説明

ドア開閉機構

【課題】ドアハンドルへの操作を検知器で検出し、ドアラッチをアクチュエータで開放させるように構成した車両においても、チャイルドロック機能によりドアが開放不能となることを防止した車両用のドア開閉機構を提供すること。
【解決手段】ドアの内部に、チャイルドロック機構のチャイルドロック状態を、車両室内から解除操作可能な操作部を設け、この操作部に対向して車両室内側に、取り外し可能に蓋部材を設けてドア開閉機構を構成した。これにより、チャイルドロック状態でアウトドアハンドルのアクチュエータが作動しなくなっても、チャイルドロック状態を解除してインナドアハンドルの操作により、ドアを開放できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャイルドロック機構を具えたドア開閉機構であり、チャイルドロック機構により車両用ドアが開放不能となることを防止したドア開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
チャイルドロック機構は、インナドアハンドルによるドアラッチの開放操作を無力化させる機構であり、車両用の後席ドアなどのドア開閉機構に設け、子供などが不用意にドアを開放させることを防止している。また近年、車両用ドアを電動モータの駆動力で開閉させる車両が知られている。
【0003】
更に電動ドアを備えた車両おいては、ドアハンドルをドアの開閉操作を検出する検知器とし、検知器が検出した開閉操作によりアクチュエータを駆動させてラッチを作動させたりドアを開閉駆動させることが考えられる。すると、ドアハンドルとドア駆動機構とをワイヤやロッドなどで連結させる必要がなくなり、機械的な構造が簡略化され、コスト低減や軽量化が図れるという利点がある。
【0004】
特開2007−321348号公報には、チャイルドロックの例が提案されている。
【特許文献1】特開2007−321348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらチャイルドロック機構は、チャイルドロック機構の機能を設定したり、設定を解除させる操作片を、車両用ドアの側面などに有している。そのため通常、車両用ドアを閉めた状態ではチャイルドロック機構の設定を解除したりできないようになっている。
【0006】
したがって、仮にアウタドアハンドルを検知器とし、ドアを電動で作動させる車両では、チャイルドロックを設定させた状態でアウタドアハンドルなどの電気的作動が不能になると、車両用ドアを開放させる手段がなくなり、通常の作業ではドアを開くことができないこととなる。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、ドアハンドルへの操作を検知器で検出し、ドアラッチをアクチュエータで開放させるように構成した車両においても、チャイルドロック機能により車両用ドアが開放不能となることを防止した車両用のドア開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためドア開閉機構を次のように構成した。
【0009】
1、 車両用ドアの車両外側に設けられたアウタドアハンドルと、前記車両用ドアの車両内側に設けられたインナドアハンドルと、前記車両用ドアを車体に係合させるラッチ機構と、アウタドアハンドルレバーと、前記アウタドアハンドルレバーを回動させるアウタドアハンドルレバーアクチュエータと、前記アウタドアハンドルへの操作を検出し、該操作を検出すると前記アウタドアハンドルレバーアクチュエータが作動するように作用する操作検出器と、前記アウタドアハンドルレバー及び前記ラッチ機構に連結し、前記アウタドアハンドルレバーの回動動作により回動し、前記ラッチ機構を開放させるラッチオープンレバーと、前記インナドアハンドルの操作により回動され、前記アウタドアハンドルレバーを回動させるインナドアハンドルレバーと、前記アウタドアハンドルレバーから前記ラッチオープンレバーに伝達される、前記ラッチ機構を開放させる回動動作の伝達を遮断させるドアロック機構と、前記インナドアハンドルレバーから前記アウタドアハンドルレバーに伝達される、前記ラッチ機構を開放させる回動動作の伝達を遮断させるチャイルドロック機構と、前記車両用ドア内部に設けられ、前記チャイルドロック機構のチャイルドロック状態を、車両室内から解除操作可能な操作部と、前記操作部に対向して車両室内側に、取り外し可能に設けられた蓋部材とを備えてドア開閉機構を構成した。
【0010】
2、 1に記載のドア開閉機構において、車両用ドアの内装部材に、該車両用ドアに昇降自在に設けられたドアガラスの下端部の最上位置より上方に窓を設け、該窓に前記蓋部材を取り外し可能に組み付けた。
【0011】
3、 2に記載のドア開閉機構において、前記車両用ドアは、車両側面に沿って移動するスライドドアとした。
【0012】
4、 3に記載のドア開閉機構において、前記インナドアハンドルレバーを回動させるインナドアハンドルレバーアクチュエータと、前記インナドアハンドルへの操作を検出し、該操作を検出すると前記インナドアハンドルレバーアクチュエータを作動させるインナドアハンドル操作検出器とを備え、更に非常用ドア開放レバーを前記インナドアハンドルレバーに接続させ、該非常用ドア開放レバーの操作により前記インナドアハンドルレバーを回動可能とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるドア開閉機構は、次の効果を有している。
車両室内側から操作部を直接操作して、チャイルドロック機構の設定を解除できる。これにより、アウタドアハンドルの操作検知器が作動不能となり、かつチャイルドロックが設定されていても、インナドアハンドルを操作して車両用ドアを開くことができる。また操作部は、蓋部材に覆われており、容易に取り外せないように取り付けられているので、チャイルドロック機構を通常子供が解除することはない。
【0014】
アウタドアハンドル及びインナドアハンドルの操作検知器の双方が作動不能となり、かつチャイルドロックが設定されていても、操作部を操作してチャイルドロックの設定を解除し、その上で非常用ドア開放ハンドルを操作することによりインナドアハンドルレバーを回動させて車両用ドアを開放させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にかかるドア開閉機構の一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に、ドア開閉機構10の概略構成を示す。ドア開閉機構10は、図に示すように取付基台12と、アウタドアハンドルレバー14と、ラッチオープンレバー16と、インナドアハンドルレバー18と、ロックレバー20と、チャイルドロックレバー22などから構成されている。図2に、ドア開閉機構10を具えた車両30を示す。ドア開閉機構10は、車両30の後部車両用ドア31(以下、「ドア31」とする。)に取り付けられている。
【0016】
ドア31は、車両30の後部左側に設けられたドアで、外側にアウタドアハンドル32を具え、内側にインナドアハンドル34(図7参照。)を具えている。ドア31は、ドア31の上下に設けられたスライド機構(図示せず。)により、車両30の側面に沿って開閉移動されるスライドドアである。またドア31は、内部に設けられたドア用電動機36(図3参照。)により電動で開閉駆動される電動ドアとなっている。
【0017】
アウタドアハンドル32には、人がドアを開放あるいは閉鎖させようと操作した開閉操作、例えばアウタドアハンドル32を外に引き出すなどの操作を検出する操作検知器33(図2参照。)が接続されている。操作検知器33は、アウタドアハンドル32に開放、あるいは閉鎖の操作がなされると、その操作を検知して操作された旨の信号を制御装置(図示せず。)に送出する。制御装置は、アウタドアハンドル32に操作がなされた旨の信号を入力すると、ドア用電動機36を駆動させ、ドア31を開放、あるいは閉鎖させる。また、アウタドアハンドル32とリモートコントローラー(図示せず。)とを無線(赤外線、超音波等を含む。)等により接続させて、入力操作可能としてもよい。更に、アウタドアハンドル32自体を、人体の接触を検知する接触検知器等で構成し、アウタドアハンドル32と操作検知器33とを一体に形成してもよい。
【0018】
図3に、ドア31を車両30の内側から見たときの状態を示す。ドア開閉機構10は、ドア31の外板35(図2参照。)と外板35の室内側に設けられた内板(図示せず。)との間で、ドア31の上部ほぼ中央に取り付けられている。内板には、図7に示すように内装体37が室内側に張り付けられている。図3は、内板、及び内装体37を取り外した状態の概略を示している。
【0019】
ドア31の前方(図の右方)には、上部フロントラッチ40と、下部フロントラッチ42が設けられている。また上部フロントラッチ40の上方には、チャイルドロック操作レバー43が設けてあり、下部フロントラッチ42の上方には、非常用ドアオープン機構44が設けられている。ドア31の後方には、リアラッチ46が設けられている。
【0020】
上部フロントラッチ40及び下部フロントラッチ42は、車両30の第2ピラーに設けられた、例えばコの字状の係合部(いずれも図示せず。)に係合するドアラッチ機構である。リアラッチ46は、第3ピラーに設けられた係合部(いずれも図示せず。)に係合するドアラッチ機構である。
【0021】
チャイルドロック操作レバー43は、ドア31の前方端面、すなわちドア31を閉めた際第2ピラーに対峙する面に、その操作片45が図7に示すように露出している。非常用ドアオープン機構44はドア31の内部に設けられ、その操作レバー(図示せず。)が、内装体37から露出し、操作レバーを操作することにより、ドア開閉機構10に伝達される。
【0022】
ドア31の上部には、ドアロック操作部50が設けられている。ドアロック操作部50は、アウタドアハンドル32及びインナドアハンドル34によるドア開放機能を遮断させる機構である。なお、ドアロック操作部50は、車両用ドア31の上部の他、インナドアハンドル34の近傍や、運転席の近傍などに設けられ、更にリモートコントローラ(図示せず。)により遠隔操作可能としてもよい。
【0023】
次に、ドア開閉機構10について具体的に説明する。
【0024】
ラッチオープンレバー16は、取付軸13に回動自在に取り付けられている。取付軸13は、取付基台12に固定されている。ラッチオープンレバー16には、戻しばね(図示せず。)が設けてあり、図1における反時計周り方向に付勢されている。ラッチオープンレバー16の取付軸13より上部には、取付孔52、53が形成されている。取付孔52、53には、ラッチオープンワイヤ62、63が連結されており、ラッチオープンワイヤ62、63を介して下部フロントラッチ42とリアラッチ46の各ラッチ機構に接続されている。
【0025】
またラッチオープンレバー16の取付軸13より下端部には、取付孔54が形成されている。取付孔54には、ラッチオープンワイヤ64が連結されており、ラッチオープンワイヤ64を介して上部フロントラッチ40に接続されている。
【0026】
またラッチオープンレバー16の下部には、長孔55がラッチオープンレバー16の長手方向に沿って形成されている。長孔55にはドアロック用ピン23が摺動自在に挿入してあり、ドアロック用ピン23によりロックレバー20から延びる作動レバー21とラッチオープンレバー16が連結されている。
【0027】
アウタドアハンドルレバー14は、取付軸13に回動自在に取り付けられている。アウタドアハンドルレバー14の取付軸13より上部の上半部は、斜め右方に延び、上半部の長手方向に沿って長孔56が形成されている。長孔56には、チャイルドロック用ピン25が摺動自在に挿入されている。
【0028】
アウタドアハンドルレバー14の取付軸13より下部には、長孔57と長孔58が設けられている。長孔57は、ほぼL字状に屈曲した長孔で、内部にドアロック用ピン23が摺動自在に挿入されている。
【0029】
長孔58は、取付軸13を中心とした円弧状に湾曲されている。長孔58には、アウタドアハンドルワイヤ65が取り付けられ、アウタドアハンドルワイヤ65を介してアウタドアハンドルレバーアクチュエータ70に連結されている。アウタドアハンドルレバーアクチュエータ70は、制御装置により駆動され、アウタドアハンドルレバー14を回動させる。
【0030】
具体的には、アウタドアハンドル32が操作されると、操作検知器33がその操作を検知し、その検知信号を制御装置に送る。すると制御装置は、操作がドア31を開放させるための操作か閉鎖させるための操作かを判断し、開放させる操作の場合に、アウタドアハンドルレバーアクチュエータ70を作動させる。これにより、アウタドアハンドルレバー14が時計周り方向に回動される。
【0031】
インナドアハンドルレバー18は、取付軸13に回動自在に取り付けられている。インナドアハンドルレバー18の上部には取付孔80が形成してある。取付孔80には、インナドアハンドルワイヤ66が取り付けられ、インナドアハンドルワイヤ66を介してインナドアハンドルレバー18とインナドアハンドル34が連結されている。
【0032】
インナドアハンドルレバー18には、時計周りの向きに、当接片19が形成されている。アウタドアハンドルレバー14の長孔56に嵌合しているチャイルドロック用ピン25は、アウタドアハンドルレバー14の長孔56から図の表面側に突出し、インナドアハンドルレバー18が時計周りに回動されると、当接片19に当接するように形成されている。
【0033】
ロックレバー20は、取付軸15を中心にして回動自在に設けられている。ロックレバー20の上部には取付孔82が形成してある。取付孔82には、上述したドアロック操作部50がロッド51を介して連結されている。またロックレバー20の一端には、リモートコントローラーに連動したドアロックレバーアクチュエータ(いずれも図示せず。)が連結されている。ドアロックレバーアクチュエータによっても、ロックレバー20が回動される。
【0034】
ロックレバー20の他端側には、連結ピン83が設けられている。連結ピン83は、作動レバー21に連結されている。作動レバー21は、取付軸84(図4参照。)を中心に回動自在に取り付けられている。作動レバー21の回動端側には、湾曲した長孔85が設けられている。上述したドアロック用ピン23が、この長孔58に摺動自在に嵌合されている。
【0035】
チャイルドロックレバー22は、取付軸86を中心に回動自在に設けられている。チャイルドロックレバー22の上部には、取付孔87が形成されている。取付孔87には、チャイルドロックワイヤ88(図3参照。)が連結してあり、チャイルドロックワイヤ88によりチャイルドロック操作レバー43が連結されている。チャイルドロック操作レバー43を操作することにより、チャイルドロックレバー22が取付軸86を中心に回動する。
【0036】
チャイルドロックレバー22の左方には、円弧状に湾曲した長孔90が形成されている。この長孔90には、上述したチャイルドロック用ピン25が摺動自在に嵌合されている。チャイルドロック操作レバー43を操作して、チャイルドロックレバー22を時計回りに回動させると、チャイルドロック用ピン25が図における斜め上方に移動し、上述したインナドアハンドルレバー18が回動しても当接片19が当接しないように設定される。
【0037】
更にチャイルドロックレバー22の上部には、操作部としての突起11が形成されている。突起11は、指先に掛かる形状で、図の表面側、すなわち車両30の室内側に突出している。またチャイルドロックレバー22の右方には、マイクロスイッチ92が設けられ、チャイルドロックレバー22が時計周りに回動するとマイクロスイッチ92の接点が導通するようになっている。導通した信号は制御装置に送られる。
【0038】
ドア開閉機構10の下部には、ドア駆動機構100が設けられている。ドア駆動機構100は、ドアスライド支持部102と、ドア用電動機36などから構成されている。ドア用電動機36は、制御装置からの制御により駆動され、ドア31を駆動させる。
【0039】
具体的には、アウタドアハンドル32が操作されると、操作検知器33がその操作を検知し、その検知信号が制御装置に送られる。すると制御装置は、操作がドア31を開放させる操作か閉鎖させる操作かを判断し、判断に応じてドア用電動機36を作動させる。これにより、ドア31がドアスライド支持部102に沿って開放、あるいは閉鎖方向に駆動される。尚ドア駆動機構100は、従来からのスライドドアの駆動機構と同様の機構である。
【0040】
ドア31の室内側下半部には、図7に示すように内装体37が取り付けられている。ドア31の上半部には、ウィンドガラス110が上下方向に移動自在に設けられている。
【0041】
内装体37には、蓋部材としての隠し蓋38が取り付けられている。隠し蓋38は、チャイルドロックレバー22の突起11に対応した位置に、子供では容易に取り外すことができないような状態で取り付けられている。例えば隠し蓋38は、ドライバの先端を差し入れなければ外せないように、内装体37に取り付けられている。そして隠し蓋38を内装体37から取り外すと、突起11に対向した窓39が形成され、突起11が室内側に露出される。
【0042】
また隠し蓋38は、ウィンドガラス110より室内側で、ウィンドガラス110の下端の最上位置、つまりウィンドガラス110を閉じた状態の下端の位置より上方に取り付けられている。
【0043】
次に、ドア開閉機構10の作動について説明する。
【0044】
図1は、ドア開閉機構10の初期状態を示す。すなわち、ドア31は閉鎖した状態で、各ラッチは閉じられている。また、チャイルドロック機構、及びドアロック機構も設定されていない。
【0045】
かかる状態から、インナドアハンドル34が操作されると、インナドアハンドルワイヤ66を介してインナドアハンドルレバー18が図の時計周り方向に回動される。すると、当接片19がチャイルドロック用ピン25に当接し、チャイルドロック用ピン25をそのまま時計方向に回動させる。これによりアウタドアハンドルレバー14が、時計周り方向に回動される。
【0046】
長孔57内のドアロック用ピン23は、上方に位置しているため、アウタドアハンドルレバー14が時計周り方向に回動されると、長孔55を介してドアロック用ピン23に係合しているラッチオープンレバー16が時計周り方向に回動される。これにより、ラッチオープンワイヤ62、63、64が引かれ、リアラッチ46、下部フロントラッチ42、上部フロントラッチ40の各ラッチ機構が開放される。かかる状態を、図4に示す。それに伴い、ドア駆動機構100が作動し、ドア31が開放方向に移動される。
【0047】
また初期状態から、アウタドアハンドル32が操作されると、操作検知器33がその旨の信号を制御装置に送る。制御装置は、アウタドアハンドルレバーアクチュエータ70を作動させ、アウタドアハンドルワイヤ65を介してアウタドアハンドルレバー14が図の時計周り方向に回動される。ドアロック用ピン23は、長孔57の上方に位置しているため、上述したと同様ドアロック用ピン23に係合しているラッチオープンレバー16が時計周り方向に回動される。これにより、ラッチオープンワイヤ62等が引かれ、上部フロントラッチ40など全ラッチ機構が開放される。かかる状態を、図5に示す。
【0048】
一方初期状態からドアロック操作部50が操作されて、ドアロックが設定されると、ロックレバー20が時計周り方向に回動し、作動レバー21を回動させる。これによりドアロック用ピン23が下がる。すると、インナドアハンドルレバー18やアウタドアハンドルレバー14が回動されても、長孔57の横方向に延びている孔内をドアロック用ピン23が移動して、ラッチオープンレバー16が回動されない。したがって、インナドアハンドル34やアウタドアハンドル32の操作によっても、各ラッチ機構は開放されず、車両用ドア31は開放されない。
【0049】
また初期状態からチャイルドロック機構の操作片45を操作して、チャイルドロック機能が設定されると、チャイルドロックレバー22が時計周り方向に回動され、チャイルドロック用ピン25が上方に移動する。チャイルドロック用ピン25が上方に移動されると、インナドアハンドルレバー18が回動しても当接片19がチャイルドロック用ピン25に当接せず、アウタドアハンドルレバー14が回動しない。したがって、ラッチオープンレバー16が回動されず、インナドアハンドル34を操作してもラッチ機構が開放されないため、車両用ドア31が開放されなくなる。かかる状態を図6に示す。
【0050】
そして、チャイルドロックが設定された状態で、バッテリが不良となるなどしてドア31の電気的作動が不能になったとする。チャイルドロックが設定されているので、上述したようにインナドアハンドル34は機能せず、インナドアハンドル34を操作してもドア31は開放されない。また電気的な作動が不能となったので、アウタドアハンドル32を操作しても、操作検知器33もアウタドアハンドルレバーアクチュエータ70も機能せず、アウタドアハンドル32によってもドア31は開放されない。
【0051】
かかる場合、隠し蓋38を取り外し、窓39を通して突起11を指先で操作する。するとチャイルドロックレバー22が反時計周り方向に回動し、チャイルドロック用ピン25とインナドアハンドルレバー18の当接片19が当接するようになる。このようにして、インナドアハンドル34を操作すると、アウタドアハンドルレバー14を介してラッチオープンレバー16が回動し、全ラッチ機構が開放されて車両用ドア31が開放可能となる。
【0052】
隠し蓋38が取り付けられている窓39は、ウィンドガラス110より室内側で、ウィンドガラス110の下端の最上位置、つまりウィンドガラス110を閉じた状態の下端の位置より上方に設けられているので、ウィンドガラス110を伝って流れ落ちてきた雨水が、窓39を通して車室内に浸入することがない。
【0053】
また、隠し蓋38は、子供に容易に開放できないように内装体37に取り付けられているので、チャイルドロック機能が不用意に解除されることはない。
【0054】
次に、ドア開閉機構の他の例について説明する。
【0055】
この例は、アウタドアハンドル32に加えインナドアハンドル34にも操作検知器33(インナドアハンドル操作検知器)を設け、インナドアハンドルレバー18をインナドアハンドルレバーアクチュエータ(図示せず。)で作動させる例である。したがって、アウタドアハンドルレバー14とインナドアハンドルレバー18の双方とも、それぞれのアクチュエータでのみ作動される構成である。
【0056】
また、非常用ドアオープン機構44からのオープンワイヤ47がインナドアハンドルレバー18に連結されている。非常用ドアオープン機構44は、ドア31の下方に設けられ、その操作レバー(図示せず。)が車両室内側に設けられている。したがって、非常用ドアオープン機構44を操作すると、インナドアハンドルレバー18が回動して、全ラッチ機構を開放させることができる。一方、チャイルドロックが設定されていると、インナドアハンドルレバー18とアウタドアハンドルレバー14とが上述したように係合されなくなるので、非常用ドアオープン機構44を操作しても、各ラッチ機構を開放させることができない構成となっている。その他は、上述した構成と同様である。
【0057】
かかる場合、少なくともドア31における電気的な作動が不能になると、アウタドアハンドル32やインナドアハンドル34の操作によってはラッチオープンレバー16を作動させることができなくなる。
【0058】
このような場合は、非常用ドアオープン機構44を操作して、全ラッチ機構を開放させることができる。更にチャイルドロックが設定されている状態であれば、非常用ドアオープン機構44も操作不能となる。その場合には隠し蓋38を取り外し、チャイルドロックレバー22を初期状態に戻して、チャイルドロックを解除する。そして、非常用ドアオープン機構44を操作することにより、全ラッチ機構を開放させ、ドア31が開放させることができる。
【0059】
尚、本発明においては、ドア開閉機構10は上記例に限るものではなく、他の構成であってもよい。また、チャイルドロックレバー22に突起11を設けるのでなく、チャイルドロックレバー22に連結されたロッドやワイヤなどに突起11などの操作部を設けてもよい。
【0060】
また上記例では左ドアについて説明したが、右ドアであっても同様である。また本発明は、フロントドアであってもよく、スライドドアでなく、ヒンジタイプのドアでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明にかかるドア開閉機構の一実施形態を示す正面構成図である。
【図2】車両を示す斜視図である。
【図3】ドアを示す透視斜視図である。
【図4】ドア開閉機構の作動した状態を示す正面構成図である。
【図5】ドア開閉機構の作動した状態を示す正面構成図である。
【図6】ドア開閉機構の作動した状態を示す正面構成図である。
【図7】ドアを内側から示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
10…ドア開閉機構
11…突起
14…アウタドアハンドルレバー
16…ラッチオープンレバー
18…インナドアハンドルレバー
19…当接片
22…チャイルドロックレバー
25…チャイルドロック用ピン
30…車両
31…ドア
32…アウタドアハンドル
33…操作検知器
34…インナドアハンドル
37…内装体
38…隠し蓋
39…窓
40…上部フロントラッチ
43…チャイルドロック操作レバー
44…非常用ドアオープン機構
45…操作片
46…リアラッチ
70…アウタドアハンドルレバーアクチュエータ
100…ドア駆動機構
110…ウィンドガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの車両外側に設けられたアウタドアハンドルと、
前記車両用ドアの車両内側に設けられたインナドアハンドルと、
前記車両用ドアを車体に係合させるラッチ機構と、
アウタドアハンドルレバーと、
前記アウタドアハンドルレバーを回動させるアウタドアハンドルレバーアクチュエータと、
前記アウタドアハンドルへの操作を検出し、該操作を検出すると前記アウタドアハンドルレバーアクチュエータが作動するように作用する操作検出器と、
前記アウタドアハンドルレバー及び前記ラッチ機構に連結し、前記アウタドアハンドルレバーの回動動作により回動し、前記ラッチ機構を開放させるラッチオープンレバーと、
前記インナドアハンドルの操作により回動され、前記アウタドアハンドルレバーを回動させるインナドアハンドルレバーと、
前記アウタドアハンドルレバーから前記ラッチオープンレバーに伝達される、前記ラッチ機構を開放させる回動動作の伝達を遮断させるドアロック機構と、
前記インナドアハンドルレバーから前記アウタドアハンドルレバーに伝達される、前記ラッチ機構を開放させる回動動作の伝達を遮断させるチャイルドロック機構と、
前記車両用ドア内部に設けられ、前記チャイルドロック機構のチャイルドロック状態を、車両室内から解除操作可能な操作部と、
前記操作部に対向して車両室内側に、取り外し可能に設けられた蓋部材とを備えたことを特徴とするドア開閉機構。
【請求項2】
車両用ドアの内装部材の一部で、該車両用ドアに昇降自在に設けられたドアガラスの下端部の最上位置より上方に窓を設け、該窓に前記蓋部材を取り外し可能に組み付けたことを特徴とする請求項1に記載のドア開閉機構。
【請求項3】
前記車両用ドアは、車両側面に沿って移動するスライドドアであることを特徴とする請求項2に記載のドア開閉機構。
【請求項4】
前記インナドアハンドルレバーを回動させるインナドアハンドルレバーアクチュエータと、前記インナドアハンドルへの操作を検出し、該操作を検出すると前記インナドアハンドルレバーアクチュエータを作動させるインナドアハンドル操作検出器と、を備え
更に非常用ドア開放レバーを前記インナドアハンドルレバーに接続させ、該非常用ドア開放レバーの操作により前記インナドアハンドルレバーを回動可能としたことを特徴とする請求項3に記載のドア開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−281028(P2009−281028A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133460(P2008−133460)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(591038587)株式会社アンセイ (48)
【Fターム(参考)】