説明

トランスミッションの油圧供給装置

【課題】逆止弁や逆止弁と繋がれた第1及び第2オイルポンプに異物が侵入するのを阻止することが可能なトランスミッションの油圧供給装置を提供することである。
【解決手段】トランスミッションのメインシャフトにより駆動される第1オイルポンプと、適宜の手段により駆動される少なくとも1個の第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプの吐出側と前記第2オイルポンプの吐出側との間に該第1オイルポンプから第2オイルポンプへの流れを遮断する為に設けられた逆止弁とを備えたトランスミッションの油圧供給装置において、前記第2オイルポンプと前記逆止弁との間に第1フィルタを設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッションの油圧供給装置に関し、特に、ハイブリッド車両等において、メインオイルポンプの他に電動オイルポンプ等の補助的オイルポンプを備えたトランスミッションの油圧供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、例えば、ハイブリッド車両やアイドリングストップエンジンを備えた車両など、エンジンを一時停止させて燃費の向上及び二酸化炭素の排出抑制を図る車両が開発されている。
【0003】
そのような車両に搭載されるオートマチックトランスミッション(AT)においては、該オートマチックトランスミッションの油圧制御装置にオイルを供給する機械式オイルポンプがエンジンに連動して設けられており、エンジンの停止とともに該機械式オイルポンプも停止してしまう。
【0004】
そのため、例えばハイブリッド車両においては、車両の発進時などに油圧制御を正常に行えるように、油圧制御装置に補助的にオイルの供給を行う電動オイルポンプが設けられている。
【0005】
特開平11−287316号公報には、トランスミッションのメインシャフトによって駆動される第1オイルポンプ(メインオイルポンプ)と、電動モータで駆動される第2オイルポンプ(補助オイルポンプ)と、第2オイルポンプの吐出側と第1オイルポンプの吐出側との間に第1オイルポンプから第2オイルポンプへのオイルの流れを遮断するために設けられた逆止弁とを備えたトランスミッションの油圧供給装置が開示されている。
【0006】
この公開公報に開示された油圧供給装置では、第1オイルポンプと第2オイルポンプはそれぞれ別個のストレーナに接続されている。
【特許文献1】特開平11−287316号公報
【特許文献2】特開2002−364737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示された油圧供給装置によると、例えば第2オイルポンプがチップかじり等により誤って異物を発生してしまった場合、またはトランスミッション内の油圧制御装置の故障等により、異物が発生してしまった場合には、異物侵入により逆止弁や第1又は第2オイルポンプの機能に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、逆止弁や逆止弁と繋がれた第1及び第2オイルポンプに異物が侵入するのを阻止することが可能なトランスミッションの油圧供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明によると、トランスミッションのメインシャフトにより駆動される第1オイルポンプと、適宜の手段により駆動される少なくとも1個の第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプの吐出側と前記第2オイルポンプの吐出側との間に該第1オイルポンプから第2オイルポンプへの流れを遮断する為に設けられた逆止弁とを備えたトランスミッションの油圧供給装置において、前記第2オイルポンプと前記逆止弁との間に第1フィルタを設置したことを特徴とするトランスミッションの油圧供給装置が提供される。
【0010】
請求項2記載の発明によると、第1オイルポンプと逆止弁との間に第2フィルタを更に設置したトランスミッションの油圧供給装置が提供される。
【0011】
請求項3記載の発明によると、第2オイルポンプとトランスミッション内に設けられたストレーナとの間に第3フィルタを更に設置したトランスミッションの油圧供給装置が提供される。
【0012】
請求項4記載の発明によると、第2オイルポンプの吸引側に接続された吸引パイプを更に具備し、この吸引パイプ内に第3フィルタを設置したトランスミッションの油圧供給装置が提供される。
【0013】
請求項5記載の発明によると、第2オイルポンプの吐出側に接続された受け渡しパイプを更に具備し、この受け渡しパイプ内に第1及び第2フィルタを設置したトランスミッションの油圧供給装置が提供される。
【0014】
請求項6記載の発明によると、第2オイルポンプ、吸引パイプ及び受け渡しパイプはトランスミッション外部から取り外し可能にトランスミッションケースに取り付けられているトランスミッションの油圧供給装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の油圧供給装置によると、第2オイルポンプ故障時に発生した異物が逆止弁、第1オイルポンプ及びトランスミッション内の油圧制御装置へ損傷を与えることを防止することができる。
【0016】
請求項2記載の油圧供給装置によると、第1オイルポンプや油圧制御装置に発生した異物から第2オイルポンプが損傷を受けることを防止することができる。
【0017】
請求項3記載の油圧供給装置によると、部品組み込み時やストレーナ補修時に誤って異物が混入しても、第1、第2オイルポンプ及びトランスミッション内の油圧制御装置が混入した異物により損傷を受けることを防止することができる。
【0018】
請求項4記載の油圧供給装置によると、吸引パイプ内に第3フィルタを設置したことにより、第3フィルタの位置決め及び設置を容易に行うことができる。
【0019】
請求項5記載の油圧供給装置によると、受け渡しパイプ内に第1及び第2フィルタを設置したことにより、第1及び第2フィルタの位置決め及び設置を容易に行うことができる。
【0020】
請求項6記載の発明によると、第2オイルポンプ、吸引パイプ及び受け渡しパイプがトランスミッションケースに取り外し可能に取り付けられているので、フィルタの目詰まりや逆止弁の固着が万一発生しても、部品の交換やメインテナンスを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の油圧供給装置のシステム構成図を示している。第2オイルポンプ6はエンジンのメインシャフトにより駆動される。10は複数の第2オイルポンプ8からなる第2オイルポンプ群であり、各第2オイルポンプ8は例えば電動モータ等の適宜の駆動手段により駆動される。この適宜の駆動手段は、車両を駆動するメインエンジンと別体で設けられた補助エンジン等を含むものである。
【0022】
第1オイルポンプ6及び各第2オイルポンプ8の吸入側はトランスミッションのストレーナ4に接続されている。第1オイルポンプ6の吐出側と各第2オイルポンプ8の吐出側との間に第1オイルポンプから第2オイルポンプへのオイルの流れを遮断するために逆止弁12が介装されている。
【0023】
この逆止弁12は第2オイルポンプ8から第1オイルポンプ6の吐出側へのオイルの流れを許容するため、第1オイルポンプ6から吐出されたオイル及び第2オイルポンプ8から吐出されたオイルはともにトランスミッションの油圧制御装置へ供給される。
【0024】
各第2オイルポンプ8と逆止弁12との間には第1フィルタ14が設置されている。これにより、第2オイルポンプ8故障時に発生した異物が逆止弁12、第1オイルポンプ6及びトランスミッション内の油圧制御装置へ連鎖的に損傷を与えることを防止することができる。
【0025】
第1オイルポンプ6と各第2オイルポンプ8に接続された逆止弁12との間に第2フィルタ16が設置されている。これにより、第1オイルポンプ6及び油圧制御装置内に発生した異物が逆止弁12に連鎖的に損傷を与えることを防止することができる。
【0026】
トランスミッション内に設けられたストレーナ4と各第2オイルポンプ8との間には第3フィルタ18が設置されている。これにより、部品組み込み時やストレーナ4の補修時に誤って異物が混入しても、混入した異物が第1、第2オイルポンプ6,8及びトランスミッションの油圧制御装置へ損傷を与えることを防止することができる。
【0027】
次に、図2及び図3を参照して、本発明実施形態の油圧供給装置の構造について説明する。図2は第2オイルポンプアセンブリ20を具備したトランスミッションの側面図であり、図3は第2オイルポンプアセンブリ20へのオイルの流入及び第2オイルポンプアセンブリからのオイルの流出部分を詳細に示す拡大断面図である。
【0028】
図2に示されるように、第2オイルポンプアセンブリ20はトランスミッションケース2に取り外し可能に取り付けられている。第2オイルポンプアセンブリ20は、オイルポンプベース22と、このオイルポンプベース22に搭載された第2オイルポンプ8と、第2オイルポンプ8を駆動する電動モータ24を含んでいる。第2オイルポンプアセンブリ20の取り付けプレート22が複数のボルトを使用してトランスミッションケース2に取り外し可能に固定される。
【0029】
ストレーナ4からのオイルは管路26及びサクションパイプ(吸引パイプ)28を介して第2オイルポンプ8内に導入され、第2オイルポンプ8から吐出されたオイルはデリバリーパイプ(受け渡しパイプ)30を介してトランスミッションの油圧制御装置へ供給される。
【0030】
次に、第2オイルポンプアセンブリ20へのオイル受け渡し部分の構造について図3を参照して詳細に説明する。トランスミッションケース2に形成されたパイプ取り付け孔34及び取り付けプレート22に形成されたパイプ取り付け孔36中に吸引パイプ28が収容されている。
【0031】
また、トランスミッションケース2に形成されたパイプ取り付け孔38及びオイルポンプベース22に形成されたパイプ取り付け孔40中に受け渡しパイプ30が収容されている。受け渡しパイプ30は段差32を有しており、この段差32により大径部30aと小径部30bが接続されている。
【0032】
このような段差32を有する受け渡しパイプ30を受け入れるために、パイプ取り付け孔38はパイプ取り付け孔40よりも大径に形成されている。このように受け渡しパイプ30に段差を形成したのは、弁座42とボール44から構成される逆止弁12の組付け方向が一方向に限定されるようにしたためである。
【0033】
受け渡しパイプ30にはピン46が圧入されており、このピン46により逆止弁12のボール44のストロークを制限している。受け渡しパイプ30の両端には第1フィルタ14と第2フィルタ16が設置されている。
【0034】
第1及び第2フィルタ14,16は例えばステンレス鋼から形成された網目状のフィルタであり、それぞれ鍔14a、16aを有している。これらの鍔14a、16aを受け渡しパイプ30の端部とパイプ取り付け孔38,40の端部との間で挟み込むことにより、第1及び第2フィルタ14,16の脱落が防止される。
【0035】
同様に、吸引パイプ28の一端部とパイプ取り付け孔36の端部との間で第3フィルタ18の鍔18aを挟み込むことにより、第3フィルタ18の脱落が防止される。
【0036】
吸引パイプ28の外周には一対のOリング48,50が配置されている。これらのOリング48,50により、吸引パイプ28を流れるオイルが外部に漏れ出ることと外気の吸引が防止される。
【0037】
同様に、一対のOリング52,54が受け渡しパイプ30の外周に配置されている。これらのOリング52,54により、受け渡しパイプ30内を流れるオイルが外部に漏れ出るのが防止される。
【0038】
本実施形態では更に、吸引パイプ28及び受け渡しパイプ30をその内側に囲むようにトランスミッションケース2とオイルポンプベース22の界面に周状のOリング56が介装されている。
【0039】
このOリング56を設けたために、万一いずれかのOリング48,50,52,54が損傷を受けてオイルが漏れ出したとしても、この漏れ出したオイルはOリング56で確実にシールされ、外部へ漏れ出ることを防止出来る。
【0040】
本実施形態によると第2オイルポンプアセンブリ20、吸引パイプ28及び受け渡しパイプ30はトランスミッション外部から取り外し可能にトランスミッションケース2に取り付けられている。よって、フィルタ14,16,18の目詰まりや逆止弁12の固着が万一発生しても、フィルタ14,16,18の交換や逆止弁12の修理を容易に行うことができる。
【0041】
図2及び図3に示した実施形態では、電動モータ24により駆動される第2ポンプアセンブリ20は一個だけ設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図1のシステム構成図に示した如く、第2ポンプアセンブリを複数個設けるようにしても良い。この場合には、一つの第2ポンプアセンブリが故障しても、他の第2ポンプアセンブリにすぐ切り替えて使用することができる等のメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のシステム構成を示す図である。
【図2】本発明実施形態の第2ポンプアセンブリをトランスミッションとともに示すトランスミッションケースの一部を取り外した状態のトランスミッションの側面図である。
【図3】第2オイルポンプアセンブリへのオイルの受け渡し部分を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0043】
2 トランスミッションケース
4 ストレーナ
6 第1オイルポンプ(メインポンプ)
8 第2オイルポンプ(補助ポンプ)
12 逆止弁
14 第1フィルタ
16 第2フィルタ
18 第3フィルタ
20 第2オイルポンプアセンブリ
28 吸引パイプ
30 受け渡しパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションのメインシャフトにより駆動される第1オイルポンプと、適宜の手段により駆動される少なくとも1個の第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプの吐出側と前記第2オイルポンプの吐出側との間に該第1オイルポンプから第2オイルポンプへの流れを遮断する為に設けられた逆止弁とを備えたトランスミッションの油圧供給装置において、
前記第2オイルポンプと前記逆止弁との間に第1フィルタを設置したことを特徴とするトランスミッションの油圧供給装置。
【請求項2】
前記第1オイルポンプと前記逆止弁との間に第2フィルタを更に設置したことを特徴とする請求項1記載のトランスミッションの油圧供給装置。
【請求項3】
前記第2オイルポンプと前記トランスミッション内に設けられたストレーナとの間に第3フィルタを更に設置したことを特徴とする請求項2記載のトランスミッションの油圧供給装置。
【請求項4】
前記第2オイルポンプの吸引側に接続された吸引パイプを更に具備し、該吸引パイプ内に前記第3フィルタを設置したことを特徴とする請求項3記載のトランスミッションの油圧供給装置。
【請求項5】
前記第2オイルポンプの吐出側に接続された受け渡しパイプを更に具備し、該受け渡しパイプ内に前記第1及び第2フィルタを設置したことを特徴とする請求項4記載のトランスミッションの油圧供給装置。
【請求項6】
前記第2オイルポンプ、前記吸引パイプ及び前記受け渡しパイプはトランスミッション外部から取り外し可能にトランスミッションケースに取り付けられていることを特徴とする請求項5記載のトランスミッションの油圧供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−70976(P2006−70976A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254452(P2004−254452)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】