説明

トラニラストゲル状懸濁剤

【課題】手術後の瘢痕化抑制剤又は硝子体可視化剤として有用なトラニラスト含有製剤において、従来の経口連続投与に比べて、同等又はそれ以上の効果をゲル状懸濁剤または微細化懸濁液の提供。
【解決手段】粒子径分布の中心が1μm〜4μmであり、90%メジアン径が5μm以下であるトラニラスト又はその薬理学的に許容される塩と、ヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方を含有するゲル状懸濁剤。該ゲル状懸濁剤は、塗布剤で手術後の瘢痕化抑制剤として有用である。トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩と、ヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方を生理食塩水に混合し、微粉化することにより得られるトラニラストの粒子径分布の中心が1μm〜4μmであり、90%メジアン径が5μm以下である微粉化懸濁液。該微粉化懸濁液は、硝子体可視化剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩と、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方を含有することを特徴とするゲル状懸濁剤等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラニラストはアレルギー反応によるケミカルメディエーター遊離抑制作用を有し、アレルギーに起因する各種疾患の治療剤およびケロイド・肥厚性瘢痕の治療剤として有用であることが知られている。この治療剤は、カプセル剤、錠剤、ドライシロップ剤若しくは細粒剤等の経口剤、又は点眼剤として医療の現場で用いられている。
【0003】
トラニラストは、ケロイド・肥厚性瘢痕の治療剤として、経口剤が用いられているが、いくつかの局所投与剤も提案されている。例えば、支持体上に有効成分としてトラニラストを含有するアクリル系粘着層を設けた経皮吸収貼付剤(特許文献1参照)、溶解補助剤により均一に溶解した状態で膏体基剤に含有した外用剤(特許文献2参照)、トラニラストを塩基性水溶液に加温溶解した後、所望により、界面活性剤、懸濁化剤、安定化剤、防腐剤、その他の医薬品添加物を加え、軟膏基剤と練り合わせた軟膏剤(特許文献3参照)等が提案されている。
【0004】
また、アレルギーに起因する疾患の治療剤としての局所投与剤として種々の点眼剤が知られている。例えば、トラニラストに溶解補助剤としてポリビニルピロリドン及び必要に応じ塩基性物質を添加した点眼液(特許文献4参照)、HLB10〜16の非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含有する点眼液(特許文献5参照)、モノエタノールアミン、トロメタモール等の有機アミンを配合した水溶液製剤(特許文献6参照)等が提案されている。これらの点眼薬は液剤であるため局所での保持性がほとんど無く、局所での保持性が高いトラニラスト製剤が求められている。
【0005】
一方、懸濁性医薬組成物としては、例えば、消化管や皮膚(眼)からの有効成分の吸収性に優れ、光に対する安定性が良好であり、かつ刺激性の少ないトラニラスト含有医薬組成物(特許文献7参照)が提案されているが、液状の懸濁剤であり、ゲル状懸濁剤のような保持性は得られない。
【0006】
トラニラストを含むゲル状製剤としては、例えば、手術に供した体腔の組織表面間の体内術後癒着形成の抑制法(特許文献8参照)に関して、送達ビヒクルの一つとしてゲルを挙げているが、ヒアルロン酸ナトリウム等を含むゲル状製剤に関する具体的な記載は無い。
【0007】
また、硝子体切除術時には透明な硝子体を見えるようにする必要があり、近年、トリアムシノロンアセトニド水性懸濁液を投与することにより、透明な硝子体の辺縁を白く浮かび上がらせ、硝子体と眼房水及び眼内灌流液とを明確に区別する方法が普及し始めている。しかし、トリアムシノロンアセトニドはステロイド剤であるため、眼圧上昇と易感染性等の副作用が懸念される。
【0008】
【特許文献1】特開2003−119132号公報
【特許文献2】特開2001−131064号公報
【特許文献3】特開平6−128153号公報
【特許文献4】特開平1−294620号公報
【特許文献5】特公平7−116029号公報
【特許文献6】特開平11−302162号公報
【特許文献7】特開2006−28108公報
【特許文献8】特表2007−528391公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩と、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方とを含有する、手術後の瘢痕化抑制剤として有用なゲル状懸濁剤、または硝子体可視化剤として有用な微粉化懸濁液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩と、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方との溶液を混合し、微粉化を行うことによりトラニラストまたはその薬理学的に許容される塩の微粉化懸濁液(以下、微粉化懸濁液と称する)とし、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方の溶液を加えることにより得られるトラニラストまたはその薬理学的に許容される塩を含有するゲル状懸濁剤(以下、ゲル状懸濁剤と称す)を見出し、さらにそのゲル状懸濁剤が局所単回投与において、経口連続投与に比べて同等またはそれ以上の手術後の瘢痕化抑制効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)粒子径分布の中心が1μm〜4μmであり、90%メジアン径が5μm以下であるトラニラストまたはその薬理学的に許容される塩と、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方を含有することを特徴とするゲル状懸濁剤;
(2)少なくともヒアルロン酸ナトリウムを含有する前記(1)記載のゲル状懸濁剤;
(3)剤形が塗布剤である、前記(1)または(2)記載のゲル状懸濁剤;
(4)手術後の瘢痕化抑制剤である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のゲル状懸濁剤;
(5)手術が開腹手術、子宮または卵巣手術、歯肉の切断及び斜視手術のいずれかである、前記(4)記載のゲル状懸濁剤;
(6)トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩と、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方を生理食塩水に混合し、微粉化することにより得られる、トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩の粒子径分布の中心が1μm〜4μmであり、90%メジアン径が5μm以下である微粉化懸濁液;
(7)硝子体可視化剤である、前記(6)記載の微粉化懸濁液;
(8)前項(6)記載の微粉化懸濁液に、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方を加えて得られる前記(1)記載のゲル状懸濁剤;等に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゲル状懸濁剤は、斜視等の手術後、筋肉の縫合部への局所単回投与により、経口連続投与に比べて同等またはそれ以上に瘢痕化抑制効果を示し、手術後の瘢痕化抑制剤として有用である。
また、本発明の微粉化懸濁液は、分散性が高く、硝子体処置時に硝子体の視認性が期待できるので、硝子体可視化剤としても使用することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のゲル状懸濁剤または微粉化懸濁液において、トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩は、微粉化されており、特に、その粒子径分布の中心が1μm〜4μmであり、90%メジアン径が5μm以下であることが好ましい。粒子径は、例えばレーザー光散乱粒度分布計(マイクロトラック法)で測定することができ、本発明のゲル状懸濁剤または微粉化懸濁液は、原液のまま、あるいは希釈して粒子径を測定することができる。
【0014】
粉体の粒子径分布は一般的に横軸に粒子径の対数をとり、縦軸に頻度%をとるとき正規分布に近似したある広がりを持った分布を示す。このため、粒子径分布の中心が1μm〜4μmであったとしても、分布に広がりがあるために5μm以上の粒子を含むことになる。本発明では、この粒度分布の広がりに対し、粒子径分布の90%メジアン径が5μm以下であること(言いかえれば、5μmより大きな粒子径を示す粒子が全体に占める割合が、10%未満であること)が特徴である。
【0015】
本発明において、微粉化は粉砕機にかけることにより行うことができる。粉砕機としては、ハンマーミル、ジェットミル、遠心ローラーミル及び高圧ホモジナイザー等が挙げられ、好ましくは高圧ホモジナイザーであり、さらに好ましくはマイクロフルイダイザー(流路固定式高圧ホモジナイザー)である。
【0016】
本発明に用いるトラニラストまたはその薬理学的に許容される塩は、公知の方法、またはそれらに準じた方法により容易に製造することができる。トラニラストの薬理学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩基との塩、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン等の有機アミンあるいはアミノ酸等との塩を挙げることができる。
【0017】
ゲルとは、流動性を持つ液体に対して、高粘度で流動性を失った分散系溶液の総称をいう。
本発明に用いるヒアルロン酸ナトリウムとしては、ヒアルロン酸製剤であるオペガンハイ(登録商標、参天製薬)でもよく、コンドロイチン硫酸ナトリウムと共に用いる場合は、ヒアルロン酸ナトリウムとコンドロイチン硫酸ナトリウムの合剤であるビスコート(登録商標、アルコン社)でもよい。
【0018】
本発明のゲル状懸濁剤のトラニラストまたはその薬理学的に許容される塩の含有量は、特に制限はないが、通常、0.2%〜10%である。
また、さらに製剤学的に汎用されている賦形剤、等張化剤、基剤、安定剤、保存剤、pH調整剤、軟膏基剤等を添加し、経口剤、塗布剤等とすることもできる。剤形は、軟膏剤、貼付剤等の塗布剤が好ましい。
【0019】
かかる製剤学的に汎用されている成分としては、例えば、以下のような成分を挙げることができる。
賦形剤としては、乳糖、白糖、しょ糖、デンプン、結晶セルロース等を挙げることができる。
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及びマンニトール等を挙げることができる。
基剤としては、水、生理食塩水、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール及びブドウ糖等を挙げることができる。
【0020】
安定剤としては、エデト酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール等を挙げることができる。
保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、アルキルポリアミノエチルグリシン類、ソルビン酸等を挙げることができる。
【0021】
pH調整剤としては、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、アンモニア及びこれらの塩類等を挙げることができる。
軟膏基剤としては、ワセリン、パラフィン、プラスチベース、シリコーン、豚脂、ろう類、単軟膏、単鉛硬膏、親水軟膏、親水ワセリン、精製ラノリン、アクアホール、オイセリン、ネオセリン、吸水軟膏、加水ラノリン、親水プラスチベース、マクロゴール類、ソルベース、ゲル炭化水素等を挙げることができる。
【0022】
本発明の微粉化懸濁液は、これを脱水し、上記の製剤学的に汎用されている賦形剤等を添加し、経口剤又は外用剤とすることもできる。これらの製剤を再度水に分散懸濁させて服用したり(ドライシロップ剤、散剤等)、水と同時に服用した場合(錠剤、カプセル剤等)には、トラニラストは胃や腸内で水に懸濁された状態となる。また、本発明の微粉化懸濁液は、用時分散懸濁させて局所に塗布することもでき、ドラックデリバリーシステムとして硝子体内インプラントにも使用可能である。
【0023】
本発明における手術後の瘢痕化とは、外科の手術(たとえば胃切除などの開腹手術)、産婦人科の手術(たとえば子宮や卵巣の手術など)、歯科の手術(たとえば歯肉の切除など)及び眼科の手術(たとえば斜視手術など)等の筋肉の縫合による手術後において、組織の損傷部位が線維化してできる傷跡を示し、肥厚性瘢痕や瘢痕性癒着等をいう。手術後の瘢痕化抑制剤とは、上記の瘢痕化を抑制するために用いるものであり、手術後に縫合部位に塗布したり、注射等で縫合部位に注入することにより、手術後の瘢痕化を抑制するものである。本発明のゲル状懸濁剤は、投与後の局所への保持性に優れている。
【0024】
本発明において硝子体可視化とは、硝子体と眼房水及び眼内灌流液との境界を明確にし、硝子体を視認可能にすることを意味する。硝子体可視化剤とは、上記の目的のために用いるものであり、手術時に注射等で硝子体腔内に注入し、手術の確実性を高めるものである。また、内境界膜の可視化にも用いることができる。
本発明の微粉化懸濁液はステロイド特有の副作用が無く、硝子体可視化に使用できる。
【0025】
本発明の硝子体可視化剤は、液剤であり、好ましくは注射剤である。
本発明の微粉化懸濁液をそのまま、又は、本発明の目的の効果を損なわない範囲内で、上記の製剤学的に汎用されている賦形剤等を添加して、硝子体に投与することができる。また、硝子体可視化剤の投与量は、投与する患者の症状、特に眼の状態、年齢、投与方法等によって異なるが、硝子体可視化剤を硝子体腔内に投与して、硝子体が視認出来得る量であればよい。
硝子体可視化剤中のトラニラストまたはその薬理学的に許容される塩の含有量は、特に制限はないが、通常、0.2%〜10%である。
【0026】
硝子体可視化を評価する方法として、例えば特開2007−106704公報に記載の実験により、製剤を評価することができる。例として、ブタ眼球から硝子体を摘出し標本ビンに入れ、薬剤を投与し、投与前後の硝子体の視認性を目視で評価できる。
本発明の硝子体可視化剤は、硝子体自体に障害があり該硝子体を切除する手術及び眼疾患を治療する上で硝子体を切除しなければならない手術等の硝子体手術に適用できる。
硝子体手術を行う眼疾患としては、例えば、糖尿病網膜症、網膜剥離、増殖硝子体網膜症、硝子体出血、黄斑円孔、加齢黄斑変性、黄斑上膜、黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、未熟児網膜症、外傷性眼疾患、眼内炎(ぶどう膜炎などの炎症疾患に伴う)、眼内異物、前部硝子体切除術、近視性黄斑変性などが挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下に本発明を実施例及び試験例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。
【0028】
実施例1
0.4%微粉化懸濁液の調製
生理食塩水(大塚製薬)200mLにヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬)1gを溶解後、トラニラスト0.8gを加えて混合し、油圧式マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)を使用して微粉化し、0.4%微粉化懸濁液を調製した。
0.4%微粉化懸濁液を、トラニラストとヒアルロン酸ナトリウム液とをVortex Mixerで単純に混合したものと比較したところ、0.4%微粉化懸濁液は明らかに分散性が良いことが確認できた。また、0.4%微粉化懸濁液と市販のトリアムシノロン懸濁液(ブリストルマイヤーズ社)をそれぞれ撹拌後1時間放置して比較したところ、トリアムシノロン懸濁液は粒子の沈降が認められたのに対し、0.4%微粉化懸濁液は顕著な粒子の沈降を認めなかった。それぞれの粒子径をマイクロトラック粒度分布測定装置MT3300EX(日機装社製)を用いて測定したところ、トリアムシノロン懸濁液の粒子径分布の中心は15.56μm、平均粒子径は13.72±7.76μm(mean±SD)、90%メジアン径は26.86μmであり、0.4%微粉化懸濁液の粒子径分布の中心は3.00μm、平均粒子径は2.43±1.22μm(mean±SD)、90%メジアン径は4.18μmであった。
【0029】
実施例2
0.2%ゲル状懸濁剤の調製
上記0.4%微粉化懸濁液とオペガンハイ(登録商標、1%ヒアルロン酸ナトリウム水溶液、極限粘度25〜45(dL/g):参天製薬)を容積比1:1で混合し、0.2%ゲル状懸濁剤を調製した。
【0030】
試験例
ラット斜視手術後の瘢痕化抑制試験
Wister系ラットの斜視モデル(Investigative Ophthalmology & Visual Science,Februry 2007,vol.48,No.2, p.699−704参照)を作製し、上直筋の縫合部に上記0.2%ゲル状懸濁剤を直接塗布した(Local adm:0.2%ゲル状懸濁剤塗布群)。4週間後に眼球を摘出し、マッソントリクローム染色を行い、瘢痕化を評価した。対照はトラニラスト非投与群(Ope only)とトラニラスト食餌群(Oral adm:約200mg〜250mg/kg/日、28日間)とした。ImageJ(登録商標)を用いて外眼筋内にみられた瘢痕面積を計測し、1外眼筋当り8−16切片作製し、平均面積を算出した。トラニラスト非投与群は5.65±0.77mm(mean±SD,n=4)、トラニラスト食餌群は2.84±1.56mm(mean±SD,n=4)、0.2%ゲル状懸濁剤塗布群は2.32±1.27mm(mean±SD,n=5)であった。Unpaired t検定にて、トラニラスト非投与群とトラニラスト食餌群、トラニラスト非投与群と0.2%ゲル状懸濁剤塗布群でそれぞれ有意差を認めた。この結果から、0.2%ゲル状懸濁剤の局所単回投与は、経口連続投与と同等またはそれ以上の効果を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のゲル状懸濁剤は、筋肉の縫合による手術後の瘢痕化抑制剤として極めて有用である。また、本発明の微粉化懸濁液は、硝子体可視化剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は試験例で得られたラット斜視手術後の瘢痕化抑制試験結果のグラフである。横軸は薬物群を表し、カッコ内の数字は実験に用いたラットの数を表す。縦軸は瘢痕部面積(mm)(平均値±標準偏差(mean±SD))を表す。図中の記号は、Unpaired t検定で統計的有意差がある(*:Pが0.05未満;**:Pが0.01未満である)ことを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径分布の中心が1μm〜4μmであり、90%メジアン径が5μm以下であるトラニラストまたはその薬理学的に許容される塩と、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方を含有することを特徴とするゲル状懸濁剤。
【請求項2】
少なくともヒアルロン酸ナトリウムを含有する請求項1記載のゲル状懸濁剤。
【請求項3】
剤形が塗布剤である、請求項1または2記載のゲル状懸濁剤。
【請求項4】
手術後の瘢痕化抑制剤である、請求項1〜3のいずれかに記載のゲル状懸濁剤
【請求項5】
手術が開腹手術、子宮または卵巣手術、歯肉の切断及び斜視手術のいずれかである、請求項4記載のゲル状懸濁剤。
【請求項6】
トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩と、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方を生理食塩水に混合し、微粉化することにより得られる、トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩の粒子径分布の中心が1μm〜4μmであり、90%メジアン径が5μm以下である微粉化懸濁液。
【請求項7】
硝子体可視化剤である、請求項6記載の微粉化懸濁液。
【請求項8】
請求項6記載の微粉化懸濁液に、さらにヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムの少なくとも一方を加えて得られる請求項1記載のゲル状懸濁剤。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−114153(P2009−114153A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292011(P2007−292011)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000104560)キッセイ薬品工業株式会社 (78)
【出願人】(506208908)学校法人兵庫医科大学 (12)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】