説明

トランクルーム構造

【課題】トランクルームの底部に設けられた凹部を覆う床部材において取り扱い性を犠牲にすることなく耐荷重性を向上する。
【解決手段】トランクルーム1の底部に設けられた凹部2の開口面を覆うトランクフロアリッド13を上下2段に選択的に位置させるための支持部材11を設け、支持部材を荷重伝達部材9により支持すると共に、凹部に収納した電装部品3を内蔵する保護カバー4の蓋部材4aを支持する橋渡し部材5に荷重伝達部材を固設する。床部材の上の積載物の重量による荷重が支持部材から荷重伝達部材を介して橋渡し部材に伝達されるため、橋渡し部材の下方に搭載した物に荷重が加わることを防止し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランクルームの底部に設けられた凹部の上面を覆う床部材を有するトランクルーム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車において、トランクルームの底部に凹部を設け、トランクルームの容量をできるだけ増大させるようにしたものがある。その場合に、凹部の上面を覆う床部材を設けることにより、トランクルームの底面を平坦化したり、凹部を利用して背の高いものを収容できるようにしたりして、トランクルームの使い勝手を向上したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−76401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造における床部材は、凹部の上面を覆ってトランクルーム底面を平坦化する場合と、凹部内に収容される場合との2状態を取り得るように、ある程度の強度を確保した板状に形成される。そして、トランクルーム底面の平坦化状態で使用される場合には、床部材は凹部の縁部(例えば車両前後方向の縁部)により支持される形となり、その状態で積載物により床部材に大きな荷重が加わった場合には床部材が撓む虞がある。大きな荷重が加わった場合でも床部材が撓まないようにするために床部材の強度を高めるべく、例えば床部材の厚さを増大したり、リブやビードなどを設けたりすることが考えられるが、床部材が大型化して重量増となり、取り扱い性が悪化するという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決して、トランクルームの底部に設けられた凹部を覆う床部材において取り扱い性を犠牲にすることなく耐荷重性を向上し得るトランクルーム構造を実現するため、本発明に於いては、トランクルーム(1)の底部に設けられた凹部(2)と、前記凹部(2)の上面を覆う床部材(13)と、前記床部材(13)を第1の位置と当該第1の位置よりも高い第2の位置とに選択的に載置可能にする支持部材(11)とを有するトランクルーム構造であって、前記第1の位置の下方にて前記凹部(2)の上面を横切るように設けられた橋渡し部材(5)と、前記支持部材(11)を一体的に支持しかつ前記橋渡し部材(5)の上に固設された荷重伝達部材(9)とを有するものとした。
【0006】
特に、前記橋渡し部材(5)の下方に電装部品(3)が配設されていること、また、前記橋渡し部材(5)が、前記電装部品(3)を前記トランクルーム(1)に固定するためのブラケットであると良い。
【発明の効果】
【0007】
このように本発明によれば、床部材を支持部材により第1の位置よりも高い第2の位置で支持する場合に、その支持部材と一体化された荷重伝達部材を凹部の上面を横切る橋渡し部材に固設したことから、床部材の上の積載物による荷重が支持部材から荷重伝達部材を介して橋渡し部材に伝達されるため、その荷重を橋渡し部材で受け止めることができ、橋渡し部材の強度を確保することで床部材の撓みを抑制できる。
【0008】
特に、橋渡し部材の下方に電装部品が収納されている場合に、床部材の撓みによる電装部品に対する損傷が生じることを防止し得る。また、電装部品を支持するブラケットが橋渡し部材であることにより、別個に橋渡し部材を設ける必要が無く、部品点数の増大を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用された自動車のトランクルームの要部を示す斜視図である。
【図2】本発明に基づく荷重伝達部材の構造を示す側断面拡大図である。
【図3】(a)はトランクフロアリッドを下段に位置させた斜視図であり、(b)はトランクフロアリッドを上段に位置させた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された自動車(ハイブリッド車)のトランクルームの要部を示す斜視図である。
【0011】
図示例の車両では、トランクルーム1の底部に例えばトランクルーム1の底面となる部分よりも一回り小さな開口面積を有する凹部2が設けられている。凹部2には、図示されないスペアタイヤが収納されたり、スペアタイヤを搭載しない車両ではタイヤ修理工具などが収納されたりする。さらに、凹部2にはハイブリッド車両のモータ・ジェネレータを作動させる電装部品3を収納した保護カバー4が収納されている。電装部品3としては、例えばバッテリモジュールやインバータやDC−DCコンバータである。
【0012】
凹部2の開口部分には、保護カバー4(電装部品3)をトランクルーム1に固定するためのブラケットとしての図示例では2本の橋渡し部材5が車両前後方向に所定の間隔をおいて車幅方向に延在するように設けられている。橋渡し部材5の中間部は保護カバー4の蓋部材4aの下面を横切り、かつ蓋部材4aとはねじ止めされている。橋渡し部材5の両端部は車両左右のリアサイドフレーム6にインナーパネル7を挟む形でボルトにより固定されており、保護カバー4(電装部品3)がトランクルーム1内に吊り下げ状態に取り付けられている。
【0013】
蓋部材4aの上面における車両前側の橋渡し部材5の中間部に対応する部分には皿状のブラケット8がボルトにて取り付けられており、そのブラケット8の上面には、合成樹脂材により靴の踵部分の形状のように成型した荷重伝達部材9の底壁部分が取り付けられている。荷重伝達部材9には車両後方側に向けて突出された顎部9aが一体に形成されており、その顎部9aの上面には支持部材11が直立状態に取り付けられている。支持部材11は、側面視で鋼板を略Z字状に曲折したように形成されている。
【0014】
凹部2の開口面かつ車両前側部分には、荷重伝達部材9を覆う断面形状となるように合成樹脂材を成型して図1の二点鎖線で示されるように屈曲させた前側パネル12が設けられている。支持部材11は上記した荷重伝達部材9に一体的に設けられたものを含めて車幅方向に所定の間隔をあけて3個所に配設されており、荷重伝達部材9の両側の各支持部材11は、蓋部材4aにおける保護カバー4の左右両側壁上となる位置に取り付けられている。
【0015】
凹部2の上面には、図3(a)・(b)に示されるようにトランクルーム1の底面を形成する床部材としての板状体からなるトランクフロアリッド13を高さ違いで選択的に置くことができるようになっている。トランクフロアリッド13の車両前側部分は上記支持部材11により支持される。
【0016】
支持部材11には、図2に示されるように上記したZ字形状における上辺に相当する頭部11aと下辺に相当する脚部11bとが高さ違いでそれぞれ車両後方に突出するように設けられており、それぞれによりトランクフロアリッド13の車両前側部分を高低2段階に載置可能にしている。トランクフロアリッド13の車両後側部分は、図示されないリアエンドパネルにプレス加工により支持部材11の上記高さ違いに合わせて形成された上下2個所の突状段部により選択的に支持されるようになっている。
【0017】
なお、前側パネル12は、支持部材11の頭部11aの上面と略同一高さとなる上段部分12aと、脚部11bの上面と同一面となる下段部分12bとを有する。トランクルーム1の両側部(車両の左右部分)には、上段部分12aと下段部分12bとのそれぞれと同一高さとなる部分を有する左右の各側方パネル14が設けられている。
【0018】
また、図3(a)・(b)に示されるように、前側パネル12と側方パネル14との各上段部分にはそれぞれに応じた大きさの各内装材15a・15bが載置されている。図3(a)に示されるように、支持部材11の頭部11aに載置した状態のトランクフロアリッド13の上面と各内装材15a・15bの上面とが同一高さになるようにされている。図3(b)に示されるように、支持部材11の脚部11bに載置した状態のトランクフロアリッド13は、上記したリアエンドパネルの下側突状段部と、左右の側方パネル14の各下段部分とにより支持される。
【0019】
このように、トランクフロアリッド13を上段側と下段側との高さ違いに位置させることにより、積載物の大きさや形状に合わせてトランクルーム1を効率的に使用することができる。その下段側にトランクフロアリッド13が載置された状態では、トランクフロアリッド13の4辺が支持されるため、トランクフロアリッド13の上に載置された積載物による荷重は分散される。
【0020】
それに対して、トランクフロアリッド13が上段側に載置された状態では、支持部材11の頭部11aとリアエンドパネルの上側突状段部とによりトランクフロアリッド13の前後の2辺で支持されるため、各辺に加わる荷重が大きくなる。特に、図示例の車両のようにトランクルーム1の前側部分に電装部品3が配設され、その保護カバー4の上に支持部材11が位置している場合には、トランクフロアリッド13の上に大きな重量のものを載せてることにより支持部材11を介して蓋部材4aに大きな荷重が加わると、蓋部材4aが撓んでしまう虞がある。
【0021】
本実施の形態の構造によれば、上記したように中央の支持部材11が荷重伝達部材9により支持され、かつその荷重伝達部材9は強度部材としての橋渡し部材5により支持されている。したがって、図2の矢印Aに示されるようにトランクフロアリッド13側から荷重Fが中央の支持部材11に作用した場合に、その荷重Fは図の実線の矢印に示されるように荷重伝達部材9を介して橋渡し部材5に伝達される。橋渡し部材5の曲げ強度を大きくしておくことにより、中央の支持部材11に作用する荷重Fは橋渡し部材5で受け止めることができ、荷重Fにより蓋部材4aが撓むことを防止することができる。なお、両側の各支持部材11は、蓋部材4aにおける保護カバー4の左右両側壁上となる位置に取り付けられていることから、保護カバー4の側壁により縦方向に荷重を受け止めることができ、何等問題なく荷重を受け止めることができる。
【0022】
また、荷重伝達部材9および橋渡し部材5により荷重を受け止めることから、トランクフロアリッド13の剛性をそれ程高める必要が無いため、トランクフロアリッド13の重量が増大せず、高さ位置を変えて使用する場合のトランクフロアリッド13の取り扱い性が犠牲にならない。なお、本実施の形態によれば、支持部材11の脚部11bも荷重伝達部材9により受けるようにしており、トランクフロアリッド13を下段で使用する場合の荷重も橋渡し部材5で受け止めることができる。
【0023】
これにより、蓋部材4aが撓むことによる電装部品3に対する悪影響も防止され、電装部品3の保持部材や保護カバー4の強度を最小限とすることにより、それらの重量増が抑制され、車両の軽量化を促進し得る。橋渡し部材5は、図2に良く示されるように中空矩形断面形状の各パイプ状とすることにより、容易に軽量かつ曲げ強度の高いものとすることができる。
【0024】
また、橋渡し部材5は保護カバー4すなわち電装部品3のトランクルーム1への取り付け用ブラケットとして用いられているものであり、上記荷重Fを受け止めるための強度部材として兼用することにより、部品点数を削減できる効果をも奏し得る。
【0025】
なお、上記図示例では荷重伝達部材9を車幅方向中央の1個所としたが、耐荷重の設計に応じて2個所またはそれ以上設けるようにしても良い。また、トランクフロアリッド13の高さ位置の選択を2段としたが、3段以上であっても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 トランクルーム
2 凹部
3 電装部品
5 橋渡し部材
9 荷重伝達部材
11 支持部材
13 トランクフロアリッド(床部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランクルームの底部に設けられた凹部と、前記凹部の上面を覆う床部材と、前記床部材を第1の位置と当該第1の位置よりも高い第2の位置とに選択的に載置可能にする支持部材とを有するトランクルーム構造であって、
前記第1の位置の下方にて前記凹部の上面を横切るように設けられた橋渡し部材と、
前記支持部材を一体的に支持しかつ前記橋渡し部材の上に固設された荷重伝達部材とを有することを特徴とするトランクルーム構造。
【請求項2】
前記橋渡し部材の下方に電装部品が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のトランクルーム構造。
【請求項3】
前記橋渡し部材が、前記電装部品を前記トランクルームに固定するためのブラケットであることを特徴とする請求項2に記載のトランクルーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−158976(P2010−158976A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2352(P2009−2352)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】