説明

トナー

【課題】画像形成におけるトナー消費量を低減出来、且つ低湿環境下における耐久現像性に優れ、ドット再現性に優れた画像が得られるトナーを提供することにある。
【解決手段】トナー担持体上のトナー層厚をトナー規制ブレードによって規制し、静電潜像担持体に該トナー担持体上のトナーで現像する画像形成方法に用いられるトナーであって、
該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位の表面のレーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下であり、且つ該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92乃至70/30であり、
該トナーは少なくとも結着樹脂及び酸化鉄を含有するトナーであって、且つ該トナーは、水系媒体中で得られることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法、又はトナージェット方式記録法の如き画像形成方法、及びそれに用いられるトナー、プロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な電子写真の画像形成方法としては、例えば、光導電性物質を利用し、種々の手段により静電潜像担持体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像を、現像装置により現像してトナー像とすることにより可視化し、次いで、必要に応じて紙のごとき転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力、加熱加圧あるいは溶剤蒸気により定着し、トナー画像を得る方法が知られている。
【0003】
このような電子写真法における現像装置としては、一般にトナー担持体としての現像スリーブの表面に、トナーコート量を規制するためのトナー層厚規制部材としてのゴム製または金属製のトナー規制ブレードを当接させる構成の装置が知られている。
【0004】
このトナー規制ブレードとトナーとの摩擦、及び/または現像スリーブとトナーとの摩擦により、トナーに正または負の電荷を与え、さらにトナー規制ブレードによって、トナーが表面に薄く塗布された現像スリーブによって、現像スリーブと対向した静電潜像担持体表面の静電潜像に飛翔・付着させて現像する手法が一般的に行われている。
【0005】
近年の画像形成装置の技術方向としては、高精細、高品位、高画質の他に、さらなる高速、長期にわたる高信頼性が求められている。高解像、高精細の現像方式を達成するためにトナーの小粒径化や粒度分布のシャープ化など、高現像特性を持ったトナーの開発が進んでいる。
【0006】
このような高い現像性を備えたトナーを従来の現像装置に適用すると、その帯電性や粉体特性などの違いから、トナーがチャージアップしてしまったり、現像スリーブ上に薄層コートすることができずに、画像の精細性を欠いてしまったりする傾向があった。
【0007】
一方で、トナー規制ブレードあるいは現像スリーブなどの改良の試みが種々行われている。
【0008】
例えば、特許文献1には、現像剤担持体表面の硬度と変形率、および現像剤量規制ブレードの現像剤担持体に当接される側の表面の十点平均粗さ(Rz)が0.3乃至20μmである現像装置が提案されている。かかる発明中では、この現像装置を用いて、非磁性黒トナーを評価した例が記載されており、各環境において、べた画像濃度、ムラ、スジなどには効果を発揮している。一方で、長期耐久における安定性については十分な検討がなされておらず、特に一成分磁性トナーを用いた場合などには、耐久安定性が不十分になる傾向があった。
【0009】
また、特許文献2には、現像剤規制部材の表面粗さが、十点表面平均粗さRzで、2.0μmより大きく、且つ最大高さRmaxが、現像剤の平均粒径よりも小さくなるように設定されている現像剤規制部材が開示されている。かかる発明中の実施例に記載されているように、金属ブレードと非磁性トナーの構成においては、確かにローラーセットという現象については効果を発揮するものの、金属ブレード以外の、例えばウレタンゴムブレードやシリコーンゴムブレードを使用した場合は特に、現像特性の耐久安定性や環境安定性において不十分である場合があった。
【0010】
さらに、特許文献3には、弾性ブレード部材の現像ローラと摺擦する面の表面粗さを規定したトナー規制ブレードが提案されている。かかる発明のトナー規制ブレードでは、実施例中で平均粒径が8μmの一成分磁性トナーを用いて、文字太りや帯電安定性について効果があることが開示されているが、現像剤特性について十分に言及されておらず、上述のような高い現像特性を備えたトナーを適用した場合は特に、耐久安定性や環境安定性については不十分となる場合があった。
【0011】
その他、特許文献4乃至8においても、トナー規制ブレードの表面粗さを規定した発明がそれぞれ開示されている。
【0012】
これらの発明においては、いずれも粗さの垂直方向での規定はされているものの、凹凸の間隔、凸部の密度など、横方向での議論はされておらず、環境、耐久条件によっては性能が不十分である場合があり、本発明における思想とは本質的に異なる。
【0013】
上述したトナー規制ブレードを、特にプロセススピードが速く、大容量カートリッジを使用した高速現像システムに適用した場合には、上述したような問題が顕在化する場合があり、さらなる検討の余地が残されていることが現状である。
【0014】
一方、トナー特に酸化鉄を含有するトナーに関するもののうち、特に水系媒体中で得られるものとして、特許文献9乃至24等がある。
【0015】
これらの発明においては、いずれもトナー材料、内部構造について規定されているものの、画像形成における消費量の低減効果と低湿環境下における現像安定性の両立に関して、まだ課題を残している。
【0016】
また、特許文献25や26では、形状係数の変動係数、及び個数粒度分布における個数変動係数を規定した発明が開示されている。この発明によって、画像濃度やカブリの改善効果が得られているが、消費量低減に関する課題が残る。
【0017】
また、特許文献27では、磁性体をスチレンなどの重合によってコーティングすることによって、画像濃度やカブリの改善を行った発明が開示されている。しかし、この発明においても画像形成におけるトナー消費量の低減に関しては議論がなされておらず、改良が求められている。
【0018】
【特許文献1】特開2004−4751号公報
【特許文献2】特開2004−12542号公報
【特許文献3】特開2000−330376号公報
【特許文献4】特開平06−186838号公報
【特許文献5】特開2004−117996号公報
【特許文献6】特登録2986343号公報
【特許文献7】特開2004−94138号公報
【特許文献8】特開2004−117919号公報
【特許文献9】特開平10−239897号公報
【特許文献10】特開2002−202629号公報
【特許文献11】特開2002−251037号公報
【特許文献12】特開2003−43752号公報
【特許文献13】特開2003−43753号公報
【特許文献14】特開2003−316065号公報
【特許文献15】特開2005−107520号公報
【特許文献16】特登録03450686号公報
【特許文献17】特開平05−040366号公報
【特許文献18】特開2001−265058号公報
【特許文献19】特開2002−072540号公報
【特許文献20】特開2002−182429号公報
【特許文献21】特開2003−043735号公報
【特許文献22】特開2003−043736号公報
【特許文献23】特開2003−057951号公報
【特許文献24】特開2003−140383号公報
【特許文献25】特開2001−281922号公報
【特許文献26】特開2001−290305号公報
【特許文献27】特開2002−099112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、上記の如き問題点を解決したトナーを提供することにある。
【0020】
本発明の目的は、画像形成におけるトナー消費量を低減出来、且つ低湿環境下における耐久現像性に優れ、ドット再現性に優れた画像が得られるトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らはこれまでのトナーの消費量低減、そして特に低湿環境下における耐久現像性及びドット再現性の改良について鋭意検討した結果、トナーの表面組成と、トナーに対する帯電付与材の形状の組み合わせが重要であった。具体的には、トナーに酸化鉄を含有させた上で極性物質を表面近傍に集中させ、非極性物質が内包化された構造を持たせ、且つ、ブレードの表面性を制御し、最適な粗さとする。これによって、低湿環境下における現像性を満足するだけでなく、消費量の低減、ドット再現性を大幅に向上させることが可能となり、本発明を完成させた。
【0022】
即ち本発明は、トナー担持体上のトナー層厚をトナー規制ブレードによって規制し、静電潜像担持体に該トナー担持体上のトナーで現像する画像形成方法に用いられるトナーであって、該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位の表面のレーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下であり、且つ該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92乃至70/30であり、該トナーは少なくとも結着樹脂及び酸化鉄を含有するトナーであって、且つ該トナーは、水系媒体中で得られることを特徴とするトナーに関する。
【0023】
更に上記目的を達成するために、本出願に係る第二の発明は、該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される側の表面のレーザー顕微鏡で測定される凹凸の平均間隔Smが5.0μm以上200.0μm以下であることを特徴とする。
【0024】
更に上記目的を達成するために、本出願に係る第三の発明は、前記トナーの平均円形度が0.955以上であることを特徴とする。
【0025】
更に上記目的を達成するために、本出願に係る第四の発明は、前記酸化鉄が、前記結着樹脂100質量部に対して10乃至200質量部含有されることを特徴とする。
【0026】
更に上記目的を達成するために、本出願に係る第五の発明は、前記酸化鉄が表面を疎水化処理されていることを特徴とする。
【0027】
更に上記目的を達成するために、本出願に係る第六の発明は、前記トナーが、
I)X線光電子分光分析により測定される、トナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満であり、
II)透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察より得られるトナーの投影面積相当径をCとし、酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが50個数%以上存在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、画像形成におけるトナー消費量を低減出来、且つ低湿環境下における耐久現像性に優れ、ドット再現性に優れた画像形成が可能なトナーが提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明者らはこれまでのトナーの消費量低減、そして特に低湿環境下における耐久現像性及びドット再現性の改良について鋭意検討した結果、トナーの表面組成と、トナーに対する帯電付与材の形状の組み合わせが重要であった。具体的には、トナーに酸化鉄を含有させた上で極性物質を表面近傍に集中させ、非極性物質が内包化された構造を持たせ、且つ、ブレードの表面性を制御し、最適な粗さとする。これによって、低湿環境下における現像性を満足するだけでなく、消費量の低減、ドット再現性を大幅に向上させることが可能となることを見出した。
【0030】
即ち、本発明は、トナー担持体上のトナー層厚をトナー規制ブレードによって規制し、静電潜像担持体に該トナー担持体上のトナーで現像する画像形成方法に用いられるトナーであって、該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位の表面のレーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下であり、該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92乃至70/30であり、該トナーは、結着樹脂、酸化鉄を少なくとも含有するトナー粒子と無機微粒子を含有し、該トナー粒子の走査型プローブ顕微鏡で測定される平均面粗さが5.0nm以上60.0nm以下であり、該トナーは、水系媒体中で得られることを特徴とする。
【0031】
このように、トナーの表面及び内部組成、そして弾性ブレードの表面性を制御し、組み合わせて用いることで、低湿環境下における現像性を満足するだけでなく、消費量の低減、ドット再現性を大幅に向上させることが出来る。これらの効果を得るために、画像形成に関わるトナーの表面が均一且つ高い電荷を保持しており、しかも現像時に個々のトナーに解れることが重要である。水系媒体中で酸化鉄と共に製造されたトナーは、比較的極性の高い物質がトナー表面近傍に集中して存在する一方、非極性物質及び酸化鉄がトナー内部へ入り込んだ構造を取る。そのため、表面は帯電能力が高く、酸化鉄がトナー内部へ電荷を伝播させる効果を発揮することで、高い電荷をトナー粒子表面に均一に分布させることが出来ると考えられる。このようなトナーを解れさせ、且つ帯電分布をシャープにするため、弾性ブレードの表面性に着目して検討した結果、トナー粒子数固程度の凹凸を有する弾性ブレードを用いて、少量のトナーを掻き取りつつ摩擦することが有効であった。更なる検討によって、凹凸の程度は十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92乃至70/30である場合が最適値であることを見出した。この弾性ブレードを用いることによって、トナー担持体上のトナーが掻き取られながら摩擦を受ける。トナー表面の極性が高いことから、ウレタン等で成る弾性ブレードとは親和性が高く、分布のシャープな帯電が付与される。また、凹凸にトナーが捕捉されることでトナーの層を形成しており、その層と、新たに補給されたトナーが混ざりながら摩擦帯電し、トナー同士の帯電量差を縮めていると考えている。また、弾性ブレードの凹凸に解されながら必要最少量が現像部へ供給されるため、トナーが個々に現像され、消費量やドット再現性を大きく向上させたと考えている。
【0032】
本発明で用いるトナー規制ブレードは、通常のブレードを上述の物性値になるよう、粗面化加工したものである。
【0033】
本発明に用いられるトナー規制ブレード部材は特に限定されないが、例えば、ウレタンゴム、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等を用いることができ、ウレタンゴムを用いることがトナー規制ブレードに対するトナーの親和性が高まり、帯電分布をシャープ化することでドット再現性向上や消費量低減に効果があることから好ましい。トナー規制ブレードの支持部材は、金属平板、樹脂平板、より具体的には、ステンレススチール板、りん青銅版、アルミ板等から作製することが好ましい。なお、ブレード部材の上記主材料に導電材料等の添加剤を加えることもできる。また、支持部材とブレード部材との接合は、例えば、ホットメルト等の接着剤によって接着できる。
【0034】
本発明においてトナー規制ブレードを粗面化する方法としては、例えば、物理的手法としては、サンドブラスト法、ショットブラスト法、サンドぺーパーを用いる方法などを挙げることができ、化学的手法としては、エッチング法、粗粒子を含む被膜を形成する方法などを挙げることができる。
【0035】
その中でも本発明においては、遠心成型法や連続注入成型法などのドラム状金型を用いて成型することが好ましい。即ち、金型内にトナー規制ブレード形成液を注入し、回転させつつトナー規制ブレードを成型する工程においては、金型は回転しているため、遠心力が働き、トナー規制ブレード形成液中のエアー等は内側に抜け出し、トナー規制ブレード形成液は金型面に押し付けられるので、エアー等の混入なく、金型の凹凸が正確に転写されたトナー規制ブレードを得ることができる。このとき、金型内周面の凹凸の形成方法としては、金型面に対して粗面化粒子によるビーズブラスト法を用いる方法や、金型内周面に離型層を設けて、その離型層の表層部に球形のフッ化黒鉛等の粗面化処理剤を含ませる方法が好ましく、凹凸部の高さ(深さ)や凹凸間隔を粗面化粒子の粒径及び含有量によって制御することができる。例えば、図1のモデル図に示すように、粗面化粒子によりビーズブラストされた金型11から転写されたシート12は、凸部は滑らかな丸みを帯びた円弧形状となり、粒子の粒径、吐出圧力を調整することで、凹部と凸部の割合(比率)や深さ(高さ)を制御することができる。一方、図1のモデル図に示すように、金型面21上に粗面化処理剤を含んだ離型層22を形成したものから転写されるシート23においては、凸部は比較的平坦な形状となり、凹部は比較的深い表面形状を得ることができる。この場合も、粗面化処理剤の粒径や含有量を調整することで、凹部と凸部の割合(比率)や深さ(高さ)を制御することができる。そして、このようにして得られたシートの凹凸面(金型面)が、現像スリーブとの当接面側になるように、トナー規制ブレードを構成することで、トナーの層厚規制を行う。
【0036】
トナー規制ブレード部材として、ゴム材料を使用する場合、ゴム硬度は、(JIS)Aで40°以上100°以下のものが、前述の接触部面積比率を制御する上で好ましい。より好ましくは、(JIS)A45°乃至95°、さらに好ましくは、(JIS)A50°乃至90°のものがよい。ゴム硬度が40°未満であると、トナー担持体に対する当接圧が不足しやすく、またトナー担持体とトナー規制ブレードとのニップ部が必要以上に広くなりやすく、トナー劣化が進む原因となりうる。一方、100°を超える場合には、当接圧が高くなりすぎて、トナー劣化が加速されることによる耐久濃度の低下や、摩擦帯電が均一に行えなくなることから帯電分布がブロードとなり、消費量の増大傾向があるため、好ましくない。
【0037】
本発明で用いるトナー規制ブレードは、トナー担持体に当接される部位の表面のレーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下としたものである。Rzが5.0μm未満であると、トナー担持体上のトナーを掻き取る能力が不足するため、帯電量は低く、分布もブロードになることによって消費量が増加する傾向がある。Rzが25.0μmよりも大きくなると、トナー担持体上にコートされるトナーの量が過剰となることから、帯電量が不均一になり、消費量が増大する傾向がある。
【0038】
本発明で用いるトナー規制ブレードは、粗さをトナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比からも規定している。この面積比は、粗さの最高部と最低部の差と同時にブレードの弾性も規定する値である。本発明において、該面積比は8/92乃至70/30である。8/92未満であると、トナー担持体上にコートされるトナーが過剰となり、帯電量も不均一となることから、トナー消費量が増大する傾向がある。70/30を超えると、弾性ブレードがトナーを掻き取る能力が弱まり、帯電量は不均一となるために消費量が増大する傾向がある。
【0039】
更に、本発明の弾性ブレードでは、表面の凹凸間隔に対する指標であるSm値が、5.0μm以上200.0μm以下であることが好ましい。Smが5μm未満又は200μmを超える場合、現像部へ供給されるトナーの解れが不足するため、凝集したトナーが現像されやすくなり、ドット再現性が悪化する傾向になる。
【0040】
本発明のトナーは、酸化鉄を含有するものである。酸化鉄を含むと、トナーはトナー担持体へのコートが安定し、帯電量分布も制御しやすいため、消費量やカブリ、ドット再現性に対して有利である。酸化鉄は、結着樹脂100質量部に対して、10乃至200質量部用いることが好ましい。酸化鉄の配合量が10質量部未満では現像剤の着色力が乏しく、また、帯電分布がブロードになることから、カブリが悪化し、消費量は増大する傾向がある。一方、200質量部を超えると、現像剤担持体への磁力による保磁力が強まり現像性が低下し、耐久濃度が低下しやすくなる。
【0041】
本発明のトナーに用いられる酸化鉄は、例えば下記方法で製造される。
【0042】
硫酸第一鉄水溶液などの第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムの如きアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上(好ましくはpH8乃至10)に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶をまず生成する。
【0043】
次に、種晶を含むスラリー状の液に、前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを6乃至10に維持しつつ空気を吹込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは6未満にしない方が好ましい。酸化反応の終期に液のpHを調整し、磁性酸化鉄が一次粒子になるよう十分に撹拌する。カップリング剤を添加して十分に混合撹拌し、撹拌後に濾過し、乾燥し、軽く解砕することで疎水性処理磁性酸化鉄粒子が得られる。あるいは、酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄粒子を、乾操せずに別の水系媒体中に再分散させた後、再分散液のpHを調整し、十分撹拌しながらシランカップリング剤を添加し、カップリング処理を行っても良い。
【0044】
酸化鉄の製造の際に第一鉄塩水溶液に用いる第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄の利用が可能であり、硫酸第一鉄以外には更に塩化鉄等が可能である。
【0045】
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法では一般に反応時の粘度の上昇を防ぐこと、及び、硫酸鉄の溶解度から鉄濃度0.5乃至2mol/リットルの硫酸第一鉄水溶液が用いられる。硫酸鉄の濃度は一般に薄いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。また、反応に際しては、空気量が多い程、そして反応温度が低いほど微粒化しやすい。
【0046】
また、本発明のトナーにおいて用いられる酸化鉄は、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素の如き元素を含んでもよく、四三酸化鉄、γ−酸化鉄を主成分とするものであり、これらを1種または2種以上を併用して用いられる。
【0047】
また、酸化鉄の形状としては、8面体、6面体、球状、針状、鱗片状などがあるが、8面体、6面体、球状、不定形の如き異方性の少ないものが画像濃度を高める上で好ましい。
【0048】
本発明に使用される酸化鉄は、表面が疎水化処理されたものが好ましい。疎水化処理は酸化鉄の分散性を向上させる上で効果的であり、疎水化処理されていない場合、トナー表面に酸化鉄が露出しやすく、電荷の低下に伴う画像濃度の低下が起き易い。疎水化処理としては、カップリング剤による処理が濃度安定性、カブリ抑止、ドット再現性に対し有利であり、好ましい。
【0049】
本発明に使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤が挙げられる。特に、シランカップリング剤を用いると、酸化鉄の分散性を向上させ、帯電量分布をシャープにすることで画像濃度の安定性を高めるだけでなく、カブリの抑止効果やドット再現性を向上させる働きがあるため、好ましい。シランカップリング剤は一般式(A)
RmSiYn (A)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1乃至3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基の如き炭化水素基を示し、nは1乃至3の整数を示す。]
で示されるものである。例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0050】
特に、式(B)
p2p+1−Si−(OCq2q+13 (B)
[式中、pは2乃至20の整数を示し、qは1乃至3の整数を示す]
で示されるアルキルトリアルコキシシランカップリング剤を使用して酸化鉄を疎水化処理するのが良い。
【0051】
磁性粉体の表面処理として水系媒体中でカップリング剤により処理するには、水系媒体中で適量の磁性粉体及びカップリング剤を撹拌する方法が挙げられる。
【0052】
水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水系媒体として水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調整剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールの如きノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、水に対して0.1乃至5質量%添加するのが良い。pH調整剤としては、塩酸の如き無機酸が挙げられる。
【0053】
撹拌は、例えば撹拌羽根を有する混合機(具体的には、アトライター、TKホモミキサーの如き高剪断力混合装置)で、酸化鉄微粒子が水系媒体中で、一次粒子になるように充分におこなうのが良い。
【0054】
さらにまた、酸化鉄以外に他の着色剤を併用して含有しても良い。併用し得る着色材料としては、磁性あるいは非磁性無機化合物、公知の染料及び顔料が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト、ニッケルの如き強磁性金属粒子、またはこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素を加えた合金、ヘマタイト、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニンが挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いても良い。
【0055】
次に、トナーの円形度について説明する。静電荷像担持体上の非画像部へのトナー付着や転写残余トナー量を低減するには、トナー粒子の帯電性が十分で且つ均一であることが必要である。さらに、高画質化の観点から微小粒径のトナーを用いる場合は、トナー粒子の付着力が増大するため、トナー粒子の形状も静電荷像担持体上の非画像部へのトナー付着に大きな影響を及ぼす。特に、円形度としては0.955以上であると、トナー粒子が球形に近くなるめ、粒子の付着面積が減少し、転写残余トナー量が低減されることで画像に対する消費量低減が達成される。
【0056】
次に本発明におけるトナーの製造方法を説明する。
【0057】
本発明のトナーを製造する方法としては、水系媒体中から得られるものを用いている。これは、水系媒体との親和性の観点から極性−非極性成分との間に局在/分離が生じやすいため、本発明のトナー表面における優れた帯電性と弾性ブレードとの親和性を併せ持つ構造となることから、特に耐久濃度安定性に対し有利であり、好ましい。製造方法の例としては、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、会合重合法等が挙げられ、中でも懸濁重合法が本発明の最適な物性を得やすく、好ましい。
【0058】
次に懸濁重合法による製造方法を説明する。懸濁重合トナーは、一般にトナー組成物、すなわち結着樹脂となる重合性単量体中に、磁性粉体、離型剤、可塑剤、荷電制御剤、架橋剤、場合によって着色剤等トナーとして必要な成分及びその他の添加剤、例えば、高分子重合体、分散剤等を適宜加えて、分散機等に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁して製造できる。
【0059】
本発明に関わるトナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
【0060】
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独、または混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンまたはスチレン誘導体を単独で、あるいは他の単量体と混合して使用する事がトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明に係わるトナーの製造においては、重合性単量体組成物に樹脂を添加して重合しても良く、中でも特にポリエステル樹脂を含有する事が製造安定性や、トナーとしての耐久安定性に対して大きな効果があるため、好ましい。
【0061】
本発明に使用されるポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分から構成される通常のものが使用でき、両成分については以下に例示する。
【0062】
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また式(I)で表されるビスフェノール誘導体;
【0063】
【化1】

[式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2乃至10である。]
【0064】
あるいは式(I)の化合物の水添物、また、式(II)で示されるジオール;
【0065】
【化2】

【0066】
あるいは式(II)の化合物の水添物のジオールが挙げられる。
【0067】
2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6乃至18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。
【0068】
さらに、アルコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコールが挙げられ、酸成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸が挙げられる。
【0069】
本発明のトナーの製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時に半減期0.5乃至30時間であるものを、重合性単量体に対し0.5乃至20質量部の添加量で重合反応を行なうと、分子量1万乃至10万の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることが出来る。
【0070】
重合開始剤例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0071】
本発明のトナーを製造する際は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001乃至15質量部である。
【0072】
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合物として用いられる。
【0073】
本発明のトナーを重合法で製造する方法では、一般に上述のトナー組成物等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解または分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることも出来る。
【0074】
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
【0075】
本発明のトナーを製造する場合には、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
【0076】
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して、0.2乃至20質量部使用することが望ましい。また、上記分散安定剤は単独で用いても良いし、複数種併用してもよい。さらに、0.001乃至0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
【0077】
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることが出来る。例えば、燐酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることが出来、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合に依る超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。
【0078】
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
【0079】
前記重合工程においては、重合温度は40℃以上、一般には50乃至90℃の温度に設定して重合を行なう。この温度範囲で重合を行なうと、内部に封じられるべき離型剤やワックスの類が、相分離により析出して内包化がより完全となる。残存する重合性単量体を消費するために、重合反応終期ならば、反応温度を90乃至150℃にまで上げることは可能である。
【0080】
重合トナー粒子は重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により無機微粉体を混合し表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。また、製造工程に分級工程を入れ、粗粉や微粉をカットすることも可能である。
【0081】
本発明のトナーでは、酸化鉄の分散状態を下記のようにコントロールすると、耐久濃度の安定性が増し、好ましい。
【0082】
本発明では、酸化鉄の疎水化処理及び製造条件の制御により、磁性体のトナー表面への露出が無く、且つトナーの極めて表面近傍に磁性体が集中して存在する構造を有するトナーが一定量存在させると画像濃度の耐久安定性が大きく向上するため好ましい。
【0083】
即ち、
I)X線光電子分光分析により測定される、トナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満であり、
II)透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察より得られるトナーの投影面積相当径をCとし、酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが50個数%以上存在するトナーである。
【0084】
このような酸化鉄の分布構造を有することによって本発明においては、特に耐久性が向上する。まず、(B/A)が0.001未満、好ましくは0.0005未満であるような、酸化鉄がトナー粒子表面に殆ど露出していない現像剤を用いれば、帯電部材や転写部材などによりトナーが静電荷像担持体表面に圧接されるような画像形成方法においても、長期にわたって静電荷像担持体の磨耗を低減させることが可能となる。(B/A)が0.001以上となると、磁性体の吸湿/帯電リークにより特に耐久による画像濃度の低下が生じやすくなる。
【0085】
加えて、表面が実質的に樹脂のみであるにも関わらずD/C≦0.02に関係を満足するトナーが50個数%以上、好ましくは65個数%以上、さらに好ましくは75個数%であるように、低抵抗の磁性体が表面近傍に存在することによって、特に低温低湿下でのチャージアップが抑えられ、耐久濃度安定性が向上する。D/C≦0.02の関係を満足するトナーが50個数%未満であると、過半数のトナーにおいて少なくともD/C=0.02の境界線よりも外側には磁性粒子が全く存在しないことになる、すなわちトナーの表面が高抵抗となりかつ樹脂の帯電特性が直接反映されやすくなる為、低温低湿下での画像濃度低下が生じてしまう。
【0086】
さらに、本発明においてトナーは、流動化剤として個数平均1次粒径4乃至80nm、より好ましくは6乃至40nmの無機微粉体が添加されることも好ましい形態である。無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。
【0087】
無機微粉体の個数平均1次粒径が80nmよりも大きい場合、或いは80nm以下の無機微粉体が添加されていない場合には良好なトナーの流動性が得られず、トナー粒子への帯電付与が不均一になり易く、カブリの増大、画像濃度の低下、消費量の増大等の問題を避けられない。一方、無機微粉体の個数平均1次粒径が4nmよりも小さい場合には、無機微粉体の凝集性が強まり、1次粒子ではなく解砕処理によっても解れ難い強固な凝集性を持つ粒度分布の広い凝集体として挙動し易く、凝集体の現像、像担持体或いはトナー担持体等を傷つけるなどによる画像欠陥を生じ易くなり好ましくない。
【0088】
本発明において、無機微粉体の個数平均1次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真で、更に走査型電子顕微鏡に付属させたXMA等の元素分析手段によって無機微粉体の含有する元素でマッピングされたトナーの写真を対照しつつ、トナー表面に付着或いは遊離して存在している無機微粉体の1次粒子を100個以上測定し、個数基準の平均1次粒径、個数平均1次粒径を求めることで測定出来る。
【0089】
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用できる。
【0090】
ケイ酸微粉体としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO32-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
【0091】
個数平均1次粒径が4乃至80nmの無機微粉体の添加量は、トナー粒子に対して0.1乃至3.0質量%であることが好ましく、添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%超では定着性が悪くなる。
【0092】
また、無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
【0093】
本発明において無機微粉体は、疎水化処理された物であることが環境安定性が向上し好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、帯電量が不均一になり易く、トナー飛散が起こり易くなる。
【0094】
疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤を単独で或いは併用して処理しても良い。
【0095】
その中でも、シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、より好ましくは、無機微粉体をシラン化合物で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものが高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、トナー飛散を防止する上でよい。
【0096】
そのような無機微粉体の処理方法としては、例えば第一段反応として、シラン化合物でシリル化反応を行ないシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成することができる。
【0097】
上記シリコーンオイルは、25℃における粘度が10乃至200,000mm2/sのものが、さらには3,000乃至80,000mm2/sのものが好ましい。10mm2/s未満では、無機微粉体に安定性が無く、熱および機械的な応力により、画質が劣化する傾向がある。200,000mm2/sを超える場合は、均一な処理が困難になる傾向がある。
【0098】
使用されるシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
【0099】
無機微粉体をシリコーンオイルで処理する方法としては、例えば、シラン化合物で処理された無機微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、無機微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散させた後、無機微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法でもよい。無機微粉体の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧機を用いる方法がより好ましい。
【0100】
シリコーンオイルの処理量は、無機微粉体100質量部に対し1乃至40質量部、好ましくは3乃至35質量部が良い。シリコーンオイルの量が少なすぎると良好な疎水性が得られず、多すぎるとカブリ発生等の不具合が生ずる傾向がある。
【0101】
本発明で用いられる無機微粉体は、トナーに良好な流動性を付与させる為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積が20乃至350m2/g範囲内のものが好ましく、より好ましくは25乃至300m2/gのものが更に良い。
【0102】
比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
【0103】
本発明のトナーは、クリーニング性向上等の目的で、さらに一次粒径30nmを超える(好ましくは比表面積が50m2/g未満)、より好ましくは一次粒径50nm以上(好ましくは比表面積が30m2/g未満)の無機又は有機の球状に近い微粒子をさらに添加することも好ましい形態のひとつである。例えば球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
【0104】
本発明に用いられるトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末、あるいは酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤、あるいは例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤、ケーキング防止剤、また、逆極性の有機微粒子、及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いる事もできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
【0105】
本発明のトナーにおいては、重量平均粒径が2乃至10μmであることが好ましく、より好ましくは3乃至10μmであり、さらに、4.0乃至9.0μmが好ましい。
【0106】
トナーの重量平均粒径が10μmを超えるような場合、微小ドット画像の再現性が低下する。一方、トナーの重量平均粒径が2μmより小さい場合には、本発明の弾性ブレードの表面粗さに対し、粒径が小さすぎるために適正な帯電付与が行われず、帯電不良によるカブリが悪化し、消費量が増大する傾向がある。
【0107】
本発明のトナーは、結着樹脂に対して1乃至50質量%の離型剤を含有することが好ましい。
【0108】
本発明のトナーに使用可能な離型剤としては、公知のワックスが使用できる。例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体などが含まれる。ここでの誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。ワックスの酸価や、変性度などを調整することによって、トナー中での酸化鉄の分散状態を制御することも可能である。さらに、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸またはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスも使用できる。
【0109】
その中でも、DSC測定において、30乃至100℃の領域に吸熱ピークのピークトップを示すものが好ましい。DSC測定において吸熱が30℃未満の領域に存在すると、常温においてもワックス成分の染み出しが起こるようになり、使用困難なレベルまで保存性が悪化してしまう。一方、吸熱が100℃を超えた領域に存在すると、水系媒体中で重合法により直接トナーを得る場合、造粒中にワックス成分が析出しやすく、表面電荷、トナー強度が落ちるために耐久濃度が低下しやすくなる。
【0110】
本発明のトナーには、荷電特性を安定化するために荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
【0111】
さらに、トナーを直接重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如き芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料もしくはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤として四級アンモニウム塩、その四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。特にスルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物を用いると、極性基を有することからトナー表面に均一に存在し、帯電均一性の向上に伴うカブリの抑制、ドット再現性の改良効果が得られるため、好ましい。
【0112】
これらの荷電制御剤は、重合性単量体100質量部に対して0.5乃至10質量部使用することが好ましい。
【0113】
以下に、本発明のトナーを好適に用いることの出来る画像形成装置の一例を図に沿って具体的に説明する。
【0114】
図2は上記画像形成装置の構成を示す模式的断面図であり、図3は図2の現像装置部分の構成を示す模式的断面図である。図の画像形成装置は一成分のトナーを用いた現像方式を採用した電子写真装置であり、100は感光ドラムで、その周囲に一次帯電ローラー117、現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナー116、レジスタローラー124等が設けられている。そして感光体100は一次帯電ローラー117によって、例えば−700Vに帯電される(印加電圧は交流電圧−2.0kVpp、直流電圧−700Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光され、形成されるべき画像に応じた静電潜像が感光体100上に形成される。感光体100上に形成された静電潜像は現像器140によって一成分磁性現像剤で現像され、転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像をのせた転写材は搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーニング手段116によりクリーニングされる。現像器140は図3に示すように感光体100に近接してアルミニウム、ステンレスの如き非磁性金属で作られた円筒状のトナー担持体102(以下現像スリーブと称す)が配設され、感光体100と現像スリーブ102との間隙は図示されないスリーブ/感光体間隙保持部材等により所定距離(例えば約300μm)に維持されている。現像スリーブ内にはマグネットローラー104が現像スリーブ102と同心的に固定、配設されている。但し現像スリーブ102は回転可能である。マグネットローラー104には図示のように複数の磁極が具備されており、S1は現像、N1はトナーコート量規制、S2はトナーの取り込み/搬送、N2はトナーの吹き出し防止に影響している。トナーは、トナー塗布ローラ141によって、現像スリーブ102に塗布され、付着して搬送される。搬送されるトナー量を規制する部材として、弾性ブレード103が配設され弾性ブレード103の現像スリーブ102に対する当接圧により現像領域に搬送されるトナー量が制御される。現像領域では、感光体100と現像スリーブ102との間に直流及び交流の現像バイアスが印加され、現像スリーブ上現像剤は静電潜像に応じて感光体100上に飛翔し可視像となる。
【0115】
本発明において、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位の表面の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Sm、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比は、レーザー顕微鏡(VK−8500 キーエンス社製)を用いた非接触式測定法により測定される。
【0116】
多くの従来発明においては、接触式の表面粗さ測定装置を使用し、トナー層厚規制部材の表面粗さを調整している。接触式の測定においては、測定力に応じて触針の先端半径が定められているものの、トナー規制ブレード表面の凹凸の形状によっては、先端半径の影響が出てしまう場合があり、同じ測定面であっても先端半径の違いから、異なった断面曲線が得られることもあった。垂直方向の粗度に対して、相対的に平面方向の凹凸の密度が高くなる場合などは特に、接触式測定装置を用いた表面粗さ調整法では、凹凸の垂直方向及び平面方向について厳密に定義された所望の表面性に調整することが困難であった。
【0117】
以下に、本発明における非接触測定法の具体例を示す。
【0118】
<トナー規制ブレード表面の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smの測定方法>
1)試料の準備
トナー規制ブレードを約1cm四方の大きさにカットする。ただしレーザー顕微鏡での観察においてレーザーを当てるのに十分な面積があれば、特にカットする大きさは限定されない。
2)測定条件
測定時の各パラメーター等は以下のように設定する。
対物レンズ倍率:20倍
光学ズーム倍率:1倍
デジタルズーム倍率:1倍
RUN MODE:カラー超深度
LASER(ゲイン):594
LASER(オフセット):−1328
カメラ設定(シャッタ):158
カメラ設定(ホワイトバランス):3200k
カメラ設定(ゲイン):0
3)試料のセット
レーザー顕微鏡のステージに、カットしたトナー規制ブレードを、トナー担持体に当接される部位が観察面となるようにセットする。
4)測定
測定PITCHを0.1μmとしてトナー規制ブレード表面を測定する。
5)画像処理
測定で得られた画像の全体的な歪みや傾きを補正するため、以下の処理を行った。
【0119】
[1.傾き補正]
補正方法:面補正(自動)
処理対象:高さ
測定で得られた画像中の細かいノイズ成分を除去するため、以下の処理を行った。
【0120】
[2.フィルタ処理]
処理対象:平滑化(高さデータ)
サイズ:7×7
実行回数:1
ファイルタイプ:メディアン
【0121】
[3.フィルタ処理]
処理対象:平滑化(高さデータ)
サイズ:3×3
実行回数:1
ファイルタイプ:単純平均
6)解析
解析には高さデータを用いる。得られた高さデータ画像にスケールを引き、200μm×260μmの範囲を選び、この範囲での十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定結果とする。
【0122】
[十点平均粗さRz]
表面粗さ測定モードで得られた値とする。
【0123】
[凹凸の平均間隔Sm]
線粗さ測定モードで、直線を任意の水平方向に5本、任意の垂直方向に5本引き、計10本の直線から得られた10個の凹凸の平均間隔Smのうち上下限値2点を除外し、残りの8点で平均をとった値とする。
【0124】
<トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比の測定方法>
本発明のトナーを評価する際に用いられる現像装置において、トナー規制ブレードとトナー担持体が当接されている状態を模擬的に再現する方法として、トナー規制ブレードを切り取り、このトナー規制ブレードに実際の当接圧に相当する荷重をかけた時の状態を作り出し観察を行った。以下にその方法を示す。なお面圧14.4Paは、現像装置において、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位での最も好ましい面圧に相当する値である。
1)試料の準備
[観察試料の作製]
カットしたトナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位を上側にして、その上にガラス板を載せる。このときトナー規制ブレードとガラス板の重心が一致するようにする。さらにガラス板の両側に質量が同じ重りをそれぞれ載せる。それぞれの重りの位置は、トナー規制ブレードとガラス板の重心に対して左右対称になるようにするとともに、トナー規制ブレードの観察時に対物レンズのアプローチを妨げないようにする。
【0125】
[トナー規制ブレード]
トナー規制ブレードを0.8cm四方の大きさに正確にカットする。
【0126】
[ガラス板]
ガラス板は表面が平滑であるものが好ましい。特にスライドガラス(厚さ0.9乃至1.2mm、76×26mm、水縁磨 松浪硝子社製)が本測定においてはより好ましく用いられる。
【0127】
[荷重用のおもり]
本測定では、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させる。0.8cm四方のトナー規制ブレードに対して、ガラス板を面圧14.4Paで接触させるには、147gの荷重が必要となる。ガラス板と、同質量の重り2個の質量の合計が147gとなるように重りを準備する。重りは任意のものが使用可能である。本測定ではサンプル瓶に比重の大きい粉体あるいは水を入れ、所望の質量の重りを作製する方法が好ましい。比重の大きい粉体には鉄粉を使用するのが好ましい。サンプル瓶にはスクリューバイアル(SV−30 外径30mm、高さ65mm、肉厚1.5mm、口内径19.8mm、容量30ml 日電理化硝子社製)を使用するのが好ましい。
2)測定条件
測定時の各パラメーター等は以下のように設定する。
対物レンズ倍率:20倍
光学ズーム倍率:1倍
デジタルズーム倍率:1倍
RUN MODE:カラー超深度
LASER(ゲイン):594
LASER(オフセット):−1328
カメラ設定(シャッタ):158
カメラ設定(ホワイトバランス):3200k
カメラ設定(ゲイン):0
3)試料のセット
レーザー顕微鏡のステージに、荷重をかけた0.8cm四方のトナー規制ブレードを、トナー担持体に当接される部位が観察面となるようにセットする。
4)測定
測定PITCHを0.1μmとしてトナー規制ブレード表面とガラス板の接触面を含むように測定する。
5)画像処理
測定で得られた画像の全体的な歪みや傾きを補正するため、以下の処理を行った。
【0128】
[1.傾き補正]
補正方法:面補正(自動)
処理対象:高さ
測定で得られた画像中の細かいノイズ成分を除去するため、以下の処理を行った。
【0129】
[2.フィルタ処理]
処理対象:平滑化(高さデータ)
サイズ:7×7
実行回数:1
ファイルタイプ:メディアン
【0130】
[3.フィルタ処理]
処理対象:平滑化(高さデータ)
サイズ:3×3
実行回数:1
ファイルタイプ:単純平均
6)解析
解析には高さデータを用いる。得られた高さデータ画像では、トナー規制ブレードとガラス板の接触部は非接触部に対して明確に黒く表示される(図4)。色の違いで接触部と非接触部の面積を2値化することで、トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比を計算することができる。接触部と非接触部の面積を2値化する方法としては、得られた画像データをOHPシートあるいは厚紙にプリントアウトして、画像の接触部と非接触部をカットして分別して、それぞれのOHPシートあるいは厚紙の質量から、接触部の面積と非接触部の面積の比を計算する方法が挙げられる。
【0131】
次に、本発明における各種材料、トナー物性データの測定法を以下に詳述する。
【0132】
(1)トナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)
本発明におけるトナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)は、ESCA(X線光電子分光分析)により表面組成分析を行い算出した。
【0133】
本発明では、ESCAの装置および測定条件は、下記の通りである。
使用装置:PHI社(Physical Electronics Industries,Inc.)製 1600S型 X線光電子分光装置
測定条件:X線源 MgKα(400W)
分光領域800μmφ
本発明では、測定された各元素のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(原子%)を算出した。
【0134】
測定試料としては、トナーを用いるが、トナーに外添剤が添加されている場合には、イソプロパノールの如きトナーを溶解しない溶媒を用いて、トナーを洗浄し、外添剤を取り除いた後に測定を行う。
【0135】
(2)トナーの平均円形度
本発明における円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて粒子形状の測定を行い、円形度を下記式により求める。更に下式で示すように、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
【0136】
【数1】

【0137】
(3)トナーの粒度分布
測定装置としてはコールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びCX−1パーソナルコンピュータ(キヤノン製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)を使用できる。測定法としては前記電解水溶液100乃至150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1乃至5ml加え、さらに測定試料を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターTA−II型により、アパチャーとして100μmアパチャーを用いて、トナーの体積、個数を測定して2乃至40μmの粒子の体積分布と個数分布とを算出する。それから数平均粒径(D1)体積分布から求めた重量基準の重量平均径D4(各チャンネルの中央値をチャンネルごとの代表値とする)、体積分布から求めた重量基準の12.7μm以上の重量分布を求める。
【0138】
(4)D/Cの測定方法
本発明において、TEMによる具体的なD/Cや磁性体分布の測定方法としては、常温硬化性のエポキシ樹脂中へ観察すべき粒子を十分に分散させた後に温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を、そのまま、あるいは凍結してダイヤモンド歯を備えたミクロトームにより薄片状のサンプルとして観察する方法が好ましい。
【0139】
該当する粒子数の割合の具体的な決定方法については、以下のとおりである。TEMにてD/Cを決定するための粒子は、顕微鏡写真により得られるトナーの断面積から円相当径(これを投影面積相当径Cとする)を求め、その値がコールターカウンターを用いる後述の方法により求めた数平均粒径の±10%の幅に含まれるものを該当粒子とする。その該当粒子100個について、磁性体とトナー粒子表面との距離の最小値(D)を計測し、D/Cを求め、D/C値が0.02以下の粒子の割合を計算する。
【0140】
(5)離型剤の吸熱ピークの測定
本発明において、離型剤の吸熱量及び吸熱ピークトップの測定は、「ASTM D 3417−99」に準じて行う。測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いる事が出来る。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし、試料を一回200℃まで昇温させ熱履歴を除いた後、急冷し、再度、昇温速度10℃/minにて温度30乃至200℃の範囲で昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。後述の実施例においても同様に測定した。
【0141】
(6)酸化鉄の磁気特性の測定
酸化鉄の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場、79.6kA/mの下で測定した値である。
【実施例】
【0142】
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。
【0143】
[トナー規制ブレード製造方法]
(トナー規制ブレード製造方法1)
140℃に加熱された遠心成型金型を、800rpmの回転速度で回転させたまま、熱硬化性樹脂の液剤(エポキシ樹脂 耐熱温度150℃)を遠心成型金型内に流し込み、充分に加熱硬化させることで1.0mmの厚みの保持層(偏心補償層)を設けた。次に、その保持層の内周面にシリコーンゴムの離型層を2.0mmの厚みになるように形成する過程で、離型層が完全に硬化する前に、その内周面にトルエン中に分散した粗面化処理剤(フッ化黒鉛 重量平均粒径8.0μm、標準偏差1.53)を散布した。そのようにして形成された離型層内部にウレタン形成液を流し込み、Rz=10.2μm、Sm=35.1、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の全体に占める面積比率が0.40であるトナー規制ブレード1を得た。このトナー規制ブレードのゴム硬度は65°、厚さは1.17mmであった。このようにして得られたトナー規制ブレードを所望の寸法にプレス切断し、金属製のトナー規制ブレード支持部材に接着剤で張り合わせたトナー規制ブレード1を評価に用いた。
【0144】
(トナー規制ブレード製造方法2)
平均粒径15.2μm、標準偏差5.23のフッ化黒鉛を用いた以外はトナー規制ブレード製造方法1と同様にしてトナー規制ブレード2を得た。
【0145】
(トナー規制ブレード製造方法3)
遠心成型金型の内周面を、4.5kg/cm2のエアー圧で#60のガラスビーズ粒子を吹き付けることによってブラストした。その遠心成型金型内にウレタン形成液を流しみ、Rzが24.5μm、Smが120.3、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の全体に占める面積比率が0.27であるトナー規制ブレード3を得た。このトナー規制ブレードのゴム硬度は65°、厚さは1.17mmであった。このようにして得られたトナー規制ブレードを所望の寸法にプレス切断し、金属製のトナー規制ブレード支持部材に接着剤で張り合わせたトナー規制ブレード3を評価に用いた。
【0146】
(トナー規制ブレード製造方法4)
平均粒径15.2μm、標準偏差5.23のフッ化黒鉛を散布した後に平均粒径4.1μm、標準偏差1.35のフッ化黒鉛を散布した以外はトナー規制ブレード製造方法1と同様にしてトナー規制ブレード4を得た。
【0147】
(トナー規制ブレード製造方法5)
平均粒径4.1μm、標準偏差1.35のフッ化黒鉛を用いた以外はトナー規制ブレード製造方法1と同様にしてトナー規制ブレード5を得た。
【0148】
(トナー規制ブレード製造方法6)
粗面化処理剤の散布量を減らした以外はトナー規制ブレード製造方法5と同様にしてトナー規制ブレード6を得た。
【0149】
(トナー規制ブレード製造方法7)
ガラスビーズ粒子の吹き付け量をトナー規制ブレード製造方法3よりも少ない量とした以外はトナー規制ブレード製造方法3と同様にしてトナー規制ブレード7を得た。
【0150】
(トナー規制ブレード製造方法8)
#180のガラスビーズ粒子を用い、吹き付け量をトナー規制ブレード製造方法7よりも少ない量とし、更に得られたトナー規制ブレードを硬化処理した以外はトナー規制ブレード製造方法7と同様にしてトナー規制ブレード8を得た。
【0151】
(酸化鉄1の製造)
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0乃至1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH9に維持しながら、空気を吹き込み、80乃至90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0152】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9乃至1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8に維持して、空気を吹込みながら酸化反応を進め、酸化反応の終期にpHを約6に調整し、シランカップリング剤[n−C613Si(OCH33]を酸化鉄100部に対し0.6部添加し、十分撹拌した。生成した疎水性酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで凝集している粒子を解砕処理し、疎水性の酸化鉄1を得た。物性を表1に示す。
【0153】
(酸化鉄2の製造)
酸化鉄1の製造方法で、処理剤を[n−C613Si(OCH33]からプレンアクトKR TTS(味の素社製)に変更した以外は同様に行い、酸化鉄2を得た。物性を表1に示す。
【0154】
(酸化鉄3の製造)
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0乃至1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH9に維持しながら、空気を吹き込み、80乃至90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0155】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9乃至1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8に維持して、空気を吹込みながら酸化反応を進め、酸化反応の終期にpHを約6に調整し、十分撹拌した。生成した酸化鉄粒子を常法により洗浄、濾過、乾燥し、次いで凝集している粒子を解砕処理し、酸化鉄3を得た。物性を表1に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
(極性重合体1の製造)
還流管,撹拌機,温度計,窒素導入管,滴下装置及び減圧装置を備えた加圧可能な反応容器に、溶媒としてメタノール250質量部、2−ブタノン150質量部及び2−プロパノール100質量部、モノマーとしてスチレン94.8質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル5質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸0.2質量部を添加して撹拌しながら還流温度まで加熱した。重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート5質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して4時間撹拌を継続し、更にt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート0.50質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、更に5時間撹拌して重合を終了した。
【0158】
[実施例1]
<トナー1の製造>
イオン交換水709質量部に0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液451質量部を投入し60℃に加温した後、1.0mol/リットル−CaCl2水溶液67.7質量部を徐々に添加してCa3(PO42を含む水系媒体を得た。
【0159】
一方、下記の処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合した。
【0160】
スチレン 78質量部
n−ブチルアクリレート 22質量部
飽和ポリエステル樹脂(酸価8、Mp12000) 5質量部
酸化鉄1 90質量部
極性重合体1 1質量部
この単量体組成物を60℃に加温し、そこにエステルワックス(mp.73℃)15部を混合溶解した。これに重合開始剤ブチルパーオキサイド2質量部を溶解して重合性単量体系を得た。
【0161】
前記水系媒体中に上記重合性単量体系を投入し、60℃,N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて10,000rpmで15分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ、80℃で1時間反応させた。その後液温を80℃とし更に10時間撹拌を続けた。反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えてCa3(PO42を溶解し、濾過、水洗、乾燥してトナー粒子を得た。
【0162】
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理した、処理後のBET比表面積が120m2/gの疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、トナー1(重量平均粒径D4:7.0μm)を調製した。トナー1の物性を表2に示す。
【0163】
評価1.画像濃度評価
画像濃度は、空気中の水分量が少ない場合には帯電過剰による低下や、カブリの悪化が起こりやすい。特に印字率の比較的低い、トナーの入れ替わりが遅い画像を出力する場合や、高速で連続して出力する場合には顕著である。そこで本発明では、厳しい条件下での性能を評価するため、低温低湿環境下で画像を連続且つ高速で画出しする評価法を採用した。
【0164】
トナー1を800g秤量し、市販のレーザービームプリンターLaserJet4300n(ヒューレットパッカード社製)を改造して、スリーブを弾性ブレード1に変更し、プロセススピードを350mm/secとしたものと4300n用CRGと共に低温低湿環境(20℃,10%RH、以下L/L)で12時間調温・調湿した。その後、トナー1を現像器へ投入し、4300nへ設置し、ベタ黒画像を10枚画出しした後、印字率4%の画像をA4で1万枚画出しした。その後、更にベタ黒画像を10枚画出し、初期及び耐久後のベタ黒10枚ずつの濃度を測定した。なお、濃度は反射濃度計RD918(マクベス社製)で一枚につき6点の濃度を測定した。なお、濃度の測定位置はA4用紙の長辺を3分割、短辺を2分割して出来る6つの長方形それぞれの中心部分とした。得られた60点のデータ中での平均値を記録した。
【0165】
また、耐久ラスト5枚の画像をサンプリングし、カブリの測定を行った。カブリは、東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用し、各画像について、印字されていない領域の最悪値を求め、画像5枚で平均した値をカブリとした。フィルターは、グリーンフィルターを用い、カブリは下記の式より算出した。
カブリ(反射率)(%)=標準紙上の反射率(%)−サンプル非画像部の反射率(%)
【0166】
なお、カブリの判断基準は以下の通り。
A:非常に良好(1.5%未満)
B:良好(1.5%以上乃至2.5%未満)
C:普通(2.5%以上乃至4.0%未満)
D:悪い(4%以上)
【0167】
評価2.消費量評価
上述の評価1において、1万枚画出しの際の1001枚乃至3000枚までトナー消費量を算出した。
【0168】
評価3.ドット再現性評価
ドット再現性は、図5に示す80μm×50μmのチェッカー模様を用いて画出し試験を行ない、顕微鏡により黒色部の欠損の有無を観察し、評価した。
A:100個中欠損が2個以下
B:100個中欠損が3個以上5個以下
C:100個中欠損が6個以上8個以下
D:100個中欠損が9個以上15個以下
E:100個中欠損が16個以上
【0169】
[実施例2乃至5]
用いる弾性ブレードを弾性ブレード2乃至5に代えた以外は実施例1と同様にして、評価を行った。トナー物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0170】
[実施例6]
<トナー2の製造>
トナー1の製造において、造粒時におけるTK式ホモミキサーの回転数を10,000rpmから9,000rpmとした以外は同様に行い、トナー2(重量平均粒径D4:7.2μm)を調製した。
【0171】
トナー2を用いて、実施例4と同様に評価を行った。トナー物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0172】
[実施例7]
<トナー3の製造>
トナー1の製造において、造粒時におけるTK式ホモミキサーの回転数を10,000rpmから8,000rpmとした以外は同様に行い、トナー3(重量平均粒径D4:7.5μm)を調製した。
【0173】
トナー3を用いて、実施例4と同様に評価を行った。トナー物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0174】
[実施例8]
<トナー4の製造>
トナー1の製造において、酸化鉄1の添加量を10質量部に変えた以外は同様に行い、トナー4(重量平均粒径D4:7.9μm)を調製した。
トナー4を用いて、実施例4と同様に評価を行った。トナー物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0175】
[実施例9]
<トナー5の製造>
トナー1の製造において、酸化鉄1の添加量を200質量部に変えた以外は同様に行い、トナー5を得た。
【0176】
トナー5を用いて、実施例4と同様に評価を行った。トナー物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0177】
[実施例10]
<トナー6の製造>
(実施例9)
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 334質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 334質量部
イソフタル酸 230質量部
テレフタル酸 46質量部
ジブチル錫オキサイド 1.5質量部
からなる混合物を230℃で6時間反応し、10乃至15mmHgの減圧下4時間反応させた。160に冷却し、これに無水フタル酸16質量部を加え2時間反応させた後、80℃に冷却して酢酸エチル1000質量部、イソホロンジイソシアネート77質量部からなる混合物を加えて2時間反応させ、ポリエステル1を得た。
【0178】
上記ポリエステル1 220質量部
イソホロンジアミン 5質量部
からなる混合物を50℃で2時間反応させ、ポリエステル2を得た。
【0179】
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 724質量部
イソフタル酸 230質量部
テレフタル酸 46質量部
ジブチル錫オキサイド 1.5質量部
からなる混合物を230℃で6時間反応し、10乃至15mmHgの減圧下4時間反応させて、ポリエステル3を得た。
【0180】
ポリエステル2 30質量部
ポリエステル3 50質量部
メチルエチルケトン 80質量部
酢酸エチル 80質量部
エステルワックス(融点73℃) 15質量部
酸化鉄2 200質量部
極性化合物1 1質量部
からなる混合物を、アトライター(三井金属社製)を用いて3時間分散し、分散液を調製した。
【0181】
高速撹拌装置TK−ホモミキサーを備えた2リットルの四つ口フラスコ中に、イオン交換水350質量部と、0.1モル/リットル−Na3PO4水溶液225質量部を添加して、ホモミキサーの回転数を10,000rpmに調整し、65℃に加温せしめた。ここに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液34質量部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO42を含む水系分散媒体を調製した。
【0182】
上記分散液272重量部高速撹拌装置へ投入し、撹拌下65℃で回転数10,000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後、高速撹拌装置から通常のプロペラ撹拌装置に変更し、撹拌装置の回転数を150rpmに維持し、内温を95℃に昇温して3時間保持してトナー粒子分散液を調整した。
【0183】
このトナー粒子分散液を、25℃まで冷却した。水系分散媒体中に希塩酸を添加し、難水溶性分散剤を溶解した。溶解し、濾過、水洗、乾燥してトナー粒子を得た。
【0184】
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理した、処理後のBET比表面積が120m2/gの疎水性シリカ微粉体0.8質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、トナー6(重量平均粒径D4:6.2μm)を調製した。
【0185】
トナー6を用いて、実施例4と同様に評価を行った。トナー物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0186】
トナー1の製造において、使用する酸化鉄を酸化鉄2とし、添加量を200質量部とした以外はトナー1の製造と同様にして、トナー6を得た。
【0187】
トナー6を用いて、実施例4と同様に評価を行った。トナー物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0188】
[実施例11]
<トナー7の製造>
(樹脂微粒子分散液の調製)
スチレン 303質量部
n ブチルアクリレート 105質量部
ジビニルベンゼン 2質量部
ドデカンチオール 6質量部
四臭化炭素 4質量部
前記成分を混合溶解して溶液を調製した。
【0189】
また、非イオン性界面活性剤6質量部、及びアニオン性界面活性剤10質量部をイオン交換水550質量部に溶解し、前記溶液を加えてフラスコ中で分散し乳化して10分間ゆっくり撹拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム5質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入した。次いで、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを撹拌しながらオイルバスで70℃まで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続して、平均粒径160nmの樹脂微粒子を含有するアニオン性樹脂微粒子分散液1を得た。
【0190】
(磁性体分散液の調製)
酸化鉄2 200質量部
ドデシルベンゼンスルフォン酸Na塩 10質量部
イオン交換水 400質量部
前記成分を混合溶解し、ホモジナイザーにより10分間分散し、磁性体分散液1を得た。
【0191】
(離型剤分散液の調製)
エステルワックス(融点 73℃) 50質量部
カチオン性界面活性剤ネオゲン RK(第一工業製薬) 5.5質量部
イオン交換水 200質量部
前記成分を圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理を施し、中心径0.16μmの離型剤粒子を含有する離型剤分散液1を得た。
【0192】
(トナーの製造)
樹脂微粒子分散液1 200質量部
酸化鉄分散液1 283質量部
離型剤分散液1 64質量部
極性重合体1 1質量部
前記成分をホモジナイザーで十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら凝集温度58℃まで加熱した。その後、58℃で60分間保持した後、さらに樹脂微粒子分散液1を30質量部追加して緩やかに撹拌した。
【0193】
その後、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを7.0に調整した後、フラスコを密閉し、撹拌を継続しながら80℃まで加熱した。その後、pHを4.0まで低下して12時間保持した。反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水による十分な洗浄を行った後、濾過、洗浄、乾燥を行いトナー粒子を得た。得られたトナー粒子7を100質量部と、トナー1の製造で使用したシリカ1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、重量平均粒径D4が9.4μmのトナー7を得た。実施例1と同様に評価し、トナー7の物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0194】
[実施例12]
<トナー8の製造>
トナー7の製造において、使用する酸化鉄を酸化鉄3に変えた以外は同様に行い、重量平均粒径D4が9.3μmのトナー8を得た。
【0195】
トナー8を用いて、実施例4と同様に評価を行った。トナー物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0196】
[実施例13]
<トナー9の製造>
樹脂微粒子分散液、磁性体分散液はトナー8と同様に調整し、使用した。
【0197】
(離型剤分散液の調製)
サゾール社製C105 50質量部
カチオン性界面活性剤ネオゲン RK(第一工業製薬) 5.5質量部
イオン交換水 200質量部
前記成分を圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理を施し、中心径0.21μmの離型剤粒子を含有する離型剤分散液2を得た。
【0198】
(トナーの製造)
樹脂微粒子分散液1 200質量部
酸化鉄分散液1 283質量部
離型剤分散液2 64質量部
極性重合体1 1質量部
前記成分をホモジナイザーで十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら凝集温度58℃まで加熱した。その後、58℃で60分間保持した後、さらに樹脂微粒子分散液1を30質量部追加して緩やかに撹拌した。
【0199】
その後、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを7.0に調整した後、フラスコを密閉し、撹拌を継続しながら80℃まで加熱した。その後、pHを3.0 まで低下して2時間保持した。反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水による十分な洗浄を行った後、濾過、洗浄、乾燥を行いトナー粒子を得た。得られたトナー粒子7を100質量部と、トナー1の製造で使用したシリカ1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、重量平均粒径D4が3.9μmのトナー9を得た。実施例1と同様に評価し、トナー9の物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0200】
[比較例1]
<比較用トナー1の製造>
(スチレン−アクリル樹脂1の製造)
スチレン 83質量部
ブチルアクリレート 17質量部
上記モノマーを130℃に保持したまま3時間熟成し、230℃に昇温して反応を行い、スチレン−アクリル樹脂1を得た。
【0201】
(比較用トナー1の製造)
・スチレン−アクリル樹脂1 100質量部
・酸化鉄3 90質量部
・エステルワックス(融点 73℃) 15質量部
・アゾ系鉄錯体(保土ヶ谷化学社製 T−77) 1質量部
上記の処方の材料を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度120℃に設定した2軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルを用いて1mm以下に粗粉砕した。この粗粉砕物を機械式粉砕機であるジェットミルを用い、微粉砕した。
【0202】
粉砕して得た微粉砕品を、気流式分級機で分級し、トナー分級品を得た。このトナー分級品100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理した、処理後のBET比表面積が120m2/gの疎水性シリカ微粉体1.0質量部とをヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合して、比較用トナー1(重量平均粒径10.1μm)を調製した。
【0203】
評価は、実施例1において、使用する弾性ブレードを弾性ブレード6にした以外は同様に評価を行った。比較用トナー1の物性を表2に、評価結果を表3に示す。
【0204】
[比較例2]
用いるトナーを比較用トナー1とし、弾性ブレードを弾性ブレード7としたこと以外は実施例1と同様にして、評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0205】
[比較例3]
用いるトナーを比較用トナー1とし、用いる弾性ブレードを弾性ブレード8としたこと以外は比較例1と同様にして、評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0206】
【表2】

【0207】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】トナー規制ブレードを粗面化する方法の説明図である。
【図2】画像形成装置の構成を示す模式的断面図である。
【図3】図2の現像装置部分の構成を示す模式的断面図である。
【図4】トナー規制ブレードのトナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積を2値化した図である。
【図5】ドット再現性評価に用いるチェッカー模様の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー担持体上のトナー層厚をトナー規制ブレードによって規制し、静電潜像担持体上の静電潜像を該トナー担持体上のトナーで現像する画像形成方法に用いられるトナーであって、
該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位の表面のレーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下であり、且つ該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92乃至70/30であり、
該トナーは少なくとも結着樹脂及び酸化鉄を含有するトナー粒子を有するトナーであって、且つ該トナー粒子は、水系媒体中で得られることを特徴とするトナー。
【請求項2】
該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される側の表面のレーザー顕微鏡で測定される凹凸の平均間隔Smが5.0μm以上200.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナーの平均円形度が0.955以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記酸化鉄が、前記結着樹脂100質量部に対して10乃至200質量部含有されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
前記酸化鉄が表面を疎水化処理されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記トナーが、
I)X線光電子分光分析により測定される、トナー表面に存在する炭素元素の含有量(A)に対する鉄元素の含有量(B)の比(B/A)が0.001未満であり
II)透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断面観察より得られるトナーの投影面積相当径をCとし、酸化鉄とトナー表面との距離の最小値をDとしたとき、D/C≦0.02の関係を満足するトナーが50個数%以上存在する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
トナー担持体上のトナー層厚をトナー規制ブレードによって規制し、静電潜像担持体に該トナー担持体上のトナーで現像する画像形成方法に用いられるプロセスカートリッジであって、
該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位の表面のレーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下であり、且つ該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92乃至70/30であり、
該トナーは少なくとも結着樹脂及び酸化鉄を含有するトナーであって、且つ該トナーは、水系媒体中で得られることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
該トナーが、請求項2乃至6のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする請求項7に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
トナー担持体上のトナー層厚をトナー規制ブレードによって規制し、静電潜像担持体に該トナー担持体上のトナーで現像する画像形成方法であって、
該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位の表面のレーザー顕微鏡で測定される十点平均粗さRzが5.0μm以上25.0μm以下であり、且つ該トナー規制ブレードの該トナー担持体に当接される部位と、ガラス板を面圧14.4Paで接触させた時の、接触部の面積と非接触部の面積の比が8/92乃至70/30であり、
該トナーは少なくとも結着樹脂及び酸化鉄を含有するトナーであって、且つ該トナーは、水系媒体中で得られることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
該トナーが、請求項2乃至6のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−304722(P2008−304722A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152218(P2007−152218)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】