエステル樹脂を用い、第二の混練工程におけるハイブリッド樹脂の代わりにポリエステル樹脂56.25質量部とスチレン−アクリル樹脂30質量部を用い、また粒径の違う顔料を用い、更に混練樹脂温度をTm+20℃にしたことを除いて、実施例3と同様にしてイエロートナー4を得た。実施例1と同様に各種評価を行ったところ、表3に示すようにOHP透過度が劣るものの良好な結果が得られた。
【0147】
〈実施例5〉
実施例4において、着色剤を下記構造を有するPigment Yellow 73に
変更したこと以外は、実施例4とほぼ同様にしてイエロートナー5を得た。実施例1と同様に各種評価を行ったところ、表3に示すようにOHP透過度が劣るものの良好な結果が得られた。
【0148】
【化5】

【0149】
〈比較例1〉
表2に示すように、第一の混練工程において水を用いず乾燥顔料を用いて、乾燥マスターバッチを以下のように作製した。ハイブリッド樹脂70質量部と、粉体のP.Y.73を30質量部をニーダー型ミキサーに仕込み、混合しながら非加圧下で昇温させて、90
〜110℃で30分間加熱溶融混練させて顔料を充分に移行させた。その後、冷却させ、ピンミル粉砕で約1mm程度に粉砕して乾燥イエローマスターバッチを得た。この乾燥イエローマスターバッチを用いることと、混練樹脂温度をTm+40℃にしたことを除き、他は実施例5とほぼ同様にしてイエロートナー6を得た。得られたイエロートナー6を実施例1と同様に各種評価したところ、表3に示すようにOHP透過度と現像コントラスト差がかなり悪いものであった。
【0150】
〈比較例2〉
実施例5において、表2に示すように水を用いず乾燥顔料で乾燥マスターバッチを作製し、且つ第二の混練工程において水10質量部を追加して作製したことを除いて、あとはほぼ同様にしてイエロートナー9を得た。乾燥マスターバッチは、比較例1で得たものと同様のものを用いた。得られたイエロートナー9について、実施例1と同様に各種評価を行ったところ、表3に示すようにOHP透過度と現像コントラスト差が悪いものであった。
【0151】
〈比較例3〉
表2に示すように、第一の混練工程は行わず、第二の混練工程を以下の処方で行ってイエロートナー10を作製した。この時、混練樹脂温度をTm+20℃とした。
【0152】
・ポリエステル樹脂 70質量部
・スチレン−アクリル樹脂 30質量部
・精製ノルマルパラフィン(極大吸熱ピーク温度78℃) 4質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
・P.Y.73のペースト状顔料(固形分30質量%) 25質量部
【0153】
得られたイエロートナー10は、目視で観察したところ色ムラが確認され、着色剤の分散不良が生じているものと思われた。尚、目視で判断できる程度に色ムラが顕著であったため、その他の評価は行わなかった。
【0154】
〈比較例4〉
比較例1において、表2に示すように第一の混練工程に添加剤としてデヒドロアビエチルアミン3質量部を追加して作製したことを除き、他は比較例1とほぼ同様にしてイエロートナー11を得た。得られたイエロートナー11について、実施例1と同様に各種評価を行ったところ、表3に示すようにフィルミングと分級品の帯電立ち上がり率、そして耐久後の帯電変化とカブリが一層悪いものになった。
【0155】
【化6】

【0156】
【表2】

【0157】
【表3】

【0158】
〈実施例6〉
イエロートナー1とシアントナーを用いて一成分現像方式で画像形成を行い評価を行った。装置はLBP−2510(キヤノン(株)製)を用いた。OHP透過度、色ムラ、フィルミング、現像コントラスト差は、実施例1と同様にA評価で、良好であった。また3000枚耐久での帯電変化、カブリもB評価で良好なものであった。
【0159】
〈実施例7〉
現像コントラスト差の測定に用いた対比用のシアントナーの製造方法において、顔料を
Pigment Red 57:1とした以外は、上記シアントナーと同様の方法によりマゼンタトナーを作製した。得られたマゼンタトナー、シアントナー及びイエロートナー1を用いて、且つ、各色現像器に対する電源を同一にして、CLC−1000(キヤノン(株))で未定着画像を作成し、iRC3200(キヤノン(株))の定着機により定着させたところ、各色の反射濃度が1.6±0.05であり、同一電源で問題ないものであった。
【符号の説明】
【0160】
52 測定容器
53 スクリーン
54 フタ
51 吸引機
55 真空計
56 風量調節弁
57 吸引口
58 コンデンサー
59 電位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、着色剤と結着樹脂の一部とを水の存在下で加熱混合して、含水率が5〜25質量%の含水着色剤マスターバッチを得る工程;少なくとも該含水着色剤マスターバッチと残りの結着樹脂とを溶融混練し、混練物を得る工程;及び該混練物を粉砕してトナーを得る工程;を有するトナーの製造方法。
【請求項2】
前記混練物を得る工程における混練樹脂温度Tmix(℃)が、前記結着樹脂の軟化点温度Tm(℃)に対して、Tmix≦Tm+20の関係を満足する、請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記トナーを得る工程により得られるトナーが結着樹脂及び着色剤を含有し、
前記結着樹脂が少なくともポリエステルユニットを含有し、
粉体状態における明度LがL>87を満足し、且つ色度bが106<b<120を満足するイエロートナーである、請求項1又は2記載のトナーの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−271545(P2009−271545A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184582(P2009−184582)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【分割の表示】特願2004−320410(P2004−320410)の分割
【原出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】