説明

トレイ搬送システム

【課題】板状ワークの搬送システムにおいて、カセットを用いる場合は多量搬送が可能であるが、個別搬送への対応に際して搬送効率を低下させることになり、一方、板状ワーク自体、もしくはトレイで保護して搬送する場合は、全体の搬送効率を上げることができない。
【解決手段】一つのストッカ4と、このストッカ4に対応して設けられる複数の処理装置3と、各処理装置3毎に対応して設けられるバッファステーション5A・5Bと、を備え、ストッカ4と各バッファステーション5A・5Bとの間は、トレイ2の積層体10が搬送されるバルク搬送区間とし、各バッファステーション5A・5Bと各処理装置3との間は、トレイ2が搬送される枚葉搬送区間とし、バッファステーション5Aには段ばらし装置8Aを設け、バッファステーション5Bには段積み装置5Bを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶ディスプレイ用板ガラス等の板状ワークを搬送する搬送システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハや液晶ディスプレイ用ガラス板等の板状ワークを搬送する搬送システムの技術は公知である。
このような搬送システムにおいて、板状ワークの搬送は、板状ワークを多数同時に収容可能なカセットに収容した状態で行なわれている。そして、搬送効率の向上を実現している。
【0003】
一方、板状ワーク自体を搬送経路に沿って搬送する技術も知られている。
【特許文献1】特開2004−168484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板状ワークが多数段収容されるカセットを用いる場合、板状ワークの多量搬送には適しているが、搬送経路の途上で個々の板状ワークの搬送先が異なる場合など、個別搬送が必要とされる場合には、却って非効率となる。例えば、同じ搬送先の板状ワークがカセットの収容数に揃うまで、搬送を待機させたり、板状ワークの収容数に満たないカセットを搬送経路上に供給するなどして、余分のカセットが必要となったりする。
このような不具合は、特許文献1に開示される技術のように、板状ワーク自体もしくは板状ワークを収容するトレイのみを搬送するシステムとすると解決するが、この場合、多量搬送ができないので、搬送効率の低下を招いてしまう。
【0005】
つまり、解決しようとする問題点は、板状ワークの搬送システムにおいて、カセットを用いる場合は多量搬送が可能であるが、個別搬送への対応に際して搬送効率を低下させることになり、一方、板状ワーク自体、もしくはトレイで保護して搬送する場合は、全体の搬送効率を上げることができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、
板状ワークを載置して搬送するトレイを一つずつ搬送する枚葉搬送区間と、
前記トレイを複数段積み重ねてなる積層体を搬送するバルク搬送区間と、
を設けるものである。
【0008】
請求項2においては、
前記枚葉搬送区間から前記バルク搬送区間への接続部に、前記トレイの段積み装置を設け、
前記バルク搬送区間から前記枚葉搬送区間への接続部に、前記積層体の段ばらし装置を設けるものである。
【0009】
請求項3においては、
一つのストッカと、
このストッカに対応して設けられる複数の処理装置と、
前記各処理装置毎に対応して設けられるバッファステーションと、を備え、
前記ストッカと前記各バッファステーションとの間は、前記積層体が搬送される前記バルク搬送区間とし、
前記各バッファステーションと前記各処理装置との間は、前記トレイが搬送される枚葉搬送区間とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、
板状ワークの多量搬送ができて搬送効率が高められると共に、板状ワークの個別搬送にも搬送効率を損なうことなく対応でき、全体の搬送効率が高められる。
【0012】
請求項2においては、
枚葉搬送区間とバルク搬送区間との搬送の接続が良好で、板状ワークの搬送効率の高い搬送システムが実現される。
【0013】
請求項3においては、
したがって、複数の処理装置に対してサービスするストッカの搬送を、効率的に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のトレイ搬送システムの実施の形態を、図面を用いて説明する。
このトレイ搬送システムは、例えば、板状ワークに加工処理を施す工場内において、工場内に備える処理装置間や、処理装置と一時保管装置との間で、板状ワークを搬送するシステムである。
搬送対象となる板状ワークは、液晶ディスプレイ用板ガラスや有機EL用の樹脂板、半導体ウエハなど、板状の被加工物であれば、特に限定するものではない。
【0015】
図1、図2を用いて、本実施の形態に適用される板状ワーク1およびトレイ2を説明する。
まず、図1(a)に示すように、加工対象となる板状ワーク1は、厚さが薄い板状部材である。このような板状ワークは、液晶ディスプレイ用板ガラスの場合、縦横が1〜2m程度で、厚さが1mm程度のものである。
【0016】
図1(b)に示すトレイ2は、板状ワーク1を載置して搬送し、板状ワーク1と搬送手段との直接接触を防止する、板状ワーク1の搬送保護手段である。
図1(c)に示すように、板状ワーク1の板面(面積最大の面)が水平方向となる姿勢で、トレイ2上に板状ワーク1が載置される。
また、図2に示すように、トレイ2は積み重ねることで、一体的な積層体10を構成することが可能に構成されている。
【0017】
このため、トレイ2には、板状ワーク1の載置に関連して、板状ワーク1の載置部、載置された板状ワーク1の水平方向の脱落防止部、トレイ2より移載用フォークにより板状ワーク1を取り出し可能とする構成、が備えられている。
また、トレイ2には、積層体10の形成に関連して、積層されたトレイ2同士の水平方向の脱落防止部、積層体10の内部に移載用フォークを挿入して、そのフォークより上層のトレイ2群をすくい上げ可能とする構成、トレイ2の両側面をチャック装置により挟持可能とする係合部、が備えられている。
【0018】
トレイ2は、概略的には、六面を有する箱体の一面を開放した形状をしており、前記開放された面に対抗する位置の一つの板状部分と、この板状部分の四周を囲う四つの板状部分と、からなっている。
前記一つの板状部分は、前記載置部となる載置板部2aである。前記四つの板状部分は、前記脱落防止部となる部位であり、互いに対向する一対の第一ガイド2b・2bと、同じく互いに対向する一対の第二ガイド2c・2cと、からなる。
また、板状ワーク1は、載置板部2a上に直接ではなく、載置板部2a上に立設された多数の支持体2d上に支持される。一方、第二ガイド2cには、移載装置のフォークを、支持体2d上の板状ワーク1の下方に挿入可能とする縦幅および横幅の開口2eが形成されている。これらの支持体2dおよび開口2eにより、板状ワーク1を取り出し可能とする前記構成が構成される。
【0019】
また、第一ガイド2bの上面に係合凸部2f・2fが形成されると共に、これらの係合凸部2fに対応する位置(平面視重複する位置)に、載置板部2aの下面より内側に向けて係合凹部2g・2gが形成されている。これらの係合凸部2fおよび係合凹部2gにより、前記脱落防止部が構成される。
また、第一ガイド2bの上面(つまり直上にあるトレイ2の下面)と、支持体2d上の板状ワーク1の上面との高さ幅は、移載装置のフォークを挿入可能とする幅に設定されている。つまり、適宜設定された支持体2dおよび第一ガイド2bにより、フォークより上層のトレイ2群をすくい上げ可能とする前記構成が構成されている。そして、積層体内に前記フォークを挿入してすくい上げることで、前記積層体が、このフォークに支持される上層のトレイ群と、このフォークより下に位置する下層のトレイ群とに、分離される。なお、前記開口2eは、トレイ2の側面視において、板状ワーク1の下面より下方まで形成されているため、当然板状ワーク1の上面も開放される。
また、各第一ガイド2bの外側面には、前記係合部として、係合凹部2h・2hが形成されている。
【0020】
図3を用いて、トレイ搬送システムを説明する。
板状ワーク1の加工工場など、板状ワーク1が搬送対象物とされる設備には、板状ワーク1の搬送システムが備えられている。
本発明のトレイ搬送システムは、板状ワーク1の搬送システムにおいて、板状ワークの搬送の一部を、トレイ2を用いて行なうものとしたシステムである。
特に、トレイ搬送システムには、三通りの搬送形態があり、板状ワーク1自体を搬送するワーク搬送と、板状ワーク1をトレイ2に載置した状態で搬送する枚葉搬送およびバルク搬送と、がある。
【0021】
図1(a)に示すように、板状ワーク1自体を、コンベア等の搬送手段により搬送する場合が、ワーク搬送である。
図1(c)に示すように、板状ワーク1が載置されたトレイ2を単体で、コンベア等の搬送手段により搬送する場合が、枚葉搬送である。
また、図2に示すように、板状ワーク1が載置されたトレイ2を積み重ねてなる積層体10を、コンベア等の搬送手段により搬送する場合が、バルク搬送である。
【0022】
トレイ搬送システムは、板状ワーク1の載置されたトレイ2(実トレイ)と、板状ワーク1の載置されないトレイ2(空トレイ)とを、共に搬送可能とするものであるが、以下においては、説明において必要のある場合を除き、実トレイと空トレイとを区別することなく用いるものとする。
【0023】
図3に戻って、前記三通りの搬送の役割を説明する。
トレイ搬送システムにおいて、板状ワーク1の搬送は、主として、トレイ2を利用した搬送である枚葉搬送およびバルク搬送により、行なわれる。
ここで、ワーク搬送は、主として、板状ワーク1の処理装置3の内部や、この処理装置3への板状ワーク1の受渡部において、行なわれるものである。つまり、単体の板状ワーク1が必要とされる処理装置3内およびその周辺部を別として、板状ワーク1の搬送は、トレイ2に保護された状態で行なわれるものである。
【0024】
一方、枚葉搬送およびバルク搬送の使い分けは、板状ワーク1の搬送先の状況に応じて、行なわれるものである。
バルク搬送は、一度に多量(積層している段数分)の板状ワーク1を搬送することができ、枚葉搬送に比較して搬送効率上有利である。そこで、搬送元より同一の搬送先に向けて板状ワーク1の搬送を行なう場合、バルク搬送が利用される。
ところが、バルク搬送で送り出しても、板状ワーク1の搬送元と搬送先との間で、滞留が発生するような場合や、一部の板状ワーク1の搬送先が、主たる搬送先より分岐する場合など、バルク搬送が非効率となる場合がある。このような場合は、枚葉搬送が利用される。
【0025】
例えば、積層体10が収容されるストッカ(保管装置)4より、処理装置3に向けて板状ワーク1を搬送する場合、処理装置3においては一枚ずつ板状ワーク1の処理が行なわれるため、滞留が発生する。そこで、ストッカ4から処理装置3に至る搬送経路の途上で、バルク搬送が枚葉搬送に変更され、処理装置3の手前でワーク搬送に変更されることになる。
また、処理装置3で不良品が発生した場合などは、その不良品の板状ワーク1は、正常品の板状ワーク1の搬送経路とは異なる経路で、検査装置等に搬送されることになる。この場合、正常品の板状ワーク1の搬送経路が主たる搬送経路であり、不良品の搬送経路は、例外的な搬送経路である。このような例外的な搬送経路を辿る板状ワーク1は相対的に少ないため、バルク搬送で搬送すると却って非効率であるので、この板状ワーク1のみが枚葉搬送で個別に搬送されることになる。
【0026】
トレイ2や積層体10の搬送は、コンベア、搬送台車、スタッカークレーン(特に積層体)等の搬送装置により行なわれる。これらの搬送装置は、トレイの搬送と、積層体の搬送とにおいて、荷重制限等の制限を別として、基本的に共用可能である。
これらの搬送装置間におけるトレイ2や積層体10の受渡は、搬送装置間で直接受渡ができない場合は、移載装置により行なわれる。
【0027】
前記搬送台車には、フォーク式の移載装置が備えられており、このフォーク式の移載装置は、トレイや積層体をすくい上げるフォークを上下方向及び水平方向で駆動可能とするものである。
また、スタッカークレーンは、トレイや積層体をすくい上げるフォークを、上下方向および水平方向に移動自在に構成した装置であり、フォーク式の移載装置を備える構成である。
したがって、前記搬送台車やスタッカークレーンと、他の搬送装置と、の間においては、トレイや積層体の受渡は、移載装置を別設することなく可能である。
また、一対のコンベア間などにおいては、両コンベアの接続部で、トレイや積層体の受渡ができない場合は、移載装置を別設して行なうものとする。
【0028】
板状ワーク1自体の搬送に関しても、トレイ2や積層体10の搬送装置と同様に、コンベア、搬送台車、スタッカークレーンを用いることが可能であるが、コンベアによる搬送が望ましい。
コンベアは、多数の板状ワークを同時に多数搬送することが可能であるので、前記処理装置3の内部において、順次連続的に板状ワーク1に処理を施すことができる。このような理由で、板状ワーク1自体の搬送装置はコンベアが望ましい。
【0029】
図3に示すように、トレイ搬送システムが対象とする搬送領域は、三つに大別される搬送領域と、これらの搬送領域の接続部と、からなる。
三つに大別される搬送領域とは、バルク搬送が行なわれるバルク搬送領域、枚葉搬送が行なわれる枚葉搬送領域、ワーク搬送が行なわれるワーク搬送領域、である。
また、前記搬送領域の接続部とは、枚葉搬送とバルク搬送との接続部であるバルク枚葉接続部と、ワーク搬送と枚葉搬送との接続部であるトレイワーク接続部である。
【0030】
トレイワーク接続部では、実トレイからの板状ワーク2の取り出しや、空トレイへの板状ワーク1の取り入れ、が行なわれる。
同じく、バルク枚葉接続部では、トレイ2を積み重ねて積層体10を形成したり(段積み)、積層体10よりトレイ2を取り出して積層体10の一部もしくは全部を崩したり(段ばらし)、することが行なわれる。
なお、本実施の形態では、図1、図2に示すトレイ2の構造上、積層体10中の各トレイ2より板状ワーク1を取り出すことができないため、ワーク搬送とバルク搬送とが、直接接続されることはない。
【0031】
前記バルク枚葉接続部には、積層体を一時保管するためのバッファステーション5が備えられている。
このバッファステーション5には、トレイ2を積み重ねて積層体10を形成する段積み装置または、積層体10よりトレイ2を取り出して積層体10を崩す段ばらし装置が、備えられている。
図1、図2に示すトレイ2や積層体10の構造により、汎用の段積み装置や段ばらし装置を利用して、このバッファステーション5に備える段積み装置や段ばらし装置を構成することが可能である。
そして、バッファステーション5において、バルク搬送により搬入された積層体よりトレイ2を取り出して枚葉搬送で搬出したり、枚葉搬送で搬入されたトレイ2をバルク搬送で搬出する積層体の一部に加えたりする。
【0032】
前記トレイワーク接続部には、トレイ2を一時保管するための出入ステーション6が備えられている。
この出入ステーション6には、実トレイより板状ワーク1を取り出したり、空トレイに板状ワーク1を取り入れるための移載装置が、備えられている。
この移載装置は、前記フォーク式の移載装置でも、ベルヌーイ効果を利用した空圧式非接触の移載装置であってもよい。
【0033】
前記バルク搬送領域内には、バルク搬送が行なわれるバルク搬送区間が、少なくとも一つ設けられている。このバルク搬送区間は、積層体の搬送元と搬送先とを結ぶ区間として設定されるものである。
積層体10の搬送元や搬送先に相当するのは、バルク搬送領域内に配置されるストッカ4や、前記バルク枚葉接続部に配置されるバッファステーション5である。つまり、これらのストッカ4・4間や、ストッカ4とバッファステーション5を結ぶ区間は、バルク搬送区間である。
また、二つのバッファステーション5・5間が、積層体10の搬送装置により接続される場合は、これらのバッファステーション5・5間を結ぶ区間も、バルク搬送区間となる。
【0034】
前記枚葉搬送領域内には、枚葉搬送が行なわれる枚葉搬送区間が、少なくとも一つ設けられている。この枚葉搬送区間は、トレイ2の搬送元と搬送先とを結ぶ区間として設定されるものである。
トレイ2の搬送元や搬送先に相当するのは、前記バルク枚葉接続部に配置されるバッファステーション5や、前記トレイワーク接続部に配置される出入ステーション6である。つまり、バッファステーション5と出入ステーション6とを結ぶ区間は、枚葉搬送区間である。
また、二つの出入ステーション6・6間が、トレイ2の搬送装置により接続される場合は、これらの出入ステーション6・6間を結ぶ区間も、枚葉搬送区間である。特に、ある出入ステーション6において実トレイより取り出された板状ワーク1の移動先(ワーク搬送による移動先)が、別の出入ステーション6である場合、両出入ステーション6・6を接続して、その接続経路に沿って空トレイを搬送すると、トレイ2を効率的に活用することが可能である。
【0035】
前記ワーク搬送領域内には、ワーク搬送が行なわれるワーク搬送区間が、少なくとも一つ設けられている。このワーク搬送区間は、板状ワーク1の搬送元と搬送先とを結ぶ区間として設定されるものである。
板状ワーク1の搬送元や搬送先に相当するのは、ワーク搬送領域内に配置される処理装置3や、前記トレイワーク接続部に配置される出入ステーション6である。つまり、出入ステーション6と処理装置3とを結ぶ区間や、処理装置3・3間を結ぶ区間は、ワーク搬送区間である。
【0036】
次に、図4を用いて、トレイ搬送システムの一実施例であるエリア搬送システム21を説明する。
図4には、板状ワーク1の加工処理が行なわれる工場内の一部、一つのストッカ4を中心に設定される単位エリア20を示している。
この単位エリア20内には、一つのストッカ4と、二つの処理装置3と、が備えられている。
【0037】
各処理装置3には、トレイの搬入側と搬出側とにそれぞれ対応するように、バッファステーション5と、出入ステーション6とが、一対ずつ設けられている。
特に、搬入側と搬出側とを区別する必要がある場合には、搬入側のバッファステーションの符号を5Aとし、搬出側のバッファステーションの符号を5Bとする。同じく、搬入側の出入ステーションの符号を6Aとし、搬出側の出入ステーションの符号を6Bとする。
【0038】
単位エリア20内には、次のような搬送経路が構成されている。
まず、ストッカ4の出庫口4aより出て、同じストッカ4の入庫口4bに戻る搬送経路であり、この搬送経路に沿って積層体10を搬送する装置がコンベア11である。
また、コンベア11の搬送経路上には、各処理装置3毎に、一対のバッファステーション5・5が直列に接続されている。そして、各処理装置3毎において、バッファステーション5Aより出入ステーション6Aに至る実トレイの搬送経路(コンベア12A)と、出入ステーション6Aから、その処理装置3の内部を経て出入ステーション6Bに至る板状ワークの搬送経路(コンベア13)と、出入ステーション6Bよりバッファステーション5Bに至る実トレイの搬送経路(コンベア12B)と、出入ステーション6Aから出入ステーション6Bに至る空トレイの搬送経路(コンベア12C)と、が形成されている。
なお、前記括弧書きは、各搬送経路に対応する搬送装置を示すものである。
【0039】
ストッカ4には、積層体10を多数収容可能とするラック部41と、前記出庫口4aや入庫口4bとラック部41との間で積層体10を移載するスタッカークレーン42と、が備えられている。
【0040】
搬入側のバッファステーション5Aには、積層体10よりトレイ2を取り出す段ばらし装置8Aが備えられている。
また、搬出側のバッファステーション5Bには、トレイ2を積み重ねて積層体10を形成する段積み装置8Bが備えられている。
【0041】
搬入側の出入ステーション6Aには、実のトレイ2より板状ワーク1を取り出すワーク移載装置9が備えられている。
搬出側の出入ステーション6Bには、空のトレイ2に板状ワーク1を載置するワーク移載装置9が備えられている。
【0042】
ここで、ストッカ4から搬出された積層体10が、一つの処理装置3において、前記積層体10内の各板状ワーク1が加工処理を受けた後、再びストッカ4に戻るまでの様子について説明する。
積層体10は、ストッカ4の出庫口4aから、コンベア11により、目的の処理装置3に対応する、搬入側のバッファステーション5Aに搬送される。
このバッファステーション5Aにおいて、段ばらし装置8Aにより前記積層体10から取り出されたトレイ2は、コンベア12Aにより、同じく搬入側の出入ステーション6Aへと搬送される。
【0043】
この出入ステーション6Aにおいて、ワーク移載装置9より取り出された板状ワーク1は、コンベア13により前記処理装置3の内部を通過して、搬出側の出入ステーション6Bへと搬送される。板状ワーク3は、処理装置3の内部を搬送される際に、その処理装置3より加工処理を受ける。
一方、前記搬入側の出入ステーション6Aで、前記板状ワーク1が取り出されて残留した空のトレイ2は、コンベア12Cにより、搬出側の出入ステーション6Bへと搬送される。そして、この出入ステーション6Bにおいて、コンベア12Cにより搬送された空のトレイ2に、コンベア13により搬送された板状ワーク1が、この出入ステーション6Bに備えるワーク移載装置9により、載置される。
【0044】
搬出側の出入ステーション6Bにある前記トレイ2は、コンベア12Bにより、同じく搬出側のバッファステーション5Bへと搬送される。
このバッファステーション5Bにおいて、段積み装置8Bにより、先に搬送されたトレイ2よりなる積層体上に、今回搬送されたトレイ2が積み重ねられて、積層体が形成される。最終的には、ストッカ4から搬出された積層体10と同じ段数の積層体が、このバッファステーション5Bで形成される。なお、段ばらし装置8Aや段積み装置8Bの構成により、同じトレイ2よりなる積層体であっても、ストッカ4からの搬出時と、ストッカ4への搬入時とで、積み方は必ずしも同一とはならない。
そして、このバッファステーション5Bにおいて、搬入時と同じ段数の積層体が形成されると、この積層体が、再びコンベア11により、ストッカ4の入庫口4bへ搬送される。
【0045】
以上のようにして、ストッカ4から搬出された積層体10が、一つの処理装置3において、前記積層体10内の各板状ワーク1が加工処理を受けた後、再びストッカ4に搬入される。
なお、以上の例では、ストッカ4より搬出された積層体10が、一つの処理装置3で加工処理を受けたのちに、他の処理装置3を経由することなく、そのまま同じストッカ4に搬入されるものとしているが、引き続いて他の処理装置3での処理を経た後、ストッカ4に戻るものとしてもよい。
【0046】
以上の例におけるエリア内搬送システム21の搬送経路は、次のように、バルク搬送区間、枚葉搬送区間、ワーク搬送区間に、分類される。
バルク搬送経路は、ストッカ4から搬入側のバッファステーション5Aに至る積層体10の搬送経路(コンベア11)、搬出側のバッファステーション5Bよりストッカ4に至る積層体10の搬送経路(コンベア11)、である。
枚葉搬送区間は、搬入側のバッファステーション5Aから同じく搬入側の出入ステーション6Aへと至るトレイ2(実トレイ)の搬送経路(コンベア12A)、搬出側の出入ステーション6Bから同じく搬出側のバッファステーション5Bへと至るトレイ2(実トレイ)の搬送経路(コンベア12B)、搬入側の出入ステーション6Aから搬出側の出入ステーション6Bへと至るトレイ2(空トレイ)の搬送経路(コンベア12C)、である。
ワーク搬送区間は、搬入側の出入ステーション6Aから搬出側の出入ステーション6Bへと至るトレイ2(空トレイ)の搬送経路(コンベア12C)、である。
【0047】
以上で説明した搬送の状況は、基本的な搬送の状況である。
これに対して、各板状ワーク1の作業工程が部分的に異なる場合や、異なる種類の板状ワークが入り混じっている場合などは、同じ積層体10に収容されている板状ワーク1の群であっても、個々の板状ワーク1の搬送先が異なる場合がある。
【0048】
例えば、ストッカ4より搬出されて一つの処理装置3へ向かう、ある積層体10において、その積層体10に収容される大部分の板状ワーク1は、その処理装置3での処理後にストッカ4へ収容されるのに対し、一部の板状ワーク1はさらに、別の処理装置3で処理を行なう必要があるような場合である。
この場合、搬送先の異なる一部の板状ワーク1は、一つの処理装置3での処理が終了した後、コンベア12等を経由する通常の搬送経路を経ることなく、その処理装置3に対応する出入ステーション6Bで、例えば搬送台車7に移載されて、直接、他の処理装置3に対応する出入ステーション6Aへと搬送される。
多数の板状ワークを収容可能とする一体物のカセットの場合は、このような個別搬送への対応性が低いものであるが、トレイ2による個別搬送(枚葉搬送)と、積層体10による多量搬送(バルク搬送)とを同時に可能とすることで、個別搬送にも対応しながら搬送効率の低下を招くことがない。
【0049】
また、前記工場において、単位エリア20間での板状ワーク1の搬送は、例えば、異なる単位エリア20のそれぞれに備えるストッカ4・4同士を、コンベア22等の積層体10の搬送装置により接続することで、行なわれる。この搬送は、積層体10の搬送であるので、バルク搬送である。
また、処理装置3において、不良品の板状ワーク1が発生した場合は、その不良の板状ワーク1のみを個別に、検査装置19(図4に図示)へ搬送する。この場合、出庫側の出入ステーション6Bにおいて、不良の板状ワーク1をトレイ2に載置した後、そのトレイ2を、コンベア12等を経由する通常の搬送経路を経ることなく、例えば搬送台車7に移載して、直接検査装置19へと搬送する。この搬送台車7には、出入ステーション6Bとの間でトレイ2の移載を可能とするフォーク式の移載装置7aが搭載されている。
この搬送台車7によるトレイ2の搬送も枚葉搬送である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】板状ワークやトレイの構成を示す斜視図であり、(a)図は板状ワークを示す図、(b)図はトレイを示す図、(c)図は板状ワークが載置されたトレイを示す図である。
【図2】板状ワークが載置されたトレイを重ねてなる積層体を示す斜視図である。
【図3】トレイ搬送システムの構成を示す図である。
【図4】トレイ搬送システムの一実施例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 板状ワーク
2 トレイ
3 処理装置
4 ストッカ
5 バッファステーション
8A 段ばらし装置
8B 段積み装置
10 積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークを載置して搬送するトレイを一つずつ搬送する枚葉搬送区間と、
前記トレイを複数段積み重ねてなる積層体を搬送するバルク搬送区間と、
を設ける、
ことを特徴とするトレイ搬送システム。
【請求項2】
前記枚葉搬送区間から前記バルク搬送区間への接続部に、前記トレイの段積み装置を設け、
前記バルク搬送区間から前記枚葉搬送区間への接続部に、前記積層体の段ばらし装置を設ける、
ことを特徴とする請求項1に記載のトレイ搬送システム。
【請求項3】
一つのストッカと、
このストッカに対応して設けられる複数の処理装置と、
前記各処理装置毎に対応して設けられるバッファステーションと、を備え、
前記ストッカと前記各バッファステーションとの間は、前記積層体が搬送される前記バルク搬送区間とし、
前記各バッファステーションと前記各処理装置との間は、前記トレイが搬送される枚葉搬送区間とする、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトレイ搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−186095(P2006−186095A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377824(P2004−377824)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】