説明

トラクタ

【課題】 比較的安価に油圧取出ポートを追加する。
【解決手段】 機体前部及び機体後部に作業機を連結可能なクローラトラクタ1であって、油圧ポンプ14の下流に設けられる第一外部油圧取出部15と、該第一外部油圧取出部15の下流で油路を分流するプライオリティバルブ16と、一方の分流油路に設けられる後部作業機用昇降制御バルブ17と、他方の分流油路に設けられる後部作業機用傾き制御バルブ18と、プライオリティバルブ16と傾き制御バルブ18の間に設けられる第二外部油圧取出部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部及び後部に作業機を連結可能なクローラトラクタなどのトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のトラクタでは、機体後部に連結される後部作業機の高さや傾きを制御するために、後部作業機用の昇降制御バルブや傾き制御バルブが標準装備されているが、更には、機体前部にドーザなどの前部作業機を連結する場合や、油圧アクチュエータが必要な後部作業機を連結する場合を想定し、外部油圧取出部が設けられている。この外部油圧取出部は、通常、複数(例えば、3つ)のバルブを連設して構成されており、複数の油圧アクチュエータに対して油圧供給を行うことが可能である。
【特許文献1】特開2003−175741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この種のトラクタでは、連結する作業機の数や種類によって、外部油圧取出部の油圧取出ポート数が不足することがあった。例えば、機体前部にドーザを連結した場合、ドーザを昇降させるリフトシリンダ、ドーザのアングル角を変更するアングルシリンダ、ドーザのチルト角を変更するチルトシリンダなどに油圧供給を行う必要があるが、これらの油圧供給を全て外部油圧取出部から行うと、外部油圧取出部の空きポートが少なくなり、他の作業機に対する油圧供給が困難になる場合があった。そこで、外部油圧取出部にバルブを増設したり、ドーザ専用の油圧源を設けることが提案されるが、この場合には、大幅なコストアップを招来するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、走行機体の前部及び後部に作業機を連結可能なトラクタであって、油圧ポンプの下流に設けられる第一外部油圧取出部と、該第一外部油圧取出部の下流で油路を分流するプライオリティバルブと、一方の分流油路に設けられる後部作業機用昇降制御バルブと、他方の分流油路に設けられる後部作業機用傾き制御バルブと、前記プライオリティバルブと前記傾き制御バルブの間に設けられる第二外部油圧取出部とを備えることを特徴とする。このようにすると、傾き制御用油圧回路を分岐切換えする程度の簡単な変更で油圧の外部取出しが可能になるので、比較的安価に油圧取出ポートを追加することができる。
また、前記第二外部油圧取出部は、前記傾き制御バルブと既存ブロックの間に介設される追加ブロックと、該追加ブロックに設けられる分流切換バルブとを備えることを特徴とする。このようにすると、既存のバルブやブロックを生かしつつ、最少限の追加部品で第二外部油圧取出部を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はクローラトラクタであって、該クローラトラクタ1は、機体フレーム2の上部に原動機部3や操縦部4を備えると共に、機体フレーム2の下部に左右一対のクローラ走行部5を備え、さらに、機体フレーム2の後部に後部作業機連結部6を備えて構成されている。
【0006】
後部作業機連結部6は、例えば三点リンク機構からなる昇降リンク機構で構成され、ロータリ耕耘作業機などの後部作業機(図示せず)が連結される。後部作業機連結部6には、リフトシリンダ7やリフトロッドシリンダ8が設けられており、リフトシリンダ7の油圧伸縮動作に応じて後部作業機が昇降され、リフトロッドシリンダ8の油圧伸縮動作に応じて後部作業機が左右に傾けられる。
【0007】
クローラトラクタ1は、機体の前部にも作業機を連結可能であり、本実施形態では、前部作業機としてドーザ9を連結してある。ドーザ9は、リフトシリンダ10の油圧伸縮動作に応じて昇降され、アングルシリンダ11の油圧伸縮動作に応じてアングル角が変更され、更に、チルトシリンダ12の油圧伸縮動作に応じてチルト角が変更される。
【0008】
図3は、前述の油圧シリンダを動作させる作業系油圧回路である。この図に示すように、作業系油圧回路は、エンジン13の動力で駆動される油圧ポンプ14と、油圧ポンプ14の下流に設けられる第一外部油圧取出部15と、第一外部油圧取出部15の下流で油路を分流するプライオリティバルブ16と、一方の分流油路に設けられる後部作業機用昇降制御バルブ17と、他方の分流油路に設けられる後部作業機用傾き制御バルブ18と、プライオリティバルブ16と傾き制御バルブ18の間に設けられる第二外部油圧取出部19とを備える。
【0009】
第一外部油圧取出部15は、センターオープン型の手動操作バルブ20を複数連設して構成され、複数の油圧アクチュエータに対する油圧供給が可能である。本実施形態では、三つの手動操作バルブ20を連設して第一外部油圧取出部15を構成すると共に、そのうちの一つをドーザ用リフトシリンダ10の油圧供給に使用し、他の二つを空き状態としている。
【0010】
プライオリティバルブ16は、第一外部油圧取出部15の下流で油路を分流し、後部作業機用昇降制御バルブ17及び後部作業機用傾き制御バルブ18に圧油供給を行う。本実施形態のプライオリティバルブ16は、電磁切換バルブ21を有し、その切換えに応じて各分流油路の流量切換えを行う。後部作業機用昇降制御バルブ17は、例えば、電磁比例バルブ22を備えて構成され、リフトシリンダ7を介して、後部作業機の昇降速度制御を行う。また、後部作業機用傾き制御バルブ18は、例えば、電磁切換バルブ23を備えて構成され、リフトロッドシリンダ8を介して、後部作業機の傾き制御を行う。
【0011】
第二外部油圧取出部19は、プライオリティバルブ16と傾き制御バルブ18の間の流路を選択的に分流切換する分流切換バルブの機能を有し、例えば、電磁切換バルブ24を用いて構成される。第二外部油圧取出部19において分流切換される第二外部油圧取出流路は、第一外部油圧取出部15と同様、任意の油圧アクチュエータに接続して圧油供給を行うことが可能である。例えば、本実施形態では、分流バルブ25及び一対の電磁切換バルブ26、27を備えるバルブユニット28を介して、アングルシリンダ11及びチルトシリンダ12に圧油供給を行う。このようにすると、第一外部油圧取出部15に空きポートを確保しつつ、アングルシリンダ11及びチルトシリンダ12に圧油供給を行うことが可能になる。
【0012】
また、本実施形態の第二外部油圧取出部19は、図4及び図5に示すように、傾き制御バルブ18と既存ブロック(流路を形成するボディ)29の間に介設される追加ブロック30と、該追加ブロック30に設けられる前記電磁切換バルブ(分流切換バルブ)24とを備えて構成される。このようにすると、既存のバルブやブロックを生かしつつ、最少限の追加部品で第二外部油圧取出部19を構成することができる。
【0013】
図1に示すように、クローラ走行部5は、機体フレーム2の下部に設けられるトラックフレーム31と、該トラックフレーム31の前端部に突設されるハウジング32と、該ハウジング32に設けられる走行用油圧モータ33と、該走行用油圧モータ33で駆動される駆動スプロケット34と、該駆動スプロケット34に懸回されるクローラ35と、該クローラ35の張り調整を行うアイドラ36と、クローラ35の接地部内周をガイドする下部転輪37と、クローラ35の非接地部内周をガイドする上部転輪38とを備えて構成されている。
【0014】
更に、本実施形態のクローラ走行部5は、図6〜図9に示すように、クローラ35の外れ規制をするクローラガイド39を備えている。このクローラガイド39は、下部転輪37を支持する転輪ブラケット40に設けられ、その下端ガイド部がクローラ35の芯金35a間に係合することにより、クローラ35の外れ規制がなされる。
【0015】
ところで、この種のクローラガイド39を備えるクローラ走行部5であっても、畦や縁石に乗り上げた状態(クローラ35の下側が弛んだ状態)で旋回すると、クローラガイド39が機能せずにクローラ35が外れる可能性がある。また、クローラガイド39においては、芯金35aとの間に石などが挟まった場合の強度確保が求められる。
【0016】
本実施形態のクローラガイド39は、上記の問題を解消するために、転輪ブラケット40に上下動自在に設けられる。具体的には、クローラガイド39の取付孔39aを上下方向に長い長孔とし、この長孔に挿通されたボルト41を介して転輪ブラケット40に取り付けられる。このようにすると、通常時は、図7に示すように、クローラガイド39が芯金35aに当接する。この状態で転輪ブラケット40の下端とクローラガイド39のストッパ部39bとの隙間はAであり、これが上部余裕となる。つまり、この状態でクローラガイド39と芯金35aの間に石などが挟まっても、クローラガイド39が上部余裕Aだけ逃げられるので、クローラガイド39や芯金35aの破損を回避できる。また、クローラ35が畦や縁石に乗り上げた場合には、図8及び図9に示すように、下部転輪37とクローラ35の内周面との間に隙間Bができるが、クローラガイド39は、自重で芯金35aに当接した状態を維持するので、仮令旋回してもクローラ35の外れが規制される。
【0017】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、機体前部及び機体後部に作業機を連結可能なクローラトラクタ1であって、油圧ポンプ14の下流に設けられる第一外部油圧取出部15と、該第一外部油圧取出部15の下流で油路を分流するプライオリティバルブ16と、一方の分流油路に設けられる後部作業機用昇降制御バルブ17と、他方の分流油路に設けられる後部作業機用傾き制御バルブ18と、プライオリティバルブ16と傾き制御バルブ18の間に設けられる第二外部油圧取出部19とを備えるので、傾き制御用油圧回路を分岐切換えする程度の簡単な変更で油圧の外部取出しが可能になり、その結果、比較的安価に油圧取出ポートを追加することができる。
【0018】
また、第二外部油圧取出部19は、傾き制御バルブ18と既存ブロック29の間に介設される追加ブロック30と、追加ブロック30に設けられる電磁切換バルブ(分流切換バルブ)24とを備えて構成さえるので、既存のバルブやブロックを生かしつつ、最少限の追加部品で第二外部油圧取出部19を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】クローラトラクタの側面図である。
【図2】クローラトラクタの平面図である。
【図3】作業系油圧回路を示す油圧回路図である。
【図4】第二外部油圧取出部の構成を示す分解斜視図である。
【図5】第二外部油圧取出部の油圧回路図である。
【図6】クローラガイドの取付構造を示す分解斜視図である。
【図7】通常状態を示すクローラガイドの側面図である。
【図8】乗り上げ状態を示すクローラガイドの側面図である。
【図9】乗り上げ状態を示すクローラガイドの正面断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 クローラトラクタ
6 後部作業機連結部
7 リフトシリンダ
8 リフトロッドシリンダ
9 ドーザ
10 リフトシリンダ
11 アングルシリンダ
12 チルトシリンダ
14 油圧ポンプ
15 第一外部油圧取出部
16 プライオリティバルブ
17 後部作業機用昇降制御バルブ
18 後部作業機用傾き制御バルブ
19 第二外部油圧取出部
24 電磁切換バルブ(分流切換バルブ)
29 既存ブロック
30 追加ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部及び後部に作業機を連結可能なトラクタであって、
油圧ポンプの下流に設けられる第一外部油圧取出部と、
該第一外部油圧取出部の下流で油路を分流するプライオリティバルブと、
一方の分流油路に設けられる後部作業機用昇降制御バルブと、
他方の分流油路に設けられる後部作業機用傾き制御バルブと、
前記プライオリティバルブと前記傾き制御バルブの間に設けられる第二外部油圧取出部と
を備えることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記第二外部油圧取出部は、
前記傾き制御バルブと既存ブロックの間に介設される追加ブロックと、
該追加ブロックに設けられる分流切換バルブと
を備えることを特徴とする請求項1記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−82425(P2007−82425A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272508(P2005−272508)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】