説明

トロピリデンアミン、その製造法、その遷移金属錯体及び該遷移金属錯体を含む触媒

【課題】ホスフィンの使用を必要とせず、かつ触媒反応において良好な性能を示す触媒系及びリガンドを提供する。
【解決手段】式(I)の化合物。


具体的には、ビス(5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル)アミンやメチルN−(5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル)−L−2,5−シクロヘキサジエニルアラネートなど。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロピリデンアミン、その製造法及び触媒におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Deblon(Thesis No.13920, ETH Zurich, 2000, 第5章)及びMaire(Thesis No.14396, ETH Zurich, 2001)には、オレフィン−ホスフィン化合物の遷移金属錯体が殊に均一触媒反応、殊に水素化又はヒドロシリル化に特に適当であることが開示されている。
【0003】
しかしながら、しばしば高価でありかつ酸化に敏感なホスフィンを省き得ることは、工業的適用のために有利であろう。従って、そのために適当であり、ホスフィンの使用を必要とせず、かつ触媒反応において良好な性能を示す触媒系及びリガンドを提供する必要がある。
【非特許文献1】Deblon(Thesis No.13920, ETH Zurich, 2000, 第5章)
【非特許文献2】Maire(Thesis No.14396, ETH Zurich, 2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ホスフィンの使用を必要とせず、かつ触媒反応において良好な性能を示す触媒系及びリガンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
式(I)
【0006】
【化1】

の化合物の化合物が見出されたが、
ただしここで、
は式(II)
【0007】
【化2】

の基か、又は式(III)
【0008】
【化3】

の基であり、ここで式(I)、(II)及び(III)において、
矢印はそれぞれ窒素原子への全体の基の結合か、又は前記の矢印が芳香族系の中央に向いている場合には任意の位置における芳香族骨格への個々の基の結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して水素、シアノ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜C18−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C25−アリールアルキル、COM(ここで、Mはアルカリ金属イオンか又は有機アンモニウムイオンであってよい)、CONH、SON(R11(ここで、R11は水素、C〜C12−アルキル、C〜C14−アリール又はC〜C15−アリールアルキルである)、SOM又は式(IV)
T−Het−R12 (IV)
(ここで、
Tは欠失しているか又はカルボニルであり、
Hetは酸素又はNR11であり、
12はC〜C18−アルキル、C〜C24−アリール又はC〜C25−アリールアルキルであるか、又はN(R12は全体として5員環式アミノ基又は6員環式アミノ基である)
の基であり、
n及びmはそれぞれ独立して0、1、2又は3であり、
及びRはそれぞれ独立してフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、遊離ホルミル又は保護されたホルミル、C〜C12−アルキル、C〜C12−アルコキシ、C〜C12−ハロアルコキシ、C〜C12−ハロアルキル、C〜C14−アリール、C〜C15−アリールアルキル又は式(V)
L−Q−T−W (V)
(ここで、それぞれ独立して
Lは欠失しているか又はC〜C−アルキレン又はC〜C−アルケニレンであり、
Qは欠失しているか又は酸素、硫黄又はNR11であり、
Tはカルボニル基であり、
WはR11、OR11、NHR12又はN(R12であり、
ここで、N(R12は全体として5員環式アミノ基又は6員環式アミノ基であってもよい)
の基、又は式(VIa−g)
【0009】
【化4】

(ここで、
L、Q、W及びR12はそれぞれ式(IV)に定義されている通りであり、Zは水素又はMである)
の基の群から選択されており、
式(III)において、
はOR11又はN(R11であり、ここで、N(R11は一緒になって5員環式アミノ基又は6員環式アミノ基であってもよく、
及びRはそれぞれ独立して水素、C〜C−アルキル、C〜C10−アリール、C〜C11−アリールアルキル又はC〜C−アルケニルであり、かつ
及びR10はそれぞれ独立して水素、C〜C−アルキル、C〜C14−アリール、C〜C11−アリールアルキル又はC〜C−アルケニルであるか、又は
及びR又はR及びR10はそれぞれの場合において一緒になってC〜C12−アルキレン又はC〜C12−アルケニレンである。
【0010】
置換基に依存して、式(I)の化合物はキラルであってもよい。本発明は、生じる全ての立体異性体及びその任意の混合物をも含む。本発明の明細書において、立体異性体的に富化された(鏡像異性体的に富化された、又はジアステレオマー的に富化された)という用語は、立体異性体的に純粋な(鏡像異性体的に純粋な、又はジアステレオマー的に純粋な)化合物、又は、一方の立体異性体(鏡像異性体又はジアステレオマー)が、別の、もしくは他方の立体異性体(鏡像異性体又はジアステレオマー)よりも大きい相対的割合で存在する立体異性体(鏡像異性体又はジアステレオマー)の混合物を意味する。立体異性体的に富化された、とは、例えばかつ有利に、一方の立体異性体の含量が、特定の立体異性体の合計に対して50質量%〜100質量%、更に有利に70質量%〜100質量%、最も有利には90質量%〜100質量%であることを意味する。
【0011】
本発明の範囲には、上記及び下記の、一般的又は有利な範囲内での、基の定義、パラメータ及び説明の相互の全ての組合せ、即ち特定の範囲から有利な範囲の間での全ての組合せが含まれる。
【0012】
本発明の明細書において特に記載がない限り、アリールは炭素環式芳香族基、有利にフェニル、ナフチル、フェナントレニル又はアントラセニルであるか、又は複素芳香族基であり、ここで環1個当たり0、1、2又は3個の骨格炭素原子、しかしながら全分子中で少なくとも1個の骨格炭素原子は、窒素、硫黄及び酸素の群から選択されたヘテロ原子により置換されており、有利にピリジニル、オキサゾリル、チオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、インドリル、ピリダジニル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル及びキノリニルである。
【0013】
更に、炭素環式芳香族基又は複素芳香族基は、環1個当たり5個までの同じか又は異なる置換基により置換されていてよい。例えば、かつ有利に、置換基は、臭素、フッ素、塩素、ニトロ、シアノ、遊離ホルミル又は保護されたホルミル、遊離ヒドロキシル又は保護されたヒドロキシル、C〜C12−アルキル、C〜C12−ハロアルキル、C〜C12−アルコキシ、C〜C12−ハロアルコキシ、C〜C14−アリール、例えばフェニル、C〜C15−アリールアルキル、例えばベンジル、ジ(C〜C12−アルキル)アミノ、(C〜C12−アルキル)アミノ、CO(C〜C12−アルキル)、OCO(C〜C12−アルキル)、NHCO(C〜C12−アルキル)、N(C〜C−アルキル)CO(C〜C12−アルキル)、CO(C〜C14−アリール)、OCO(C〜C14−アリール)、NHCO(C〜C14−アリール)、N(C〜C−アルキル)CO(C〜C14−アリール)、COO−(C〜C12−アルキル)、COO−(C〜C14−アリール)、CON(C〜C12−アルキル)又はCONH(C〜C12−アルキル)COM、CONH、SONH、SON(C〜C12−アルキル)、SOM(ここで、Mはそれぞれの場合において置換されていてもよいアンモニウム、リチウム、ナトリウム又はカリウムである)の群から選択されている。
【0014】
例えば、かつ有利に、アリールはフェニル又はナフチルであり、これは更に、フッ素、塩素、シアノ、C〜C−アルキル、C〜C−ペルフルオロアルキル、C〜C−アルコキシ、フェニル、ベンジル、ジ(C〜C12−アルキル)アミノ、CO(C〜C12−アルキル)、COO−(C〜C12−アルキル)、CON(C〜C12−アルキル)又はSON(C〜C12−アルキル)の群から選択された、環1個当たり0、1、2又は3個の基により置換されていてよい。
【0015】
更に有利に、アリールはフェニルであり、これは更にフッ素、塩素、シアノ、C〜C−アルキル、C〜C−ペルフルオロアルキル、C〜C−アルコキシ、フェニル又はSON(C〜C−アルキル)の群から選択された、環1個当たり0、1又は2個の基により置換されていてよい。
【0016】
本発明の明細書において、定義及び有利な範囲が、アリールオキシ置換基及びアリールアルキル基のアリール部分にも同様に適用される。
【0017】
本発明の明細書において特に記載がない限り、保護されたホルミルは、アミナール、アセタール又は混合されたアミナールアセタールへの変換により保護されるホルミル基であり、アミナール、アセタール及び混合されたアミナールアセタールは非環式又は環式であってよい。
【0018】
例えば、かつ有利に、保護されたホルミルは1,1−(2,4−ジオキシシクロペンタンジイル)基である。
【0019】
本発明の明細書において特に記載がない限り、保護されたヒドロキシルは、ケタール、アセタール又は混合されたアミナールアセタールへの変換により保護されるヒドロキシル基であり、アセタール及び混合されたアミナールアセタールは非環式又は環式であってよい。
【0020】
例えば、及び有利に、保護されたヒドロキシルはテトラヒドロピラニル基(O−THP)である。
【0021】
本発明の明細書において特に記載がない限り、アルキル、アルキレン、アルコキシ、アルケニル及びアルケニレンは、それぞれ直鎖、環式、分枝鎖又は非分枝鎖のアルキル、アルキレン、アルコキシ、アルケニル及びアルケニレン基であり、各々は更に、C〜C−アルコキシにより、アルキル、アルキレン、アルコキシ、アルケニル又はアルケニレン基の各炭素原子が酸素、窒素及び硫黄の群から選択された多くて1個のヘテロ原子を有するように置換されていてよい。
【0022】
同じことがアリールアルキル基のアルキレン部分にも適用される。
【0023】
例えば、本発明の明細書において、C〜C−アルキルは有利にメチル、エチル、2−エトキシエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチルであり、C〜C−アルキルは更に例えばn−ペンチル、シクロヘキシル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル又はイソオクチルであり、C〜C12−アルキルは更に例えばノルボルニル、アダマンチル、n−デシル及びn−ドデシルであり、C〜C18−アルキルは更にn−ヘキサデシル及びn−オクタデシルである。
【0024】
例えば、本発明の明細書において、C〜C−アルキレンは有利にメチレン、1,1−エチレン、1,2−エチレン、1,1−プロピレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、1,1−ブチレン、1,2−ブチレン、2,3−ブチレン及び1,4−ブチレン、1,5−ペンチレン、1,6−ヘキシレン、1,1ーシクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン、1,2−シクロヘキシレン及び1,8−オクチレンである。
【0025】
例えば、本発明の明細書において、C〜C−アルコキシは有利にメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ及びt−ブトキシであり、C〜C−アルコキシは更にシクロヘキシルオキシである。
【0026】
例えば、本発明の明細書において、C〜C−アルケニルは有利にアリル、3−プロペニル及び4−ブテニルである。
【0027】
例えば、本発明の明細書において、C〜C−アルケニレンは有利に2−ブテンジイルである。
【0028】
本発明の明細書において特に記載がない限り、ハロアルキル及びハロアルコキシはそれぞれ直鎖、環式、分枝鎖又は非分枝鎖のアルキル及びアルコキシ基であり、各々はハロゲン原子により一置換、多置換又は完全に置換されている。フッ素により完全に置換されている基はそれぞれペルフルオロアルキル及びペルフルオロアルコキシと呼称される。
【0029】
例えば、本発明の明細書において、C〜C12−ハロアルキルはトリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、クロロメチル、フルオロメチル、ブロモメチル、2−ブロモエチル、2−クロロエチル、ノナフルオロブチル、n−ペルフルオロオクチル又はn−ペルフルオロドデシルである。
【0030】
式(I)の化合物のための有利な置換パターンを以下に定義する:
は有利に式(II)
(ここで、
及びRはそれぞれ独立して水素、フッ素、ヨウ素、C〜C12−アルキル、C〜C12−アルコキシ、C〜C10−アリール又は式(IV)の基であり、ここで、Tは同様にカルボニルであり、Hetは酸素又はNR11であり、
n及びmはそれぞれ独立して0又は1であり、
及びRはそれぞれ独立してフッ素、臭素、ニトロ、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又は式(VIb)及び(VIg)の基である)
の基か、
又は式(III)
(ここで、
はOR11又はN(R11であり、ここで、N(R11は一緒になって5員環式アミノ基又は6員環式アミノ基であってもよく、R及びRはそれぞれ独立して水素、C〜C−アルキル又はC〜C−アルケニルであり、R及びR10はそれぞれ独立して水素、C〜C−アルキル、C〜C14−アリール又はC〜C−アルケニルであるか、又はそれとは別にR及びR10はそれぞれの場合において一緒になってC〜C−アルケンジイルである)
の基である。
【0031】
は更に有利に式(II)
(ここで、
及びRはそれぞれ独立して水素、C〜C12−アルキル、C〜C12−アルコキシ、C〜C10−アリールであり、
n及びmはそれぞれ同様に0又は1であり、
及びRはそれぞれ同様にフッ素及び式(VIb)及び(VIg)の基の群から選択されている)
の基か、
又は式(III)
(ここで、
はOR11であり、R及びRはそれぞれ独立して水素又はC〜C−アルキルであり、R及びR10はそれぞれの場合において一緒になってC〜C−アルケンジイルである)
の基である。
【0032】
は最も有利に式(II)
(ここで、
及びRはそれぞれ独立して水素、C〜C12−アルキル、C〜C12−アルコキシ又はC〜C10−アリールであり、
n及びmはそれぞれ0である)
の基か、
又は式(III)
(ここで、
はOR11であり、R及びRはそれぞれ同様に水素であり、R及びR10はそれぞれの場合において一緒になってC〜C−アルケンジイルである)
の基である。
【0033】
及びRは有利にそれぞれ独立して水素、フッ素、ヨウ素、C〜C12−アルキル、C〜C10−アリール又は式(IV)(ここで、Tは同様にカルボニルであり、Hetは酸素又はNR11である)の基であり、
更に有利に、それぞれ独立して水素、C〜C12−アルキル、C〜C12−アルコキシ、C〜C10−アリールである。
【0034】
及びRは有利にそれぞれ独立してフッ素、臭素、ニトロ、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又は式(VIb)及び(VIg)の基の群から選択されており、更に有利にそれぞれ同様にフッ素及び式(VIb)及び(VIg)の基の群から選択されており、
n及びmは有利にそれぞれ独立して0又は1であり、n及びmは更に有利にそれぞれ同様に0又は1であり、最も有利にそれぞれ0である。
【0035】
は有利にOR11又はN(R11であり、ここで、N(R11は一緒になって5員環式アミノ基又は6員環式アミノ基であってもよく、更に有利にOR11である。
【0036】
有利に、
及びRはそれぞれ独立して水素、C〜C−アルキル又はC〜C−アルケニルであり、
及びR10はそれぞれ独立して水素、C〜C−アルキル、C〜C14−アリール又はC〜C−アルケニルであるか、又はそれとは別に
及びR10はそれぞれの場合において一緒になってC〜C−アルケンジイルである。
【0037】
更に有利に、
及びRはそれぞれ独立して水素又はC〜C−アルキルであり、
及びR10はそれぞれの場合において一緒になってC〜C−アルケンジイルである。
【0038】
最も有利に、
及びRはそれぞれ同様に水素であり、
及びR10はそれぞれの場合において一緒になってC〜C−アルケンジイルである。
【0039】
式(I)の化合物のうち、以下の群から選択される窒素原子上の基を有するものは極めて殊に有利である:
10−シアノ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル(CNtrop)、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル(trop)、10−メチル−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル(Metrop)、10−メトキシ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル(MeOtrop)、10−フェニル−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル(Phtrop)、10,11−ジフェニル−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル(Ph2trop)[(5S)−10−[(−)−メンチルオキシ]−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル]、(S−メンチルオキシtrop)及び[(5R)−10−[(−)−メンチルオキシ]−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル](R−メンチルオキシtrop)。
【0040】
式(I)の化合物を製造するために、式(IV)
NR (IV)
[式中、
は上記に定義されている通りである]
の化合物を、有利に場合により有機溶剤の存在下で、式(V)
【0041】
【化5】

[式中、
、R、R、R、n及びmはそれぞれ上記に定義されている通りであり、
Aktは塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロアセチル又はスルホニルオキシ基である]
の化合物と反応させ、形成された式(VI)
【0042】
【化6】

のアンモニウム塩を、有利に、塩基の存在下で式(I)の化合物に変換する。
【0043】
式(IV)及び式(V)の化合物は刊行物の記載から公知であるか、又は刊行物の記載と同様に合成することができる。
【0044】
反応は、場合により、及び有利に、有機溶剤の存在下で実施されてよい。適当な有機溶剤は例えば以下のものである:
脂肪族又は芳香族の、ハロゲン化されていてよい炭化水素、例えば種々のベンジン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、種々の石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素;エーテル、例えばジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はエチレングリコールジメチルエーテル又はエチレングリコールジエチルエーテル、又はそのような有機溶剤の混合物。
【0045】
適当な塩基は例えば:アルカリ土類金属又はアルカリ金属水素化物、水酸化物、アミド、アルキル置換されたジシリルアミド、ジアルキルアミド、アルコキシド又はカーボネート、例えば水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、リチウムジエチルアミド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムビストリメチルシリルアミド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム、3級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルグアニジン、N,N−ジメチルアニリン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)又はジアザビシクロウンデセン(DBU)、ピペリジン及びN−メチルピペリジンである。
【0046】
式(I)の化合物の製造法及び不可欠な中間体としての式(VI)の化合物の製造法はどちらも本発明により完全に含まれる。
【0047】
本発明は、式(I)の化合物の遷移金属錯体及び本発明による式(I)の化合物の遷移金属錯体を含む触媒をも含む。
【0048】
有利な遷移金属錯体は、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金及び銅の遷移金属錯体であり、有利にルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金の遷移金属錯体であり、更に有利にロジウム及びイリジウムの遷移金属錯体である。
【0049】
使用される触媒は、例えば、式(I)の化合物及び金属化合物から得られる単離された遷移金属錯体か、又は、式(I)の化合物及び触媒反応の反応媒体中の金属化合物から得られる遷移金属錯体であってよい。
【0050】
適当な金属化合物は、例えば及び有利に、式(VIIa)
(Y (VIIa)
[式中、
はルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金又は銅であり、
はクロリド、ブロミド、アセテート、ニトレート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート又はアセチルアセトネートであり、
pはルテニウム、ロジウム及びイリジウムの場合には3であり、ニッケル、パラジウム及び白金の場合には2であり、銅の場合には1である]
の金属化合物、又は一般式(VIIb)
(Y (VIIb)
[式中、
はアニオン、例えばクロリド、ブロミド、アセテート、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラ(ビス−3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート又はテトラフェニルボレートであり、
pはロジウム及びイリジウムの場合には1であり、ニッケル、パラジウム、白金及びルテニウムの場合には2であり、銅の場合には1であり、
はそれぞれの場合においてC〜C12−アルケン、例えばエチレン又はシクロオクテン、又はニトリル、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル又はベンジルニトリルであるか、又は
は一緒になって(C〜C12)−ジエン、例えばノルボルナジエン又は1,5−シクロオクタジエンである]
の金属化合物、又は式(VIIc)
[M (VIIc)
[式中、
はルテニウムであり、
はアリール基、例えばシメン、メシチル、フェニル又はシクロオクタジエン、ノルボルナジエン又はメチルアリルである]
の金属化合物、又は式(VIId)
Me[M(Y] (VIId)
[式中、
はパラジウム、ニッケル、イリジウム又はロジウムであり、
はクロリド又はブロミドであり、
Meはリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又は有機アンモニウムであり、
pはロジウム及びイリジウムの場合には3であり、ニッケル、パラジウム及び白金の場合には2である]
の金属化合物、又は式(VIIe)
[M(B]An (VIIe)
[式中、
はイリジウム又はロジウムであり、
は(C〜C12)−ジエン、例えばノルボルナジエン又は1,5−シクロオクタジエンであり、
Anは非配位アニオン又は弱配位アニオン、例えばメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラ(ビス−3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート又はテトラフェニルボレートである]
の金属化合物である。
【0051】
適当な金属化合物は更に例えば、Ni(1,5−シクロオクタジエン)、Pd(ジベンジリデンアセトン)、Pd[PPh、シクロペンタジエニルRu、Rh(acac)(CO)、[RhCl(CO)]、Ir(ピリジン)(1,5−シクロオクタジエン)、Ir(acac)(CO)、[IrCl(CO)]、Cu(フェニル)Br、Cu(フェニル)Cl、Cu(フェニル)I、Cu(PPhBr、[Cu(CHCN)]BF及び[Cu(CHCN)]PF又は多核架橋錯体、例えば[Rh(1,5−シクロオクタジエン)Cl]及び[Rh(1,5−シクロオクタジエン)Br]、[Rh(エテン)Cl]、[Rh(シクロオクテン)Cl]である。
【0052】
使用される金属化合物は、好ましくは以下の化合物である:
[Rh(COD)Cl]、[Rh(COD)Br]、[Rh(COD)]ClO、[Rh(COD)]BF、[Rh(COD)]PF、[Rh(COD)]OTf、[Rh(COD)]BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、[Rh(COD)]SbF、RuCl(COD)、[(シメン)RuCl、[(ベンゼン)RuCl、[(メシチレン)RuCl、[(シメン)RuBr、[(シメン)RuI、[(シメン)Ru(BF、[(シメン)Ru(PF、[(シメン)Ru(BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、[(シメン)Ru(SbF、[Ir(COD)Cl]、[Ir(COD)]PF、[Ir(COD)]ClO、[Ir(COD)]SbF、[Ir(COD)]BF、[Ir(COD)]OTf、[Ir(COD)]BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、RuCl、NiCl、RhCl、PdCl、PdBr、Pd(OAc)、Pd(ジベンジリデンアセトン)、Pd(アセチルアセトネート)、Rh(アセチルアセトネート)(CO)、[RhCl(CO)]、Ir(ピリジン)(COD)、Ir(acac)(CO)、[IrCl(CO)]、[Rh(nbd)Cl]、[Rh(nbd)Br]、[Rh(nbd)]ClO、[Rh(nbd)]BF、[Rh(nbd)]PF、[Rh(nbd)]OTf、[Rh(nbd)]BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、[Rh(nbd)]SbF、RuCl(nbd)、[Ir(nbd)]PF、[Ir(nbd)]ClO、[Ir(nbd)]SbF、[Ir(nbd)]BF、[Ir(nbd)]OTf、[Ir(nbd)]BAr(Ar=3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、Ir(ピリジン)(nbd)、[Ru(DMSO)Cl]、[Ru(CHCN)Cl]、[Ru(PhCN)Cl]、[Ru(COD)Cl、[Ru(COD)(メタリル)]、[Ru(アセチルアセトネート)]。
【0053】
Rh(アセチルアセトネート)(CO)、[RhCl(CO)]及びIr(アセチルアセトネート)(CO)、[IrCl(CO)]は更に有利である。
【0054】
使用される金属化合物の量は、使用される式(I)の化合物に関して、金属含分に対して、例えば25〜200モル%であってよく;有利に80〜140モル%、極めて殊に有利に90〜120モル%、更に有利に95〜105モル%である。
【0055】
式(I)の化合物の極めて殊に有利な遷移金属錯体は、式(VIII)
[M(I)(L)]An (VIII)
に従う遷移金属錯体であり、ここで、それぞれの場合において、
はロジウム又はイリジウムであり、
(I)は式(I)の化合物であり、
(L)は非荷電の単座配位子もしくは二座配位子であり、
Anは、金属のあり得る配位を考慮せずに、アニオン、例えばクロリド、ブロミド、ヨージド、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラ(ビス−3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート又はテトラフェニルボレートである。
【0056】
有利な非荷電の単座配位子は、例えば、オレフィン、例えばシクロヘキセン、カルボニル、ニトリル、例えばアセトニトリル又はベンゾニトリル、ホスフィン、例えばトリ(C〜C14−アリール)ホスフィン、トリ(C〜C−アルキル)ホスフィン、ビス(C〜C14−アリール)(C〜C−アルキル)ホスフィン及び(C〜C14−アリール)ジ(C〜C−アルキル)ホスフィン及びホスファイト、例えばトリ(C〜C14−アリール)ホスファイト、トリ(C〜C−アルキル)ホスファイト、ビス(C〜C14−アリール)(C〜C−アルキル)ホスファイト及び(C〜C14−アリール)ジ(C〜C−アルキル)ホスファイトである。
【0057】
有利な非荷電の二座配位子は、例えば、ジオレフィン、例えば1,5−シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、二窒素化合物、例えば2,2’−ビピリジン及び二リン化合物、例えば式(IX)
(R13−E)P−E−Z−E−P(E−R13 (IX)
[式中、
Eはそれぞれの場合において独立して、かつR13及びZに対して独立して、欠失しているか又は酸素であり、
13基はそれぞれ独立してC〜C−アルキル、又は、非置換、R14で一置換、二置換又は三置換された、5〜12個の骨格炭素原子を有するフェニル、ナフチル又はヘテロアリールであり、ここで、R14基はそれぞれの場合において独立して、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、フッ素又はシアノの群から選択されており、
ZはC〜C−アルキレン、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,2−シクロヘキシル、1,1’−フェロセニル、1,2−フェロセニル、2,2’−(1,1’−ビナフチル)及び1,1’−ビフェニルイルの群からの非置換か又は置換された基である]
の化合物である。
【0058】
本発明による遷移金属錯体を含む触媒は、殊に均一系触媒作用における使用のために適当である。
【0059】
規定された遷移金属錯体において、式(I)の化合物の中央の7員環の窒素原子に結合しているプロトンが強酸性であり、塩基により容易に取り除かれることが共通している。
【0060】
そのような遷移金属錯体は、同様に触媒としての使用のために適当であり、本出願人の研究成果によれば、触媒反応サイクルの中間体をも構成する。
【0061】
従って本発明は更に、式(I)の化合物の中央の7員環の窒素原子がアミドとして金属原子に配位している、式(I)の化合物を含む遷移金属錯体をも含む。
【0062】
そのような錯体のために、式(I)の化合物及び遷移金属錯体の有利な上記の範囲が同様に適用される。
【0063】
従って、このタイプの殊に有利な遷移金属錯体は、式(X)
[M(I−)(L)] (X)
[式中、
はロジウム又はイリジウムであり、
(I−)は中央の7員環の窒素原子がアミドとして金属原子に配位している式(I)の化合物であり、
(L)は非荷電の単座配位子もしくは二座配位子である]
の遷移金属錯体である。
【0064】
本発明による触媒及び遷移金属錯体を、水素化のために、更に有利に、化合物が冒頭に記載された前提条件下でキラルである場合には不斉水素化のために使用することは有利である。
【0065】
有利な水素化は、例えばプロキラルC=C結合の水素化、例えばプロキラルエナミン、オレフィン、エノールエーテルの水素化、C=O結合、例えばプロキラルケトンの水素化、及びC=N結合、例えばプロキラルイミンの水素化である。殊に好ましい不斉水素化は、C=O結合、例えばプロキラルケトンの水素化である。
【0066】
有利な実施態様において、水素化は水素供与体分子及び場合により塩基の存在下で実施される。
【0067】
水素供与体分子は、例えば分子水素、ギ酸、エタノール又はイソプロパノールであり;塩基は、例えばアルコキシド又は3級アミンである。水素供与体分子と塩基との殊に有利な混合物は、ギ酸とトリエチルアミンとの混合物、殊にその共沸混合物、及びカリウムイソプロポキシドとイソプロパノールとの混合物である。
【0068】
使用される金属化合物の量又は使用される遷移金属錯体の量は、個々の金属含分に対して、例えば0.001〜20モル%であってよく、使用される基体に対して、有利に0.001〜2モル%、最も有利に0.001〜1モル%であってよい。
【0069】
有利な実施態様において、不斉水素化は、例えば、現場で金属化合物と式(I)の化合物から、場合により適当な有機溶剤中で触媒を生成し、基体を添加し、反応混合物を、反応温度で、水素圧下におくか又は他の水素供与体分子と塩基との混合物と混合するというように実施することができる。
【0070】
本発明による触媒は、殊に、医薬品及び農薬の活性成分、又はこれらの2つのクラスの中間体の製造法において殊に適当である。
【0071】
本発明の利点は、危険なく取り扱うことのできる容易に入手可能な化合物を用いて、高性能の触媒の全クラスを製造することができることである。
【実施例】
【0072】
実施例1:ビス(5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル)アミン[tropNH]の合成
5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルクロリド3g(13.2ミリモル)をトルエン60ml中に溶解させ、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン1ml(1.41g;8.7ミリモル;30%過剰)と混合した。混合物を還流下に4時間加熱した。引き続き、全ての揮発性成分を減圧下に除去した。引き続き、ヘキサン30mlを添加し、得られた懸濁液を加熱した。この過程で、白色の粉末が理論値の95%の収率で析出した。
【0073】
実施例2:[Rh{(trop)NH}Cl]の合成
実施例1によるビス(5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル)アミン0.47g(1.2ミリモル)及びジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]0.28g(0.56ミリモル)をジクロロメタン7ml中に溶解させ、2日間放置した。この過程で、暗赤色の結晶が成長した。上澄み溶剤をデカンテーションした。結晶をジクロロメタンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。
【0074】
実施例3:[Rh{(trop)NH}(CO)Cl](3a)及び[Rh{(trop)NH}(CO)]OTf(3b)の合成
実施例2からのジ−μ−クロロビス[(ビス(5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル)アミン)ロジウム(I)]0.63g(0.59ミリモル)をTHF中で懸濁させた。フラスコから空気を除去した。その後、一酸化炭素を懸濁液に導通させ、その結果、濁ったオレンジ色の溶液が澄明かつ黄色になった。これは3aをもたらした。銀トリフラート0.31g(1.2ミリモル)を添加した後、溶液は赤色となった。24時間後、塩化銀の沈殿物を濾別し、溶液を部分的に濃縮し、錯体3bをヘキサンを用いてオレンジ色の粉末として析出させた。収量:0.58g(86%)
実施例4:[Rh{(trop)NH}(PPh)Cl]の合成
ジ−μ−クロロビス[(ビス(5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル)アミン)ロジウム(I)]0.16g(0.15ミリモル)及びトリフェニルホスフィン0.09g(0.3ミリモル)をTHF20ml中に懸濁させた。懸濁液は60℃で澄明な溶液となった。トルエン約30ml及びヘキサン100mlを添加し、その結果、(ビス(5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル)アミン)クロロ(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)が析出した。
【0075】
これを濾別した。収量:0.17g(70%)
【0076】
【化7】

【0077】
実施例5:[Rh{(trop)NH}(PPh)]OTfの合成
実施例4からの(ビス(5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル)アミン)クロロ(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)0.17g(0.21ミリモル)及び銀トリフラート0.06g(0.3ミリモル)を60℃で30分間撹拌した。懸濁液を濾紙を通して濾過した。生成物を母液からヘキサンを用いて析出させた。収量:1.47g(70%)
【0078】
【化8】

【0079】
実施例6:[Rh{(trop)NH}(P(OCH]OTfの合成
実施例3bからの錯体500mg(0.74ミリモル)をTHF60ml中に溶解させ、トリメチルホスファイト0.5mlと混合した。これを行った際に、溶液の色が黄色から薄黄色へと変化し、2時間後に所望の生成物の黄色の針晶が析出した。収率:理論値の99%。
【0080】
【化9】

【0081】
実施例7:[Rh{(trop)N−}(PPh]の合成
実施例5からの錯体200mgをTHF50ml中に懸濁させ、KOtBu30mg(0.267ミリモル)と混合した。これを行った際に、溶液の色は緑色へと変化し、これを30分以内で均質化した。析出したKOTfを濾過し、減圧下に乾燥させた後、所望の生成物がほぼ定量的収率で得られた。
【0082】
【化10】

【0083】
実施例8:実施例7からの[Rh{(trop)N−}(PPh]を用いた水素化
THF5ml中の実施例7からの錯体5mg(0.0066ミリモル)の溶液をシクロヘキサノン129mg(1.31ミリモル、200当量)と混合し、水素雰囲気下で(4バール)18時間に亘って撹拌した。反応溶液のガスクロマトグラフィーにより、シクロヘキサノールへの完全な変換が示された。
【0084】
実施例9〜23:実施例3b、5及び6からの錯体を用いた水素化
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
a)C/S=(触媒の量)×10/(基体の量)
b)TON=(生成物の量)/(触媒の量) 触媒反応の最後か又は反応が終了した時点で規定されたもの
c)触媒反応の開始時のTOF
d)触媒反応の終了時のTOF
e)最高変換率が達成された後の時間。最高に達した変換率を後に括弧内に示す。
【0088】
実施例24:メチルN−(5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イル)−L−2,5−シクロヘキサジエニルアラネート(trop−シクロヘキサジエニルアラニン)の合成
トリエチルアミン0.42g(4.2ミリモル)を少量ずつ無水CHCl10ml中のメチルシクロヘキサジエニルアラネート0.915g(4.2ミリモル)に添加した。30分間撹拌した後、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルクロリド0.952g(4.2ミリモル)を粉末漏斗を介して添加し、更にトリエチルアミン2.0gを一回で添加した。更に2時間撹拌した後、有機相を水10mlで2回洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過した。溶剤を減圧下で除去した後、生成物1.52g(97%)が無色の油状物として得られた。
【0089】
【化11】

【0090】
実施例25:[Rh(trop−シクロヘキサジエニルアラニン)(CO)Cl]の合成
[Rh(CO)Cl]97mg(0.25ミリモル)を室温で無水CHCl10ml中の実施例24からのリガンド220mg(0.59ミリモル)の溶液に添加した。この過程で、一酸化炭素の強力な発生が観察された。溶液を約3mlにまで濃縮し、ヘキサン10mlで覆った。一晩で、錯体245mg(92%)が薄黄色の結晶の形で晶出した。
【0091】
【化12】

【0092】
実施例26:[Rh(trop−シクロヘキサジエニルアラニン)(CO)]OTfの合成
銀トリフラート64mg(0.25ミリモル)を室温で無水CHCl10ml中の実施例25からの錯体119mg(0.22ミリモル)の溶液に添加した。2時間撹拌した後、溶液をセライトで濾過し、約3mlに濃縮し、ヘキサン10mlで覆った。一晩で、生成物がほぼ定量的収率で晶出した。
【0093】
【化13】

【0094】
実施例27及び28:実施例26からの[[Rh{trop−シクロヘキシジエニルアラニン}(CO)]OTfを用いた水素化
【0095】
【表3】

【0096】
反応媒体:アセトフェノン2.0g、イソプロパノール16.6ml中のカリウムイソプロポキシド5mM溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の化合物、
ただし、
は式(II)
【化2】

の基か、又は式(III)
【化3】

の基であり、ここで式(I)、(II)及び(III)において、
矢印はそれぞれ窒素原子への全体の基の結合か、又は前記の矢印が芳香族系の中央に向いている場合には任意の位置における芳香族骨格への個々の基の結合を表し、
及びRはそれぞれ独立して水素、シアノ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C〜C18−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C25−アリールアルキル、COM(ここで、Mはアルカリ金属イオンか又は有機アンモニウムイオンであってよい)、CONH、SON(R11(ここで、R11は水素、C〜C12−アルキル、C〜C14−アリール又はC〜C15−アリールアルキルである)、SOM又は式(IV)
T−Het−R12 (IV)
(ここで、
Tは欠失しているか又はカルボニルであり、
Hetは酸素又はNR11であり、
12はC〜C18−アルキル、C〜C24−アリール又はC〜C25−アリールアルキルであるか、又はN(R12は全体として5員環式アミノ基又は6員環式アミノ基である)
の基であり、
n及びmはそれぞれ独立して0、1、2又は3であり、
及びRはそれぞれ独立してフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、遊離ホルミル又は保護されたホルミル、C〜C12−アルキル、C〜C12−アルコキシ、C〜C12−ハロアルコキシ、C〜C12−ハロアルキル、C〜C14−アリール、C〜C15−アリールアルキル又は式(V)
L−Q−T−W (V)
(ここで、それぞれ独立して
Lは欠失しているか又はC〜C−アルキレン又はC〜C−アルケニレンであり、
Qは欠失しているか又は酸素、硫黄又はNR11であり、
Tはカルボニル基であり、
WはR11、OR11、NHR12又はN(R12であり、
ここで、N(R12は全体として5員環式アミノ基又は6員環式アミノ基であってもよい)
の基、又は式(VIa−g)
【化4】

(ここで、
L、Q、W及びR12はそれぞれ式(IV)に定義されている通りであり、Zは水素又はMである)
の基の群から選択されており、
式(III)において、
はOR11又はN(R11であり、ここで、N(R11は一緒になって5員環式アミノ基又は6員環式アミノ基であってもよく、
及びRはそれぞれ独立して水素、C〜C−アルキル、C〜C10−アリール、C〜C11−アリールアルキル又はC〜C−アルケニルであり、かつ
及びR10はそれぞれ独立して水素、C〜C−アルキル、C〜C14−アリール、C〜C11−アリールアルキル又はC〜C−アルケニルであるか、又は
及びR又はR及びR10はそれぞれの場合において一緒になってC〜C12−アルキレン又はC〜C12−アルケニレンである。
【請求項2】
請求項1記載の式(I)の化合物の製造法において、式(IV)
NR (IV)
[式中、
は請求項1に定義されている通りである]
の化合物を式(V)
【化5】

[式中、
、R、R、R、n及びmはそれぞれ請求項1に定義されている通りであり、
Aktは塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロアセチル又はスルホニルオキシ基である]
の化合物と反応させ、形成された式(VI)
【化6】

のアンモニウム塩を、塩基の存在下で式(I)の化合物に変換することを特徴とする、請求項1記載の式(I)の化合物の製造法。
【請求項3】
請求項2記載の式(VI)の化合物。
【請求項4】
請求項1記載の式(I)の化合物の遷移金属錯体。
【請求項5】
式(I)の化合物の中央の7員環の窒素原子がアミドとして金属原子に配位している、請求項1記載の式(I)の化合物を含む遷移金属錯体。
【請求項6】
請求項4又は5記載の遷移金属錯体を含む触媒。

【公開番号】特開2006−8682(P2006−8682A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−167425(P2005−167425)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【Fターム(参考)】