説明

ドア侵入抑制構造

【課題】車室内へ新たな部材を設けることなく、車両の側面衝突時のドアの車室内への侵入を抑制する。
【解決手段】車両の側面衝突時にドアストッパ18A〜18Cのアクチュエータ46が駆動され、引掛ピン56がサイドメンバアウタパネル36からリヤドア12に向けて突き出し、凹部34に進入する。この結果、車両の側面衝突の衝撃によって車室内へ移動を開始したリヤドア12は、ドアインナパネル28に配設されたワイヤ20が引掛ピン56に引っ掛かることによって、車室内への侵入が抑制される。ここで、この構造はクォーターホイールハウス16に設けられたドアストッパ18A〜18C(引掛ピン56)とリヤドア12のワイヤ20で構成されるため、車室内へ新たな部材を設けなくて済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面衝突時における車室内へのドアの侵入を抑制するドア侵入抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両の側面衝突時におけるサイドドアの車室内への侵入を抑制させる構造が様々に提案されている。例えば、フロアパネルの上面にドアストッパを固設して、車両の側面衝突時にリヤドアがドアストッパに当接することにより、リヤドアの車室内への侵入を抑制するものが提案されている。
【特許文献1】特開平7−52832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のドアストッパを車室内へ設けなければならないという不都合がある。
【0004】
本発明は、車室内に新たな部材を設けることなく、車両の側面衝突時のドアの車室内への侵入を抑制するドア侵入抑制構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明に係るドア侵入抑制構造は、車両のドアに閉じられる開口部の周部に配設された第1係合部と、前記ドアに設けられ、前記第1係合部と係合することにより前記ドアの車室内への移動が係止される第2係合部と、車両の側面衝突時に前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方を移動させることにより前記第1係合部と前記第2係合部とが係合される移動手段と、を備える。
【0006】
請求項1記載の本発明によれば、車両が側面衝突されると、車両のドアに閉じられる開口部の周部に設けられた第1係合部とドアに設けられた第2係合部の少なくとも一方が移動手段によって移動し、第1係合部と第2係合部とが係合されてドアを係止する。この結果、車両の側面衝突によるドアの車室内への移動を抑制する。ここで、第1係合部はドアに閉じられる開口部の周部、第2係合部はドアに設けられているため、車室内に新たな部材を設けることなく、ドアの侵入を抑制することができる。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明に係るドア侵入抑制構造は、車室内に新たな部材を設けることなく、車両の側面衝突時におけるドアの車室内への侵入を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係るドア侵入抑制構造の実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。図1は図2の1−1線断面図であり、図2はドア侵入抑制装置(構造)が適用されたリヤドア周辺を示す概略側面図であり、図3は引掛ピン(孔部)とワイヤとの関係を示す側面図であり、図4(A)はドア侵入抑制装置の要部であるドアストッパの一部切欠平面図であり、図4(B)はドアストッパの側面図であり、図5はドア周辺の要部斜視図である。なお、図中の矢印IN、OUTはそれぞれ車幅方向内側、外側を、矢印UPは車両上方を、矢印FRは車両前方をそれぞれ表す。
【0009】
本実施形態では、ドア侵入抑制構造を含むドア侵入抑制装置がリヤドアに適用されたものについて説明する。
【0010】
先ず、ドア侵入抑制装置10について概略説明すると、図1および図2に示すように、車両の開口部13を閉じるリヤドア12と、開口部13の周部を構成し車両前後方向に延在するロッカ14と、ロッカ14の後端部からリヤホイールハウスの一部を構成するクォーターホイールハウス16(サイドメンバ)と、クォーターホイールハウス16の内部に設けられた3個のドアストッパ18A〜18Cと、リヤドア12の車幅方向内側の下端部に配設されたワイヤ20と、リヤドア12の内部に配設された検出手段としての側面衝突センサ22と、後述する制御手段としての制御部24を含んで構成される。
【0011】
リヤドア12は、図1に示すように、ロッカ14の上側に配置され、ドアアウタパネル26とドアインナパネル28およびドアインナパネル28の車室側の面に取り付けられるドアトリム30を備える。ドアアウタパネル26とドアインナパネル28との間に形成される空間内には、高強度の補強部材であるドアインパクトビーム32が配設されている。ドアインパクトビーム32は、図2に示すように、ドアアウタパネル26に取り付けられた支持部33A、33Bで両端を支持されて車両前後方向に配設されている。また、ドアインナパネル28には、リヤドア12の変形加速度から車両の側面衝突を検知するための側面衝突センサ(加速度センサ)22が設けられている。さらに、ドアインナパネル28の下端部の車幅方向内側には、図1に示すように、ワイヤ20が接合(溶接)されている。ワイヤ20は、図3および図5に示すように、ドアインナパネル28の下端部形状に沿って配設されている。また、ワイヤ20には、ドアストッパ18A〜18Cの後述する引掛ピン56が突き出した際に、引掛ピン56の下側(リヤドア12の外周側)となるように略コの字型に屈曲した屈曲部20A〜20Cが形成されている。さらに、ドアインナパネル28の屈曲部20A〜20Cに囲まれた部分には、図1および図5に示すように、引掛ピン56が進入する凹部34(ビード)が設けられている。
【0012】
クォーターホイールハウス16は、図1に示すように、後端部近傍においてサイドメンバアウタパネル36とサイドメンバインナパネル38が接合されて閉断面構造に構成されている。クォーターホイールハウス16の内部(サイドメンバアウタパネル36の車幅方向内側)には、図2に示すように、開口部13の形状に沿って所定の間隔をあけて3個のドアストッパ18A〜18Cが配設されている。また、サイドメンバアウタパネル36のドアストッパ18A〜18Cの配設位置には、図2に示すように、後述するドアストッパ18A〜18Cの引掛ピン56が突き出し可能なように、3個の孔部40A〜40Cが形成されている。
【0013】
このクォーターホイールハウス16は、図1に示すように、車幅方向反対側のクォーターホイールハウス(図示せず)にクロスメンバとしてのセンタフロアクロスメンバ42で結合されている。また、センタフロアクロスメンバ42の上部にはリヤシート(シート)のリヤシートクッション43が配設されている。
【0014】
次に、サイドメンバアウタパネル36の車幅方向内側に配設されたドアストッパ18A〜18Cについて説明する。ドアストッパ18A〜18Cの構造は同一なので代表例としてドアストッパ18Aについて説明する。ドアストッパ18Aは、図4(A)、(B)に示すように、サイドメンバアウタパネル36の車幅方向内側面に締結されたプレート44(締結手段は図示せず)を介してサイドメンバアウタパネル36に取り付けられている。プレート44には、アクチュエータ46が配設されている。アクチュエータ46は、アクチュエータ本体48と、アクチュエータ46の駆動によりアクチュエータ本体48からプレート44に平行に伸縮するロッド50とを備える。また、プレート44には、サイドメンバアウタパネル36に設けられた孔部40Aと一致する位置に孔部52が設けられており、さらに孔部52の車幅方向内側には軸受54が設けられている。この軸受54には、引掛ピン56が支持されており、引掛ピン56の傾斜した後端面56Aがロッド50の傾斜した先端面50Aと当接している。したがって、アクチュエータ46の駆動によってロッド50が伸びると、後端面56Aが押された引掛ピン56がサイドメンバアウタパネル36の孔部40Aからドアインナパネル28側に突き出し、ドアインナパネル28の下端部に設けられた凹部34に進入する構成である。
【0015】
ドア侵入抑制装置は、図1に示すように、制御部24を備え、制御部24で側面衝突センサ22から入力される加速度に基づいて側面衝突を検知している。具体的には、制御部24は、側面衝突センサ22から入力される加速度が閾値を超えた場合に側面衝突であると判定して、アクチュエータ46に駆動信号を出力する構成である。
【0016】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0017】
車両が側面衝突されてリヤドア12が車幅方向内側に変形、変位を開始すると、側面衝突センサ22で検出された加速度が閾値を超えるため、制御部24では側面衝突であると判定する。そこで、制御部24は、ドアストッパ18A〜18Cのアクチュエータ46に駆動信号を出力する。この結果、アクチュエータ46が駆動され、アクチュエータ本体48に格納されていたロッド50が伸びる。この結果、ロッド50の先端面50Aが当接していた引掛ピン56の後端面56Aを押し、引掛ピン56がサイドメンバアウタパネル36の孔部40からドアインナパネル28の下端部に向かって突き出す。突き出した引掛ピン56の先端は、ドアインナパネル28の凹部34に進入する(図4(A)、2点鎖線部参照)。この結果、引掛ピン56は、ドアインナパネル28に接合されているワイヤ20の屈曲部20A〜20Cの上側(リヤドア12の中央側)に位置することになる。したがって、車両の側面衝突時にリヤドア12が車室側に変形、変位し、ドアインナパネル28の下端部が車室側に移動し始めると、軸受54と凹部34で支持された引掛ピン56にワイヤ20が引っかかり、リヤドア12の車室側への変形、変位を抑制することができる。
【0018】
また、ドア侵入抑制装置10は、クォーターホイールハウス16にドアストッパ18A〜18Cを設け、リヤドア12の下端部にワイヤ20を配設してドア侵入抑制構造としているため、車室内にドアの侵入を抑制するための新たな部材を配設しなくて済む。
【0019】
さらに、ドア侵入抑制装置10は、ドアストッパ18A〜18Cおよびワイヤ20をリヤシートクッション43の下側に配設していないため、ドアストッパ18A〜18Cおよびワイヤ20によって車室内のリヤシートクッション43のクッション性能等に影響を受けることはなく、乗員の乗り心地が良好に確保される。また、通常時には、引掛ピン56がサイドメンバアウタパネル36の車幅方向内側に隠れている(収納されている)ため、乗員の乗降の妨げになることもない。
【0020】
このように本実施形態に係るドア侵入抑制装置10では、リヤドア12の侵入抑制のために新たな部材を車室内に設けることなく、車両の側面衝突時のリヤドア12の車室内への侵入を確実に抑制することができる。
【0021】
なお、本実施形態ではドア侵入抑制装置10をリヤドアに対して適用したが、これに限定されるものではない。例えば、フロントドアに対して適用することもできる。また、本実施形態では、ドアストッパ18A〜18Cをクォーターホイールハウス16に設け、ワイヤ20をリヤドア12側に設けたが、反対でも良い。また、ドアストッパ18A〜18Cを設けるのは、クォーターホイールハウス16に限定されず、開口部13の周部を構成する位置であれば良い。また、リヤドア12を係止する手段として引掛ピン56とワイヤ20の構成としたが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図2における1−1線断面図である。
【図2】本実施形態に係るドア侵入抑制装置が適用されたリヤドア周辺を示す概略側面図である。
【図3】本実施形態に係るドア侵入抑制装置の引掛ピン(孔部)とワイヤとの関係を示す概略側面図である。
【図4】(A)は本実施形態に係るドア侵入抑制装置の要部であるドアストッパの一部切欠平面図であり、(B)は本実施形態に係るドアストッパの側面図である。
【図5】本実施形態に係るドア侵入抑制装置の引掛ピン(孔部)とワイヤとの関係を示すリヤドア周辺の斜視図である
【符号の説明】
【0023】
12 リヤドア(ドア)
13 開口部
14 ロッカ(周部)
16 クォーターホイールハウス(周部)
20 ワイヤ(第2係合部)
46 アクチュエータ(移動手段)
56 引掛ピン(第1係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに閉じられる開口部の周部に配設された第1係合部と、
前記ドアに設けられ、前記第1係合部と係合することにより前記ドアの車室内への移動が係止される第2係合部と、
車両の側面衝突時に前記第1係合部と前記第2係合部の少なくとも一方を移動させることにより前記第1係合部と前記第2係合部とが係合される移動手段と、
を備えるドア侵入抑制構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−30628(P2008−30628A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206696(P2006−206696)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】