トリポード型等速自在継手
【課題】針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができるトリポード型等速自在継手を提供する。
【解決手段】複数本の針状コロ46をトリポード部材44の脚軸42の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させる一方で、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ1範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46を機械的に介在させない針状コロ規制手段としての針状コロ規制凸起54を、設けたことから、針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【解決手段】複数本の針状コロ46をトリポード部材44の脚軸42の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させる一方で、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ1範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46を機械的に介在させない針状コロ規制手段としての針状コロ規制凸起54を、設けたことから、針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸心の交差角が相対的に変化する2つの回転部材の間を等速回転で連結するトリポード型等速自在継手の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、車両の変速機或いは差動歯車装置から駆動輪への動力伝達などに際して用いられるトリポード型等速自在継手が知られている。このようなトリポード型等速自在継手は、たとえば、回転軸心に平行な複数本のトラック溝を内周面に備えた有底円筒状の外輪と、回転軸心に直交する面内において径方向に突き出す複数本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トラック溝内に転動自在に挿入され、複数本の針状コロを介して前記脚軸に回転可能に支持された複数のローラとを備え、前記外輪と前記トリポード部材との間でそれらの回転軸心の斜交角度(ジョイント角)に拘わらず等速で回転を伝達するようになっている。たとえば、特許文献1の図7および図8に従来技術として記載されたものはそれである。
【特許文献1】特開2005−133890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のトリポード型等速自在継手では、複数本の針状コロの存在に起因して、部品コストが増加するという欠点があった。これに対し、特許文献1では、針状コロを省略するために、トリポード部材の脚軸の外周面を非円形とし、その外周面とその脚軸の直接嵌合させるローラの内周面との接触位置を、脚軸の中心から外輪のトラック溝に下ろした垂線から、トラック溝の長手方向に所定距離だけ離間した位置に移動させた構成とすることが提案されている。これによれば、ローラが転がり易くなることから、針状コロを省略しても等速自在継手に要求される振動、ノイズ性能を維持することができるとされている。
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載のトリポード型等速自在継手では、トリポード部材の脚軸の外周面とその脚軸の直接嵌合させるローラの内周面とが局部的に直接接触して摺動するものであることから、針状コロを用いる場合に比較して、必ずしも十分な耐久性が得られないとともに、車両の走行品質を高める上で十分な振動、ノイズ性能が得られない場合があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、針状コロを用いる従来のトリポード型自在継手の場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができるトリポード型等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロを機械的に介在させない構成とし、脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられる角度範囲の脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面と前記ローラの内周面との間には従来どおり針状コロを介在させると、針状コロを用いる場合と同様の十分な耐久性、振動・ノイズ性能が得られることを見いだした。本発明はこの知見に基づいて為されたものである。
【0007】
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、回転軸心に平行な複数本のトラック溝を内周面に備えた有底円筒状の外輪と、回転軸心に直交する面内において径方向に突き出す複数本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トラック溝内に転動自在に挿入され、複数本の針状コロを介して前記脚軸に回転可能に支持された複数のローラとを備え、前記外輪と前記トリポード部材との間でそれらの回転軸心の斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するトリポード型等速自在継手において、前記複数本の針状コロを前記脚軸またはその脚軸に嵌め着けられた部材の外周面と前記ローラの内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させ、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロを機械的に介在させない針状コロ規制手段を、設けたことにある。
【0008】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記針状コロ規制手段は、前記外周面のうち該外周面の中心を挟んで前記トリポード部材の回転軸心に平行な方向に位置する部分を中心とする所定角度範囲で設けられていることにある。
【0009】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面から凸設された針状コロ規制凸起であることにある。
【0010】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面に沿って位置する規制板を備えた転動体リテーナ部材であることにある。
【0011】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、前記針状コロ規制手段は、前記ローラの内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の内周面から凸設された針状コロ規制凸起であることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明のトリポード型等速自在継手によれば、前記複数本の針状コロを前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面と前記ローラの内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させる一方で、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロを機械的に介在させない針状コロ規制手段を、設けたことから、針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明のトリポード型等速自在継手によれば、前記針状コロ規制手段は、前記外周面のうち該外周面の中心を挟んで前記トリポード部材の回転軸心に平行な方向に位置する部分を中心とする所定角度範囲で設けられていることから、針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【0014】
また、請求項3にかかる発明のトリポード型等速自在継手によれば、前記針状コロ規制手段は、前記脚軸またはその脚軸に嵌め着けられた部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面から凸設された針状コロ規制凸起であることから、その脚軸またはその脚軸に嵌め着けられた部材の外周面に凸設された針状コロ規制凸起によって、脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロが機械的に介在させられないので、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明のトリポード型等速自在継手によれば、前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面に沿って位置する規制板を備えた転動体リテーナ部材であることから、その転動体リテーナ部材によって、脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロが機械的に介在させられないので、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【0016】
前記針状コロ規制手段は、前記ローラの内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の内周面から凸設された針状コロ規制凸起であることから、そのローラの内周面に凸設された針状コロ規制凸起によって、脚軸またはその脚軸に嵌め着けられた部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロが機械的に介在させられないので、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【0017】
ここで、本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達機構において使用され、たとえばFF車両やFR車両や4WD車両などで使用されるドライブシャフトやプロペラシャフト等の連結部を構成するものとして好適に用いられる。本発明は、動力伝達経路において所定の斜交角度すなわち作動角度を有する駆動側と被動側との2軸間で回転トルクを伝達するトリポード型の等速自在継手であれば適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の一実施例の車両用トリポード型摺動式等速自在継手(トリポード型等速自在継手)10が適用されたドライブシャフト12の縦断面図すなわち中間ドライブシャフト14の回転軸心C1に直交する平面で切断した断面図である。このドライブシャフト12は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両に好適に用いられるものである。
【0020】
図1において、ドライブシャフト12は、中間ドライブシャフト14と、被動側連結部材16と、駆動側連結部材18とを備えている。中間ドライブシャフト14の一端と被動側連結部材16とは、よく知られた所謂バーフィールド型固定式等速自在継手20により連結されており、中間ドライブシャフト14の他端と駆動側連結部材18とは、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10により連結されている。
【0021】
被動側連結部材16は、バーフィールド型固定式等速自在継手20を構成する一端が開口している中空の半球状の外輪22と、その外輪22の開口部に対する反対側すなわち被動側の外周面から被動側連結部材16の回転軸心C2方向に突き出す被動側連結軸23とを備えている。上記外輪22は、回転軸心C2まわりに等間隔で形成された複数(本実施例では6個)の円弧状のボール溝25を球面状の内周面に有している。また、被動側連結軸23の一端は、図示しないハブ輪を介して駆動輪に連結される。なお、図1は、中間ドライブシャフト14の回転軸心C1と被動側連結部材16の回転軸心C2とが同一直線上にある場合を示している。
【0022】
上記バーフィールド型固定式等速自在継手20は、上記外輪22と、中間ドライブシャフト14の一端に相対回転不能に固定され、外輪22のボール溝25と対をなす回転軸心C1まわりの等間隔で形成された複数(本実施例では6個)の円弧状のボール溝26を外周面に有する内輪24と、それらのボール溝25およびボール溝26の間にそれぞれ設けられた複数(本実施例では6個)のボール28と、そのボール28を保持しつつ、外輪22の内周面と内輪24の外周面との間に介在させられた保持器30とを、有する固定式の等速自在継手である。なお、外輪22の開口部付近の外周面から中間ドライブシャフト14にわたって蛇腹状の被動側ブーツ32が取り付けられており、その中にグリース等の潤滑剤が封入されている。
【0023】
駆動側連結部材18は、トリポード型摺動式等速自在継手10を構成する一端が開口している有底円筒状の外輪34と、その外輪34の開口部に対する反対側すなわち駆動側の底部から駆動側連結部材18の回転軸心C3方向に突き出す駆動側連結軸36とを備えている。上記外輪22は、回転軸心C3まわりの等間隔で形成された複数本(本実施例では3本)のトラック溝38を円筒面状に内周面に回転軸心C3と平行に備えており、また、軽量化のために回転軸心C3まわりの等間隔で形成された複数(本実施例では3箇所)の凹部41を外周面に備えている。各トラック溝38には、回転軸心C3まわりの円周方向で互いに対向し、回転軸心C3に直交する面内にて円弧状断面を有する一対のローラ案内面39がそれぞれ相対向して設けられている。また、駆動側連結軸36の一端は、図示しない差動歯車装置の出力部材としてのサイドギヤを介して差動歯車装置に連結される。なお、図1は、中間ドライブシャフト14の回転軸心C1と駆動側連結部材18の回転軸心C3とが同一直線上にある場合すなわち斜交角度が0°である場合を示している。また、外輪34が本発明における外輪に対応する。
【0024】
図2は、図1のドライブシャフト12のうちトリポード型摺動式等速自在継手10を拡大して示す、図1のII矢視部拡大図であり、図3は、図1のトリポード型摺動式等速自在継手10の横断面を示す、図1のIII−III視断面図である。
【0025】
図2および図3において、トリポード型摺動式等速自在継手10は、上記外輪34と、回転軸心C1に直交する面内において円筒状のボス部43の外周面から径方向に突き出す複数本(本実施例では3本)の円柱状の脚軸42を有し、上記ボス部43に設けられた軸孔が中間ドライブシャフト14の他端にスプライン嵌合されてスナップリング40により抜け止めされることにより回転軸心C1まわりの相対回転不能に固定されたトリポード部材44と、トラック溝38内にローラ案内面39上を転動自在に挿入され、複数本の円筒状の針状コロ46を介して脚軸42に回転可能に支持された複数(本実施例では3個)のローラ48とを、備える摺動式の等速自在継手である。上記ローラ48の外周面は、縦断面にて円弧状に形成されており、ローラ案内面39に対して線接触するようになっている。また、複数本の針状コロ46は、ボス部43とワッシャ49とに挟持された状態で脚軸42に形成されたスナップ溝50に設けられた止め輪51により抜け止めされている。
【0026】
ローラ48は、トラック溝38内において、上述のように転動可能すなわち外輪34に対して回転軸心C3と平行な方向に相対移動可能であるとともに、外輪34に対してトリポード部材44の回転軸心C1と外輪34の回転軸心C3との斜交角度が所定の角度範囲内で変化させられるように揺動可能である。また、ローラ48は、針状コロ46や脚軸42に対して軸心C4に平行な方向に相対変位可能である。上記摺動式とは、ローラ48がトラック溝38内で転動することにより、トリポード部材44すなわち中間ドライブシャフト14が外輪34すなわち駆動側連結部材18に対して回転軸心C3と平行な方向に相対変位可能であるということである。すなわち、トリポード型摺動式等速自在継手10では、外輪34のローラ案内面39に沿って転動するローラ48がその外輪34の底部と接触する駆動側限界位置から開口部端手前の被動側限界位置まで被動側軸すなわち中間ドライブシャフト14が軸方向変位可能であり、また、外輪34の開口部と接触するまで中間ドライブシャフト14が角度変位可能である。
【0027】
図4は、図1のトリポード型摺動式等速自在継手10の脚軸42の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、図2のIV−IV視断面図である。図4に示すように、前記複数本の針状コロ46は、脚軸42の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。また、上記円環状の間隙のうち上記複数本の針状コロ46が介在させられている一部以外であって、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の外周面とローラ48の内周面との間には、針状コロ46を機械的に介在させないようにする針状コロ規制手段が設けられている。
【0028】
本実施例において、その針状コロ規制手段は、脚軸42の外周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面からその外周側へ凸設された針状コロ規制凸起54である。すなわち、針状コロ規制手段として、脚軸42の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸42の軸心C4を挟んでその軸心C4を通るトリポード部材44の回転軸心C1に平行な線Lを中心とする所定角度θ1範囲で外周面部分(部分)aおよび外周面部分(部分)bを備えた針状コロ規制凸起54が設けられている。
【0029】
なお、外輪34の開口部付近の外周面から中間ドライブシャフト14にわたって蛇腹状の駆動側ブーツ56(図1参照)が取り付けられており、その中にグリース等の潤滑剤が封入されている。
【0030】
以上のように構成されるドライブシャフト12は、車両の駆動に際して、図示しないエンジンで発生させられて変速機や差動歯車装置等を介してドライブシャフト12に入力された動力を図示しない駆動輪に伝達する。その動力伝達経路の途中に位置するトリポード型摺動式等速自在継手10は、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ48がトラック溝38内を転動しつつ外輪34に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ48および針状コロ46を順に介してトリポード部材44(脚軸42)に伝達するようになっている。
【0031】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ48および脚軸42の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起54が形成されている角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ1が設定されている。すなわち、所定角度θ1は、脚軸42の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材44と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ48の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0032】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10は、外輪34とトリポード部材44との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。また、同じく動力伝達経路の途中に位置するバーフィールド型固定式等速自在継手20は、中間ドライブシャフト14と被動側連結部材16との間で、それらの回転軸心すなわち回転軸心C1と回転軸心C2との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0033】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10によれば、複数本の針状コロ46をトリポード部材44の脚軸42の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させる一方で、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46を機械的に介在させない針状コロ規制手段(針状コロ規制凸起54)を設けたことから、針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【0034】
また、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10によれば、針状コロ規制凸起54は、前記外周面のうちその外周面の中心すなわち軸心C4を挟んでトリポード部材44の回転軸心C1に平行な方向に位置する部分aおよび部分bを中心とする所定角度θ1範囲で設けられていることから、針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【0035】
また、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10によれば、針状コロ規制手段として、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面から凸設された針状コロ規制凸起54を有することから、その脚軸42の外周面に凸設された針状コロ規制凸起54によって、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例2】
【0036】
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、前述の実施例と同一の構成を有する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図5は、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58における脚軸60の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する断面図である。
【0038】
図5において、本実施例の脚軸60は、第1実施例の脚軸42に対して針状コロ規制凸起54が設けられていないだけであり、その他の構成は脚軸42と同一である。複数本の針状コロ46は、第1実施例と同様に、脚軸60の外周面とローラ62の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。
【0039】
本実施例における針状コロ規制手段としては、ローラ62の内周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の内周面から凸設された針状コロ規制凸起64が備えられている。また、その針状コロ規制凸起64は、脚軸60の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸60の軸心C4を挟んでトリポード部材44の回転軸心C1に平行な方向に位置する外周面部分aおよび外周面部分bを中心とする所定角度θ2範囲で設けられている。
【0040】
本実施例のローラ62は、第1実施例のローラ48に対して針状コロ規制凸起64が設けられているだけであり、その他の構成はローラ48と同一である。
【0041】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ62がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図1参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ62および針状コロ46を順に介してトリポード部材44(脚軸42)に伝達するようになっている。
【0042】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ62および脚軸60の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起64が形成されている角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ2が設定されている。すなわち、所定角度θ2は、脚軸60の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材44と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ48の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0043】
すなわち、トリポード部材44が回転軸心C1方向に変位する場合には、ローラ62がローラ案内面39上を転動することにより針状コロ規制凸起64がトリポード部材44の脚軸60に対して軸心C4まわりに相対回転するようになっているが、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58では、トリポード部材44がその軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した場合(駆動側限界位置)あるいは最も被動側に移動した場合(被動側限界位置)のいずれであっても、上記軸心C4まわりに相対回転した針状コロ規制凸起64が位置する所定角度θ2範囲のローラ62の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ2が設定されている。
【0044】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58は、外輪34とトリポード部材44との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0045】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58によれば、針状コロ規制手段として、ローラ62の内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の内周面から凸設された針状コロ規制凸起64を有することから、そのローラ62の内周面に凸設された針状コロ規制凸起64によって、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ2範囲の外周面とローラ62の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例3】
【0046】
図6は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66における脚軸60の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する断面図である。
【0047】
図6において、本実施例における複数本の針状コロ46は、第1実施例と同様に、脚軸60の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。
【0048】
本実施例における針状コロ規制手段は、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3[rad]範囲の外周面に沿って位置する2個の規制板68を備えた転動体リテーナ部材70である。転動体リテーナ部材70は、ボス部43(図2参照)とワッシャ49とに挟持された状態でスナップ溝50に設けられた止め輪51により抜け止めされている。
【0049】
図7は、転動体リテーナ部材70を示す模式的斜視図であって、図8は、転動体リテーナ部材70が本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66のトリポード部材72に嵌め入れられた状態を示す模式的斜視図である。図7および図8において、転動体リテーナ部材70は、上記2個の規制板68の両端同士をそれぞれ連結する2個の輪状の連結部74と、その一方の連結部74すなわち脚軸60の付根側に位置する連結部74の規制板68に対する反対側から軸心C4に平行な方向に突き出して設けられた回転規制突起76とを、備えている。
【0050】
トリポード部材72には、図8に示すように、脚軸60の付根部分のうち回転軸心C1に平行な方向にて対向する2箇所に、転動体リテーナ部材70の回転規制突起76と干渉するまで転動体リテーナ部材70の軸心C4まわりの回転を許容する切欠部78が設けられている。本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66では、トリポード部材72の軸方向変位に伴ってローラ48がローラ案内面39上を転動するとともに転動体リテーナ部材70が脚軸60に対して軸心C4まわりに相対回転する場合に、そのトリポード部材72の軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した位置(駆動側限界位置)および最も被動側に移動した位置(被動側限界位置)あるいはその付近にて上記切欠部78と回転規制突起76とが干渉するように設定されている。
【0051】
転動体リテーナ70の規制板68は、上記トリポード部材72の軸方向変位範囲のうち中央位置において脚軸60の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸60の軸心C4を挟んでトリポード部材72の回転軸心C1に平行な方向に位置する外周面部分aおよび外周面部分bを中心とする所定角度θ3範囲で設けられている。
【0052】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ48がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図3参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ48および針状コロ46を順に介してトリポード部材72(脚軸60)に伝達するようになっている。
【0053】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ48および脚軸60の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である転動体リテーナ部材70が位置する角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。すなわち、所定角度θ3は、脚軸60の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材72と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ62の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0054】
すなわち、トリポード部材72が回転軸心C1方向に変位する場合には、ローラ48がローラ案内面39上を転動することにより転動体リテーナ部材70がトリポード部材72の脚軸60に対して軸心C4まわりに相対回転するようになっているが、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66では、トリポード部材72がその軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した場合(駆動側限界位置)あるいは最も被動側に移動した場合(被動側限界位置)のいずれであっても、上記軸心C4まわりに相対回転した転動体リテーナ部材70が位置する所定角度θ3範囲のローラ48の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。
【0055】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66は、外輪34とトリポード部材72との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0056】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66によれば、針状コロ規制手段として、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面に沿って位置する規制板68を備えた転動体リテーナ部材70を備えていることから、その転動体リテーナ部材70によって、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例4】
【0057】
図9は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手80の横断面図の一部を示す、第1実施例における図2に相当する断面図であり、図10は、図9のトリポード型摺動式等速自在継手80の脚軸82の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する図9のX−X視断面図である。
【0058】
図9および図10において、インナーローラ86は、円筒状の部材であって、外周面に回転軸心C1に平行な方向に凸設された後述の針状コロ規制凸起92を有する。
【0059】
脚軸82は、第2実施例の脚軸60に対して、止め輪51を固定するためのリング溝50が設けられておらず、また、外周面に上記インナーローラ86が嵌合されている点が異なり、その他の構成は脚軸60と同一である。
【0060】
ローラ88は、前述の実施例のローラ48に対して、針状コロ46を介してインナーローラ86に回転可能に支持されている点、およびインナーローラ86を介して脚軸82に対して軸心C4に平行な方向に相対移動可能である点が異なり、その他の構成はローラ48と同一である。
【0061】
複数本の針状コロ46は、ローラ88の内周面に設けられた一対のスナップリング90により抜け止めされており、また、図10に示すように、脚軸82に嵌合された部材であるインナーローラ86の円筒面状の外周面とローラ88の円筒面状の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられており、その他の構成は第1実施例の針状コロ46と同一である。
【0062】
本実施例における針状コロ規制手段としては、インナーローラ86の外周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面から凸設された針状コロ規制凸起92が備えられている。
【0063】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手80は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ88がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図1参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ88および針状コロ46およびインナーローラ86を順に介してトリポード部材44(脚軸82)に伝達するようになっている。
【0064】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ88およびインナーローラ86および脚軸82の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起92が形成されている角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ1が設定されている。すなわち、所定角度θ1は、脚軸82の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材44と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ88の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0065】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手80は、外輪34とトリポード部材44との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0066】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手80によれば、針状コロ規制手段として、脚軸82に嵌合された部材であるインナーローラ86の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面から凸設された針状コロ規制凸起92を有していることから、そのインナーローラ86の外周面に凸設された針状コロ規制凸起92によって、インナーローラ86の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面とローラ88の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例5】
【0067】
図11は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94の脚軸82の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第4実施例の図10に相当する断面図である。
【0068】
図11において、本実施例のインナーローラ96は、第4実施例のインナーローラ86に対して針状コロ規制凸起92が設けられていないだけであり、その他の構成は同一である。
【0069】
複数本の針状コロ46は、第4実施例と同様に、インナーローラ96の外周面とローラ98の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。
【0070】
本実施例における針状コロ規制手段としては、ローラ98の内周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の内周面から凸設された針状コロ規制凸起100が備えられている。
【0071】
本実施例のローラ98は、第4実施例のローラ88に対して上記針状コロ規制凸起100が設けられているだけであり、その他の構成はローラ88と同一である。
【0072】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ98がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図1参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ98および針状コロ46およびインナーローラ96を順に介してトリポード部材44(脚軸82)に伝達するようになっている。
【0073】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ98およびインナーローラ96および脚軸82の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起92が形成されている角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ2が設定されている。すなわち、所定角度θ2は、脚軸82の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材44と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ88の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0074】
すなわち、トリポード部材44が回転軸心C1方向に変位する場合には、ローラ98がローラ案内面39上を転動することにより針状コロ規制凸起64がトリポード部材44の脚軸82に対して軸心C4まわりに相対回転するようになっているが、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94では、トリポード部材44がその軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した場合(駆動側限界位置)あるいは最も被動側に移動した場合(被動側限界位置)のいずれであっても、上記軸心C4まわりに相対回転した針状コロ規制凸起100が位置する所定角度θ2範囲のローラ98の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ2が設定されている。
【0075】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94は、外輪34とトリポード部材44との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0076】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94によれば、針状コロ規制手段として、ローラ98の内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の内周面から凸設された針状コロ規制凸起100を備えていることから、そのローラ98の内周面に凸設された針状コロ規制凸起100によって、脚軸82の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の外周面とローラ98の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例6】
【0077】
図12は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102の脚軸82の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第4実施例における図10に相当する断面図である。
【0078】
図12において、本実施例における複数本の針状コロ46は、第4実施例と同様に、脚軸82に嵌合された部材であるインナーローラ96の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。
【0079】
本実施例における針状コロ規制手段として、インナーローラ96の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3[rad]範囲の外周面に沿って位置する2個の規制板(スペーサ)104が備えられている。
【0080】
上記規制板104には、その一端すなわち脚軸82の付根側から軸心C4に平行な方向に突き出して設けられた回転規制突起76が備えられており、規制板104は、本実施例のトリポード部材72の切欠部78に干渉するまで軸心C4まわりの回転が許容されている。
【0081】
針状コロ規制手段すなわち規制板104は、トリポード部材44(脚軸82)の軸方向変位範囲のうち中央位置において、脚軸82の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸82の軸心C4を挟んでトリポード部材44の回転軸心C1に平行な方向に位置する外周面部分aおよび外周面部分bを中心とする所定角度θ3範囲で設けられている。
【0082】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ88がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図3参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ88および針状コロ46およびインナーローラ96を順に介してトリポード部材72(脚軸82)に伝達するようになっている。
【0083】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ48および脚軸60の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である規制板104が位置する角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。すなわち、所定角度θ3は、脚軸60の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材72と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ62の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0084】
すなわち、トリポード部材72が回転軸心C1方向に変位する場合には、ローラ88がローラ案内面39上を転動することにより規制板104がトリポード部材72の脚軸82に対して軸心C4まわりに相対回転するようになっているが、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102では、トリポード部材72がその軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した場合(駆動側限界位置)あるいは最も被動側に移動した場合(被動側限界位置)のいずれであっても、上記軸心C4まわりに相対回転した規制板104が位置する所定角度θ3範囲のローラ88の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。
【0085】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102は、外輪34とトリポード部材72との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0086】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102によれば、針状コロ規制手段として、インナーローラ96の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面に沿って位置する規制板104を備えていることから、その規制板104によって、インナーローラ96の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面とローラ88の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例7】
【0087】
図13は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106の横断面の一部を示す、第1実施例における図3の一部に相当する断面図である。また、図14は、図13のトリポード部材72の脚軸60およびローラ48を脚軸60の軸心C4に直交する平面で切断して示す図13のXIV−XIV視断面図である。図15は、図13の脚軸60のスナップ溝50を軸心C4に直交する平面で切断して示す図13のXV−XV視断面図である。図16は、本実施例の針状コロ規制手段を示す模式的斜視図である。
【0088】
図13乃至図16において、本実施例における針状コロ規制手段として、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3[rad]範囲の外周面に沿って位置する2個の規制板68を備えた転動体リテーナ部材108が備えられている。
【0089】
転動体リテーナ部材108は、第3実施例の転動体リテーナ部材70に対して、回転軸心C1を中心とする径方向の外方に位置する連結部74の規制板68に対する反対側に設けられ、縦断面における軸心C4からの最小距離が脚軸60の外周面の軸心C4からの距離よりも小さい逆三角形状の縦断面形状を有し、規制板68の回転軸心C1を中心とする径方向の外方の一端面に形成された凹部111を介して軸心C4を中心とする周方向に設けられた一対のスナップ部112を備えるものである。そのスナップ部112は、たとえば、プレス加工された金属製の転動体リテーナ部材70が軸心C4に平行な方向に塑性加工されることにより成形される。なお、これに限らず、たとえば樹脂製の転動体リテーナ部材108の一部として一体的に成形されたものであってもよい。転動体リテーナ部材108は、上記一対のスナップ部112がスナップ溝50に嵌め込まれることによって脚軸60に対する軸心C4方向の変位が阻止されている。また、本実施例の一方の規制板68には、軸心C4と平行な方向にその一方の規制板68を2分割するスリット114が設けられている。このスリット114によって一方の規制板68が2分割されることにより、上記スナップ部112が軸心C4を中心とする径方向に拡大することが許容されるようになっている。
【0090】
スナップ溝50には、図15に示すように、一対のスナップ部112のいずれかと干渉するまで転動体リテーナ部材108が軸心C4まわりに回転することを許容する、軸心C4まわりの径方向に突き出すスナップ回転規制突起116が設けられている。本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106では、トリポード部材72が回転軸心C3に平行な方向へ相対変位することに伴ってローラ48および転動体リテーナ部材108が軸心C4まわりに回転する場合に、そのトリポード部材72の相対変位範囲のうち最も駆動側に移動した位置(駆動側限界位置)および最も被動側に移動した位置(被動側限界位置)あるいはその付近において上記スナップ回転規制突起116と一対のスナップ部112のいずれかとが干渉するように設定されている。
【0091】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106は、車両の駆動に際して、回転軸心C3および回転軸心C1の斜交角度に応じてローラ48がトラック溝38内を適宜転動しつつ外輪34(図3参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34の内周面に設けられたトラック溝38からローラ48および針状コロ46を順に介してトリポード部材72(脚軸60)に伝達するようになっている。
【0092】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ48および脚軸60の外周面のうち軸心C4を通り且つ回転軸心C1に直交する面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、針状コロ規制手段である転動体リテーナ部材108が位置する角度範囲のローラ48外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないようになっている。このことは、回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度、およびトリポード部材72(脚軸60)の回転軸心C3に平行な方向の移動位置に拘わらずいえることである。
【0093】
すなわち、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106においては、トリポード部材72が回転軸心C3に平行な方向へ移動する場合に、ローラ48および転動体リテーナ部材108(規制板68)が軸心C4まわりに回転するようになっているが、そのトリポード部材72の移動範囲のうち最も駆動側に移動した場合あるいは最も被動側に移動した場合のいずれの場合であっても上記軸心C4まわりに回転した転動体リテーナ部材108の規制板68が位置する所定角度θ3範囲のローラ48の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。
【0094】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106は、外輪34とトリポード部材72との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達する。
【0095】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106によれば、針状コロ規制手段として、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面に沿って位置する規制板68を備えた転動体リテーナ部材108が備えられていることから、その転動体リテーナ部材108によって、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【0096】
また、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106によれば、針状コロ規制手段である転動体リテーナ部材108には、脚軸60のスナップ溝110に嵌め込まれたスナップ部112が設けられており、針状コロ46は、そのスナップ部112により抜け止めされているので、スナップリングや止め輪等の部品が必要なく部品コストを低下させることができる。
【0097】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0098】
たとえば、前述の実施例において、トリポード型摺動式等速自在継手10、58、66、80、94、102、106は、トリポード部材44、72が外輪34に対してその外輪34のトラック溝38に沿って回転軸心C3に平行な方向へ相対変位可能である摺動式のものであったが、本発明の適用はこれに限らず、上記相対変位不能である固定式のトリポード型等速自在継手にも適用することが可能である。
【0099】
また、前述の実施例において、針状コロ規制手段としての針状コロ規制凸起54、64、92、100、または転動体リテーナ部材70、108、118は、脚軸42、60、82の外周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1、θ2、θ3範囲の全範囲に渡って設けられたものであり、脚軸42、60、82の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸42の軸心C4を挟んでトリポード部材44、72の回転軸心C1に平行な方向に位置する外周面部分aおよび外周面部分bを中心とする所定角度θ1、θ2、θ3範囲で設けられていたが、これに限られない。たとえば、針状コロ規制手段は、上記トルク伝達荷重が加えられない角度範囲の全範囲にわたって設けられてもよいし、上記所定角度θ1、θ2、θ3範囲のうちの2箇所に設けられてもよいし、上記外周面部分aおよび外周面部分bが中心に位置せずに設けられてもよい。要するに、脚軸あるいは脚軸に勘合された部材であるインナーローラの外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面とローラの内周面との間に、前記針状コロ46を介在させないように設けられたものであればよい。なお、上記所定角度θ1、θ2、θ3が大きいほど部品コストを低下させることができる。
【0100】
また、前述の実施例において、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起54、64、92、100は、脚軸42やインナーローラ86の外周面、あるいはローラ62、98の内周面から凸設されて、それらの脚軸42やインナーローラ86、あるいはローラ62、98と一体的に成形されたものであったが、たとえば、脚軸42やインナーローラ86の外周面、あるいはローラ62、98の内周面に形成されたキー溝や穴に対して嵌め込まれたキーやブロック等であってもよい。
【0101】
また、前述の実施例において、トリポード型摺動式等速自在継手106における転動体リテーナ部材108は、その一例が開示されたものであり、その他の機械的構成でも実現されることができる。たとえば、スナップ部112は、少なくとも1つ設けられていればよい。また、凹部111またはスリット114は、いずれか1つあるいは両方が設けられなくても差し支えない。また、スリット114が2つ設けられる、すなわち転動体リテーナ部材が2つの部材からなるものであっても差し支えない。また、回転規制突起76は、脚軸60にスナップ回転規制突起116が設けられていれば必ずしも設けられなくてもよい。また、脚軸60のスナップ回転規制突起116は、転動体リテーナ部材108に回転規制突起76が設けられていれば必ずしも設けられなくてもよい。
【0102】
たとえば、構成の一部を切り欠いて示す図17の転動体リテーナ部材118は、第1転動体リテーナ部材120および第2転動体リテーナ部材122により構成されている。第1転動体リテーナ部材120および第2転動体リテーナ部材122は、規制板68の両端をそれぞれ連結する円弧状の連結部124、126をそれぞれ備えている。上記連結部126は、軸心C4まわりの半円筒形状の第1連結部130と、その第1連結部130の内周面から軸心C4に向かって突き出す爪部128とを有する。このように構成される転動体リテーナ部材118であっても第7実施例と同様の効果が得られる。
【0103】
また、前述の実施例において、トリポード型等速自在継手10、58、66、80、94、102、106は、FF車両用のドライブシャフト12を構成するものとして用いられていたが、これに限らず、たとえばFR(フロントエンジン・リアドライブ)車両や4輪駆動車両など他の駆動形式の車両に対しても適用することができる
【0104】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施例のトリポード型摺動式等速自在継手(トリポード型等速自在継手)が適用されたドライブシャフトの縦断面図すなわち中間ドライブシャフトの回転軸心に直交する平面で切断した断面図である。
【図2】図1のドライブシャフトのうちトリポード型摺動式等速自在継手を示す、図1のII矢視部を拡大して示す拡大図である。
【図3】図1のトリポード型摺動式等速自在継手の横断面を示す、図1のIII−III視断面図である。
【図4】図1のトリポード型摺動式等速自在継手の脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、図2のIV−IV視断面図である。
【図5】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する断面図である。
【図6】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する断面図である。
【図7】図6の転動体リテーナ部材を示す模式的斜視図である。
【図8】図6の転動体リテーナ部材がトリポード型摺動式等速自在継手のトリポード部材に嵌め入れられた状態を示す模式的斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手の横断面図の一部を示す、第1実施例における図2に相当する断面図である。
【図10】図9のトリポード型摺動式等速自在継手の脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する図9のX−X視断面図である。
【図11】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第4実施例の図10に相当する断面図である。
【図12】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第4実施例の図10に相当する断面図である。
【図13】本発明の他の実施例におけるトリポード型摺動式等速自在継手の断面の一部を示す、第1実施例における図3に相当する断面図である。
【図14】図13のトリポード部材の脚軸およびローラをその脚軸の軸心に直交する平面で切断して示す、図13のXIV−XIV視断面図である。
【図15】図13のトリポード部材の脚軸のスナップ溝を軸心に直交する平面で切断して示す、図13のXV−XV視断面図である。
【図16】図13のトリポード型摺動式等速自在継手の針状コロ規制手段を示す模式的斜視図である。
【図17】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における針状コロ規制手段を一部切り欠いて示す模式的斜視図である。
【符号の説明】
【0106】
10、58、66、80、94、102、106:トリポード型摺動式等速自在継手(トリポード型等速自在継手)
34:外輪
38:トラック溝
42、60、82:脚軸
44、72:トリポード部材
46:針状コロ
48、62、88、98:ローラ
54、64、92、100:針状コロ規制凸起(針状コロ規制手段)
68:規制板
70、108、118:転動体リテーナ部材(針状コロ規制手段)
86、96:インナーローラ
104:規制板(スペーサ)
C1、C2、C3:回転軸心
C4:軸心(外周面の中心)
a、b:外周面部分(部分)
θ1、θ2、θ3:所定角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸心の交差角が相対的に変化する2つの回転部材の間を等速回転で連結するトリポード型等速自在継手の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、車両の変速機或いは差動歯車装置から駆動輪への動力伝達などに際して用いられるトリポード型等速自在継手が知られている。このようなトリポード型等速自在継手は、たとえば、回転軸心に平行な複数本のトラック溝を内周面に備えた有底円筒状の外輪と、回転軸心に直交する面内において径方向に突き出す複数本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トラック溝内に転動自在に挿入され、複数本の針状コロを介して前記脚軸に回転可能に支持された複数のローラとを備え、前記外輪と前記トリポード部材との間でそれらの回転軸心の斜交角度(ジョイント角)に拘わらず等速で回転を伝達するようになっている。たとえば、特許文献1の図7および図8に従来技術として記載されたものはそれである。
【特許文献1】特開2005−133890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のトリポード型等速自在継手では、複数本の針状コロの存在に起因して、部品コストが増加するという欠点があった。これに対し、特許文献1では、針状コロを省略するために、トリポード部材の脚軸の外周面を非円形とし、その外周面とその脚軸の直接嵌合させるローラの内周面との接触位置を、脚軸の中心から外輪のトラック溝に下ろした垂線から、トラック溝の長手方向に所定距離だけ離間した位置に移動させた構成とすることが提案されている。これによれば、ローラが転がり易くなることから、針状コロを省略しても等速自在継手に要求される振動、ノイズ性能を維持することができるとされている。
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載のトリポード型等速自在継手では、トリポード部材の脚軸の外周面とその脚軸の直接嵌合させるローラの内周面とが局部的に直接接触して摺動するものであることから、針状コロを用いる場合に比較して、必ずしも十分な耐久性が得られないとともに、車両の走行品質を高める上で十分な振動、ノイズ性能が得られない場合があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、針状コロを用いる従来のトリポード型自在継手の場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができるトリポード型等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロを機械的に介在させない構成とし、脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられる角度範囲の脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面と前記ローラの内周面との間には従来どおり針状コロを介在させると、針状コロを用いる場合と同様の十分な耐久性、振動・ノイズ性能が得られることを見いだした。本発明はこの知見に基づいて為されたものである。
【0007】
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、回転軸心に平行な複数本のトラック溝を内周面に備えた有底円筒状の外輪と、回転軸心に直交する面内において径方向に突き出す複数本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トラック溝内に転動自在に挿入され、複数本の針状コロを介して前記脚軸に回転可能に支持された複数のローラとを備え、前記外輪と前記トリポード部材との間でそれらの回転軸心の斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するトリポード型等速自在継手において、前記複数本の針状コロを前記脚軸またはその脚軸に嵌め着けられた部材の外周面と前記ローラの内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させ、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロを機械的に介在させない針状コロ規制手段を、設けたことにある。
【0008】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記針状コロ規制手段は、前記外周面のうち該外周面の中心を挟んで前記トリポード部材の回転軸心に平行な方向に位置する部分を中心とする所定角度範囲で設けられていることにある。
【0009】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面から凸設された針状コロ規制凸起であることにある。
【0010】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面に沿って位置する規制板を備えた転動体リテーナ部材であることにある。
【0011】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、前記針状コロ規制手段は、前記ローラの内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の内周面から凸設された針状コロ規制凸起であることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明のトリポード型等速自在継手によれば、前記複数本の針状コロを前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面と前記ローラの内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させる一方で、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロを機械的に介在させない針状コロ規制手段を、設けたことから、針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明のトリポード型等速自在継手によれば、前記針状コロ規制手段は、前記外周面のうち該外周面の中心を挟んで前記トリポード部材の回転軸心に平行な方向に位置する部分を中心とする所定角度範囲で設けられていることから、針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【0014】
また、請求項3にかかる発明のトリポード型等速自在継手によれば、前記針状コロ規制手段は、前記脚軸またはその脚軸に嵌め着けられた部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面から凸設された針状コロ規制凸起であることから、その脚軸またはその脚軸に嵌め着けられた部材の外周面に凸設された針状コロ規制凸起によって、脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロが機械的に介在させられないので、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明のトリポード型等速自在継手によれば、前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面に沿って位置する規制板を備えた転動体リテーナ部材であることから、その転動体リテーナ部材によって、脚軸またはその脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロが機械的に介在させられないので、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【0016】
前記針状コロ規制手段は、前記ローラの内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の内周面から凸設された針状コロ規制凸起であることから、そのローラの内周面に凸設された針状コロ規制凸起によって、脚軸またはその脚軸に嵌め着けられた部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロが機械的に介在させられないので、針状コロを可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロを用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【0017】
ここで、本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達機構において使用され、たとえばFF車両やFR車両や4WD車両などで使用されるドライブシャフトやプロペラシャフト等の連結部を構成するものとして好適に用いられる。本発明は、動力伝達経路において所定の斜交角度すなわち作動角度を有する駆動側と被動側との2軸間で回転トルクを伝達するトリポード型の等速自在継手であれば適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の一実施例の車両用トリポード型摺動式等速自在継手(トリポード型等速自在継手)10が適用されたドライブシャフト12の縦断面図すなわち中間ドライブシャフト14の回転軸心C1に直交する平面で切断した断面図である。このドライブシャフト12は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両に好適に用いられるものである。
【0020】
図1において、ドライブシャフト12は、中間ドライブシャフト14と、被動側連結部材16と、駆動側連結部材18とを備えている。中間ドライブシャフト14の一端と被動側連結部材16とは、よく知られた所謂バーフィールド型固定式等速自在継手20により連結されており、中間ドライブシャフト14の他端と駆動側連結部材18とは、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10により連結されている。
【0021】
被動側連結部材16は、バーフィールド型固定式等速自在継手20を構成する一端が開口している中空の半球状の外輪22と、その外輪22の開口部に対する反対側すなわち被動側の外周面から被動側連結部材16の回転軸心C2方向に突き出す被動側連結軸23とを備えている。上記外輪22は、回転軸心C2まわりに等間隔で形成された複数(本実施例では6個)の円弧状のボール溝25を球面状の内周面に有している。また、被動側連結軸23の一端は、図示しないハブ輪を介して駆動輪に連結される。なお、図1は、中間ドライブシャフト14の回転軸心C1と被動側連結部材16の回転軸心C2とが同一直線上にある場合を示している。
【0022】
上記バーフィールド型固定式等速自在継手20は、上記外輪22と、中間ドライブシャフト14の一端に相対回転不能に固定され、外輪22のボール溝25と対をなす回転軸心C1まわりの等間隔で形成された複数(本実施例では6個)の円弧状のボール溝26を外周面に有する内輪24と、それらのボール溝25およびボール溝26の間にそれぞれ設けられた複数(本実施例では6個)のボール28と、そのボール28を保持しつつ、外輪22の内周面と内輪24の外周面との間に介在させられた保持器30とを、有する固定式の等速自在継手である。なお、外輪22の開口部付近の外周面から中間ドライブシャフト14にわたって蛇腹状の被動側ブーツ32が取り付けられており、その中にグリース等の潤滑剤が封入されている。
【0023】
駆動側連結部材18は、トリポード型摺動式等速自在継手10を構成する一端が開口している有底円筒状の外輪34と、その外輪34の開口部に対する反対側すなわち駆動側の底部から駆動側連結部材18の回転軸心C3方向に突き出す駆動側連結軸36とを備えている。上記外輪22は、回転軸心C3まわりの等間隔で形成された複数本(本実施例では3本)のトラック溝38を円筒面状に内周面に回転軸心C3と平行に備えており、また、軽量化のために回転軸心C3まわりの等間隔で形成された複数(本実施例では3箇所)の凹部41を外周面に備えている。各トラック溝38には、回転軸心C3まわりの円周方向で互いに対向し、回転軸心C3に直交する面内にて円弧状断面を有する一対のローラ案内面39がそれぞれ相対向して設けられている。また、駆動側連結軸36の一端は、図示しない差動歯車装置の出力部材としてのサイドギヤを介して差動歯車装置に連結される。なお、図1は、中間ドライブシャフト14の回転軸心C1と駆動側連結部材18の回転軸心C3とが同一直線上にある場合すなわち斜交角度が0°である場合を示している。また、外輪34が本発明における外輪に対応する。
【0024】
図2は、図1のドライブシャフト12のうちトリポード型摺動式等速自在継手10を拡大して示す、図1のII矢視部拡大図であり、図3は、図1のトリポード型摺動式等速自在継手10の横断面を示す、図1のIII−III視断面図である。
【0025】
図2および図3において、トリポード型摺動式等速自在継手10は、上記外輪34と、回転軸心C1に直交する面内において円筒状のボス部43の外周面から径方向に突き出す複数本(本実施例では3本)の円柱状の脚軸42を有し、上記ボス部43に設けられた軸孔が中間ドライブシャフト14の他端にスプライン嵌合されてスナップリング40により抜け止めされることにより回転軸心C1まわりの相対回転不能に固定されたトリポード部材44と、トラック溝38内にローラ案内面39上を転動自在に挿入され、複数本の円筒状の針状コロ46を介して脚軸42に回転可能に支持された複数(本実施例では3個)のローラ48とを、備える摺動式の等速自在継手である。上記ローラ48の外周面は、縦断面にて円弧状に形成されており、ローラ案内面39に対して線接触するようになっている。また、複数本の針状コロ46は、ボス部43とワッシャ49とに挟持された状態で脚軸42に形成されたスナップ溝50に設けられた止め輪51により抜け止めされている。
【0026】
ローラ48は、トラック溝38内において、上述のように転動可能すなわち外輪34に対して回転軸心C3と平行な方向に相対移動可能であるとともに、外輪34に対してトリポード部材44の回転軸心C1と外輪34の回転軸心C3との斜交角度が所定の角度範囲内で変化させられるように揺動可能である。また、ローラ48は、針状コロ46や脚軸42に対して軸心C4に平行な方向に相対変位可能である。上記摺動式とは、ローラ48がトラック溝38内で転動することにより、トリポード部材44すなわち中間ドライブシャフト14が外輪34すなわち駆動側連結部材18に対して回転軸心C3と平行な方向に相対変位可能であるということである。すなわち、トリポード型摺動式等速自在継手10では、外輪34のローラ案内面39に沿って転動するローラ48がその外輪34の底部と接触する駆動側限界位置から開口部端手前の被動側限界位置まで被動側軸すなわち中間ドライブシャフト14が軸方向変位可能であり、また、外輪34の開口部と接触するまで中間ドライブシャフト14が角度変位可能である。
【0027】
図4は、図1のトリポード型摺動式等速自在継手10の脚軸42の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、図2のIV−IV視断面図である。図4に示すように、前記複数本の針状コロ46は、脚軸42の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。また、上記円環状の間隙のうち上記複数本の針状コロ46が介在させられている一部以外であって、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の外周面とローラ48の内周面との間には、針状コロ46を機械的に介在させないようにする針状コロ規制手段が設けられている。
【0028】
本実施例において、その針状コロ規制手段は、脚軸42の外周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面からその外周側へ凸設された針状コロ規制凸起54である。すなわち、針状コロ規制手段として、脚軸42の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸42の軸心C4を挟んでその軸心C4を通るトリポード部材44の回転軸心C1に平行な線Lを中心とする所定角度θ1範囲で外周面部分(部分)aおよび外周面部分(部分)bを備えた針状コロ規制凸起54が設けられている。
【0029】
なお、外輪34の開口部付近の外周面から中間ドライブシャフト14にわたって蛇腹状の駆動側ブーツ56(図1参照)が取り付けられており、その中にグリース等の潤滑剤が封入されている。
【0030】
以上のように構成されるドライブシャフト12は、車両の駆動に際して、図示しないエンジンで発生させられて変速機や差動歯車装置等を介してドライブシャフト12に入力された動力を図示しない駆動輪に伝達する。その動力伝達経路の途中に位置するトリポード型摺動式等速自在継手10は、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ48がトラック溝38内を転動しつつ外輪34に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ48および針状コロ46を順に介してトリポード部材44(脚軸42)に伝達するようになっている。
【0031】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ48および脚軸42の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起54が形成されている角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ1が設定されている。すなわち、所定角度θ1は、脚軸42の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材44と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ48の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0032】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10は、外輪34とトリポード部材44との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。また、同じく動力伝達経路の途中に位置するバーフィールド型固定式等速自在継手20は、中間ドライブシャフト14と被動側連結部材16との間で、それらの回転軸心すなわち回転軸心C1と回転軸心C2との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0033】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10によれば、複数本の針状コロ46をトリポード部材44の脚軸42の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させる一方で、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46を機械的に介在させない針状コロ規制手段(針状コロ規制凸起54)を設けたことから、針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【0034】
また、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10によれば、針状コロ規制凸起54は、前記外周面のうちその外周面の中心すなわち軸心C4を挟んでトリポード部材44の回転軸心C1に平行な方向に位置する部分aおよび部分bを中心とする所定角度θ1範囲で設けられていることから、針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができ、しかも、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができる。
【0035】
また、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手10によれば、針状コロ規制手段として、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面から凸設された針状コロ規制凸起54を有することから、その脚軸42の外周面に凸設された針状コロ規制凸起54によって、脚軸42の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例2】
【0036】
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、前述の実施例と同一の構成を有する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図5は、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58における脚軸60の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する断面図である。
【0038】
図5において、本実施例の脚軸60は、第1実施例の脚軸42に対して針状コロ規制凸起54が設けられていないだけであり、その他の構成は脚軸42と同一である。複数本の針状コロ46は、第1実施例と同様に、脚軸60の外周面とローラ62の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。
【0039】
本実施例における針状コロ規制手段としては、ローラ62の内周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の内周面から凸設された針状コロ規制凸起64が備えられている。また、その針状コロ規制凸起64は、脚軸60の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸60の軸心C4を挟んでトリポード部材44の回転軸心C1に平行な方向に位置する外周面部分aおよび外周面部分bを中心とする所定角度θ2範囲で設けられている。
【0040】
本実施例のローラ62は、第1実施例のローラ48に対して針状コロ規制凸起64が設けられているだけであり、その他の構成はローラ48と同一である。
【0041】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ62がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図1参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ62および針状コロ46を順に介してトリポード部材44(脚軸42)に伝達するようになっている。
【0042】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ62および脚軸60の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起64が形成されている角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ2が設定されている。すなわち、所定角度θ2は、脚軸60の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材44と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ48の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0043】
すなわち、トリポード部材44が回転軸心C1方向に変位する場合には、ローラ62がローラ案内面39上を転動することにより針状コロ規制凸起64がトリポード部材44の脚軸60に対して軸心C4まわりに相対回転するようになっているが、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58では、トリポード部材44がその軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した場合(駆動側限界位置)あるいは最も被動側に移動した場合(被動側限界位置)のいずれであっても、上記軸心C4まわりに相対回転した針状コロ規制凸起64が位置する所定角度θ2範囲のローラ62の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ2が設定されている。
【0044】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58は、外輪34とトリポード部材44との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0045】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手58によれば、針状コロ規制手段として、ローラ62の内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の内周面から凸設された針状コロ規制凸起64を有することから、そのローラ62の内周面に凸設された針状コロ規制凸起64によって、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ2範囲の外周面とローラ62の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例3】
【0046】
図6は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66における脚軸60の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する断面図である。
【0047】
図6において、本実施例における複数本の針状コロ46は、第1実施例と同様に、脚軸60の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。
【0048】
本実施例における針状コロ規制手段は、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3[rad]範囲の外周面に沿って位置する2個の規制板68を備えた転動体リテーナ部材70である。転動体リテーナ部材70は、ボス部43(図2参照)とワッシャ49とに挟持された状態でスナップ溝50に設けられた止め輪51により抜け止めされている。
【0049】
図7は、転動体リテーナ部材70を示す模式的斜視図であって、図8は、転動体リテーナ部材70が本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66のトリポード部材72に嵌め入れられた状態を示す模式的斜視図である。図7および図8において、転動体リテーナ部材70は、上記2個の規制板68の両端同士をそれぞれ連結する2個の輪状の連結部74と、その一方の連結部74すなわち脚軸60の付根側に位置する連結部74の規制板68に対する反対側から軸心C4に平行な方向に突き出して設けられた回転規制突起76とを、備えている。
【0050】
トリポード部材72には、図8に示すように、脚軸60の付根部分のうち回転軸心C1に平行な方向にて対向する2箇所に、転動体リテーナ部材70の回転規制突起76と干渉するまで転動体リテーナ部材70の軸心C4まわりの回転を許容する切欠部78が設けられている。本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66では、トリポード部材72の軸方向変位に伴ってローラ48がローラ案内面39上を転動するとともに転動体リテーナ部材70が脚軸60に対して軸心C4まわりに相対回転する場合に、そのトリポード部材72の軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した位置(駆動側限界位置)および最も被動側に移動した位置(被動側限界位置)あるいはその付近にて上記切欠部78と回転規制突起76とが干渉するように設定されている。
【0051】
転動体リテーナ70の規制板68は、上記トリポード部材72の軸方向変位範囲のうち中央位置において脚軸60の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸60の軸心C4を挟んでトリポード部材72の回転軸心C1に平行な方向に位置する外周面部分aおよび外周面部分bを中心とする所定角度θ3範囲で設けられている。
【0052】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ48がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図3参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ48および針状コロ46を順に介してトリポード部材72(脚軸60)に伝達するようになっている。
【0053】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ48および脚軸60の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である転動体リテーナ部材70が位置する角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。すなわち、所定角度θ3は、脚軸60の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材72と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ62の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0054】
すなわち、トリポード部材72が回転軸心C1方向に変位する場合には、ローラ48がローラ案内面39上を転動することにより転動体リテーナ部材70がトリポード部材72の脚軸60に対して軸心C4まわりに相対回転するようになっているが、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66では、トリポード部材72がその軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した場合(駆動側限界位置)あるいは最も被動側に移動した場合(被動側限界位置)のいずれであっても、上記軸心C4まわりに相対回転した転動体リテーナ部材70が位置する所定角度θ3範囲のローラ48の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。
【0055】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66は、外輪34とトリポード部材72との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0056】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手66によれば、針状コロ規制手段として、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面に沿って位置する規制板68を備えた転動体リテーナ部材70を備えていることから、その転動体リテーナ部材70によって、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例4】
【0057】
図9は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手80の横断面図の一部を示す、第1実施例における図2に相当する断面図であり、図10は、図9のトリポード型摺動式等速自在継手80の脚軸82の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する図9のX−X視断面図である。
【0058】
図9および図10において、インナーローラ86は、円筒状の部材であって、外周面に回転軸心C1に平行な方向に凸設された後述の針状コロ規制凸起92を有する。
【0059】
脚軸82は、第2実施例の脚軸60に対して、止め輪51を固定するためのリング溝50が設けられておらず、また、外周面に上記インナーローラ86が嵌合されている点が異なり、その他の構成は脚軸60と同一である。
【0060】
ローラ88は、前述の実施例のローラ48に対して、針状コロ46を介してインナーローラ86に回転可能に支持されている点、およびインナーローラ86を介して脚軸82に対して軸心C4に平行な方向に相対移動可能である点が異なり、その他の構成はローラ48と同一である。
【0061】
複数本の針状コロ46は、ローラ88の内周面に設けられた一対のスナップリング90により抜け止めされており、また、図10に示すように、脚軸82に嵌合された部材であるインナーローラ86の円筒面状の外周面とローラ88の円筒面状の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられており、その他の構成は第1実施例の針状コロ46と同一である。
【0062】
本実施例における針状コロ規制手段としては、インナーローラ86の外周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面から凸設された針状コロ規制凸起92が備えられている。
【0063】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手80は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ88がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図1参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ88および針状コロ46およびインナーローラ86を順に介してトリポード部材44(脚軸82)に伝達するようになっている。
【0064】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ88およびインナーローラ86および脚軸82の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起92が形成されている角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ1が設定されている。すなわち、所定角度θ1は、脚軸82の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材44と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ88の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0065】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手80は、外輪34とトリポード部材44との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0066】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手80によれば、針状コロ規制手段として、脚軸82に嵌合された部材であるインナーローラ86の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面から凸設された針状コロ規制凸起92を有していることから、そのインナーローラ86の外周面に凸設された針状コロ規制凸起92によって、インナーローラ86の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ1[rad]範囲の外周面とローラ88の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例5】
【0067】
図11は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94の脚軸82の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第4実施例の図10に相当する断面図である。
【0068】
図11において、本実施例のインナーローラ96は、第4実施例のインナーローラ86に対して針状コロ規制凸起92が設けられていないだけであり、その他の構成は同一である。
【0069】
複数本の針状コロ46は、第4実施例と同様に、インナーローラ96の外周面とローラ98の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。
【0070】
本実施例における針状コロ規制手段としては、ローラ98の内周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の内周面から凸設された針状コロ規制凸起100が備えられている。
【0071】
本実施例のローラ98は、第4実施例のローラ88に対して上記針状コロ規制凸起100が設けられているだけであり、その他の構成はローラ88と同一である。
【0072】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ98がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図1参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ98および針状コロ46およびインナーローラ96を順に介してトリポード部材44(脚軸82)に伝達するようになっている。
【0073】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ98およびインナーローラ96および脚軸82の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起92が形成されている角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ2が設定されている。すなわち、所定角度θ2は、脚軸82の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材44と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ88の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0074】
すなわち、トリポード部材44が回転軸心C1方向に変位する場合には、ローラ98がローラ案内面39上を転動することにより針状コロ規制凸起64がトリポード部材44の脚軸82に対して軸心C4まわりに相対回転するようになっているが、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94では、トリポード部材44がその軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した場合(駆動側限界位置)あるいは最も被動側に移動した場合(被動側限界位置)のいずれであっても、上記軸心C4まわりに相対回転した針状コロ規制凸起100が位置する所定角度θ2範囲のローラ98の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ2が設定されている。
【0075】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94は、外輪34とトリポード部材44との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0076】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手94によれば、針状コロ規制手段として、ローラ98の内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の内周面から凸設された針状コロ規制凸起100を備えていることから、そのローラ98の内周面に凸設された針状コロ規制凸起100によって、脚軸82の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ2[rad]範囲の外周面とローラ98の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例6】
【0077】
図12は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102の脚軸82の軸心C4に直交する平面で切断した断面を示す、第4実施例における図10に相当する断面図である。
【0078】
図12において、本実施例における複数本の針状コロ46は、第4実施例と同様に、脚軸82に嵌合された部材であるインナーローラ96の外周面とローラ48の内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させられている。
【0079】
本実施例における針状コロ規制手段として、インナーローラ96の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3[rad]範囲の外周面に沿って位置する2個の規制板(スペーサ)104が備えられている。
【0080】
上記規制板104には、その一端すなわち脚軸82の付根側から軸心C4に平行な方向に突き出して設けられた回転規制突起76が備えられており、規制板104は、本実施例のトリポード部材72の切欠部78に干渉するまで軸心C4まわりの回転が許容されている。
【0081】
針状コロ規制手段すなわち規制板104は、トリポード部材44(脚軸82)の軸方向変位範囲のうち中央位置において、脚軸82の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸82の軸心C4を挟んでトリポード部材44の回転軸心C1に平行な方向に位置する外周面部分aおよび外周面部分bを中心とする所定角度θ3範囲で設けられている。
【0082】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102は、車両の駆動に際して、中間ドライブシャフト14および駆動側連結部材18の斜交角度に応じて適宜各ローラ88がトラック溝38内を転動しつつ外輪34(図3参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34のトラック溝38のローラ案内面39と係合させられたローラ88および針状コロ46およびインナーローラ96を順に介してトリポード部材72(脚軸82)に伝達するようになっている。
【0083】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ48および脚軸60の外周面のうち回転軸心C1に直交し且つ軸心C4を通る縦断面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、本実施例では、針状コロ規制手段である規制板104が位置する角度範囲に上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。すなわち、所定角度θ3は、脚軸60の軸心まわりにおいて、荷重伝達する角度範囲を除く角度範囲の一部に設定されている。このことは、トリポード部材72と外輪34との相対角度変位量(斜交角度)、およびローラ62の外輪34に対する相対変位量に拘わらずいえることである。
【0084】
すなわち、トリポード部材72が回転軸心C1方向に変位する場合には、ローラ88がローラ案内面39上を転動することにより規制板104がトリポード部材72の脚軸82に対して軸心C4まわりに相対回転するようになっているが、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102では、トリポード部材72がその軸方向変位範囲のうち最も駆動側に移動した場合(駆動側限界位置)あるいは最も被動側に移動した場合(被動側限界位置)のいずれであっても、上記軸心C4まわりに相対回転した規制板104が位置する所定角度θ3範囲のローラ88の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。
【0085】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102は、外輪34とトリポード部材72との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するものである。
【0086】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手102によれば、針状コロ規制手段として、インナーローラ96の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面に沿って位置する規制板104を備えていることから、その規制板104によって、インナーローラ96の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面とローラ88の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【実施例7】
【0087】
図13は、本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106の横断面の一部を示す、第1実施例における図3の一部に相当する断面図である。また、図14は、図13のトリポード部材72の脚軸60およびローラ48を脚軸60の軸心C4に直交する平面で切断して示す図13のXIV−XIV視断面図である。図15は、図13の脚軸60のスナップ溝50を軸心C4に直交する平面で切断して示す図13のXV−XV視断面図である。図16は、本実施例の針状コロ規制手段を示す模式的斜視図である。
【0088】
図13乃至図16において、本実施例における針状コロ規制手段として、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3[rad]範囲の外周面に沿って位置する2個の規制板68を備えた転動体リテーナ部材108が備えられている。
【0089】
転動体リテーナ部材108は、第3実施例の転動体リテーナ部材70に対して、回転軸心C1を中心とする径方向の外方に位置する連結部74の規制板68に対する反対側に設けられ、縦断面における軸心C4からの最小距離が脚軸60の外周面の軸心C4からの距離よりも小さい逆三角形状の縦断面形状を有し、規制板68の回転軸心C1を中心とする径方向の外方の一端面に形成された凹部111を介して軸心C4を中心とする周方向に設けられた一対のスナップ部112を備えるものである。そのスナップ部112は、たとえば、プレス加工された金属製の転動体リテーナ部材70が軸心C4に平行な方向に塑性加工されることにより成形される。なお、これに限らず、たとえば樹脂製の転動体リテーナ部材108の一部として一体的に成形されたものであってもよい。転動体リテーナ部材108は、上記一対のスナップ部112がスナップ溝50に嵌め込まれることによって脚軸60に対する軸心C4方向の変位が阻止されている。また、本実施例の一方の規制板68には、軸心C4と平行な方向にその一方の規制板68を2分割するスリット114が設けられている。このスリット114によって一方の規制板68が2分割されることにより、上記スナップ部112が軸心C4を中心とする径方向に拡大することが許容されるようになっている。
【0090】
スナップ溝50には、図15に示すように、一対のスナップ部112のいずれかと干渉するまで転動体リテーナ部材108が軸心C4まわりに回転することを許容する、軸心C4まわりの径方向に突き出すスナップ回転規制突起116が設けられている。本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106では、トリポード部材72が回転軸心C3に平行な方向へ相対変位することに伴ってローラ48および転動体リテーナ部材108が軸心C4まわりに回転する場合に、そのトリポード部材72の相対変位範囲のうち最も駆動側に移動した位置(駆動側限界位置)および最も被動側に移動した位置(被動側限界位置)あるいはその付近において上記スナップ回転規制突起116と一対のスナップ部112のいずれかとが干渉するように設定されている。
【0091】
以上のように構成される本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106は、車両の駆動に際して、回転軸心C3および回転軸心C1の斜交角度に応じてローラ48がトラック溝38内を適宜転動しつつ外輪34(図3参照)に対して揺動しながら、外輪34に入力された動力すなわち回転軸心C3まわりのトルクをその外輪34の内周面に設けられたトラック溝38からローラ48および針状コロ46を順に介してトリポード部材72(脚軸60)に伝達するようになっている。
【0092】
そのトルク伝達の際には、トルク伝達荷重がローラ48および脚軸60の外周面のうち軸心C4を通り且つ回転軸心C1に直交する面内に位置する部位およびその付近に対して加えられる。ここで、針状コロ規制手段である転動体リテーナ部材108が位置する角度範囲のローラ48外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないようになっている。このことは、回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度、およびトリポード部材72(脚軸60)の回転軸心C3に平行な方向の移動位置に拘わらずいえることである。
【0093】
すなわち、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106においては、トリポード部材72が回転軸心C3に平行な方向へ移動する場合に、ローラ48および転動体リテーナ部材108(規制板68)が軸心C4まわりに回転するようになっているが、そのトリポード部材72の移動範囲のうち最も駆動側に移動した場合あるいは最も被動側に移動した場合のいずれの場合であっても上記軸心C4まわりに回転した転動体リテーナ部材108の規制板68が位置する所定角度θ3範囲のローラ48の外周面には、上記トルク伝達荷重が直接加えられないように前記所定角度θ3が設定されている。
【0094】
本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106は、外輪34とトリポード部材72との間でそれらの回転軸心すなわち回転軸心C3と回転軸心C1との斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達する。
【0095】
上述のように、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106によれば、針状コロ規制手段として、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面に沿って位置する規制板68を備えた転動体リテーナ部材108が備えられていることから、その転動体リテーナ部材108によって、脚軸60の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の一部である所定角度θ3範囲の外周面とローラ48の内周面との間に針状コロ46が機械的に介在させられないので、針状コロ46を可及的に少なくして部品コストを低下させることができ、しかも針状コロ46を用いる場合と同様に十分な耐久性および振動、ノイズ性能を得ることができる。
【0096】
また、本実施例のトリポード型摺動式等速自在継手106によれば、針状コロ規制手段である転動体リテーナ部材108には、脚軸60のスナップ溝110に嵌め込まれたスナップ部112が設けられており、針状コロ46は、そのスナップ部112により抜け止めされているので、スナップリングや止め輪等の部品が必要なく部品コストを低下させることができる。
【0097】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0098】
たとえば、前述の実施例において、トリポード型摺動式等速自在継手10、58、66、80、94、102、106は、トリポード部材44、72が外輪34に対してその外輪34のトラック溝38に沿って回転軸心C3に平行な方向へ相対変位可能である摺動式のものであったが、本発明の適用はこれに限らず、上記相対変位不能である固定式のトリポード型等速自在継手にも適用することが可能である。
【0099】
また、前述の実施例において、針状コロ規制手段としての針状コロ規制凸起54、64、92、100、または転動体リテーナ部材70、108、118は、脚軸42、60、82の外周面のうち軸心C4を中心としたトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の一部である所定角度θ1、θ2、θ3範囲の全範囲に渡って設けられたものであり、脚軸42、60、82の外周面のうちその外周面の中心すなわち脚軸42の軸心C4を挟んでトリポード部材44、72の回転軸心C1に平行な方向に位置する外周面部分aおよび外周面部分bを中心とする所定角度θ1、θ2、θ3範囲で設けられていたが、これに限られない。たとえば、針状コロ規制手段は、上記トルク伝達荷重が加えられない角度範囲の全範囲にわたって設けられてもよいし、上記所定角度θ1、θ2、θ3範囲のうちの2箇所に設けられてもよいし、上記外周面部分aおよび外周面部分bが中心に位置せずに設けられてもよい。要するに、脚軸あるいは脚軸に勘合された部材であるインナーローラの外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面とローラの内周面との間に、前記針状コロ46を介在させないように設けられたものであればよい。なお、上記所定角度θ1、θ2、θ3が大きいほど部品コストを低下させることができる。
【0100】
また、前述の実施例において、針状コロ規制手段である針状コロ規制凸起54、64、92、100は、脚軸42やインナーローラ86の外周面、あるいはローラ62、98の内周面から凸設されて、それらの脚軸42やインナーローラ86、あるいはローラ62、98と一体的に成形されたものであったが、たとえば、脚軸42やインナーローラ86の外周面、あるいはローラ62、98の内周面に形成されたキー溝や穴に対して嵌め込まれたキーやブロック等であってもよい。
【0101】
また、前述の実施例において、トリポード型摺動式等速自在継手106における転動体リテーナ部材108は、その一例が開示されたものであり、その他の機械的構成でも実現されることができる。たとえば、スナップ部112は、少なくとも1つ設けられていればよい。また、凹部111またはスリット114は、いずれか1つあるいは両方が設けられなくても差し支えない。また、スリット114が2つ設けられる、すなわち転動体リテーナ部材が2つの部材からなるものであっても差し支えない。また、回転規制突起76は、脚軸60にスナップ回転規制突起116が設けられていれば必ずしも設けられなくてもよい。また、脚軸60のスナップ回転規制突起116は、転動体リテーナ部材108に回転規制突起76が設けられていれば必ずしも設けられなくてもよい。
【0102】
たとえば、構成の一部を切り欠いて示す図17の転動体リテーナ部材118は、第1転動体リテーナ部材120および第2転動体リテーナ部材122により構成されている。第1転動体リテーナ部材120および第2転動体リテーナ部材122は、規制板68の両端をそれぞれ連結する円弧状の連結部124、126をそれぞれ備えている。上記連結部126は、軸心C4まわりの半円筒形状の第1連結部130と、その第1連結部130の内周面から軸心C4に向かって突き出す爪部128とを有する。このように構成される転動体リテーナ部材118であっても第7実施例と同様の効果が得られる。
【0103】
また、前述の実施例において、トリポード型等速自在継手10、58、66、80、94、102、106は、FF車両用のドライブシャフト12を構成するものとして用いられていたが、これに限らず、たとえばFR(フロントエンジン・リアドライブ)車両や4輪駆動車両など他の駆動形式の車両に対しても適用することができる
【0104】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施例のトリポード型摺動式等速自在継手(トリポード型等速自在継手)が適用されたドライブシャフトの縦断面図すなわち中間ドライブシャフトの回転軸心に直交する平面で切断した断面図である。
【図2】図1のドライブシャフトのうちトリポード型摺動式等速自在継手を示す、図1のII矢視部を拡大して示す拡大図である。
【図3】図1のトリポード型摺動式等速自在継手の横断面を示す、図1のIII−III視断面図である。
【図4】図1のトリポード型摺動式等速自在継手の脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、図2のIV−IV視断面図である。
【図5】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する断面図である。
【図6】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する断面図である。
【図7】図6の転動体リテーナ部材を示す模式的斜視図である。
【図8】図6の転動体リテーナ部材がトリポード型摺動式等速自在継手のトリポード部材に嵌め入れられた状態を示す模式的斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手の横断面図の一部を示す、第1実施例における図2に相当する断面図である。
【図10】図9のトリポード型摺動式等速自在継手の脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第1実施例における図4に相当する図9のX−X視断面図である。
【図11】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第4実施例の図10に相当する断面図である。
【図12】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における脚軸の軸心に直交する平面で切断した断面を示す、第4実施例の図10に相当する断面図である。
【図13】本発明の他の実施例におけるトリポード型摺動式等速自在継手の断面の一部を示す、第1実施例における図3に相当する断面図である。
【図14】図13のトリポード部材の脚軸およびローラをその脚軸の軸心に直交する平面で切断して示す、図13のXIV−XIV視断面図である。
【図15】図13のトリポード部材の脚軸のスナップ溝を軸心に直交する平面で切断して示す、図13のXV−XV視断面図である。
【図16】図13のトリポード型摺動式等速自在継手の針状コロ規制手段を示す模式的斜視図である。
【図17】本発明の他の実施例のトリポード型摺動式等速自在継手における針状コロ規制手段を一部切り欠いて示す模式的斜視図である。
【符号の説明】
【0106】
10、58、66、80、94、102、106:トリポード型摺動式等速自在継手(トリポード型等速自在継手)
34:外輪
38:トラック溝
42、60、82:脚軸
44、72:トリポード部材
46:針状コロ
48、62、88、98:ローラ
54、64、92、100:針状コロ規制凸起(針状コロ規制手段)
68:規制板
70、108、118:転動体リテーナ部材(針状コロ規制手段)
86、96:インナーローラ
104:規制板(スペーサ)
C1、C2、C3:回転軸心
C4:軸心(外周面の中心)
a、b:外周面部分(部分)
θ1、θ2、θ3:所定角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心に平行な複数本のトラック溝を内周面に備えた有底円筒状の外輪と、回転軸心に直交する面内において径方向に突き出す複数本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トラック溝内に転動自在に挿入され、複数本の針状コロを介して前記脚軸に回転可能に支持された複数のローラとを備え、前記外輪と前記トリポード部材との間でそれらの回転軸心の斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するトリポード型等速自在継手において、
前記複数本の針状コロを前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面と前記ローラの内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させ、
前記脚軸または該脚軸に嵌め着けられた部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロを機械的に介在させない針状コロ規制手段を、設けたことを特徴とするトリポード型等速自在継手。
【請求項2】
前記針状コロ規制手段は、前記外周面のうち該外周面の中心を挟んで前記トリポード部材の回転軸心に平行な方向に位置する部分を中心とする所定角度範囲で設けられている請求項1のトリポード型等速自在継手。
【請求項3】
前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面から凸設された針状コロ規制凸起であることを特徴とする請求項1または2のトリポード型等速自在継手。
【請求項4】
前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面に沿って位置する規制板を備えた転動体リテーナ部材であることを特徴とする請求項1または2のトリポード型等速自在継手。
【請求項5】
前記針状コロ規制手段は、前記ローラの内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の内周面から凸設された針状コロ規制凸起であることを特徴とする請求項1または2のトリポード型等速自在継手。
【請求項1】
回転軸心に平行な複数本のトラック溝を内周面に備えた有底円筒状の外輪と、回転軸心に直交する面内において径方向に突き出す複数本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トラック溝内に転動自在に挿入され、複数本の針状コロを介して前記脚軸に回転可能に支持された複数のローラとを備え、前記外輪と前記トリポード部材との間でそれらの回転軸心の斜交角度に拘わらず等速で回転を伝達するトリポード型等速自在継手において、
前記複数本の針状コロを前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面と前記ローラの内周面との間に形成された円環状の間隙内の一部に介在させ、
前記脚軸または該脚軸に嵌め着けられた部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない範囲の少なくとも一部の外周面と前記ローラの内周面との間に前記針状コロを機械的に介在させない針状コロ規制手段を、設けたことを特徴とするトリポード型等速自在継手。
【請求項2】
前記針状コロ規制手段は、前記外周面のうち該外周面の中心を挟んで前記トリポード部材の回転軸心に平行な方向に位置する部分を中心とする所定角度範囲で設けられている請求項1のトリポード型等速自在継手。
【請求項3】
前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面から凸設された針状コロ規制凸起であることを特徴とする請求項1または2のトリポード型等速自在継手。
【請求項4】
前記針状コロ規制手段は、前記脚軸または該脚軸に嵌合された部材の外周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の外周面に沿って位置する規制板を備えた転動体リテーナ部材であることを特徴とする請求項1または2のトリポード型等速自在継手。
【請求項5】
前記針状コロ規制手段は、前記ローラの内周面のうちトルク伝達荷重が加えられない角度範囲の少なくとも一部の内周面から凸設された針状コロ規制凸起であることを特徴とする請求項1または2のトリポード型等速自在継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−197920(P2009−197920A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40732(P2008−40732)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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