説明

トラクタにおけるアタッチメント式フォークリフト

【課題】 トラクタ前部が持ち上げられることがなく安定的であり、かつ、コンパクトな構造でリフトの可動範囲を大きくし、しかも、積載した状態でも安定的に移動することもできるトラクタにおけるアタッチメント式フォークリフトを提供すること。
【解決手段】 トラクタTの後部の連結部Jに着脱自在であって、鉛直方向に起立した枠体からなるフレーム本体1と;爪状のフォーク部材2と;回動自在な車輪31を備えたキャスター3と;流体動力源からの流体圧を伝達可能なホース部材4と;前記フレーム本体1の前面に略鉛直な起立状態で配設されており、このホース部材4を介して送入される流体により伸縮可能であって、かつ、先端にはヒンジ部51が設けられた流体圧シリンダー5と;一端が前記フレーム本体1とトラクタTとの連結部にヒンジ連結されている一方、他端がフォーク部材2に連結された棒状の昇降アーム6と;を具備して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用等のトラクタにおいて付加使用するアタッチメント式のフォークリフトの改良、更に詳しくは、トラクタ前部が持ち上げられることがなく安定的であり、かつ、コンパクトな構造でリフトの可動範囲を大きくし、しかも、積載した状態でも安定的に移動することもできるトラクタにおけるアタッチメント式フォークリフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、農作業用の車両としてトラクタが使用されており、後部にロータリーやハロー、プラウ等を牽引して土壌を耕したり、キャリアを牽引して物品を運搬したりすることができる。
【0003】
また、農作業においては、軽トラック等に農作物等を積載して運搬することも多くあることから、前記のような農用のトラクタの動力を利用して、物品を持ち上げて昇降させることができるフォークリフトが開発されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる<特許文献1>記載のフォークリフトにあっては、フレームの支持部分がリフト上昇時に地上に浮き上がってしまうため、フォークリフトに重量物を積載すると、バランスを崩して、軽い方であるトラクタの前輪が持ち上がってしまい、非常に危険であるという問題があった。
【0005】
また、かかる構造では、昇降用のシリンダーが、フレームの内側に同軸に直接固定されているため、シリンダーの可動範囲がそのままリフトの昇降可動範囲になってしまい、可動範囲を大きくしようとすると、不可避的にシリンダーのピストン長を大型化する必要があり、しかも、フレームが上方に突出して作業上の使い勝手も悪くなってしまうという問題があった。
【0006】
更にまた、フレームを接地させる支点として、トラクタ前輪の浮き上がりを防止するものも開示されているが(特許文献2および3参照)、リフトに積載した物品を移動させる必要がある場合には、この接地部材が可動しないためにフレームを引き擦ってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−48398号公報
【特許文献2】実開平6−35293号公報
【特許文献3】実開昭55−63396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のアタッチメント式のフォークリフトに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、トラクタ前部が持ち上げられることがなく安定的であり、かつ、コンパクトな構造でリフトの可動範囲を大きくし、しかも、積載した状態でも安定的に移動することもできるトラクタにおけるアタッチメント式フォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、トラクタTの後部の連結部Jに着脱自在であって、鉛直方向に起立した枠体からなるフレーム本体1と;
このフレーム本体1の後面側に昇降自在に支持された爪状のフォーク部材2と;
前記フレーム本体1の下端部に接地した状態で配設され、回動自在な車輪31を備えたキャスター3と;
流体動力源からの流体圧を伝達可能なホース部材4と;
前記フレーム本体1の前面に略鉛直な起立状態で配設されており、このホース部材4を介して送入される流体により伸縮可能であって、かつ、先端にはヒンジ部51が設けられた流体圧シリンダー5と;
この流体圧シリンダー5のヒンジ部51に中間部がヒンジ連結された棒状部材であって、一端が前記フレーム本体1とトラクタTとの連結部にヒンジ連結されている一方、他端がフォーク部材2に連結された棒状の昇降アーム6と;を具備して構成するという技術的手段を採用したことによって、トラクタにおけるアタッチメント式フォークリフトを完成させた。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、フォーク部材2の前後の傾倒角度を調節可能な傾倒機構7を備えるようにするという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ホース部材4を介して流体圧シリンダー5に流入する流体の流体量を小段階で調節可能な流量調節機構41を備えるようにするという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ホース部材4が、トラクタTからの流体圧を伝達可能にするという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、トラクタの後部の連結部に着脱自在であって、鉛直方向に起立した枠体からなるフレーム本体と;このフレーム本体の後面側に昇降自在に支持された爪状のフォーク部材と;前記フレーム本体の下端部に接地した状態で配設され、回動自在な車輪を備えたキャスターと;流体動力源からの流体圧を伝達可能なホース部材と;前記フレーム本体の前面に略鉛直な起立状態で配設されており、このホース部材を介して送入される流体により伸縮可能であって、かつ、先端にはヒンジ部が設けられた流体圧シリンダーと;この流体圧シリンダーのヒンジ部に中間部がヒンジ連結された棒状部材であって、一端が前記フレーム本体とトラクタとの連結部にヒンジ連結されている一方、他端がフォーク部材に連結された棒状の昇降アームと;を具備して構成したことによって、トラクタ前部が持ち上げられることがなく安定的であり、かつ、コンパクトな構造でリフトの可動範囲を大きくし、しかも、積載した状態でも安定的に移動することもできることから、実用的利用価値は頗る高いものがあると云える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態のフォークリフトを表わす斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のフォークリフトの使用状態を表わす概略側面図である。
【図3】本発明の実施形態のフォークリフトの使用状態を表わす概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0017】
本発明の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。図1中、符号1で指示するものはフレーム本体であり、このフレーム本体1は、金属等の剛性部材を組み立てて、鉛直方向に起立させた枠体からなる。
【0018】
また、符号2で指示するものはフォーク部材であり、このフォーク部材2は、農作物等の物品を載置したパレット等に差込み可能な一対の爪部21・21を備えた部材である。
【0019】
更にまた、符号3で指示するものはキャスターであり、このキャスター3は、回動自在な車輪31を備えている。本実施形態では、最大耐荷重が500kg以上の高強度のものを採用する。
【0020】
更にまた、符号4で指示するものはホース部材であり、このホース部材4は、流体動力源からの流体圧を伝達可能な部材である。なお、本実施形態の流体は油(オイル)にするとともに、トラクタTに配設された流体動力源からの流体圧を伝達可能にする。この流体動力源としては、他に、供給用の油圧ポンプ等(自動または手動)を別途設置することもできる。
【0021】
更にまた、符号5で指示するものは流体圧シリンダーであり、この流体圧シリンダー5は、前記フレーム本体1の前面(トラクタTとの間)に略鉛直な起立状態で配設されており、このホース部材4を介して送入される流体により伸縮可能であって、かつ、先端にはヒンジ部51が設けられている。本実施形態では、少なくとも10トン以上のシリンダー能力のものを採用する。
【0022】
更にまた、符号6で指示するものは昇降アームであり、この昇降アーム6は、前記流体圧シリンダー5のヒンジ部51に中間部がヒンジ連結された棒状部材であって、一端が前記フレーム本体1とトラクタTとの連結部にヒンジ連結されている一方、他端がフォーク部材2に連結されている。本実施形態ではチェーン61の各端部をそれぞれフレーム本体1の下部とフォーク部材2とに固定して、当該昇降アーム6に設けたスプロケット61aに噛合している。
【0023】
しかして、本実施形態の構成および使用方法を以下に説明する。まず、前記フレーム本体1は、トラクタTの後部の連結部Jに着脱自在である。トラクタTに後部には、通常、ロータリー等を牽引するためのロッド等の連結部Jが配設されており、この連結部Jにおいて、シャックル等の治具により強固に連結固定することができる。
【0024】
そして、このフレーム本体1を鉛直方向に起立した状態にするとともに、このフレーム本体1の下端部にキャスター3を常時接地した状態で配設する。本実施形態では、左右両側に一つずつ設ける。
【0025】
次に、前記フォーク部材2は、フレーム本体1の後面側に昇降自在に支持されている。本実施形態では、自由端側に一対の爪部21・21を有しているとともに、L字型に屈曲した基端側が、フレーム本体1の内側面に設けられたガイドレールに掛合され、これに沿って昇降動することができる。本実施形態のフォークリフトによる積み荷作業は、主として、軽トラックの荷台への積み下ろしを対象とするため、爪部21の可動範囲の最高点は、地上100cm程度であっても良い。
【0026】
なお、本実施形態では、フォーク部材2の前後の傾倒角度(あおり角度)を調節可能な傾倒機構7を設けることができる。具体的には、伸縮自在なシリンダー部材を用いることができ、フレーム本体1の上部と、連結部Jとの間に掛架することができる(図2および図3参照)。このシリンダー部材は自動または手動を問わない。
【0027】
次に、流体圧シリンダー5が、前記フレーム本体1の前面に略鉛直な起立状態で配設されている。本実施形態では、油圧式のものを採用する。この流体圧シリンダー5は、前記ホース部材4を介して送入される流体(オイル)により伸縮可能である。
【0028】
この流体は、トラクタTの後部の連結ロッドを移動させるための流体圧系統を利用することができ、これらは同じ流体圧タンクを併用して、バルブ切り替え式にしたものや独立式にしたものにすることができる。
【0029】
また、この流体圧シリンダー5の先端にはヒンジ部51が設けられており、かつ、ヒンジ部51に昇降アーム6の中間部がヒンジ連結されている。
【0030】
即ち、この昇降アーム6は、その一端が、フレーム本体1とトラクタTとの連結部にヒンジ連結されている一方、他端がフォーク部材2に連結されているため、前記流体圧シリンダー5を伸縮すれば、その可動範囲(ピストン長)よりも大きな距離でフォーク部材2を移動させることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、流体圧シリンダー5の僅かな伸縮によっても、フォーク部材2の移動距離が大きくなって、微小距離の調整が必要となるので、ホース部材4を介して流体圧シリンダー5に流入する流体の流体量を小段階(段階的あるいは無段階的)で調節可能な流量調節機構41を設けることができる。
【0032】
以上のように構成した本実施形態におけるフォークリフトによれば、フレーム本体1を鉛直方向に起立した状態にするとともに、下端部において、キャスター3を常時接地した状態で配設したことにより、このキャスター3が支点となることから、リフトに載荷してもトラクタ前部が持ち上げられることがなく安定的であり、しかも、積載した状態でも安定的に移動することもできる。
【0033】
また、必要に応じて、流体動力源をトラクタTから供給することにより、流体動力源を兼用しつつも、コンパクトな機構でフォーク部材2の昇降運動させることができ、農作業の効率化を実現することができる。
【0034】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、流体圧シリンダー5は、油圧式のものに限らず、水圧等の液体式や空気圧式のものを採用することができる。
【0035】
また、キャスター3の数量を増加することもできるし、更にまた、昇降アーム6において、流体圧シリンダー5のヒンジ部51と、フォーク部材2側先端部との距離を大きくすることにより、フォーク部材2の昇降可能範囲をより大きくすることもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0036】
1 フレーム本体
2 フォーク部材
21 爪部
3 キャスター
31 車輪
4 ホース部材
41 流量調節機構
5 流体圧シリンダー
51 ヒンジ部
6 昇降アーム
61 チェーン
61a スプロケット
7 傾倒機構
T トラクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ(T)の後部の連結部(J)に着脱自在であって、鉛直方向に起立した枠体からなるフレーム本体(1)と;
このフレーム本体(1)の後面側に昇降自在に支持された爪状のフォーク部材(2)と;
前記フレーム本体(1)の下端部に接地した状態で配設され、回動自在な車輪(31)を備えたキャスター(3)と;
流体動力源からの流体圧を伝達可能なホース部材(4)と;
前記フレーム本体(1)の前面に略鉛直な起立状態で配設されており、このホース部材(4)を介して送入される流体により伸縮可能であって、かつ、先端にはヒンジ部(51)が設けられた流体圧シリンダー(5)と;
この流体圧シリンダー(5)のヒンジ部(51)に中間部がヒンジ連結された棒状部材であって、一端が前記フレーム本体(1)とトラクタ(T)との連結部にヒンジ連結されている一方、他端がフォーク部材(2)に連結された棒状の昇降アーム(6)と;を具備して構成したことを特徴とするトラクタにおけるアタッチメント式フォークリフト。
【請求項2】
フォーク部材(2)の前後の傾倒角度を調節可能な傾倒機構(7)を備えたことを特徴とする請求項1記載のトラクタにおけるアタッチメント式フォークリフト。
【請求項3】
ホース部材(4)を介して流体圧シリンダー(5)に流入する流体の流体量を小段階で調節可能な流量調節機構(41)を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のトラクタにおけるアタッチメント式フォークリフト。
【請求項4】
ホース部材(4)が、トラクタ(T)の流体動力源からの流体圧を伝達可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のトラクタにおけるアタッチメント式フォークリフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91901(P2012−91901A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239761(P2010−239761)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(596006042)
【Fターム(参考)】