説明

トリプタン類の肺用製剤

この発明は、スマトリプタンのようなトリプタンを含む医薬組成物、および治療におけるそれらの使用に関する。特に、本発明は吸入経路により投与するための組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スマトリプタンのようなトリプタン類を含む医薬組成物、および治療におけるそれらの使用に関する。特に、本発明は、吸入経路により投与されるための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トリプタン類は、片頭痛、および生理に伴う片頭痛、早朝性の片頭痛のような特殊な片頭痛タイプの頭痛、ならびに群集性の頭痛および緊張タイプの頭痛の治療に用いられてきた5HT1レセプター・アゴニストである。それらは、さらにミグレイニュア(migraineurs)における非−片頭痛的な頭痛の治療にも用いられてきた。
【0003】
トリプタン類は、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタンおよびフロヴァトリプタンを含む。
【0004】
スマトリプタンのようなトリプタン類の基本的な作用機序は、頭の血管の平滑筋における5HT1B レセプターの刺激にあると考えられている。これは、頭痛に関与すると考えられている血管拡張により引き起こされる痛みを克服する血管収縮をもたらす。
【0005】
さらに、トリプタン類は、頭の血管系を神経支配している痛覚繊維における5HT1D レセプターを刺激し、次いで神経性の炎症を引き起こす血管作用性のペプチドが繊維から放出されるのをブロックするという、仮説が立てられている。
【0006】
スマトリプタンは、三叉神経の尾状核において頭痛情報の伝達を媒介するのに重要な5HT1F レセプターに作用するということも示されている。しかしながら、このレセプターにおけるスマトリプタンの作用の臨床的な意義は、今のところ未知のままである (Dahlof, C.G.H Curr Med Res Opin 17 (1s): s35-s45 2001)。
【0007】
トリプタン類は、最近、偏頭痛の短期治療に用いられている。スマトリプタンおよびゾルミトリプタンは、最近、偏頭痛治療用の経口投与製品として市販されている。また、リザトリプタン、スマトリプタンおよびゾルミトリプタンは、即効性を目指して、即時溶解性の製剤として製剤化されている。スマトリプタンおよびゾルミトリプタンは、経鼻投与用にも製剤化されている。最近になって、スマトリプタンは、皮下投与用にも承認されている。
【0008】
心臓血管系の出来事のより高いリスクを伴った、患者における重篤な血管系の出来事についての逆の可能性は、予防的処置としてのトリプタン類の無制限の使用を排除している(Bigalら、Medscape General Medicine, 2006, 8 (2) 31.)。末梢および冠状血管床における5HT1B レセプターの存在ゆえに、極めて低いけれども、顕著な冠状血管収縮の明確なリスクの可能性がある。
【0009】
したがって、スマトリプタンは冠状心臓疾患を有する患者にとって、禁忌症状を示す。投与経路に伴って副作用は変動し、最も強烈な影響は皮下注射に関連している(Sheftellら、Expert Rev. Neurotherapeutics 4(2) 199-209 (2004))。
【0010】
スマトリプタンの皮下注射に伴う普通の副作用は、刺痛、めまい感、嗜眠状態、処置直後の血圧の一時的な上昇、潮紅、悪心および嘔吐(これは偏頭痛によるものであるが)、倦怠感、注射部位における軽い反応、痛み、発熱感、通常は一時的であるが強度な身体のあらゆる部分に影響する圧迫感である。
【0011】
脱力感および疲労感も経験される(GSK Imigran Injection SPC、24 May 2006)。スマトリプタンの50mgおよび100mg錠で、同様な影響がみられる(GSK Imigran tablets 50mg and 100mg SPC、May 2006)。
イミグランの鼻スプレーを受けた患者でも、悪い味と喉の不快に加えて、経口製剤と同じ副作用が報告されている(GSK Imigran 10mg and 20mg Nasal Spray SPC 24 May 2006)。
【0012】
トリプタン類の既知の使用に伴う上記の問題に加えて、前臨床の結果、スマトリプタンの肺投与は気道を刺激することが分かった。特に、好酸球数の増加は、潜在的な刺激を表すものと考えられている;本出願人により独自に行われた試験では9 mg/kgで変性がみられたが、1.9 mg/kgでは呼吸の変化は変性的なものではなかった。
【0013】
さらに、トリプタン類の血管収縮性による死亡を含む過去の血管の事故は、当業者が肺投与用の製剤を検討することを思いとどまらせている。吸入直後の肺静脈中のスマトリプタンの濃度は一時的であり、この影響は冠状血管系に対するものであるけれども、血管事故の可能性は高い。
【0014】
静脈ルートの投与を含む初期の研究は、ボーラス注入後の血漿濃度の急速な上昇による不利な影響を比較的高い発生率で伴った(Dechantら、Drugs 43 (5) 776-798 1992)。皮下投与のような他のルートは、送達が比較的遅くてより確実であるので、研究が続けられた。静脈内よりは遅い送達方法ではあるが、それでも皮下からの送達は投与後10分で始まる急速な軽減をもたらす。その他の投与形態は、より認容性ではあるが、極めて遅い。 例えば、経口的に投与される錠剤は、30分後に頭痛を緩和し始める。
【0015】
偏頭痛の患者の間での研究は、痛みが完全に緩和されること、再発しないこと、および作用が短時間で発現することを患者が望んでいるということを示した。勿論、短時間で完全に緩和されることが最も重要である(Lipton R.B.ら、headache 2002; 42 [suppl 1]: S3-9)。
【0016】
多くの罹患者が偏頭痛自体の発生前に、自覚症状を経験しているので、治療効果の急速な発現は、偏頭痛の治療にとって特に有利である。作用が短時間で発現するトリプタンを迅速に投与すれば、実際の偏頭痛の発症を全体的に避けることもできる。
【0017】
スマトリプタンを皮下投与すると、速やかな緩和がもたらされるが、不都合な点は、(注射針恐怖症患者にとっての)注射針および最も普通の副作用である注射部位の反応である。注射部位の反応は、患者の59%で生じる(Imitrex Prescribing Information November 2006)。
【0018】
皮下投与経路に伴うもう一つの不利なことは、いくらかの患者が偏頭痛の間に末梢循環が悪化して、この投与経路の効果が減殺されることである(The Triptans: Novel Drugs for Migraine, edited by Humphrey P. ら、Oxford University Press 2001)。
【0019】
代わりの投与経路は、認容性はより良いが、やはり不利な点がある。それらは、効果の発現がより遅くて低い。経口形態および経鼻形態のどちらも、吸収が確実でない。偏頭痛は胃のうっ血を引き起こすので、このことは錠剤のような経口投与製剤からの医薬の吸収に悪影響を与える。
【0020】
加えて、吐気および嘔吐は錠剤の服用を困難にする。鼻への噴霧は悪い味覚を伴うことがある。実際、トリプタン類の経鼻および経口投与は、多くの患者に吐気および嘔吐、特に嘔吐を引き起こし得る。
【0021】
したがって、本発明の目的は、好ましくはトリプタン類の投与に通常伴う悪影響がより少なくて、速やかな治療効果の発現および緩和をもたらしながら、少なくとも一つ、好ましくは二つ以上の前記のような不都合のない方法で投与するための、トリプタンを含む医薬製剤を提供することである。
【発明の概要】
【0022】
本発明の第1の観点によれば、肺吸入により投与するための、トリプタンを含む医薬組成物が提供される。
【0023】
本発明は、トリプタン類の高性能の吸入送達に関するものであり、この送達は、従来採用されていたトリプタンの投与経路に比べて、数多くの顕著で予期しなかった利点を有する。本発明の投与経路および組成物は、この優れた性能を可能ならしめる。
【0024】
この肺投与経路の利点は、改善された安定性、悪い副作用事故の減少につながる低減された暴露の可変性、皮下に比べてより速やかな作用の発現、および非侵襲投与経路である。
【0025】
特に関心のあるトリプタン類は、アルモトリプタン、エレトリプタン、フロヴァトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタンおよびゾルミトリプタンを含む。
アルモトリプタンは、その低い副作用発生率、ならびに肺の動脈および静脈に対するより低い作用ゆえに、吸入での使用に適しているので、特に関心がある。スマトリプタンは、もう一つの好ましいトリプタンである。
【0026】
本発明の一つの実施形態において、組成物は、好ましくはトリプタンを含む活性粒子を含有する乾燥粉末組成物である。
好ましくは、該組成物は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%あるいは少なくとも80%の微粒子画分(<5μm)を有する乾燥粉末である。
【0027】
本発明の一つの実施形態において、該組成物は、約10μmより小さいマスメディアン空気力学的直径(MMAD)を有する活性粒子を、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、あるいは実質的に100%含む。
【0028】
もう一つの実施形態において、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、あるいは実質的にすべての活性粒子は、約2μm〜約5μmのMMADを有する。
さらにもう一つの実施形態において、少なくとも50%、少なくとも70%あるいは少なくとも90%の活性粒子が約0.05μm〜約3μmの空気力学的直径を有する。本発明の一つの形態において、活性物質、例えばスマトリプタンの粒子の少なくとも約90%は、5μm以下の粒子径を有する。
【0029】
本発明による好ましい組成物は、活性粒子の直径が好ましくは少なくとも1μm、1.1μm、1.2μm、1.5μmまたは2μmのMMADを有する粒子を、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、あるいは実質的に100%含んでいる。
【0030】
もう一つの実施形態において、製造された粉末組成物は、10μmより大きい粒子径範囲にあり、前記の技術的記述を採用した経鼻投与に適している。
【0031】
吸入投与または鼻腔内投与のいずれであっても、本発明の乾燥粉末組成物は、比較的密な粒子であるトリプタン(および含まれるその他の医薬的に活性な物質)の製剤化された粒子を含むことにより、有利である。
【0032】
かくして、本発明のいくつかの実施形態による粉末は、好ましくは0.1 g/ccより大きい、0.2 g/ccより大きい、0.3 g/ccより大きい、0.4 g/ccより大きい、0.5 g/ccより大きい、0.6 g/ccより大きい、あるいは0.7 g/ccより大きいタップ密度を有する。
【0033】
乾燥粉末組成物中にそのような比較的密な活性物質の粒子を含むということが、予想外に良好なFPFs および FPDsをもたらし、これらの密な粒子が肺または鼻の粘膜に投与されなければならない粉末の量を少なくするのに役立つ。
【0034】
特に、鼻腔内投与の場合、粉末の量を最小限に保つことは、患者に与える不快感を少なくするのに役立つ。このことは、投与されるべき活性物質の量が比較的大きいときに、著しく有利である。
【0035】
代わりの実施形態において、本発明のいくつかの実施形態による粉末は、好ましくは0.1 g/ccより大きい、0.2 g/ccより大きい、0.3 g/ccより大きい、0.4 g/ccより大きい、0.5 g/ccより大きい、0.6 g/ccより大きい、あるいは0.7 g/ccより大きいタップ密度を有し、処理前の活性物質の密度より大きい。
吸入により投与される本発明の乾燥粉末製剤の重量は、20mgの高さでよい(送達投与量)。
【0036】
本発明の第2の観点によれば、本発明の第1の観点による医薬組成物は、偏頭痛のような中枢神経系の症状を治療または予防するために提供される。
【0037】
活性物質の有効で再現可能な肺への送達は、正確で一定の量の速やかな吸収を許容し、予期された治療効果をもたらす。有効で再現可能な送達は、トリプタンの投与量が比較的大きいときにはより困難となることもあり、そのような困難を克服する本発明の方法が以下に詳細に説明される。
【0038】
本発明の第1および第2の観点のいずれかの実施形態において、トリプタンはスマトリプタンである。これらの組成物において用いられるスマトリプタンは、スマトリプタンの塩を含む適当な形態であってよく、最も好ましいのはスマトリプタンのコハク酸塩である。
ここで用いられる「スマトリプタン」という用語は、この化合物の遊離塩基の形態、および薬理学的に許容されるその塩またはエステルを含む。
【0039】
スマトリプタンの遊離塩基は、それが肺のバリアーを極めて容易に通過し、したがってそれの肺吸入経路での投与は極めて迅速な治療効果の発現を示すものと期待されるので、本発明の環境において特に魅力的である。
かくして、個々に開示されるいかなる組成物も、スマトリプタンの遊離塩基を用いて製剤化され得る。
【0040】
コハク酸塩に加えて、その他の許容される酸付加塩は、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、二硫酸塩、リン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩などを含む。
【0041】
ここで用いられているスマトリプタンの「医薬的に許容されるエステル」という用語は、10位および11位のヒドロキシ官能基の一方または両方で形成されるエステル類を指し、インビボで加水分解され、ヒトの体内で容易に分解されて、親化合物またはその塩となるものを含む。
【0042】
適当なエステル基は、例えば、医薬的に許容される脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカンジ酸から誘導されるものを含み、これらにおいて各アルキルまたはアルケニル部分は炭素数6以下が有利である。具体的なエステルの例は、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステルおよびエチルコハク酸エステルを含む。
【0043】
典型的には、本発明による組成物の投与量は、約3〜約25mgのスマトリプタン、好ましくは約5〜約20mgのスマトリプタンの送達をもたらす。
【0044】
本発明のもう一つの実施形態において、粉末組成物の投与量は、Multistage Liquid Impingerにより測定したとき(米国薬局方26, Chapter 601, Apparatus 4 (2003), an Andersen Cascade ImpactorまたはNew Generation Impactor)、インビトロで(コハク酸塩の重量に基づいて)約0.4 mg〜約40 mgのスマトリプタンの微細粉末を送達する。
【0045】
好ましい観点において、本発明は、肺吸入により投与するためのトリプタンを含む医薬組成物を提供する。この組成物は、少なくとも2つの連続投与量で投与される。好ましくは、上記の連続投与量は、5分以内、3分以内、2分以内、1分以内または30秒以内に投与される。連続投与量は実質的に同じ量であるのが好ましく、そのような投与量がちょうど2回投与されるのがより好ましい。
【0046】
好ましくは、上記の連続投与量は、同じ対象者に単独で投与されたときのトリプタンの最初のまたは単回の投与量の投与によりもたらされる最大血清中濃度の2倍を超える、トリプタンの最大血清中濃度(Cmax)をもたらすのに十分である。
【0047】
好ましくは、トリプタンの各投与量は、5〜15mg、8〜12mg、9〜11mg、9.5〜10.5mgまたは約10mgである。トリプタンは好ましくはスマトリプタンであり、その場合、後者の投与量は好ましくはそのコハク酸塩の重量に基づいている。より好ましくは、トリプタンはスマトリプタンのコハク酸塩である。
【0048】
好ましくは、投与量は、計量された投与量(MD)または名目的な投与量(ND)であるか、あるいはそれらは送達された投与量(DD)または放出された投与量(ED)である。
【0049】
一つの実施形態において、本発明のこの観点による組成物は、中枢神経系の症状、特に偏頭痛、生理に伴う偏頭痛および早朝性の偏頭痛のような特殊な偏頭痛タイプの頭痛、群集性の頭痛および緊張性の頭痛の治療または予防用である。
【0050】
加えて、それはミグレイニュアにおける非偏頭痛性の頭痛治療用でもあり得るが、それは偏頭痛の治療に用いられるのが好ましい。
本発明のこの観点による組成物は、本発明によるいかなる医薬組成物でもよいが、それは乾燥粉末組成物であるのが好ましい。
【0051】
関連した好ましい観点において、本発明は、必要とする対象者に有効量のトリプタンを含む医薬組成物を肺吸入により投与することを含む、該対象者をトリプタンで治療する方法を提供するものであり、この方法において該組成物は少なくとも2つの連続投与量で該対象者に投与される。
【0052】
好ましくは、上記の連続投与量は、5分以内、3分以内、2分以内、1分以内、または30秒以内の間に投与される。連続投与量は実質的に同じ量であるのが好ましく、そのような投与量がちょうど2回投与されるのがより好ましい。
【0053】
好ましくは、上記の連続投与量は、同じ対象者に単独で投与されたときのトリプタンの最初のまたは単回の投与量の投与によりもたらされる最大血清中濃度の2倍を超える、トリプタンの最大血清中濃度(Cmax)をもたらすのに十分である。
【0054】
好ましくは、トリプタンの各投与量は、5〜15mg、8〜12mg、9〜11mg、9.5〜10.5mgまたは約10mgである。トリプタンは好ましくはスマトリプタンであり、その場合、後者の投与量は好ましくはそのコハク酸塩の重量に基づいている。より好ましくは、トリプタンはスマトリプタンのコハク酸塩である。
【0055】
好ましくは、投与量は、計量された投与量(MD)または名目的な投与量(ND)であるか、あるいはそれらは送達された投与量(DD)または放出された投与量(ED)である。
【0056】
一つの実施形態において、本発明のこの観点による組成物は、中枢神経系の症状、特に偏頭痛、生理に伴う偏頭痛および早朝性の偏頭痛のような特殊な偏頭痛タイプの頭痛、群集性の頭痛および緊張性の頭痛の治療または予防用である。
【0057】
加えて、それはミグレイニュアにおける非偏頭痛性の頭痛治療用でもあり得るが、それは偏頭痛の治療に用いられるのが好ましい。
本発明のこの観点による組成物は、本発明によるいかなる医薬組成物でもよいが、それは乾燥粉末組成物であるのが好ましい。
【0058】
最後に記載された本発明の2つの実施形態の予期しなかった利点は、それらが、均等な単回投与量から予想されたよりも、極めて高い血清中医薬濃度(Cmax)のピーク、および医薬のバイオアベイラビリティ(AUC)をもたらしながら、顕著なレベルの悪い副作用を引き起こさないということである。
実際、最後に記載された2つの実施形態では、吐き気および嘔吐の発生が軽減される(このことは本発明によるすべての吸入組成物にも当てはまる)。
【0059】
好ましい実施形態において、少なくともいくつかのトリプタンは、アモルファスの形態にある。アモルファスのトリプタンを含む製剤は、好ましい溶解性を有する。アモルファスのトリプタンの安定な形態は、以下に例示されるように、トレハロースおよびメレジトース(melezitose)のような適当な糖を用いて噴霧乾燥することにより製造することができる。好ましくは、アモルファスのトリプタンは、アモルファスのスマトリプタンである。
【0060】
好ましい実施形態において、前記の製剤または医薬組成物は、2つ以上のトリプタン類を含んでいてもよい。
例えば、スマトリプタンは、フロヴァトリプタンまたはナラトリプタンのような遅効性のトリプタンと組み合わさって、(スマトリプタンによりもたらされる)作用の迅速な発現という利点と、(フロヴァトリプタンまたはナラトリプタンによりもたらされる)それらのより長い半減期による低い再発という利点との組合せをもたらす。
【0061】
ある実施形態において、本発明の組成物は、好ましくはスマトリプタンを含む活性粒子と担体粒子とを含む。
担体粒子は、約5〜約1000μm、約4〜40μm、約60〜約200μm、あるいは約150〜約1000μmの平均粒子径を有し得る。
担体粒子のその他の有用な平均粒子径は、約20〜約30μmまたは約40〜約70μmである。
【0062】
担体粒子は、組成物の全重量に対して、90%以下、好ましくは80%、より好ましくは70%、さらに好ましくは60%、一層好ましくは50%のように、少量存在するのが好ましい。
このような「低担体」組成物において、該組成物は、粉末の性状および性能を向上させるために、少なくとも少量の添加物質をも含むのが好ましい。
【0063】
本発明のある実施形態では、組成物は「担体フリー」であり、これは組成物が、スマトリプタンまたはその医薬的に許容される塩またはエステルのようなトリプタン、および1つ以上の添加物質だけを実質的に含むことを意味する。
【0064】
さらなる実施形態において、組成物は少なくとも70重量%のトリプタン、または(重量で)少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のトリプタンを含む。
【0065】
本発明による組成物は、さらに一つ以上の添加物質を含んでいてもよい。そのような添加物質は、WO 97/03649に記載されているような、活性粒子の表面に付着しやすい粒子の形態にあり得る。
あるいは、添加物質は、例えばWO 02/43701に記載されているように共粉砕方法により活性粒子の表面上にコーティングされていてもよく、またはWO 02/00197に記載されているように担体粒子の表面上にコーティングされていてもよい。
【0066】
その代わりに、あるいはそれに加えて、添加物質は、組成物中に存在する担体粒子の表面上にコーティングされていてもよい。
この添加物のコーティングは、担体と添加物とのブレンドの結果として、(ファンデルワールス力のような)粒子間の力により、担体粒子の表面に付着した添加物質の粒子の形態をとり得る。
【0067】
あるいは、添加物質は担体粒子の表面上に滲み、融合していてもよく、それにより不活性な担体物質および添加物質の核を有する混成粒子を形成する。
例えば、そのような担体粒子への添加物質の融合は、添加物質の粒子と担体粒子とを一緒にジェットミルすることにより達せられる。
【0068】
ある実施形態において、添加物質が担体粒子および活性粒子の両方に付着するかまたは融合するように、粉末の3つの成分(活性物質、担体および添加物質)のすべてが一緒に処理される。
【0069】
本発明の3番目の観点によれば、本発明による組成物の投与量を含む、ブリスター製剤、カプセル剤、リザーバー分散システムなどが提供される。
【0070】
本発明の4番目の観点によれば、本発明による組成物の投与量を投与するための吸入器具が提供される。
本発明の一つの実施形態において、吸入可能な組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)を介して投与される。
もう1つの実施形態において、組成物は、加圧式定量吸入器(pMDI)を介して、または噴霧システムを介して投与される。
【0071】
本発明の5番目の観点によれば、本発明による組成物の製造方法が提供される。
一つの実施形態において、本発明による組成物は、適当な大きさのトリプタンの粒子を、添加物質および/または担体の粒子のような他の粉末成分の粒子とブレンドするだけで製造される。
【0072】
粉末成分は、緩やかな混合方法、例えばTurbula (商標)のようなタンブル・ミキサーによりブレンドされ得る。そのような緩やかな混合方法では、混合される粒子の大きさは、通常、実質的に小さくならない。
【0073】
さらに、粉末粒子は互いに融合し合う傾向がなく、それらはむしろファンデルワールス力のような結合力の結果として凝集する。それらの緩やかなまたは不安定な凝集は、組成物の投与に使われる吸入器の作動により容易に崩壊する。
【0074】
一つの実施形態において、所望により、ミル工程により得られた微粒子を、次いで追加の賦形剤と共に製剤化することができる。これは、噴霧乾燥方法、例えば賦形剤と共に噴霧乾燥することにより達せられる。
【0075】
この実施形態において、粒子は溶剤中に懸濁され、追加の賦形剤の溶液または懸濁液と共に噴霧乾燥される。
好ましい追加の賦形剤は、トレハロース、メレジトースおよびその他のポリサッカライドを含む。医薬的に有効なその他の賦形剤も用いることができる。
【0076】
もう一つの実施形態において、粉末組成物は多工程の方法により製造される。
まず、材料が粉砕またはブレンドされる。次いで、粒子を篩過し、メカノフュージョンまたはメカノ−ケミカル・ボンディングのような制御された加圧粉砕工程に付す。
さらなる任意工程は、担体粒子の添加を含む。
【0077】
メカノフュージョン工程は、混成の活性粒子を「ポリッシュ」し、さらに添加物質を活性粒子に付着させるものと考えられている。このことは、ジェットミルにより可能となった極めて微小な粒子サイズと組み合わさって、メカノフュージョンまたはメカノ−ケミカル・ボンディングのような制御された加圧粉砕工程により、有利な性状が粒子にもたらされることを可能にする。
【0078】
本発明の6番目の観点によれば、偏頭痛のような中枢神経系の症状を治療または予防する方法が提供され、この方法は本発明による組成物を肺吸入により投与することを含む。
【0079】
発明の詳細な記述
気道または肺の奥深くまで送達させるために、好ましくは、乾燥粉末組成物中の活性粒子のマスメディアン空気力学的直径(MMAD)は、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下であり、2μm未満、1.5μm未満、あるいは1μm未満であってもよい。
特に、肺の深部または全身への送達のためには、活性粒子は0.1〜3μmまたは0.1〜2μmのサイズを有していてもよい。
【0080】
理想的には、乾燥粉末製剤中の活性粒子の少なくとも90%は、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、2.5μm以下、2.0μm以下、1.5μm以下、あるいはさらに1.0μm以下の空気力学的直径を有するべきである。
【0081】
本発明の組成物中に含まれる活性物質の粒子は、肺の中で沈着したときに、活性物質の送達または制御された放出を助けるために、追加の賦形剤と製剤化されてもよい。
【0082】
そのような実施形態において、活性物質は、例えばポリサッカライド・マトリックスのような賦形剤物質の粒子中に埋め込まれるか、または分散していてもよい。あるいは、賦形剤は活性物質の粒子を部分的にまたは全体的に被覆するコーティングを形成していてもよい。
【0083】
これらの粒子が肺に送達されると、賦形剤物質は活性物質の放出に対する一時的なバリアーとして働き、活性物質の遅延放出または実質的な放出をもたらす。
活性物質の放出の遅延または制御用に用いるのに適した賦形剤物質は、当業者によく知られており、ポリサッカライド、例えばキサンタンガムのような、例えば医薬的に許容される可溶性または不溶性の物質を含む。
【0084】
乾燥粉末組成物は、所望の放出プロフィールをもたらすように、即時放出性の粒子の形態、ならびに遅延または持続放出を示す粒子の形態にある活性物質を含んでいてもよい。
【0085】
乾燥粉末が通常の方法で製造されるとき、活性粒子の大きさは変動し、この変動が大きいこともある。そのため、十分に高い割合の活性粒子が適正な部位へ投与されるのに適した大きさとなるようにするのが困難なこともある。
【0086】
したがって、場合によっては、活性粒子の粒子径分布の狭い乾燥粉末製剤が望ましいこともある。
例えば、活性粒子の空気力学的またはボリューメトリック粒子径分布((g)の幾何学的標準偏差は、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、あるいはさらに1.2以下であり得る。
【0087】
狭い粒子径分布は、スマトリプタンの狭い治療インデックスからみて、特に重要である。狭い粒子径分布は、スマトリプタンの含量に関して投与量を確実に再現でき、かつ投与量が投与ごとに肺の同じ領域に送達されて、薬物動態プロフィールを確実に再現できる。このことは投与量の効果と再現性を改善し得る。
【0088】
微細な粒子、すなわち10μm未満のマスメディアン空気力学的直径(MMAD)を有する粒子は、それらの表面積が体積比において増加するので、熱力学的に不安定さを増す傾向がある。表面積の増加は、この減少した粒子サイズとともに表面自由エネルギーの増加をもたらし、したがって粒子が凝集する傾向を増し、凝集を強くする。
【0089】
吸入器において、微粒子の凝集、およびそのような粒子の吸入器壁への付着は、吸入器を出る微粒子が多くなり、凝集が安定となり、あるいは吸入器から出ないで吸入器内に付着して残り、吸入器を詰まらせ、閉塞させるという結果を招き、問題である。
【0090】
粒子の安定な凝集の形成の程度の不確実性は、吸入器の作動ごとに、また異なった吸入器ごとに、あるいは粒子の異なったバッチごとに、投与の再現性を低くする。
さらに、凝集の形成は、活性粒子のMMAD が非常に大きくなり、凝集した活性粒子が肺の所望の部位に到達しないことを意味する。
【0091】
この状況を改善し、一貫した微粒子フラクション(FPF)および微粒子投与量(FPD)を提供することを目指して、乾燥粉末製剤は時には添加物質を含む。
上記の添加物質は、乾燥粉末製剤中の粒子間の結合を制御することを意図している。
【0092】
添加物質は、微小な粒子間の結合力を弱め、粒子が分離して保たれることを助けることにより、そのような粒子が相互に、また製剤中に存在する他の粒子に、さらに吸入器の内表面に付着するのを減らすものと考えられる。
【0093】
粒子の凝集体が形成される場合、添加物質の粒子の添加は、吸入器の作動により生じる乱気流中でより分解されやすいように凝集体の安定性を弱め、そのために粒子は器具から排出されて吸入される。
凝集体が分解されるので、活性粒子は個々の微細な粒子の形態に戻り、肺の下部まで到達することができる。
【0094】
しかしながら、医薬の有効な送達をもたらすのに適した凝集体の安定性は、粉末を送達させるのに用いられる個々の器具により生じる乱気流の性状に依存する。
凝集体は、処理中および器具への充填中に、粉末が良好な流動性を示すのに十分安定でなければならないけれども、器具の作動により呼吸に支障とならない大きさの活性粒子を放出するのに十分不安定である。
【0095】
従来、市場で入手できる乾燥粉末吸入器の多くは、極めて乏しい投与効果を示し、時には、治療効果を発揮するように実際に使用者に適当に送達されるのが投与量中に存在する活性物質のわずか10%ということもあった。
この低い有効性は、所望の治療効果を得るのに活性物質の高い投与量が要求される場合、単純には受け入れられない。
【0096】
投与有効性の欠如の理由は、粉末が送達器具から排出されて肺の中に沈着するまでの各段階で、乾燥粉末投与量中の活性物質の割合が現に低下しやすいからである。
例えば、物質の実質的な量は、ブリスター/カプセルまたは器具の中で維持され得る。物質は、過剰な速さゆえに、対象者の咽喉中で失われ得る。しかしながら、高い割合の送達投与量が、求められる以上の空気力学的直径を有する微粒子の形態で存在する場合がしばしばある。
【0097】
対象者の上気道中での粒子の衝突が、いわゆる衝突パラメーターにより予言されることは、よく知られている。衝突パラメーターは、その空気力学的直径の2乗をかけた粒子の速度と定義されている。
【0098】
したがって、上気道領域を通って目標の作用部位に送達される粒子の確率は、その空気力学的直径の2乗に関連している。それゆえに、下部の気道または肺の深部への送達は、空気力学的直径の2乗に依存しており、エアゾル粒子が小さければ小さいほど、使用者における投与目標部位への到達が極めて多くなるようであり、したがって望みの治療効果を得ることができる。
【0099】
10μm未満の空気力学的直径を有する粒子は、肺の中に沈着しやすい。2μm〜5μmの範囲の空気力学的直径を有する粒子は、一般に呼吸細気管支中に沈着し、一方0.05〜3μmの範囲の空気力学的直径を有するより小さい粒子は肺胞中に沈着するようである。
【0100】
それゆえに、より小さい粒子がその目標部位へ到達するので、例えば肺胞を目標とする粒子にとって、高い投与有効性は、3μm以下の粒子の投与により期待される。
【0101】
乾燥粉末組成物の、名目的な当与量(ND)としても知られている計量された投与量(MD)は、問題の吸入器により与えられる計量された形態中に存在する活性物質の全量、すなわち投与容器またはコンテナー中の計量された医薬の量である。
【0102】
例えば、上記のMDは、Cyclohaler(商標)用のカプセル中、またはGyrohaler(商標)器具内のホイルブリスター中に存在する活性物質の量、あるいはClickHaler(商標)の粉末の刻み目である。
MDは、送達投与量(DD)または放出投与量(ED)といわれる、患者に送達される医薬の量とは異なっている。これらの用語は、ここでは代替的に用いられ、それらは吸入製品用の最近のEP専攻論文中で示されているように測定される。
【0103】
放出投与量(ED)は、器具の作動により器具から放出される活性物質の総量である。それは器具の内側もしくは外側の表面上、あるいは例えばカプセルもしくはブリスターを含む計量システム中に残された物質を含まない。
【0104】
このEDは、しばしば投与量均一性サンプリング装置(DUSA)として特定される装置中の吸入器から放出される総量を収集し、これを正当と認められた定量湿式化学分析(重力方法が可能であるが、これは正確性に乏しい)により回収することにより測定される。
【0105】
微粒子投与量(FPD)は、規制されたより小さい空気力学的粒子径中に存在し、吸入器の作動により器具から放出される活性物質の総量である。この規制は、明示されていなければ、通常、5μm、あるいは3μm、2μmもしくは1μmなどのように定められる。このFPDは、ツイン・ステージ・インピンジャー(TSI)、マルチ・ステージ・インピンジャー(MSI)、アンデルセン・カスケード・インパクター(ACI)または次世代インパクター(NGI)のようなインパクターもしくはインピンジャーを用いて測定される。
【0106】
各インパクターまたはインピンジャーは、各段階について、所定の空気力学的粒子径収集カット・ポイントを有している。FPDの値は、正当と認められた定量湿式化学分析(重力方法が可能であるが、これは正確性に乏しい)により定量された段階ごとの回収活性物質を解釈することにより得られ、そこではFPDを測定するのにいずれかの1段階カットが用いられるか、あるいは段階ごとの沈着のより複雑な数学的補間が用いられる。
【0107】
微粒子フラクション(FPF)は、通常、器具から排出される投与量である放出投与量(ED)により割られたFPD(<5 μmである投与量)として定義される。
このFPFはパーセントとして表される。ここでは、EDのFPFをFPF (ED)といい、
FPF (ED) = (FPD/ED) x 100%.
として計算される。
【0108】
微粒子フラクション(FPF)は、ブリスターまたはカプセル中の投与量である計量された投与量(MD)で割ったFPDとしても定義され、パーセントとして表される。ここでは、MDのFPFをFPF(MD)といい、
FPF (MD) = (FPD/MD) x 100%.
として計算することができる。
【0109】
ここで用いられる「超微粒子投与量」(UFPD)という用語は、器具により送達される3μm以下の直径を有する活性物質の総量を意味する。
ここで用いられる「超微粒子フラクション」という用語は、器具により送達される直径3μm未満の直径を有する活性物質の全量のパーセントを意味する。
ここで用いられる「パーセント超微粒子投与量(%UFPD)という用語は、送達される直径3μm未満の計量された全投与量のパーセントを意味する。すなわち、%UFPD = 100 (UFPD/計量された全投与量。
【0110】
吸入器の各作動ごと、また異なった吸入器ごとおよび粒子の異なったバッチごとに、粒子の安定な凝集体形成の程度は不確かであり、投与量の再現性は乏しくなる。
さらに、凝集体の形成は、肺の所望の部位に到達しない活性粒子の凝集体とともに、活性粒子のMMADが 非常に増大し得ることを意味する。
したがって、正確で予測通りの投与量を送達し、良好な投与有効性および再現性をもたらす粉末製剤を提供することは、本発明にとって不可欠である。
【0111】
送達の各段階での医薬活性物質のロスを減らして、10μm未満の大きさを有する活性粒子を含む乾燥粉末システムの投与有効性を改善するために多くの研究がなされてきた。
従来、投与有効性を増し、より大きな投与再現性を得るための努力は、活性物質の微粒子の凝集体形成を防止することに焦点を当てられがちであった。
そのような凝集体は、これらの粒子の有効サイズを増し、したがって活性粒子が所望の治療効果を発揮するために沈着すべき気道下部または肺の深部へ到達するのを妨げる。
【0112】
提案された方法は、比較的大きな担体粒子の使用を含んでいた。活性物質の微粒子は、ファンデルワールス力のような粒子間の力の結果として、担体の表面に付着しやすくなる。
吸入器が作動すると、活性粒子は単体粒子から離れて、吸入され得る形態のエアゾル中に存在する。
加えて、あるいはその代わりに、粒子の間の結合または付着を修正する調整剤として作用する添加物質を含めることが提案されてきた。
【0113】
しかしながら、送達されるべき医薬の量が極めて多い場合、粉末組成物に物質を添加するというオプションは制約される。このことは、本発明で用いられるのに好ましいいくつかのトリプタン類のように、活性物質を組成物の少なくとも70%含む場合には、特に当てはまる。
それにもかかわらず、良好な投与有効性を確保するためには、乾燥粉末組成物は良好な流動性および分散性を示さなければならない。
【0114】
本発明による組成物に良好な流動性および分散性をもたすためには、いくつかの方法を採用することができ、これらの方法を以下に説明する。
一つ以上のこれらの方法が、有効かつ再現性のある肺への医薬送達を確実にする性状を備えた組成物を得るために、採用され得る。
【0115】
粉末組成物
効力調整剤
本発明による組成物は、粉末粒子の結合および付着を調節する添加物質を含み得る。
微粒子の凝集しやすさは、所定の投与量のFPF が極めて予測不可能であり得ることを意味し、その結果として不定の割合の微粒子が肺、すなわち肺の正しい部位に投与される。
このことは、例えば微粒子の形態にある純粋な医薬を含む製剤において見られる。そのような製剤は乏しい流動性および乏しいFPFを示す。
【0116】
この状態を改善し、良好で安定したFPFおよびFPDを提供することを目的として、本発明による乾燥粉末組成物は、抗付着性物質である添加物質を含むことができ、粒子の表面におけるその存在が、他の粒子の存在下に、粒子が曝されていた表面に関連して、経験されていた付着力および結合力を修正し得る。
一般に、その機能は付着力および結合力の両方を低下させることである。したがって、これらの添加物は、効力調整剤(FCA)と呼ばれることもある。
【0117】
上記のFCAは、小さな粒子間の弱い結合力を妨げて、粒子の離れた状態が保たれるのを助け、そのような粒子が相互に付着したり、製剤中に存在する他の粒子に付着したり、吸入器の内表面に付着したりするのを減ずるものと考えられている。
【0118】
粒子の凝集体が形成される場合、FCA の粒子の添加は、それらの凝集体が吸入器の作動により生じる乱気流中で容易に崩壊するように、凝集体の安定性を低下させ、その結果、粒子が器具から放出されて吸入される。
凝集体が崩壊すると、活性粒子は肺の下部まで到達し得る個々の小さな粒子または小さな多数の粒子の凝集体に戻る。
【0119】
添加物質またはFCAは、WO 97/03649 に開示されているように、活性粒子の表面に付着しやすい粒子の形態であってもよい。
あるいは、WO 02/43701に開示されているように、例えば共粉砕法により活性粒子の表面にコーティングされていてもよい。
【0120】
上記のFCAが抗摩擦剤または滑沢剤であって、吸入器中で粉末製剤により良い流動性を付与すると、有利である。
このように用いられる物質は、必ずしも通常、抗付着剤または抗摩擦剤と呼ばれるものでなくてもよく、それらは粒子間の付着を低下させ、粉末の流動性を改善し、より良い投与再現性およびより高いFPFへと導く。
【0121】
粒子が相互にまたは器具そのものに強く結合する傾向が減れば、粉末の結合および付着が減るばかりでなく、より良い流動性が促進されもする。
このことは、各投与ごとに計量された粉末の量の変動を少なくし、器具からの粉末の放出を改善するので、投与の再現性を向上させることとなる。
そのことは、器具を出た活性物質が患者の肺下部へ到達するのを増大させることともなる。
【0122】
粒子の不安定な凝集体が粉末中に存在することは、それが吸入器中にあるときに好ましいことである。粉末が効率よくかつ再現性よく吸入器から出るためには、該粉末の粒子は好ましくは約40μmより大きくなければならない。
そのような粉末は、約40μm以上の大きさを有する個々の粒子の形態であるか、あるいはより微細な粒子の凝集体の形態であって、該凝集体が約40μm以上の大きさを有する。
形成される凝集体は、100μmまたは200μmの大きさを有することができ、製剤を施用するのに用いられる器具のタイプによっては、凝集体は約1000μmの大きさであってもよい。
【0123】
FCA の添加により、それらの凝集体は吸入に際して生じる乱気流中でより効果的に崩壊される。したがって、粉末中の粒子の不安定なまたは軟らかい凝集体の形成は、実質的に凝集のない粉末と比べて、より好ましい。
そのような不安定な凝集体は、粉末が器具の内側にあるときには安定であるが、吸入の際には分裂し、崩壊する。
【0124】
FCAが、例えばステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属、リン脂質、レシチン、コロイド状の2酸化ケイ素、ステアリルフマル酸ナトリウム、ならびにここに参照として組み込まれるWO 96/23485に記載のようなものを含むと、特に有利である。
【0125】
粉末が、粉末の重量に基づいて少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは95重量%のトリプタン(またはその医薬的に許容される塩)を含むのが有利である。
添加物質またはFCAの適量は、組成物中に組み込まれて用いられる物質の明確な性状およびその使用方法に依存する。
【0126】
ある実施形態において、粉末は、粉末の重量に基づいて、8重量%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下のFCAを含むのが有利である。
上記で示されたように、場合によっては、粉末は約1重量%のFCA含むのが有利である。
他の実施形態において、FCAは約0.1%〜約10重量%、好ましくは 約0.5%〜8%、最も好ましくは約1%〜約5%の量で含まれる。
【0127】
FCAが微細化されたロイシンまたはレシチンであるとき、それは好ましくは約0.1%〜約10重量%の量で含まれる。好ましくは、FCAは約3%〜約7%、好ましくは約5%の微細化されたロイシンを含む。
好ましくは、少なくとも95重量%の微細化されたロイシンは、150μm未満、好ましくは100μm未満、最も好ましくは50μm未満の粒子径を有する。微細化されたロイシンのマスメディアン直径は10μm未満であるのが好ましい。
【0128】
ステアリン酸マグネシウムまたはステアリルフマル酸ナトリウムがFCAとして用いられるとき、所望の最終投与量により、好ましくは約0.05%〜約10%、約0.15%〜約7%、約0.25%〜約6%、あるいは約0.5%〜約5%の量で含まれる。
【0129】
添加物質は常に肺に到達するわけではないが、知られているFCAは通常、生理学的に許容される物質からなる。乾燥粉末組成物中で用いられるのに好ましいFCAは、アミノ酸類、ペプチド類および0.25〜1000 kDaの分子量を有するポリペプチド類、ならびにそれらの誘導体を含む。
【0130】
上記のFCAは、両極性でもあり得る双極性のイオンを含んでいてもよく、それからなっていてもよい。また、FCAは組成物が肺の中で分散するのを助ける拡散剤を含むか、それから構成されていると有利である。
好適な拡散剤は、リン脂質、例えばDPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)とPG (ホスファチジルグリセロール)との混合物を含む公知の肺の界面活性剤(例えばALEC(商標))のような界面活性剤を含む。
その他の適当な界面活性剤は、例えばジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)を含む。
【0131】
FCA がステアリン酸金属、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウムもしくはステアリン酸リチウム、またはそれらの誘導体、例えばステアリルフマル酸ナトリウムもしくはステアリル乳酸ナトリウムを含むと、特に有利である。
FCAにとって、医薬組成物に滑沢性を示すことは、特に有利である。
【0132】
上記のFCAは、一つ以上の表面活性物質、特に固体状態で表面活性である物質を含むか、それから構成されていてもよく、それらは水溶性または水分散性、例えばレシチン、特に大豆レシチンでもよく、あるいは実質的に水不溶性、例えばオレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エルシン酸(erucic acid)、ベヘン酸、またはグリセリルベヘネートのようなそれらの(エステルもしくは塩のような)誘導体であり得る。
【0133】
そのような表面活性物質の具体的な例は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロールであり、その他の天然および合成の肺用界面活性剤の例は、ラウリン酸およびその塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム;Dynsan 118およびCutina HRのようなトリグリセライド;ならびに一般的な糖エステルである。
【0134】
あるいは、FCAはコレステロール含んでいるか、それからなっていてもよい。
その他の有用なFCAは、フィルム形成剤、脂肪酸類およびそれらの誘導体、ならびに 脂質および脂質様物質である。実施形態によっては、異なった複数のFCAを用いることもできる。
【0135】
一つの好ましい実施形態では、組成物はステアリン酸マグネシウム(10% w/wまで)、またはロイシンのようなFCA を含み、該FCAはトリプタン、好ましくはスマトリプタンの粒子と共にジェットミルされる。
【0136】
「担体フリー」製剤において、粉末の粒子の少なくとも90重量%は、63μm未満、好ましくは30μm未満、より好ましくは10μm未満の粒子径を有するのが有利である。
前記のように、粉末中のトリプタン(または医薬的に許容されるその塩)の粒子の大きさは、肺の下部へ有効に送達されるために、約0.1μm〜5μmの範囲内でなければならない。
添加物質が粒子の形態である場合、これらの添加物の粒子は、肺の下部へ有効に送達されるために好ましい範囲外の大きさを有するのが有利である。
【0137】
ある実施形態において、粉末組成物は粉末の重量に基づいて少なくとも60重量%のトリプタンまたはその医薬的に許容される塩もしくはエステルを含む。
粉末組成物は、粉末の重量に基づいて少なくとも70%または少なくとも80重量%のトリプタンまたはその医薬的に許容される塩もしくはエステルを含むのが有利である。
最も有利なのは、粉末が粉末の重量に基づいて少なくとも90%、少なくとも93%、または少なくとも95重量%のトリプタンまたはその医薬的に許容される塩もしくはエステルを含むことである。
【0138】
肺に導入される粉末、特に患者に投与される活性成分以外の物質の粉末は、できるだけ少ないのが生理学的に都合が良いと信じられている。
したがって、添加物質が加えられるときの量は、できるだけ少ないのが好ましい。それゆえ、最も好ましい粉末は、トリプタンまたはその医薬的に許容される塩もしくはエステルを95重量%より多く含む。好ましくは、トリプタンはスマトリプタンである。
【0139】
特定の実施形態において、製剤は、担体粒子を含まず、医薬的に活性な物質を含む組成物の全重量の少なくとも30%、好ましくは60%、より好ましくは80%、さらに好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは97重量%のようなトリプタンおよびFCA を含む。
【0140】
活性物質はスマトリプタンのようなトリプタンでよく、あるいはそれはトリプタンと二つ目の活性物質との組合せでもよい。その場合、該活性物質は逆の効果および望ましくない2次的効果を低下させるために用いられ、偏頭痛患者に都合が良い。
その他の成分は、前記のような添加物質を一つ以上含んでいてもよい。
【0141】
担体粒子
本発明の組成物の流動性および分散性を改善するためのもう一つのアプローチは、担体粒子を含むことである。
乾燥粉末の投与器具からの放出を改善し、一定のFPFおよびFPDをもたらすためのさらなる企画において、本発明による乾燥粉末組成物は、活性物質の微粒子と混合される不活性な賦形剤の担体粒子を含んでいてもよい。
【0142】
そのような組成物において、特に担体粒子が活性粒子より大きい場合、相互に付着して、微細な活性粒子が吸入器中で担体粒子の表面に付着しやすいというより、むしろ投与器具の作動により放出されて分散し、気道内へ吸入されて、微細な浮遊物になると考えられる。
そのような放出は、前記のように、FCAのような添加物質を含むことにより改善され得る。
【0143】
担体粒子を含めることは、それらが粉末組成物の嵩を著しく増すので、活性物質の投与量が大きい場合には、魅力的でない。それにもかかわらず、本発明の実施形態では、担体粒子を含むこともある。
【0144】
担体粒子は、許容される賦形物質またはそれらの組合せを含むか、あるいはそれらの物質から構成されていてもよく、好ましくはそれらの物質は不活性で生理学的に許容されるものである。
例えば、担体粒子は、糖アルコール、ポリオールおよび結晶性の糖から選択される一つ以上の物質から構成され得る。
その他の適当な担体は、塩化ナトリウムおよび炭酸カルシウムのような無機塩、乳酸ナトリウムのような有機塩、オリゴサッカライドのようなその他の有機化合物を含む。担体粒子がポリオールであると有利である。
【0145】
特に、担体粒子は、結晶性の糖、例えばマンニトール、トレハロース、メリジトース、デキストロースまたはラクトースの粒子であってもよい。
好ましくは、担体粒子はラクトースを含むか、ラクトースから構成される。
【0146】
本発明のある実施形態によれば、乾燥粉末組成物は、活性物質の粒子に比べて比較的大きな担体粒子を含む。
このことは、(重量で)実質的にすべての担体粒子が20μm〜1000μmの間、または50μm〜1000μmの間の直径を有することを意味する。
好ましくは、(重量で)実質的にすべての担体粒子の直径が355μmより小さく、20μm〜250μmの間にある。一つの実施形態において、担体粒子は少なくとも90μmのMMADを有する。
【0147】
好ましくは、少なくとも90重量%の担体粒子が60μm〜180μmの間の直径を有する。
比較的大きな直径の担体粒子は、他のより小さい粒子が担体粒子の表面に付着する機会を増し、良好な流動性および伴出性を提供し、気流中への活性粒子の放出を改善し、肺の下部への活性粒子の沈着を増加させる。
【0148】
本発明のもう一つの実施形態において、担体粒子は、約5〜約1000μm、約4〜約40μm、約60〜約200μmまたは150〜約1000μmの平均粒子径を有していてもよい。担体粒子のその他の有用な平均粒子径は約20〜約30μmまたは約40〜約70μmである。
【0149】
製剤の全重量の5〜20%までのように、大量の微細な物質を含む組成物では、粉末の流動性という問題を伴う。この問題は、WO 01/78694、WO 01/78695およびWO 01/78696として公開された先行特許出願において議論されているように、大きい割れたラクトース担体粒子の使用により克服され得る。
【0150】
その他の実施形態において、乾燥粉末組成物中に含まれる賦形剤または担体の粒子は、比較的小さく、約3〜約40μm、好ましくは約5〜約30μm、より好ましくは約5〜約20μm、最も好ましくは約5〜約15μmのメディアン直径を有する。
【0151】
そのように微細な担体粒子は、もし添加物と処理されないと、微細なまたは超微細な活性粒子を含む粉末組成物中に組み込まれると、好適な流動性をもたらすことができない。
実際、以前には、これらの範囲にある大きさの粒子は、担体粒子として用いるのに適するとは考えられておらず、その代わりに、医薬およびより大きな担体、典型的には40μm〜100μmまたはそれ以上のメディアン直径を有する担体を含む組成物のエアゾル性を増すために、粗い担体粒子と組み合わさった微細な成分として少量加えられていたに過ぎない。
【0152】
しかしながら、そのように微細な賦形剤の量は増やしてもよく、そのように微細な賦形剤粒子は、これらの粒子が添加物またはFCAと共に処理されれば、粗い担体粒子がなくても、担体粒子として作用し得る。
そのような処理は、微細な賦形剤粒子およびそれらが含まれる粉末の粉末特性に実質的な変化をもたらし得る。
【0153】
粉末の密度は大きくなり、2倍、例えば0.3 g/cm3から0.5 g/cm3以上にもなる。その他の粉末特性も変わり、例えば安息角は小さくなり、接触角は大きくなる。
【0154】
3〜40μmのメディアン直径を有する処理された微細な担体粒子は、たとえそれらが付着性を低下させる添加物と処理されたときでも、それらの比較的小さいサイズはそれらが医薬成分から分離する傾向を減らすことを意味するので、有利である。
なぜならば、担体と医薬との間のサイズの差が、微粒子または超微粒子とはるかに大きな担体粒子とを含む通常の組成物に比べて、比較的小さいからである。
【0155】
微細な担体粒子により表される表面積と体積との比は、通常の大きな担体粒子より、それなりに大きい。この大きな表面積は、担体が、通常のより大きな担体粒子より、高いレベルの医薬を効果的に伴うことを許容する。
このことは、動きのない器具により施用される粉末組成物において、処理された担体微粒子の使用を特に魅力的にする。
【0156】
担体ベースのシステムは、前記のようなコーティングされてない活性物質を用いて製剤化するときに、特に有利である。
そのような「非コーティングシステム」は、作用の迅速な発現が求められるときに特に望ましい。しかしながら、非コーティングシステムは、前記のように、利用可能性が活性物質の明確な化学的および物理的性質に大きく依存するという理由で、担体なしでも可能である。
コーティングされたシステムの明確な性質に依存して、医薬の溶解を遅らすこと、例えばより多くの添加剤を用いて、医薬の溶解速度を小さくすることも可能である。
【0157】
担体粒子は、組成物の全重量の90%以下、好ましくは80%、より好ましくは70%、より好ましくは60%、さらに好ましくは50%のように、少ない量で存在するのが好ましい。
【0158】
一つの実施形態において、組成物はおよそ50%の担体粒子、45%のトリプタンおよび5%のFCAを含む。
代わりの特定の実施形態において、組成物はおよそ80%の担体粒子、18%のトリプタンおよび2%のFCAを含む。
これらの製剤中の担体の量は変動するので、添加物およびトリプタンの量も変動するが、これらの構成比はおよそ1:9を維持するのが好ましい。
好ましくは、トリプタンはスマトリプタンであり、FCAはステアリン酸マグネシウムである。
【0159】
さらなる実施形態において、製剤は、組成物の全重量の少なくとも30%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも97重量%の医薬活性物質を含み、残りの成分は添加物質および担体の粒子を含む。
より大きい粒子は、担体として作用すると共に、粉末の流動性を促進する。
【0160】
特定の実施形態において、組成物はトリプタン(30% w/w)および平均粒子径45〜65μmを有するラクトースを含む。
トリプタンおよび担体粒子を含む組成物は、さらに一つ以上の添加物質を含んでいてもよい。上記のようにFCAであってもよい添加物質は、WO 97/03649に開示されているように、活性粒子の表面に付着しやすい粒子の形態にあってもよい。
あるいは、添加物質は、例えばWO 02/43701に開示されているように、共粉砕方法により活性粒子の表面にコーティングされていてもよく、またはWO 02/00197に開示されているように担体粒子の表面にコーティングされていてもよい。
【0161】
粉末の製造
本発明による組成物の良好な流動性および分散性を確保するためにとり得るその他の方法は、粉末の粒子、特にトリプタンを含む活性粒子の製造または加工を含む。
適当な製剤のアプローチの例を、以下により詳細に説明する。
【0162】
噴霧乾燥
トリプタンを含む吸入可能なサイズを有する粒子の調製に噴霧乾燥を用いることができる。活性物質と、粒子の凝集および粉末の挙動を調整する添加物質とを含む噴霧乾燥粒子を製造するのに、噴霧乾燥法を適用することができる。
噴霧乾燥法は、調節された放出性を有する物質中に分散もしくは浮遊した活性物質を含む噴霧乾燥粒子を製造するのに適用することもできる。
【0163】
トリプタンの通常の噴霧乾燥は、しばしばトリプタン「ゼリー」をもたらす。
これらの通常の噴霧乾燥技術は、通常の噴霧乾燥技術をを用いて形成された粒子より、DPI から投与されたときに、より良い挙動を示すように高められた化学的および物理的性質を有する活性粒子を製造できるように改善され得る。
そのような改善のいくつかは、WO 2005/025535として公開された先行の特許出願に詳細に記載されている。
【0164】
さらに、賦形物質中における活性物質の分散または浮遊は、活性化合物にさらなる安定性を付与する。
好ましい実施形態において、スマトリプタンのようなトリプタンは、1次的にはアモルファスの状態で存在し得る。アモルファスのトリプタンを含む製剤は、好ましい溶解性を有する。このことは、粒子が、固体溶液または固体分散液のいずれであってもよい糖グラス中に懸濁することにより可能である。好ましいさらなる賦形剤は、トレハロース、メレジトースおよびその他のポリサッカライドを含む。
【0165】
特に、活性物質をFCAと共に特定の条件下に噴霧乾燥すると、肺吸入用のDPIにより投与されたときに、極めて良い挙動を示す優れた性質を有する粒子をもたらすことが開示されている。
【0166】
噴霧乾燥方法を操作または調整すると、FCAが粒子の表面に多く存在するという結果になることが見出された。
すなわち、FCAは、粒子全体に均一に分布するのではなくて、粒子の表面に濃縮されている。このことは、FCAが粒子の凝集しやすさを抑制し得ることを明らかに意味している。このことは、DPIの作動により容易にかつ確実に崩壊する不安定な凝集体の形成を助長する。
【0167】
所定の大きさおよび狭いサイズ分布を有する液滴が形成されるように、噴霧乾燥方法において、液滴の形成を調整するのが有利であることが見出された。
さらに、液滴の形成を調整することは、液滴の周りの空気の流れの調整を可能にし、このことが次いで液滴の乾燥および特に乾燥の速さを調整するのに活用される。
液滴の形成の調整は、通常の2−液ノズルを用い、特に高速の空気流の使用を避けることにより達せられる。
【0168】
特に、調整された速さで動き、所定の液滴サイズを有する液滴を生成する手段を含む噴霧乾燥を用いるのが好ましい。
液滴の速さは、それらが噴霧されるガス体に関して調整するのが好ましい。
これは、液滴の最初の速さおよび/またはそれらが噴霧されるガス体の速さを、例えば液滴を生成する超音波ネブライザー(USN)を用いて調整することにより達せられる。
エレクトロスプレー・ノズルまたはビブレーティング・オリフィス・ノズルのような択一ノズルが用いられる。
【0169】
一つの実施形態において、噴霧ミスト中の液滴を形成するのに超音波ネブライザー(USN)が用いられる。USNは液体中に浸漬される超音波トランスデューサーを用いる。この超音波トランスデューサー (圧電気結晶) は、液体の噴霧に必要な短い波長を生成する超音波周波数で振動する。
USNの一つの普通の形において、結晶のベースは、その表面からネブライザー液体へ、直接または通常水であるカップリング液体を介して、振動を伝達できるように留められている。
超音波振動が十分に強いとき、ネブライザー・チャンバー中の液体の表面で液体の噴水が形成される。液滴は先端から噴出され、「霧」が噴出される。
【0170】
超音波ネブライザーは知られているのに、それらは通常、医薬を含む溶液の直接吸入用の吸入器で用いられており、それらは従来、噴霧乾燥装置では広く用いられていなかった。
噴霧乾燥でそのようなネブライザーを用いると、以前には認められていなかった多くの有利なことがあるということが見出された。
好ましいUSNは粒子の速さ、したがって粒子が乾燥される速さを調節して、得られる粒子の形状および密度に影響を及ぼす。
USNの使用は、2−液ノズルのような通常のタイプのノズルを用いて液滴を作り出す通常の噴霧乾燥装置を用いる場合より大規模に噴霧乾燥する機会をも提供する。
【0171】
微粒子乾燥粉末を製造するためのUSNの魅力的な性質は、低い噴霧速度、ネブライザーを操作するのに必要な少量のキャリアーガス、得られる比較的小さい液滴サイズおよび狭い液滴サイズ分布、USNの単純な性状(消耗、汚染などにつながる動く部分のないこと)、液滴の周りのガスの流れを正確に調節できて、乾燥の速さを調節できること、ならびに通常の2−液ノズルの配列を用いると困難で高価な方法で、市場で入手できるUSNを用いて、乾燥粉末を生成する高い産出速度を含む。
【0172】
USNは、液体の速度を増すことにより、液体を液滴に分離しない。むしろ、超音波ネブライザーにより生じる振動により、必要なエネルギーが提供される。
粒子を生成するのに、さらなる具体物、超音波ネブライザー、ロータリー噴霧器、エレクトロハイドロダイナミック噴霧器の使用が採用され得る。
【0173】
特に、活性物質をFCAと共に特定の条件下に噴霧乾燥すると、肺の中へ吸入するためにDPIにより投与するとき、極めて優れた挙動を示す優れた性状を有する粒子をもたらし得るということが、開示されている。
【0174】
噴霧乾燥は、スマトリプタンを含むマイクロ粒子を製造するのに用いることができる。噴霧乾燥方法は、調節された放出性を提供する物質内に分散もしくは浮遊した活性物質を含む噴霧乾燥粒子を製造するのに適用することができる。
【0175】
粉砕
粉砕の方法は、本発明による乾燥粉末組成物を製剤化するのにも採用することができる。粉砕による微粒子の製造は、慣用の技術を用いて行なうことができる。普通に用いられる「粉砕」という用語は、活性物質の粒子に、粗い粒子(例えば、MMADが100μmより大きい粒子)を(例えば、MMADが50μm以下の)微細な粒子に粉砕し得る十分な力を適用できる機械的方法の使用を意味する。
【0176】
本発明において、「粉砕」という用語は、粒子の大きさを小さくするか、あるいは小さくしないで、製剤中の粒子の凝集を砕くことをもいう。
粉砕されるべき粒子は、粉砕工程の前には大きくても小さくてもよい。広範な粉砕器具および条件が、本発明の組成物を製造するのに用いられ得る。必要な度合いの力を提供するのに適した粉砕条件、例えば粉砕の強さや時間の選択は、当業者の能力の範囲内である。
粉砕方法は、本発明による乾燥粉末組成物を製剤化するのにも用いることができる。粉砕による微粒子の製造は、慣用の技術を用いて行なうことができる。
【0177】
本発明の一つの実施形態によれば、本発明の活性粒子が肺に沈着したときに、活性物質の放出を遅延または調節できる活性調節剤および/または賦形物質と共に、活性物質が粉砕される。
活性物質粒子とFCAまたは賦形剤粒子との共−粉砕または共−微細化の結果、FCAまたは賦形剤の形が崩れ、微細な活性粒子の表面に付着または溶着する。
これらの得られたFCAを含む混成の活性粒子は、粉砕処理の後で付着性がより少ないことが分かった。
【0178】
粉砕方法は、効果的な混合、および粒子の表面への添加物質の効果的な適用が達せられるように、微細なまたは超微細な粒子の強く結合した凝集体を崩壊させるのに十分な程度の力を適用するのが好ましい。
【0179】
添加物質は活性物質の粒子の表面を被覆している形態にあるのが好ましい。この被覆は連続していなくてもよい。添加物質は活性物質の粒子の表面に付着した粒子の形態にあってもよい。
【0180】
少なくとも一部の混成活性粒子は、凝集体の形態にあってもよい。しかしながら、混成活性粒子が医薬組成物中に含まれているとき、添加物質は、吸入器の作動により該組成物が患者に投与される際に、混成活性粒子の分散を促進する。
【0181】
先行技術は、活性粒子および添加物粒子の共−粉砕または共−微細化について、2つのタイプの方法を述べている。
【0182】
加圧粉砕方法
本発明による組成物の代わりの製造方法において、粉末成分は、メカノフュージョン(「機械的化学的結合」としても知られている)およびサイクロミキシングと呼ばれる方法のような、加圧粉砕方法に付される。
【0183】
そ の名称が示唆しているように、メカノフュージョンは第1の物質を第2の物質上に機械的に溶着するように設計された乾燥コーティング方法である。
「メカノフュージョン」および「メカノフューズされた」という用語の使用は、特定の装置で行なわれる粉砕方法ではなくて、特定のタイプの粉砕方法を指すものと解釈されるものと考えられているということに留意すべきである。
【0184】
加圧粉砕方法は、他の粉砕技術とは異なった原理に従って作用し、内部の構成要素と容器の壁との間の特定の相互作用によるものであり、それらは調節された実質的な圧縮力によるエネルギーを提供することに基づいている。
この方法は、一方の物質が他方の物質より一般に小さいおよび/または軟らかいときに、特に良く作用する。
【0185】
微細な活性粒子および添加物粒子が(メカノフュージョンシステム(ホソカワ・ミクロン株式会社)のような)メカノフュージョン装置またはナノキュラー装置の容器に導入され、そこでそれらは遠心力に曝されて容器の内壁に押し付けられる。
粉末は、ドラムと該要素との間の高速でもって、ドラムの壁と曲がった内部の要素との間の固定された隙間の間で圧縮される。上記の内壁と曲がった要素とが合わさって、ギャップまたはニップを形成し、その中で粒子は一緒に圧縮される。
【0186】
これらの方法の背後にある原理は、内部の要素と容器の壁との間の特定の相互作用を含み、原理が調節された実質的な圧縮力、好ましくは所定の幅のギャップ内の圧縮によるエネルギーを提供することに基づいている、他の粉砕技術とは異なっている。
結果として、粒子がドラムの内壁と(ドラムの内壁より大きな曲率を有する)内部要素との間に落ち込んだときに、極めて大きな剪断力および極めて強い圧縮を経験する。
【0187】
粒子は、局部的に熱し、軟らかくし、破壊し、ねじり、平らにし、より硬い物質(好ましくは活性物質)の核粒子の周りに一方の物質(好ましくは添加物)の粒子を包むのに十分なエネルギーで相互に圧縮されて、コーティングを形成する。
【0188】
そのエネルギーは、一般に凝集体を崩壊するのに十分であり、両成分のサイズの縮小がいくらか起こり得る。
しかしながら、現実には、この圧縮方法は、特に活性粒子がすでに微細化された形態(すなわち10μm未満)にある場合には、活性粒子の粉砕(すなわちサイズの縮小)をほとんどあるいは全く生じず、観察される唯一の物理的変化は粒子が形成的に変形してより丸い形になることである。
【0189】
活性粒子と添加物粒子との共−粉砕または共−微細化は、メカノフュージョン、サイクロミキシングのような圧縮タイプの方法、ならびにハイブリダイザー(Hybridiser)またはノビルタ(Nobilta)の使用を含む方法のような関連方法を含む。
【0190】
これらのメカノフュージョンおよびサイクロミキシングの方法は、効果的な混合および活性粒子の表面への添加物質の効果的な適用が達成されるように、活性物質の個々の粒子を分離し、活性粒子の硬く結合した凝集体を崩壊するのに十分高度な力を加える。
上記の共−粉砕方法の特に好ましい観点は、添加物質が粉砕中に変形して、活性粒子の表面に付着または溶着し得ることである。
【0191】
ジェットミル
ジェットミルは、低いミクロンからサブミクロンまでの範囲の粒子サイズに固体を小さくすることができる。粉砕エネルギーは、水平粉砕空気ノズルからの気流により創出される。気流により創出される流動床中の粒子は、よりゆっくりと移動する粒子と衝突しながら、ミルの中央に向かって加速される。気流およびその中に保持される粒子は、激しい乱気流を創出し、粒子が互いに衝突するにつれて、これらは細かく砕かれる。
【0192】
以前は、ジェットミルは、活性および添加粒子の同時ミルについて魅力的であるとは考えられておらず、機械化学的結合(メカノフュージョン)および回転混合のような制御された圧縮プロセスが明らかに好ましかった。
ジェットミル中の粒子同士の衝突は、ある程度非制御であり、よって当業者はこの技術について、活性粒子の表面上への添加物質のコーティングの望ましい沈着を提供できないだろうと考えていた。
【0193】
さらに、機械化学的結合および回転混合を用いる状況とは異なって、しばしば最も望ましくかつ有効であると考えられていたより微細な粒子がプロセスから逃れ得るような粉末構成成分の分離がジェットミル中で生じると考えられていた。これとは対照的に、メカノフュージョンのような技術は、所望のコーティングにおいてどのような結果をもたらすかを明確に予想することができた。
【0194】
圧縮または衝撃式のミル粉砕プロセスが、種々の粒子の分離を防ぐために閉鎖系において行われなければならないと以前は考えられていたことにも注目すべきである。これが真実でないことが見出され、本発明による同時ジェットミル粉砕プロセスは、閉鎖系で行う必要がない。開放系であってさえも、同時ジェットミル粉砕は、添加物質としてロイシンを用いる場合でさえも小粒子の損失をもたらさないことが、驚くべきことに見出された。
【0195】
活性および添加物質の複合粒子が、これらの物質の同時ジェットミル粉砕により製造できることが見出された。得られる粒子は、優れた特徴を有し、これらの特徴が、吸入による投与のためにDPIから粒子が施用されたときに、大きく改善された性能を導く。特に、活性および添加粒子を同時ジェットミル粉砕することにより、さらに著しい粒子サイズの低減を導くことができる。さらに、複合活性粒子は、改良されたFPDおよびFPFを示す。
【0196】
活性粒子の分散促進の有効性は、活性粒子の同様の大きさにした粒子を添加物質と単純にブレンドすることにより作製される組成物と比較して、本発明による同時ジェットミル粉砕方法を用いることにより改善されることが見出された。
「単純ブレンド」という用語は、従来の転倒ブレンダーを用いるブレンドもしくは混合または高剪断混合を意味し、基本的に標準的な実験室で当業者が利用できるであろう従来の混合装置の使用を意味する。
【0197】
別の実施形態において、上記の2工程プロセスを用いて製造された粒子は、その後メカノフュージョンを受ける。最終のメカノフュージョン工程は、添加物質をさらに擦って粒子にして、複合活性粒子を「磨く」と考えられる。このことにより、メカノフュージョンにより粒子にもたらされる有益な特性と、同時ジェットミル粉砕により可能になる非常に小さい粒径との組合せを享受することが可能になる。
【0198】
ある実施形態において、所望ならば、ミル粉砕工程により製造されるマイクロ粒子は、次いでさらなる賦形剤とともに製剤化することができる。このことは、噴霧乾燥工程、例えば同時噴霧乾燥により達成してよい。この実施形態において、粒子は溶媒中に懸濁され、さらなる賦形剤の溶液または懸濁液とともに同時噴霧乾燥される。好ましいさらなる賦形剤は、多糖類を含む。さらなる医薬的に有効な賦形剤を用いてもよい。
【0199】
ジェットミル工程は、媒体と粒子との間、または粒子同士の間に高エネルギーの衝撃を創出する。実際面ではこれらの工程は、非常に小さい粒子をうまく作製するが、ボールミルもホモジナイザーも、圧縮プロセスについて観察される方式で、得られる薬剤粉末の分散を改善することにおいて有効ではないことが見出された。これらの第2衝撃プロセスは、それぞれの粒子上への添加物質のコーティングの製造において同様に有効でないと考えられる。
【0200】
粒径の著しい低減も望まれる場合、WO 2005/025536として公開された先行の特許出願に開示されるように、同時ジェットミル粉砕が好ましい。同時ジェットミル粉砕工程は、低いミクロンまたはサブミクロンの直径を有する複合活性粒子をもたらすことができ、これらの粒子は受動型DPIを用いて施用される場合でさえも、特に良好なFPFおよびFPDを示す。
【0201】
その他の粉砕手順
さらに、ボールミル粉砕およびホモジナイザーの使用に関与する衝撃ミル粉砕方法がある。
ボールミル粉砕は、従来技術の同時ミル粉砕方法における使用のために適切なミル粉砕法である。遠心および遊星ボールミル粉砕が、特に好ましい方法である。あるいは、高剪断および乱気流の条件を生成する高圧のバルブに粒子を含む流体を通す高圧ホモジナイザーを用いてもよい。このようなホモジナイザーは、複合活性粒子の大規模製造において用いるために、ボールミルよりも適切であろう。
【0202】
適切なホモジナイザーは、4000バールまで加圧できるEmulsiFlex高圧ホモジナイザー、Niro Soavi高圧ホモジナイザー((2000バールまでの加圧が可能)、およびMicrofluidics Microfluidisers(最大圧力2750バール)を含む。ミル粉砕方法は、代わりに高エネルギー媒体ミルまたは撹拌機ビーズミル、例えばNetzsch高エネルギー媒体ミルまたはDYNO-ミル(Willy A. Bachofen AG, Switzerland)を含み得る。
【0203】
上記のように、活性物質と添加物質との同時ミル粉砕を含む従来の方法(WO 02/43701に記載されるような)は、ある量の添加物質を表面上に有する活性物質の微細粒子である複合活性粒子をもたらす。
【0204】
粒子に対する剪断力は、粒子と機械表面またはその他の粒子との間の固着と、流体の加速によるキャビテーションとをもたらし、これらは全て粒子の破壊に貢献し得る。適切なホモジナイザーは、EmulsiFlex高圧ホモジナイザー、Niro Soavi高圧ホモジナイザー、およびMicrofluidics Microfluidiserを含む。ミル粉砕方法を用いて、上記の空気動力学的マスメディアン粒子径を有するマイクロ粒子を提供できる。
【0205】
衝撃ミル粉砕方法を用いて、添加物質を含むかまたは含まない、本発明によるトリプタンを含む組成物を製造できる。このような方法は、ボールミル粉砕および適切なホモジナイザーの使用を含む。ホモジナイザーは、複合活性粒子の大規模製造における使用のために、ボールミル粉砕よりも適切であろう。
【0206】
実際面で、これらの方法は、非常に小さい粒子をうまく作製するが、ボールミルもホモジナイザーも、圧縮プロセスについて観察される方式で、得られる薬剤粉末の分散を改善することにおいて特に有効ではないことが見出された。第2衝撃プロセスは、それぞれの粒子上への添加物質のコーティングの製造において同様に有効でないと考えられる。
【0207】
ミル粉砕まとめ
活性物質と添加物質との同時ミル粉砕を含む従来の方法(WO 02/43701に記載されるような)は、ある量の添加物質を表面上に有する活性物質の微細粒子である複合活性粒子をもたらす。
添加物質は、好ましくは活性物質の粒子の表面上のコーティングの形態である。コーティングは非連続コーティングであり得る。添加物質は活性物質の粒子の表面に付着した粒子の形態であり得る。
【0208】
活性剤の粒子と添加物(FCA)または賦形剤の粒子との同時ミル粉砕または同時微小化は、添加物または賦形剤が変形され、微細活性粒子の表面上に塗りつけられるかまたは融合されることをもたらし、両方の物質から作製された複合粒子を生成する。添加物を含むこれらの得られた複合活性粒子は、ミル粉砕処理の後に粘着性がより低いことが見出された。
【0209】
複合活性粒子の少なくともいくらかは、凝集体の形態にあってよい。しかし、複合活性粒子が医薬組成物中に含まれる場合、添加物質は、この組成物が吸入器の作動により患者に投与される際に、複合活性粒子の分散を促進する。
【0210】
ミル粉砕は、活性剤の放出を遅延または制御できる物質の存在下で行うこともできる。
本発明の組成物が添加物質を含む場合、これが組み込まれる様式は、添加物質がFPFおよびFPDを含む粉末性能に対して有する効果に著しい影響を有する。
【0211】
高剪断ブレンド
医薬品製造のスケールアップは、装置の1要素を1より多い機能を行うために用いることをしばしば必要とする。このことの例が、生成物の混合および造粒の両方を行うことができるミキサー−造粒機の使用であり、このことにより装置の要素間で生成物を移動させる必要がなくなる。このようにすることにおいて、粉末分離の機会が最小限にされる。
【0212】
高剪断ブレンドは、高剪断回転子/固定子ミキサー(HSM)をしばしば用い、これは混合する用途に応じて用いられる。ホモジナイザーまたは「高剪断材料加工機」は、材料に対して高い圧力を生じ、それにより混合物はその後、非常に微細なオリフィスを通して輸送されるか、または鋭角に接触する。チャンバを通しての流れは、下行される材料に応じて逆流または並流であり得る。チャンバの数を増加させて、より良い性能を達成できる。
【0213】
オリフィスのサイズまたは衝突角度も、生じる粒径を最適にするために変更させ得る。オリフィスおよびチャンバを通過する間に高剪断材料加工機により生じる高剪断のために、粒径の低減が生じる。強い剪断を加え、混合サイクルを短くする能力は、凝集された粉末を均一にブレンドすることを必要とする用途のための広い魅力をこれらのミキサーに与える。さらに、従来のHSMは、高い強度の混合、分散、崩壊、乳化および均質化のためにも広く用いられ得る。
【0214】
当業者には、粉末製剤の製造において、高出力で高剪断のミキサーを用いても、小さい粒子は、完全な分散を得るためには比較的長期間の「エイジング」が必要であり、この期間は混合力を増加させること、または剪断速度を増加させるように撹拌機の回転速度を増加させることによって、認め得るほどに短くならないことが公知である。
【0215】
薬剤粒子の自己付着特性が、表面エネルギー低減微粒子コーティングまたはフィルムを形成するための力制御剤の使用とともに高せん断力を必要とするようなものである場合、高せん断ミキサーを用いることもできる。
【0216】
投薬計画
本発明による療法の詳細は、患者の年齢、性別または症状、および1つ以上の併存療法の存在または不在のような種々の因子に依存する。症状の性質および重篤さも考慮されなければならない。
【0217】
ある実施形態において、組成物は、約6 mg〜約60 mgの、24時間にわたって投与される用量である1日用量を提供する。1日用量は、しばしば、数回の用量に分けられる。好ましくは、1日用量は、約3 mg〜約40 mgの間である。これらの1日用量は、単一の機会(通常、複数の逐次的な吸入を含む)に投与され得るが、1日用量は持続する偏頭痛の患者に24時間にわたって投与されることが予期される。
【0218】
このような場合、いくらかの患者は、4〜5回の用量または逐次的な一連の用量を受けることができるが、患者は、24時間に例えば2つの逐次的な10 mg用量の3回の投与、すなわち60 mgの1日当たりの極値で、平均して2〜3回の別々の単一投与または逐次的な一連の投与を受けてよい。
【0219】
さらなる実施形態において、本発明による組成物は、偏頭痛の症状の治療を提供する使用のため、またはまとめて症状を予防するためである。患者は好ましくは用量または逐次的な一連の用量を投与でき、約20分以下、好ましくは15分以下、最も好ましくは10分以内に、投与された用量または逐次的な一連の用量が偏頭痛の症状を治療または予防するのに十分であるかを確認できる。
さらなる用量または逐次的な一連の用量が必要であると感じる場合、これを安全に投与でき、所望の治療効果が達成されるまでこの手順を繰り返してよい。
【0220】
別の実施形態において、組成物は、用量または逐次的な一連の用量が、規則的および頻繁な間隔で、例えば約60分間、約45分間、約30分間、約20分間、約15分間または約10分間の間隔で投与されることを可能にし、患者が偏頭痛または偏頭痛の症状を経験することを防ぐ予防療法を提供する。
このような実施形態において、選択された間隔で投与される個別の用量または逐次的な一連の用量は、患者に症状からの適切な軽減を望ましくは提供しながら、安全な限界内で1日用量を提供するように調節される。
【0221】
トリプタン用量の自己用量設定が、治療効果の迅速な発現、正確で比較的少ない用量および副作用の低い発生率の結果として、可能である。投与の形態は、痛みがなく簡便であり、過度の不快さまたは不便さなしで反復投与を可能にすることも重要である。
【0222】
ある実施形態において、組成物は、5 mg、6 mg、7 mg、8 mg、9 mg、10 mg、11 mg、12 mg、13 mg、14 mg、15 mg、16 mg、17 mg、18 mg、19 mg、20 mg、21 mg、22 mg、23 mg、24 mg、25 mg、26 mg、27 mg、28 mg、29 mg または30 mg以下の、患者に投与されるトリプタンの用量または逐次的な一連の用量を含む。好ましくは、用量は少なくとも1 mg、2 mg、3 mgまたは4 mgである。
【0223】
急性片頭痛の療法
さらに別の実施形態において、トリプタン組成物の用量は必要により、すなわち患者が偏頭痛の始まりを経験するかまたはそれを疑う場合に、患者に投与される。これにより臨機応変または「オンデマンド」の治療が提供される。
【0224】
この実施形態において、トリプタンの単一有効用量または逐次的な一連の用量が投与され、そのような投与のそれぞれにおけるトリプタンの量は、好ましくは3〜30 mg、より好ましくは4〜25 mg、最も好ましくは5〜22 mgの間である。
【0225】
あるいは、複数のより少ない用量または逐次的な一連の用量を逐次的に投与してよく、それぞれの投薬の効果は、次の投与を行う前に患者により効力について評価される。このことにより、患者が偏頭痛の症状の始まりを経験したときに、自己用量決定と用量の最適化が可能になる。
【0226】
偏頭痛攻撃の重篤さと、治療に対する応答とは変動し得る。かなり頻繁に、患者は、その攻撃の大多数に対して1つの薬剤のみを必要とし得るが、時折、より重篤な攻撃に対していくつかの薬剤が必要とされ得る。患者の大多数について、偏頭痛の症状の始まりに対する単純な看護が迅速な軽減を確実にする。
【0227】
必要な禁忌を考慮することを条件として、治療の成功のためにいくつかの重要な要素がある。治療は、頭痛の始まりの際に施されるべきである。このような攻撃を治療するための種々の薬剤用量は、例えば、900 mgのアスピリン、1000 mgのアセトアミノフェン、500〜1000 mgのナプロキセン、400〜800 mgのイブプロフェンまたはそれらの組合せを含む。
【0228】
代わりの実施形態において、スマトリプタンのようなトリプタンは、片偏頭痛のための他の急性治療、例えばTrexima(商標)(ナプロキセンナトリウム、GlaxoSmithKline)の場合のような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、単純な鎮痛薬、カフェイン、オピオイド、バルビツレート催眠薬およびコルチコステロイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬、バニロイド作動薬、グルタメート修飾薬ならびに硝酸合成酵素阻害剤、またはそれらの任意の組合せと組み合わせてよい。
【0229】
偏頭痛の予防的療法
好ましい実施形態において、トリプタンと偏頭痛の予防的薬剤との組合せが提供される。このような組合せは、進展する偏頭痛を治療しながら患者が予防を継続することを可能にする。偏頭痛の予防的薬剤は、例えば、ベータ遮断薬、ベラパミルおよびピゾチフェンを含み得る。
【0230】
種々の予防的療法が、種々の程度の許容性で用いられる。使用が証明またはよく許容されているものは、β-アドレナリン受容体拮抗薬(プロプラノロールおよびメトプロロール)、アミトリプチリン、ジバルプロエクス(バルプロ酸)およびフルナリジンを含む。ピゾチリン(ピゾチフェン)およびメチセルジドのようなセロトニン拮抗薬も広く用いられる。
【0231】
ベラパミルおよび選択的セロトニン再取込み阻害剤は、広く用いられるが、真の利益がこれから証明されなければならない。見込みを示し続ける化合物の最後の群は、ガバペンチンおよびトピラマートを含む。
【0232】
本発明の別の実施形態によると、スマトリプタンの用量または逐次的な一連の用量は、肺に送達され、該用量は、好ましくは投与の1時間以内、より好ましくは30分以内、最も好ましくは10分以内に急性高山病および/または高度による頭痛についての予防的および/または治療的軽減を提供するのに十分である。
【0233】
さらなる実施形態において、トリプタンと、モノアミンオキシダーゼ-A (MAO-A)阻害剤との組合せが開示され、この組合せは、同時または逐次的に投与される。MAO-Aは限定されないが、モクロベミド、ベフロキサトン、トロキサトン、シモキサトン、アミフラミンおよびハルマリンであり、上記の組合せは、トリプタン成分の必要とされる用量を低減でき、排出半減期を増加させ、かつ投与頻度を低減させることにより結果として効力を増強できる。
【0234】
さらなる実施形態において、組成物は、セレコキシブ、ピロキシカム、メロキシカム、メフェナム酸、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、ナプロキセン、エトドラク、アセクロフェナクもしくはジフルニサルのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)またはCox2阻害剤と同時または逐次的に投与されるトリプタンを含み得る。
【0235】
さらなる実施形態において、麻酔薬と同時または逐次的に投与されるトリプタンを含む組成物。このような組成物は、例えばスマトリプタン、フロバトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタンまたはナラトリプタンと、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、エチドカインまたはテトラカインのような麻酔薬とを含む。さらに、該組成物はベータ遮断薬をさらに含み得る。
【0236】
さらなる組成物は、CB1およびCB2作動薬を含むカンナビノイド、特にドロナビノール、ナビロンおよびサティベックス(Sativex)と同時または逐次的に投与されるトリプタンを含み得る。
さらなる組成物は、テルミサルタンおよびその他のアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)と同時または逐次的に投与されるトリプタンを含み得る。
【0237】
さらなる組成物は、N-メチルd-アスパラギン酸受容体(NMDAR)拮抗薬と同時または逐次的に投与されるトリプタンを含み得る。NMDA受容体拮抗薬は、メマンチン、アマンタジン、リマンタジン、ケタミン、エリプロディル、イフェンプロジル、ジゾシルピン、レマセミド、ラモトリジン、リルゾール、アプチガネル、フェンシクリジン、フルピルチン、セルフォテル、フェルバメート、ネラメキサン、スペルミン、スペルミジン、レベモパミル、デキストロメトルファン、デキストロルファン、およびそれらの医薬的に許容される塩からなる群より選択され得る。
【0238】
さらなる組成物は、制吐作用を示す5-ヒドロキシトリプタミン-3(5-HT3)受容体拮抗薬と同時または逐次的に投与されるトリプタンを含み得る。5-HT3受容体拮抗薬または特に興味のあるものは、ドラセトロン、グラニセトロンおよびオンダンセトロンを含む。
【0239】
ドーパミン拮抗薬、例えばドンペリドン、クロルプロマジンまたはプロクロルペラジンとトリプタンとの同時または逐次的な投与が開示される。
抗ヒスタミン薬、例えばシクリジンまたはプロメタジンとトリプタンとの同時または逐次的な投与が開示される。
【0240】
ベンゾジアゼピン、例えばロラゼパムまたはミダゾラムとトリプタンとの同時または逐次的な投与が開示される。
さらに、トリプタンと、本明細書に開示される共活性剤との3つ組合せ療法、例えばトリプタン、抗炎症薬および制吐剤の肺への投与が好ましい組合せである。
【0241】
薬物動態
肺の生理学と本発明の属性との組合せは、吐き気を催すかおよび/または嘔吐している患者に適切であり、さらに注射およびそれに関連する不都合の必要性を回避する形態で、作用の迅速な開始、高い程度の効力(≧70%の患者における2時間での疼痛軽減)、迅速で予測可能な治療効果となる一貫した全身性曝露をもたらす。
【0242】
好ましくは、15分のように短く、より好ましくは10分未満のTmaxが観察される。患者の大多数が、スマトリプタンの吸入後10分以内に治療効果の発現を達成した。患者は、肺吸入によるスマトリプタンの投与後4分、または2分のように迅速に治療効果を期待してよい。
所望の時間内でのバイオアベイラビリティーの概念は、治療上の興味対象であり、最重要である。これが達成される場合、迅速な治療上の軽減が確実になる。
【0243】
本発明のさらなる実施形態において、肺吸入による組成物の投与は、容量依存的Cmaxを提供する。
本発明の別の実施形態によると、スマトリプタンの用量は肺に吸入され、この用量は約30分以内に治療効果を提供するのに十分である。治療効果は、投与から約20分のように短く、より好ましくは約15分未満、さらには10分未満で経験される場合もある。
【0244】
本発明の別の実施形態において、肺吸入による組成物の投与は、60〜200分の最終排出半減期を提供する。
さらに別の実施形態において、肺吸入による組成物の投与は、少なくとも45分間、好ましくは少なくとも60分間の治療効果を提供する。臨床試験において、治療効果の平均時間は、皮下投与と差がないことが期待される。
【0245】
本発明のある実施形態によれば、スマトリプタンを含む組成物が提供され、ここで肺吸入による組成物の投与は、投与の約15分未満、好ましくは約10分以内にTmaxを提供する。
【0246】
本発明のある実施形態において、名目的な用量は、約2〜約10 mgのスマトリプタンサクシネートを含み、この用量はインビボで約25 ng/ml〜約100 ng/mlの平均Cmaxを与える。スマトリプタンのいずれかの用量についてのTmaxは、静脈血サンプリングにより測定する場合、肺吸入投与後0.5〜30分の間、好ましくは1〜15分後、最も好ましくは2〜10分後に生じる。
【0247】
重要なことに、動脈血サンプリングにより得られるCmaxは、以下に例示するように、静脈血サンプリングから得られるものよりおよそ1.5倍大きい。さらに、動脈薬剤レベルは、静脈レベルと比較した場合に、薬剤レベルを維持する。薬剤の最終排出は、いずれの容量についてもおよそ2時間である。本明細書に開示される偏頭痛の治療のために肺投与により送達されるスマトリプタンの用量の排出半減期は、およそ95〜191分であった。
【0248】
よって、本発明によるスマトリプタンを含む組成物は、肺吸入による組成物の投与の際に投与の8〜20分以内にTmaxを与え、ここでCmaxは用量依存的である。吸入によるスマトリプタンのこの迅速な吸収は、約10分以下で治療効果を発揮するためのこれらの組成物の投与を可能にする。
【0249】
本発明の組成物についてのこれらの薬物動態の重要性は、スマトリプタン組成物の吸入が、患者間の非常に小さい変動で、8〜16分間に一貫したTmaxをもたらすことを示すことである。特に、CmaxおよびCVの範囲は、皮下投与後にみられるものと非常に似ており、経口および経鼻投与より小さい。
【0250】
本発明の製剤の驚くべき所見は、1秒間の強制呼気容量(FEV1)に対する有害作用がないことである。このことは、特に驚くべきことである。なぜなら、肺動脈および静脈は、5HT1Bおよび5HT1A受容体を有するからである。これらの受容体は、トリプタン胸部症状として発現するトリプタン誘導性肺血管収縮と関連すると考えられている。
【0251】
送達デバイス
本発明による吸入可能な組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)により投与されるのが好ましいが、加圧式定量吸入器(pMDI)または噴霧系によっても投与することができる。
【0252】
乾燥粉末吸入器
本発明による組成物は、能動型または受動型DPIを用いて投与してよい。乾燥粉末製剤を、それを施用するために用いられる特定の型のデバイスにどのように調整し得るかが今回同定されており、このことは高性能が求められる受動型デバイスの把握されている短所が克服され得ることを意味する。
【0253】
好ましくは、これらのFPFは、能動型DPIを用いて組成物が施用される場合に達成されるが、そのような良好なFPFは、デバイスがWO 2005/037353として公開された以前の特許出願に記載されるものであるか、および/または乾燥粉末組成物が受動型デバイスによる投与のために特に製剤化されている場合は、特に受動型DPIを用いても達成され得る。
【0254】
本発明のある実施形態において、DPIは圧縮ガスの供給源または代替エネルギー供給源が用いられる能動型デバイスである。適切な能動型デバイスの例は、Aspirair(商標、Vectura)およびNektar Therapeuticsにより製造される能動型吸入器(米国特許第6,257,233号に開示される)、および超音波Microdose(商標)またはOriel(商標)デバイスを含む。
【0255】
代替の実施形態において、DPIは、患者の息がデバイス中の原動力を提供するガスの唯一の供給源である受動型デバイスである。「受動型」乾燥粉末吸入器の例は、Rotahaler(商標)およびDiskhaler(商標) (GlaxoSmithKline)、ならびにTurbohaler(商標) (Astra-Draco)およびNovolizer(商標、Viatris GmbH)およびGyroHaler(商標、Vectura)を含む。
【0256】
乾燥粉末製剤は、予め計量され、全体的な性能に害を与えずに化学的および物理的な保護を提供するカプセルまたはホイルブリスター中に保存され得る。代わりに、乾燥粉末製剤は、レザバーに基づくデバイス中に保持され、作動時に計量され得る。「レザバーに基づく」吸入器の例は、Clickhaler(商標、Innovata)およびDuohaler(商標、Innovata)、ならびにTurbohaler(商標、Astra-Draco)を含む。このようなレザバーに基づく吸入器の作動は、患者の息がデバイス中の原動力を生じるエネルギーの唯一の供給源である受動型作動を含み得る。
【0257】
乾燥粉末吸入器において、投与される用量は非加圧乾燥粉末の形態で貯蔵され、吸入器の作動時に粉末の粒子が患者により吸入され得る微細に分散された粒子の一団の形態でデバイスから放出される。
乾燥粉末吸入器は、患者の息がデバイス中の原動力を提供するガスの唯一の供給源である「受動型」デバイスであり得る。
【0258】
「受動型」乾燥粉末吸入器の例は、RotahalerおよびDiskhaler (GlaxoSmithKline)、Monohaler(MIAT)、Gyrohaler (商標、Vectura)、Turbohaler(Astra-Draco)およびNovolizer (商標、Viatris GmbH)を含む。
代わりに、圧縮ガスの供給源または代替エネルギー供給源が用いられる「能動型」デバイスを用い得る。適切な能動型デバイスの例は、Aspirair (商標、Vectura Ltd)およびNektar Therapeuticsにより製造される能動型吸入器(米国特許第6,257,233号によりカバーされる)を含む。
【0259】
一般に、受動型および能動型の吸入器を用いて施用される場合に、異なる組成物が異なって挙動すると考えられる。受動型デバイスは、デバイス中でより小さい乱気流を生じ、粉末粒子はデバイスを離れるときによりゆっくりと移動する。このことにより、計量された用量のいくらかがデバイス中に残り、組成物の性質に応じて作動時に凝集体があまり細分化されない。しかし、ゆっくりと移動する一団が吸入されると、咽喉における沈着がより少ないことがしばしば観察される。
【0260】
これとは対照的に、能動型デバイスは、作動時により大きい乱気流を生じる。このことにより、計量された用量のより多くがブリスターまたはカプセルから抽出され、粉末がより大きい剪断力に付されるのでよりよい細分化がもたらされる。しかし、粒子は、受動型デバイスを用いるよりも速く移動しながらデバイスから離れ、このことが咽喉の沈着の増加を導き得る。
【0261】
高い割合のスマトリプタンを含む本発明の組成物は、能動型および受動型デバイスの両方を用いて施用されたときに良好に挙動することが、驚くべきことに見出された。
異なる型の吸入器を用いて上記で予測されるようないくらか損失のある傾向があるが、この損失は最小限であり、スマトリプタンの定量された用量の実質的な部分が肺に沈着されることを可能にする。肺に一旦到達すると、スマトリプタンは迅速に吸収され、一貫した吸収と、経口または経鼻スマトリプタン製剤より高いバイオアベイラビリティーを示す。
【0262】
特に好ましい「能動型」乾燥粉末吸入器は、本明細書において、Aspirair (商標)吸入器として参照され、その内容が本明細書に参照により組み込まれるWO 01/00262、WO 02/07805、WO 02/89880およびWO 02/89881に詳細に記載されている。しかし、本発明の組成物は、受動型または能動型吸入器のいずれを用いても投与できると認識される。
【0263】
その他の吸入器
さらなる実施形態において、組成物は、加圧式定量吸入器(pMDI)、噴霧吸入器またはソフトミスト吸入器を用いて施用される。加圧式定量吸入器により送達される薬剤用量は、1μg〜3 mg程度の傾向である。適切なデバイスの例は、Modulite(商標、Chiesi)、SkyeFine(商標)およびSkyeDry(商標、SkyePharma)のようなpMDI、Porta-Neb(商標)、Inquaneb(商標、Pari)およびAquilon(商標)のような噴霧吸入器、ならびにeFlow(商標、Pari)、Aerodose(商標、Aerogen)、Respimat (商標)吸入器(Boehringer Ingelheim GmbH)、AERx (商標)吸入器(Aradigm)およびMystic(商標、Ventaira Pharmaceuticals, Inc.)のようなソフトミスト吸入器を含む。
【0264】
これらのデバイス中での使用に適する組成物は、加圧式定量吸入器(pMDI)により、ともに施用され得る溶液および懸濁液を含む。本発明によるpMDI組成物は、液体噴射剤と混合したかまたはそれに溶解した、上記の乾燥粉末組成物を含み得る。
【0265】
ある実施形態において、噴射剤は、CFC-12、または1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC 134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227)、HCFC-22(ジフルオロクロロメタン)、HFA-152 (ジフルオロエタンおよびイソブテン)もしくはそれらの組合せのようなオゾンに優しい非CFC噴射剤である。
【0266】
このような製剤は、活性剤および/またはその他の成分を懸濁、可溶化、湿潤および乳化するため、またpMDIのバルブ要素を滑らかにするために、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、プロポキシル化ポリエチレングリコールおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルのような極性界面活性剤を含むことを必要とし得る。
【0267】
結論
結論として、肺送達の利点は、以下のようにまとめることができる。
作用の迅速な発現、高い程度の効力、迅速で予測可能な治療効果となる一貫した全身性曝露をもたらす送達効率の増加。
投与量レベルからの肺送達により達成される優れたバイオアベイラビリティーは、この投与経路の将来の使用にさらなる支持を与える。
【0268】
悪い味を避ける迅速に作用する投与量の送達は、吐き気を催すかおよび/または嘔吐している患者にとって特に適切である。さらに、患者が自分で投薬することを望まないであろう場合に注射の必要性も回避する投与経路は、患者にとってより優しいとみなされるはずである。
【0269】
経鼻投与に関連するいくつかの複雑さを有することがない経口吸入による肺送達は、増進されかつ予測可能な治療応答となる、より迅速で一貫した全身性の曝露をもたらす。これらのパラメータは、中枢神経系の多くの障害、特に偏頭痛の治療を考慮する場合に、鍵となる対処されていない臨床上の必要性である。
【0270】
全般的な記載
本明細書に記載される特定の実施形態は、例示として示されており、本発明を限定しないことが理解されるべきである。
本発明の基本的な特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の実施形態において用いることができる。
当業者は、本明細書に記載される具体的な組成物および方法の多数の等価物を認識するか、または日常的な研究を用いてそれを解明することができる。
このような等価物は、本発明の範囲内であるとみなされ、特許請求の範囲によりカバーされる。
【0271】
本明細書で言及される全ての出版物および特許出願は、本発明が関係する当業者のレベルを示す。全ての出版物および特許出願が、それぞれの出版物または特許出願が具体的にかつ個別に参照により組み込まれると示されているのと同程度に、本明細書に参照により組み込まれる。
【0272】
用語「a」または「an」は、特許請求の範囲および/または明細書において用語「含む」とともに用いられる場合、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」および「1または1を超える」の意味とも一致する。
【0273】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、開示は選択肢のみおよび「および/または」に言及する定義を支持するけれども、選択肢のみに言及すると特に記載していない限り、または選択肢が互いに排他的でない限りは、「および/または」を意味する。
【0274】
本明細書を通して、用語「約」は、値が、その値を決定するために用いられたデバイス、方法についての固有の誤差の値、または研究の主題のうちに存在する変動を含むことを示すために用いられる。
【0275】
本明細書で用いられる用語「含む」(および「含み」のような「含む」の任意の形態)、「有する」(および「有し」のような任意の「有する」の形態)、「含む」(および「含み」のような「含む」の任意の形態)、または「含有する」(および「含有し」のような「含有する」の任意の形態)は、包括的で無制限であり、付加的で、記載されていない要素または方法のステップを排除しない。
【0276】
用語「またはその組合せ」は、本明細書で用いる場合、その用語の前に列挙された要素の全ての順列および組合せのことをいう。例えば、「A、B、Cまたはそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BCまたはABCと、特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABとの少なくとも1つを含むことを意図する。
【0277】
この例の続きとして、BB、AAA、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような1つ以上の要素または用語の反復を含む組合せも明確に含まれる。当業者は、文脈から明らかでない限り、いずれの組合せでの要素または用語の数に典型的に制限がないことを理解する。
【0278】
本明細書に開示され、請求される全ての組成物および/または方法は、本開示に鑑みて過度な実験を行わずに作製し、実行できる。
本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態の観点で記載されているが、本明細書に記載される組成物および/または方法ならびに方法のステップまたは一連のステップを、本発明の概念、精神および範囲を逸脱することなく変動させ得ることが当業者に明らかである。
当業者に明らかなこのような類似の置換および改変の全ては、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1A】平均濃度対時間を表すグラフである。
【図1B】Logグラフ−吸入粉末(VR147/1)(15mg)および皮下スマトリプタン(6mg)を表すグラフである。
【図2A】10mg吸入スマトリプタン粉末(対象108)についての動脈および静脈PKデータの比較を表すグラフである。
【図2B】10mg吸入スマトリプタン粉末(対象108)についての動脈および静脈PKデータの比較を表すグラフである。
【図3】動脈血漿プロフィール−ピリオド3(10mg)を表すグラフである。
【図4】平均(CV%)スマトリプタン吸入粉末(VR147/1)についての薬物動態パラメータ−パート1および3を表す表である。
【図5】平均濃度対時間を表すグラフである。
【図6】平均Cmax対スマトリプタン吸入粉末の投与量(VR147/1):直線スケール(対象102,106および107を除く)を表すグラフである。
【図7】AUC0-360対スマトリプタン吸入粉末の投与量(VR147/1):直線スケール(対象102,106および107を除く)を表すグラフである。
【図8】スマトリプタン塩基の回収総量を表す表である。
【実施例】
【0280】
実施例1:噴霧乾燥したスマトリプタン
噴霧乾燥を開始する前に、原材料であるスマトリプタンサクシネートの試料を、示差走査熱量測定(DSC)を用いて分析して、ガラス転移温度(Tg)を決定した。Tgは46.5℃、融点は167℃と示された。活性剤が46.5℃を超える温度に曝露されることを防ぐように乾燥温度を選択しなければならないので、このことは、噴霧乾燥プロセスパラメータに対して影響する。
液剤中のスマトリプタンサクシネート(2% w/v)を、低い出口温度を用いるミニ噴霧器で噴霧乾燥させても、粉末は回収されず、ガラス状コーティングが全ての表面上で観察された。
製剤のTgを増加させるために、トレハロースおよびロイシンを異なる比率で加えた。いくつかの製剤を調製した。以下の表は、3つの成功した製剤について得られたデータをまとめたものである。
【0281】
インビトロデータ
【表1】

【0282】
エアロソル性能試験
太字の数字が平均の値である。全ての値は、スマトリプタンサクシネートに関する。製剤をヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)カプセルに手で充填し(充填された全ての用量は、カプセル中の9 mgコハク酸スマトリプタンに等しい)、Monohaler (商標)(90 l/分)から放出した。
【0283】
【表2】

【0284】
実施例2:噴霧乾燥したフロバトリプタン
吸入フロバトリプタン製剤の評価を行った。全身性肺送達に適切な粒子を製造するためのフロバトリプタンについての噴霧乾燥プロセスを同定した。さらに、フロバトリプタン:ステアリン酸マグネシウム製剤(95:5% w/w)を、前記のメカノフュージョンプロセスを用いて調製した。
【0285】
製剤の方法
4つのフロバトリプタン製剤を作製した。バッチの詳細は、次のとおりである。
1. 噴霧乾燥100%フロバトリプタン
2. 噴霧乾燥フロバトリプタン:トレハロース(50:50% w/w)
3. 噴霧乾燥フロバトリプタン:トレハロース(75:25% w/w)
4. フロバトリプタン:MgSt (90:10% w/w)
それぞれの原材料を、次の表に示す噴霧乾燥パラメータを用いて噴霧乾燥した。
【0286】
【表3】

【0287】
以下の方法を用いて、4つのフロバトリプタン製剤を評価した。
インビトロ法
粒径分析
Sympatecの開始前の確認およびセットアップを行った。標準参照分析を3重で行って、10〜20 mgのSiC参照物質をvibriフィーダトレイ上に載せることによりR2レンズの性能を確認した。少量(10〜20 mg)のフロバトリプタン製剤を、vibriフィーダトレイの端に載せ、参照測定を行った。これが一旦完了すると、フロバトリプタン製剤の測定を行った。この手順は3重で行い、データを記録した。
【0288】
カール・フィッシャー水分分析
カール・フィッシャー装置の開始前の確認および標準化を行った。適当な試験方法を選択してロードした。試料分析のための全ての関連する詳細は、タッチコントロールパネル詳細ウインドウに保存された。
200 mgのフロバトリプタン製剤を、ガラスの秤量皿および風袋重量を測定した天秤で正確に秤量した。Metrohm 841コントロールパネルの開始ボタンを押して、滴定容器の中和を開始した。装置のドリフトが一旦安定すると、コントロールパネルは「調整OK」と表示した。開始ボタンを再び押すと、自動的に60秒のカウントダウンが開始された。秤量された試料を60秒ウインドウの間に滴定容器に入れ、試料が溶液中に分注され、容器の壁またはプローブに残っていないことを確実にした。空のガラス秤量皿を再秤量し、天秤に表示されたマイナスの量を、指示されたときにコントロールパネルに入力し、継続ボタンをその直後に押した。
滴定が一旦完了し、滴定の終点に到達すると、「測定終了」と表示された。分析結果を得て、印刷した。
この手順を3回繰り返した。3回の測定の完了時に、「統計」オプションと、次いで「統計総括」をコントロールパネルで選択し、これにより個別の値および相対的標準偏差の滴定による測定を印刷したものを得た。
【0289】
Andersenカスケードインパクター
ACI分析のための開始前の確認およびセットアップを行った。空のHPMCカプセルを、6桁分析天秤で秤量し、重量をWlとして記録した。既知の量(mg)の噴霧乾燥フロバトリプタン製剤をカプセルに加え、再秤量してW2として記録した。カプセルをMonohaler(商標)デバイスに挿入して閉じた。Monohaler(商標)デバイスをマウスピースアダプタに挿入して、真空ポンプが作動して2方向ソレノイドバルブが閉じることを確実にした。Monohaler(商標)を、2.67秒間稼働させた。
ソレノイドバルブが一旦閉じられると、Monohaler(商標)をACIから外した。カプセルを注意深く取り出し、再秤量し、W3として記録した。カプセルからなくなった粉末の量を決定した。インパクター試料を調製し、実験ノートにまとめた方法を用いて分析した。
【0290】
視覚的外観
噴霧乾燥フロバトリプタン製剤を、得られた物質の粉末流動特性および色の点で外観について視覚的に観察した。
インビトロデータ
それぞれのフロバトリプタン製剤を評価して、粒径、水分含量およびMonohaler(商標)デバイスからのエアロソル性能を決定した。
【0291】
【表4】

【0292】
【表5】

【0293】
【表6】

【0294】
【表7】

【0295】
噴霧乾燥のために用いた4つのフロバトリプタン製剤供給原料:フロバトリプタン(100% w/w)、フロバトリプタン:トレハロース(50:50% w/w)、フロバトリプタン:トレハロース(75:25% w/w)およびフロバトリプタン:ステアリン酸マグネシウム(MgSt) (95:5% w/w)は、純水に容易に溶解して安定な溶液が得られ、製剤上の問題には遭遇しなかった。
実行1のフロバトリプタン:トレハロース(75:25% w/w)粒径は、大きい凝集体により歪められ、フロバトリプタン:MgSt (95:5% w/w)水分含量の結果は、許容基準を超えたが、これはこの段階での性能の特徴に影響しない。
【0296】
噴霧乾燥フロバトリプタン製剤バッチのいずれについても、予期されない視覚的所見はなかった。全ての噴霧乾燥粉末は、100%噴霧乾燥フロバトリプタンバッチについての白色、またはフロバトリプタン:トレハロースバッチについての白〜オフホワイトのいずれかであった。
全ての製剤は、Monohaler(商標)デバイスから良好に排出された。
【0297】
フロバトリプタン製剤は、同程度の粒径、水分およびエアロソル性能の特徴を有することが見出された。全ての製剤について得られた微細粒子量データは、全身性送達のために適切であることが見出された。まとめると、フロバトリプタン製剤について得られたデータは、適切な肺用製剤が開発されたことを確実にする。
【0298】
実施例3:ジェットミル粉砕し、次いでメカノフュージョンさせたスマトリプタンサクシネート(95%)とステアリン酸マグネシウム(5%)
スマトリプタン吸入製剤の評価を行った。全身性肺送達に適切な粒子を製造するためのスマトリプタンについてのジェットミル粉砕とその後のメカノフュージョンプロセスを同定した。
【0299】
製剤の方法
コハク酸スマトリプタン(800g)およびステアリン酸マグネシウム(40g)を、Turbulaミキサーで10分間、30 rpmにて予備混合し、10分間休ませた。次いで、粒子をHosokawa Alpineスパイラルジェットミル(100AS)中で同時ジェットミル粉砕して、2.2μm未満のd50の粒子(Malvern Mastersizer乾燥セル分析による粒径分析)を製造した(好ましくは1.5μm未満のd50)。製剤を次の表に示すパラメータを用いて調製した。
【0300】
【表8】

【0301】
用いたメカノフュージョンシステムは、Hosokawa Micron「ミニキット」であった。粒子を30〜40 gのサブバッチサイズで、およそ250 rpmで稼働するシステムを用いるメカノフュージョンシステム(3 mmの回転子間隔サイズのHosokawa Micron「ミニキット」)に加えた。次いで、粒子をメカノフュージョンシステム中で5分間予備混合し(およそ1000 rpmの混合速度)、次いで、粒子を10分間メカノフュージョンさせた(およそ4000 rpmの混合速度)。得られたサブバッチを、Turbulaミキサー中で5分間、30 rpmにて混合することにより組み合わせて、最終製剤を製造した。
【0302】
製剤のブレンド
未加工ラクトース(LH200)
ラクトース(LH200)をFreislandCampina(FrieslandDomo)から得て、添加物およびAPIとブレンドすることにより加工して、およそ4000 gまでの製剤を創出した。
種々のタイプのラクトース、例えばLactochem(商標)Extra FineまたはRespitose(商標)SV003(DMV International)を用いることができ、ラクトースの範囲は、製剤全体の約5〜80%(w/w)で変動し得ることが認識される。
【0303】
加工ラクトース(メカノケミカル結合)
ラクトース(LH200)をFreislandCampina(FrieslandDomo)から得て、添加物およびAPIとブレンドすることにより加工した後に、およそ4000 gまでの試料をジェットミル粉砕して、メカノケミカル結合による加工用の最終製剤を得た。
【0304】
さらなるプロセスでは、メカノケミカル結合による加工を受ける前のジェットミル粉砕段階を省略した。種々のタイプのラクトース、例えばLactochem(商標)Extra FineまたはRespitose(商標)SV003(DMV International)を用いることができ、ラクトースの範囲は、製剤全体の約5〜80% (w/w)で変動し得ることが認識される。
【0305】
インビトロ法
嵩密度およびタップ密度
嵩密度およびタップ密度を、USP30(2007)セクション616に基づいて測定した。タップ密度は、10ml測定シリンダーを有するStampfvolumeter Stav2003を用いて測定した。10mlを測定シリンダーに入れ、次いでStampfvolumeter上に載せ、2セットのタップ間で一定の容量の測定が得られるまで、500タップのセットでタップした。次いで、容量測定を用いて以下の等式を用いる密度、カールインデックス(Carr's Index)を算出した。
嵩密度(g/ml) =(薬剤の重量)/(薬剤の容量)
タップ密度(g/ml) =(タップされた薬剤の重量)/(タップされた薬剤の容量)
カールインデックス(%) = 100×(タップ密度−かさ密度)/(タップ密度)
【0306】
Andersenカスケードインパクター
ACI分析のための開始前の確認およびセットアップを行った。空のHPMCカプセルを、5桁分析天秤で秤量し、重量を記録した。既知の量(mg)の製剤をカプセルに加え、再秤量して記録した。カプセルをMonohaler(商標)デバイスに挿入して閉じた。Monohaler(商標)デバイスをマウスピースアダプタに挿入して、真空ポンプが作動して2方向ソレノイドバルブが閉じることを確実にした。
Monohaler(商標)を、ソレノイドバルブを開放して、それによりデバイスを通して4Lの空気が90L/分で引き出されることを確実にすることにより2.67秒間稼働させた。
【0307】
ソレノイドバルブが一旦閉じられると、Monohaler(商標)をACIから外した。充填されたカプセルおよびデバイスを予備秤量し、評価の完了時に再秤量した。カプセルからなくなった粉末の量を決定した。5つのカプセルをACIに発射した後に、組み立てを外した。 インパクター試料を調製し、適切なUV法により分析した。
【0308】
インビトロデータ
【表9】

【0309】
【表10】

【0310】
【表11】

【0311】
【表12】

【0312】
【表13】

【0313】
【表14】

【0314】
【表15】

【0315】
【表16】

【0316】
【表17】

【0317】
【表18】

【0318】
【表19】

【0319】
【表20】

【0320】
【表21】

【0321】
【表22】

【0322】
【表23】

【0323】
【表24】

【0324】
【表25】

【0325】
【表26】

【0326】
【表27】

【0327】
【表28】

【0328】
【表29】

【0329】
【表30】

【0330】
実施例4
健常対象者での二重盲検無作為化プラセボ対照用量漸増、およびその後の非盲検比較パイロット試験を、実施例3に開示される製剤を用いて行った。主な目的は、MonoHaler(商標)を用いて吸入経路により投与されたスマトリプタン吸入粉末の安全性および忍容性を評価することであった。
【0331】
2番目の目的は、およそ72ng/mLの平均実測最大静脈血漿濃度(Cmax)をもたらすスマトリプタン吸入粉末の用量を規定することであった。この目標血漿濃度は、6mgの皮下スマトリプタンの既知のCmaxであり、これは偏頭痛治療の最高基準とみなされている。また、健常対象者における皮下スマトリプタンのものと比較した、スマトリプタン吸入粉末の安全性、忍容性および薬物動態を評価するためであった。
【0332】
インビボ方法(パートI)
パートIで投与した送達用量は、次の通りであった:期間1: 2mg、期間2: 5mg、期間3: 10mg、期間4: 15mgのスマトリプタン吸入粉末またはプラセボ(比率9:3)、Monohaler(商標)により送達される吸入。
以前に論じたように、吸入の後に肺静脈および冠状動脈の脈管構造における高い一過性の濃度の可能性がある。冠状動脈の脈管構造に対するトリプタンの影響を研究する以前の方法は、Hillisらにより発表されたものである(MacIntyre, PD, Bhargava B, Hogg KJ, Gemmill JDおよびHillis WS, Circulation 1993 87 401〜405)。
【0333】
これは、患者が、冠状動脈造影法および間欠的血行動態モニタリングを受けることを伴う。吸入製品についてこの手順を用いることの困難性は、患者が半臥位のままでいなければならず、これが薬剤の沈着パターンに影響することである。
【0334】
さらに、このタイプの研究は、心疾患が疑われる患者を含み(倫理的にこの手順は健常対象者に対して許可されそうにない)、ある程度の危険性がある。よって、今回の臨床試験のために、冠状動脈の脈管構造が経験する濃度に最も近い代りの測定として、動脈血サンプリングを新規な応用において用いた。
【0335】
インビボデータパートI
薬物動態の結果:
図4の表のデータは、静脈薬物動態データのまとめを示す:2から15 mgまで増加する用量の吸入スマトリプタン[中央値(範囲)として報告するTmaxを除いて平均(CV%))。この用量範囲内では、72ng/mLの目標Cmaxは達成されなかった。
【0336】
表32は、動脈および静脈のPKデータの比較を示す。動脈Cmaxは、同じ対象者における静脈レベルより70%高い。このことは、動脈レベルは、静脈レベルと比較して、作用部位である脳により関連するので、静脈データにより示されるよりも低い用量で効力があることを示し得る。動脈Tmaxは、静脈サンプリングを用いて観察されるよりも早い。このことは、吸入後の効果の発現が、静脈データから予測されるよりも早いであろうことを示唆する。
【0337】
【表31】

【0338】
図2Aは、肺吸入により投与されたスマトリプタンの対象108への10 mg用量の投与後の動脈および静脈の血漿プロファイルを示す。図2Bは、図2Aの動脈血漿プロファイルの対数プロットを示す。図3は、対象110(丸)および対象108 (四角)における10 mg用量の投与後の動脈血漿プロファイルを比較する。
【0339】
図2および3は、明確なデポー効果を示す。濃度は最初の数分間で増加し、次いで薬剤が循環により希釈されるにつれて即座に単に低下するのではなく、次の10分間は安定したままである。吸入されたスマトリプタンは気道内に残り、デポー効果を示す。このことは、静脈系で観察されるよりもおよそ1.5倍より高い動脈系での血液レベルになる。動脈データは、薬剤の投与後およそ10分間にわたって肺静脈に薬剤を浸出させるレザバーとして肺が作用することを示す。
【0340】
インビボ法(パートII)
吸入スマトリプタン(15 mg)と皮下スマトリプタン(6 mg)との2元クロスオーバー無作為化単一用量比較を行った。
パートIIは、パートIで確立したスマトリプタン吸入粉末の目標用量と、皮下スマトリプタンとの非盲検比較として計画した。パート1では目標Cmaxに到達しなかったので、最高用量(15 mg)を皮下スマトリプタン(6mg)と、無作為化2元クロスオーバー計画において比較した。
【0341】
インビボデータパートII
薬物動態の結果:
吸入スマトリプタン (15 mg)および皮下スマトリプタン(6 mg)についての薬物動態データを、表31にまとめる。
結果のグラフを図1AおよびBに示し、これらは皮下スマトリプタンおよび吸入スマトリプタンの後の平均血漿濃度プロファイル(線形およびLogスケール)を示す。吸入による投与の薬物動態曲線は、皮下投与についてのものと同様である(図1を参照)。このことは、吸入後により速い濃度ピークが予測され得るので、驚くべきことである。このことは、上記のデポー効果により説明されるだろう。
【0342】
PKプロファイル形状がよく似ていることは、吸入スマトリプタン粉末が、皮下経路と類似の高いレベルの一貫性および効力を示し得ることを示唆する。
皮下経路は、別の投与経路と比較して、最大の一貫性および効力と関連することが知られている(「The Triptans Novel Drugs for Migraine」Humphrey P., Ferrari M,およびOleson J.編 2001)。
これは、PK曲線において複数のピークを導く、他の部位からの変動性の吸収を原因とする。
【0343】
PKパラメータの大部分の対象者間変動は、皮下よりも吸入スマトリプタンについてわずかに大きかったが、大きな差はなかった。変動は、他の投与経路についてみられるよりもかなり小さい。
【0344】
例えば、鼻腔内経路についてのTmaxの変動係数は、本研究の吸入スマトリプタンの30.3%と比較して、62.8%(Duquesnoyら European Journal of Pharmaceutical Sciences 6 (1998) 99〜104)である。
経鼻経路における変動は、用量のいくらかがおそらく嚥下されることによるPK曲線における複数のピークを原因とする。経口経路と同様に、胃内容排出速度における変化が、高い変動の原因となる。
【0345】
【表32】

【0346】
ピーク濃度に到達するまでにかかった時間(Tmax)は、吸入製品についてより短かった(吸入について中央値Tmax 8、7〜17分の範囲に対して、皮下について12、8〜16の範囲:表31)。
作用の発現のタイミングは、Tmaxに関連すると考えられる。皮下注射について、作用の発現は10分である。吸入製品についての動脈Tmaxが、皮下静脈Tmaxと比較して考慮されるならば、吸入スマトリプタン粉末が皮下製品よりも早い効果の発現を示すことが可能である。
【0347】
これが示されるならば、吸入経路は、利用可能な偏頭痛治療のうちでもっとも早く作用するものになる。スマトリプタン半減期は、2つの処置について同様であった。
吸入製品について平均T1/2は119分であり、皮下処置についてこれは111分であった。このことは、効果の期間が、吸入製品について皮下注射と同様であることを示唆する。なぜなら、効果の期間は半減期と関連するからである(Geraud G, Keywood CおよびSenard JM headache 2003 43 376〜388)。
【0348】
実際に、AUCの図は、スマトリプタンの吸入用量が、皮下投与の後に観察されるものと同様の効果の期間を有することを示す。このことは、吸入による活性剤の投与は、しばしば治療効果の迅速な発現とその後の迅速な消失を特徴とするので、驚くべきことである。
【0349】
インビボ法(パートIII)
パートIにおいて目標Cmaxに到達しなかったので、この血漿濃度に到達するために20 mgの用量が必要であろうとデータから推定した。よって、20 mgのスマトリプタン吸入粉末のさらなる送達用量を、8名のボランティアに与えた。彼らは、10 mgスマトリプタンの2回の逐次的な吸入用量(20 mgの合計用量を与える)、またはプラセボ(比率6:2)を、Monohaler (商標)により送達される吸入として受けた。
【0350】
インビボデータ
薬物動態の結果:
20mgの送達用量にて、平均Cmaxは112ng/mLであり、これは目標血漿濃度を超え(図4)、パートIおよびIIのデータの推定から予測されるよりも高かった。
よって、静脈データに基づいて、15〜20 mgの間の用量が、6 mgの皮下注射のものと同様の効力を与えると示唆されるだろう。
【0351】
パートI、IIおよびIIIからの結果のグラフを図5に示す。これは、皮下スマトリプタンおよび吸入スマトリプタンの試した用量での平均血漿濃度プロファイルを示す。
パートIでの15 mgの用量からの血漿レベルは予測されるよりも低く、これはその後3名の対象者が正しく吸入していなかったことによることがわかった。このことの証明は、用いられたカプセル中に保持される薬剤の分析から見出された(図8)。
これらの対象者を除いてデータを再分析した場合、平均CmaxはパートIIにおいて同じ用量について得られたものと非常に近い。
【0352】
図6および図7は、パートIおよびIIIについての用量に対してCmaxおよびAUCをプロットする。これらは、パートIからの15 mgコホート(3名の対象者を除く)からのデータを含む最もよく一致する直線を示す。20mg用量は直線の上にあり、比例を超えるので、用量の比例性は、この用量を除いて評価した。
【0353】
【表33】

【0354】
研究から(表34)、吸入製品について、用量とCmaxとの間、および用量とAUC(0-360)との間に、2〜15 mgの用量範囲にわたってほぼ直線的な関係が確認された。
20mg投与後の高いCmaxおよび曝露は、驚くことであった。なぜなら、この用量は、2つのカプセルとして与えられ、これは例えばカプセル中での停留のような送達の際のより大きい損失をもたらすと予測されるからである。粉末用量を2つの別々のカプセルとして吸入することがより容易であり、よってこのことは用量を分けることの利点であるといえる。
【0355】
Cmaxの対象者間の変動は、20 mg (10 mgを2回)用量について、その他の吸入用量のいずれよりも小さかった(図4、20mgについての変動係数は、他の用量についての41〜63%と比較して、36%であった)。スマトリプタンが2回の吸入として投与されていることに鑑みて、このことは驚くべきことである。
【0356】
安全性の結果(パートI、IIおよびIII)
20 mgまでおよび20 mgを含む吸入スマトリプタン製剤(またはプラセボ)を用いて、研究集団において安全性または忍容性の問題がなかったと、研究から結論付けることができる。
【0357】
全ての対象者は、トリプタン類に典型的な処置中に発生した有害事象(TEAE)を経験した。TEAE発生率は、投与された最高用量のスマトリプタン吸入粉末(20 mg)の後に(6名の対象者において13の事象)、標準的な皮下スマトリプタン(12名の対象者において21の事象)と同様であった。ほとんどの有害事象は軽度であり、投薬の最初の1時間に発生し、1時間以内に解消された。
【0358】
驚くべきことに、12誘導ECGまたは12誘導ホルターテープにおいて著しい異常または傾向はなかった。1名の対象者を除いて、FEV1またはSpO2に対する一貫したまたは臨床上重要な影響はなかった。この対象者は、軽度の喘息であることがわかり、研究から除外された。
【0359】
心血管系の有害副作用がないことは、肺吸入による薬剤の投与後に肺静脈において測定された高レベルのスマトリプタンに鑑みて、驚くべきことである。吸入によりスマトリプタンを摂取した患者は、吐き気または嘔吐を示さなかった。
【0360】
実施例4: pMDI
製剤の方法
pMDIの調製:純粋な微小化スマトリプタンサクシネートを含む粉末を、pMDIの缶中で測定した。計量バルブを缶の上に押し付け、これらにHFA 134a噴射剤を充填し直した。それぞれの缶を激しく振って、分散させた。
【0361】
pMDIのインビトロ測定:Andersenカスケードインパクターを用いて、それぞれのpMDIから発生するエアロソル噴煙の特徴決定をした。インパクターを通して1分あたり28.3リットルの気流を引き出し、10回の噴射を繰り返した。それぞれのpMDIを振り、各作動の間に秤量した。インパクターのそれぞれのステージに沈着した薬剤と、デバイス、管およびゴムのマウスピース上の薬剤とを溶媒中に回収し、HPLCにより定量した。
【0362】
エタノールベースのHFA 134a pMDI製剤中へのスマトリプタンサクシネートの溶解性が低いので、溶液pMDIの技術は、高い薬剤量にてスマトリプタンについて利用不可能である。以前に、低用量(<25μg/50μl)のHFA 134a/HFA 227溶液製剤が製造されたが、高いエタノール含量(50% w/w)のみであった。スマトリプタン類似体を用いて、100〜500μg/50μlの所望の用量範囲にて高効率の溶液製剤を製剤化し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺吸入により投与するための、トリプタン含有医薬組成物。
【請求項2】
トリプタンがスマトリプタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
偏頭痛を含む中枢神経系の症状を治療または予防するための、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1 mg〜多くとも15 mg、多くとも20 mgまたは多くとも25 mgの投与量のスマトリプタン・サクシネートを含む、請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、投与時に約2〜約16 mgの微粒子投与量(FPD)を与える、請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項6】
(a)各投与の効果が次の投与前に患者により評価され、自己滴定および投与量の最適化を許容して連続して投与することができ、そして/またはスマトリプタン・サクシネート組成物の投与量が必要なだけ患者に投与される、請求項1〜5のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項7】
組成物が、24時間にわたって投与される1日投与量、約0.5〜約25 mgを与える、請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、規則的にかつ間隔をおいて、維持治療をもたらすように投与される投与量を許容する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、肺吸入による投与の約10分以内に平均Cmaxをもたらす、請求項1〜8のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項10】
組成物が、肺吸入により投与して、用量依存的にCmaxをもたらす、請求項1〜9のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項11】
組成物が、肺吸入により投与して約10分以内に治療効果をもたらす、請求項1〜10のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、少なくとも約70重量%のスマトリプタン・サクシネートを含む、請求項1〜11のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項13】
組成物が添加物質をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、不活性な賦形物質の粒子をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一つに記載の組成物を含むブリスターまたはカプセル。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の組成物を含む吸入器具。
【請求項17】
器具が、乾燥粉末吸入器、加圧式定量吸入器またはネブライザーである、請求項15に記載の吸入器具。
【請求項18】
偏頭痛、緊張型頭痛または集団頭痛のような中枢神経系の症状を肺吸入により治療するための医薬の製造における、請求項1〜13のいずれか一つに記載の組成物の使用。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の組成物を製造する方法。
【請求項20】
トリプタンが噴霧乾燥される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の粉末組成物の投与量を吸入することを含む、吸入によるヒトの偏頭痛の治療方法。
【請求項22】
組成物が少なくとも2回の連続投与量で投与される、肺吸入投与用のトリプタンを含む医薬組成物。
【請求項23】
連続投与量が5分以内、3分以内、2分以内、1分以内または30秒以内に投与される、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
連続投与量が実質的に同じ量である、請求項22または23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ちょうど2回の連続投与量が投与される、請求項22〜24のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項26】
上記の連続投与量が、同じ対象者に単独で投与されたときの1回目または1回の投与量の投与によりもたらされるトリプタンの血清中最高濃度(Cmax)の2倍以上を与えるのに十分である、請求項22〜25のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項27】
各投与量が、トリプタン5〜15 mg、8〜12 mg、9〜11 mg、9.5〜 10.5 mgまたは約10 mgである、請求項22〜26のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項28】
トリプタンがスマトリプタンである、請求項22〜27のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項29】
投与量が、計量投与量(MD)、名目投与量(ND)、あるいは送達投与量(DD)または放出投与量(ED)である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
組成物が中枢神経系の症状の治療または予防用である、請求項22〜29のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項31】
組成物が偏頭痛の治療または予防用である、請求項22〜30のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【請求項32】
トリプタンの有効量を含む医薬組成物を肺吸入により対象者に投与することを含み、該組成物が対象者に少なくとも2回の連続投与量で投与される、トリプタンでの治療を必要とする対象者の治療方法。
【請求項33】
連続投与量が、5分以内、3分以内、2分以内、1分以内または30秒以内に投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
連続投与量が実質的に同じ量である、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
ちょうど2回の連続投与量が投与される、請求項32〜34のいずれか一つに記載の方法。
【請求項36】
上記の連続投与量が、同じ対象者に単独で投与されたときの1回目または1回の投与量の投与によりもたらされるトリプタンの血清中最高濃度(Cmax)の2倍以上を与えるのに十分である、請求項32〜35のいずれか一つに記載の方法。
【請求項37】
各投与量が、トリプタンの5〜15 mg、8〜12 mg、9〜11 mg、9.5〜10.5 mgまたは約10 mgである、請求項32〜36のいずれか一つに記載の方法。
【請求項38】
トリプタンがスマトリプタンである、請求項32〜37のいずれか一つに記載の方法。
【請求項39】
投与量が、計量投与量(MD)もしくは名目投与量(ND)、または送達投与量(DD)もしくは放出投与量(ED)である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
中枢神経系の症状を治療または予防するための、請求項32〜39のいずれか一つに記載の方法。
【請求項41】
偏頭痛を治療または予防するための、請求項32〜40のいずれか一つに記載の方法。
【請求項42】
トリプタンがスマトリプタンでないとき、それがリザトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタンまたはフロバトリプタンである、請求項1〜41のいずれか一つに記載の方法、使用、製品、方法または組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−510964(P2011−510964A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544777(P2010−544777)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000265
【国際公開番号】WO2009/095684
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(510131236)ヴェクトゥラ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】