説明

ドアウェザストリップの組付け構造

【課題】サッシュに一体形成されたリテーナにリテーナ底面と隙間を存して装着される基底部と、該基底部に一体形成され、ドア閉時に車体のドア開口縁部に弾接して車体とドアとの間をシールするシール部と、前記基底部に突出形成され、リテーナ底面に当たってシールするシールリップを有し、ルーフ側のサッシュとセンターピラー側のサッシュのコーナの合せ部に取付けられる型成形部を備えたドアウェザストリップの組付け構造において、型成形部のシールリップがサッシュの合せ部の溶接痕に接触したときに形成される隙より水が室内側に侵入するのを防止する。
【解決手段】サッシュ2a、2bの合せ部はリテーナの室内側部分のみが溶接され、リテーナ3a、3bの合せ部は単に接合されているだけで非溶接とされ、リテーナ底面に弾接するシールリップによるシールラインeは溶接されないリテーナ3a、3bの合せ部に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドア周りに取付けられるドアウェザストリップの組付け構造に関し、ことにルーフ側のリテーナとピラー側のリテーナが接続される箇所のコーナ、例えば図1に示すような自動車のa部及びb部に示すコーナに取付けられる型成形部を備えたドアウェザストリップの組付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアウェザストリップは主として一般に、ドアサッシュに形成されるリテーナ又はドア周りに取付けられるリテーナに嵌着される基底部と、該基底部に一体形成され、ドア閉時に車体のドア開口縁部に弾接して車体とドアとの間をシールするシール部よりなり、シール部は通常中空状のシール部よりなっている。
【0003】
ドアウェザストリップのリテーナへの組付けは一般に前記基底部をリテーナに押込むことにより行われるが、取付状態で基底部底面がリテーナ底面に接触する状態では、基底部をリテーナに押込際、基底部底面がリテーナ底面に底付きして取付けることが困難である。基底部をリテーナに容易に押込んで取り付けることができるようにするために、基底部底面とリテーナ底面との間に隙間を設けてスカシ設定とし、底付きさせないようにしたドアウェザストリップが知られ(特許文献1)、またシール性を持たせるために基底部の底面に止水用のシールリップを突出形成して取付時にリテーナ底面に弾接させるようにしたウェザストリップも知られる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実願平4−43146号(実開平5−93941号)のCD−ROM
【特許文献2】特開2000−211368号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドア周りに取付けられるウェザストリップは一般にルーフ側の押出し成形された一般部と、ピラー側の押出し成形された一般部と、両一般部を連結し、ドアのコーナ部分に取付けられる型成形部よりなるが、型成形部においては、基底部底面とリテーナ底面とのシール性に関して次のような問題を生ずる。このことを図2により説明すると、図2は、図1に示す自動車のフロントドア1におけるドア周りのa部におけるサッシュの詳細を示すもので、図中、太線で示すc線はルーフ側のサッシュ2aと、センターピラー側のサッシュ2bが該サッシュ2a、2bに形成されるリテーナ3a、3bを含め、合せ部において溶接にて接続された溶接部分を示している。
【0006】
またd線は、一般部に続いて型成形部の基底部底面の室外側に形成されるシールリップによるシールライン、e線は同じく一般部の基底部の室内側一端に続く型成形部の基底部の室内側一端によるシールライン、f線は同じく基底部より側方に室外側に向けて突出し、一般部のサブリップに続いてサッシュ2a、2bに弾接するサブリップによるシールラインをそれぞれ示している。
【0007】
前述のリテーナ3a、3bを含むサッシュ2a、2bの溶接部分cには、溶接痕(ビード)が形成されるが、この溶接痕のため該溶接痕に当たるシールリップと基底部一端は溶接痕の両側においてリテーナ底面との間に隙を生じがちとなり、この隙によって前記d線及びe線のシールラインが途切れることにより、サブリップを潜り抜けシールラインfを通り抜けた洗浄水等の水が侵入するおそれがある。図2の矢印は水の侵入経路を示す。
【0008】
本発明は、型成形部のシールリップがサッシュの合せ部の溶接痕に接触したときに形成される前述の隙から水が侵入する問題を解消したドアウェザストリップの組付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係わる発明は、自動車のドア周りのリテーナに取付けられるドアウェザストリップの組付け構造であって、ルーフ側のリテーナとピラー側のリテーナの合せ部が溶接にて接続される箇所のコーナに取付けられる型成形部を備え、該型成形部が前記リテーナに取付けられる基底部と、該基底部に一体形成され、ドア閉時に車体のドア開口縁部に弾接して車体とドアとの間をシールするシール部を有し、前記基底部には底面に前記リテーナに弾接する止水用のシールリップが少なくとも一条形成されるドアウェザストリップの前記リテーナへの組付け構造において、前記ルーフ側のリテーナとピラー側のリテーナの前記合せ部は、少なくとも一部が溶接されないで接合され、前記シールリップが前記合せ部のうち、溶接されない非溶接部分に当たるように前記型成形部を前記リテーナに組付けてなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、前記型成形部が中子抜き用のスリットを有し、該スリットより室外側に位置して形成される前記シールリップは、少なくともルーフ側の一部において、前記シールリップ25の室外側側面が車内側に向けて斜めにサッシュと鋭角をなして形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係わる発明のドアウェザストリップの組付け構造によると、シールリップはリテーナの合せ部のビードのない非溶接部分に当たるため、合せ部でも止水を確実に行うことができる。
【0012】
型成形部のルーフ側は、スリットより上側部がスリット分下がり得るため、コーナ側が下がりがちとなるが、請求項2に係わる発明のように少なくともルーフ側の一部のシールリップの室外側側面が室内側に向け、サッシュと鋭角をなしているため、リテーナに交えてスリットを狭める方向にずり下がりにくくなり、そのためスリットより上側の型成形部のルーフ側がコーナ側において下がったり、傾いて外観を損なうといった問題が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わるドアウェザストリップが取付けられる自動車の側面図。
【図2】コーナにおける従来のサッシュを車内側から見た要部の正面図。
【図3】コーナに取付けられるドアウェザストリップの斜視図。
【図4】コーナにおける本発明に係わるサッシュを車内側から見た正面図。
【図5】ドアウェザストリップのルーフ側の一般部の断面図。
【図6】型成形部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のドアウェザストリップの組付け構造について図面により説明する。
図3は、図1に示す自動車のフロントドア1のa部におけるドアサッシュ、すなわち図4に示すようなルーフ側のサッシュ2aとセンターピラー側のサッシュ2bが接続されるコーナのドアサッシュに取付けられるドアウェザストリップ4について示すもので、コーナでのルーフ側のサッシュ2aとセンターピラー側のサッシュ2bの合せ部はリテーナより室内側の部分のみが溶接され(図4のc部が溶接部分を示す)、リテーナ3a、3bの合せ部を含め、サッシュ2a、2bの他の合せ部は単に接合されているだけで、溶接されない非溶接部分となっている。
【0015】
ウェザストリップ4は、図3に示すようにルーフ側のサッシュ2aに取付けられる押出成形の一般部4aと、センターピラー側のサッシュ2bに取付けられる押出成形の一般部4bと、両一般部4a、4bを連結し、サッシュ2のコーナにおけるサッシュ2a、2bの接続部分に跨って取付けられる型成形部4cとよりなり、全体がEPDM等のゴム材料又は熱可塑性エラストマーにより形成されている。なお図3に示す三角印は黒く塗り潰した部分の側が型成形部4c、非塗り潰し部分の側が一般部4a、4bを示している。
【0016】
ルーフ側の一般部4aは、図3及び図5に示すように、前記サッシュ2aに形成のリテーナ3aに装着される中空状の基底部6と、該基底部6より室内側に向かって突出形成される中空状のシール部7と、中空状の基底部6を形成する室外側支柱6aの延長上において室外側に向けて斜めに突出形成されるリップ状のシール部8と、基底部6より室外側に向けて側方に突出し、サッシュ2aに弾接して図4に示すシールラインfを形成するサブリップ9より構成され、前記シール部7及び8はドア閉時に車体側のドア開口縁部10に弾接してドアと車体との間をシールするようになっている。
【0017】
前記基底部6には、リテーナ3aに嵌着される部分の車外側の底面には、前記基底部6の室外側支柱6aの直下にシールリップ11が突出形成され、該シールリップ11は基底部底面とリテーナ底面との間の隙間tより小さな肉厚で、かつ基底部6と同材質又はスポンジ材で形成されている。そしてこのシールリップ11はリテーナ3aに嵌着される基底部6の室内側一端hと共にリテーナ底面に弾接して二条のシールライン、すなわち図2に示すようなシールリップ11による室外側のシールラインdと、基底端一端による室内側のシールラインeを形成するようになっている。
【0018】
センターピラー側の一般部4bは、図3に示すように、前記サッシュ2bに形成のリテーナ3bに装着される中空状の基底部13と、該基底部13より突出形成され、ドア閉時に車体のドア開口縁部に弾接する中空状のシール部14と、基底部13より側方に室外側に向けて突出形成され、サッシュ2bに弾接してシールするサブリップ15よりなり、基底部13の底面には室内側に中空状の基底部13を形成する室外側支柱13aの直下(図3においては支柱13a上端)にシールリップ16が形成されている。このシールリップ16は前記シールリップ11と同様、基底部13と同材質又はスポンジ材で形成され、リテーナ3bに嵌着される基底部13の室内側一端hと共にリテーナ基底に弾接して図4に示すように二条のシールラインd及びeを形成するようになっている。
【0019】
型成形部4cは、図6に示される。
図6は図3のA−A線における断面を示すもので、該型成形部4cは、中子抜き用のスリット18を備え、前記一般部4a、4bの基底部6、13を形成する底壁部6b、13bに接続される基底部19と、該基底部19及びスリット18より室外側の基底部19より突出し、前記基底部6及び13を形成する支柱6a及び13aに接続される支柱19aと共に中空部21を形成し、前記一般部4a、4bのシール部7、14と接続されるシール部22と、前記支柱19aの延長上において室外側に向けて斜めに突出形成され、前記シール部8と一連に接続されるリップ状のシール部23と、基底部19の支柱19aより室外側に向けて突出し、前記一般部4a及び4bのサブリップ9及び15と一連に接続されるサブリップ24を有している。
【0020】
基底部19にはスリット18より室外側の支柱19a直下に前記一般部4a及び4bのシールリップ11及び16と一連に接続されるシールリップ25を突出形成している。このシールリップ25の室外側側面25aはルーフ側部分とセンターピラー側部分が交差する角よりルーフ側に一定範囲において室内側に向かってサッシュ3aとなす角θ1が鋭角をなすように斜めに突出し、またシールリップ25の室内側側面25bは基底部底面となす角θが鋭角をなすように斜めに形成されている。
【0021】
このシールリップ25は、ドアウェザストリップ4をリテーナ3a、3bに組付けたとき、リテーナ底面に当たってシールするが、ルーフ側のサッシュ2aとセンターピラー側のサッシュ2bのコーナでの合せ部は前述するようにリテーナより室内側の部分のみが溶融され、リテーナ3a、3bの合せ部は溶接されていないため、前記シールリップ25はリテーナ3a、3bの合せ部の非溶接部分に当りシールする。
【0022】
基底部19にはまた、スリット18より室内側部分の前記一般部4a及び4bの基底部一端hに接続され、スリット18を形成する突起27と、室内側の端部に突部28が形成されている。
【0023】
本実施形態のドアウェザストリップの組付け構造によると、型成形部4cのシールリップ25が弾接するリテーナ3a、3bはルーフ側とセンターピラー側の合せ部が単に接合されているだけで、溶接箇所がなく溶接痕がないため、前記合せ部でも合せ部以外の箇所のリテーナ3a、3bと同様にシールし、サブリップ24を潜り抜け、シールラインfを通った水はシールラインeに沿って矢印のように流れ、図2に示すように前記合せ部に沿って室内側に侵入することがなく、止水を確実に行うことができる。またルーフ側の型成形部4cはスリット18より上側の部分がずり下がろうとしても下向き(室内向き)に斜めに突出するシールリップ25がリテーナ底面に食い込む方向となるため、ずり下がりにくく、したがってスリット18より上側の型成形部4cのルーフ側のリップ状のシール部23が下がったり、傾いて外観を損なうといった問題を生じにくい。
【0024】
また押出し成形されたルーフ側の一般部はリテーナ3aに押込んで取付ける際に、基底部底面とリテーナ底面との間に隙間を設けてスカシ設定としていると共に、基底部底面から室外側に向けて突出するシールリップ11が設けられているため、ドアウェザストリップ4の基底部6、13、19をリテーナ3a、3bに底付きすることなく容易に押込むことができ、取付けたのちには前記シールリップ11が復帰して立ち上がろうとすることでリテーナ3aへの取付け状態を維持する機能を発揮する。そしてルーフ側の型成形部4cのリテーナ3aに取付けられない部分においては、前記一般部のシールリップ11と一連に連続している型成形部4cのシールリップ25が、前記のとおり室内向きに突出することで形状を維持している。
【0025】
前述するサッシュはルーフ側のサッシュ2aとセンターピラー側のサッシュ2bのコーナでの合せ部がリテーナより室内側の部分においてのみ溶接されているが、リテーナ3a及び3bの合せ部でもシールラインd及びe以外の箇所、例えばシールラインd及びeの中間部及び若しくはリテーナとシールラインfの間のサッシュ2a、2bの合せ部を溶接してもよい。
【0026】
前記実施形態におけるシールリップ25は、ルーフ側部分とセンターピラー側部分が交差する角よりルーフ側に一定範囲において、シールリップ25の室外側側面25aとサッシュ3aのなす角θ1が鋭角をなすように斜めに突出成形され、かつシールリップ25の室内側側面25bと基底部底面のなす角θも鋭角をなすように斜めに突出成形されているが、シールリップ25の室外側側面25aとサッシュ3aのなす角θ1のみが鋭角をなすように斜めに突出成形されているだけでもよい。またこのようなシールリップ25の形状は、ルーフ側部分とセンターピラー側部分が交差する角を含めた部分に形成してもよく、またルーフ側部分とセンターピラー側部分が交差する角から一般部4aにいたるまでの全ての範囲にわたるルーフ側について形成してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1・・フロントドア
2a、2b・・サッシュ
3a、3b・・リテーナ
4・・ドアウェザストリップ
4a、4b・・一般部
4c・・型成形部
6、13・・中空状の基底部
6a、13a、19a・・支柱
7、14・・中空状のシール部
8、23・・リップ状のシール部
9、15、24・・サブリップ
10・・車体のドア開口縁部
11、16、25・・シールリップ
18・・スリット
19・・基底部
21・・中空部
22・・シール部
25a・・シールリップの室外側側面
25b・・シールリップの室内側側面
27・・突起
28・・突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドア周りのリテーナ3a、3bに取付けられるドアウェザストリップ4の組付け構造であって、ルーフ側のリテーナ3aとピラー側のリテーナ3bの合せ部が溶接にて接続される箇所のコーナに取付けられる型成形部4cを備え、該型成形部4cが前記リテーナ3a、3bに取付けられる基底部19と、該基底部19に一体形成され、ドア閉時に車体のドア開口縁部10に弾接して車体とドアとの間をシールするシール部22を有し、前記基底部19には底面に前記リテーナ3a、3bに弾接する止水用のシールリップ25が少なくとも一条形成されるドアウェザストリップの前記リテーナ3a、3bへの組付け構造において、前記ルーフ側のリテーナ3aとピラー側のリテーナ3bの前記合せ部は、少なくとも一部が溶接されないで接合され、前記シールリップ25が前記合せ部のうち、溶接されない非溶接部分に当たるように前記型成形部4cを前記リテーナ3a、3bに組付けてなることを特徴とするドアウェザストリップの組付け構造。
【請求項2】
前記型成形部4cが中子抜き用のスリット18を有し、該スリット18より室外側に位置して形成される前記シールリップ25は、少なくともルーフ側の一部において、前記シールリップ25の室外側側面25aが車内側に向けて斜めにサッシュ2aと鋭角をなして形成されることを特徴とする請求項1記載のドアウェザストリップの組付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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