説明

トルクリミッタ装置を含む表示装置の台座およびトルクリミッタ装置

【課題】トルクリミッタ機能が働く際に、伝達ギア部にがたつきや軋み音が発生することを抑制するとともに、伝達ギア部の駆動源が過負荷状態で使用される状況を回避することが可能なトルクリミッタ装置を含む表示装置の台座およびトルクリミッタ装置を提供する。
【解決手段】液晶ディスプレイ100(表示装置)の台座20は、ステッピングモータ42の駆動力を伝達する伝達ギア部41が、回転軸と同心円状の複数の片部61bを有する従動側ギア部材61と、ギア部62bを有し、内周面62aが従動側ギア部材61の外周面61c側に嵌合される原動側ギア部材62と、従動側ギア部材61の片部61bを外側に押し広げるコイルバネ63と、外周面61cと内周面62aとの間のギア部62bに対応する位置に配置され、原動側ギア部材62と従動側ギア部材61とが互いに接触しないように配置されたフェルト64とから構成されるトルクリミッタ装置60を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トルクリミッタ装置を含む表示装置の台座およびトルクリミッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示画面部を旋回させる駆動源と、駆動源の駆動力を旋回部に伝達するための伝達ギア部とを備えた表示装置の台座などに適用されるトルクリミッタ装置が知られている(たとえば、特許文献1〜5参照)。
【0003】
上記特許文献1には、外周面にスパーギア(歯車)が形成されるとともに円環状に形成された歯車部材と、外側に向かって半径方向に広がる可撓部の先端に摩擦板が一体的に形成された出力軸部材と、金属製の平板を丸めることより環状に形成され、出力軸部材の可撓部の内側に圧入されるスプリングとから構成されたクラッチ機構(トルクリミッタ装置)を備えたクラッチ付きモータが開示されている。この特許文献1に記載のクラッチ付きモータのクラッチ機構では、出力軸部材の摩擦板が、出力軸部材の可撓部の内側からスプリングにより押し広げられるとともに、摩擦板の外周面に他の部材を介さず直接的に嵌め合わされた歯車部材の内周面に対して所定の押圧力を付与しながら摺動可能に接触するように構成されている。
【0004】
また、上記特許文献2には、フランジ部の一方端面に円環状に一定間隔に設けられた複数の撓み変形可能な嵌合部が形成されるとともに、フランジ部の他方端面において出力軸が連結可能な動力出力用部材と、一方端面に駆動源の駆動軸が連結可能なフランジ部を有し、フランジ部の他方端面から軸方向に延びる小径部の外周面に摩擦部材が巻き付けられ固着された動力入力用部材と、動力出力用部材の嵌合部の外周面に嵌め合わされるねじりコイルスプリングとから構成されたトルクリミッタ並びにこのトルクリミッタを用いた紙送り装置および事務機器が開示されている。この特許文献2に記載のトルクリミッタ並びにこのトルクリミッタを用いた紙送り装置および事務機器では、動力出力用部材の嵌合部の先端部が、動力入力用部材の小径部の根元部分に直接的に接触して嵌め合わされるとともに、動力出力用部材の嵌合部の中央部が、ねじりコイルスプリングにより軸中心に向かって締め付けられることにより、動力入力用部材の小径部に固着された摩擦部材に対して所定の押圧力を付与しながら摺動可能に接触するように構成されている。
【0005】
また、上記特許文献3には、外周面にギア(歯車)が形成されるとともに円環状に形成された駆動ギアと、2つのフランジ部間に巻取り部本体が形成されるとともに片方のフランジ部に軸方向に延びる円弧状の突片が複数形成されたフィルム巻上げ用スプールと、両端部のフック部によりフィルム巻上げ用スプールの円弧状の突片間の溝部に係合され、突片を外側から囲むように取り付けられた円弧状の線ばね部材とから構成されたクラッチ構造(トルクリミッタ装置)が開示されている。この特許文献3に記載のクラッチ構造では、フィルム巻上げ用スプールに取り付けられた線ばね部材の周部(円弧の部分)が、他の部材を介さず直接的に駆動ギアの内周面に嵌め合わされているとともに、ばねの復元力を利用して駆動ギアの内周面に対して所定の押圧力を付与しながら摺動可能に接触するように構成されている。
【0006】
また、上記特許文献4には、ボス部の一方端面に円環状に一定間隔を隔てて複数の分割スリーブ片が形成されるとともに、ボス部の他方端面においてローラ本体が連結可能なトルクリミッタ部と、駆動源によりローラ本体を回転させるための軸部材と、トルクリミッタ部の分割スリーブ片の外周面に嵌め合わされる弾性体とから構成されたトルクリミッタおよびトルクリミッタ回転体が開示されている。この特許文献4に記載のトルクリミッタおよびトルクリミッタ回転体では、トルクリミッタ部の分割スリーブ片が、弾性体により軸中心に向かって締め付けられるとともに、分割スリーブ片の内周面に他の部材を介さず直接的に嵌め合わされた軸部材の外周面に対して所定の押圧力を付与しながら摺動可能に接触するように構成されている。
【0007】
また、上記特許文献5には、伝動軸に固定され、円錐形の摩擦面を有するインナースリーブ(内側回転部分)と、外周面にタイミングベルトプーリが取り付けられるとともに、円錐形の摩擦面を有するアウタスリーブ(外側回転部分)と、アウタスリーブをインナースリーブに向かって軸方向に押し当てることが可能に配置されたサラバネとから構成されたスリップクラッチ(トルクリミッタ装置)が開示されている。この特許文献5に記載のスリップクラッチでは、アウタスリーブの摩擦面が他の部材を介さずに直接的にインナースリーブの摩擦面に接触するとともに、サラバネの押圧力により、アウタスリーブがインナースリーブに対して所定の摩擦力を有しながら摺動可能に回転するように構成されている。
【0008】
【特許文献1】特許登録第3272627号公報
【特許文献2】特開平7−269589号公報
【特許文献3】特開平8−62688号公報
【特許文献4】特開2003−156066号公報
【特許文献5】実開平7−18035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載のクラッチ機構(トルクリミッタ装置)では、出力軸部材の摩擦板と、歯車部材の内周面とが直接的に接触しているために、スリップトルクの設定値によっては、出力軸部材の摩擦板と歯車部材の内周面との間での静止摩擦係数(静止摩擦力)および動摩擦係数(動摩擦力)の差が大きくなる場合があると考えられる。この場合、歯車部材の内周面が出力軸部材の摩擦板に対して滑らかに滑り始めることができなくなるため、滑り始めには互いに接触する部材から摩擦に伴う軋み音が発生する。このため、この特許文献1によるクラッチ機構(トルクリミッタ装置)を、表示画面部を旋回させる駆動源と、駆動源の駆動力を旋回部に伝達するための伝達ギア部とを備えた表示装置(たとえば液晶ディスプレイなど)の台座に適用した場合には、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の伝達ギア部にがたつきや軋み音が発生するという問題点がある。また、上記特許文献1のクラッチ機構(トルクリミッタ装置)では、摩擦板と、歯車部材の内周面とが直接的に接触しているために、滑りによる部材同志の磨耗や、磨耗による接触領域(出力軸部材の摩擦板および歯車部材の内周面)の表面粗さの変化などにより、摩擦板の歯車部材の内周面に対する摩擦係数が経時変化を起こすと考えられる。このため、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができず、トルク制御を精度よく行うことができない。したがって、この特許文献1によるクラッチ機構(トルクリミッタ装置)を、表示画面部を旋回させる駆動源と、駆動源の駆動力を旋回部に伝達するための伝達ギア部とを備えた表示装置(たとえば液晶ディスプレイなど)の台座に適用した場合には、トルクリミッタ機能が働く際に、伝達ギア部は、駆動源に対して適切なトルク制御を行うことができないという問題点がある。
【0010】
また、上記特許文献2に記載のトルクリミッタでは、動力出力用部材は、コイルスプリングから締め付けにより、動力出力用部材の嵌合部の根元部分からの所定領域(実質的に中央部)が摩擦部材の外周面を押圧する一方、動力出力用部材の嵌合部の先端部が摩擦部材が固着された動力入力用部材の小径部の根元部分に直接的に接触するとともに、その接触箇所を押圧した状態で動力入力用部材側に嵌め合わされているために、動力出力用部材の嵌合部は、摩擦部材と動力入力用部材の小径部の根元部分との両方と摩擦しながら滑りを起こすと考えられる。この場合、動力入力用部材が動力出力用部材に対して滑り始める際のスリップトルクは、動力出力用部材の嵌合部が接触する摩擦部材と動力入力用部材の小径部の根元部分との両方の摩擦条件(摩擦係数)の影響を受けるため、スリップトルクにばらつきが生じてしまい、トルク制御を精度よく行うことができない。したがって、この特許文献2によるトルクリミッタを、表示画面部を旋回させる駆動源と、駆動源の駆動力を旋回部に伝達するための伝達ギア部とを備えた表示装置の台座に適用した場合には、トルクリミッタ機能が働く際に、伝達ギア部は、駆動源に対して適切なトルク制御を行うことができないという問題点がある。また、この特許文献2に記載のトルクリミッタでは、動力入力用部材に連結される駆動軸のトルク発生源が、動力出力用部材へのトルク伝達部として機能する動力入力用部材の摩擦部材と動力出力用部材の嵌合部との当接部分の近傍に配置されていないために、トルク発生源とトルク伝達部との間における駆動軸および動力入力用部材の回転時のねじれ変形などに起因して、所望のスリップトルク以上の駆動トルクが発生した状態で駆動源が継続的に使用される場合があると考えられる。この場合、駆動源が過負荷状態で使用される場合が生じる。このため、この特許文献2によるトルクリミッタを、表示画面部を旋回させる駆動源と、駆動源の駆動力を旋回部に伝達するための伝達ギア部とを備えた表示装置の台座に適用した場合には、伝達ギア部の駆動源が過負荷状態で使用される場合が生じるという問題点がある。
【0011】
また、上記特許文献3に記載のクラッチ構造では、円弧状の線ばね部材と、駆動ギアの内周面とが直接的に接触しているために、スリップトルクの設定値によっては、線ばね部材と駆動ギアの内周面との間での静止摩擦係数(静止摩擦力)および動摩擦係数(動摩擦力)の差が大きくなる場合が生じると考えられる。この場合、線ばね部材が駆動ギアの内周面に対して滑らかに滑り始めることができなくなるため、滑り始めには互いに接触する部材から摩擦に伴う軋み音が発生する。このため、特許文献に記載3のクラッチ構造についても、特許文献1と同様に、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の伝達ギア部にがたつきや軋み音が発生するという問題点がある。また、上記特許文献3のクラッチ構造では、線ばね部材の周部と、駆動ギアの内周面とが直接的に接触しているために、滑りによる部材同志の磨耗や、磨耗による接触領域(駆動ギアの内周面)の表面粗さの変化などにより、線ばね部材の駆動ギアの内周面に対する摩擦係数が経時変化を起こすと考えられる。このため、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができず、トルク制御を精度よく行うことができない。したがって、特許文献3に記載のクラッチ構造についても、特許文献1と同様に、トルクリミッタ機能が働く際に、伝達ギア部は、駆動源に対して適切なトルク制御を行うことができないという問題点がある。
【0012】
また、上記特許文献4に記載のトルクリミッタでは、トルクリミッタ部の分割スリーブ片と、軸部材の外周面とが直接的に接触しているために、スリップトルクの設定値によっては、トルクリミッタ部の分割スリーブ片と軸部材の外周面との間での静止摩擦係数(静止摩擦力)および動摩擦係数(動摩擦力)の差が大きくなる場合が生じると考えられる。この場合、トルクリミッタ部が軸部材の外周面に対して滑らかに滑り始めることができなくなるため、滑り始めには互いに接触する部材から摩擦に伴う軋み音が発生する。このため、特許文献4に記載のトルクリミッタについても、特許文献1と同様に、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の伝達ギア部にがたつきや軋み音が発生するという問題点がある。また、上記特許文献4のトルクリミッタでは、トルクリミッタ部の分割スリーブ片と、軸部材の外周面とが直接的に接触しているために、滑りによる部材同志の磨耗や、磨耗による接触領域(トルクリミッタ部の分割スリーブ片および軸部材の外周面)の表面粗さの変化などにより、トルクリミッタ部の軸部材の外周面に対する摩擦係数が経時変化を起こすと考えられる。このため、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができず、トルク制御を精度よく行うことができない。したがって、特許文献4に記載のトルクリミッタについても、特許文献1と同様に、トルクリミッタ機能が働く際に、伝達ギア部は、駆動源に対して適切なトルク制御を行うことができないという問題点がある。
【0013】
また、上記特許文献5に記載のスリップクラッチでは、インナースリーブの摩擦面と、アウタスリーブの摩擦面とが直接的に接触しているために、スリップトルクの設定値によっては、インナースリーブの摩擦面とアウタスリーブの摩擦面との静止摩擦係数および動摩擦係数の差が大きくなる場合が生じると考えられる。この場合、アウタスリーブがインナースリーブに対して滑らかに滑り始めることができなくなるため、滑り始めには部材同志から摩擦に伴う軋み音が発生する。このため、特許文献5に記載のスリップクラッチについても、特許文献1と同様に、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の伝達ギア部にがたつきや軋み音が発生するという問題点がある。また、上記特許文献5のスリップクラッチでは、インナースリーブの摩擦面と、アウタスリーブの摩擦面とが直接的に接触しているために、滑りによるインナースリーブおよびアウタスリーブの摩擦面の磨耗や、磨耗による摩擦領域(インナースリーブおよびアウタスリーブの摩擦面)の表面粗さの変化などにより、インナースリーブの摩擦面のアウタスリーブの摩擦面に対する摩擦係数が経時変化を起こすと考えられる。このため、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができず、トルク制御を精度よく行うことができない。したがって、特許文献5に記載のスリップクラッチについても、特許文献1と同様に、トルクリミッタ機能が働く際に、伝達ギア部は、駆動源に対して適切なトルク制御を行うことができないという問題点がある。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の伝達ギア部にがたつきや軋み音が発生することを抑制するとともに、駆動源に対して適切なトルク制御を行うことが可能で、かつ、伝達ギア部の駆動源が過負荷状態で使用される状況を回避することが可能なトルクリミッタ装置を含む表示装置の台座およびトルクリミッタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0015】
この発明の第1の局面による表示装置の台座は、表示画面部を旋回させる駆動源と、駆動源の駆動力を旋回部に伝達するための伝達ギア部とを備えた表示装置の台座において、伝達ギア部は、回転軸と同心円状に設けられた複数の片部と、第1ギア部とを有する従動側ギア部材と、第2ギア部を有するとともに内周面が従動側ギア部材の片部の外周面側に嵌め合わされる原動側ギア部材と、無負荷状態からコイルの巻き径を縮められることにより従動側ギア部材の片部の内周面に圧入され、従動側ギア部材の片部を外側方向に押し広げる円環状のコイルバネからなるバネ部材と、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間の原動側ギア部材の第2ギア部に対応する位置に配置される摩擦部材とを有し、原動側ギア部材と従動側ギア部材とは、互いに接触することなく摩擦部材を介して対向するように配置されているトルクリミッタ装置を含み、トルクリミッタ装置の円環状のバネ部材は、原動側ギア部材の第2ギア部および摩擦部材が配置される領域に対応する従動側ギア部材の片部の内周面の位置で、かつ、原動側ギア部材の第2ギア部による駆動力が、摩擦部材を介して片部に伝達される作用線上に、バネ部材による押圧力が作用する位置に配置され、トルクリミッタ装置の従動側ギア部材の片部の先端部には、原動側ギア部材の一方側への抜けを抑制するための抜止部が従動側ギア部材と一体的に設けられ、従動側ギア部材の複数の片部間には、原動側ギア部材の他方側への抜けを抑制するための抜止片部が従動側ギア部材と一体的に設けられている。
【0016】
この第1の局面による表示装置の台座では、上記のように、伝達ギア部を、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を有するトルクリミッタ装置を含むように構成することによって、原動側ギア部材の内周面は、摩擦部材を介して従動側ギア部材から圧接されているので、原動側ギア部材にスリップトルク以上の駆動トルクが発生した場合は、原動側ギア部材の内周面と摩擦部材との接触状態における静止摩擦力と動摩擦力との差が小さいために、原動側ギア部材は従動側ギア部材に対して滑らかに滑り始めることができる。したがって、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の伝達ギア部にがたつきが発生することを抑制することができる。また、伝達ギア部を、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を有するトルクリミッタ装置を含むように構成することによって、原動側ギア部材が摩擦部材により滑らかに滑り始めるために、伝達ギア部の内部において、原動側ギア部材と従動側ギア部材とが直接接触した場合の滑り始めに発生するような軋み音を抑制することができる。また、伝達ギア部を、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を有するトルクリミッタ装置を含むように構成することによって、原動側ギア部材と従動側ギア部材とが直接的に接触している場合と異なり、摩擦部材によって原動側ギア部材の内周面が摩擦による磨耗から保護されるために、原動側ギア部材の摩擦部材に対する摩擦係数の経時変化が抑制される。したがって、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができるので、伝達ギア部は駆動源に対して適切なトルク制御を行うことができる。また、伝達ギア部を、原動側ギア部材と従動側ギア部材とを、互いに接触することなく摩擦部材を介して対向するように配置するトルクリミッタ装置を含むように構成することによって、バネ部材により外側方向に押し広げられた従動側ギア部材の片部は、摩擦部材のみを介して原動側ギア部材の内周面を押圧するために、摩擦部材と原動側ギア部材との間での摩擦係数のみによってスリップトルクが決定される。したがって、摩擦部材のみが摩擦に関与しているため、スリップトルクの設定値に製品ごとのばらつきが生じることが抑制されることにより、伝達ギア部は駆動源に対して精度よく適切にトルク制御を行うことができる。また、摩擦部材を、原動側ギア部材の第2ギア部に対応する位置に配置するように構成することによって、原動側ギア部材の第2ギア部に発生した駆動トルクが直ちに摩擦部材を介して従動側ギア部材に伝達されるために、原動側ギア部材は不要なねじれ変形などを起こさずに駆動源からの駆動力を従動側ギア部材に伝えることができる。したがって、伝達ギア部を駆動する駆動源が、所望のスリップトルク以上のトルクを伴うような過負荷状態で使用される状況を回避することができる。
【0017】
また、第1の局面による表示装置の台座では、トルクリミッタ装置のバネ部材を、原動側ギア部材の第2ギア部および摩擦部材が配置される領域に対応する従動側ギア部材の片部の内周面の位置で、かつ、原動側ギア部材の第2ギア部による駆動力が、摩擦部材を介して片部に伝達される作用線上に、バネ部材による押圧力が作用する位置に配置するように構成することによって、バネ部材による従動側ギア部材の片部の外側方向への押圧力を、摩擦部材を介して原動側ギア部材の内周面に最も強く作用させることができるので、バネ部材の復元力(弾性エネルギー)を効率よく利用することができる。また、バネ部材を、円環状のコイルバネとするとともに、バネ部材を、無負荷状態からコイルの巻き径を縮められることにより従動側ギア部材の片部の内周面に圧入するように構成することによって、コイルバネが従動側ギア部材の片部の内周面に圧入された状態からバネ形状を無負荷状態に復元する復元力(弾性エネルギー)を利用して、容易に、従動側ギア部材の片部を外側方向に押し広げるための押圧力を得ることができる。
【0018】
また、第1の局面による表示装置の台座では、従動側ギア部材の片部の先端部を、原動側ギア部材の一方側への抜けを抑制するための抜止部を一体的に含むように構成することによって、原動側ギア部材が所定の駆動トルク以上で回転し、従動側ギア部材の片部の外周面で摩擦部材により滑りが発生した場合においても、従動側ギア部材の抜止部が原動側ギア部材に当接することによって、原動側ギア部材が従動側ギア部材から原動側ギア部材の一方側に脱落するのを容易に抑制することができる。また、従動側ギア部材を、従動側ギア部材の複数の片部間に、原動側ギア部材の他方側への抜けを抑制するための抜止片部を一体的に含むように構成することによって、原動側ギア部材が所定の駆動トルク以上で回転し、従動側ギア部材の片部の外周面で摩擦部材により滑りが発生した場合においても、従動側ギア部材の抜止片部が原動側ギア部材に当接することによって、原動側ギア部材が従動側ギア部材から原動側ギア部材の他方側に脱落するのを容易に抑制することができる。
【0019】
この発明の第2の局面による表示装置の台座は、表示画面部を旋回させる駆動源と、駆動源の駆動力を旋回部に伝達するための伝達ギア部とを備え、伝達ギア部は、回転軸と同心円状に設けられた複数の片部と、第1ギア部とを有する従動側ギア部材と、第2ギア部を有するとともに内周面が従動側ギア部材の片部の外周面側に嵌め合わされる原動側ギア部材と、従動側ギア部材の片部の内周面に配置され、従動側ギア部材の片部を外側方向に押し広げるバネ部材と、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間の原動側ギア部材の第2ギア部に対応する位置に配置される摩擦部材とを有し、原動側ギア部材と従動側ギア部材とは、互いに接触することなく摩擦部材を介して対向するように配置されているトルクリミッタ装置を含む。
【0020】
この第2の局面による表示装置の台座では、上記のように、伝達ギア部を、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を有するトルクリミッタ装置を含むように構成することによって、原動側ギア部材の内周面は、摩擦部材を介して従動側ギア部材から圧接されているので、原動側ギア部材にスリップトルク以上の駆動トルクが発生した場合は、原動側ギア部材の内周面と摩擦部材との接触状態における静止摩擦力と動摩擦力との差が小さいために、原動側ギア部材は従動側ギア部材に対して滑らかに滑り始めることができる。したがって、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の伝達ギア部にがたつきが発生することを抑制することができる。また、伝達ギア部を、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を有するトルクリミッタ装置を含むように構成することによって、原動側ギア部材が摩擦部材により滑らかに滑り始めるために、伝達ギア部の内部において、原動側ギア部材と従動側ギア部材とが直接接触した場合の滑り始めに発生するような軋み音を抑制することができる。また、伝達ギア部を、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を有するトルクリミッタ装置を含むように構成することによって、原動側ギア部材と従動側ギア部材とが直接的に接触している場合と異なり、摩擦部材によって原動側ギア部材の内周面が摩擦による磨耗から保護されるために、原動側ギア部材の摩擦部材に対する摩擦係数の経時変化が抑制される。したがって、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができるので、伝達ギア部は駆動源に対して適切なトルク制御を行うことができる。また、伝達ギア部を、原動側ギア部材と従動側ギア部材とを、互いに接触することなく摩擦部材を介して対向するように配置するトルクリミッタ装置を含むように構成することによって、バネ部材により外側方向に押し広げられた従動側ギア部材の片部は、摩擦部材のみを介して原動側ギア部材の内周面を押圧するために、摩擦部材と原動側ギア部材との間での摩擦係数のみによってスリップトルクが決定される。したがって、摩擦部材のみが摩擦に関与しているため、スリップトルクの設定値に製品ごとのばらつきが生じることが抑制されることにより、伝達ギア部は駆動源に対して精度よく適切にトルク制御を行うことができる。また、摩擦部材を、原動側ギア部材の第2ギア部に対応する位置に配置するように構成することによって、原動側ギア部材の第2ギア部に発生した駆動トルクが直ちに摩擦部材を介して従動側ギア部材に伝達されるために、原動側ギア部材は不要なねじれ変形などを起こさずに駆動源からの駆動力を従動側ギア部材に伝えることができる。したがって、伝達ギア部を駆動する駆動源が、所望のスリップトルク以上のトルクを伴うような過負荷状態で使用される状況を回避することができる。
【0021】
上記第2の局面による表示装置の台座において、好ましくは、トルクリミッタ装置のバネ部材は、原動側ギア部材の第2ギア部および摩擦部材が配置される領域に対応する従動側ギア部材の片部の内周面の位置で、かつ、原動側ギア部材の第2ギア部による駆動力が、摩擦部材を介して片部に伝達される作用線上に、バネ部材による押圧力が作用する位置に配置されている。このように構成すれば、バネ部材による従動側ギア部材の片部の外側方向への押圧力を、摩擦部材を介して原動側ギア部材の内周面に最も強く作用させることができるので、バネ部材の復元力(弾性エネルギー)を効率よく利用することができる。
【0022】
上記第2の局面による表示装置の台座において、好ましくは、バネ部材は、円環状のコイルバネであり、バネ部材は、無負荷状態からコイルの巻き径を縮められることにより従動側ギア部材の片部の内周面に圧入されている。このように構成すれば、コイルバネが従動側ギア部材の片部の内周面に圧入された状態からバネ形状を無負荷状態に復元する復元力(弾性エネルギー)を利用して、容易に、従動側ギア部材の片部を外側方向に押し広げるための押圧力を得ることができる。
【0023】
上記第2の局面による表示装置の台座において、好ましくは、従動側ギア部材の片部の先端部は、原動側ギア部材の一方側への抜けを抑制するための抜止部を一体的に含む。このように構成すれば、原動側ギア部材が所定の駆動トルク以上で回転し、従動側ギア部材の片部の外周面で摩擦部材により滑りが発生した場合においても、従動側ギア部材の抜止部が原動側ギア部材に当接することによって、原動側ギア部材が従動側ギア部材から原動側ギア部材の一方側に脱落するのを容易に抑制することができる。
【0024】
上記第2の局面による表示装置の台座において、好ましくは、従動側ギア部材は、従動側ギア部材の複数の片部間に設けられ、原動側ギア部材の他方側への抜けを抑制するための抜止片部を一体的に含む。このように構成すれば、原動側ギア部材が所定の駆動トルク以上で回転し、従動側ギア部材の片部の外周面で摩擦部材により滑りが発生した場合においても、従動側ギア部材の抜止片部が原動側ギア部材に当接することによって、原動側ギア部材が従動側ギア部材から原動側ギア部材の他方側に脱落するのを容易に抑制することができる。
【0025】
上記第2の局面による表示装置の台座において、好ましくは、従動側ギア部材は、従動側ギア部材の複数の片部間に設けられ、バネ部材を保持するための座部を一体的に含む。このように構成すれば、座部によってバネ部材の他方側への移動が抑制されるので、圧入されたバネ部材を、従動側ギア部材の片部の内周面に確実に配置することができる。
【0026】
上記第2の局面による表示装置の台座において、好ましくは、従動側ギア部材は、従動側ギア部材の片部の先端部の内周側に設けられ、バネ部材の一方側への抜けを抑制するための突起部を一体的に含む。このように構成すれば、従動側ギア部材の突起部によって、バネ部材の一方側への移動が抑制されるので、圧入されたバネ部材が、従動側ギア部材の片部の内周面から一方側に脱落するのを容易に抑制することができる。
【0027】
上記第2の局面による表示装置の台座において、好ましくは、従動側ギア部材の片部は、同心円状に所定の角度範囲で複数配置されているとともに、片部間には、抜止片部および座部が交互に配置されている。このように構成すれば、従動側ギア部材は、同心円状にそれぞれ異なる機能を有する片部、抜止片部および座部を一体的に設けることができるので、従動側ギア部材は、原動側ギア部材およびバネ部材をともに安定して配置することができる。
【0028】
この発明の第3の局面によるトルクリミッタ装置は、回転軸と同心円状に設けられた複数の片部と、第1ギア部とを含む従動側ギア部材と、第2ギア部を含むとともに内周面が従動側ギア部材の片部の外周面側に嵌め合わされる原動側ギア部材と、従動側ギア部材の片部の内周面に配置され、従動側ギア部材の片部を外側方向に押し広げるバネ部材と、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間の原動側ギア部材の第2ギア部に対応する位置に配置される摩擦部材とを備え、原動側ギア部材と従動側ギア部材とは、互いに接触することなく摩擦部材を介して対向するように配置されている。
【0029】
この第3の局面によるトルクリミッタ装置では、上記のように、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を備えるように構成することによって、原動側ギア部材の内周面は、摩擦部材を介して従動側ギア部材から圧接されているので、原動側ギア部材にスリップトルク以上の駆動トルクが発生した場合は、原動側ギア部材の内周面と摩擦部材との接触状態における静止摩擦力と動摩擦力との差が小さいために、原動側ギア部材は従動側ギア部材に対して滑らかに滑り始めることができる。また、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を備えるように構成することによって、原動側ギア部材が摩擦部材により滑らかに滑り始めるために、原動側ギア部材と従動側ギア部材とが直接接触した場合の滑り始めに発生するような軋み音を抑制することができる。また、従動側ギア部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を備えるように構成することによって、原動側ギア部材と従動側ギア部材とが直接的に接触している場合と異なり、摩擦部材によって原動側ギア部材の内周面が摩擦による磨耗から保護されるために、原動側ギア部材の摩擦部材に対する摩擦係数の経時変化が抑制される。したがって、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができるので、トルク制御を精度よく行うことができる。また、原動側ギア部材と従動側ギア部材とを、互いに接触することなく摩擦部材を介して対向するように配置するように構成することによって、バネ部材により外側方向に押し広げられた従動側ギア部材の片部は、摩擦部材のみを介して原動側ギア部材の内周面を押圧するために、摩擦部材と原動側ギア部材との間での摩擦係数のみによってスリップトルクが決定される。したがって、摩擦部材のみが摩擦に関与しているため、スリップトルクの設定値に製品ごとのばらつきが生じることが抑制されることにより、トルク制御をより一層精度よく行うことができる。また、摩擦部材を、原動側ギア部材の第2ギア部に対応する位置に配置するように構成することによって、原動側ギア部材の第2ギア部に発生した駆動トルクが直ちに摩擦部材を介して従動側ギア部材に伝達されるために、原動側ギア部材は不要なねじれ変形などを起こさずに駆動源からの駆動力を従動側ギア部材に伝えることができる。したがって、伝達ギア部を駆動する駆動源が、所望のスリップトルク以上のトルクを伴うような過負荷状態で使用されることを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態によるトルクリミッタ装置を含んだ台座が設けられた液晶ディスプレイの全体構成を示した斜視図である。図2は、図1に示した一実施形態による液晶ディスプレイの分解斜視図である。図3は、図1に示した一実施形態によるトルクリミッタ装置が設けられた台座の平面図である。図4〜図13は、図1に示した本発明の一実施形態によるトルクリミッタ装置およびトルクリミッタ装置が設けられた台座の詳細構造を示した図である。まず、図1〜図13を参照して、本発明の一実施形態によるトルクリミッタ装置60およびトルクリミッタ装置60が設けられた台座20の構造について説明する。なお、本実施形態では、表示装置の一例である液晶ディスプレイの台座に本発明を適用した場合について説明する。
【0032】
本発明の一実施形態による液晶ディスプレイ100は、図1に示すように、ディスプレイ本体10と、ディスプレイ本体10を水平面内で左右方向(矢印A方向およびB方向)に所定の角度(本実施形態では±30度)だけ旋回させるとともに、垂直方向(矢印C方向およびD方向)に所定の角度(本実施形態では±10度)だけ傾けることが可能な台座20とを備えている。なお、ディスプレイ本体10は、本発明の「表示画面部」の一例である。
【0033】
また、台座20は、図3に示すように、ディスプレイ本体10を支持する表示画面支持機構50と、表示画面支持機構50によって支持されているディスプレイ本体10を水平面内で左右方向(図1の矢印A方向およびB方向)に旋回させるための旋回部30と、後述する旋回板31を旋回させるために設けられた、複数の駆動ギアなどからなる駆動部40とから構成されている。
【0034】
また、旋回部30は、図3に示すように、上面に表示画面支持機構50(図2参照)が取り付けられる板金製の旋回板31と、内部に複数(本実施形態では24個)の鋼球(図示せず)を所定の間隔(本実施形態では15度間隔)で配置するとともに、鋼球を旋回板31とともに回転可能に保持する樹脂製の保持部材(図示せず)と、旋回板31を回動可能に保持する板金製の台座32とから構成されている。また、旋回板31が旋回する際、旋回部30の内部に設けられたストッパ部材(図示せず)により、水平面内で左右方向(図1の矢印A方向およびB方向)にそれぞれ30度までの旋回範囲に規制されるように構成されている。
【0035】
また、駆動部40は、図3に示すように、旋回部30上の旋回板31を水平面内で左右方向(図1の矢印A方向およびB方向)に回動させるための伝達ギア部41と、伝達ギア部41の駆動源となるステッピングモータ42とから構成されている。また、駆動部40は、図3に示すように、旋回部30の内部に配置されるように構成されている。また、伝達ギア部41は、図3に示すように、樹脂製のギア43と、トルクリミッタ装置60と、樹脂製のギア44と、樹脂製のギア45とが樹脂製のギアボックス46に配置されるように構成されている。また、トルクリミッタ装置60は、ステッピングモータ42の駆動力が所定の駆動トルク以下の場合に、ステッピングモータ42の駆動力を伝達ギア部41を介して旋回板31に伝達することによって、旋回板31を台座20の内部で旋回させることが可能である一方、ステッピングモータ42の駆動力が所定の駆動トルク以上となった場合には、ステッピングモータ42の駆動力が旋回板31に伝達されないような機能を有するように構成されている。なお、ステッピングモータ42は、本発明の「駆動源」の一例である。
【0036】
ここで、本実施形態では、トルクリミッタ装置60は、図6および図7に示すように、樹脂製の従動側ギア部材61と、樹脂製の原動側ギア部材62と、金属製のコイルバネ63と、円環状に形成されたフェルト64とから構成されている。なお、コイルバネ63およびフェルト64は、それぞれ、本発明の「バネ部材」および「摩擦部材」の一例である。
【0037】
また、本実施形態では、図7に示すように、従動側ギア部材61には、ギア部61aと同心円状であるとともに、回転軸600(1点鎖線で示す)の軸方向と平行に伸びる複数(本実施形態では8つ)の片部61bが、従動側ギア部材61と一体的に設けられている。すなわち、片部61bは、45度の等角度間隔で8箇所に設けられている。なお、ギア部61aは、本発明の「第1ギア部」の一例である。そして、図7に示すように、従動側ギア部材61の外周面61cには、短冊状の1本のフェルト64が円周方向に1回巻き付けられるとともに接着剤(本実施形態では両面テープ(図示せず)を使用する)により固定されている。なお、図6に示すように、フェルト64は、端部64aが従動側ギア部材61の隣り合う片部61b間に配置されるとともに、フェルト64が従動側ギア部材61の8つの片部61bの外周面61c上でいずれも繋がった状態となるように構成されている。
【0038】
また、本実施形態では、図6および図7に示すように、従動側ギア部材61の下方から原動側ギア部材62を矢印P方向(上方向)にスライドさせた場合に、後述する原動側ギア部材62の内周面62aが、従動側ギア部材61の片部61bの外周面61cに巻き付けられ固定されているフェルト64と当接することによって、従動側ギア部材61に同心円状に嵌め合わされることが可能なように構成されている。また、図7に示すように、コイルバネ63を従動側ギア部材61の上方から矢印Q方向(下方向)に巻き径を縮めながら圧入した場合に、コイルバネ63の外側面が、従動側ギア部材61の片部61bの内周面61dと当接することによって、従動側ギア部材61の片部61bが外側に向かって半径方向に押し広げられるとともに、図8に示すように、従動側ギア部材61の片部61bが、予め嵌め合わされた原動側ギア部材62の内周面62aを、フェルト64を介して押圧するように構成されている。
【0039】
また、本実施形態では、図8に示すように、トルクリミッタ装置60を組み立てた状態において、フェルト64が原動側ギア部材62の内周面62aに対して当接する位置は、原動側ギア部材62の外周側に設けられた後述するギア部62bに対応する位置となるように構成されている。なお、ギア部62bは、本発明の「第2ギア部」の一例である。また、この場合、図8に示すように、コイルバネ63は、従動側ギア部材61の片部61bの内周面61dのうち、フェルト64が固定された部分における外周面61cに対応する領域を外側に向かって押圧するように配置されている。したがって、図8に示すように、コイルバネ63、フェルト64およびギア部62bを含む原動側ギア部材62は、コイルバネ63の押圧力が作用する作用線350(1点鎖線で示す)上に半径方向に並んで配置されるように構成されている。
【0040】
また、本実施形態では、図10および図11に示すように、従動側ギア部材61の片部61bの先端部から、片部61bの外周面61c側に向かって水平方向に伸びる抜止部61eが片部61bと一体的に形成されている。この抜止部61eは、図8に示すように、原動側ギア部材62が従動側ギア部材61に嵌め合わされた際に、原動側ギア部材62の一方側面62cが抜止部61eに当接することによって、原動側ギア部材62が従動側ギア部材61から矢印P方向(上方向)に抜け出ることを抑制する機能を有している。また、図10および図12に示すように、従動側ギア部材61の隣接する片部61b(図10参照)と片部61b(図10参照)との間に、回転軸600(図12の1点鎖線で示す)の軸方向から若干外側斜め上方向に向かって伸びる複数(本実施形態では4箇所)の抜止片部61fが、従動側ギア部材61と一体的に設けられている。すなわち、抜止片部61fは、90度の等角度間隔で同心円状に4箇所に設けられている。この抜止片部61fは、図9に示すように、原動側ギア部材62が従動側ギア部材61に嵌め合わされた際に、原動側ギア部材62の他方側面62dが抜止片部61fに当接することによって、原動側ギア部材62が従動側ギア部材61から矢印Q方向(下方向)に抜け落ちることを抑制する機能を有している。なお、図8および図9に示すように、従動側ギア部材61の抜止部61e(図8参照)および抜止片部61f(図9参照)によって、原動側ギア部材62は、従動側ギア部材61の片部61bの外周面61cにフェルト64を介して嵌め合わされる軸方向(矢印P方向および矢印Q方向)の位置が位置決めされるように構成されている。
【0041】
また、本実施形態では、図10および図12に示すように、従動側ギア部材61の隣接する片部61b(図10参照)と片部61b(図10参照)との間に、回転軸600(図12に1点鎖線で示す)の軸方向と平行に伸びる複数(本実施形態では4箇所)の座部61gが、従動側ギア部材61と一体的に設けられている。すなわち、座部61gは、90度の等角度間隔で同心円状に4箇所に設けられている。この座部61gは、図9に示すように、コイルバネ63が従動側ギア部材61に圧入された際に、コイルバネ63の一方側面63aが座部61gに当接することによってコイルバネ63を保持するとともに、コイルバネ63は矢印Q方向(下方向)へ移動することを抑制する機能を有している。また、図11に示すように、従動側ギア部材61の片部61bの先端部の内周面61d側に突出するように、突起部61hが片部61bと一体的に形成されている。この突起部61hは、図8に示すように、コイルバネ63が従動側ギア部材61に圧入された際に、コイルバネ63の他方側面63bが突起部61hに当接することによって、コイルバネ63が従動側ギア部材61から矢印P方向(上方向)に抜け出ることを抑制する機能を有している。なお、図8および図9に示すように、従動側ギア部材61の座部61g(図9参照)および突起部61h(図8参照)によって、コイルバネ63は、従動側ギア部材61の片部61bの内周面61dに圧入された状態が維持されるように構成されている。また、図10に示すように、従動側ギア部材61の抜止片部61fおよび座部61gは、隣接する片部61bと片部61bとの間で、それぞれ、抜止片部61fと座部61gとが交互に配置されるように設けられている。
【0042】
また、図13に示すように、樹脂製の原動側ギア部材62は、中空形状を有し、従動側ギア部材61の外周面61cにフェルト64を介して当接する内周面62aと、外周側に駆動トルクを発生させるギア部62bと、一方側面62cと、他方側面62dとが一体的に設けられている。
【0043】
また、本実施形態では、図8に示すように、トルクリミッタ装置60の原動側ギア部材62は、コイルバネ63によって予め設定された押圧力で従動側ギア部材61およびフェルト64から圧接されているために、コイルバネ63の押圧力に伴う原動側ギア部材62の内周面62aと、従動側ギア部材61の側のフェルト64との摩擦力以上の駆動トルクが原動側ギア部材62に対して発生した場合には、原動側ギア部材62の内周面62aと、従動側ギア部材61の側のフェルト64とが滑りを起こすことによって、原動側ギア部材62の駆動トルクが全て従動側ギア部材61に伝達されないように構成されている。その一方で、コイルバネ63の押圧力に伴う原動側ギア部材62の内周面62aと、従動側ギア部材61の側のフェルト64との摩擦力以下の駆動トルクにより原動側ギア部材62が回転する場合は、原動側ギア部材62の内周面62aと従動側ギア部材61のフェルト64とが互いに滑りを起こさずに、原動側ギア部材62の回転(駆動トルク)をそのまま従動側ギア部材61に伝達するように構成されている。
【0044】
また、図4に示すように、ステッピングモータ42の回転軸には、樹脂製のウォームギア47が圧入されている。また、図4および図5に示すように、ギア43は、大径ギア部43aと、小径ギア部43bとを一体的に含んでいる。また、ギア44は、大径ギア部44aと、小径ギア部44bとを一体的に含んでいる。また、ギア45は、大径ギア部45aと、小径ギア部45bとを一体的に含んでいる。また、図3および図4に示すように、旋回板31には、樹脂製の旋回ギア部材48は、ネジ70によって、旋回板31の上面に固定されている。なお、図4では、伝達ギア部41の構成を説明するために、伝達ギア部41およびステッピングモータ42を内部に配置するためのギアボックス46(図3参照)は図面から省略している。
【0045】
また、図4および図5に示すように、ウォームギア47は、ギア43の大径ギア部43aに、回転軸が直交するように噛合されているとともに、ギア43の小径ギア部43bは、トルクリミッタ装置60の原動側ギア部材62のギア部62b(図5参照)に回転軸が平行に噛合されている。また、図4および図5に示すように、トルクリミッタ装置60の従動側ギア部材61のギア部61a(図5参照)は、ギア44の大径ギア部44aに回転軸が平行に噛合されているとともに、ギア44の小径ギア部44bは、ギア45の大径ギア部45aに回転軸が平行に噛合されている。また、図4および図5に示すように、ギア45の小径ギア部45bは、旋回ギア部材48の旋回ギア部48aに回転軸が平行に噛合されている。したがって、図4および図5に示す上述のギア部材の配置関係から、ステッピングモータ42の駆動力が、ウォームギア47、ギア43、トルクリミッタ装置60、ギア44、ギア45および旋回ギア部材48を介して旋回板31へと伝達されるように構成されている。
【0046】
また、表示画面支持機構50は、図2に示すように、台座20に設けられた旋回部30の旋回板31の上面に、4つのネジ70によって固定されており、図1に示すように、ディスプレイ本体10を台座20に対して垂直方向(矢印C方向およびD方向)に回動可能とするとともに、ディスプレイ本体10を台座20に対して垂直方向(矢印C方向およびD方向)に所定の角度だけ傾斜させた状態で支持することが可能なように構成されている。
【0047】
また、表示画面支持機構50は、図2および図3に示すように、板金製の表示画面支持部材51と、一対の垂直支持部材52と、板金製の板状の支持軸53と、板金製の抜止部材54と、金属製の皿ばね55(本実施形態では4枚)と、板金製の圧接板56および57と、金属製の皿ばね55に当接する板部材58とから構成されており、表示画面支持部材51が、一対の垂直支持部材52に所定の駆動トルク以上で回動可能となるように取り付けられている。
【0048】
また、板金製の表示画面支持部材51は、図2に示すように、ディスプレイ本体取付部51aと、一対の回動部51bとを一体的に含んでいる。また、表示画面支持部材51のディスプレイ本体取付部51aには、4つのネジ挿入孔51cが設けられている。また、表示画面支持部材51の一対の回動部51bは、ディスプレイ本体取付部51aの両側端部から、それぞれ、ディスプレイ本体取付部51aの表面に対して垂直方向に延びるように設けられている。
【0049】
また、一対の垂直支持部材52は、図2および図3に示すように、それぞれ、回動部材取付部52aと、回動部取付部52bとを含んでいる。また、垂直支持部材52の回動部材取付部52aには、4つのネジ取付孔52c(図3参照)が設けられている。また、垂直支持部材52の回動部取付部52bは、回動部材取付部52aの一方端部から回動部材取付部52aの表面に対して垂直方向の上方に延びるように設けられている。
【0050】
また、図1および図2に示すように、ディスプレイ本体10は、樹脂製のフロントキャビネット11と、樹脂製のリアキャビネット12とから構成されている。また、ディスプレイ本体10の内部には、液晶パネル(図示せず)が取り付けられた液晶モジュール(図示せず)が、フロントキャビネット11およびリアキャビネット12とによって取り囲まれるように構成されている。また、ディスプレイ本体10は、表示画面支持部材51のネジ挿入孔51aを介して、ネジ取付孔(図示せず)にネジ70が締め付けられることにより、表示画面支持部材51に取り付けられている。また、リアキャビネット12には、表示画面支持部材51を覆い隠して配置するための切欠部12aが一体的に設けられている。また、リアキャビネット12の外周部には、複数のネジ挿入孔12b(本実施形態では7個所)が設けられ、ネジ80によってフロントキャビネット11に取り付けられるように構成されている。また、リアキャビネット12の側面部12cには、図2に示すように、短形状の凹部12dが形成されており、その凹部12dには、複数の貫通孔12eが形成されている。この複数の貫通孔12eは、液晶モジュール13を制御するための制御基板(図示せず)に接続されたAV端子(図示せず)からケーブル類をディスプレイ本体10の外部機器に接続するために設けられている。
【0051】
また、台座20には、図1および図2に示すように、樹脂製のカバー部材21がネジ(図示せず)によって旋回部30の台座32に、台座32の下面側から取り付けられている。また、図1および図2に示すように、樹脂製のカバー部材22が上方から旋回部30を覆うとともに、旋回部30の旋回板31とともに左右方向(図1の矢印A方向およびB方向)に旋回することが可能なように取り付けられている。また、図1および図2に示すように、樹脂製のカバー部材22には、表示画面支持機構50が挿入されるための切欠部22aが設けられている。
【0052】
図14および図15は、図1に示した本発明の一実施形態によるトルクリミッタ装置が設けられた台座の旋回動作を説明するための図である。図1、図3、図4、図14および図15を参照して、本実施形態によるトルクリミッタ装置60が設けられた台座20の水平面内における左右方向の旋回動作について説明する。
【0053】
まず、図3に示すように、表示画面支持部材51が台座20上の旋回部30に対して垂直であるとともに表示画面支持部材51が正面を向いた状態(旋回ギア部材48の旋回ギア部48aの中央部がギア45の小径ギア部45bと噛合している状態)から、ユーザが付属リモコン(図示せず)のオートターンボタン(図示せず)を押圧することによって、ディスプレイ本体10(図1参照)を右方向(図1の矢印A方向)に旋回させる信号がディスプレイ本体10の制御回路部(図示せず)に送信される。この信号に基づいて、台座20のステッピングモータ42が駆動される。具体的には、図3に示すように、ステッピングモータ42が駆動するのに伴って、ステッピングモータ42に取り付けられたウォームギア47が矢印E1方向(図4参照)に回転されるとともに、ギア43が矢印E2方向(図14参照)に回転される。そして、ギア43を介してトルクリミッタ装置60の原動側ギア部材62が矢印E3方向に回転される。そして、トルクリミッタ装置60の従動側ギア部材61が矢印E3方向に回転されるとともに、ギア44が矢印E4方向(図14参照)に回転される。さらに、ギア45が矢印E5方向(図14参照)に回転されることによって、旋回ギア部材48が矢印E6方向に回転される。これにより、図14に示すように、表示画面支持部材51が取り付けられた旋回部30が矢印G1方向に旋回を開始するので、ディスプレイ本体10(図1参照)は、矢印A方向(図1参照)へ旋回を開始する。
【0054】
そして、図14に示すように、ディスプレイ本体10が載置された旋回部30が所定の回転速度で矢印A方向(図1参照)への旋回を継続する。
【0055】
そして、ディスプレイ本体10が、ユーザが希望する角度まで旋回された場合、ユーザは付属リモコン(図示せず)のオートターンボタン(図示せず)の押圧を解除することによって、ディスプレイ本体10(図1参照)を右方向(図1の矢印A方向)に旋回させる信号がディスプレイ本体10の制御回路部(図示せず)に送信されなくなる。したがって、ステッピングモータ42の駆動が停止される。これにより、旋回部30は、図14に示すような位置で矢印G1方向への旋回を停止するとともに静止される。
【0056】
また、ディスプレイ本体10(図1参照)の矢印A方向(図1参照)への旋回動作がユーザによって継続されている状態において、旋回部30の旋回角度が最大(本実施形態では30度)となった場合には、旋回板31は旋回部30の内部に設けられたストッパ部材(図示せず)に当接することによって、矢印A方向(図1参照)への旋回動作が規制される。したがって、旋回部30は、図15に示すような位置で矢印G1方向への旋回を停止するとともに静止される。この際、ステッピングモータ42(図15参照)は駆動を継続しているので、ステッピングモータ42(図15参照)から伝達される駆動トルクがウォームギア47(図15参照)およびギア43(図15参照)を介して、トルクリミッタ装置60(図15参照)の原動側ギア部材62(図15参照)まで伝達される。
【0057】
ここで、本実施形態では、従動側ギア部材61は、コイルバネ63によって予め設定された押圧力でフェルト64を介して原動側ギア部材62に向かって圧接されているために、コイルバネ63の押圧力に伴う従動側ギア部材61の側のフェルト64と、原動側ギア部材62の内周面62aとの摩擦力以上の駆動トルクが原動側ギア部材62に対して発生した場合には、原動側ギア部材62の内周面62aと、従動側ギア部材61の側のフェルト64とが回転方向に滑りを起こすことによって、原動側ギア部材62の駆動トルクが従動側ギア部材61に伝達されない。つまり、旋回板31が旋回部30の内部に設けられたストッパ部材(図示せず)に当接した場合は、従動側ギア部材61、ギア44、ギア45および旋回ギア部材48は、原動側ギア部材62の回転に関係なく回転が停止される。
【0058】
なお、上記の旋回動作は、旋回部30を図14に示す矢印G1方向に旋回させる際について説明したが、矢印G1方向とは反対の矢印H1方向への旋回動作の際も、トルクリミッタ装置60は、上記と同様の回転動作(トルクリミッタ機能)を行うことによって、旋回部30を矢印H1方向へ旋回させるとともに、ディスプレイ本体10(図1参照)は左方向(図1の矢印B方向)に旋回される。
【0059】
本実施形態では、上記のように、伝達ギア部41を、従動側ギア部材61の片部61bの外周面61cと、原動側ギア部材62の内周面62aとの間に配置されるフェルト64を有するトルクリミッタ装置60を含むように構成することによって、原動側ギア部材62の内周面62aは、フェルト64を介して従動側ギア部材61から圧接されているので、原動側ギア部材61にスリップトルク以上の駆動トルクが発生した場合は、原動側ギア部材62の内周面62aとフェルト64との接触状態における静止摩擦力と動摩擦力との差が小さいために、原動側ギア部材62は従動側ギア部材61に対して滑らかに滑り始めることができる。したがって、トルクリミッタ装置60のトルクリミッタ機能が働く際に、伝達ギア部41を構成する各ギア部材(特にステッピングモータ42から原動側ギア部材62までの間に配置される複数のギア部材)が、がたつきを生じながら駆動されることを抑制することができる。また、伝達ギア部41を、従動側ギア部材61の片部61bの外周面61cと、原動側ギア部材62の内周面62aとの間に配置されるフェルト64を有するトルクリミッタ装置60を含むように構成することによって、原動側ギア部材62がフェルト64により滑らかに滑り始めるために、伝達ギア部41の内部において、原動側ギア部材62と従動側ギア部材61とが直接接触した場合の滑り始めに発生するような軋み音を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、伝達ギア部41を、従動側ギア部材61の片部61bの外周面61cと、原動側ギア部材62の内周面62aとの間に配置されるフェルト64を有するトルクリミッタ装置60を含むように構成することによって、原動側ギア部材62と従動側ギア部材61とが直接的に接触している場合と異なり、フェルト64によって原動側ギア部材62の内周面62aが摩擦による磨耗から保護されるために、原動側ギア部材62のフェルト64に対する摩擦係数の経時変化が抑制される。したがって、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができるので、伝達ギア部41はステッピングモータ42に対して適切なトルク制御を行うことができる。また、伝達ギア部41を、原動側ギア部材62と従動側ギア部材61とを、互いに接触することなくフェルト64を介して対向するように配置するトルクリミッタ装置60を含むように構成することによって、コイルバネ63により外側方向に押し広げられた従動側ギア部材61の片部61bは、フェルト64のみを介して原動側ギア部材62の内周面62aを押圧するために、フェルト64と原動側ギア部材62との間での摩擦係数のみによってスリップトルクが決定される。したがって、フェルト64のみが摩擦に関与しているため、スリップトルクの設定値に製品ごとのばらつきが生じることが抑制されることにより、伝達ギア部41はステッピングモータ42に対して精度よく適切にトルク制御を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態では、フェルト64を、原動側ギア部材62のギア部62bに対応する位置に配置するように構成することによって、原動側ギア部材62のギア部62bに発生した駆動トルクが直ちにフェルト64を介して従動側ギア部材61に伝達されるために、原動側ギア部材61は不要なねじれ変形などを起こさずにステッピングモータ42からの駆動力を従動側ギア部材61に伝えることができる。したがって、伝達ギア部41を駆動するステッピングモータ42が、所望のスリップトルク以上のトルクを伴うような過負荷状態で使用されることを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、トルクリミッタ装置60のコイルバネ63を、原動側ギア部材62のギア部62bおよびフェルト64が配置される領域に対応する従動側ギア部材61の片部61bの内周面61cの位置で、かつ、原動側ギア部材62のギア部62bによる駆動力が、フェルト64を介して片部61bに伝達される作用線350(図6の1点鎖線)上に、コイルバネ63による押圧力が作用する位置に配置するように構成することによって、コイルバネ63による従動側ギア部材61の片部61bの外側方向への押圧力を、フェルト64を介して原動側ギア部材62の内周面62aに最も強く作用させることができるので、コイルバネ63の復元力(弾性エネルギー)を効率よく利用することができる。
【0063】
また、本実施形態では、トルクリミッタ装置60に組み込まれるバネ部材を、円環状のコイルバネ63とするとともに、コイルバネ63を、無負荷状態からコイルの巻き径を縮められることにより従動側ギア部材61の片部61bの内周面61dに圧入するように構成することによって、コイルバネ63が従動側ギア部材61の片部61bの内周面16dに圧入された状態からバネ形状を無負荷状態に復元する復元力(弾性エネルギー)を利用して、容易に、従動側ギア部材61の片部61bを外側方向に押し広げるための押圧力を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、従動側ギア部材61の片部61bの先端部を、原動側ギア部材62の矢印P方向(図7参照)への抜けを抑制するための抜止部61eを一体的に含むように構成することによって、原動側ギア部材62が所定の駆動トルク以上で回転し、従動側ギア部材61の片部61bの外周面61cでスリップした場合においても、従動側ギア部材61の抜止部61eが原動側ギア部材62の一方側面62cに当接することによって、原動側ギア部材62が従動側ギア部材61から矢印P方向(図8参照)に脱落するのを容易に抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では、従動側ギア部材61を、従動側ギア部材61の複数の片部61b間に、原動側ギア部材62の矢印Q方向(図7参照)への抜けを抑制するための抜止片部61fを一体的に含むように構成することによって、原動側ギア部材62が所定の駆動トルク以上で回転し、従動側ギア部材61の片部61bの外周面61cでスリップした場合においても、従動側ギア部材61の抜止片部61fが原動側ギア部材62の他方側面62dに当接することによって、原動側ギア部材62が従動側ギア部材61から矢印Q方向(図9参照)に脱落するのを容易に抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、従動側ギア部材61を、従動側ギア部材61の複数の片部61b間に、コイルバネ63を保持するための座部61gを一体的に含むように構成することによって、座部61gによってコイルバネ63の矢印Q方向(図9参照)への移動が抑制されるので、コイルバネ63を従動側ギア部材61の片部61bの内周面61dに確実に配置することができる。
【0067】
また、本実施形態では、従動側ギア部材61を、従動側ギア部材61の片部61bの先端部の内周面61d側に、コイルバネ63の矢印P方向(図7参照)への抜けを抑制するための突起部61hを一体的に含むように構成することによって、従動側ギア部材61の突起部61hによって、コイルバネ63の矢印P方向(図8参照)への移動が抑制されるので、コイルバネ63が従動側ギア部材61の片部61bの内周面61dから矢印P方向(図8参照)に脱落するのを容易に抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、従動側ギア部材61の片部61bは、同心円状に45度の等間隔で8つ配置されているとともに、片部61b間に、抜止片部61fおよび座部61gが交互に(それぞれ4箇所ずつ)設けられているように構成することによって、従動側ギア部材61は、同心円状にそれぞれ異なる機能を有する片部61b、抜止片部61fおよび座部61gを一体的に設けることができるので、従動側ギア部材61は、原動側ギア部材62およびコイルバネ63を安定して配置することができる。
【0069】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0070】
たとえば、上記実施形態では、表示装置の一例としての液晶ディスプレイの台座に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、有機ELパネルなどの液晶パネル以外の表示画面(表示パネル)を有する表示装置の台座にも適用可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、ディスプレイ本体10を旋回板31とともに台座20に対して水平面内で左右方向に旋回させる際の動作に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、ディスプレイ本体10を表示画面支持機構50とともに台座20に対して垂直面内で前後方向に旋回(チルティング動作)させる際の動作にも適用可能である。
【0072】
また、上記実施形態では、トルクリミッタ装置60において、従動側ギア部材61の片部61bの外周面61cにフェルト64を摩擦部材として両面テープにより取り付けた例を示したが、本発明はこれに限らず、フェルト以外のたとえば短繊維配合ゴムなどを、両面テープおよび両面テープ以外のたとえば接着剤などによって従動側ギア部材61の片部61bの外周面61cに取り付けるように構成してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、トルクリミッタ装置60において、従動側ギア部材61の片部61bの内周面61dにコイルバネ63をバネ部材として圧入した例を示したが、本発明はこれに限らず、コイルバネ以外のたとえば金属製の平板を丸めることより環状に形成されたバネ部材を、従動側ギア部材61の片部61bの内周面61dに圧入するようにして構成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、トルクリミッタ装置60において、従動側ギア部材61の片部61bを45度の等角度間隔で8つ設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、従動側ギア部材61の片部61bを等角度間隔で設けなくてもよく、また、8つ以外でもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、トルクリミッタ装置60において、従動側ギア部材61の抜止片部61f、座部61gおよび突起部61hをそれぞれ等角度間隔で4箇所に設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、抜止片部61f、座部61gおよび突起部61hをそれぞれ等角度間隔で設けなくてもよく、また、4つ以外でもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、伝達ギア部41を構成する複数のギア部材を樹脂製とした例を示したが、本発明はこれに限らず、樹脂製以外のたとえば金属製のギア部材によって伝達ギア部を構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態によるトルクリミッタ装置を含んだ台座が設けられた液晶ディスプレイの全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による液晶ディスプレイの分解斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態によるトルクリミッタ装置が設けられた台座の平面図である。
【図4】図1に示した一実施形態によるトルクリミッタ装置が設けられた伝達ギア部の構成を説明するための斜視図である。
【図5】図1に示した一実施形態によるトルクリミッタ装置が設けられた伝達ギア部のギアの配置関係を説明するための図である。
【図6】図1に示した一実施形態によるトルクリミッタ装置の平面図である。
【図7】図1に示した一実施形態によるトルクリミッタ装置の分解図である。
【図8】図6の200−200線に沿った断面図である。
【図9】図6の300−300線に沿った断面図である。
【図10】図1に示した一実施形態によるトルクリミッタ装置の従動側ギアの平面図である。
【図11】図10の400−400線に沿った断面図である。
【図12】図10の500−500線に沿った断面図である。
【図13】図1に示した一実施形態によるトルクリミッタ装置の原動側ギアの平面図である。
【図14】図1に示した一実施形態によるディスプレイ本体の旋回動作を説明するための図である。
【図15】図1に示した一実施形態によるディスプレイ本体の旋回動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0078】
10 ディスプレイ本体(表示画面部)
20 台座
30 旋回部
41 伝達ギア部
42 ステッピングモータ(駆動源)
60 トルクリミッタ装置
61 従動側ギア部材
61a ギア部(第1ギア部)
61b 片部
61c 外周面
61d 内周面
61e 抜止部
61f 抜止片部
61g 座部
61h 突起部
62 原動側ギア部材
62a 内周面
62b ギア部(第2ギア部)
63 コイルバネ(バネ部材)
64 フェルト(摩擦部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面部を旋回させる駆動源を備えた表示装置の台座において、
前記駆動源の駆動力を旋回部に伝達するための伝達ギア部をさらに備え、
前記伝達ギア部は、
回転軸と同心円状に設けられた複数の片部と、第1ギア部とを有する従動側ギア部材と、
第2ギア部を有するとともに内周面が前記従動側ギア部材の前記片部の外周面側に嵌め合わされる原動側ギア部材と、
無負荷状態からコイルの巻き径を縮められることにより前記従動側ギア部材の前記片部の内周面に圧入され、前記従動側ギア部材の前記片部を外側方向に押し広げる円環状のコイルバネからなるバネ部材と、
前記従動側ギア部材の前記片部の外周面と、前記原動側ギア部材の内周面との間の前記原動側ギア部材の前記第2ギア部に対応する位置に配置される摩擦部材とを有し、
前記原動側ギア部材と前記従動側ギア部材とは、互いに接触することなく前記摩擦部材を介して対向するように配置されているトルクリミッタ装置を含み、
前記トルクリミッタ装置の円環状の前記バネ部材は、前記原動側ギア部材の前記第2ギア部および前記摩擦部材が配置される領域に対応する前記従動側ギア部材の前記片部の内周面の位置で、かつ、前記原動側ギア部材の前記第2ギア部による駆動力が、前記摩擦部材を介して前記片部に伝達される作用線上に、前記バネ部材による押圧力が作用する位置に配置され、
前記トルクリミッタ装置の前記従動側ギア部材の前記片部の先端部には、前記原動側ギア部材の一方側への抜けを抑制するための抜止部が前記従動側ギア部材と一体的に設けられ、
前記従動側ギア部材の前記複数の片部間には、前記原動側ギア部材の他方側への抜けを抑制するための抜止片部が前記従動側ギア部材と一体的に設けられている、表示装置の台座。
【請求項2】
表示画面部を旋回させる駆動源と、
前記駆動源の駆動力を旋回部に伝達するための伝達ギア部とを備え、
前記伝達ギア部は、
回転軸と同心円状に設けられた複数の片部と、第1ギア部とを有する従動側ギア部材と、
第2ギア部を有するとともに内周面が前記従動側ギア部材の前記片部の外周面側に嵌め合わされる原動側ギア部材と、
前記従動側ギア部材の前記片部の内周面に配置され、前記従動側ギア部材の前記片部を外側方向に押し広げるバネ部材と、
前記従動側ギア部材の前記片部の外周面と、前記原動側ギア部材の内周面との間の前記原動側ギア部材の前記第2ギア部に対応する位置に配置される摩擦部材とを有し、
前記原動側ギア部材と前記従動側ギア部材とは、互いに接触することなく前記摩擦部材を介して対向するように配置されているトルクリミッタ装置を含む、表示装置の台座。
【請求項3】
前記トルクリミッタ装置の前記バネ部材は、前記原動側ギア部材の前記第2ギア部および前記摩擦部材が配置される領域に対応する前記従動側ギア部材の前記片部の内周面の位置で、かつ、前記原動側ギア部材の前記第2ギア部による駆動力が、前記摩擦部材を介して前記片部に伝達される作用線上に、前記バネ部材による押圧力が作用する位置に配置されている、請求項2に記載の表示装置の台座。
【請求項4】
前記バネ部材は、円環状のコイルバネであり、
前記バネ部材は、無負荷状態からコイルの巻き径を縮められることにより前記従動側ギア部材の前記片部の内周面に圧入されている、請求項2または3に記載の表示装置の台座。
【請求項5】
前記従動側ギア部材の前記片部の先端部は、前記原動側ギア部材の一方側への抜けを抑制するための抜止部を一体的に含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の表示装置の台座。
【請求項6】
前記従動側ギア部材は、前記従動側ギア部材の前記複数の片部間に設けられ、前記原動側ギア部材の他方側への抜けを抑制するための抜止片部を一体的に含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の表示装置の台座。
【請求項7】
前記従動側ギア部材は、前記従動側ギア部材の前記複数の片部間に設けられ、前記バネ部材を保持するための座部を一体的に含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の表示装置の台座。
【請求項8】
前記従動側ギア部材は、前記従動側ギア部材の前記片部の前記先端部の前記内周側に設けられ、前記バネ部材の前記一方側への抜けを抑制するための突起部を一体的に含む、請求項2〜7のいずれか1項に記載の表示装置の台座。
【請求項9】
前記従動側ギア部材の前記片部は、同心円状に所定の角度範囲で複数配置されているとともに、前記片部間には、前記抜止片部および前記座部が交互に配置されている、請求項2〜8のいずれか1項に記載の表示装置の台座。
【請求項10】
回転軸と同心円状に設けられた複数の片部と、第1ギア部とを含む従動側ギア部材と、
第2ギア部を含むとともに内周面が前記従動側ギア部材の前記片部の外周面側に嵌め合わされる原動側ギア部材と、
前記従動側ギア部材の前記片部の内周面に配置され、前記従動側ギア部材の前記片部を外側方向に押し広げるバネ部材と、
前記従動側ギア部材の前記片部の外周面と、前記原動側ギア部材の内周面との間の前記原動側ギア部材の前記第2ギア部に対応する位置に配置される摩擦部材とを備え、
前記原動側ギア部材と前記従動側ギア部材とは、互いに接触することなく前記摩擦部材を介して対向するように配置されている、トルクリミッタ装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2008−164813(P2008−164813A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352811(P2006−352811)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】