説明

トレーニング支援装置、トレーニング支援方法及びトレーニング支援装置用プログラム

【課題】バランスボールを使用するトレーニングを楽しく行うことができるようにする。
【解決手段】バランスボール1内の空気圧を計測する圧力センサ6の計測信号を送信する送信機3、利用者の動きを計測する3軸加速度センサ7の計測信号を送信する送信機4、他の利用者についての計測信号を送信する送信機5から、各計測信号が本体装置11に送信される。本体装置11では、圧力センサ6により計測されたバランスボール1の空気圧のピークに基づいて楽曲データを再生するテンポを設定し、前記圧力センサ6及び3軸加速度センサ7による計測情報を解析した結果に基づいて楽曲データの再生を制御する。利用者がバランスボール1上でバランスがとれているときは楽曲を再生し、崩れたときは再生を停止する。また、利用者の運動が安定しているときは高い品質で楽曲を再生し、安定が崩れると再生品質を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスボールなどを使ったトレーニングを支援するトレーニング支援装置、トレーニング支援方法及びトレーニング支援装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
バランスボールは、アスリートやダンサー達の筋肉トレーニング用として使われていたエクササイズ用具であり、従来の器具がアウターマッスルを鍛えるものが中心だったのに対し、インナーマッスルを鍛え、身体のバランスを整えた状態で様々な競技の技術力及び筋力を向上させるというトレーニング理論に即して使用されてきた。
近年、アスリートによるバランスボール使用の効果が認められてか、話題性からか、一般の人々によるバランスボールの購入が進み、その普及率も高まってきたが、その使用方法、エクササイズ方法がわからず、有効に使用されていない場合も多い。
【0003】
特許文献1には、演奏参加者の動きや身体状態を解析し、該解析結果に応じて演奏パラメータを制御することによって、楽曲演奏を多彩に制御することが提案されている。
また、特許文献2には、信号送信機を把持した利用者が楽音に反応して行った動作と基準信号とを比較し、目標値とのズレを示す指標値を得ることが記載されている。
【特許文献1】特開2001−195059号公報
【特許文献2】特開2003−70772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バランスボールを使用して、楽しく、継続できるエクササイズをすることが望ましい。
そこで、本出願人は、バランスボールなどのボールを使って音楽や音を鳴らすことにより、楽しくエクササイズをすることができる装置を提案している(特願2006−256649号公報)。
しかしながら、この提案されているものは、利用者の姿勢や運動量などを評価することができるものではなかった。
また、上記特許文献2に記載されたものは、目標値との差分データを算出するものであるが、該差分データは、セラピストらが数値的視覚的に確認するだけのものであり、運動中に利用者が目標値との差を認識することができるものではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、バランスボールなどを使用して楽しくトレーニングをすることができるとともに、トレーニング中に利用者自身が気がつきにくい姿勢や運動内容の評価を行い、該評価結果を音や音楽で利用者に報知することができるトレーニング支援装置、トレーニング支援方法及びトレーニング支援装置用プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のトレーニング支援装置は、利用者の運動動作に用いられる操作体の状態を計測する第1のセンサーと、利用者の運動の状態を計測する第2のセンサーと、楽曲データを再生する楽音再生手段と、前記第1のセンサー及び前記第2のセンサーからの計測信号を解析する解析手段と、前記第1のセンサーからの計測信号に基づいて楽曲の再生の進行を制御する手段と、前記解析手段の出力に応じて、前記楽曲の再生の態様を制御する再生制御手段とを有するものである。
また、前記再生制御手段は、前記解析手段により、利用者の運動量が所定量以上となったことが検出されたときに、前記楽曲の再生を開始させるものである。
さらに、前記再生制御手段は、前記解析手段により、利用者の姿勢の変動量が所定量以上となったことが検出されたときに、前記楽曲の再生を停止させるものである。
さらにまた、前記再生制御手段は、前記解析手段により、利用者の動作のばらつきが所定範囲内にあることが検出されたときに、前記楽曲の再生音のパラメータの一つ又は複数の特性量を一方の向きに制御し、利用者の動作のばらつきが前記所定範囲内にないことが検出されたときに、前記楽曲の再生音のパラメータの一つ又は複数の特性量を前記一方の向きとは逆の向きに制御するものである。
さらにまた、前記再生音のパラメータは、楽曲の演奏パラメータ又は再生音の音響パラメータとされているものである。
さらにまた、前記解析手段による解析結果とあらかじめ設定されている基準情報とを比較し、利用者に対して、その動作の変更を促す情報を報知する手段を有するものである。
【0007】
さらにまた、本発明のトレーニング支援方法は、コンピュータにより実行される方法であって、利用者の運動動作に用いられる操作体の状態を計測する第1のセンサーからの計測信号を入力する第1のステップと、利用者の運動の状態を計測する第2のセンサーからの計測信号を入力する第2のステップと、前記第1のセンサーからの計測信号及び前記第2のセンサーからの計測信号を解析する第3のステップと、前記第1のセンサーからの計測信号に基づいて楽曲の再生の進行を制御する第4のステップと、前記第3のステップの解析結果に応じて、前記楽曲の再生の態様を制御する第5のステップとを有するものである。
さらにまた、本発明のトレーニング支援装置用プログラムは、コンピュータに、利用者の運動動作に用いられる操作体の状態を計測する第1のセンサーからの計測信号を入力する第1のステップと、利用者の運動の状態を計測する第2のセンサーからの計測信号を入力する第2のステップと、前記第1のセンサーからの計測信号及び前記第2のセンサーからの計測信号を解析する第3のステップと、前記第1のセンサーからの計測信号に基づいて楽曲の再生の進行を制御する第4のステップと、前記第3のステップの解析結果に応じて、前記楽曲の再生の態様を制御する第5のステップとを実行させるものである。
【発明の効果】
【0008】
このような本発明のトレーニング支援装置、トレーニング支援方法及びトレーニング支援装置用プログラムによれば、バランスボールなどの器具を使って楽曲の演奏をコントロールすることができるため、楽しくトレーニングをすることができる。
また、姿勢が悪くバランスがとれない場合や安定した動作ができない場合に、そのことを楽曲の再生態様などで提示されるため、トレーニングを楽しく継続することができる。
さらに、バランスボールに乗ってバランスをとろうとすると、インナーマッスルが鍛えられ、日常の生活の中でも姿勢を保つのに役立つ。正しい筋肉が付いてプロポーションが良くなったり、健康で美しく姿勢がよくなれば歩き方もよくなるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明のトレーニング支援方法が実行されるトレーニング支援装置の一実施の形態の全体構成を示すブロック図である。なお、以下では、バランスボールを使用したトレーニングを支援する実施の形態について説明するが、本発明のトレーニング支援装置、トレーニング支援方法及びトレーニング支援装置用プログラムは、バランスボールに限られることはなく、トレーニングに用いられる操作体であって、それを使用してバランスをとる運動動作を行うことができる操作体を使用するトレーニングに適用することができる。
【0010】
図1において、1はバランスボールであり、塩化ビニールやゴムなどの可撓性を有する材料により構成された外皮を有する、直径が25cm〜75cm程度のものである。利用者は、バランスボール1に腰掛けたり、バランスボールに座ってジャンプしたり、バランスボールの上に乗ってバランスをとったり、バランスボールの上に腹ばいになったり、バランスボールを両手で叩いたり、両手又は両ひじで挟み込んだり、両ひざで挟み込んだり、床面にバウンドさせたりして、全身の各部位を使ったエクササイズをすることができる。
2は前記バランスボール1の内部空間に一端が接続されたチューブである。例えば、チューブ2の一端を、前記バランスボール1に空気を入れるために設けられている空気孔に挿入することで、前記バランスボール1に接続することができる。
3は前記チューブ2の他端が接続され、前記バランスボール1の内部の空気圧を計測する圧力センサー6を有する送信機である。送信機3は、圧力センサー6で前記バランスボール1内の空気圧を計測して、計測したデータを本体装置11に無線で送信する。
4は、前記バランスボール1を使用してトレーニングを行う利用者の身体、例えば、腰や腕、足などに取り付けられた3軸加速度センサー7による計測信号を本体装置11に送信する送信機である。
5は、前記バランスボール1の利用者とは別の利用者により使用されるバランスボール1’の空気圧を計測する圧力センサー8及びその利用者の動きを検出するためにその利用者の身体に取り付けられた3軸加速度センサー9の各計測信号を本体装置11に送信する送信機である。
各センサーによる計測信号を本体装置11に送信する送信機は、前記送信機3及び4のようにセンサーの種類ごとに送信機を設けるようにしてもよいし、送信機5のように、1台の送信機を用いて複数種類のセンサーからの信号を送信するようにしても良い。
なお、ここでは、複数の利用者が同時にバランスボールを使用している例を示しているが、利用者の数は一人であっても良い。
【0011】
11は本体装置であり、前記各送信機3、4及び5から送信される計測信号を受信する受信処理部13、該受信した計測信号を解析して前記バランスボール1の内部圧力のピークの検出や利用者の動きの解析や運動量の算出などの処理を行う情報解析部14及び該解析結果に基づいて楽曲の再生の態様を制御する再生制御部15を有する楽音制御部12と、前記再生制御部15から供給される演奏パラメータに応じて演奏データを制御する演奏データ制御部17及び該演奏データに基づいて楽音を生成するとともに前記再生制御部15から供給される音響パラメータに応じて効果(エフェクト)を付与して出力する音源部18を有する楽音再生部16を有している。
また、19は前記音源部18で生成された楽音を増幅するサウンドシステム、20はサウンドシステム19から出力される楽音信号を放音するスピーカーである。
前記本体装置11は、前記送信機3、4及び5から送信される信号を受信する受信機能部と楽曲再生機能を有するパーソナルコンピュータなどにより構成されており、前記受信処理部13における信号処理機能、前記情報解析部14、前記再生制御部15、前記演奏データ制御部17の各機能は、いずれもソフトウェア処理により実現されている。また、音源部18の機能はハードウエア音源で実現しても良いし、ソフトウェア処理により実現しても良い。また、図示していないが、本体装置11には、再生する楽曲の楽曲データ(MIDIデータ)を格納する記憶部が接続されている。
この実施の形態のトレーニング支援装置は、上述のような構成を有しているので、バランスボール1及び1’の空気を抜くことにより、容易に持ち運びをすることができる。
【0012】
図2の(a)は、利用者がバランスボール1を使用している様子の一例を示す図である。図示する例では、利用者はバランスボールの上に腰をかけ、体を上下させたり、あるいは、バランスボール1の上に正座や胡座をかいてじっと座ったりしてトレーニングを行う。前述のように、バランスボール1にはチューブ2が接続され、該チューブ2の先端は、送信機3内に設けられた圧力センサーに接続されている。また、利用者の身体(腰、足、腕など)には、利用者の動きを検出するための3軸加速度センサー7と該3軸加速度センサー7からの計測信号を送信する送信機4が取り付けられている。
なお、3軸加速度センサー7は利用者の身体の複数個所、例えば、腰部と両腕あるいは両足などに取り付けるようにしてもよい。
【0013】
図2の(b)は、バランスボール1の内部の空気圧を計測して送信する送信機3の内部構成を示す図である。
この図において、21は前記チューブ2の他端が接続され、前記バランスボール1と連通している受圧室、22は該受圧室21に取り付けられた圧力センサー(前記圧力センサー6と同じ)、23は圧力センサー22の計測信号を増幅するとともに、オフセットの調整や温度補償を行って出力するセンサーアンプ、24は該センサーアンプ23の出力をデジタルデータに変換するA/D変換器である。
25は、送信機3全体の制御を行う制御部であり、例えば、マイクロコンピュータで構成されている。26は、この送信機3についての各種設定を行う設定部であり、複数のバランスボール1と複数の送信機が用いられる場合等にこの送信機3を識別するための識別番号などを設定するためにも用いられる。27は前記制御部25から出力される圧力の計測信号をアンテナ28から本体装置11に送信するための無線回路部である。制御部25は、前記A/D変換器24において所定のサンプリング周期(例えば、2.5msec)ごとに出力される計測信号をそのデータ種別を示す識別情報と送信機を識別するための識別番号を付して所定のフォーマットの送信信号に変換し、前記無線回路部27に供給して前記本体装置11に送信する。
なお、無線回路部を使用せずに、本体装置11とケーブルで接続して、圧力計測信号を有線伝送するようにしてもよい。
【0014】
3軸加速度センサー7の計測信号を送信する送信機4及び圧力センサー8と3軸加速度センサー9の計測信号を送信する送信機5も、上記送信機3と同様に構成されている。ただし、送信機4の場合、加速度センサー7には、x軸、y軸及びz軸の各軸方向の加速度を検出する3個の加速度センサーが含まれており、前記図2の(b)におけるアンプ23が該3個の加速度センサーに対応して3個設けられており、該3個のアンプの出力がA/D変換器でそれぞれそれぞれ所定のサンプリング周期でA/D変換されて制御部に入力され、各計測信号の種別を示す識別情報と送信機を識別する識別番号を付して本体装置11に送信される。また、送信機5の場合には、圧力センサー8及び3軸加速度センサー9のそれぞれのセンサーごとにA/D変換器が設けられており、各A/D変換器において所定のサンプリング周期でA/D変換された計測信号が制御部に入力されて、それぞれのデータの種別を示す識別情報と送信機を識別する識別番号を付して本体装置11に送信される。
【0015】
図3は、前記本体装置11の機能構成を示す機能ブロック図である。なお、ここでは、利用者が一人であり、前記送信機3及び送信機4からの信号を受信する場合について記載している。
前記圧力センサー6で計測されたバランスボール1の空気圧の計測信号、及び、前記3軸加速度センサー7のx軸成分検出部31、y軸成分検出部32及びz軸成分検出部33からの各軸方向の加速度の計測信号(αx、αy、αz)は、前述のように送信機3、4から所定周期で送信され、受信処理部13で受信されて情報解析部14に入力される。
【0016】
情報解析部14では、各センサーからの計測信号を解析する。
すなわち、前記圧力センサー6からの計測信号については、ピーク値(拍ごとの圧力値)の検出を行い、該ピークのタイミングと大きさ、ピーク値のばらつきの有無及び変動の大きさ、一曲全部における圧力変化の総量(拍ごとの圧力値の合計値)などを算出する。
また、前記3軸加速度センサー7からの計測信号(αx、αy、αz)については、加速度の絶対値|α|(=√(αx2+αy2+αz2))の算出、|α|(ピーク値)のばらつきの有無及び変動の大きさ、|α|の単位時間当たりの積算値(運動量とする)の算出、各軸の成分(αx、αy、αz)から加速度の方向(すなわち、利用者の身体の加速度センサーを取り付けた部位の運動の方向)の検出、検出した方向のばらつきの有無及び変動の大きさなどを算出する。また、計測された加速度から速度や変位を算出するようにしてもよい。
なお、前記圧力センサー6からの計測信号を解析するときには、バランスボール1に圧力をかけないときの空気圧(静圧)を基準値として設定する。これにより、異なる径のバランスボールや静圧の異なるバランスボールについても、適正に圧力変化を検出することができる。
【0017】
再生制御部15では、前記情報解析部14における解析結果に基づいて、楽曲の再生の態様を制御する。すなわち、解析結果に応じて楽曲の演奏に係る演奏パラメータや再生音の音響に係る音響パラメータの特性量を決定し、前記楽音再生部16に供給する。
例えば、前記圧力センサー6の計測信号のピーク値のタイミングに基づいて再生する楽音のテンポを設定し、該ピーク値の大きさに基づいて再生する楽音のベロシティや音量を決定する。また、計測した空気圧や加速度の変動が所定のしきい値を超えたときなどには、再生される楽音の音量や音色を変化させるような演奏パラメータや残響特性、周波数特性などを変化させるような音響パラメータを生成して楽音再生部16に供給する。
【0018】
楽音再生部16は、MIDIデータなどの楽曲データ34を再生するものであり、前述のように、演奏データ制御部17と音源部18とを有している。
演奏データ制御部17は、前記再生制御部15から供給される演奏パラメータに応じて、楽曲データ34を変更する処理などを行うものであり、音源部18は前記演奏データ制御部17により変更されたMIDIデータに基づいて楽音を生成し、所定の効果を付与してサウンドシステム19に出力する。
例えば、前記情報解析部14による解析結果に基づいて再生している楽音のピッチを変化させる場合には、前記再生制御部15で、ピッチを変化させる演奏パラメータを生成して前記演奏データ制御部17に供給し、演奏データ制御部17では、該演奏パラメータに応じて、前記楽曲のピッチを変更するMIDIメッセージをその楽曲のMIDIデータに追加する。これにより、前記音源部18では、生成する楽音のピッチを変更し、利用者は、再生されている楽曲のピッチが変更されたことから、自己の運動の状態(基準との差が大きいか否かなど)を知ることができる。
【0019】
図4は、このように構成された本発明のトレーニング支援装置の処理の流れを示すフローチャートである。本実施の形態のトレーニング支援装置は、運動モードとバランスモードの2つの動作モードを有している。
運動モードは、利用者がバランスボールに腰をかけてジャンプしたり、あるいは、他の方法によりバランスボール内の空気圧を変動させることにより、楽曲の再生を制御するモードである。腹筋、背筋を使って体をまっすぐにすることで、安定した動作を行うことができ、楽曲を正しいリズムで再生させることが可能となる。
また、バランスモードは、利用者がバランスボールの上に座ったり、腹ばいになったりして、バランスボールの上でバランスをとった状態、即ち身体を静止した状態に維持しているときに、楽曲の演奏を継続し、バランスが維持できなくなったとき、即ち身体を静止した状態に維持できなくなったときに楽曲の演奏を停止するモードである。骨盤を動かしてバランスを保ることができる間は、楽曲を継続して再生させることができる。バランスを保とうとすることによりインナーマッスルを鍛えることができる。
両モードとも、利用者の運動の状態、すなわち身体の動作状態又は静止状態を維持、継続することを支援するものであり、身体の運動、静止を問わずいずれも筋肉を使用して運動することに変わりはない。
【0020】
利用者は、まず、動作モードの選択を行う(S11)。利用者は、本体装置11における図示しない操作部などを用いて、運動モードとバランスモードのいずれかの動作モードを選択する。
次に、利用者は、使用する楽曲を選択する(S12)。これにより、楽曲データ格納部から選択された楽曲のMIDIデータ34が前記本体装置11の図示しないRAMに読み出される。
続いて、前記ステップS11で選択されたモードに応じた処理に分岐する(S13)。
選択されたモードが運動モードであるときには、ここで、自動演奏処理が開始される(S14)。
【0021】
図5は、自動演奏処理の流れを示すフローチャートである。
この自動演奏処理は、設定されたテンポでクロックを計数し(S31)、MIDIデータのイベントタイミングとなったときに、そのイベントデータに対応するデータを音源部18に送出して(S33)、次のイベントタイミングを設定し(S34)、前記ステップS31以下の処理を繰り返すものである。
これにより、設定されたテンポで選択されたMIDIデータが再生される。運動モードでは、テンポは、前記圧力センサー6による計測信号のピークのタイミングに応じて決定されるものであるため、利用者がバランスボールを押圧するタイミングと同期して楽曲の再生を行うことができる。また、バランスモードでは、演奏が実際に開始される前に、利用者がバランスボールを押圧することにより設定したテンポを用いて、選択された楽曲の演奏が行われることとなる。
なお、自動演奏処理が起動された直後の状態では、テンポデータが設定されていないため、クロックが計数されず、イベントタイミングに達しないため、音源部18から楽音が発生されることはない。利用者がバランスボールに対して圧力をかける運動をして、テンポが設定されてから、S31の計数が開始されることとなる。
【0022】
前記ステップS14で自動演奏処理を起動した後、前記圧力センサー6及び前記3軸加速度センサー7からの計測信号を受信する(S15)。前述のように、前記圧力センサー6の計測信号と前記3軸加速度センサー7の計測信号は、所定周期毎に前記送信機3及び4から送信され、本体装置11の受信処理部13で受信されて、情報解析部14に入力される。
そして、前記情報解析部14で、前述のように、圧力センサー6からの計測信号のピークを検出し、該検出したピークの間のタイミング情報に基づいて、テンポを算出して設定する(S16)。また、ピーク値に応じて楽音を再生するときの音量又はベロシティを設定する。これにより、前記自動演奏処理におけるクロックの計数が開始される。
【0023】
また、前記情報解析部14で、前記圧力センサー6及び3軸加速度センサー7からの計測信号に基づいて、前述のように、利用者の行っている運動の様子を解析する。このとき、計測信号又は解析結果のデータを本体装置11の記憶部などに記憶する(S17)。これにより、利用者の運動量などのデータが記憶される。
そして、該解析結果に基づいて、利用者の動きが安定しているかどうかを判定する(S18)。すなわち、前記圧力センサー6からの計測信号のピーク値の大きさが所定の範囲内にあるか否か、あるいは、前記3軸加速度センサー7からの計測信号に基づいて、利用者の運動の方向や大きさ(|α|)が所定の範囲内にあるか否かを判定する。なお、この判定は、前記圧力センサー6の出力又は前記3軸加速度センサー7の出力のいずれか一方のみによって行ってもよいし、その両方の出力を用いて行ってもよい。
【0024】
その結果、利用者の動きが安定しているときには、そのことを利用者に報知するために、楽曲の再生音のパラメータ、すなわち、楽曲の演奏パラメータ又は再生音の音響パラメータの特性量を所定の向きに制御する(S19)。例えば、楽曲の再生品質が向上するように演奏パラメータ又は音響パラメータの特性量を変更する。具体的には、再生している楽曲のパート数を徐々に増加させるように、今まで再生していなかったパートについても再生を行うようにする。あるいは、再生している楽曲の音量を増大するようにする。これにより、利用者が安定した運動を行っていれば、徐々に演奏されるパートが増加して行くなどして、楽曲の再生品質が向上し、利用者は自己の運動が良好であることを認識することができる。
また、利用者の動きが安定していないときには、そのことを利用者に報知するために、楽曲の再生音のパラメータ(演奏パラメータ又は音響パラメータ)の特性量を前記ステップS19とは逆の向きに制御する(S20)。例えば、楽曲の再生品質が低下するように演奏パラメータ又は音響パラメータの特性量を変更する。具体的には、利用者の動きの強さ又は大きさにバラつきがあるとき、あるいは、利用者の動く方向にばらつきがあるときなどには、再生している楽曲の音量を徐々に低下させたり、あるいは、演奏しているパートを減少させたり、あるいは、音色を変更させたりする。これにより、利用者は、自己の運動が安定していないことを認識することができる。
【0025】
ここで、楽曲の演奏パラメータとは、楽曲の演奏に係るパラメータであって、例えば、音量、ピッチ、テンポ、演奏パート数などである。また、再生音の音響パラメータとは、再生音の音響に係るパラメータであって、例えば、残響特性、周波数特性、振幅特性、歪特性(忠実度)、音像特性(大小、遠近)、定位特性(モノーラル、ステレオ)などである。
また、前記演奏パラメータ又は音響パラメータのいずれか一つではなく、複数のパラメータを組み合わせて制御しても良い。さらに、所定の向き(例えば、再生品質を高めるよう)に制御する場合と、それとは逆の向き(例えば、再生品質を低下させるよう)に制御する場合とで同じ複数のパラメータの組み合わせである必要はない。要は、利用者の運動量の変化の態様と再生音の変化の態様が対応すればよいのであって、再生音の変化の態様の中身は本願発明の趣旨に即して任意に設計、設定すればよい。
【0026】
なお、上記ステップS18では、利用者の運動の安定性を示す測定値が所定の範囲内にあるか否かに応じて、ステップS19又はS20を実行するようにしたが、測定値の変動幅が第1の範囲内にあるときは前記ステップS19を実行し、第1の範囲と該第1の範囲よりも広い第2の範囲内にあるときは、S19もS20も実行せずに、現在の演奏パラメータ及び音響パラメータのままで楽曲を再生し、第2の範囲を超えているときにS20を実行するようにしてもよい。
また、上記S19及びS20では、演奏パラメータ又は音響パラメータの特性量を変化させて楽曲の再生の態様を変化させることにより、利用者にその運動の様子をフィードバックするようにしたが、利用者に対するフィードバック内容を示す表示をしたり音声を再生することなどにより、直接的に示すようにしてもよい。
【0027】
次に、前記ステップS17における解析処理の結果と、あらかじめ記憶してある標準的な動作を示す基準データとを比較し、必要があるときには、利用者に対する指示を表示や音声などにより出力する(S21)。例えば、利用者の動作が基準よりも小さいときには「もっと大きく」、利用者の左足の動きが右足の動きに比べて小さいときには「左が弱い」などの表示をしたり音声を出力する。
以下、上述の処理を、曲が終了するまで繰り返す(S22)。
なお、曲が終了した後に、前記ステップS17で記録した解析結果を読み出して、最終的な運動量や運動量の時間的推移などを表示部などに表示させるようにしてもよい。
【0028】
一方、動作モードがバランスモードのときには、まず、前記圧力センサー6及び前記3軸加速度センサー7からの計測信号を受信する(S23)。
そして、前記圧力センサー6の計測信号と前記3軸加速度センサー7の計測信号のいずれか一方又は両方に基づいて、利用者の運動量が所定量以上であるか否かを判定する(S24)。すなわち、前記情報解析部14において、前記圧力センサー6の計測信号のピーク値の合計値が所定値以上となったか否か、又は、前記3軸加速度センサー7からの加速度の絶対値|α|の単位時間当たりの積算値が所定値以上となったか否かなどにより、利用者の運動量が所定量以上であるか否かを判定する。なお、このときに、運動量が少ないときには、「もっと強く」などの指示を表示したり音声で出力するようにしてもよい。
その結果、運動量が所定量以上となったときに、ステップS25に進む。
ステップS25では、前記圧力センサー6の計測信号のピークを検出し、該検出したピークのタイミングに基づいて、前記ステップS16と同様に、楽曲を再生するときのテンポを算出し、設定する。また、検出したピークの大きさに基づいて再生する楽曲の音量も設定する。
そして、前記自動演奏処理を開始する(S26)。これにより、前記ステップS25で設定されたテンポ及び音量に従って、選択された曲の自動演奏が開始される。
【0029】
その後、前記圧力センサー6及び前記3軸加速度センサー7からの計測信号を受信し(S27)、その計測値の変動量が所定値以下であるか否かを判定する(S28)。
両センサーとも、利用者がバランスボール上でバランスがとれている状態とは、計測信号が一定又は安定した状態であって、計測信号の変動量(幅)や変動の頻度が少なく、変動している状態の時間が短い。そこで、単位時間(例えば、480msec)内での変動量を継続的に判断することにより、バランスがとれているか否かを判定するようにしている。
すなわち、単位時間内における計測値(圧力センサー6による計測値又は3軸加速度センサー7で計測された加速度の絶対値|α|)の変動量をΔQとし、該変動量を所定時間(T1)積算した変動量Qが設定値F以下であるか否かを判定する。
【0030】
その結果、Q≦Fであるときには(S28がYES)、バランスボール上で利用者がバランスがとれているものと判断して、楽曲の再生をそのまま続けて、ステップS29に進む。
ステップS29では、「OKです」、「頑張っています」などの表示をしたりその音声を出力して、利用者にバランスがとれていることを報知する。また、バランスがとれ続けている時間を表示するようにしてもよい。
そして、曲が終了するまで、前記ステップS27以降を続ける(S30)。
【0031】
一方、Q>Fのときには(S28がNO)、バランスが崩れていると判断し、演奏している楽曲に効果を付与する。例えば、変動量に応じて再生している楽曲のピッチを変化させたり、曲のテンポを変更したりして、バランスが崩れていることを利用者に報知したり、あるいは、「だめだー」、「も少し頑張れ」、「姿勢をまっすぐに」といった言葉を表示したり、その音声を発生して利用者に報知する。また、演奏を停止してもよい(S31)。演奏を停止しない場合は、ステップS30に進み、演奏を停止する場合は、そのままこの処理を終了する。
なお、変動量Qが小さいときは楽曲に効果を付与したり、表示や音声での報知を行い、Qが大きいときは演奏を停止するようにしてもよい。あるいは、運動モードのステップS19、S20と同様に、変動量Qが所定値Fを超えた度合い(即ち、複数の所定値Fとの比較結果)に応じて、再生の態様を変化するように制御しても良い。
このようにして、バランスモードにおいては、バランスボール上でバランスが崩れてきたときに、再生している楽曲に効果を付与することや音声でそのことを利用者に報知したり、あるいは、曲の演奏を停止させる。これにより、利用者にバランスの状態を報知することができる。
【0032】
なお、図4の実施の形態においては、運動モードのときはステップS14で自動演奏処理を開始していたが、バランスモードのときのステップS23及びS24と同様に、利用者が所定の運動量の運動をしてから、自動演奏処理を開始するようにしても良い。
また、上記においては、利用者の運動の状態を検出するセンサーとして3軸加速度センサー7を用いる場合について説明したが、これに限られることはなく、2軸や1軸の加速度センサー、モーションセンサー、傾斜センサーあるいは筋電センサーなど他のセンサーを用いることもできる。
例えば、筋電センサーを用いる場合には、次のようにすることができる。筋肉は緊張すると筋電図は通常の状態より波形が細かく変動し、該変動の周波数が上がる。そこで、筋電センサーの出力信号の周波数分析を行い、筋電周波数が所定値よりも大きくなったときに、バランスが崩れていると判断することができる。
さらに、上記図3〜5においては、利用者が一人である場合について説明したが、利用者は複数人であってもよい。この場合は、各利用者ごとに各センサーの出力を解析し、各人ごとにその結果を出力すればよい。また、演奏パラメータ又は音響パラメータの特性量制御は、各利用者の平均値又は特定の一人のセンサー出力によって制御するようにすればよい。
さらにまた、上記においては、バランスボールを使用したが、これに限られることはなく、可撓性のある外皮を有し、内部に空気などの気体や水などの液体が封入されている中空体であれば、バランスボールと同様に操作体として用いることができる。
さらにまた、利用者の運動動作により操作体に対して加えられる力などの変化量を検出することができる操作体であれば、変形しないボールなどであってもよい。要するに、前記操作体は利用者がバランスをとる運動動作を行えればよいのであって、ボールに限定されない。
さらにまた、アスリートやダンサー達のトレーニングに限らず、利用者の健康や体力の維持、増進に資することができれば、本トレーニング支援装置、トレーニング支援方法及びトレーニング支援装置用プログラムの適用範囲は限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のトレーニング支援方法が実行されるトレーニング支援装置の一実施の形態の全体構成を示すブロック図である。
【図2】バランスボールを使用している様子と送信機3の内部構成を示す図であり、(a)は利用者がバランスボール1を使用している様子を示す図、(b)はバランスボール1の内部の空気圧を計測して送信する送信機3の内部構成を示す図である。
【図3】本体装置11の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明のトレーニング支援装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】自動演奏処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1:バランスボール、2:チューブ、3、4、5:送信機、6、8:圧力センサー、7、9:3軸加速度センサー、11:本体装置、12:楽音制御部、13:受信処理部、14:情報解析部、15:再生制御部、16:楽音再生部、17:演奏データ制御部、18:音源部、19:サウンドシステム、20:スピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の運動動作に用いられる操作体の状態を計測する第1のセンサーと、
利用者の運動の状態を計測する第2のセンサーと、
楽曲データを再生する楽音再生手段と、
前記第1のセンサー及び前記第2のセンサーからの計測信号を解析する解析手段と、
前記第1のセンサーからの計測信号に基づいて楽曲の再生の進行を制御する手段と、
前記解析手段の出力に応じて、前記楽曲の再生の態様を制御する再生制御手段と
を有することを特徴とするトレーニング支援装置。
【請求項2】
前記再生制御手段は、前記解析手段により、利用者の運動量が所定量以上となったことが検出されたときに、前記楽曲の再生を開始させることを特徴とする請求項1記載のトレーニング支援装置。
【請求項3】
前記再生制御手段は、前記解析手段により、利用者の姿勢の変動量が所定量以上となったことが検出されたときに、前記楽曲の再生を停止させることを特徴とする請求項1記載のトレーニング支援装置。
【請求項4】
前記再生制御手段は、前記解析手段により、利用者の動作のばらつきが所定範囲内にあることが検出されたときに、前記楽曲の再生音のパラメータの一つ又は複数の特性量を一方の向きに制御し、利用者の動作のばらつきが前記所定範囲内にないことが検出されたときに、前記楽曲の再生音のパラメータの一つ又は複数の特性量を前記一方の向きとは逆の向きに制御することを特徴とする請求項1記載のトレーニング支援装置。
【請求項5】
前記再生音のパラメータは、楽曲の演奏パラメータ又は再生音の音響パラメータであることを特徴とする請求項4記載のトレーニング支援装置。
【請求項6】
前記解析手段による解析結果とあらかじめ設定されている基準情報とを比較し、利用者に対して、その動作の変更を促す情報を報知する手段を有することを特徴とする請求項1記載のトレーニング支援装置。
【請求項7】
コンピュータにより実行される方法であって、
利用者の運動動作に用いられる操作体の状態を計測する第1のセンサーからの計測信号を入力する第1のステップと、
利用者の運動の状態を計測する第2のセンサーからの計測信号を入力する第2のステップと、
前記第1のセンサーからの計測信号及び前記第2のセンサーからの計測信号を解析する第3のステップと、
前記第1のセンサーからの計測信号に基づいて楽曲の再生の進行を制御する第4のステップと、
前記第3のステップの解析結果に応じて、前記楽曲の再生の態様を制御する第5のステップと
を有することを特徴とするトレーニング支援方法。
【請求項8】
コンピュータに、
利用者の運動動作に用いられる操作体の状態を計測する第1のセンサーからの計測信号を入力する第1のステップと、
利用者の運動の状態を計測する第2のセンサーからの計測信号を入力する第2のステップと、
前記第1のセンサーからの計測信号及び前記第2のセンサーからの計測信号を解析する第3のステップと、
前記第1のセンサーからの計測信号に基づいて楽曲の再生の進行を制御する第4のステップと、
前記第3のステップの解析結果に応じて、前記楽曲の再生の態様を制御する第5のステップと
を実行させることを特徴とするトレーニング支援装置用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−229101(P2008−229101A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74397(P2007−74397)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】