説明

トンネル水噴霧設備

【課題】自動弁装置を起動した際に予告放水から本格放水に切り替わる放水状態を監視可能とする。
【解決手段】自動弁10、起動弁12、初期放水圧力制御弁15、圧力調整弁16から構成される自動弁装置10を備えたトンネル水噴霧設備について、自動弁10の駆動機構による弁移動位置を検出するポテンショメータ150を設ける。センタ制御装置はポテンショメータ150の位置検出信号から自動弁10の低圧設定制御による弁移動位置を判別して予告放水を表示し、その後の自動弁10の規定圧設定制御による弁移動位置を判別して本格放水を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内に設置された水噴霧ノズルに消火用水を供給して散布させるトンネル水噴霧設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用設備が設置されている。このような非常用設備としては、火災の監視と通報のため火災検知器や非常電話が設けられ、火災の消火や延焼防止のために消火栓装置やトンネル防護のための水噴霧ヘッドから水を散布させる水噴霧設備が設けられる。
【0003】
水噴霧設備は50メートル間隔の散水区画単位に1台の自動弁装置が設置され、5メートル間隔に配置した複数の水噴霧ヘッドに対し自動弁装置から加圧消火用水を供給して一斉に散水させる。
【0004】
このようなトンネル水噴霧設備では、起動直後から所定時間の間、走行している自動車の運転者に放水開始を警告する低圧設定による放水量の少ない予告放水を所定時間行い、その後、規定圧設定により本格放水を行う2段階放水を行うようにしている。
【0005】
またトンネル水噴霧設備は非常時に備えて、水噴霧ヘッドから実放水を行う定期点検を実施している。2段階放水を行う水噴霧設備では、点検時に、ヘッドからの放水状況を目視し、自動弁の起動で予告放水が開始され、その後に本格放水に切り替わることを確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−334388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の点検にあっては、予告放水から本格放水に切り替わる様子を水噴霧ヘッドの放水状況を目視して判断していたため、水噴霧ヘッドの状態、例えばヘッド破損や詰まりなどがあると、放水状況からは正確な2段階放水の様子が判断しづらく、点検時に2段階放水による放水動作の確認が充分にできないという問題がある。
【0008】
また、所定時間の予告放水の後に本格放水の切替動作は、点検時に限らず実火災時にも確認できた方が良く、従来の構成では確認することができなかった。
【0009】
本発明は、自動弁装置を起動した際に予告放水から本格放水に切り替わる放水状態を正確に監視して判断可能とするトンネル水噴霧設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
トンネル内に水噴霧ヘッドを配置し、火災時に自動弁装置の流入出量の制御により所定遅延時間後に所定の低圧設定から所定の規定圧設定に切替え、水噴霧ヘッドから放水状態を切り替えて加圧消火用水を放水するトンネル水噴霧設備に於いて、
自動弁装置の低圧設定及び規定圧設定を検出する設定状態検出部と、
設定状態検出部の検出信号から自動弁装置の予告放水及びその所定時間後の本格放水を監視する放水状態監視部とを設けたことを特徴とする。
【0011】
ここで、放水状態監視部は、予告放水から本格放水に移行するまでの予告放水での放水時間を監視する。
【0012】
また、自動弁装置は、
弁体の開閉により1次側圧力水を2次側の前記水噴霧ヘッドへ供給する自動弁と、
自動弁を駆動制御する起動弁と、
2次側圧力水の流入出量により所定遅延時間後に所定の低圧設定から所定の規定圧設定に切替え、自動弁の弁体の駆動により2次側放水圧力を設定された低圧設定又は規定圧設定に制御する圧力調整弁とを備え、
設定状態検出部は前記自動弁に設けられて弁体の移動位置を検出し、放水状態監視部は弁体の移動位置を判別して予告放水及びその後の本格放水を判別する。
【0013】
設定状態検出部は、自動弁の弁体の弁軸から外部に延在したステムの直線移動により作動して位置に応じた信号を出力するポテンショメータである。
【0014】
本発明の別の形態にあっては、
本発明の自動弁装置は、
弁体の開閉により1次側圧力水を2次側の前記水噴霧ヘッドへ供給する自動弁と、
自動弁を駆動制御する起動弁と、
自動弁の初期開度への開放後に2次側に発生する初期放水圧力により開動作して初期開度の維持を解除する初期放水圧力制御弁と、
2次側圧力水の流入出量により所定遅延時間後に所定の低圧設定から所定の規定圧設定に切替え、自動弁の弁体の駆動により2次側放水圧力を設定された低圧設定又は規定圧設定に制御する圧力調整弁とを備え、
設定状態検出部は前記初期放水圧力制御弁の開動作を検出する予告放水検出器と、自動弁の規定圧設定制御による弁移動位置を検出する本格放水検出器と、
を設けたことを特徴とする。
【0015】
ここで予告放水検出器は、初期圧力調整弁の開動作に伴う弁駆動機構から外部に取り出したステムの位置を検出して作動する予告放水検出スイッチであり、
本格放水検出器は、自動弁の規定圧設定制御に伴う弁駆動機構の外部に取り出したステムの位置を検出して作動する本格放水検出スイッチである。
【0016】
本発明の別の形態にあっては、
自動弁装置は、
弁体の開閉により1次側圧力水を2次側の前記水噴霧ヘッドへ供給する自動弁と、
自動弁を駆動制御する起動弁と、
2次側圧力水の流入出量により所定遅延時間後に所定の低圧設定から所定の規定圧設定に切替え、自動弁の弁体の駆動により2次側放水圧力を設定された低圧設定又は規定圧設定に制御する圧力調整弁とを備え、
設定状態検出部は前記圧力調整弁に設けた圧力設定部の低圧設定位置及び規定圧設定位置を検出することを特徴とする。
【0017】
ここで設定状態検出部は、圧力設定部に設けたスプリング荷重を変更する移動部材の低圧設定位置及び規定圧設定位置を検出する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低圧設定制御による予告放水と規定圧設定制御による本格放水を行う自動弁装置の設定状態を検出する設定状態検出部を設け、設定状態検出部の検出信号から予告放水と本格放水の表示や経過時間の測定をするようにしたため、遠隔からでも自動弁装置による予告放水と本格放水との2段階放水の様子を正確に監視して判断することができる。
【0019】
また点検時のみならず、火災により起動した際にも、監視室などで起動した水噴霧ヘッドにおける予告放水の開始、予告放水から本格放水へ切り替わり、本格放水の継続といった現場の放水状況を適確に把握することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるトンネル水噴霧設備の全体構成を示した説明図
【図2】図1の自動弁装置の実施形態を示した説明図
【図3】図2の自動弁の断面図
【図4】図1の自動弁装置により制御される放水圧力のタイムチャート
【図5】図2の初期放水圧力制御弁の断面図
【図6】開動作した図1の初期放水圧力制御弁の断面図
【図7】図2の圧力調整弁の断面図
【図8】図7の圧力調整弁におけるシリンダポート部分の断面図
【図9】図7の圧力調整弁を設定規定圧の切替え状態とした場合の断面図
【図10】図2の実施形態において起動弁の動作により初期放水状態に動作した自動弁装置の説明図
【図11】図2の自動弁装置による予告放水と本格放水を監視するセンタ制御装置を示したブロック図
【図12】図1の自動弁装置の他の実施形態を示した説明図
【図13】図12の自動弁の断面図
【図14】図12の初期放水圧力制御弁の断面図
【図15】開動作した図12の初期放水圧力制御弁の断面図
【図16】図12の自動弁装置による予告放水と本格放水を監視するセンタ制御装置を示したブロック図
【図17】本発明の他の実施形態における図1の自動弁装置を示した説明図
【図18】本発明の他の実施形態における図1の圧力調整弁を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明によるトンネル水噴霧設備の全体構成を示した説明図である。図1において、自動弁装置1はトンネル側壁のコンクリート枠体に対し枠抜きされたスペースに50メートル間隔の水噴霧区間に1台ずつ設置されている。自動弁装置1の1次側には給水配管6が接続され、給水配管6には所定圧力の加圧消火用水が充填されている。自動弁装置1の2次側には水噴霧配管3が設けられ、水噴霧配管3はコンクリート側壁に沿って立ち上がった後に長手方向に分岐され、所定間隔で複数の水噴霧ヘッド2が接続されている。
【0022】
自動弁装置1は信号線8を介してセンタ制御装置4に接続されている。自動弁装置1はトンネル内の火災検知に基づきセンタ制御装置4から起動信号を受信して水噴霧ヘッド2から低圧による予告放水を行い、所定時間経過後に規定圧に昇圧して水噴霧ヘッド2からの本格放水を行う(2段階放水)。
【0023】
また自動弁装置1には水噴霧ヘッド2に対する予告放水とその後の本格放水を検出する検出器が設けられており、検出信号をセンタ制御装置4に送って自動弁装置1を起動した際に予告放水および本格放水の状況を表示して把握できるようにしている。
【0024】
センタ制御装置4に対してはポンプ制御盤5と防災受信盤7が設けられている。ポンプ制御盤5は、センタ制御装置4からの自動弁装置1の起動または遠隔テストに伴うポンプ起動信号を受けてポンプ設備を運転し、給水配管6に加圧した消火用水を供給する。
【0025】
防災受信盤7は図示しないトンネル内に設置された火災検知装置からの火災検知信号を受信して火災警報を行うもので、火災警報に連動してセンタ制御装置4に火災移報信号を出力して、火災発生地区に対応した自動弁装置1の遠隔起動を行わせる。
【0026】
ポンプ制御盤5に近い給水配管6の位置には流量計9が設けられる。例えば流量計9は自動弁装置1に対する給水配管26のトンネル入口付近などに設けられる。流量計9は点検時や火災時に自動弁装置1で決まる水噴霧区間単位の実放水の際に流量を計測し、自動弁装置1や水噴霧ヘッド2の性能判定に用いられる。
【0027】
図2は本発明による自動弁装置の実施形態を示した説明図である。図2において、本発明の自動弁装置は自動弁10、起動弁12、初期放水圧力制御弁15、圧力調整弁16で基本的に構成され、更に圧力スイッチ46、自動排水弁48及びテスト放水弁50を設けている。また本発明にあっては、予告放水のための低圧設定から本格放水のための規定圧設定に圧力を切替える圧力調整弁16のポートP4に対する加圧ラインに、遠隔制御により動作して調整モード設定弁として機能する電動弁100を設けている。
【0028】
自動弁10は弁ボディ20の一方に流入口22を持ち、他方に流出口24を持ち、流入口22側にはポンプ設備からの配管が接続され、流出口24にはトンネル内に設置した水噴霧ヘッド側の配管が接続されている。
【0029】
自動弁10には弁駆動機構のよる弁の移動位置を検出する設定状態検出部としてポテンショメータ150が設けられる。ポテンショメータ150は弁駆動機構から外部に延在したステムの直線移動により作動し、位置に応じて抵抗値を変化させ、位置に応じた電圧信号または電流信号を図1のセンタ制御装置4に出力する。この自動弁10の詳細は図3に取り出して示す。
【0030】
図3において、自動弁10は、弁ボディ20の内部に仕切壁26を有し、仕切壁26の弁穴55に対し主弁30を配置している。弁穴55の上部には弁座28が形成され、弁座28に対し主弁30に設けた弁シール56を押圧することで弁を閉鎖状態としている。
【0031】
主弁30はスリーブ32aと一体に備えた主ピストン32に連結されている。主ピストン32は主シリンダ34に摺動自在に設けられ、主ピストン32の下側に開放加圧側シリンダ室34aを形成し、上部に閉鎖加圧側シリンダ室34bを形成している。また主シリンダ34の内側にはシリンダ筒38が配置され、シリンダ筒38に対しても主ピストン32は摺動自在に挿入されている。
【0032】
主シリンダ34の上部にはカバー62が装着され、カバー62の中にスプールロッドとして機能するステム40を装着した駆動軸36が配置され、駆動軸36の下端は主弁30にナット締めにより固定されている。ステム40は途中に弁体として機能するシール66を装着しており、このシール66の近傍のカバー62内の位置にスプール弁座64を形成している。
【0033】
主シリンダ34に対しては、シリンダポートC1、C2が設けられ、図2に示したようにシリンダポートC1に対し配管L1、L2、圧力調整弁16、配管L3を介して1次側の圧力水を導入することで主ピストン32を上方に移動することができる。
【0034】
またステム40を備えたカバー62に対しては、第1ポートとしてのポートS1と第2ポートしてのポートS2が設けられる。このポートS1、S2の間にスプール弁座64が位置する。尚、主弁30は下側にガイド部30aを一体に形成しており、主弁30の開閉時にガイド部30aを弁穴55に対し摺動させて開閉時の位置決めを行なっている。
【0035】
ポテンショメータ150はステム40の先端を外部に取り出したカバー62の横に取り付けられ、ロッド152とステム40を連結部材154で連結し、主弁30の移動をポテンショメータ150内の摺動接点に伝えている。ここでステム40による連結部材154の移動位置は、弁閉位置a、低圧設定制御による予告放水位置b及び規定圧設定制御による本格放水位置cが決まっている。
【0036】
再び図2を参照するに、自動弁10の流入口22側に開口した1次側には1次圧取出口42が設けられ、ここから配管L1を接続して遠隔操作により開閉する起動弁12に接続している。起動弁12は手動起動弁14が並列接続されている。起動弁12の2次側は配管L2により圧力調整弁16の入力ポートP1に接続される。圧力調整弁16の出力ポートP2は配管L3を介して自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aに対するシリンダポートC1に接続されている。
【0037】
また自動弁10の流出口24に開口した2次側には2次圧取出口44が設けられ、ここから配管L8が引き出され、圧力調整弁16のポートP4に接続される。更に配管L8は圧力調整弁16の圧力検知ポートP3に接続された後、初期放水圧力制御弁15側に接続される。また2次圧取出口44側に示すように配管L8には圧力スイッチ46が接続され、また排水側との間には常時開放され消火時の水圧で閉鎖する自動排水弁48を接続し、これと並列に手動開放可能なテスト放水弁50を接続している。
【0038】
自動弁10の閉鎖加圧側シリンダ室34bのシリンダポートC2は配管L5に接続され、更に配管L4を介してステム40側のポートS1に接続される。更にステム40側のポートS2は配管L6に接続され、この配管L6は圧力調整弁16側からの配管L8に接続される。
【0039】
ここで自動弁10のステム40側の配管L5、配管L4、ポートS1、ステム40の周囲の流路、ポートS2、配管L6となる経路は主ピストン32を開放側に駆動した際の閉鎖加圧側シリンダ室34bからの水の流出を行なう循環経路を構成しており、この循環経路とステム40及びそのシール66により自動弁装置の停止制御機構が構成されている。
【0040】
この停止制御機構は起動弁12の動作により1次側圧力水を開放加圧側シリンダ室34aに導入して主ピストン32を駆動して弁座28を開放した際に、主弁30の開度を予め示した初期開度に移動して停止させるための機能を有する。即ち、図3の自動弁10を参照すると、主ピストン32が開放加圧側シリンダ室34aに対する1次側圧力水の導入を受けて上方に移動すると、これに伴って駆動軸36に装着しているステム40も上昇する。
【0041】
初期状態においてステム40側のポートS1とポートS2は内部の流路を介して連通しているが、駆動軸36が上昇してシール66はスプール弁座64に当接すると、ポートS1、S2間が遮断され、この結果、図2におけるシリンダポートC2からの水の排出が止まり、主ピストン32が停止し、主弁30は所定の初期開度(予告放水開度)を維持することになる。
【0042】
初期放水圧力制御弁15は自動弁10を初期開度に開いた状態で2次側に加圧消火用水を供給し、ヘッドからの予告放水が行なわれた際の2次側圧力の発生を受けて入力ポートI1と出力ポートI2との間を開くように動作し、配管L4と配管L7の間を連通する。
【0043】
自動弁10を初期開度に開放した後に2次側圧力が発生して初期放水圧力制御弁15が開くと、シリンダポートC2からの配管L5が初期放水圧力制御弁15を通って配管L7に連通し、配管L7は配管L8を介して自動弁10の2次側に接続されているため、自動弁10の主ピストン32の停止が解除されて、開駆動可能な状態となる。
【0044】
圧力調整弁16は、通常はポートP4に対する加圧ラインに設けた調整モード設定として機能する電動弁100を開状態としており、自動弁10の開閉制御により、図4のタイムチャートに示すような放水圧力Pの制御を行なう。
【0045】
図4において、時刻t0で起動弁12を動作すると、自動弁10は初期開度に開放することで2次側に加圧消火用水が供給され、2次側圧力が配管L8を介して圧力調整弁16の圧力検知ポートP3に加わる。初期状態にあって圧力調整弁16は例えば2次側圧力を0.15MPaとする低圧設定の状態にあり、従って時刻t1より放水圧力P1を低圧設定に保つように自動弁10の圧力制御を行ない、水噴霧ヘッドから予告放水を行う。
【0046】
また圧力調整弁16は後の説明で明らかにするように、2次側圧力を開状態にある電動弁100を介してポートP4に受けた際にピストンの駆動により設定圧を低圧設定から所定の遅延時間後に規定圧設定に切り替える機能を備えている。このため時刻t1から例えば5〜15秒の範囲内で設定した一定時間、例えば10秒経過する時刻t2で、それまでの低圧設定による圧力設定から規定圧、例えば0.34MPaの設定による圧力制御に段階的に切り替わる。このような図4の放水圧力の圧力制御によって、時刻t0から時刻t2までが予告放水の圧力制御であり、時刻t2以降が本格放水のための圧力制御となる。
【0047】
図5(A)は本発明の圧力応答型制御弁として機能する図2の初期放水圧力制御弁15の断面図であり、図5(B)に閉鎖状態のシンボルを示す。
【0048】
図5(A)において、初期放水圧力制御弁15は、弁ボディ101aの上部にカバー102を配置し、下側に弁ボディ101bを装着している。弁ボディ101aの上部にはダイヤフラム104が設けられ、ダイヤフラム104の下側にダイヤフラム室106を形成している。ダイヤフラム104は、スプール弁108の上部に押え金具112とリテーナ114で挟んだ状態でナット116のボルト部への締付けで固定されている。
【0049】
スプール弁108は上端から下端に連通する連通孔110を中心軸方向に形成している。ダイヤフラム104を固定したリテーナ114の上部にはスプリング118が組み込まれる。スプリング118の上部はリテーナ122に当接しており、リテーナ122に対しては設定圧力調整ネジ120の先端が当接している。
【0050】
スプリング118は、設定圧力調整ネジ120のねじ込み位置で決まるスプリング荷重をスプール弁108に加え、これによってスプール弁108が開動作を行うための設定圧を決めている。
【0051】
弁ボディ101aには入力ポートI1と出力ポートI2が設けられている。出力ポートI2は、この実施形態にあっては圧力検知ポートを兼ねている。出力ポートI2はダイヤフラム室106に連通している。スプール弁108のダイヤフラム室106に開口したスプール孔の部分には弁座109が形成され、ここにスプールテーパ部に設けたシール111を当接することで、入力ポートI1と出力ポートI2の連通を遮断した閉鎖位置となっている。
【0052】
ダイヤフラム104の下側にはフェールセーフダイヤフラム124がタンデム配置される。フェールセーフダイヤフラム124は、弁ボディ101aと弁ボディ101bの間に外周部が固定され、中央部に押え金具128、130をナットにより固定し、押え金具128の連通孔132にスプール弁108の下部を挿入している。なお、フェールセーフダイヤフラム124の上側の空隙は連通孔125により外部と連通している。
【0053】
更に、カバー102には、小孔103が形成され、ダイヤフラム104の破損により漏洩した圧力水を小孔103から流出させることで、ダイヤフラム104の破損を外部から確認できるようにしている。
【0054】
このような構造を持つ図5(A)の初期放水圧力制御弁15は閉鎖状態にあり、シンボルで表わすと図5(B)のようになり、ポートI1とポートI2の連通が断たれている。
【0055】
図6(A)は開動作した図2の初期放水圧力制御弁の断面図であり、図6(B)は開放状態のシンボルである。
【0056】
図6(A)において、圧力検知ポートを兼ねた出力ポートI2には図2に示すように、配管L7、L8を介して自動弁10の2次側の放水圧力が主弁30を初期開度に開放した際に加わる。この出力ポートI2に加わる2次側圧力はダイヤフラム室106に導入され、導入圧がスプリング118の押圧荷重で決まる設定圧を超えると、ダイヤフラム104が上方に変形し、スプリング118に抗してスプール弁108を上方にリフトする。
【0057】
このため、スプール弁108のシール111が弁座109から離れて開動作し、閉鎖加圧側シリンダ34bの水を圧力水として配管L5、L4を介し入力ポートI1、開放した弁座109の隙間部分、ダイヤフラム室106を通って、出力ポートI2に連通し、入力ポートI1から出力ポートI2に圧力水が流れる。
【0058】
この初期放水圧力制御弁15の開動作の状態は、図6(B)のシンボルに示すように、ポートI1とポートI2が2次側圧力Paを受けて連通した状態となる。
【0059】
次にダイヤフラム104が破損した場合のフェールセーフ動作を説明する。ダイヤフラム104が破損した状態で出力ポートI2に2次側圧力が加わると、2次側圧力はダイヤフラム室106を介して破損したダイヤフラム104に加わり、ダイヤフラム104の破損部分からスプリング118を収納したカバー102内に流出する。
【0060】
カバー102内に流出した圧力水は、スプール弁108の中心軸方向に形成した連通孔110を通って下部のフェールセーフダイヤフラム室126に流れ込み、フェールセーフダイヤフラム124を上方に変形し、押え金具128をスプール弁108の下側段部を当接し、これによってスプール弁108を図6と同じ開動作の状態に押し上げ、入力ポートI1と出力ポートI2を連通させる。
【0061】
このため本発明の初期放水圧力制御弁15にあっては、ダイヤフラム104が破損した場合、圧力検知ポートを兼用した出力ポートI2に2次側圧力が加わると、この圧力水は破損したダイヤフラム104から流出した後に下部のフェールセーフダイヤフラム室126に流入してフェールセーフダイヤフラム124を押圧することとなり、破損したダイヤフラム104に代わってフェールセーフダイヤフラム124が機能することとなり、出力ポートI2からの導入圧がスプリング118で決まる設定圧を超えたときに、フェールセーフダイヤフラム124の力によりスプール弁108が開動作を行い、正常に初期放水圧力制御弁15を動作することができる。
【0062】
図7は図2の圧力調整弁16の断面図であり、図8はポートP2側を見た断面図を示している。図7において、圧力調整弁16は下部の圧力調整部70と上部の圧力設定部72で構成されている。圧力調整部70には入力ポートP1、圧力検知ポートP3、更に図8に示す出力ポートP2が設けられている。
【0063】
入力ポートP1はスプール弁76に対し連通され、スプール弁76は中間の鍔状の弁体部に対応してボディ側に弁座78を形成している。このため入力ポートP1から流入した圧力水はスプール弁76の周囲を通り、図8に示す出力ポートP2に流れる。この入力ポートP1から出力ポートP2に対する圧力水の流れに対し、圧力検知ポートP3に2次側圧力水を導入し、上部の圧力設定部72によりダイヤフラム弁74に加わる荷重との差圧に基づいてスプール弁76を開閉制御し、2次圧力がスプリング80で決まる設定圧となるように自動弁10に対する出力ポートP2の圧力を調整する。
【0064】
この圧力調整動作は、ダイヤフラム弁74に加わる圧力がスプリング80による設定圧を越えると、ダイヤフラム弁74が上方に変形してスプール弁76をリフトし、入力ポートP1と出力ポートP2(図8参照)の間を遮断し、自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aに対する圧力水の供給を遮断することで、スプリング60(図3参照)の力で主弁30を閉方向に動作する。
【0065】
逆に、ダイヤフラム弁74に加わる圧力がスプリング80による設定圧を下回ると、ダイヤフラム弁74が下方に変形してスプール弁76を押し下げ、入力ポートP1と出力ポートP2(図8参照)の間を連通し、自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aに圧力水を供給して主弁30開方向に動作する。これによって2次側圧力を設定圧に保つように自動弁10が制御される。
【0066】
図7の初期状態において、スプリング80はダイヤフラム弁74の上部と、ガイドスリット86に対するピン84の挿入で位置決めされたスライダ82との間隔で決まるスプリング力により低圧設定の状態にある。
【0067】
圧力調整弁16の上部に設けた圧力設定部72にはシリンダ90が設けられ、シリンダ90の中にジスク88が摺動自在に設けられている。ジスク88の下側にはフレーム95を介してプランジャ94が設けられており、プランジャ94の先端は下部のスライダ82にスプリング85を介して対向配置されている。
【0068】
シリンダ90のシリンダ室90aにはポートP4で連通され、ここに2次側圧力水を導入する。このポートP4に対する加圧ラインには、図2に示したように、低圧設定の調整時に閉状態に遠隔制御される調整モード設定弁として電動弁100が設けられている。
【0069】
またジスク88には逆止弁96が設けられ、初期的にポートP4に圧力水を導入した際に上側のシリンダ室90aから下側のシリンダ室90bに水を流して充満させるようにしている。これに対し、水が充満した状態でポートP4に2次側圧力が加わった際のジスク88の下降に対し、逆止弁96は下側から上側への水の流れを阻止する。
【0070】
シリンダ90のシリンダ室90a、90bのそれぞれに対してはポートP5、P6が設けられ、この間を配管L9で接続し、配管L9の途中には流量を調整自在なニードル18が設けられている。
【0071】
このためポートP4に2次側圧力水を導入した際のジスク88の移動速度はシリンダ室90bからシリンダ室90aに水を流すニードル18の設定流量により決まり、これによってジスク88が初期位置から先端のプランジャ94がスライダ82に挿接してスプリング80を押圧することで低圧設定から規定圧設定に切り替えるまでの遅延時間が決まる。
【0072】
一方、ポートP4に対する加圧ラインに設けた図2の電動弁100を調整時に閉状態としていると、シリンダ室90aに対し加圧水が供給されず、低圧設定を維持し続けることとなる。
【0073】
図11は、図2の自動弁装置による予告放水と本格放水を監視するセンタ制御装置を示したブロック図である。図11において、自動弁装置10には図2に示したようにセンタ制御装置156により遠隔制御される起動弁12と電動弁100が設けられ、更に、自動弁10による弁移動位置を検出するポテンショメータ150が設けられている。
【0074】
センタ制御装置4には放水制御部156と放水表示部158が設けられる。放水制御部156はトンネル内に設置した火災検知器による火災検知に基づき特定された水噴霧区間の自動弁装置10に対し例えば担当者の起動操作により起動信号を送り、起動弁12の遠隔開放により自動弁を開制御し、初期放水として予告放水を行った後に、本格放水に切替える放水制御を行わせる。
【0075】
放水表示部158は自動弁装置10に設けたポテンショメータ150からの弁位置の検出信号を受信し、予め設定した予告放水位置及び本格放水位置を示す設定値と比較し、予告放水および本格放水を判別して放水状況を表示する。放水状況の表示は、予告放水灯と本格放水灯を設けて点灯表示するか、放水表示灯のみを設け、予告放水中は点滅表示とし、本格放水を判別したら点灯に切替えるなど、適宜の表示を行う。また、予告放水位置の持続時間を測定して、予告放水を規定時間継続して行うかどうかを確認することもできる。予告放水から本格放水への移行する期間(予告放水の放水期間)が規定時間範囲にない場合は警告を行っても良い。
【0076】
次に図2の実施形態における放水制御を説明する。図2の通常監視状態にあっては自動弁10の主弁30は閉鎖しており、主ピストン32の上側の閉鎖加圧側シリンダ室34b、ステム40の周囲、ポートS1、S2及びシリンダポートC2に接続している配管L4、L5、L6、L7、更に配管L8は充水されている。このとき起動弁12は閉鎖状態にある。また圧力調整弁16のポートP4の加圧ラインに設けた電動弁100は開状態としている。
【0077】
トンネル火災の発生により放水を行なう際には、遠隔操作などにより起動弁12を動作して開放させる。起動弁12を開放すると1次圧取出口42から配管L1、L2を介して1次側消火用水が圧力調整弁16の入力ポートP1に供給され、出力ポートP2から配管L3を通って自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aに供給される。
【0078】
このため主ピストン32が上方に移動し、図10に示すように主弁30が開き始める。この主弁30の開放に伴い、駆動軸36も上方に移動するが、スプール弁座64(図3参照)に当接すると流路が遮断され、シリンダポートC2からの液の流出ができなくなり、主ピストン32が停止して主弁30を所定の初期開度に維持する。
【0079】
主弁30が初期開度に開放して1次側から2次側に加圧消火用水が供給されると、水噴霧ヘッドからの放水に伴い2次側に圧力が発生する。この2次側に発生した圧力は2次圧取出口44から配管L8を経由して初期放水圧力制御弁15に加わり、図5に示す閉鎖位置から図6で示す開放位置に作動する。これは図6(A)においてダイヤフラム104の力によりスプリング118に抗してスプール弁108が上方に移動し、入力ポートI1と出力ポートI2が連通した状態である。
【0080】
このためシリンダポートC2からの初期放水圧力制御弁15を通って配管L8に流れる循環経路が形成され、自動弁10における主ピストン32の停止状態が解除され、開閉駆動可能な状態となる。
【0081】
また2次側に発生した圧力は圧力調整弁16の圧力検知ポートP3にも供給され、このとき圧力調整弁16は図7及び図8に示したように低圧設定状態にあり、放水圧力を低圧設定に保つように自動弁10に対する出力ポートP2からの供給圧力を遮断し、低圧設定による放水圧力を維持し、自動弁10の低圧設定制御により予告放水を行わせる。
【0082】
また自動弁10の初期開度により2次側に発生した圧力は、開状態にある電動弁100を介して圧力調整弁16のポートP4にも加わる。ポートP4に2次側圧力が加わると図7の圧力調整部70に設けているジスク88がニードル18の流量で決まる速度で下降を開始する。ジスク88は所定の遅延時間後に図9に示すようにプランジャ94をスプリング80の上部を支持しているスライダ82を押圧する位置に移動し、このジスク88によりスライダ82を押しこみ、スプリング80を圧縮して低圧設定から規定圧設定に切り替える。具体的にはジスク88がストッパー92の下端に当接する位置にジスク88がストロークすると、その時点で所定の規定圧設定に切り替わる。
【0083】
このように圧力調整弁16が低圧設定から規定圧設定に切り替わると、規定圧設定を維持するように主ピストン32の開放加圧側シリンダ室34aに対する供給圧力を調整し、これによって規定圧設定制御による本格放水を行なうことになる。
【0084】
自動弁10による予告放水および本格放水の状況は自動弁10に設けたポテンショメータ150による弁移動位置の検出信号に基づき、図11に示すように、センタ制御装置4の放水表示部(放水状態監視部)158にて表示され、センタ側において起動した水噴霧区画における放水状況を適確に把握できる。また、予告放水の放水期間を監視し、予告放水が予め定められた時間継続して放水されたか把握することができる。予告放水は本格放水前の少水量の放水であり、運転者の視界の妨げを防いで安全に避難させるための重要な放水時間であり、この予告放水が予め定めされた期間だけ正しく放水されたかを表示・記録する。予告放水及び本格放水の放水期間を表示させるようにしてもよい。併せて放水量を表示させてもよい。
【0085】
放水の停止は起動弁12を非作動状態として遠隔的に閉鎖制御すればよい。起動弁12の閉鎖で圧力調整弁16に対する1次側圧力用水の供給が断たれれば出力ポートP2の圧力もなくなり、自動弁10の開放加圧側シリンダ室34aの圧力もなくなり、主弁30はスプリング60の力および主ピストン32の上部に作用する2次側圧力の力で閉鎖位置に戻る。この主弁28が閉鎖状態に戻る時の主ピストン32の動きを決める水の流出は圧力調整弁16、出力ポートP2から圧力検知ポートP3に戻る流路による遅延動作により、緩やかに行なわれる。
【0086】
一方、自動弁の設置工事が完了した後に、圧力調整弁16について実放水をしながら予告放水に必要な低圧設定の値を調整をする場合には、調整モード設定弁となる電動弁100を閉状態に制御した後に起動弁12を動作する。このため自動弁10が初期開度に開放することで2次側に加圧消火用水が供給され、2次側圧力が配管L8を介して圧力調整弁16の圧力検知ポートP3に加わる。
【0087】
初期状態にあって圧力調整弁16は低圧設定(未調整)の状態にあり、放水圧力P1を設定低圧に保つように圧力制御を行なう。しかし、電動弁100を閉状態としているため、図4のように例えば10秒経過する時刻t2を過ぎても低圧設定のままで規定圧設定に切り替わることがなく、この状態で圧力調整弁16の設定圧を0.15MPaの低圧設定となるように調整する。圧力調整弁16を調整する際は、図7に示す低圧設定調整リング99の位置を調整して、ピン84の上下方向の位置を動かすことでスプリング80の伸縮度を調整し、ダイヤフラム弁74にかかるスプリング80の力を変更して低圧設定時の放水量の調整を行う。調整したあとに、自動弁10に設けられたポテンショメータ150の位置(計測値)を測定してセンタ制御装置4にて記憶する。その後の実放水時の自動弁10の状況は記憶したポテンショメータ150の数値で判断を行う。
【0088】
圧力調整弁16の設定低圧の調整が済んだならば、例えば本格放水を確認するため電動弁100を開状態にすると、例えば10秒後に調整済みの低圧設定による圧力設定から規定圧、例えば0.34MPaの設定による圧力制御に段階的に切り替わる。本格放水に切り替わった後に自動弁10のポテンショメータ150の計測値をセンタ制御装置4で記憶する。また、自動弁10の主弁30を閉鎖している時のポテンショメータ150の計測値もセンタ制御装置4にて予め記憶して、図3に示す全閉時a、予告放水時b、本格放水時cのポテンショメータ150の計測値を記憶することで、火災発生して実放水時にセンタ制御装置4にて放水状態の監視及び状態表示、履歴の記憶や表示ができる。予告放水状態から所定時間遅延後に本格放水に移行する一連の自動弁装置の動作を監視することができる。
【0089】
なお、電動弁100はニードル18が設けられた配管L9に直列に接続しても良く、電動弁100を閉状態に制御した後に起動弁12を動作すると、配管L9内の流水が遮断されることから低圧設定のままで規定圧設定に切り替わることがなく、低圧設定(0.15MPa)の調整が可能である。
【0090】
また水噴霧設備を定期点検する際には、図1に示したセンタ制御装置1から点検を行う水噴霧区間の自動弁装置1を順次指定して遠隔操作により起動弁12を開制御する。起動弁12を開制御すると自動弁10が初期開度に開放した後に圧力調整弁16による低圧設定制御により予告放水が行われ、所定時間を経過すると圧力調整弁16の規定圧設定制御による本格放水に切り替わる。
【0091】
このような点検時の自動弁10による予告放水および本格放水の状況は自動弁10に設けたポテンショメータ150による弁移動位置の検出信号に基づき、図11に示すように、センタ制御装置4の放水表示部158に表示され、センタ側において起動した水噴霧区画における放水状況を遠隔から適確に把握できる。
【0092】
また点検時の実放水による性能判定は、規定圧設定制御による正常な水噴霧ヘッド当りの放水量を予め定めておき、図1に示した流量計9により点検実放水による流量を計測し、実放水したヘッド数で決まる正常時の放水量と比較判断する。定期的に実放水して水噴霧ヘッドからの実放水を採取して放水量を計測して点検するようにしても良い。
【0093】
図12は図1の自動弁装置の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態にあっては、予告放水を初期放水圧力制御弁15の動作から検出し、また、本格放水を自動弁10の動作から検出するようにしたことを特徴とする。
【0094】
図12において、自動弁装置10は図2の実施形態と同様に、自動弁10、起動弁12、初期放水圧力制御弁15、圧力調整弁16、圧力スイッチ46、自動排水弁48、テスト放水弁50及び電動弁100で構成され、その詳細は図3乃至図9に示したと基本的に同じである。
【0095】
本実施形態に固有な構成として、まず初期放水圧力制御弁15の下側内部に点線で示すように、予告放水検出器として機能する予告放水検出スイッチ160を設けている。予告放水検出スイッチ160は初期放水圧力制御弁の開動作に伴う弁駆動機構の外部に取り出したステムの位置を検出してオンする。
【0096】
また自動弁10のステム40に対しては、圧力調整弁16の規定圧設定制御によるステム40の移動位置を検出してオンする本格放水検出器として機能する本格放水検出スイッチ162を設けている。
【0097】
図13は図12の自動弁10を取り出して示した断面図であり、その構造及び動作は図3の実施形態と同じであるが、図3のポテンショメータ150に代え、本格放水検出スイッチ162を設けている。本格放水検出スイッチ162はカバー62の横に取付部材168で支持され、ステム40の先端に装着したコマ164に対し先端にローラを備えたスイッチレバー166を当接している。
【0098】
自動弁10の規定圧設定制御が行われると、主弁30のストロークによりステム40が上方に移動し、コマ164は164aに示す位置に移動し、スイッチレバー166を回動してスイッチオンし、本格放水検出信号を出力する。
【0099】
図14(A)は図12の初期放水圧力制御弁15の断面図であり、図14(B)に閉鎖状態のシンボルを示し、その構成及び動作は図4と同じになる。
【0100】
図14における固有の構成としては、ダイヤフラム104に連結したスプール弁108の下側にステム170を一体に形成し、ステム170をフェールセーフダイヤフラム124を挟み付ける押え金具128,130を貫通して外部に取り出し、ステム170の先端側にカバー172の装着により予告放水検出スイッチ160を配置している。予告放水検出スイッチ160はスイッチレバー160aの先端をステム170の端面に当接し、スイッチノブ160bを出没させるようにしている。
【0101】
初期放水圧力制御弁15は、圧力検知ポートを兼ねた出力ポートI2に加圧消火用水が加わっていない通常時は、入力ポートI1と出力ポートI2の間を切り離した閉鎖状態にあり、このとき予告放水検出スイッチ160はスイッチレバー160aによりスイッチノブ160bを押し込んでスイッチオフとしている。
【0102】
図12で起動弁12の開制御により自動弁10を初期開度に開放し、圧力検知ポートを兼ねた出力ポートI2には図12に示すように、配管L7、L8を介して自動弁10の2次側の放水圧力が加わると、この出力ポートI2に加わる2次側圧力はダイヤフラム室106に導入され、導入圧がスプリング118の押圧荷重で決まる設定圧を超えると、ダイヤフラム104が上方に変形し、スプリング118に抗してスプール弁108を上方にリフトする。
【0103】
このため、スプール弁108のシール111が弁座109から離れて開動作し、閉鎖加圧側シリンダ34bの水を圧力水として配管L5、L4を介し入力ポートI1、開放した弁座109の隙間部分、ダイヤフラム室106を通って、出力ポートI2に連通し、入力ポートI1から出力ポートI2に圧力水が流れ、初期放水圧力制御弁15は開動作となる。
【0104】
この開動作に伴いスプール弁108の下端に延在したステム170も矢印で示すように上方にリフトし、スイッチレバー160aによるスイッチノブ160bの押し込みが解除されてスイッチオンとなり、予告放水検出信号を出力する。
【0105】
図16は、図12の自動弁装置による予告放水と本格放水を監視するセンタ制御装置を示したブロック図である。図16において、自動弁装置1には図2に示したようにセンタ制御装置4により遠隔制御される起動弁12と電動弁100が設けられ、更に、初期放水圧力制御弁15の開動作から予告放水を検出する予告放水検出スイッチ160と、自動弁10による弁移動位置から本格放水を検出する本格放水検出スイッチ162が設けられている。
【0106】
センタ制御装置4には放水制御部156と放水表示部158が設けられる。放水制御部156はトンネル内に設置した火災検知器による火災検知に基づき特定された水噴霧区間の自動弁装置1に対し例えば担当者の起動操作により起動信号を送り、起動弁12の遠隔開放により自動弁を開制御し、初期放水として予告放水を行った後に、本格放水に切替える放水制御を行わせる。
【0107】
放水表示部158は自動弁装置1に設けた予告放水検出スイッチ162の検出信号を受信して予告放水を表示し、また本格放水検出スイッチ162からの検出信号を受信して本格放水を表示する。放水状況の表示は、予告放水灯と本格放水灯を別々に設けても良いし、放水表示灯のみを設け、予告放水検出で点滅表示とし、本格放水検出で点灯に切替えるなど、適宜の表示を行う。予告放水および本格放水のそれぞれ経過時間を表示してもよい。
【0108】
このような図12の実施形態にあっては、図2のポテンショメータ150の弁位置検出信号から予告放水と本格放水を判別表示する場合に比べ、検出精度はある程度下がるが、検出スイッチですむことから構成が簡単でコストを低減できる。
【0109】
図17は本発明の他の実施形態で用いる自動弁10を取り出して示した断面図であり、その構造及び動作は図3の実施形態と同じであるが、図3のポテンショメータ150に代え、予告放水検出スイッチ174と本格放水検出スイッチ162を設けたことを特徴とする。
【0110】
予告放水検出スイッチ174と本格放水検出スイッチ162はカバー62の上部両側に取付カバー175により配置され、ステム40の先端に装着したコマ176側に対し先端にローラを備えたスイッチレバー178,180を配置している。
【0111】
自動弁10の起動により低圧設定制御により予告放水が行われると、主弁30のストロークによりステム40が上方に移動し、コマ176はスイッチレバー178を回動して予告放水検出スイッチ174をオンし、予告放水検出信号を出力してセンタ制御装置側に表示させる。
【0112】
続いて自動弁10が規定圧設定制御に切り替わって本格放水が行われると、主弁30のストロークによりステム40が更に上方に移動し、コマ176はスイッチレバー180を回動して本格放水検出スイッチ180をオンし、本格放水検出信号を出力してセンタ制御装置側に表示させる。
【0113】
このような図17の実施形態にあっては、図2のポテンショメータ150の弁位置検出信号から予告放水と本格放水を判別表示する場合に比べ、検出精度はある程度下がるが、検出スイッチで済むことから構成が簡単でコストを低減できる。また図12の実施形態では初期放水圧力制御弁15の構造を変更しているが、本実施形態はその必要もない点でも有利である。
【0114】
図18は本発明の他の実施形態で用いる圧力調整弁16を取り出して示した断面図であり、その構造及び動作は図7及び図8に示した実施形態と同じであるが、圧力設定部72に設けたジスク88のストロークによりスプリング80の荷重を調整する際に移動する移動部材となるスライダ82の横に設けたガイド用のピン84の一方の先端にスイッチ作動部材182を固定し、スイッチ作動部材182に対応して予告放水検出スイッチ184と本格放水検出スイッチ186を配置したことを特徴とする。
【0115】
予告放水検出スイッチ184は、図示の初期位置でスイッチ作動部材182の当接を受けてスイッチノブを押し込んでオンするように配置している。本格放水検出スイッチ186は、ジスク88のストロークに伴いピン84が下側に移動して規定圧設定位置に達した時にスイッチ作動部材182の当接を受けてスイッチノブを押し込んでオンするように配置している。
【0116】
図18の圧力調整弁16を図2の実施形態に使用することで、図2の自動弁10に設けているポテンショメータ150が不要となる。
【0117】
図18の圧力調整弁16の動作は次のようになる。図2において、トンネル火災の発生により放水を行なう際には、遠隔操作などにより起動弁12を動作して開放させる。起動弁12を開放すると、主弁30が所定の初期開度に開き、1次側から2次側に加圧消火用水が供給される。2次側に発生した圧力は配管L8を経由して初期放水圧力制御弁15に加って開放位置に作動し、自動弁10における主ピストン32の停止状態が解除され、開閉駆動可能な状態となる。
【0118】
また自動弁10の2次側に発生した圧力は圧力調整弁16の圧力検知ポートP3にも供給され、このとき圧力調整弁16は図18に示すように低圧設定状態にあり、放水圧力を低圧設定に保つように自動弁10に対する出力ポートP2からの供給圧力を遮断し、低圧設定による放水圧力を維持し、自動弁10の低圧設定制御により予告放水を行わせる。
【0119】
このとき予告放水検出スイッチ184はスイッチ作動レバー182によりオン状態にあり、予告放水検出信号を出力してセンタ側に予告放水を表示させる。
【0120】
また自動弁10の初期開度により2次側に発生した圧力は、開状態にある電動弁100を介して圧力調整弁16のポートP4にも加わる。ポートP4に2次側圧力が加わると図18の圧力調整部70に設けているジスク88がニードル18の流量で決まる速度で下降を開始する。
【0121】
ジスク88は所定の遅延時間後に図9に示すようにプランジャ94をスプリング80の上部を支持しているスライダ82を押圧する位置に移動し、このジスク88によりスライダ82を押しこみ、スプリング80を圧縮して低圧設定から規定圧設定に切り替える。具体的にはジスク88がストッパー92の下端に当接する位置にジスク88がストロークすると、その時点で所定の規定圧設定に切り替わる。
【0122】
このようなジスク88のストロークに伴ってスライダ82もストロークし、ピン84に設けたスイッチ作動部材182が予告放水検出スイッチ184から離れるとオフとなり、センタ側に対する予告検出信号の出力が停止する。なお、センタ側では予告検出信号が停止しても、本格放水検出信号が得られるまで予告放水の表示を維持しても良い。
【0123】
ストロークを開始したジスク88がストッパー92の下端に当接する規定圧設定位置に達すると、スライダ82のピン84に設けたスイッチ作動部材182が本格放水検出スイッチ186をオンし、本格放水検出信号を出力してセンタ側で表示させる。
【0124】
なお、図18においては2つの検出スイッチ184、186で予告放水と本格放水の状態監視をしているが、図2のポテンショメータ150を圧力調整弁16に設けてスライダ82の位置をポテンショメータで計測するようにしても良い。
【0125】
なお、自動弁を低圧設定による予告放水から所定時間後に規定圧設定に切り替えて本格放水する自動弁装置としては上記の実施形態に限定されず、2段階の圧力調整を行う適宜の自動弁装置を含む。
【0126】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0127】
1:自動弁装置
4:センタ制御装置
9:流量計
10:自動弁
12:起動弁
15:初期放水圧力制御弁
16:圧力調整弁
100:低圧点検設定弁
101a、110b:弁ボディ
150:ポテンショメータ
156:放水制御部
158:放水表示部
160,184:予告放水検出スイッチ
162,186:本格放水検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に水噴霧ヘッドを配置し、火災時に自動弁装置の流入出量の制御により所定遅延時間後に所定の低圧設定から所定の規定圧設定に切替え、前記水噴霧ヘッドから放水状態を切り替えて加圧消火用水を放水するトンネル水噴霧設備に於いて、
前記自動弁装置の低圧設定及び規定圧設定を検出する設定状態検出部と、
前記設定状態検出部の検出信号から前記自動弁装置の予告放水及びその所定時間後の本格放水を監視する放水状態監視部と、
を設けたことを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル水噴霧設備に於いて、前記放水状態監視部は、予告放水から本格放水に移行するまでの予告放水での放水時間を監視することを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項3】
請求項1記載のトンネル水噴霧設備に於いて、
前記自動弁装置は、
弁体の開閉により1次側圧力水を2次側の前記水噴霧ヘッドへ供給する自動弁と、
前記自動弁を駆動制御する起動弁と、
2次側圧力水の流入出量により所定遅延時間後に所定の低圧設定から所定の規定圧設定に切替え、前記自動弁の弁体の駆動により2次側放水圧力を設定された低圧設定又は規定圧設定に制御する圧力調整弁とを備え、
前記設定状態検出部は前記自動弁に設けられて弁体の移動位置を検出し、前記放水状態監視部は前記弁体の移動位置を判別して予告放水及びその後の本格放水を判別することを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項4】
請求項3記載のトンネル水噴霧設備に於いて、前記設定状態検出部は、前記自動弁の前記弁体の弁軸から外部に延在したステムの直線移動により作動して位置に応じた信号を出力するポテンショメータであることを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項5】
請求項1記載のトンネル水噴霧設備に於いて、
前記自動弁装置は、
弁体の開閉により1次側圧力水を2次側の前記水噴霧ヘッドへ供給する自動弁と、
前記自動弁を駆動制御する起動弁と、
前記自動弁の初期開度への開放後に2次側に発生する初期放水圧力により開動作して前記初期開度の維持を解除する初期放水圧力制御弁と、
2次側圧力水の流入出量により所定遅延時間後に所定の低圧設定から所定の規定圧設定に切替え、前記自動弁の弁体の駆動により2次側放水圧力を設定された低圧設定又は規定圧設定に制御する圧力調整弁とを備え、
前記設定状態検出部は前記初期放水圧力制御弁の開動作を検出する予告放水検出器と、 前記自動弁の規定圧設定制御による弁移動位置を検出する本格放水検出器と、
を設けたことを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項6】
請求項5記載のトンネル水噴霧設備に於いて、
前記予告放水検出器は、前記初期圧力調整弁の開動作に伴う弁駆動機構から外部に取り出したステムの位置を検出して作動する予告放水検出スイッチであり、
前記本格放水検出器は、前記自動弁の規定圧設定制御に伴う弁駆動機構の外部に取り出したステムの位置を検出して作動する本格放水検出スイッチであることを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項7】
請求項1記載のトンネル水噴霧設備に於いて、
前記自動弁装置は、
弁体の開閉により1次側圧力水を2次側の前記水噴霧ヘッドへ供給する自動弁と、
前記自動弁を駆動制御する起動弁と、
2次側圧力水の流入出量により所定遅延時間後に所定の低圧設定から所定の規定圧設定に切替え、前記自動弁の弁体の駆動により2次側放水圧力を設定された低圧設定又は規定圧設定に制御する圧力調整弁とを備え、
前記設定状態検出部は前記圧力調整弁に設けた圧力設定部の低圧設定位置及び規定圧設定位置を検出することを特徴とするトンネル水噴霧設備。
【請求項8】
請求項7記載のトンネル水噴霧設備に於いて、
前記設定状態検出部は、前記圧力設定部に設けたスプリング荷重を変更する移動部材の低圧設定位置及び規定圧設定位置を検出することを特徴とするトンネル水噴霧設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−200361(P2011−200361A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69409(P2010−69409)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】