説明

トルテロジン、その組成物及び使用、及びその製造方法

結晶形態における、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基、向上した純度を有するトルテロジン、それらの組成物及び使用、及びそれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルテロジン、その組成物及び使用、及びその製造方法に関する。
【0002】
トルテロジン、(+)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ヒドロキシ−5メチルフェニル)−3−フェニルプロピル−アミンは、以下の構造式(I)を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
トルテロジンは、抗−コリン作動薬であり、尿失禁の治療に特に有用である。トルテロジンの製造は、以下の反応式が続く、米国特許第5382600号明細書に開示されている。
【0005】
【化2】

【0006】
ヒドロキシ保護基の除去による脱保護は、米国特許第5382600号明細書に従い、臭化水素酸、三臭化ホウ素、又は接触水素化によって実施する。ピリジン塩酸塩の存在下で脱保護を実施する場合、このような脱保護は高温(200℃以上)で溶媒の非存在下で実施される。得られる反応塊は高粘性であり、水を加える前に約80〜90℃に急冷する必要がある。このような技術を用いると、100℃において、撹拌することができない硬い塊が得られ、後で急冷することができないことがわかる。
【0007】
先行技術の製造技術に関連する更なる問題は、二量体の不純物が、製造される酒石酸トルテロジンと、通常、約0.15〜2%のレベルで、一般に関連していることである。通常の不純物は、下記構造式を有する、2−(3−{〔3−(2−ヒドロキシ,5−メチル−フェニル)−3−フェニル−プロピル〕−イソプロピル−アミノ}−1−フェニル−プロピル)−4−メチル−フェノール、及び/又は(3−{2−〔2−(3−ジイソプロピルアミノ−1−フェニル−プロピル)−4−メチル−フェノキシメトキシ〕−5−メチル−フェニル}−3−フェニルプロピル)−ジイソプロピル−アミンであり得る。
【0008】
【化3】

【0009】
【化4】

【0010】
従って、先行技術を用いることによって遭遇する上記問題を軽減することができ、改良された純度を有する生成物を得ることのできる、改良された、トルテロジンの製造方法を提供する必要がある。これは、本発明によって、達成される。
【0011】
今、本発明によって、次に実質的に純粋な(+)酒石酸トルテロジンの製造を可能にする、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基が提供される。更に、本発明は、約0.2%未満の二量体不純物を含む、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を提供する。本発明のトルテロジンに関連する二量体の不純物は、以下の不純物の1種又は両方であり得る。
【0012】
【化5】

【0013】
【化6】

【0014】
更に、本発明は、保護された、式(II)の中間体、〔3−(2−メトキシ−5−メチル−フェニル)−3−フェニル−プロピル〕−ジイソプロピルアミンの脱保護を含む、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基の製造方法を提供する。
【0015】
【化7】

【0016】
溶媒は、更に脱保護して得られる反応塊に存在し、実質的に移動可能な反応塊が70〜100℃の範囲の温度で達成されるように選択される。式(II)の保護された中間体〔3−(2−メトキシ−5−メチル−フェニル)−3−フェニル−プロピル〕−ジイソプロピルアミンは、当業界で公知の技術、すなわち、以下に、更に詳細に添付の実施例に記載されているように、実質的に、そして米国特許第5382600号明細書について上述した反応模式図に続いて製造される。
【0017】
適当には、脱保護は溶媒の非存在下に行われ、好ましくはピリジン塩酸塩を用いて、通常は、不活性雰囲気下、高温、適当には200〜220℃の範囲で実施される。好ましくは、得られた反応塊を、次いで110〜130℃の範囲の温度に冷却し、上述したように、実質的に移動可能な反応塊を得るように溶媒を加える。好ましい溶媒はジメチルホルムアミドである。
【0018】
次いで、得られた反応塊中に存在する、粗精のラセミ体のトルテロジンの塩酸塩を、通常はアンモニアを用いて塩基性にし、得られたラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を抽出し、沈殿させ、結晶性のラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を得る。好ましくは、前記方法は、上述のようにして得られた、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を、更に選択された有機溶媒に溶解し、沈殿させ、約0.1%未満の二量体不純物を含む、結晶形態における、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を得る、精製工程を更に含む。適当な溶媒は、n−ヘキサン等のアルカンであり得る。
【0019】
従って、本発明は更に、実質的に本明細書に開示された方法によって製造される、結晶形態における、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を提供する。好ましくは、本発明は、約0.2%未満の二量体不純物を含む、結晶形態における、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を提供する。
【0020】
前記方法は、好ましくは、上述のようにして得られたラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を分割し、約0.1%未満の二量体不純物を含む(+)酒石酸トルテロジンを得ることを更に含み、本発明によって、上述した方法によって製造された(+)酒石酸トルテロジンが提供される。
【0021】
また、本発明によれば、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を、以下のようにして製造することができる。従って、本発明によって、更に、式(III)のベンジル保護された中間体の脱保護を含む、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基の製造方法が提供される。
【0022】
【化8】

【0023】
式中、Raは置換されていないベンジルを表わすか、又は通常は、ハロゲン又はC1−4アルコキシ置換ベンジル等の適当な置換ベンジル保護基であってもよい。上記方法は、任意に、実質的に前述したような精製工程を更に含み、好ましくは得られたラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を分割して、約0.1%未満の二量体不純物を含む(+)酒石酸トルテロジンを得ることを更に含む。従って、本発明は、更に、上述した方法によって製造された、結晶形態であるラセミ体のトルテロジンの遊離塩基及び/又は(+)酒石酸トルテロジンを提供する。
【0024】
好ましくは、Raは置換されていないベンジルを表わす。通常は、脱保護は、炭素上のパラジウムの存在下で、適当には水素化を用いる。
式(III)の中間体化合物は、適当には、ジイソプロピルアミンと、式(IV)の中間体化合物との反応によって製造することができる。
【0025】
【化9】

【0026】
式中、Raは前記に定義した通りであり、Xは、アルキル又はアリールスルホニルオキシ基等の適当な脱離基、好ましくはトシレート基である。通常は、反応は、90〜130℃の範囲の温度で実施され、次いで、室温にまで冷却し、減圧下で濃縮する。
【0027】
式(IV)の中間体化合物は、適当には、式(V)の中間体化合物:
【0028】
【化10】

【0029】
から、通常は、アルキル、又はp−トルエンスルホニルクロライド等のアリールスルホニルハライドとの反応によって製造される。適当には、式(V)の化合物、及びスルホニルハライドを、それぞれ有機溶媒に溶解し、通常は、トリエチルアミン等の塩基の存在下で反応を実施する。スルホニルハライドは、室温で撹拌しながら、長時間にわたって式(V)の化合物に加えることができる。次いで、有機層を分離し、酸で洗浄し、適当な塩基を用いて中和する。
適当には、式(V)の化合物は、式(VI)の中間体化合物:
【0030】
【化11】

【0031】
にRa基を導入することによる保護によって製造することができる。適当には、式(VI)の化合物を、アセトン等の適当な有機溶媒に溶解し、例えば、塩化ベンジル等のハロゲン化ベンジルを加える。この反応のための適当な塩基は、アルカリ金属の炭酸塩又は水酸化物であり、好ましい塩基は無水炭酸カリウムである。ヨウ化カリウム等の触媒を用いることが好ましい。適当には、反応混合物を還流し、次いで冷却し、ろ過し、減圧下で濃縮する。
【0032】
式(VI)の化合物は、適当には、例えば、米国特許第5382600号明細書等の当業界で公知である、6−メチル−4−フェニル−クロマン−2−オンから製造することができる。通常は、水素化ホウ素ナトリウムを6−メチル−4−フェニル−クロマン−2−オンに加え、撹拌する。次いで、反応混合物を適当には酢酸等の有機酸で処理し、次いで減圧下で濃縮し、式(VI)の化合物を得る。
【0033】
式(V)及び(VI)の中間体化合物は、それ自体が新規化合物であり、これらの新規な中間体は、本発明の更なる態様を形成する。
【0034】
本発明によって提供されるトルテロジンは、抗コリン作動薬として用いるのに適しており、本明細書に実質的に開示されるように、本発明によって提供されるトルテロジン、及び医薬として許容される担体、希釈剤及び賦形剤を含有する医薬組成物が、本発明によって提供される。本発明によれば、承認された製薬手順に従い、適当な組成物は、経口投与使用、注射等であり得る。このような医薬組成物は、本明細書に開示されたように、本発明によって実質的に提供されるように、当業界において公知である、適合性の医薬として許容される担体材料、又は希釈剤と共同してトルテロジンを含有する。前記担体は、水、ゼラチン、ゴム、アラビアガム、乳糖、微結晶性セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石粉、コロイド状二酸化ケイ素等の、経腸、経皮、非経口投与に適した、有機又は無機の不活性材料であってよい。また、このような組成物は、他の薬学的に活性成分、及び安定剤、湿潤剤、乳化剤、香料、緩衝液等の通常の添加剤を含んでいてもよい。
【0035】
本発明の組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末、シロップ、エリキシル剤等の経口投与のための固体又は液体状、非経口投与のための無菌溶液、懸濁液又はエマルジョンの形態に製造され得る。
また、本明細書に開示されるように、本発明によって治療に用いられるためのトルテロジンが実質的に提供される。前記化合物及び本発明の組成物は、コリン作動性疾患、特に尿失禁の治療に有用である。
【0036】
従って、更に、本明細書に開示されるように、本発明によって提供されるように、治療的に有効な量のトルテロジンを患者に投与することを含む、コリン作動薬の投与による状態の治療、予防、改善又は除去方法が提供される。特に、本明細書に開示されるように、本発明によって提供されるように、このような方法は、トルテロジンの投与による尿失禁の治療を含む。また、本発明によって提供されるように、尿失禁の治療のための医薬の製造におけるトルテロジンの使用が、本発明によって提供される。公知のように、投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、治療すべき健康状態の重症度等のいくつかの因子に依存する。例えば、毎日の投与量は、体重1キロあたり、約0.05mg〜約4mgであり、例えば、それぞれ約0.05〜約200mgを含む投与量を1回以上投与する。
本発明は、いかなる形であれ、本発明の範囲を制限しない、以下の中間体及び実施例によって更に特定される。
【0037】
(中間体)
(中間体1)
(6−メチル−4−フェニル−クロマン−2−オンの合成)
桂皮酸(100グラム)及びp−クレゾール(76.6mg)を、窒素雰囲気下で、汚れていない、乾燥したフラスコに入れ、撹拌した。濃硫酸をゆっくりと入れ、反応混合物を125℃〜130℃に6時間加熱した。反応完了後、混合物を約60℃に冷却し、約50mlの水及び約300mlのトルエンを撹拌しながら入れた。層を分離した。トルエン層を、炭酸水素ナトリウムの水飽和溶液及び水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、50℃未満の温度で減圧下で濃縮した。残渣を2×100mlのIPAで分離した。残渣を200mlのイソプロパノールに溶解し、5℃に冷却し、2時間撹拌した。得られた固体をろ過し、約60℃で4〜5時間乾燥し、約135〜137グラムの表題の生成物を得た。
【0038】
(中間体2)
(2−(3−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオン酸メチルエステルの合成)
アセトン(200ml)及びメタノール(200ml)を乾燥フラスコに入れ、100グラムの中間体1を撹拌しながら入れた。71グラムの炭酸カリウム及び66mlの硫酸ジメチルを入れ、反応混合物を約50℃〜55℃に24時間加熱した。反応の完了後、反応塊を室温に冷却し、無機物をろ過した。透明なろ液を減圧下で濃縮し、油状の残渣を得た。該残渣を塩化メチレンに溶解し、有機層を水で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、表題の化合物を油状として得た(117〜119グラム)。
【0039】
(中間体3)
(3−(2−メトキシ−5−メチル−フェニル)−3−フェニル−プロパン−1−オールの合成)
THF(200ml)及び16gの水素化ホウ素ナトリウムを、汚れていない、乾燥したフラスコに窒素雰囲気下で入れた。混合物を約−10℃に冷却し、250mlのテトラヒドロフランに溶解した100グラムの中間体2を、0℃〜−10℃の範囲の温度で2〜3時間かけてゆっくりと加えた。72mlの三フッ化ホウ素エーテルをゆっくりと3時間以上かけて入れ、0℃〜5℃の温度に維持した。添加の完了後、温度をゆっくりと25℃〜30℃に上昇させ、反応塊を2時間撹拌した。反応完了後、反応混合物を約5℃に冷却し、3M塩酸をゆっくりと加え、1〜3の間のpHに調整した。反応混合物をろ過した。透明な濾液を減圧下で濃縮し、表題の化合物を油状として得た(95グラム9.
【0040】
(中間体4)
(トルエン−4−スルホン酸−3−(2−メトキシ−5−メチル−フェニル)−3−フェニルプロピルエステルの合成)
MDC(200ml)及び中間体3(100グラム)を、汚れていない、乾燥したフラスコに窒素雰囲気下で加え、撹拌した。175mlのTEAを加え、反応混合物を約−5℃に冷却した。−5℃〜0℃で、500mlのMDC中の190グラムのp−トルエンスルホニルクロライドの溶液をゆっくりと2時間以上かけて入れた。反応混合物を3時間撹拌した。反応の完了後、10℃未満で250mlの水を加えた。有機層を分離し、150mlの2N HClで2回、及び最後に200mlの水で3回洗浄した。有機層を乾燥し、45℃未満で減圧下で濃縮し、油を得た。該油を100mlのアセトン及び600mlのn−ヘキサンの混合物に溶解し、ゆっくりと5℃に冷却し、2時間撹拌した。固体をろ過し、50℃で減圧下で4時間乾燥し、表題の化合物を得た(135〜138グラム)。
【0041】
(中間体5)
(〔3−(2−メトキシ−5−メチル−フェニル)−3−フェニル−プロピル〕−ジイソプロピルアミンの合成)
100グラムの中間体4、及び200mlのアセトニトリル中の324mlのジイソプロピルアミンの混合物を、オートクレーブに入れ、圧力をかけて120℃〜125℃で4〜5時間加熱した。反応の完了後、反応混合物を室温に冷却し、60℃未満で減圧下で、残渣にまで濃縮した。残渣をジイソプロピルエーテルに溶解した。60mlの2N NaOHを加え、層を分離した。次いで、有機層を3N HClで抽出した。次いで、水層を4N NaOHで塩基性にし、生成物をMDCに再抽出した。次いで、有機層を乾燥し、濃縮して油を得た(65グラム)。
【0042】
(中間体6)
(2−(3−ヒドロキシ−1−フェニル−プロピル)−4−メチル−フェノール)
6−メチル−4−フェニル−クロマン−2−オン、250グラムを、1.25リットルのメタノール中で、室温で撹拌した。温度を室温に維持しながら水素化ホウ素ナトリウム70グラムをゆっくりと加えた。反応混合物を18時間撹拌した。反応の完了後、酢酸を用いて、反応塊のpHをpH5に調整した。反応混合物を減圧下で濃縮し、2リットルの水を加えた。反応塊を30分間撹拌し、固体をろ過した。該固体を熱風炉中で55℃で20時間乾燥させた。重量248グラム。
【0043】
精製:
前述のようにして調製した粗製の中間体1を、700mlのトルエンに溶解し、85℃〜87℃に加熱した。透明な溶液を、徐々に室温に冷却し、30分間撹拌した。固体をろ過し、トルエンで洗浄した。該固体を熱風炉中で55℃〜60℃で乾燥させた。収量:222グラム、Mp(117〜119℃)
【0044】
(中間体7)
(3−(2−ベンジルオキシ−5−メチル−フェニル)−3−フェニル−プロパン−1−オール)
中間体6(75グラム)を750mlのアセトンに溶解した。無水炭酸カリウム(170グラム)及びヨウ化カリウム(0.75グラム)を加えた。60mlの塩化ベンジルをゆっくりと加え、反応混合物を42時間還流した。反応塊を室温に冷却してろ過した。真空下、アセトンを濃縮した。N−ヘキサン300mlを該オイルに加え、20℃で1時間撹拌した。生成物をろ過し、固体を熱風炉中で50℃〜55℃で3時間乾燥した。収量:102グラム(mp69〜71℃)
【0045】
(中間体8)
(トルエン−4−スルホン酸−3−(2−ベンジルオキシ−5−メチル−フェニル)−3−フェニルプロピルエステル)
中間体7(50グラム)を300mlの塩化メチレンに溶解した。トリエチルアミン(45.6グラム)を加えた。反応混合物を5℃に冷却し、140mlの塩化メチレンに溶解した34.3グラムのp−トルエンスルホニルクロライドを、ゆっくりと加え、反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を100mlの水で急冷した。有機層を分離し、75mlの2N HClで洗浄した。有機層を5%炭酸水素ナトリウム溶液を用いて中性pHになるまで洗浄した。塩化メチレン層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して油を得た。収量:73グラム。
【0046】
(中間体9)
(〔3−(2−ベンジルオキシ−5−メチル−フェニル)−3−フェニル−プロピル〕−ジイソプロピルアミン)
中間体8(50グラム)をアセトニトリル(150ml)に溶解した。ジイソプロピルアミン(150グラム)を加え、反応塊をオートクレーブ中で100℃〜120℃で4時間加熱した。塊を室温に冷却し、減圧下で濃縮してアセトニトリルを除去し、200mlのトルエン及び150mlの水を加えた。有機層を分離し、水で洗浄し、濃縮して油を得た。収率:38グラム。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
(〔3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニル−プロピル〕−ジイソプロピルアミン(ラセミ体のトルテロジン遊離塩基))
中間体5(100グラム)及び107グラムのピリジンHClを、窒素雰囲気下に2リットルのRBフラスコに入れた。混合物をゆっくりと2時間かけて約210℃の温度に加熱し、この温度に1.5時間維持した。反応混合物を約120℃に冷却し、100mlのジメチルホルムアミドをゆっくりと加えた。反応混合物を更に約70℃に冷却し、500mlの氷水中で急冷した。混合物を約5℃で更に3時間撹拌した。沈殿した固体をろ過し、冷水で洗浄し、標題生成物を塩酸塩として得た。
【0048】
粗製の塩を水に溶解し、アンモニア水を用いて塩基性にし、ラセミ体のトルテロジン塩基をn−ヘキサンに抽出した。ヘキサン層を分離し、乾燥し、約200mlの容積に濃縮した。透明な溶液を0℃〜5℃に冷却し、3時間撹拌した。沈殿した固体をろ過し、減圧下、40℃で乾燥し、ラセミ体のトルテロジン塩基を80グラム得た(HPLC:純度約99%)。
【0049】
(実施例2)
[3−(2−ヒドロキシ−5メチルフェニル)−3−フェニルプロピル]−ジイソプロピルアミンの精製(ラセミ体トルテロジン遊離塩基)
実施例1に従って得られた粗精の塩基(80グラム)を、150mlのn−ヘキサンに、約50℃で溶解した。該透明溶液を、0℃〜5℃に3時間冷却し、かつ該沈殿固体を濾過し、乾燥して、70グラムの純粋ラセミ体トルテロジン塩基を得た(HPLC > 99.8%)。
【0050】
(実施例3)
S(+)2−(ジイソプロピルアミノ−1−フェニル−プロピル)−4−メチルフェノール酒石酸塩((+)酒石酸トルテロジン)
実施例2に従って得られた純粋なラセミ体トルテロジン遊離塩基(70グラム)を、400mlアルコールに溶解した。L(+)酒石酸45グラムを加え、該混合液を、50℃に30分間加熱し、室温に冷却して、2時間撹拌した。該混合液を、10℃にさらに冷却し、1時間撹拌した。該沈殿固体を濾過し、乾燥して、75グラムの(+)酒石酸トルテロジンを得た。
【0051】
(実施例4)
中間体9(35グラム)を、150mlのメタノールに溶解した。10%パラジウム炭素触媒(3.5グラム)を加え、該反応塊を、オートクレーブ中、水素の50psi圧力下、50℃で3時間、水素化した。反応完了後に、該触媒を濾過し、該透明ろ液を減圧下で濃縮して、油を得た。残渣を100mlのn−ヘキサンに溶解した。該透明溶液を、0℃に冷却し、3時間撹拌した。該沈殿固体を濾過し、減圧下、室温で乾燥して、ラセミ体トルテロジン塩基を得た。該塩基を、200mlのエタノールに溶解し、L(+)酒石酸を加えた。該反応混合物を、2時間還流し、25℃に冷却し、2時間撹拌した。該生成物を濾過し、減圧下、60℃で乾燥し、(+)酒石酸トルテロジンを得た。
【0052】
(実施例5)
本発明によって提供されるように、酒石酸トルテロジンと関連する二量体不純物を、本明細書に実質的に開示したように、以下のHPCL法により測定し、本発明によって製造された酒石酸トルテロジンについて、約0.1%未満の二量体不純物レベルが測定された。
【0053】
解析は、以下の表に示すような勾配法(移動層は、溶液A:O−リン酸を含む0.05M KH2PO4緩衝液、3.5に調製されたpH、及び溶液B:アセトニトリルを含有する)を用いて、215nmにおけるU.V.検出器、及び0.5μmサイズの粒子を有する25cm×4.6mmのInertsil C18カラムを備えた、島津製作所H2010A上で25℃で行った。流量は1.0ml/分に維持した。
【0054】
【表1】

【0055】
不純物の相対保持時間
デス−イソプロピルトルテロジン: 0.68
二量体2: 1.43
二量体1: 2.39


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基。
【請求項2】
約0.2%未満の二量体不純物を含む、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基。
【請求項3】
二量体不純物が、下記不純物の1種又は両方を含む、請求項2記載のトルテロジン:
【化1】

【化2】


【請求項4】
式(II)の保護された中間体を脱保護することを含む、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基の製造方法であって、
【化3】

溶媒は、更に脱保護して得られる反応塊に存在し、実質的に移動可能な反応塊が70〜100℃の範囲の温度で達成されるように選択される、前記方法。
【請求項5】
前記脱保護が、ピリジン塩酸塩を用いる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記脱保護が、不活性雰囲気下で200〜220℃の範囲の温度で行われる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記脱保護に加えて、前記反応塊が110〜130℃の範囲の温度に冷却され、そこに前記溶媒が添加される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒がジメチルホルムアミドである、請求項4〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
得られた粗製のラセミ体トルテロジンの塩酸塩を塩基性にし、得られたラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を抽出し、沈殿させて結晶のラセミ体トルテロジン遊離塩基を得る、請求項4〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
約0.2%未満の二量体不純物を含む、結晶形態における、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を得るための精製工程を更に含む、請求項4〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
更に、得られたラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を分割することを含み、約0.1%未満の二量体不純物を含む(+)酒石酸トルテロジンを得る、請求項4〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記二量体不純物が、下記不純物の1種又は両方を含む、請求項10又は11記載の方法:
【化4】

【化5】


【請求項13】
請求項4〜10のいずれか1項記載の方法によって製造された、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基。
【請求項14】
請求項11記載の方法によって製造された、(+)酒石酸トルテロジン。
【請求項15】
結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基の製造方法であって、式(III)のベンジル保護中間体を脱保護することを含む、前記方法:
【化6】

(式中、Raは置換されていないベンジル、又は置換ベンジル保護基を表す。)。
【請求項16】
得られたラセミ体のトルテロジンの遊離塩基を分割して、約0.1%未満の二量体不純物を含む(+)酒石酸トルテロジンを得る、請求項15記載の方法。
【請求項17】
Raが置換されていないベンジルを表わす、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
式(III)の中間体化合物が、ジイソプロピルアミンを式(IV)の中間化合物と反応させることにより製造される、請求項15〜17のいずれか1項記載の方法:
【化7】

(式中、Raは、請求項15で定義された通りであり、Xは脱離基である。)。
【請求項19】
Xがアリールスルホニルオキシを表す、請求項18記載の方法。
【請求項20】
Xがトシレート基を表す、請求項19記載の方法。
【請求項21】
式(IV)の中間体化合物が、式(V)の中間体化合物から製造される、請求項18〜20のいずれか1項記載の方法:
【化8】

(式中、Raは請求項16で定義された通りである。)。
【請求項22】
式(V)の化合物が、式(VI)の中間体化合物のRa基の導入による保護によって製造された、請求項21記載の方法:
【化9】

(式中、Raは請求項15で定義された通りである。)。
【請求項23】
式(VI)の化合物が、6−メチル−4−フェニル−クロマン−2−オンから製造された、請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項15、又は17〜23のいずれか1項記載の方法によって製造された、結晶形態である、ラセミ体のトルテロジンの遊離塩基。
【請求項25】
請求項16記載の方法によって製造された、(+)酒石酸トルテロジン。
【請求項26】
式(V)の中間体化合物:
【化10】

(式中、Raは置換されていないベンジル、又は置換ベンジル保護基を表す。)。
【請求項27】
Raが置換されていないベンジルを表わす、請求項26記載の式(V)の中間体。
【請求項28】
式(VI)の中間体化合物:
【化10】


【請求項29】
請求項1〜3、13、14、24又は25のいずれか1項記載のトルテロジンと、医薬として許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項30】
治療に用いられる、請求項1〜3、13、14、24又は25のいずれか1項記載のトルテロジン。
【請求項31】
治療的に有効な量の、請求項1〜3、13、14、24又は25のいずれか1項記載のトルテロジンを患者に投与することを含む、抗コリン作動薬の投与による状態の治療、予防、改善又は除去方法。
【請求項32】
尿失禁の治療のための、請求項31記載の方法。
【請求項33】
尿失禁の治療のための医薬の製造における、請求項1〜3、13、14、24又は25のいずれか1項記載のトルテロジンの使用。


【公表番号】特表2007−517009(P2007−517009A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546322(P2006−546322)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005420
【国際公開番号】WO2005/061432
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(501312451)シプラ・リミテッド (56)
【Fターム(参考)】