説明

ドウ食品成分中のアスパラギン低減方法

媒質中の少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分と組み合わせてアスパラギン低減酵素を提供することを含み、該媒質の水分活性が約0.85、好ましくは約0.90を超える、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する方法を提供する。アスパラギンのレベルが減少したドウ食品成分を用いて、アクリルアミドのレベルの減少したドウをベースとする食品を提供する、ドウをベースとする食品中のアクリルアミドのレベルを低減する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンを低減する方法、及びドウをベースとする食品中のアクリルアミドを低減する方法に関する。本発明はまた、アクリルアミドの減少したドウをベースとする食品に関する。
【背景技術】
【0002】
文明が始まって以来、炭水化物含有食品は、人間の食生活の主食になってきた。今日、パン、朝食用シリアル、ビスケット、クラッカー、クッキー、フレンチフライ、調理済デンプン質野菜、タコシェル、及びスナック食品のような炭水化物含有食品が、広く消費されている。このような食品は、何年もの間、人間の食生活の一部であったが、研究者らは、これらの食品の多くがアクリルアミドを含有することをつい最近発見した。
【0003】
2002年4月、スウェーデン国立食品局及びストックホルム大学の研究者らは、癌を引き起こす可能性のある化学物質であるアクリルアミドが、多くの種類の加熱調理食品中で生成されるという研究結果を発表した。ラットでは、アクリルアミドは、食品中の他の発癌性物質に類似の発癌性を有するが、ヒトについては食品中における相対的な潜在能力は知られていない。アクリルアミドについては限られた人口集団のデータしかなく、これらのデータは、職業性曝露に起因した癌危険性の証拠を示してはいない。(食品中のアクリルアミドが健康に及ぼす影響に関するFAO/WHO会議:概要報告書(FAO/WHO Consultation on the Health Implications of Acrylamide in Food:Summary Report);スイス、ジュネーブ、2002年6月25〜27日。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした食品中に通常見られる濃度で人間がアクリルアミドを摂取した結果として、生じるとするならばどのような健康上の影響が生じ得るのかを評価するさらなる研究が必要であるが、多くの消費者は、懸念を表明している。従って、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンを低減する方法、及び、アクリルアミドのレベルが減少したドウをベースとする食品のように、ドウをベースとする食品中のアクリルアミドのレベルを低減する方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある様態では、本発明は、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する方法を提供する。方法は、水分活性が約0.85、好ましくは約0.90を超える媒質中の、少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分と組み合わせてアスパラギン低減酵素を提供することを含む。
【0006】
別の様態では、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する方法を提供する。方法は、水、少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分、及びアスパラギン低減酵素を含む処理済ドウプレミックスを形成する工程であって、処理済ドウプレミックスの水分活性が約0.85、好ましくは約0.90を超える工程と、処理済ドウプレミックスと追加ドウ要素を組み合わせてドウを形成する工程とを含む。アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルは減少する。
【0007】
さらに別の様態では、本発明は、ドウをベースとする食品中のアクリルアミドのレベルを低減する方法を提供する。方法は、(1)請求項1に記載の方法に従って、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する工程と、(2)ドウ食品成分を加熱する工程と、(3)ドウをベースとする食品中にドウ食品成分を形成する工程とを含む。
【0008】
さらなる様態では、本発明は、アクリルアミドのレベルの減少したドウをベースとする食品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ジザック(Zyzak)らによる米国特許出願公開第2004/0058046号(’046)及びジザック(Zyzak)らによる米国特許出願公開第2004/0101607号(’607)に詳細に開示されているように、実質上全ての生物系で見られる、天然に存在するアミノ酸であるアスパラギンは、加熱した際アクリルアミドを形成し得る。故に、アスパラギンの豊富な食品ほど、加熱した際に、含有するアクリルアミドのレベルが多くなる傾向があり、特に、還元糖の存在下でアスパラギン含有食品が加熱される場合にこのような傾向がある。また、食品が調理されて最終湿潤レベルが低くなる時ほど、アクリルアミドの形成が増加することも見出された。
【0010】
理論に制限されるものではないが、’046及び’607の出願に開示されているように、アクリルアミドは、図1に記載の反応機構を介して食品中で形成されると考えられる。この加熱した食品中でのアクリルアミド形成は、アスパラギンの除去、又は加熱前に食品中のアスパラギンを別の物質に転換することにより、低減することができる。含有するアスパラギンのレベルが減少した、かかる食品を加熱すると、生成するアクリルアミドの量もまた減少する。最終食品中に存在するアクリルアミドのレベルの減少は、加熱(例えば調理)前に、アスパラギンの側鎖上のアミノ基を加水分解する酵素を添加することにより達成される。かかる酵素の添加により、アスパラギンの側鎖が分解され、それゆえアスパラギンがアクリルアミドを形成するのを防ぐ。その際、アミド結合が加水分解され、アスパラギンがアスパラギン酸に転換される。この反応機構を図2に記載する。
【0011】
発明者は、アスパラギン低減酵素、例えば、アスパラギナーゼは、液体系(例えば、試験管中の溶液)では容易にアスパラギンを加水分解するが、酵素はほとんどの食品がその形態である、固体又は半固体物質では非常に効果が弱いことを見出した。発明者はまた、固体又は半固体食品におけるアスパラギン加水分解率の限定要因は、媒質を通じたアスパラギン分子のアスパラギナーゼ分子への移動(拡散)であることを見出した。固体又は半固体食品においては、媒質を通じた移動が非常に緩徐である場合があり、事実、液体系における試験に基づいて予期されたアクリルアミド減少レベルをもたらすにはあまりにも緩徐である。
【0012】
発明者は、驚くべきことに、一部のドウはほとんど遊離水(非結合水)を有さず、ドウ中の水の量を増加させることにより、アスパラギナーゼ分子とアスパラギン分子とを反応させ、効率的に進行させることを可能にすることを見出した。ドウ中の水の量を増加させると、ドウ中の遊離水の量が増加し、それはまた、ドウ中のアスパラギナーゼ及びアスパラギン分子の流動性(拡散性)を増大させる。食品中の遊離水(非結合水)の量は、一般に、水分活性として知られるパラメータにより測定される。水分活性(aw)は、食品原料中の遊離水対食品原料中の水の総量の比を測定する、食品原料の熱力学特性である。遊離水の量が、食品原料中の水の総量と等しい場合、awは1に等しい。水分活性は、市販の水分活性計測器によって測定する。かかる計測器は、例えばパウキット(PawKit)計測器のように、当該技術分野において既知であり、アクアラブ(AquaLab)(登録商標)(例えば、www.decagon.comを参照のこと)のような様々な供給元から購入することができる。原料中の水が全て食品原料中の他の成分と結合している場合、水分活性は非常に低い。例えば、マーガリンは、約20重量%の水を含有し、そのawは約0.9である。これは大部分の水が遊離水であることを示す。対照的に、乾燥果実は20重量%の水を含有し得るが、そのawは約0.6である。これは、大部分の水が結合水であることを示す。発明者は、アスパラギン含有食品原料を含む媒質中の水分活性が約0.85未満である場合、好ましくは約0.90を超える場合、アスパラギナーゼの有効性は非常に低いであろうということを見出した。対照的に、awが約0.85を超える場合、好ましくは約0.90を超える場合、アスパラギンのアスパラギン酸への加水分解におけるアスパラギナーゼの有効性は著しく増大し、それはひいては加熱したドウをベースとする食品中のアクリルアミドのレベルを低減することにつながる。
【0013】
本発明は、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する方法を提供する。方法は、水分活性が約0.85を超える、好ましくは約0.90を超える媒質中の少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分と組み合わせてアスパラギン低減酵素を提供することを含む。
【0014】
本明細書で使用する時、「アスパラギン含有ドウ食品成分」としては、2種以上のアスパラギン含有ドウ食品成分の混合物を含む、ドウをベースとする食品の調製に用いる、任意のアスパラギン含有可食原料が挙げられるが、これらに限定されない。アスパラギン含有ドウ食品成分の例としては、塊茎をベースとするドウ食品成分、根をベースとするドウ食品成分、コムギをベースとするドウ食品成分、トウモロコシをベースとするドウ食品成分、穀物ドウ食品成分、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、アスパラギン含有ドウ食品成分の様々な形態を理解するであろう。本明細書ではそのうちいずれも用いることができる。かかる形態としては、マッシュ、フレーク、粒体、フラニュール(flanules)、粉剤、粉末、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書で使用する時、「アスパラギン低減酵素」は、アスパラギン含有食品中のアスパラギンのレベルを低減可能な任意の酵素を含む。ある実施形態では、アスパラギン低減酵素は、遊離アスパラギンのアミド基を加水分解し、アクリルアミドの形成を抑えることのできる酵素を含む。別の実施形態では、酵素は、アスパラギン低減能を有するデアミダーゼを含む。さらに別の実施形態では、本明細書で使用する酵素はアスパラギナーゼである。アスパラギナーゼの供給元の一つはシグマ・アルドリッチ社(カタログ番号#A2925)であるが、他のアスパラギナーゼ製品も市販されており、本明細書で用いるのに好適である。アスパラギナーゼは、増殖過程にわたって、細胞中でアスパラギンを生成する微生物の関与する方法で商業的に生産してよい。アスパラギナーゼを生産するのに用いることができる典型的な微生物としては、大腸菌(E. coli.)、アスペルギルス・オリザエ(Aspargillus oryzae)及びアスペルギルス・ニガー(Aspargillus niger)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する時、「アスパラギン低減酵素」及び「酵素」という用語は、1以上の酵素を含み、例えば、2以上の酵素の混合物が、この用語に包含される。
【0016】
アスパラギン低減酵素は、媒質中の少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分と組み合わせて提供される。本明細書で使用する時、「媒質」という用語は、アスパラギン含有ドウ食品成分と酵素が組み合わせられた組成物を指す。媒質は、アスパラギン含有ドウ食品成分と酵素から成ってよく、又は、1以上の追加ドウ要素、担体、水、乳化剤、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない追加成分を含んでよい。追加ドウ要素の例としては、デンプン、小麦粉、膨張剤、糖又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。デンプンとしては、マッシュに添加される、又はマッシュに戻される任意の乾燥ジャガイモ製品を含む、任意の好適な天然又は加工デンプンが挙げられる。乳化剤の例としては、脂肪酸のグリセロールエステル類、レシチン類、アラビノガラクタン、カラギーナンのカラギーナン塩類、ファーセレラン(furcelleran)、ファーセレランの塩類、キサンタンガム、ステアリルモノグリセリジルシトレートサクシステアリン(ステアロイルプロピレングリコールヒドロゲンサクシネート)、ヒドロキシル化レシチンラウリル硫酸ナトリウム、サクシニル化モノグリセリド類、エトキシ化モノ−及びジグリセリド類、ポリソルベート、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ソルビタンモノステアレート、ステアロイル乳酸ナトリウム、脂肪酸の乳酸エステル類、グリセロール及びプロピレングリコールの乳酸脂肪酸エステル類、脂肪酸のグリセリル−ラクトエステル類(glyceryl-lacto esters)、脂肪酸のポリグリセロールエステル類、アルギン酸プロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル類、脂肪酸の塩類、ショ糖オリゴエステル類、ヒドロキシプロピルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース、食品用加工デンプン、パン酵母グルカンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
酵素は、任意の好適な形態で媒質に提供されてよく、当業者は様々な形態を理解するであろう。本明細書ではそのうちいずれも用いることができる。ある実施形態では、酵素は粉末形態で提供される。別の実施形態では、酵素は溶液形態で提供される。当業者はまた、媒質に酵素を提供するのに用いることができる様々な方法を理解するであろう。本明細書ではそのうちいずれも用いることができる。例えば、酵素は、直接提供されてもよく、散布、注入、攪拌器を使用する又はしない混合、混練、噴霧又はこれらの組み合わせにより間接的に提供されてもよい。本明細書で使用する時、媒質に酵素を「提供する」とは、アスパラギン含有ドウ食品成分と酵素を一緒にする任意の方法を含むが、これらに限定されない。
【0018】
上記で論じたように、アスパラギン含有ドウ食品成分を含む媒質を通じたアスパラギンの拡散は、媒質中の遊離水の量と強い相関がある。このように、所与の媒質の水分活性は、媒質中の水の総量だけでなく、媒質を含む他の食品成分によっても決定されるであろう。ドウをベースとする食品の場合、大部分の食品がデンプン、糖、他の多糖類及び繊維を含み、これらは水と結合することがよく知られている。従って、理論に束縛されるものではないが、アスパラギン含有ドウ食品成分を含む媒質の水分活性は、水分活性が確実にアスパラギナーゼ活性を有効にするのに十分な大きさになるように調節することが必要な場合がある。
【0019】
上述のように、0.85を超える、好ましくは約0.90を超える水分活性を有するアスパラギン含有ドウ食品成分を含む媒質は、アスパラギン低減酵素活性を著しく増大させる。必要に応じて、媒質の水分活性は、酵素が媒質に提供される前及び/又は提供される際に変動して、媒質が確実に十分な水分活性を有するようにしてよい。当業者は、食品成分又は食品の水分活性を変動させる及び測定する方法を理解するであろう。本明細書ではそのうちいずれも用いることができる。ある実施形態では、媒質の水分活性は約0.85、好ましくは約0.90を超える。別の実施形態では、媒質の水分活性は約0.95を超える。さらに別の実施形態では、媒質の水分活性は約0.99を超える。さらなる実施形態では、媒質の水分活性は約1.00である。
【0020】
水分活性を確実にアスパラギナーゼ活性を有効にするのに十分な大きさにするために、アスパラギナーゼ処理前、処理中及び/又は処理後に、アスパラギン含有ドウ食品成分を含む媒質に追加ドウ要素を添加してよい。 例えば、アスパラギナーゼ処理中に水、酵素及びアスパラギン含有ドウ食品成分のみを混合することにより、処理前にドウ成分全てを含む場合より、水分活性を高く保持することができる。さらに、アスパラギナーゼ処理後まで、水と結合し得る幾つかのドウ成分を加えないことにより、アスパラギナーゼ処理の有効性はまた増大するであろう。
【0021】
当業者は、本発明による媒質に組み込んでよい様々なドウ食品成分を理解するであろう。ある実施形態では、媒質は、水、アスパラギン低減酵素、及び少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分を含む。別の実施形態では、媒質は、水、アスパラギン低減酵素、少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分、及び少なくとも1種の追加ドウ要素を含む。さらに別の実施形態では、媒質は、水、アスパラギン低減酵素、少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分、少なくとも1種の追加ドウ要素及び乳化剤を含む。乳化剤は、所望により、加工助剤として媒質に添加されてよい。当業者はまた、アスパラギン含有ドウ食品成分の種類、媒質の組成、望ましい加工、及び最終ドウをベースとする食品中の望ましいアクリルアミド減少レベルに応じて、酵素が媒質に提供される前、提供されている間、及び/又は提供された後に、媒質中の様々なドウ食品成分の比が変動してよいことを理解するであろう。
【0022】
当該技術分野において既知であるように、酵素は、重量又は体積ではなく、活性単位で販売される。従って、望ましいアスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギン減少レベル及び最終アスパラギン含有ドウをベースとする食品中のアクリルアミド減少レベルを達成するために必要とされる酵素の有効量は、用いられる具体的な酵素製品の活性(例えば、具体的な酵素のアスパラギン分解能)によって決定されるであろう。添加する酵素の量もまた、アスパラギン含有ドウ食品成分中に存在するアスパラギンの量によって決定してよい。ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルが多いほど、一般に、同じ量のアスパラギン及びアクリルアミドを低減するために、より多い酵素量又はより長い反応時間を必要とするであろう。添加する酵素量もまた、処理された具体的なドウ食品成分(例えば、化学的組成、存在するアスパラギンの量、粒径、水分活性、密度、粘度)によって決定してよい。当業者は、具体的なアスパラギン含有ドウ食品成分、具体的な酵素、酵素の具体的な活性、及び所望の成果に基づいて、必要とされる酵素の有効量を決定することができるであろう。
【0023】
さらに、pH及び温度は酵素活性に影響を及ぼす要因である。ある実施形態では、本発明と同日に出願された、同時係属出願(P&G案件番号10265P)に詳細に開示されているように、媒質は、酵素添加前に、少なくとも約70℃に冷却される。
【0024】
アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減させるのに十分な条件下で、媒質を保持する必要がある時間の長さは、媒質の水分活性、媒質の温度、所望のアクリルアミド減少レベル、具体的なアスパラギン含有ドウ食品成分の特徴、添加する具体的な酵素、ドウ原料の混合又は混練量、及び添加する酵素量を含むが、これらに限定されない要因に応じて決定されるであろう。反応時間が短いほど、通常、ドウをベースとする食品中の所望のアクリルアミド減少レベルを達成するために、より多くの量の酵素が必要とされるであろう。また、酵素が媒質に保持される時間が長いほど、アスパラギン減少レベルが多くなり、従って成分から製造される食品中のアクリルアミド減少レベルが多くなる。さらに、酵素をアスパラギンと反応させる保持時間は、任意の好適な方法で作用されてよい。例えば、酵素の媒質への添加、酵素とドウ食品成分との混合、又はこれらの組み合わせと同時に実施されてよい。
【0025】
ある実施形態では、媒質は、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを所望のレベルに低減するのに十分な条件下で、約5分間〜約120分間保持される。別の実施形態では、媒質は少なくとも約10分間保持される。さらに別の実施形態では、媒質は少なくとも約20分間保持される。さらなる実施形態では、媒質は少なくとも約40分間保持される。さらに別の実施形態では、媒質は少なくとも約60分間保持される。さらなる実施形態では、媒質は少なくとも約80分間保持される。
【0026】
媒質はまた、酵素を提供する前、提供中、及び/又は提供後に攪拌、混練又は別の方法で混合されてよい。媒質の混合に必要な時間の長さは、あるとすれば、所望のアスパラギン及び/又はアクリルアミド減少レベル、アスパラギンのレベル、具体的なアスパラギン含有ドウ食品成分の特徴、添加する具体的な酵素及び/又は添加する酵素の特徴を含むが、これらに限定されない要因に応じて決定されるであろう。ある実施形態では、媒質は約30秒間〜約30分間混合される。別の実施形態では、媒質は約1分間混合される。別の実施形態では、媒質は約5分間混合される。さらに別の実施形態では、媒質は約10分間混合される。さらなる実施形態では、媒質は約20分間混合される。
【0027】
所望の長さの時間、媒質中に酵素を保持した後、アスパラギン減少レベルは、酵素処理後のアスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンの量を測定することにより求めることができる。当業者は、アスパラギン減少レベルを測定する様々な方法を理解するであろう。本明細書ではそのうちいずれも用いることができる。アスパラギン減少レベルは、アスパラギン低減酵素処理した場合としない場合のアスパラギンのレベルの比較に基づいた、低減%として特徴付けてよい。ある実施形態では、アスパラギンのレベルは少なくとも約30%減少する。さらに別の実施形態では、アスパラギンのレベルは少なくとも約50%減少する。さらなる実施形態では、アスパラギンのレベルは少なくとも約70%減少する。さらに別の実施形態では、アスパラギンが少なくとも約80%減少するまで酵素を反応させる。さらに別の実施形態では、アスパラギンが少なくとも約90%減少するまで酵素を反応させる。さらに別の実施形態では、アスパラギンが少なくとも約95%減少するまで酵素を反応させる。
【0028】
アスパラギンが所望のレベルまで減少した後、酵素は所望により失活及び/又は媒質から除去されてよい。酵素を不活性化させる任意の好適な手段によって酵素を失活させることができる。例えば、加熱、pH調整、プロテアーゼによる処理、又はこれらの組み合わせを用いて酵素を失活させることができる。従って、以下に詳細に論じるように、加熱による酵素の失活、任意の失活工程及び調理工程は同時に実施してよい。ドウが継続して酵素活性を受けないように、調理による熱処理もまた、酵素を変性及び不活性化することができる。さらに、酵素は、抽出が挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な手段によって除去されてよい。
【0029】
アスパラギンが所望のレベルまで減少した後、ドウ食品成分を含む媒質を乾燥させてもよい。ある実施形態では、湿潤レベルが約50%になるまで媒質を乾燥させる。別の実施形態では、湿潤レベルが約40%になるまで媒質を乾燥させる。さらなる実施形態では、湿潤レベルが約30%になるまで媒質を乾燥させる。
【0030】
本発明はまた、水、少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分、及びアスパラギン低減酵素を含む処理済ドウプレミックスを形成する工程であって、該処理済ドウプレミックスの水分活性が約0.85、好ましくは約0.90を超える工程と、処理済ドウプレミックスと追加ドウ要素を組み合わせてドウを形成する工程とを含む、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する方法を提供する。アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルは減少する。
【0031】
本発明はさらに、ドウをベースとする食品中のアクリルアミドのレベルを低減する方法を提供する。方法は、(1)アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する工程と、(2)ドウ食品成分を加熱する工程と、(3)ドウをベースとする食品中にドウ食品成分を形成する工程とを含む。
【0032】
本明細書で使用する時、「ドウをベースとする食品」という用語は、すぐに摂取できるドウをベースとする食品、他の食品を調製するための要素として用いるドウをベースとする食品を含むが、これらに限定されない。ドウをベースとする食品としては、ポテトスナック、ポテトクリスプ、パン、クラッカー、ビスケット及びクッキーのような小麦をベースとする製品、パン、クラッカー及びクリスプビスケットのようなライ麦をベースとする製品、トルティーヤ、トルティーヤチップス、押出トウモロコシをベースとするスナック、及びトウモロコシパンのようなトウモロコシをベースとする製品、小麦、トウモロコシ、ライ麦、米、又はこれらの組み合わせをベースとするの朝食用シリアル、小麦、トウモロコシ、ライ麦、米、又はこれらの組み合わせをベースとするのスナックバー、ピザ生地、及びトースターペストリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する工程については、上記で論じており、本明細書ではかかる方法のうちいずれも用いることができる。ドウの湿潤レベルを低減することが望ましい場合、アスパラギンのレベルが所望のレベルに減少した後、ドウ食品成分を乾燥させてよい。他のドウ食品成分の添加前、添加中、及び/又は添加後に、ドウを乾燥させてよい。当業者は、ドウを乾燥させる様々な方法を理解するであろう。本明細書ではそのうちいずれも用いることができる。乾燥方法としては、焼成、油ちょう、押出、真空オーブン又はドラム乾燥機による乾燥、パフィング又はマイクロ波処理が挙げられるが、これらに限定されない。乾燥方法としては、熱出力の総量を低減するものを挙げることができる。例えば、フレークを製造する場合は、凍結乾燥、ドラム乾燥、共鳴又はパルスフロー乾燥、赤外線乾燥、又はこれらの組み合わせが好ましく、粒体を製造する場合はエアリフト乾燥、流動床乾燥、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0034】
任意の乾燥後、ドウ食品成分がドウをベースとする食品中に形成される。当業者は、ドウをベースとする食品中にドウ食品成分を形成する様々な方法を理解するであろう。本明細書ではそのうちいずれも用いることができる。調理は、任意の好適な方法、例えば、油ちょう、焼成、又は油ちょうと焼成の組み合わせによって、実施することができる。さらに、形成工程及び調理工程は、押出スナック製品の場合のように、同時に実施することもできる。
【0035】
上記様々な要因に応じて、本発明に従って調製される最終ドウをベースとする食品では、アスパラギン低減酵素処理したドウ食品成分ではなく、処理されていないアスパラギン含有ドウ食品成分を含むドウをベースとする食品と比較して、少なくとも約10%〜少なくとも約90%のアクリルアミドが減少し得る。当業者は、食品中のアクリルアミドのレベルを測定する様々な方法を理解するであろう。本明細書ではそのうちいずれも用いることができる。ある実施形態では、アクリルアミドのレベルは少なくとも約30%減少する。さらに別の実施形態では、アクリルアミドのレベルは少なくとも約50%減少する。さらなる実施形態では、アクリルアミドのレベルは少なくとも約70%減少する。さらに別の実施形態では、アクリルアミドのレベルは少なくとも約90%減少する。さらに別の実施形態では、アクリルアミドのレベルは少なくとも約95%減少する。さらに別の実施形態では、アクリルアミドのレベルは少なくとも約99%減少する。アクリルアミドのレベルはまた、十億分率(ppb)により測定してもよい。ある実施形態では、アクリルアミドのレベルは約100ppb未満に減少する。別の実施形態では、アクリルアミドのレベルは約50ppb未満に減少する。
【0036】
アクリルアミドのレベルの減少したドウをベースとする食品もまた提供される。ドウをベースとする食品中の最終アクリルアミドの量は、上記様々な要因によって変動し得る。ある実施形態では、ドウをベースとする食品は約400ppb未満のアクリルアミドを有する。別の実施形態では、ドウをベースとする食品は約300ppb未満のアクリルアミドを有する。さらに別の実施形態では、ドウをベースとする食品は約200ppb未満のアクリルアミドを有する。さらに別の実施形態では、ドウをベースとする食品は約100ppb未満のアクリルアミドを有する。さらなる実施形態では、ドウをベースとする食品は約50ppb未満のアクリルアミドを有する。さらに別の実施形態では、ドウをベースとする食品は約10ppb未満のアクリルアミドを有する。
【0037】
本発明の方法は、炭水化物含有食品を含むが、これに限定されない、任意の好適なドウをベースとする食品の製造に適用してよい。例えば、方法は、ポテトスナック、ポテトクリスプ、パン、クラッカー、ビスケット、プレッツェル及びクッキーのような小麦をベースとする製品、パン、クラッカー及びクリスプビスケットのようなライ麦をベースとする製品、トルティーヤ、トルティーヤチップス、押出トウモロコシをベースとするスナック、及びトウモロコシパンのようなトウモロコシをベースとする製品、小麦、トウモロコシ、ライ麦、米、又はこれらの組み合わせをベースとするの朝食用シリアル、小麦、トウモロコシ、ライ麦、米、又はこれらの組み合わせをベースとするのスナックバー、ピザ生地、及びトースターペストリー中にみられるアクリルアミドのレベルを低減するために用いてよい。
【0038】
本発明は、任意の好適な方法によって実施されてよい。例えば、本明細書の方法は、バッチ、半バッチ、又は連続方式で実施されてよい。コリガン(Corrigan)による、本明細書と同日に出願された米国特許出願(P&G案件番号___)は、本発明を実施するための様々な方法を開示し、本明細書ではそのうちいずれも用いることができる。
【0039】
分析方法
本発明の要素を特性評価するために使用されるパラメータは、特定の分析方法によって定量化される。これらの方法を以下のように詳細に説明する。
【0040】
食品中のアクリルアミド(AA)を測定する方法、食品及び飲料中のアスパラギン及びアスパラギン酸量を求める方法は、ジザックらによる米国特許出願公開第2004/0058046号に詳細に要約されている。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明を説明するものであって、本発明を制限しようとするものではない。
【0042】
実施例1〜4は、一連の実験として実施される。
【0043】
(実施例1)
要素
ポテトフレーク、水、他の乾燥成分、及び乳化剤
装置
油を入れた油揚器、使い捨て手袋、はかり、400mLのビーカー、150mLのビーカー、小型スパチュラ、クイジナート(Cuisinart)リトル・プロ・プラス(商標)フードプロセッサ、使い捨て皿、アルミホイル、シーティングロール、まな板、ドーバル(doval)抜型、油揚器型(fryer mold)及び紙タオル
【0044】
手順
1.もしまだ成されていなければ、油揚器の最低と最大の印の間まで油を入れる。3枚の使い捨て皿を並べ、その上に紙タオルを置く。
2.油揚器の電源を入れ、ダイヤルを191℃(375°F)に設定する。
3.400mLのビーカーをはかりと風袋の上にのせる。
4.乾燥要素(+0.02g)を400mLのビーカーに計り分ける。
5.乾燥要素をフードプロセッサに加える。ふたをし、30秒間混合する。
6.150mLのビーカーをはかりと風袋の上に載せる。
7.約44gの水と乳化剤を加える。
8.水と乳化剤の入ったビーカーを電子レンジに入れ、約20〜30秒間加熱する。
9.乾燥要素がまだプロセッサ内にある状態で、同時にタイマーとフードプロセッサを起動させる。
10.シュートを通して、温かい水と乳化剤をフードプロセッサのボウルに加える。
11.1分間混合を続け、止める。
12.フードプロセッサの上ぶたを外し、使い捨て皿の上に脆いドウを出す。ドウの中からブレードを取り出し、脇に置く。アルミホイルでドウにふたをし、シーティングロールに運ぶ。
13.脆いドウを2つのロールの間に出し、ローラを通過させ、シートを形成する。
14.シートを折り畳み、使い捨て皿上に置き、ホイルでふたをし、まな板に運ぶ。
15.まな板上でドーバル抜型を用いてシートから20個のドーバルを切り取る。2個を小さなジップロク袋に入れる。(揚げるために16個のドーバルが必要であり、間違えた時のために2個余分に存在する。)
16.残りのドーバルにホイルでふたをし、油揚器に運ぶ。この時までに必ず手袋をするように気をつける。
17.油揚器型の上端を持ち上げ、中心にドーバルを定置する。タイマーを12秒に設定する。
18.タイマーを起動させるのと同時に、ドーバルの入った型を油揚器の底に沈める。タイマーが鳴るとすぐに油から型を取り出す。油揚器の上で型を横向きにし、油を切り、次いで紙タオルを置いた使い捨て皿の上に置く
19.型の上端を持ち上げ、小型の金属スパチュラで揚げたチップを取り出す。紙タオルを置いた別の使い捨て皿上の脇に置く。
20.この手順を繰り返し、少なくとも16個のフライドチップを作製する。
21.チップスをプラスチックの袋に入れる。袋に試料番号のラベルをつける。
22.チップスのアクリルアミドのレベルを分析する。
【0045】
油ちょう前のドウの水分活性は、約0.95である。フライドチップス中のアクリルアミドのレベルは、約1688μg/kgと測定された。
【0046】
(実施例2)
1.1.乾燥要素を400mLのビーカーに計り分ける。乾燥要素をフードプロセッサに加え、30秒間混合する。約20gの水を、100mLのビーカーに、乳化剤とともに計り分ける。水と乳化剤の入ったビーカーを電子レンジに入れ、10秒間加熱する。
2.乾燥要素がまだプロセッサ内にある状態で、同時にタイマーとフードプロセッサを起動させる。
3.シュートを通して、温かい水と乳化剤をフードプロセッサに加える。30秒間混合を続け、止める。
4.約24gの水を、100mLのビーカーに、約136単位のアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)をベースとするのアスパラギナーゼとともに計り分ける。これをフードプロセッサ内のドウに添加し、約30秒間混合する。実施例1でドウに添加した水の総量は、約44gであった。本実施例でドウに添加した水の総量は、約44gであり、実施例1と等量である。
5.ドウを約20分間保持し、酵素をドウに作用させる。
6.フードプロセッサの上ぶたを外し、使い捨て皿の上に脆いドウを出す。ドウの中からブレードを取り出し、脇に置く。アルミホイルでドウにふたをし、シーティングロールに運ぶ。
7.脆いドウを2つのロールの間に出し、ローラを通過させ、シートを形成する。
8.シートを折り畳み、使い捨て皿上に置き、ホイルでふたをし、まな板に運ぶ。
9.まな板上でドーバル抜型を用いてシートから20個のドーバルを切り取る。2個を小さなジップロク袋に入れた。(揚げるために16個のドーバルが必要であり、間違えた時のために2個余分に存在する。)
10.残りのドーバルにホイルでふたをし、油揚器に運ぶ。この時までに必ず手袋をするように気をつける。
11.油揚器型の上端を持ち上げ、中心にドーバルを定置する。タイマーを12秒に設定する。
12.タイマーを起動させるのと同時に、ドーバルの入った型を油揚器の底に沈める。タイマーが鳴るとすぐに油から型を取り出す。油揚器の上で型を横向きにし、油を切り、次いで紙タオルを置いた使い捨て皿の上に置く。
13.型の上端を持ち上げ、小型の金属スパチュラで揚げたチップを取り出す。紙タオルを置いた別の使い捨て皿上の脇に置く。
14.この手順を繰り返し、少なくとも16個のフライドチップを作製する。
15.チップスをプラスチックの袋に入れる。袋に試料番号のラベルをつける。
16.チップスのアクリルアミドのレベルを分析する。
【0047】
油ちょう直前のドウの水分活性は約0.95である。フライドチップス中のアクリルアミドのレベルは、約831μg/kgと測定された。
【0048】
(実施例3)
工程5で約38gの水を酵素と混合することを除き、実施例2の手順を繰り返す。工程5の最後でドウに添加した水の総量は約59gである。フードプロセッサ内で混合した後、ドウとフードプロセッサを計量し、重量を記録する。ドウを約20分間保持し、酵素をドウに作用させ、次いで再度計量する。フードプロセッサのふたを取り除き、フードプロセッサとドウを50℃のオーブン内に定置し、総量が15g減少するまでドウを乾燥させる。5分毎に攪拌する。ドウは、実施例1A及び1Bのドウと同じ湿潤レベルを有するであろう。次いで、ドウを使い捨て皿に出し、シート状にし、ドーバルを切り取り、油ちょうし、実施例1及び2のように分析する。
【0049】
油ちょう前のドウの水分活性は約0.99である。これらのチップスのアクリルアミドのレベルは、μg/kgと測定された。
【0050】
(実施例4)
工程5で約54gの水を酵素と混合することを除き、実施例3の手順を繰り返す。工程5の最後でドウに添加した水の総量は約74gである。他の工程は全て実施例2と同様である。
【0051】
油ちょう前のドウの水分活性は約1.00である。これらのチップスのアクリルアミドのレベルは、約60μg/kgと測定された。
【0052】
実施例5及び6は、一連の実験として実施される。
【0053】
ポテトマッシュからポテトフレークを製造する。ポテトマッシュの約80%が水であり、ポテトマッシュの水分活性は約1.00である。本実施例は、ポテトフレーク製造過程中に、高水分活性ポテトマッシュにアスパラギナーゼを添加することが、これらのフレークから製造されるフライトチップス中のアクリルアミドのレベルを低減するのに有効であることを示すであろう。
【0054】
(実施例5)
ポテトフレークの作製
1.恒温槽を60℃に設定する。
2.ラセットバーバンクジャガイモ中3個の皮をむき、ミートスライサを用いて6.35mm(1/4インチ)にスライスする。
3.ジャガイモ薄片を蒸し器で約20分間蒸す。
4.ミキシングボール内に蒸したジャガイモを押し潰す。温度を測定し、温度を確実に約60℃にする。
5.約10gの水と約368gのポテトマッシュを1分間混合する。
6.ボウルにふたをし、恒温槽(60℃)に15分間定置し、次いで温度を測定し記録する。
7.クッキーシート上でマッシュを再び押し潰し、すぐに産物の湿潤レベルが約7%に低下するまでピザ用オーブン内で乾燥させた。
8.ブレンダ内で乾燥した産物を挽き、30メッシュにてふるう。
9.ポテトフレークを用い、実施例1Aの手順を繰り返して、フライトチップスを製造する。
【0055】
これらのチップスのアクリルアミドのレベルは、約1453μg/kgと測定された。
【0056】
(実施例6)
工程5で、ポテトマッシュ368g当たり約20μLのアスペルギルス・オリザエアスパラギン溶液(溶液1mL当たり6800単位)を、水に添加することを除き、実施例5の手順を繰り返す。ポテトマッシュの水分活性は約1.00である。
【0057】
これらのチップス中のアクリルアミドのレベルは、約64μg/kgと測定された。
【0058】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれた文献における同一用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいて、本書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0059】
本発明の特定の実施形態を説明記述してきたが、本発明の精神範囲から逸脱することなく他の様々な変更修正を行えることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【0060】
発明を実施するための最良の形態は、図面を見ることにより更に完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】アスパラギン及びカルボニル源(グルコースなど)からアクリルアミドが形成される、反応機構案を示す。R1及びR2は、H、CH3、CH2OH、CH2(CH2nCH3、又は還元糖を構成する任意の他の構成要素であってよく、nは10未満の任意の整数であってよい。
【図2】アスパラギナーゼがアスパラギンと反応してアクリルアミドの形成を阻止する、反応機構案を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒質中の少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分と組み合わせてアスパラギン低減酵素を提供することを含み、前記媒質の水分活性が約0.85を超える、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する方法。
【請求項2】
前記アスパラギン低減酵素が、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを所望のレベルまで低減するのに十分な量で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルが少なくとも約50%減少する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルが少なくとも約70%減少する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルが少なくとも約80%減少する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルが少なくとも約90%減少する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記アスパラギン低減酵素がアスパラギナーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記媒質が、水、酵素、及び少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記媒質が、水、酵素、少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分、及び少なくとも1種の追加ドウ要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記媒質が、水、酵素、少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分、少なくとも1種の追加ドウ要素、及び乳化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記媒質が、前記アスパラギン低減酵素の添加前、添加中及び/又は添加後に混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分が、塊茎をベースとするドウ食品成分、根をベースとするドウ食品成分、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記媒質の水分活性が約0.90を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記媒質の湿潤レベルが約50%を超える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記媒質の湿潤レベルが約30%〜約50%になるまで前記媒質を乾燥させることをさらに含み、前記乾燥工程が、アスパラギンが所望の量に減少した後に実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水、少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分、及びアスパラギン低減酵素を含む処理済ドウプレミックスを形成する工程であって、前記処理済ドウプレミックスの水分活性が約0.85を超える工程と、前記処理済ドウプレミックスと追加ドウ要素を組み合わせてドウを形成する工程であって、前記アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルが減少する工程とを含む、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する方法。
【請求項17】
前記ドウが、水、少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分及び少なくとも1種の追加ドウ要素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プレミックス中の水の量の、前記プレミックス中の少なくとも1種のアスパラギン含有ドウ食品成分の量に対する比が、前記ドウ中の水の量の、前記ドウ中の他の要素の量に対する比より大きい、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(1)請求項1に記載の方法に従って、アスパラギン含有ドウ食品成分中のアスパラギンのレベルを低減する工程と、(2)前記ドウ食品成分を加熱する工程と、(3)ドウをベースとする食品中にドウ食品成分を形成する工程とを含む、ドウをベースとする食品中のアクリルアミドのレベルを低減する方法。
【請求項20】
前記アスパラギン低減酵素がアスパラギナーゼである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アクリルアミドのレベルが少なくとも約80%減少する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
アクリルアミドのレベルが100ppb未満に減少する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
アクリルアミドのレベルが少なくとも約80%減少する、請求項22に記載の方法により製造されるドウをベースとする食品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−521947(P2009−521947A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549095(P2008−549095)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050042
【国際公開番号】WO2007/077545
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】