説明

トンネルの構築方法

【課題】 延長距離が大きく且つ小口径のトンネルを構築する際に、覆工部材の費用を縮減し、更にセグメントの覆工が簡単且つ、正確に実施し、コストダウンを図る。
【解決手段】 トンネルの発進部近傍では元押しジャッキ13を使用して推進工法にて施工し、推進工法の限界地点に達したときは、前記元押しジャッキ13の使用を停止してシールドマシン17の推進ジャッキ18を使用し、推進工法からシールド工法に切り換えて施工するトンネルの構築方法に於いて、上記元押しジャッキ13の前方にヒューム管16を配設し、該ヒューム管16の前端部とシールドマシン17の推進ジャッキ18との間に1乃至数個のセグメント19が介装されており、且つ、前記ヒューム管16の前端外側面と、シール材を介して前記セグメント19の後端外側面に継手を装着し、ヒューム管16とセグメント19の合接面間にクッション材を介装したトンネルの構築方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネルの構築方法に関するものであり、特に、小口径トンネルの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部の軟弱地盤に於けるトンネルの構築方法としては、推進工法とシールド工法の2つが代表的な工法として挙げられる。推進工法は、トンネルの発進部に反力受けを設け、該反力受けに元押しジャッキを当接するとともに、元押しジャッキの前方に推進管を設置する。推進管としては一般にヒューム管を使用している。又、ヒューム管の前部にカッタを装着し、元押しジャッキでヒューム管を前方へ押し付けて地山に圧入する。この圧入によってヒューム管内に移入した土砂を排土しつつ、ヒューム管を更に前方へ推進する。
【0003】
そして、ヒューム管の推進に伴って該ヒューム管の後部に新たなヒューム管を接続して推進する。斯かる動作を繰り返し、元押しジャッキでヒューム管を前方へ推進させてトンネルを構築していく。
【0004】
一方、シールド工法は、鋼鉄製円筒内にカッタ、推進ジャッキ、セグメント組立機等を装備したシールドマシンを設け、該シールドマシン前部に設けられたカッタを推進ジャッキで土中へ圧入しながら地山を掘削する。そして、該シールドマシン後部に設けられたセグメント組立機により、掘削された地山の表面へセグメントを覆工する。更に、覆工されたセグメントを反力受けとして推進ジャッキを作動し、カッタを前方へ掘進させてトンネルを構築していく。
【0005】
而して、トンネルの断面積や延長距離、並びに曲率半径や工費等により、前記推進工法とシールド工法の何れか一方を選択している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、都市部の軟弱地盤に於けるトンネルの構築方法としては、推進工法とシールド工法の2つが挙げられるが、特に小口径のトンネルでは覆工部材のコスト差が大きく、推進工法に使用するヒューム管に比べてシールド工法に使用するセグメントの方が高価となる。しかし、推進工法ではトンネルの延長距離に限度があり、延長距離の大きいトンネルを構築する場合はシールド工法による施工を取らざるを得ない。
【0007】
そこで、延長距離が大きく、且つ、小口径のトンネルを構築する際に、覆工部材の費用を縮減し、更にセグメントの覆工を簡単、且つ、正確に実施してコストダウンを図るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、トンネルの発進部に反力受けを設け、該反力受けに元押しジャッキを当接し、元押しジャッキの前方に推進管を設置するとともに、更に推進管の前方にシールドマシンを装着し、先ず、トンネルの発進部近傍では前記元押しジャッキを使用して推進工法にて施工し、推進工法の限界地点に達したときは、前記元押しジャッキの使用を停止してシールドマシンの推進ジャッキを使用し、推進工法からシールド工法に切り換えて施工するトンネルの構築方法に於いて、上記元押
しジャッキの前方にヒューム管を配設し、該ヒューム管の前端部とシールドマシンの推進ジャッキとの間に1乃至数個のセグメントが介装されており、且つ、前記ヒューム管の前端外側面と、シール材を介して前記セグメントの後端外側面に継手を装着し、ヒューム管とセグメントの合接面間にクッション材を介装したトンネルの構築方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明はトンネルの発進部近傍では推進工法で施工し、推進工法の限界地点に達したときは推進工法からシールド工法に切り換える。即ち、トンネルの発進部から推進工法の限界地点までの距離は推進管を使用するため、該推進管にヒューム管を使用することにより、安価な費用でトンネルを覆工できる。そして、残りのトンネル区間はシールド工法にて施工するため、延長距離が制限されることはない。このように、一つのトンネル工事において推進工法とシールド工法とを併用することにより、覆工部材の費用を縮減してコストダウンを図ることができると共に、セグメントとヒューム管とが継手を介して装着され、シール材にてシールされると共にヒューム管とセグメントの合接面間にクッション材を介装したため、双方は正確に且つ無理なく円滑に合接されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、延長距離が大きく、且つ、小口径のトンネルを構築する際に、覆工部材の費用を節約し、更に、セグメントの覆工が簡単、且つ、正確に実施されてコストダウンにも寄与すると云う目的を、トンネルの発進部に反力受けを設け、該反力受けに元押しジャッキを当接し、元押しジャッキの前方に推進管を設置するとともに、更に推進管の前方にシールドマシンを装着し、先ず、トンネルの発進部近傍では前記元押しジャッキを使用して推進工法にて施工し、推進工法の限界地点に達したときは、前記元押しジャッキの使用を停止してシールドマシンの推進ジャッキを使用し、推進工法からシールド工法に切り換えて施工するトンネルの構築方法に於いて、上記元押しジャッキの前方にヒューム管を配設し、該ヒューム管の前端部とシールドマシンの推進ジャッキとの間に1乃至数個のセグメントが介装されており、且つ、前記ヒューム管の前端外側面と、シール材を介して前記セグメントの後端外側面に継手を装着し、ヒューム管とセグメントの合接面間にクッション材を介装したことを特徴とするトンネルの構築方法を提供することによって実現した。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳述する。図1は立坑10に設けられた比較的小口径のトンネル発進部11を示し、反力受け12に元押しジャッキ13を当接するとともに、元押しジャッキ13の前方(同図で左方向)にストラット14及び押輪15を介装し、その前方に推進管としてのヒューム管16を設置する。更に、ヒューム管16の前方にシールドマシン17を装着する。尚、ヒューム管16の前端部とシールドマシン17の推進ジャッキ18との間には1乃至数個のセグメント19を介装してある。
【0012】
図2はヒューム管16とセグメント19の合接部分を示し、ヒューム管16の前端外側面に接続用の継手20が所々に装着されている。該継手20の基端には凸部20aを設けてあり、ヒューム管16の外側面の円周方向へ穿設された半円状の溝21へ前記継手の凸部20aを係合させてある。又、この溝21に隣接して止水材22が埋設されている。尚、前記継手20の取付部位は継手の厚みに相当する分だけ凹設されており、継手20がヒューム管16の外側面から突出せず、ヒューム管16の外径寸法を超えないように装着されている。
【0013】
一方、ヒューム管16に接続されるセグメント19の後端外側面には、ヒューム管16に接近するにつれて外形寸法が漸減するようにテーパー部19aが設けられ、前記継手2
0の先端とこのテーパー部19aとの間にシール材23が介装されている。更に、ヒューム管16とセグメント19の合接面間にクッション材24が介装されている。斯くして、前記ヒューム管16とセグメント19とが止水されて無理なく合接される。
【0014】
而して、図1に示した元押しジャッキ13を伸長して、前記ヒューム管16の後端部を前方へ押圧すれば、この押圧力がセグメント19及びシールドマシン17へ伝達され、前記ヒューム管16とセグメント19並びにシールドマシン17が地山の前方へ移動する。このとき、シールドマシン17のカッタ27の隙間から移入した土砂は排土管等の排土装置(図示せず)を使用して地上へ排土される。
【0015】
そして、元押しジャッキ13のストローク分だけ前記ヒューム管16が前方へ移動したときは、元押しジャッキ13を一旦収縮して新たなストラット14を挿入し、再び元押しジャッキ13を伸長して前記ヒューム管16を更に前方へ推進させる。このように、元押しジャッキ13を伸縮してストラット14を順次挿入しながらヒューム管16を前方へ推進させていき、ヒューム管16の全長に相当する距離以上推進したときは、元押しジャッキ13を一旦収縮して前記ストラット14を取り除き、図示は省略するが、元押しジャッキ13とヒューム管16との空間部に新たなヒューム管を挿入する。このとき、既存のヒューム管16の後端部と新たなヒューム管の前端部を継手にて接続する。そして、再び元押しジャッキ13で新たなヒューム管の後端部を前方へ押圧する。斯かる動作を繰り返し、推進工法によりトンネルを構築していく。
【0016】
図3に示すように、新たなヒューム管16,16…を接続しながらトンネルを構築していき、推進工法での限界地点に達したときは、前記元押しジャッキ13の使用を停止する。そして、シールドマシン17の推進ジャッキ18を使用し、カッタ27を回転して地山を掘削する。即ち、推進工法からシールド工法に切り換える。
【0017】
前述したように、前記ヒューム管16の前端部と推進ジャッキ18との間に1乃至数個のセグメント19を介装してあるため、該セグメント19はシールド工法に切り換えたときに直ちにシールドマシン17の掘進反力に対抗し易い。又、予めセグメント19を介装してあることにより、新たなセグメントの覆工が簡易且つ正確に行われる。
【0018】
然る後は、図4に示すように、シールド工法にてトンネルの構築を継続していけば、トンネルの延長距離を大きくすることができる。
【0019】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図は本発明の実施の形態を示すものである。
【図1】トンネルの発進部を示す縦断側面図。
【図2】ヒューム管とセグメントの合接部分を示す要部縦断側面図。
【図3】推進工法での限界地点に達したときのトンネルの縦断側面図。
【図4】シールド工法にて施工を継続したときのトンネルの縦断側面図。
【符号の説明】
【0021】
11 トンネルの発進部
12 反力受け
13 元押しジャッキ
16 ヒューム管
17 シールドマシン
18 推進ジャッキ
19 セグメント
20 継手
22 止水材
23 シール材
24 クッション材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの発進部に反力受けを設け、該反力受けに元押しジャッキを当接し、元押しジャッキの前方に推進管を設置するとともに、更に推進管の前方にシールドマシンを装着し、先ず、トンネルの発進部近傍では前記元押しジャッキを使用して推進工法にて施工し、推進工法の限界地点に達したときは、前記元押しジャッキの使用を停止してシールドマシンの推進ジャッキを使用し、推進工法からシールド工法に切り換えて施工するトンネルの構築方法に於いて、
上記元押しジャッキの前方にヒューム管を配設し、該ヒューム管の前端部とシールドマシンの推進ジャッキとの間に1乃至数個のセグメントが介装されており、且つ、前記ヒューム管の前端外側面と、シール材を介して前記セグメントの後端外側面に継手を装着し、ヒューム管とセグメントの合接面間にクッション材を介装したことを特徴とするトンネルの構築方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−233752(P2006−233752A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111359(P2006−111359)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【分割の表示】特願平10−15682の分割
【原出願日】平成10年1月28日(1998.1.28)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】