説明

トナー担持体、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】 適切で安定したトナー帯電量分布を有する、トナー担持体及び現像装置及びプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することと、環境問題に対応できるトナー担持体を提供すること。
【解決手段】 回転しながらトナーを担持して静電潜像が形成された像担持体に接触もしくは近接して像担持体上のトナーを供給する前記静電潜像を可視化するトナー担持体において、 前記トナー担持体は基体上にコーティング層を有し、前記コーティング層のイオン化ポテンシャルがトナーのイオン化ポテンシャルよりも0.1eV以上小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等の電子写真装置や静電記録装置などの静電潜像を非磁性一成分現像剤で可視化するためのトナー担持体、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置が知られている。
たとえば特許文献1の「静電潜像の現像方法および現像装置」には、カブリや画像メモリー等の画像不良防止することを課題として、負帯電現像剤を摩擦帯電によって帯電させる場合に、現像剤のイオン化ポテンシャルを4.5〜5.5eVとし、現像ローラはpH5以上のカーボンブラックを含有させて、イオン化ポテンシャルを現像剤以下(好ましくは4.5〜5.3eV)に調整し、現像ローラ表面層は、モノエステル系滑剤及び脂肪酸エステル系滑剤から選ばれる1種又は2種以上の滑剤及び/又はエステル型非イオン系界面活性剤、ソルビタンエステル型非イオン系界面活性剤及びソルビタンエーテルエステル型非イオン系界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の非イオン系界面活性剤を含有する。また、正帯電現像剤を摩擦帯電によって帯電させる場合に、現像剤のイオン化ポテンシャルを4.5〜5.5eVとし、現像ローラはイオン導電剤を含有させて、イオン化ポテンシャルを現像剤以上(好ましくは4.7〜5.5eV)に調整することが開示等されている。
この発明の現像装置は、現像方式として、非磁性一成分現像を用い、構成として、良導電性シャフトと、導電層(導電層の構成は、弾性体と表面層でもよく、また表面層のみでも可であることが教示等されている。
【0003】
また、特許文献2の「現像装置」には、表面層の強度アップと、トナーの適切な帯電させるために、トナー担持体表面層には、粒径の異なる2種以上のエマルジョン樹脂粒子を含有し、少なくともその1種の粒径を0.2μm以下、もう1種の粒径比を5以下にした負帯電性トナーを用いて、トナー担持体表面の仕事関数が4〜5eVの範囲である。そしてこの装置の現像方式としては、非磁性一成分現像となっている。この発明の装置(のトナー担持体)の構成としては、金属体と、表面層あるいは金属体と、弾性体と表面層となっている。そして比較例1で仕事関数が4.7eVであるが、ΔIDが0.4と大きく、長期に渡って安定した画像濃度が提供できていない。その技術的根拠として、粒径比が6であることが述べられている。仕事関数の値を4〜5eVと規定しているが、その作用効果が技術的に不明確である。
【0004】
また特許文献3の「静電潜像の現像方法及び現像装置」には、画像メモリーや通常のカブリによる画像不良防止するために、負帯電現像剤を電荷注入によって帯電させる場合に、現像剤のイオン化ポテンシャルを4.5〜5.5eVとし、導電性粉体を含有しない現像ローラのイオン化ポテンシャルを現像剤よりも0.3eV以上高く調整し、現像方式として非磁性一成分現像の構成が良導電性シャフトと導電層(導電層の構成は、弾性体と表面層でも、表面層のみでも可)である発明が開示されている。
【0005】
また特許文献4の「静電潜像の現像方法及び現像装置」には、画像メモリーや通常のカブリによる画像不良防止するために、帯電現像剤を電荷注入によって帯電させる場合に、現像剤のイオン化ポテンシャルを4.5〜5.5eVとし、現像ローラはpH5以上のカーボンブラックを含有させて、イオン化ポテンシャルを現像剤以下(好ましくは4.5〜5.3eV)に調整し、現像ローラ表面層は、モノエステル系滑剤及び脂肪酸エステル系滑剤から選ばれる1種又は2種以上の滑剤及び/又はエステル型非イオン系界面活性剤、ソルビタンエステル型非イオン系界面活性剤及びソルビタンエーテルエステル型非イオン系界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の非イオン系界面活性剤を含有している。その装置の現像方式としては、非磁性一成分現像であり、その構成は、良導電性シャフトと、導電層(導電層の構成は、弾性体と表面層でもよく、表面層のみでも可)となっている。
【0006】
また特許文献5の「現像装置」には、画像濃度ムラやリークによるノイズ防止するために、トナー担持体は硬度70度以下、厚み7〜50μmの弾性層を有し、像担持体と非接触、Ra0.5〜2.0μmで、仕事関数は4.30〜5.00eVである。そしてその装置の現像方式は、非磁性一成分現像(非接触)であり、現像部の構成としては、金属体と弾性層とを有している。
【0007】
また、特許文献6の「静電潜像現像用現像剤、画像形成装置、装置ユニット及びファクシミリ装置」には、文字画像では文字が細くなり、ハーフトーンやベタ黒画像では濃度が低くなるなどのフェーディング現象を防止するために、現像剤担持体の表面の仕事関数測定におけるγ(傾き[Y/eV])が10以上であり、現像方式として、磁性一成分現像を用いて多極永久磁石ローラと現像スリーブ、現像スリーブ表面に導電性微粒子または/及び固体潤滑剤を含有、ベースはフェノール樹脂を使用していることが記載されている。
【0008】
また特許文献7の「現像ロール及び現像装置」には、現像ゴーストの防止及び非画像部のかぶり低減するために、現像ロール表面は、一成分現像剤が帯電しやすい微小高帯電領域と、一成分現像剤が帯電しにくい微小非帯電領域とが密に混在露出していること、現像剤のイオン化ポテンシャルと現像ロールの平均イオン化ポテンシャルの差が0.2〜1.2eVであり、その微小高帯電領域と微小非帯電領域のイオン化ポテンシャルの差が0.2〜1.2eVであり、現像方式として、磁性一成分現像が行なわれ、その構成として、磁石ローラと現像スリーブと表面層となっている。
【0009】
また、特許文献8の「像剤担持体及びこれを用いた現像装置」には、現像ゴーストを防止するため、現像剤担持体表層は、導電性微粒子を樹脂中に分散させた導電性塗料からなっており、現像剤担持体の電子放出効率Yield/eV を5以上且つ30以下に設定され、その現像方式が磁性一成分現像であり、構成としては、磁石ローラと、現像スリーブと、表面層からなっていることが開示されている。
【0010】
また、特許文献9の「一成分現像担持体、及び一成分現像剤現像方法」には、画像濃度ムラの防止のために負帯電性現像剤を用いて、現像剤担持体の仕事関数を4.7eV以下にし、Raが1.0〜2.0μmで、凹凸ピッチが3.8μm以下の有効線長さが101%以下であり、現像方式が磁性一成分現像を用い、その構成が、金属体と樹脂層からなる発明が開示されている。
【特許文献1】特許第3000919号公報
【特許文献2】特開2002−148936号公報
【特許文献3】特許第3000920号公報
【特許文献4】特開2000−066510号公報
【特許文献5】特開2002−207361号公報
【特許文献6】特許第3005081号公報
【特許文献7】特開平9−244395号公報
【特許文献8】特開平10−063088号公報
【特許文献9】特開2001−296735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以下の点に鑑みてなされたものである。
1.トナー担持体の寿命の点
近年、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真装置、特に小型機分野においては、メンテナンスの簡素化が進んでおり、非磁性一成分現像剤(トナー)を用いた現像方式が実用化されている(図1)。
一般に、ゴム又はエラストマーの弾性材料で構成されるトナー担持体(図7)を用いた、ドラムあるいはベルト感光体への接触現像方式、アルミやステンレスの金属材料で構成されるトナー担持体(図8)を用いた、ベルト感光体への接触現像方式、またそれに用いられるトナー担持体が種々提案されている。静電潜像の形成されたドラムあるいはベルト感光体に、トナー担持体を当接させて、トナー担持体表面に薄層化されたトナーを現像電界に応じてトナーを移動させ、可視像化する。この方法によれば、トナーに磁性材料を使うことなく、カラー化が容易であるという利点を持つ。しかしながら、図1に示すような現像装置においては、トナー担持体への当接部材であるトナー層形成部材及び補給ローラとの当接部におけるトナーへのストレスにより、トナー担持体表面あるいはトナー層形成部材表面へのトナーの固着が発生しやすく、またトナー担持体の削れ、キズの発生などにより、数k〜10数kプリントで交換できるカートリッジ形態を取ることが多い。近年は、環境問題からカートリッジのリサイクルを行わなければならないという問題が発生してきていることと、価格低下のために、現像装置を据え置きにして、プリント1枚当たりのランニングコストを下げる手段が提案されている。そのためには、現像装置を長寿命(例えば機械寿命の1200kプリント程度と同等)にする必要があるため、トナー担持体の耐久性(耐摩耗性)を向上させることが重要である。
【0012】
トナー担持体の耐久性(耐摩耗性)を向上させるために、機械的な強度に優れるポリウレタン樹脂をコーティング層に用いることが多い。また更に機械的な強度を高めるために、アミノ樹脂によって縮合架橋物を形成させることも多い。しかしながら、コーティング層が全く摩耗しない場合には、トナーの固着が発生しやすく、良質な現像を妨げ、良質な画像が提供できなくなる。そのためトナー担持体のコーティング層は適当に摩耗した方が良い。
アミノ樹脂は分子構造中に窒素基を多く有しており、この窒素基がトナーの帯電性に大きく寄与することが知られている。しかしアミノ樹脂による縮合架橋物はコーティング層の表面に濃化(局在化)する傾向が確認されている(参考文献1)。そのため従来のトナー担持体は、初期的にはトナー帯電量が高く、良質な現像が行え、良質な画像を提供することが可能であったが、経時でコーティング層が摩耗するに連れて、コーティング層上に、アミノ樹脂による縮合架橋物の割合が少なくなり、トナーの帯電性が低下してしまい、良質な現像を妨げるだけでなく、トナーを静電気的に吸着しておく力が低下するため、トナー飛散の要因にもなってしまう。経時でも安定したトナー帯電性を達成するためには、アミノ樹脂による縮合架橋物をほぼ安定して、コーティング層内部に存在させる技術が極めて重要である。
【0013】
2.環境対応
近年、環境面において、塗装に関してはVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)の低減が求められており、溶剤系の塗料から、水系の塗料に移行しつつある。製造工程においても、作業環境の改善及び、有害物質の外部への排出を防止するために脱溶剤を図ることは重要である。
【0014】
本発明の目的は、適切で安定したトナー帯電量分布を有する、トナー担持体及び現像装置及びプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することと、環境問題に対応できるナー担持体を提供することである。
【0015】
筆者らは、鋭意検討の結果、ポリウレタン+アミノ樹脂系コーティング層のイオン化ポテンシャルとトナー帯電性に極めて重要な関係があることを見出した。
イオン化ポテンシャルとは、基底状態にある原子または分子から1個の電子を無限遠に引き離して、陽イオンと自由電子とに解離させるために要するエネルギーであり、紫外光(4.2〜6.2eV)を照射し、このとき放出される光電子を計測して、その量子効率のべき乗プロット(規格化光量子収率)のしきい値から容易に求めることができる。電子供与性の高いものほど、イオン化ポテンシャル値は小さく、プラス帯電性を示し、電子受容性の強いものほど、イオン化ポテンシャル値は大きく、マイナス帯電性を示す傾向が見られる。つまりトナーをよりマイナスに帯電させるには、イオン化ポテンシャルは小さい方がよいことになる。また規格化光量子収率の傾き(Y/eV)は光電子の放出効率を表しており、トナーをよりマイナスに帯電させるには、傾き(Y/eV)は大きい方がよいことになる。
【0016】
請求項1、5、9では、適切なトナー帯電量を有するトナー担持体を提供することを目的としている。本発明では、マイナス帯電性のトナーを用いているため、コーティング層自体はトナーに対してプラスに帯電し、トナーはマイナスに帯電することが必要となる。そのため、コーティング層のイオン化ポテンシャルや規格化光量子収率の傾きについて言及した。
【0017】
請求項2では、適切なトナー帯電量分布を有し、かつ耐磨耗性に優れるトナー担持体を提供することを目的としている。つまり耐磨耗性に優れるポリウレタン樹脂をベース樹脂とし、トナーの帯電性に大きく寄与するアミノ樹脂を1種以上添加して、縮合架橋物を形成させることについて言及した。
請求項3では、導電性のトナー担持体を提供することを目的としている。つまり本発明では、トナーの移動に電位差を利用しているため、トナー担持体は導電性でなければならない。
【0018】
請求項4では、環境問題に対応可能なトナー担持体を提供することを目的としている。昨今、トルエンやキシレンに代表される揮発性溶剤の使用量低減が叫ばれている。また人体への影響も警告されている。このような状況で、環境に優しい(作業環境の改善及び、有害物質の外部への排出防止など)水系塗料への積極的な移行が社会的使命である。そのために、水中に乳化分散されているポリウレタン樹脂組成物を用いることについて言及した。
【0019】
請求項6〜9では、安定したトナー帯電量分布を有するトナー担持体を提供することを目的としている。コーティング層は摩耗していくので、徐々にコーティング層内部がトナー担持面になっていく。そのため、コーティング層内部のイオン化ポテンシャルや規格化光量子収率の傾きについて言及した。
請求項10〜11では、適切で安定したトナー帯電量分布を有する現像装置を提供することを目的としている。
【0020】
請求項12では、適切で安定したトナー帯電量分布を有するプロセスカートリッジを提供することを目的としている。
【0021】
請求項13では、適切で安定したトナー帯電量分布を有する画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1記載のトナー担持体は、回転しながらトナーを担持して静電潜像が形成された像担持体に接触もしくは近接して像担持体上のトナーを供給する前記静電潜像を可視化するトナー担持体において、前記トナー担持体は基体上にコーティング層を有し、前記コーティング層のイオン化ポテンシャルがトナーのイオン化ポテンシャルよりも0.1eV以上小さいことを特徴とする。
【0023】
請求項2記載のトナー担持体は、請求項1において、前記コーティング層は、分子内にカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂と、1種以上のアミノ樹脂の縮合架橋物により形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項3記載のトナー担持体は、請求項1または2において、前記コーティング層にはカーボンブラックが含有されていることを特徴とする。
【0025】
請求項4記載のトナー担持体は、請求項2において、前記ポリウレタン樹脂が、水中に乳化分散されているポリウレタン樹脂であることを特徴とする。
【0026】
請求項5記載のトナー担持体は、請求項1〜4のいずれかにおいて、規格化光量子収率Yと、励起エネルギーeVの傾き(Y/eV)が、20以上であることを特徴とする。
【0027】
請求項6記載のトナー担持体は、請求項5において、コーティング層の最外層が取り除かれていることを特徴とする。
【0028】
請求項7記載のトナー担持体は、請求項6において、コーティング層の最外層を取り除いた前記トナー担持体のイオン化ポテンシャルが、コーティング層の最外層を取り除く前のイオン化ポテンシャルよりも小さいことを特徴とする。
【0029】
請求項8記載のトナー担持体は、請求項7において、コーティング層の最外層を取り除いた後の前記傾き(Y/eV)が、コーティング層の最外層を取り除く前よりも大きいことを特徴とする。
【0030】
請求項9記載のトナー担持体は、請求項1〜5あるいは8において、コーティング層のイオン化ポテンシャルがおおよそ5eVであることを特徴とする。
【0031】
請求項10記載の現像装置は、請求項9に記載のトナー担持体を搭載した。
【0032】
請求項11は、請求項10に記載の現像装置であって、トナーのイオン化ポテンシャルがおおよそ5.8eVであり、規格化光量子収率Yと励起エネルギーeVの傾き(Y/eV)がおおよそ50であることを特徴とする。
【0033】
請求項12は、請求項11に記載の現像装置を搭載したプロセスカートリッジである。
【0034】
請求項13は、請求項12に記載のプロセスカートリッジを搭載した画像形成装置である。
【発明の効果】
【0035】
トナーを担持して、回転しながら静電潜像の形成された像担持体に接触もしくは近接して像担持体表面にトナーを供給することによって、前記静電潜像を可視化するトナー担持体において、請求項1では、トナー担持体は基体上にコーティング層を有した構造であり、コーティング層のイオン化ポテンシャルがトナーのイオン化ポテンシャルよりも0.1eV以上小さいことを特徴とするトナー担持体では、トナーよりもコーティング層の方が電子供与性が強いため、コーティング層はプラス帯電性、トナーはマイナス帯電性を示すようになる。そのため、トナーはよりマイナスに帯電するようになり、適切なトナー帯電量を有するトナー担持体を提供することができる。
【0036】
また請求項2では、該コーティング層は分子内にカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂と1種以上のアミノ樹脂の縮合架橋物により形成されているトナー担持体において、耐磨耗性に優れているポリウレタン樹脂を用い、さらにアミノ樹脂による縮合架橋物を形成させることで、さらに耐磨耗性に優れるトナー担持体を提供することができる。またトナー帯電性に大きく寄与するアミノ樹脂を用いることにより、よりマイナスにトナーを帯電させるトナー担持体を提供することができる。
【0037】
請求項3では、該コーティング層にはカーボンブラックが含有されているトナー担持体において、導電性のトナー担持体を安価に提供することができる。またカーボンブラックは塗膜の補強、潤滑剤としての作用も果たすため、耐磨耗性にも優れるトナー担持体を提供することができる。
【0038】
請求項4では、ポリウレタン樹脂が、水中に乳化分散されているポリウレタン樹脂組成物であるトナー担持体において、VOCを低減することができ、塗装工程の作業環境が良くなると共に、環境への負荷が低減される。溶液が水であるため、塗料がレベリングしやすく、トナー担持体表面を平滑にすることができる。
【0039】
請求項5では、イオン化ポテンシャル測定時の、規格化光量子収率Yと励起エネルギーeVの傾きY/eVが20以上であるトナー担持体において、電子の放出効率に優れるため、トナーはよりマイナスに帯電するようになり、適切なトナー帯電量を有するトナー担持体を提供することができる。
【0040】
請求項6では、コーティング層の最外層が取り除かれているトナー担持体において、最外層に形成されている酸化生成物を取り除き、アミノ樹脂による縮合架橋物を表面に出すことができるため、安定したトナー帯電量を有するトナー担持体を提供することができる。
【0041】
請求項7では、コーティング層の最外層を取り除いた後のイオン化ポテンシャルが、コーティング層の最外層を取り除く前のイオン化ポテンシャルと比較して、少なくとも小さいトナー担持体において、コーティング層が摩耗しても、安定したトナー帯電量を有するトナー担持体を提供することができる。
【0042】
請求項8では、コーティング層の最外層を取り除いた後の傾きが、コーティング層の最外層を取り除く前の傾きと比較して、少なくとも大きいトナー担持体において、コーティング層が摩耗しても、安定したトナー帯電量を有するトナー担持体を提供することができる。
【0043】
請求項9では、コーティング層のイオン化ポテンシャルがおおよそ5eVであるトナー担持体において、適切なトナー帯電量を有するトナー担持体を提供することができる。
【0044】
請求項10では、請求項9に記載のトナー担持体を搭載していることを特徴とする現像装置において、トナー担持体上のトナー帯電量分布が適切であり、かつ経時で安定しているため、適切でかつ安定したトナー帯電量分布を有する現像装置を提供することができる。またトナー飛散などの生じない現像装置を提供することができる。
【0045】
請求項11では、請求項10に記載の現像装置であって、トナーのイオン化ポテンシャルがおおよそ5.8eV、規格化光量子収率Yと励起エネルギーeVの傾きY/eVがおおよそ50である現像装置において、コーティング層が摩耗しても、トナー担持体上のトナー帯電量分布が適切であり、かつ経時で安定しているため、適切でかつ安定したトナー帯電量分布を有する現像装置を提供することができる。またトナー飛散などの生じない現像装置を提供することができる。
【0046】
請求項12では、請求項11に記載の現像装置を搭載したプロセスカートリッジにおいて、トナー担持体上のトナー帯電量分布が適切であり、かつ経時で安定しているため、良質なトナー像(未定着)を提供することができる。またトナー飛散などの生じないプロセスカートリッジを提供することができる。
【0047】
請求項13では、請求項12に記載のプロセスカートリッジを搭載した画像形成装置において、トナー担持体上のトナー帯電量分布が適切であり、かつ経時で安定しているため、良質な画像を提供することができる。またトナー飛散などの生じない画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1、図2、図3は本発明に係わる現像装置の一例を示す図である。また図4、図5、図6は本発明に係わるプロセスカートリッジの一例を示す図である。図4は図1の現像装置を搭載したものである。図5は図2の現像装置を搭載したものである。図6は図3の現像装置を搭載したものである。プロセスカートリッジの図にて、その動作を説明する。
【0049】
図4の動作としては、トナー担持体111、金属の芯金上に発泡体を形成してなるトナー供給部材112、トナー攪拌部材113は、ケース114の側板に軸支されている。トナー116はトナー攪拌部材113、及びトナー供給部材112を介してトナー担持体111の表面に供給される。トナー担持体111上に供給されたトナーは、トナー層規制部材115によって所定量に薄層化され、トナー層規制部材115を通過する際に帯電される。帯電したトナーはトナー担持体111を経て感光体211に搬送される。トナー担持体111は感光体211に接触(食い込み)し、電極を介して感光体211の帯電電位と光書き込み後(露光後)の残留電位の中間のバイアス電圧(図示しない)が印加されている。トナー担持体111上のトナーが感光体211との接触部に搬送され、感光体電位とバイアス電源213から供給される現像バイアスによる現像電界に応じて、帯電したトナーが感光体211に付着し静電潜像が可視像化される。なお感光体211はドラム形状であるが、これに限定されるものではない。また帯電部材212はロール形状をしているが、これに限定されるものではない。さらにトナー供給部材112の回転方向は、トナー担持体111の回転方向に対して順方向でも逆方向(図は順方向)でも構わない。
【0050】
図5はトナー層規制部材125がローラ形状のものである。基本的な動作は図4と同様である。トナー層規制部材125は、トナー担持体121にバネ127等の弾性部材で押圧されており、トナー担持体121に食い込んでニップを形成している。トナー層規制部材125の動作は、トナー担持体121が感光体221上の静電潜像をトナーによって現像する際(トナー担持体121が回転している時)には、静止しており、トナー担持体121の現像の動作が終了した後、逆回転することにより、トナー層規制部材125が回転し、新しい当接面に変わる。
【0051】
トナー層規制部材125の端部には、ワンウェイクラッチが配置されており、所定の方向にのみ回転できるようになっている。トナー層規制部材125の動作は、上記間欠回転以外にも、装置のモータートルクが十分であり、バンディング等の不具合がなければ、現像時にトナー担持体121と一緒に回転させることもできる。回転方向は、トナー担持体121の回転方向に対して、順方向でも逆方向でも構わない。トナー層規制部材125は、電圧を印加させる場合は、導電性にして抵抗を調整することが望ましいが、電圧を印加しない場合は、絶縁性でも構わない。なお感光体221はドラム形状であるが、これに限定されるものではない。また帯電部材222はロール形状をしているが、これに限定されるものではない。
【0052】
図6に示す現像装置の動作では、トナーの帯電を現像剤137で行い、現像剤供給部材(マグネットローラ)132の表面に磁力で付着した現像剤のトナー136を、トナー担持体131へバイアス電源138から供給される供給バイアスにより供給し、バイアス電源233から供給される現像バイアスにより、感光体231上の静電潜像を現像する。
【0053】
用いるトナーはポリエステル、ポリオ−ル等の樹脂に帯電制御剤(CCA)、色剤、低軟化点物質(ワックス)を分散混合し、その周囲にシリカ、酸化チタン等の物質を外添して、流動性を高めたものである。トナーは、従来の粉砕法あるいは、乳化、懸濁重合法等の重合法により製造されるものである。
外添剤としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セルウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物、窒化ケイ素等の窒化物、炭化ケイ素等の炭化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、カーボンブラック、シリカ等を挙げることができる。外添剤の粒径は通常0.1〜1.5μmの範囲であり、添加量としては、トナー粒子100重量部に対し、0.01〜10重量部が用いられ、好ましくは0.05〜5重量部が用いられる。これらの外添剤は単独で用いてもあるいは、複数を併用しても構わない。またこれらの外添剤は、疎水化処理されたものを用いるのがより好ましい。
【0054】
色剤としてはカ−ボンブラック、フタロシアニンブル−、キナクリドン、カ−ミン等を挙げることができる。
トナーの体積平、均粒径の範囲は3〜12μmが好適であるが、本実施例では約6.5μmであり、1200dpi以上の高解像度の画像にも十分対応することが可能である。
またトナー内部に低軟化物質を内添することも可能であり、低軟化点物質としては、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、フィッシャートロピッシュワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、エステルワックス及びこれらの誘導体又はこれらのグラフト/ブロック化合物等を挙げることができる。この様な低軟化点物質を添加する場合は、トナー中へ5〜30質量%程度添加することが好ましい。
【0055】
トナー担持体は、図7に示すように、金属の芯軸311上にゴムやエラストマーの弾性体312を形成し、トナー帯電性、耐摩耗性、トナー固着性等を考慮して、その周囲に表面層313が設けられているものを用いることができる。また図8に示すように、金属基体上に表面層が設けられているものも用いることができる。トナー担持体は、ローラ状であってもよく、ベルト状でも構わない。
【0056】
図9は本発明に係る画像形成装置の一例(カラー画像形成装置)を示す図である。プロセスカートリッジが具備しているもの以外に、少なくとも、光書き込み装置120と転写部材310、定着装置400を有している。なお光書き込み装置120からの光路は図示していないが、感光体上の、帯電部材とトナー担持体との間の適切な位置に光路は確保されている。
【0057】
●トナー担持体の基体
トナーの基体としては弾性体、金属体、いずれも使用できる。
弾性体としては例えば、ポリウレタン、EPDM、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、NBR、エピクロルヒドリンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴムなどから選択される1種、及び、これらの2種以上の混合物を用い、さらに、架橋してゴム状物質とするために、架橋剤、加硫剤を添加することができる。この場合、有機過酸化物架橋及び、硫黄架橋のいずれの場合でも、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤等を用いることもできる。更にまた、上記以外にもゴム配合剤として一般に用いられている発泡剤、可塑剤、軟化剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分離剤、離型剤、増量剤、着色剤等を、特性を損なわない範囲で添加することができる。
【0058】
金属体としては、例えば、アルミ、SUS(ステンレス)、鉄等を用いることができる。加工性、軽さの面でアルミを用いられることが多い。アルミの場合、A6063、A5056、A3003等の材質のアルミニウムが例示でき、SUSの場合、303、304、416等のステンレスを用いることができる。
【0059】
このようなトナー担持体は電気特性、特に電気抵抗が重要であり、弾性体の場合には、抵抗を調整するために、種々の導電性付与剤を添加することができる。導電性材料としては、粉体としては、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラー用カーボン、熱分解カーボン、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等を挙げることができる。また導電性付与剤として、イオン導電性物質もあり、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質、更に、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート、オクタデシルトリメチルアンモニウム過塩素酸塩等の有機イオン性導電性物質がある。本発明においては、弾性体の抵抗値は103〜109Ω・cmとすることが望ましい。抵抗値が103Ω・cm未満は、材料の加工性を著しく損ねると共に、硬度アップを招く。一方、109Ω・cmを越えると、表層をコーティングしたトナー担持体の抵抗を適切な抵抗にすることが難しくなる。なお弾性体が絶縁性であれば、後述する表面層を低抵抗とし、表面からバイアスを取ればよい。
【0060】
弾性体の硬度は特に制限されるものではないが、トナー担持体が感光体と接触する場合には、60度以下(タイプA)であり、望ましくは、25〜50度である。硬度が高すぎる場合、感光体がドラムの場合は、ニップ幅が小さくなるために、良好な現像が行えなくなる可能性がある。逆に硬度が低くなりすぎると、圧縮永久歪みが大きくなり、トナー担持体に変形や偏芯が生じた場合、濃度ムラが発生する。また、低硬度側は材料の固有の物性に大きく左右されるため、使用できる材料が限定される。弾性層の硬度を低硬度にする場合でも、圧縮永久歪みは小さくすることが望ましく、具体的には20%以下とすることが望ましい。
【0061】
●トナー担持体の表面層
トナー担持体の表面層に求められる機能としては、トナー帯電性、トナー非固着性、耐摩耗性が挙げられる。これらを満足する材料としてはウレタン系樹脂が良く知られている。数種のウレタン系材料(水系)を検討した結果、分子中にカルボキシル基を有する水系ウレタン樹脂をアミノ樹脂で架橋させることにより、耐トナー性(固着性)が向上すると共に、トナー帯電性、耐摩耗性が向上することを確認した。アミノ樹脂としては、トナーに帯電性を付与する官能基である窒素基が多いトリアジン環を有するアミノ樹脂が望ましい。具体的には、分子内に窒素原子を6個有するメラミン樹脂、5個有するグアナミン樹脂が望ましい。メラミン樹脂及び、グアナミン樹脂は、トリアジン環に付加している官能基種及び、数によって、種々の樹脂があるが、任意で使用することができる。また、2種類以上を混合して用いても加工性、特性を損なわない範囲であれば構わない。メラミン樹脂は、熱硬化型であり、加熱されなければ、硬化反応が起こらないために、塗料のポットライフも長いという利点がある。
【0062】
水系ウレタン樹脂は水中で乳化重合された分子量十数万の樹脂であり、分子中にカルボン酸(COO基またはCOOH基)をグラフトし、アルカリ(アミンなど)で中和して、水中に分散しているものである。
【0063】
メラミン樹脂の添加量としては、ポリウレタン樹脂100に対して、3〜80重量%の範囲で添加することができる。メラミン樹脂は、分子構造中に窒素基を多く含有しているため、その添加量を増やすことによりトナー帯電性を高めることができる。しかしながら、添加量を増やしていくと、塗膜が硬くなるため、塗膜の物性を損なわない範囲で添加する必要がある。
メラミン樹脂の添加量が3重量%以下では、塗膜の物性を十分向上させることができない。反応点以上に添加した場合においても、自己縮合するために、単量体で存在することは少ないため、塗膜内部よりブリードすることはない。
【0064】
トナー担持体の表面層として使用するためには、塗料の導電化が必要であり、カーボンブラック等の導電剤を用いて導電化を行う。本実施例では、一般的な導電性カーボンを用いて導電化を行っており、カーボンブラックの添加量としては、樹脂100に対して10重量%添加しているが、これに限定されるものではない。
また水系塗料へのカーボンブラックの分散に際しては、分散剤あるいは、消泡剤等の各種添加剤をトナー、感光体への非汚染性の点から適宜、添加することができる。本発明で使用した導電性水系ウレタン塗料においては、添加剤は添加していない。
【0065】
表面層の膜厚は、トナー担持体の寿命に応じて摩耗量との兼ね合いで決定されるものであり、任意である。しかしながら高画質化に対応するために、トナー担持体の表面粗さをできるだけ小さいことが望ましく、弾性層の低硬度化(ショア硬度タイプAで40度以下)に伴い、弾性層の表面粗さを小さくすることが難しいことが一般的である。従って、表面層の形成において、ローラ表面を平滑にする必要が生じてきた。これを解決するために、弾性層の表面粗さ以上の膜厚にして、弾性層の凹凸を埋めるように塗装する。
【0066】
表面層は、例えばディップ法、スプレーコート、ロールコートなどの種々公知のコーティング方法により、弾性層上に形成する。
【0067】
計測方法
●イオン化ポテンシャル(eV)及び傾き(Y/eV)の計測は、以下の装置を用い、以下の手法に従って行なう。
・測定装置:大気中光電子分光装置AC−2(理研計器(株)製)
・照射エネルギー:4.2〜6.2eV(紫外光)
・照射光径:2×2mmSq
・べき乗:0.5
・光量:505.3nW
このような条件に従って計測を行う。
イオン化ポテンシャル:規格化光量子収率のベースラインと立ちあがりライン(線形近似)の交点から算出する。また、傾き(Y/eV):規格化光量子収率の立ちあがりライン(線形近似)の傾きから算出する。
このような測定例を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
●トナー帯電量分布q/(単位はfC/10μmで、粒径10μm当たりのトナー帯電量を表す)は、以下の装置を用いて下記条件下で行なった。
・測定装置:E−Spartアナライザー(ホソカワミクロン)
・現像装置:図3
・キャリア:ノンコートタイプ
・トナー:ポリエステル系樹脂(母材)+帯電制御剤(CCA) 体積平均粒径6.5μm
・トナー濃度:5〜7wt%に調整
・マグネットローラ線速:621mm/sec
・現像ローラ線速:270mm/sec
・供給バイアス(マグネットローラと現像ローラ間の電位差):100V
・手順:現像装置(図3)にて、トナー濃度を5〜7wt%に調整した現像剤(キャリアとトナー)をマグネットローラへ供給し、マグネットローラ上で、−2〜−2.5fC/10μmにピーク帯電量を持つように帯電させたトナーを、現像ローラに供給し、現像ローラ上のトナー帯電量分布をE−Spartアナライザーで測定
【実施例】
【0070】
以下、実施例・比較例に基づき、本発明の構成を詳細に説明する。
●弾性層
接着剤を塗布したφ8mmのSUS芯軸の周囲に、カーボンブラックを分散したポリオール(住友バイエルウレタン)とイソシアネート(住友バイエルウレタン)を用いて1ショット法にてウレタンエラストマーの弾性層を成形した。その後、外径研削により、φ16mmに調整することで、4mm厚の弾性層を得た。
【0071】
●コーティング層
<ベース樹脂>
旭電化工業製のAM36(水系ウレタン樹脂)にカーボンブラックを20重量%添加・分散させ、導電化したものを調合した(以降AM36Eと記載する)。
<アミノ樹脂>
以下6種類のアミノ樹脂をベース樹脂の固形分に対して20重量%添加した。
MX035、MX730、MX706、MX042(以上、三和ケミカル)、M30WT、M50WT(以上、住友化学)
【0072】
●テストピース及びローラの作製及び評価
テストピースはSUS基体上に上記塗料をバーコーターにて塗布した後、130℃×1hrの条件で加熱硬化させ、作製した。評価は、初期状態(未研磨)と最外層除去のイオン化ポテンシャルを計測した。最外層の除去は、研磨テープによる研磨を実施した。
ローラは、上記弾性層に上記塗料をスプレーコートにて塗布した後、130℃×1hrの条件で加熱硬化させ、作製した。評価は、初期状態(未研磨)と最外層除去、3μm研磨の状態でトナー帯電量分布を測定した。
【0073】
(実施例1〜6)
・コーティング層のイオン化ポテンシャルは、トナーのイオン化ポテンシャルよりも0.1eV以上小さい。→請求項1
・イオン化ポテンシャルは、最外層除去で初期状態よりも小さくなっている。→請求項7
・イオン化ポテンシャルはおおよそ5eVである。→請求項9
・傾きは20以上ある。→請求項5
・傾きは、最外層除去で初期状態よりも大きくなっている。→請求項8
コーティング層は、分子内にカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂と1種以上のアミノ樹脂の縮合架橋物により形成されていて(→請求項2)、カーボンブラックが含有されていて(→請求項3)、水中に乳化分散されているポリウレタン樹脂組成物である(→請求項4)
【0074】
このようなコーティング層のトナー帯電量分布は、
・初期状態、最外層除去、3μm研磨で、トナー帯電量分布のピークは、−0.5fC/10μmで、ほぼ変化していない。
塗膜が摩耗しても、安定したトナー帯電量分布は得られるが、帯電量が少なく、適切ではないことが分かった。
このトナー担持体を搭載させた画像形成装置にて画像を確認すると、トナーの帯電量が少ないため、画像濃度は薄く、濃度ムラが見られた。また地肌汚れも見られた。さらにトナー飛散も見られた。
【0075】
このようなコーティング層のトナー帯電量分布(実施例1のみ以下に示す)は、
・初期状態では、トナー帯電量分布のピークは、−1.0fC/10μmである。
・最外層を取り除くと、ピーク位置は若干マイナス側にシフトした。
・以降塗膜深さ3μmまでトナー帯電量分布は安定している。
【0076】
塗膜が摩耗しても、適切でかつ安定したトナー帯電量分布が得られることが分かった。
このようなトナー担持体を搭載させた画像形成装置にて画像を確認すると、良好な画像が得られ、トナー飛散などの不具合も未発生であった。
【0077】
【表2】

【0078】
[比較例1]
基体:アルミ製ローラφ26;アルミ材(A6063−T5)として三ツ矢管押し出し素材を用い、三ツ矢管の中心部にφ8のジャーナルをアルミ部インロー部に圧入し、切削加工によりφ26mmに仕上げた。
コーティング層:ポリエステル樹脂(20SS;東洋紡)、メチル化メラミン樹脂(サイメル325/ポリエステル樹脂の固形分に対して20重量%)、ITO導電粒子(アルミナ粉ベース/55wt%)配合塗料をスプレーコートにて塗布した後、160℃×1hrの条件で焼成した。
【0079】
<トナー>
ポリエステル系樹脂100に対して、帯電制御剤(CCA)4重量部、顔料としてカーボンブラック5重量部を内添し、SiO2を1wt%、TiO2を0.3wt%外添したものを粉砕したものである。平均粒径は6.5μmである。
・コーティング層のイオン化ポテンシャルは、トナーのイオン化ポテンシャルとほぼ同等(少なくとも0.1eV以上小さくない。→請求項1を満たしていない。
・イオン化ポテンシャルは、最外層除去で初期状態とほぼ同等。→請求項7を満たしていない。
・イオン化ポテンシャルはおおよそ5.7eVである。→請求項9を満たしていない。
・傾きは初期状態で18.7、最外層除去で12.6である。→請求項5及び8を満たしていない。
・コーティング層は、ポリエステル樹脂と1種以上のアミノ樹脂の縮合架橋物により形成されていて(→請求項2を満足していない)、カーボンブラックが含有されていなく(→請求項3を満足していない)、水中に乳化分散されているポリウレタン樹脂組成物でもない(→請求項4を満足していない)
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
なお本発明で使用される現像装置は、トナー担持体、トナー供給部材、トナー層規制部材、トナーあるいは現像剤が少なくとも具備されているものを表す。また、プロセスカートリッジとは、現像装置、像担持体(感光体)、帯電手段が少なくとも具備されているものを表す。また画像形成装置とは、現像装置、像担持体(感光体)、帯電手段(以上、プロセスカートリッジ)、光書き込み手段、転写部材、定着装置が少なくとも具備されているものを表す。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】現像装置の構成例を示す図である。
【図2】現像装置の構成例を示す他の図である。
【図3】現像装置の構成例を示すさらに他の図である。
【図4】現像装置を搭載したプロセスカートリッジの構成例を示す図である。
【図5】現像装置を搭載したプロセスカートリッジの構成例を示す他の図である。
【図6】現像装置を搭載したプロセスカートリッジの構成例を示すさらに他の図である。
【図7】弾性体を構成として含むトナー担持体の構成例を示す図である。
【図8】金属体を構成として含むトナー担持体の構成例を示す図である。
【図9】本発明に係る画像形成装置の一例(カラー画像形成装置)を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
111 トナー担持体
112 トナー供給部材
113 トナー攪拌部材
114 ケース
115 トナー層規制部材
116 トナー
120 光書き込み装置
127 バネ
132 現像剤供給部材(マグネットローラ)
133 現像剤攪拌部材
135 現像剤層規制部材
137 現像剤(キャリア、トナー)
138、223 バイアス電源(電源)
200 現像装置
210 プロセスカートリッジ
211 感光体
212 帯電部材
310 転写部材
311 芯軸
312 弾性体
313 表面層
322 金属体
400 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながらトナーを担持して静電潜像が形成された像担持体に接触もしくは近接して像担持体上のトナーを供給する前記静電潜像を可視化するトナー担持体において、
前記トナー担持体は基体上にコーティング層を有し、前記コーティング層のイオン化ポテンシャルがトナーのイオン化ポテンシャルよりも0.1eV以上小さいことを特徴とするトナー担持体。
【請求項2】
前記コーティング層は、分子内にカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂と、1種以上のアミノ樹脂の縮合架橋物により形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のトナー担持体。
【請求項3】
前記コーティング層にはカーボンブラックが含有されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のトナー担持体。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂が、水中に乳化分散されているポリウレタン樹脂であることを特徴とする、請求項2に記載のトナー担持体。
【請求項5】
規格化光量子収率Yと、励起エネルギーeVの傾き(Y/eV)が、20以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のトナー担持体。
【請求項6】
コーティング層の最外層が取り除かれていることを特徴とする、請求項5に記載のトナー担持体。
【請求項7】
コーティング層の最外層を取り除いた前記トナー担持体のイオン化ポテンシャルが、コーティング層の最外層を取り除く前のイオン化ポテンシャルよりも小さいことを特徴とする、請求項6に記載のトナー担持体。
【請求項8】
コーティング層の最外層を取り除いた後の前記傾き(Y/eV)が、コーティング層の最外層を取り除く前よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載のトナー担持体。
【請求項9】
コーティング層のイオン化ポテンシャルがおおよそ5eVであることを特徴とする、請求項1〜5あるいは8に記載のトナー担持体。
【請求項10】
請求項9に記載のトナー担持体を搭載した現像装置。
【請求項11】
請求項10に記載の現像装置であって、トナーのイオン化ポテンシャルがおおよそ5.8eVであり、規格化光量子収率Yと励起エネルギーeVの傾き(Y/eV)がおおよそ50であることを特徴とする現像装置。
【請求項12】
請求項11に記載の現像装置を搭載したプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスカートリッジを搭載した画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−3758(P2006−3758A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181880(P2004−181880)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】