説明

トリブロックブロックコポリマーを含む架橋組成物と、その製造方法およびその使用

【課題】トリブロックブロックコポリマーを含む架橋組成物と、その製造方法と、その使用。本発明架橋組成物は熱可塑性樹脂と同じ加工方法で加工できる。流体輸送用導管および絶縁シール、パッキンの製造で有用。
【解決手段】少なくとも一種のエラストマーと、少なくとも一種のトリブロックブロックコポリマーとを含む架橋組成物。架橋剤系を用いて適当な架橋温度で製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋組成物と、その製造方法と、その使用とに関するものである。
本発明は特に、エラストマーとトリブロックブロックコポリマーとを含む架橋組成物と、加熱架橋をベースにしたその製造方法と、その使用とに関するものである。
本発明の架橋組成物は絶縁シールや密封シールのような成形品や、自動車産業で用いられる流体輸送用、例えばブレーキまたは冷却システム用の導管の製造で使用される。本発明の組成物はその他の用途、例えばベルト(伝動ベルト等)、タイヤ、電気ケーブル外被または靴底の製造でも用いることができる。
本発明の特殊ケースの架橋組成物は熱可塑性樹脂と同様に加工できる。
【背景技術】
【0002】
ある種の用途(絶縁シール、密封用パッキンまたは流体輸送導管)では、熱可塑性樹脂の加工機械を用いて加工ができ、エラストマーと同様な特性、特に破断せずに大きな変形に耐えることができる能力と、伸びまたは圧縮歪み後、さらには伸びまたは圧縮歪みを繰り返し受けた後でも、初期の幾何形状に戻ることができる能力と、良好な耐熱性、耐薬品性、耐候性とを有し、しかも、製品および製造過程で出る廃棄物が原則としてリサイクルできる(リサイクルではエラストマーは使用できない)材料が望まれている。
【0003】
下記文献に記載のポリオレフィンをベースにした「熱可塑性エラストマー」は、ポリプロピレンの非架橋マトリックスと、エチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)の架橋ノジュールとから成る構造を有し、融点より高い温度に加熱することによって熱可塑性樹脂のように加工でき、加硫後の使用温度(ポリプロピレンの融点より低い)でエラストマーと同様な挙動を示す。
【特許文献1】米国特許第US−A−4,130,535号明細書
【0004】
この材料はエラストマーと同等な特性をいくつか示すが、100℃以上の温度で高い伸び歪(50%以上)を示すため、主として100℃以上の温度である領域で用いられる物品、例えば自動車のエンジン室内の流体輸送を確実にするために用いられる絶縁シールおよび/または密封シールや導管、ホース、パイプ等のの使用にはこの材料はあまり適していない。
【0005】
この問題を解決するために、下記文献ではメタロセン触媒で得られたポリ(オクテン/エチレン)と無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィンとをベースにしたエラストマーを含むブレンド(以降、「Vegaprene(登録商標)」)を架橋して得られる熱可塑性の加工法が加工可能な架橋エラストマーを使用する。
【特許文献2】欧州特許第0,840,763B1号公報
【0006】
この解決策は満足のいくものではあるが、やはり特定の用途に限定されている。すなわち、このブレンドの特性は個々の成分(エラストマーおよび熱可塑性材料)の特性を単純に線形補間して予測される特性とは一般に異なり、相乗効果が生じることもあるが、その他の場合には特性が低下する。これは各相の形態、充填材および可塑剤の分布、界面特性または各相での加硫架橋の分布に関連する。これらの現象を克服するために一般には相溶化剤または共試薬(coagent)に頼るが、これはブレンドに混和するのが難しく、高価になる。
【0007】
特に、繰り返し応力に耐える共試薬には疲れ挙動が必須である。これはメタクリル酸亜鉛のような共試薬を用いて達成できるが、この化合物は極性を有するためブレンド中に分散させるのが難しい。さらに、この化合物は高温での金属との反応性が高いためブレンドが混合装置に接着してしまう。そのためほとんど使用されていない。
【0008】
その他に重要な特性は大きな伸びに対する耐久性である。この特性は上記特許文献2(欧州特許第0,840,763B1号公報)に記載のブレンドでは得られない。また、上記特許文献2に記載の方法を用いた場合に達成できる圧縮歪(Deformation Remanente a la Compression、一般にCS)の改良は不十分であるということがわかっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、少なくとも一種のエラストマーと、少なくとも一種のトリブロックブロックコポリマーとを含み、必要に応じてさらに熱可塑性ポリマーを含む架橋組成物を用いることで、上記および上記以外の多くの問題が解決できるということを見出した。
本発明者の見出した解決策を用いると、ブレンドの機械特性(動特性、散逸、硬度、弾性反撥等)を損なわずに上記の問題が解決できる。本発明ブレンドは本発明方法で容易に分散する。本発明ブレンドは設備に接着しないという利点も有している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の対象は下記の(I)〜(III)を含む架橋組成物にある:
(I)少なくとも一種のエラストマー(I):20〜100重量部、
(II)少なくとも一種のトリブロックブロックコポリマー(II):2〜50重量部、
(III)少なくとも一種の熱可塑性ポリマー(III):0〜100重量部。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記エラストマー(I)は、天然ゴム(NR)、合成ゴム(BR)、ポリ(エチレン/プロピレン)(EPR)、ポリ(エチレン/プロピレン/ジエン)(EPDM)等のメタロセン触媒によって重合されたエラストマー、ポリ(ブチルアクリレート)またはポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)のような長鎖ポリアクリレート、テトラフルオロエチレンをベースにしたコポリマー等のフルオロエラストマー(FPM)およびシリコンエラストマーから成る群の中から選択できる。
【0012】
「合成ゴム(BR)」という用語はポリブタジエン、ポリイソプレンおよびそのブロックまたはランダムコポリマーのようなポリ(共役ジエン)を意味する。
「メタロセン触媒によって重合されたエラストマー」とは、Du Pont Dow Elastomers (DDE)から商品名Engageで市販のポリオクテンとしても知られるポリ(オクテン/エチレン)等のメタロセン触媒を用いて重合したホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーから成る任意のエラストマーを意味する。
【0013】
上記トリブロックブロックコポリマー(II)は下記一般式で表される:
Y−B−Y’
(ここで、
Bはエラストマーの性質を有するブロック、
YおよびY’はブロックBと熱力学的に不相溶で、これらは化学組成が互いに同一または異なっていてもよく、2つのブロックYおよびY’の少なくとも一方はメタクリルモノマーを主成分とする)
【0014】
ブロックBはポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエーテル、例えばポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンおよびニトリルエラストマーのファミリーに属するエラストマーである。エラストマーブロックBの合成に用いられるモノマーはイソブチレンのようなアルケン、ブチルアクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートのような長鎖アクリレートまたはメタクリレート、またはブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンまたは2−フェニル−1,3−ブタジエンの中から選択されるジエンにすることができる。
【0015】
このブロックBはポリ(ジエン)、特にポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)およびこれらのランダムコポリマー、さらには、通常の技術に従って部分的または完全に水素化されたポリ(ジエン)の中から選択するのが有利である。ポリブタジエンの中ではガラス遷移温度Tgが最低のもの、例えばポリ(1,2−ブタジエン)のTg(約0℃)よりも低いTg(約−90℃)を有するポリ(1,4−ブタジエン)を用いるのが有利である。
【0016】
ブロックBはポリ(1,4−ブタジエン)を主成分とするのが好ましい。
ブロックBのTgは0℃以下、好ましくは−40℃以下であるのが有利である。
【0017】
YおよびY’はスチレンとその誘導体およびメチルメタクリレートのような短鎖のメタクリレートから成る群の中から選択される少なくとも一種のモノマーの重合で得ることができる。
Y’はメチルメタクリレートモノマーからなるのが好ましい。すなわち、少なくとも50重量%のメチルメタクリレート、好ましくは少なくとも70重量%のメチルメタクリレートを含むのが好ましい(以下、Y’を「M」という)。このブロックを構成する他のモノマーはアクリルまたは非アクリルのモノマーにすることができ、反応性でも非反応性でもよい。
【0018】
反応性官能基の例としてはオキシラン官能基、アミン官能基、無水官能基またはカルボン酸官能基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応性モノマーは加水分解可能で酸になるモノマーにすることができる。ブロックY’を構成することができる他のモノマーとしてはグリシジルメタクリレートおよびt−ブチルメタクリレートまたはグルタルイミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
他の有利な形態では、Y’ブロックはイミド官能基を含む。好ましくは30〜60mol%のY’の比率で含む。このイミド官能基はイミド化によって得ることができる。隣接する2つのMMA官能基のイミド化を行うのが有利である。イミド化は例えば下記の文献に記載されている。この特許の内容は本明細書の一部を成す。
【特許文献3】欧州特許第275,918号公報
【特許文献4】欧州特許第315,149号公報
【特許文献5】欧州特許第315,150号公報
【特許文献6】欧州特許第315,151号公報
【特許文献7】欧州特許第331,052号公報
【0020】
本発明組成物は、既にイミド化されたY’ブロックを有するトリブロックコポリマー(II)を用いて調製することができる。すなわち、イミド化は本発明の成分(I)、(II)、必要に応じて(III)の混合中に行うことができる。
Mは少なくとも60%のシンジオタクチックポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるのが有利である。
【0021】
以下の実施例のようにYとY’の化学組成が異なるときは、Yを「S」とよぶ。このブロックSは芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンまたはビニルピリジンの重合で得られる。Y(すなわちS)のTgは好ましくは23℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。
【0022】
本発明のトリブロックコポリマー:Y−B−Y’を以下、「SBM」とよぶ。このSBMは数平均分子量が10,000g/mol〜500,000g/mol、好ましくは20,000g/mol〜200,000g/molであるのが好ましい。SBMトリブロックは質量分率で表した下記の組成(合計100重量%)を有するのが有利である。
M:10〜80%、好ましくは15〜70%。
B:2〜80%、好ましくは5〜70%。
S:10〜88%、好ましくは5〜85%。
【0023】
本発明ではブロックコポリマー(II)は少なくとも一つのジブロックS−Bを含むことができ、このSおよびBはS−B−MトリブロックのブロックSおよびBと同じ特性を有する。これらはS−B−MトリブロックのブロックSおよびブロックBと同じモノマー、必要な場合にはコモノマーにすることができる。
【0024】
S−Bジブロックの数平均分子量は5,000g/mol〜500,000g/mol、好ましくは10,000g/mol〜200,000g/molにすることができる。S−BジブロックのBは質量分率で5〜95%、好ましくは15〜85%であるのが有利である。
以下、S−BジブロックとS−B−Mトリブロックとのブレンドも「SBM」とよぶ。このブレンドは5〜80%のS−Bジブロックに対して95〜20%のS−B−Mトリブロックを含むのが有利である。
これらのSBMブロック組成物の利点は合成の最後にS−B−Mを精製する必要がない点にある。
【0025】
熱可塑性ポリマー(III)は例えば改質されていてもよいポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、フルオロポリマーおよびポリ(塩化ビニル)(PVC)のようなクロロポリマーの中から選択される。
熱可塑性ポリマー(III)は官能化されたポリオレフィンであるのが有利である。熱可塑性ポリマー(III)はアクリル酸、無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレートをグラフトしたポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリ(エチレン/プロピレン)から成る群の中から選択されたグラフト化ポリオレフィンであるのが好ましい。
【0026】
本発明の架橋組成物はエチレン/アクリレート/アクリル酸ターポリマーまたはスチレン/アクリロニトリル/アクリレートターポリマーのようなポリアクリルエラストマーを含むことができる。これは紫外線安定剤および被膜剤の役目をし、押出加工時に組成物の外観を良くすることができるので有利である。このポリアクリルエラストマーを用いるときには100重量部のエラストマー/トリブロックブロックコポリマーブレンドに対して2〜20重量部の比率で用いるのが好ましい。
【0027】
本発明の組成物は可塑剤をさらに含むことができる。可塑剤が存在すると本発明組成物の流動性が高まり、従って、その加工が容易になり、さらに、この加工で得られる製品の硬度を所望の硬度の値に調節することもできる。この可塑剤はTotal社から商品名Plaxeneで市販の型またはExxon社から商品名Flexonで市販の型のパラフィン系可塑剤であるのが好ましく、この可塑剤は100重量部のエラストマー/トリブロックコポリマー(必要な場合にはさらにグラフト化ポリオレフィン)ブレンドに対して5〜120重量部の比率で用いられる。ポリアルキルベンゼンのようなその他の可塑剤も適している。
【0028】
本発明組成物はシリカ、カーボネート、粘土、チョーク、カオリン等の淡色充填材型の充填材か、カーボンブラック型の充填材を含むこともできる。カーボンブラック型充填材の使用はこの充填材が本発明組成物のある種の機械的特性、例えば引張強度または引張り係数を調節できるだけでなく、紫外線照射の作用に対する優れた耐久性を本発明組成物に付与することができるので特に有利であることがわかっている。このような充填材が組成物中に存在するときには100重量部のエラストマー/トリブロックコポリマー(必要な場合にはさらにグラフト化ポリオレフィン)ブレンドに対して5〜100重量部の比率で存在するのが有利である。
【0029】
本発明の架橋組成物は高分子工業で通常使用されるその他のアジュバント、例えば静電防止剤、潤滑剤、酸化防止剤、カップリング剤、着色剤、加工助剤または接着促進剤を、これらのアジュバントが互いに相溶性である限り、付与したい特性に応じて、さらに含むことができる。
本発明組成物はその調製時に組成物中にエラストマーの架橋を含むため「架橋」といわれる。
このため、本発明組成物は一種または複数の架橋剤と一種または複数の架橋促進剤とを含む少なくとも一種の架橋剤系を架橋前に含んでいる。これは組成物中に存在するポリマーの種類に応じて適宜選択される。この架橋剤系の役目は反応速度を活性化させ、架橋密度を上げることにある。
【0030】
本発明の好ましい構成では、この架橋剤系は、架橋剤として、ジクミルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルイソプロピル)−ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチル)ヘキサンペルオキシド、および、1,1−ビス(t−ブチル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンから成る群の中から選択される一種または複数の有機過酸化物を含み、且つ、架橋促進剤として、酸化亜鉛、ステアリン酸、N,N’−(m−フェニレン)ジマレイミド、シアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリイソアリル、メタクリレート(例えばテトラヒドロフルフリルメタクリレートまたは2−フェノキシエチルメタクリレート)、ジメタクリレート(例えばエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレートまたはジメタクリル酸亜鉛)、トリメタクリレート(例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート)およびジアクリレート(例えばジアクリル酸亜鉛)から成る群の中から選択される一種または複数の化合物を含む。
【0031】
本発明の他の好ましい構成では、架橋剤系は硫黄をベースにした系であり、この系は架橋促進剤としての酸化亜鉛および/またはステアリン酸に加えて、一種または複数の硫黄供与促進剤、例えば4,4’−ジチオモルホリン、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドまたはジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、必要に応じてさらに戻り防止剤、例えば1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンを含む。
【0032】
本発明の特に好ましい構成では、架橋剤系は、架橋剤として、反応性アルキル化メチルフェノール/ホルムアルデヒド樹脂およびブロモメチルフェノール/ホルムアルデヒド樹脂の中から選択されるフェノール樹脂を含み、且つ、架橋促進剤として、必要に応じて酸化亜鉛および/またはステアリン酸と組み合わせたクロロポリマー、例えば塩素化またはクロロスルホン化ポリエチレンまたはポリクロロプレンを含む。後者の架橋剤系は機械的、伸び歪および圧縮歪特性に優れることに加えて美しい外観を特徴とするエラストマーを得ることができる。
【0033】
いずれの場合も、一種または複数の架橋剤は、100重量部のエラストマー/トリブロックコポリマー(必要な場合にはさらにグラフト化ポリオレフィン)ブレンドに対して、1〜10重量部の比率で配合物中に存在するのが好ましく、一方、一種または複数の架橋促進剤は100重量部のブレンドに対して0.5〜12重量部の比率で存在するのが好ましい。
加硫系が硫黄ベースの系であるときは、一種または複数の硫黄供与促進剤は、100重量部のエラストマー/トリブロックコポリマー(必要な場合にはさらにグラフト化ポリオレフィン)ブレンドに対して、1〜7重量部の比率で配合物中に存在するのが好ましい。
【0034】
本発明では組成物の架橋を2つの架橋剤系を用いて行うことができる。一例として、硫黄をベースにした架橋剤系および有機過酸化物をベースにした架橋剤系またはフェノール樹脂をベースにした架橋剤系および有機過酸化物をベースにした架橋剤系を一緒に用いることができる。
【0035】
本発明の組成物は、(I)と(III)の種類に応じて、熱可塑性樹脂の加工に用いられる技術および設備すなわち熱成形、射出成形、押出し成形等で加工することができる。この場合、本発明組成物を「熱可塑性の加工法で加工」という。そうした組成物の例としてはエラストマー(I)がメタロセン触媒を用いて重合したホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーから成り且つポリマー(III)が存在する組成物が挙げられる。ポリマー(III)は官能化されたポリオレフィン、好ましくはグラフト化ポリオレフィンであるのが有利である。ポリマー(III)は上記で挙げたグラフト化ポリオレフィンの中から選択できる。一例としてはVegaprene(登録商標)の名称で知られる(I)と(III)とのブレンドが挙げられる。
【0036】
本発明の熱可塑性加工法で加工した架橋組成物は従来技術の熱可塑性エラストマーと同等な硬度、引張強度および破断点伸びの機械的特性を示し、しかも、後者より高い圧縮歪および伸び歪特性を有する。この利点は短期的にだけでなく、長期的にも観察され、本発明の組成物はクリープ傾向が低下する。
【0037】
本発明の他の対象は上記定義の架橋組成物の製造方法にある。この製造方法ではエラストマーとトリブロックブロックコポリマーとを、必要に応じてグラフト化ポリオレフィン、可塑剤、充填材および/またはアジュバントの存在下で混合し、得られたブレンドを適切な温度で適切に選択された架橋剤系を用いて架橋する。
本発明方法の好ましい実施例では架橋温度は150〜320℃である。
【0038】
本発明の方法の特に好ましい実施例は下記(a)〜(c)からなる:
(a) エラストマー、トリブロックブロックコポリマーおよび架橋剤系を、必要に応じて熱可塑性ポリマー、ポリアクリルエラストマー、可塑剤、充填材および/またはアジュバントの存在下で、混合し、
(b) 得られたブレンドを150〜320℃の温度に加熱し、
(c) この温度を1〜15分の時間維持する。
【0039】
本発明方法は密閉式ミキサーまたはその変形装置,二軸スクリュー押出機またはバス(Buss)型のコニーダで実施できる。得られた塊を必要に応じてカレンダー加工またはさらに押出し、冷却し、造粒する。得られた顆粒は直ちに加工できる状態にあり、顆粒を加熱することによってシート、パネル、プロフィル、パイプ、その他の所望製品に成形できる。
【0040】
本発明の他の対象は上記定義の架橋組成物の使用にある。本発明組成物は特に建設業および自動車産業において絶縁および/または密封シールやパッキン、例えばドアのシール等で、断熱または遮音および/または水または湿気に対する密封性を確保する部材の製造で使用できる。
【0041】
本発明のさらに他の対象は、流体輸送用の導管、パイプ、ホース、マニホルドまたはノズル等の製造での上記の組成物の使用にある。例としては自動車産業で使用されるブレーキオイル、冷却液、ステアリング液圧回路液または空調システム用冷媒等の流体の輸送用導管、ホース、その他の部品が挙げられる。また、ベルト、タイヤ、電気ケーブル外被および靴底の製造での本発明架橋組成物の使用も挙げることができる。
【0042】
本発明の架橋組成物は以下の実施例の説明からより明確に理解できよう。
本発明の組成物の中で下記の3つの組成物が好ましいものとして挙げられる:
1.動的な用途(ストッパー、エンジン支持体)用のNR/BR組成物、
2.静的な用途(シール)用のEPDM組成物、Vegaprene 3、
3.ホース、ケーブル被覆用の組成物、Vegaprene 2。
しかし、これらに限定されるものではない。
以下、本発明の実施例を示すが、これらの実施例は単なる例で、本発明をなんら限定するものではないことは明らかである。
【実施例】
【0043】
種々の配合物を下記の方法に従って調製した。すなわち、架橋組成物の調製に必要な成分を密閉式ミキサーに導入し、適切な剪断力を加えながらミキサーの内部温度を170℃にする。この温度に達したときにブレンドをこの温度に約5分間維持する。こうして得られた塊をミキサーの出口で冷却し、造粒する。
調製した各組成物の下記(1)〜(4)を測定した:
(1)NFT46−052規格の方法に従ったショアーA硬度、
(2)ISO37規格の方法に従った引張強度(TS)および破断点伸び(EB)、
(3)ISO815規格の方法に従って100℃で25%の圧縮を22時間加える残留圧縮歪(CS)、
(4)ISO2285規格の方法に従って20%の伸びを70時間加えた時の残留伸び歪(ES)。
【0044】
得られた結果は下記の表にまとめてある。組成物試験は重量部で表記してある。
組成物(a)はトリブロックコポリマーを含まないので比較例であることは理解できよう。
SBMは50重量%のPMMAを含む数平均分子量が60,000のトリブロック(II)である。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
[表1]および[表2]から分かるように、本発明ではDelft破断が著しく向上している。これは(機械的繰り返し応力下での)耐疲労挙動が良いことを示しており、しかも、上記用途において重要である他の特性(CS、弾性反撥)を変えずに達成される。これは熱可塑性の加工法とは無関係に架橋配合物に対して為された改良である。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
[表3]および[表4]からわかるように、伸びとDelft破断が向上する。この改良は部品の取付けおよび強度にとって重要である。
【0051】
【表5】

【0052】
この表からは高温でのCSが向上することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(I)〜(III)を含む架橋組成物:
(I)少なくとも一種のエラストマー(I):20〜100重量部、
(II)少なくとも一つのブロックの主成分がメタクリルモノマーである少なくとも一種のトリブロックブロックコポリマー(II):2〜50重量部、
(III)少なくとも一種の熱可塑性ポリマー(III):0〜100重量部。
【請求項2】
上記トリブロックブロックコポリマー(II)が下記一般式で表される請求項1に記載の組成物:
Y−B−Y’
(ここで、
BはブロックYおよびY’と熱力学的に不相溶なエラストマーのブロック、
YおよびY’は化学的に互いに同一または異なる組成を有し、2つのブロックYおよびY’の少なくとも一方の主成分はメタクリルモノマーである)
【請求項3】
上記ブロックBが、ポリジエン、部分的または完全に水素化されたポリジエン、ポリオレフィンエラストマー、長鎖のポリアクリレート、ニトリルエラストマーまたはビニル官能側基を含むTg値が低いアクリルコポリマーの中から選択されるエラストマー(I)と架橋可能なエラストマーブロックである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
上記ブロックBがブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよび2−フェニル−1,3−ブタジエンの中から選択される少なくとも一種のモノマーの重合で得られるポリジエンである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
YおよびY’が、スチレンとその誘導体、メチルメタクリレート等の短鎖のアルキルメタクリレートまたはアクリル酸、メタクリル酸またはグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーの中から選択される少なくとも一種のモノマーの重合で得られる請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
Yがスチレンを主成分とするブロックであり、Y’が少なくとも50重量%のメチルメタクリレートを含むブロックである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ブロックY’がイミド官能基を含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
エラストマー(I)が、天然ゴム、合成ゴム、EPR、EPDM、ポリ(オクテン/エチレン)等のメタロセンで重合されたエラストマー、改質されていてもよい長鎖のポリアクリレートまたはポリオレフィンエラストマー、ポリ(ブチルアクリレート)またはポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)等の長鎖のポリアクリレート、テトラフルオロエチレンをベースにしたコポリマー等のフルオロエラストマー(FPM)およびシリコンエラストマーから成る群の中から選択される化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
エラストマー(I)がポリ(オクテン/エチレン)である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
熱可塑性樹脂のように加工ができる請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
上記熱可塑性ポリマーが、アクリル酸、無水マレイン酸またはグリシジルメタクリレートがグラフトしたポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリ(エチレン/プロピレン)等のグラフト化ポリオレフィンの中から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
架橋前に、一種または複数の架橋剤と一種または複数の架橋促進剤とを含む少なくとも一種の架橋剤系を含んでいる請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
上記架橋剤系が、架橋剤として、ジクミルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルイソプロピル)−ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチル)ヘキサンペルオキシドおよび1,1−ビス(t−ブチル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンから成る群の中から選択される一種または複数の有機過酸化物を含み、且つ、架橋促進剤として、酸化亜鉛、ステアリン酸、N,N’−(m−フェニレン)ジマレイミド、シアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリイソアリル、ジメタクリレート、トリメタクリレート、ジアクリレートおよびトリアクリレートから成る群の中から選択される一種または複数の化合物を含む請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
架橋剤系が硫黄をベースにし、且つ、架橋促進剤としての酸化亜鉛および/またはステアリン酸に加えて、一種または複数の硫黄供与促進剤を含み、必要に応じてさらに戻り防止剤(agent anti-reversion)を含む請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
架橋剤系が、架橋剤として、反応性アルキル化メチルフェノール/ホルムアルデヒド樹脂およびブロモメチルフェノール/ホルムアルデヒド樹脂の中から選択されるフェノール樹脂を含み、且つ、架橋促進剤として、必要に応じて酸化亜鉛および/またはステアリン酸と組み合わせたクロロポリマーを含む請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
混合物100重量部に対して0.5〜12重量部の架橋剤および架橋促進剤を含む請求項13〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
可塑剤および/または淡色の充填材型またはカーボンブラック型の充填材および/またはアジュバントをさらに含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の架橋組成物。
【請求項18】
少なくとも一種のエラストマーと、少なくとも一種のトリブロックブロックコポリマーとを任意成分の熱可塑性ポリマー、可塑剤、充填材およびアジュバントの存在下で混合し、得られた混合物を所定温度で架橋剤系を用いて架橋することからなる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の熱可塑性の加工法で加工した架橋組成物の製造方法。
【請求項19】
架橋を150〜320℃の温度で行なう請求項18に記載の方法。
【請求項20】
架橋を1〜15分の時間で行う請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の架橋組成物を含む絶縁シールおよび/または密封シールおよび成形品。
【請求項22】
請求項21に記載の絶縁シールおよび/または密封シールおよび成形品の建築物での使用。
【請求項23】
請求項21に記載の絶縁シールおよび/または密封シールおよび成形品の自動車での使用。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の架橋組成物を含むパイプ、ホース、マニホルドまたはノズル等の導管。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物の電気ケーブルの製造での使用。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物のタイヤ製造での使用。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物のベルト製造での使用。
【請求項28】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物の靴底の製造での使用。

【公表番号】特表2007−529571(P2007−529571A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500250(P2007−500250)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000420
【国際公開番号】WO2005/082996
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】