説明

ドグクラッチ部噛み合い構造

【課題】駆動側ギヤとドグクラッチ部との噛み合い部の回転方向クリアランスを無くすことが可能なドグクラッチ部噛み合い構造を提供する。
【解決手段】ドグクラッチ部22が、フォワードベベルギヤ16に臨むクラッチ側凹部22dを備え、このクラッチ側凹部22dの底に2段の段部が形成され、フォワードベベルギヤ16が、クラッチ側凹部22dに噛み合うフォワード側歯部16aを備え、このフォワード側歯部16aの回転方向後方側の角部に歯部斜面16gが形成され、2段の段部の間の角部22rが、クラッチ側凹部22dとフォワード側歯部16aが噛み合うときに、歯部斜面16gと接触するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機におけるドグクラッチ部と駆動部側ギヤとが噛み合うドグクラッチ部噛み合い構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のドグクラッチ部噛み合い構造として、駆動軸側に設けられたギヤと出力軸側に軸方向移動可能に設けられたドッグギヤとの噛み合い構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の図10を以下の図7で説明する。なお、符号は振り直した。
図7に示すように、駆動軸側に設けられた前進ギヤ101に軸方向に突出する噛合凸部102が形成され、出力軸側に設けられたドッグギヤ103に軸方向に凹んだ噛合凹部104が形成され、噛合凹部104に噛合凸部102が噛み合うことで前進ギヤ101からドッグギヤ103へ動力が伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−48820公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の噛合凹部104の周方向の長さL1と噛合凸部102の周方向の長さL2とは略同一にされて噛合凹部104と噛合凸部102との隙間が嵌合可能に小さくされているが、小さくても周方向の隙間は存在するため、噛合凹部104と噛合凸部102とが周方向に当たって発生する打音を無くすことは難しい。
また、噛合凹部104及び噛合凸部102の周方向長さの寸法精度を高く設定しているために寸法管理が難しくなり、コストアップを招く。
【0006】
本発明の目的は、駆動側ギヤとドグクラッチ部との噛み合い部の回転方向クリアランスを無くすことが可能なドグクラッチ部噛み合い構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、船外機の駆動部からプロペラへ動力を伝達するプロペラシャフトの途中にドグクラッチ部が軸方向移動可能且つプロペラシャフトと一体的に回転可能に設けられ、このドグクラッチ部の側方に駆動部側と共に回転する駆動部側ギヤが回転可能に設けられ、ドグクラッチ部が、駆動部側ギヤに噛み合うドグクラッチ部噛み合い構造において、ドグクラッチ部が、駆動側ギヤに臨む凹部を備え、この凹部の底に2段の段部が形成され、駆動部側ギヤが、凹部に噛み合う凸部を備え、この凸部の回転方向後方側の角部に斜面が形成され、段部の一段目と二段目との間の角部が、凹部と凸部とが噛み合うときに、斜面と接触するように形成されていることを特徴とする。
【0008】
駆動部側ギヤの凸部とドグクラッチ部の凹部とが噛み合うと、凸部の回転方向後方側の斜面が凹部の一段目と二段目との間の角部に接触するとともに、凸部の回転方向前方側の側面が凹部の回転方向前方側の側面を回転方向に押し付けることで、凸部が凹部の一段目の段部に軸方向にくさび状に嵌合する。
【0009】
この結果、凸部と凹部との軸方向及び回転方向のクリアランスが無くなるとともに、凸部側から凹部側に動力が伝達される。従って、凸部と凹部とが回転方向に衝突することがなく、凸部と凹部との打音が発生しない。
また、角部と斜面とが接触するようにしたことで、角部及び斜面の軸方向及び回転方向の寸法公差が、凸部に対して凹部が軸方向及び回転方向に移動することで吸収される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、ドグクラッチ部が、駆動側ギヤに臨む凹部を備え、この凹部の底に2段の段部が形成され、駆動部側ギヤが、凹部に噛み合う凸部を備え、この凸部の回転方向後方側の角部に斜面が形成され、段部の一段目と二段目との間の角部が、凹部と凸部とが噛み合うときに、斜面と接触するように形成されているので、駆動側ギヤの凸部の斜面とドグクラッチ部の凹部内の角部との接触により、凸部と凹部との回転方向のクリアランスが無くなり、凸部と凹部との噛み合い時の騒音を防止することができる。
【0011】
また、斜面と角部とを接触させる構造により、凸部の斜面及び凹部の角部の寸法公差を吸収することができ、凸部の斜面及び凹部の角部の寸法精度を低くすることができ、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るドグクラッチ部噛み合い構造(実施例1)を採用した船外機の要部断面図である。
【図2】本発明に係るドグクラッチ部噛み合い構造(実施例1)を示す動力伝達部要部の断面図である。
【図3】本発明に係るドグクラッチ部噛み合い構造(実施例1)を示す断面図である。
【図4】本発明に係るドグクラッチ部噛み合い構造(実施例1)の作用を示す第1作用図である。
【図5】本発明に係るドグクラッチ部噛み合い構造(実施例1)の作用を示す第2作用図である。
【図6】本発明に係るドグクラッチ部噛み合い構造(実施例2)を示す断面図である。
【図7】従来のドグクラッチ部噛み合い構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中の左、右、前、後は船体に乗車した運転者を基準にした向きを示している。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1を説明する。
図1に示すように、船外機の下部を構成するギヤケース10は、船外機の上部に配置されたエンジンから船外機の下部後部に配置されたプロペラへ動力を伝達する動力伝達機構11を内蔵している。図中に示す矢印(FRONT)はギヤケース10を含む船外機の前方(船体の前方)を示している(以下同じ。)。
【0015】
動力伝達機構11は、ギヤケース10に上下に延びるように且つ回転自在に取付けられた駆動軸13と、この駆動軸13の下端に取付けられた駆動用ベベルギヤ14と、ギヤケース10側に回転自在に取付けられるとともに駆動用ベベルギヤ14に噛み合うフォワードベベルギヤ16及びリバースベベルギヤ17と、ギヤケース10内に設けられたプロペラシャフトホルダ18及びフォワードベベルギヤ16に回転自在に支持され且つ前後に延びるように配置されたプロペラシャフト21と、上記のフォワードベベルギヤ16及びリバースベベルギヤ17のそれぞれの間に配置されるとともにプロペラシャフト21にスプライン結合されて軸方向移動自在に取付けられたドグクラッチ部22とからなる。
【0016】
駆動軸13は、ギヤケース10に開けられた縦穴10aに複列のテーパローラベアリング25及びニードルベアリング26で回転自在に取付けられている。
フォワードベベルギヤ16は、ギヤケース10に開けられた横穴10b(詳しくは、横穴10bの前部穴10c)にテーパローラベアリング27を介して回転自在に取付けられている。
【0017】
リバースベベルギヤ17は、ギヤケース10の横穴10b(詳しくは、後部穴10d)に嵌合されたプロペラシャフトホルダ18の端部に複列のアンギュラボールベアリング28を介して回転自在に支持されている。
【0018】
プロペラシャフトホルダ18は、中空部18aにニードルベアリング(不図示)が取付けられ、このニードルベアリングを介してプロペラシャフト21の一端部側が回転自在に支持されている。
【0019】
プロペラシャフト21は、上記したプロペラシャフトホルダ18側のニードルベアリングと、フォワードベベルギヤ16の内周面に取付けられたニードルベアリング19とを介して回転自在に取付けられている。
【0020】
プロペラシャフト21の前端部には、船体の前進、後進及び停止、即ち、プロペラの正回転、逆回転及び停止を切り換えるシフト機構31が付設されている。
シフト機構31は、ギヤケース10に回動自在に取付けられるとともに上下方向に延びるシフトロッド33と、このシフトロッド33の下端部に連結されたシフト片34と、このシフト片34に前部連結ピン36を介して連結されるとともにプロペラシャフト21の後端部内に挿入され且つ前端部が後部連結ピン37を介してドグクラッチ部22に連結されたシフトスライダ38と、このシフトスライダ38及びドグクラッチ部22を各シフト位置に保持するディテント機構41とからなる。
シフトロッド33は、下端部に軸直角方向に延びるアーム部(不図示)を備え、このアーム部の先端に設けられたピンがシフト片34の溝部34aに係合している。
【0021】
従って、シフト操作に伴ってシフトロッド33が回動させると、アーム部及びピンを介してシフト片34が軸方向に移動し、これによってシフトスライダ38及びドグクラッチ部22が軸方向に移動する。
【0022】
図2に示すように、フォワードベベルギヤ16は、ドグクラッチ部22側の面にフォワード側歯部16aを備え、リバースベベルギヤ17は、ドグクラッチ部22側の面にリバース側歯部17aを備える。
【0023】
プロペラシャフト21は、端部に、小径部21aと、この小径部21aよりも外形寸法が大きいおすスプライン21bとが形成され、このおすスプライン21bを貫通するように長穴21cが開けられ、端面21dにシフトスライダ38が移動自在に挿入されるスライダ挿入穴21eが開けられ、このスライダ挿入穴21eの開口側にボール保持部21gが形成されている。
【0024】
ドグクラッチ部22は、プロペラシャフト21のおすスプライン21bに結合するめすスプライン22aと、後部連結ピン37を通す後部ピン挿入穴22b,22cと、フォワードベベルギヤ16のフォワード側歯部16aに噛み合うクラッチ側凹部22dと、リバースベベルギヤ17のリバース側歯部17aに噛み合うクラッチ側凹部22eとを備える。
【0025】
後部ピン挿入穴22b,22cに通された後部連結ピン37は、プロペラシャフト21の長穴21cに通されるとともに、シフトスライダ38を貫通している。なお、符号45はドグクラッチ部22から後部連結ピン37が抜けるのを防止するピン抜け止め用リングである。
【0026】
ディテント機構41は、シフトスライダ38内に開けられたスライダ穴38a内に一端がそれぞれ位置決めされるように挿入された圧縮コイルばね52,52と、これらの圧縮コイルばね52,52の他端に当てられた第1ボール53,53と、これらの第1ボール53,53に当てられるとともにシフトスライダ38の外周面側とスライダ穴38aとを貫通する貫通穴38b、38b内に配置された第2ボール54,54と、これらの第2ボール54,54を所定位置(後述する3カ所)に保持するためにプロペラシャフト21のスライダ挿入穴21eに形成されたボール保持部21gとからなる。
【0027】
ボール保持部21gは、内周面に、環状の窪み部43aと、この窪み部43aの前後に設けられた前保持部43b及び後保持部43cとが形成され、図2では、第2ボール54,54は、圧縮コイルばね52,52bの弾性力により第1ボール53,53を介して上下方向に付勢されて、窪み部43aに保持された状態にある。
【0028】
図3はフォワードベベルギヤ16のフォワード側歯部16aと、ドグクラッチ部22のクラッチ側凹部22dとを円周方向に展開した図であり、図中の矢印(DRIVE)はフォワードベベルギヤ16の回転方向(駆動方向)を表している(以下同じ。)。
【0029】
フォワード側歯部16aは、ベース面16cから突出形成された部分であり、回転方向前方側の歯部前面16dと、回転方向後方側の歯部後面16eと、歯の先端に設けられた頂面16fと、これらの歯部後面16e及び頂面16fのそれぞれを繋ぐ歯部斜面16g(即ち、歯部後面16eと頂面16fとの間の角部に形成された歯部斜面16g)とを備える。
【0030】
クラッチ側凹部22dは、ベース面22gに対して凹んだ部分であり、フォワードベベルギヤ16の回転方向前方側の凹部前面22hと、フォワードベベルギヤ16の回転方向後方側の凹部後面22jと、これらの凹部前面22h及び凹部後面22jのそれぞれの間に形成された凹部底面22kとを備える。
【0031】
凹部底面22kは、凹部前面22hに隣接する第1段部22mと、この第1段部22mよりもベース面22g側に一段高く形成された第2段部22nと、これらの第1段部22m及び第2段部22nとの間に形成された境界面22pとからなる。
【0032】
フォワードベベルギヤ16のフォワード側歯部16aとドグクラッチ部22のクラッチ側凹部22dとが噛み合ったときには、フォワードベベルギヤ16の歯部前面16dと、ドグクラッチ部22の凹部前面22hとが当たるとともに、フォワード側歯部16aの歯部斜面16gと、ドグクラッチ部22の第1段部22mと第2段部22nとの角部22rとが当たる。
【0033】
フォワードベベルギヤ16の歯部前面16dは、フォワードベベルギヤ16の軸方向に延びる直線61に対してベース面16c側よりも頂面16f側が回転方向前方に位置するように角度θだけ傾斜している。
【0034】
また、ドグクラッチ部22の凹部前面22hも、ドグクラッチ部22の軸方向に延びる直線62に対してベース面22g側よりも第1段部22m側が回転方向前方に位置するように角度θだけ傾斜している。
リバースベベルギヤ17(図2参照)のリバース側歯部17a(図2参照)は、上記したフォワード側歯部16aと同一形状であり、説明は省略する。
【0035】
以上に述べたドグクラッチ部22とフォワードベベルギヤ16との噛み合い構造の作用を次に説明する。
図4(a)は、フォワードベベルギヤ16が黒塗り矢印で示すように回転し、ドグクラッチ部22は停止しているか又はフォワードベベルギヤ16と同一方向に且つフォワードベベルギヤ16よりも遅い速度で回転している状態を示している。
【0036】
この状態から、図4(b)に示すように、ドグクラッチ部22を白抜き矢印のように軸方向に移動させてフォワードベベルギヤ16に接近させる。ドグクラッチ部22のベース面22gがフォワードベベルギヤ16のフォワード側歯部16aの頂面16fに接触したり、ドグクラッチ部22のクラッチ側凹部22dの凹部前面22hがフォワード側歯部16aの歯部前面16dに掛かったりすれば、ドグクラッチ部22は、黒塗り矢印で示すように、フォワードベベルギヤ16と同一速度又はこれに近い速度で回転する。
【0037】
そして、更に、ドグクラッチ部22をフォワードベベルギヤ16側に移動させると、図4(c)に示すように、フォワードベベルギヤ16のフォワード側歯部16aとドグクラッチ部22のクラッチ側凹部22dとが完全に噛み合う。
【0038】
即ち、フォワードベベルギヤ16の歯部前面16dとドグクラッチ部22の凹部前面22hとが当たるとともに、フォワード側歯部16aの歯部斜面16gが、ドグクラッチ部22の角部22rに当たり、歯部前面16dから凹部前面22hに動力が伝わる。
【0039】
このとき、フォワード側歯部16aとクラッチ側凹部22dとの軸方向及び回転方向のクリアランスはどちらもゼロになる。従って、フォワード側歯部16aとクラッチ側凹部22dとは一体的に回転する。
【0040】
例えば、駆動部であるエンジンのクランク軸に回転変動が発生し、この回転変動がフォワード側ベベルギヤ16に伝わっても、フォワード側歯部16aとクラッチ側凹部22dとの間に回転方向の隙間が存在しないから、フォワード側歯部16aとクラッチ側凹部22dとが回転方向に当たって打音が生じるということがない。
【0041】
図5に示すように、フォワードベベルギヤ16のフォワード側歯部16aの歯部前面16dがドグクラッチ部22のクラッチ側凹部22dの凹部前面22hに当たったときには、歯部前面16dが凹部前面22hを押し付ける押し付け荷重をFとすると、凹部前面22hには荷重Fと大きさが等しく方向が反対向きの反力Rが発生する。
【0042】
この反力Rの凹部前面22hに垂直な成分をR1、凹部前面22hに沿う成分をR2とすると、ドグクラッチ部22は、フォワードベベルギヤ16に荷重R2で引き寄せられる。即ち、クラッチ側凹部22dがフォワード側歯部16aに押し付けられる。
【0043】
従って、この押し付け力によって、図4(c)に示したフォワードベベルギヤ16の歯部斜面16gとドグクラッチ部22の角部22rは当たった状態が維持されるため、フォワード側歯部16aとクラッチ側凹部22dとの回転方向のクリアランスは、フォワード側歯部16aとクラッチ側凹部22dとが噛み合って回転している間は常にゼロに保たれる。
【実施例2】
【0044】
次に本発明の実施例2を説明する。実施例1と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図6(a),(b)はフォワードベベルギヤ16のフォワード側歯部16aと、ドグクラッチ部22のクラッチ側凹部22tとを円周方向に展開した図である。
【0045】
図6(a)に示すように、クラッチ側凹部22tは、ベース面22gに対して凹んだ部分であり、フォワードベベルギヤ16の回転方向前方側の凹部前面22hと、フォワードベベルギヤ16の回転方向後方側の凹部後面22jと、これらの凹部前面22h及び凹部後面22jのそれぞれの間に形成された凹部底面22uとを備える。
【0046】
凹部底面22uは、凹部前面22hに隣接する第1段部22mと、この第1段部22mよりもベース面22g側に形成された第2段部22vと、第1段部22mから立ち上げられた立ち上げ面22wと、これらの第2段部22v及び立ち上げ面22wのそれぞれの間の角部に形成された凹部斜面22xとからなる。
【0047】
図6(b)に示すように、フォワードベベルギヤ16のフォワード側歯部16aとドグクラッチ部22のクラッチ側凹部22tとが噛み合ったときには、フォワードベベルギヤ16の歯部前面16dとドグクラッチ部22の凹部前面22hとが当たるとともに、フォワード側歯部16aの歯部斜面16gとドグクラッチ部22の凹部斜面22xとが当たり、歯部前面16dから凹部前面22hに動力が伝えられる。
【0048】
このように、歯部斜面16gと凹部斜面22xとが当たることで、歯部斜面16gと凹部斜面22xとが当たるときの面圧を小さくすることができ、歯部斜面16g及び凹部斜面22xの摩耗を抑えることができる。
【0049】
上記の図2〜図4に示したように、船外機の駆動部からプロペラへ動力を伝達するプロペラシャフト21の途中にドグクラッチ部22が軸方向移動可能且つプロペラシャフト21と一体的に回転可能に設けられ、このドグクラッチ部22の側方に駆動部側と共に回転する駆動部側ギヤとしてのフォワードベベルギヤ16及びリバースベベルギヤ17が回転可能に設けられ、ドグクラッチ部22が、フォワードベベルギヤ16又はリバースベベルギヤ17に噛み合うドグクラッチ部噛み合い構造において、ドグクラッチ部22が、フォワードベベルギヤ16及びリバースベベルギヤ17にそれぞれ臨む凹部としてのクラッチ側凹部22d,22eを備え、このクラッチ側凹部22d,22eの底に2段の段部としての第1段部22m及び第2段部22nが形成され、フォワードベベルギヤ16及びリバースベベルギヤ17が、クラッチ側凹部22d,22eに噛み合う凸部としてのフォワード側歯部16a及びリバース側歯部17aを備え、このフォワード側歯部16a及びリバース側歯部17aの回転方向後方側の角部に斜面としての歯部斜面16gが形成され、第1段部22mと第2段部22nとの間の角部22rが、クラッチ側凹部22dとフォワード側歯部16a、又はクラッチ側凹部22eとリバース側歯部17dが噛み合うときに、歯部斜面16gと接触するように形成されているので、フォワードベベルギヤ16のフォワード側歯部16a及びリバースベベルギヤ17のリバース側歯部17aのそれぞれの歯部斜面16gと、ドグクラッチ部22のクラッチ側凹部22d,22e内の角部22rとの接触により、フォワード側歯部16aとクラッチ側凹部22d、及びリバース側歯部17aとクラッチ側凹部22eのそれぞれの回転方向のクリアランスが無くなり、フォワード側歯部16aとクラッチ側凹部22dとの噛み合い時、又はリバース側歯部17aとクラッチ側凹部22eとの噛み合い時の騒音を防止することができる。
【0050】
また、歯部斜面16gと角部22rとを接触させる構造により、歯部斜面16g及び角部22rの寸法公差を吸収することができ、斜面16g及び角部22rの寸法精度を低くすることができ、コストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のドグクラッチ部噛み合い構造は、船外機のクラッチに好適である。
【符号の説明】
【0052】
16,17…駆動部側ギヤ(フォワードベベルギヤ、リバースベベルギヤ)、16a,17a…凸部(フォワード側歯部、リバース側歯部)、16g…斜面(歯部斜面)、21…プロペラシャフト、22…ドグクラッチ部、22d,22e…凹部(クラッチ側凹部)、22m,22n…段部(第1段部、第2段部)、22r…角部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機の駆動部からプロペラへ動力を伝達するプロペラシャフトの途中にドグクラッチ部が軸方向移動可能且つプロペラシャフトと一体的に回転可能に設けられ、このドグクラッチ部の側方に前記駆動部側と共に回転する駆動部側ギヤが回転可能に設けられ、前記ドグクラッチ部が、前記駆動部側ギヤに噛み合うドグクラッチ部噛み合い構造において、
前記ドグクラッチ部は、前記駆動側ギヤに臨む凹部を備え、この凹部の底に2段の段部が形成され、
前記駆動部側ギヤは、前記凹部に噛み合う凸部を備え、この凸部の回転方向後方側の角部に斜面が形成され、
前記段部の一段目と二段目との間の角部は、前記凹部と前記凸部とが噛み合うときに、前記斜面と接触するように形成されていることを特徴とするドグクラッチ部噛み合い構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−242895(P2010−242895A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93366(P2009−93366)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】