説明

ドライクリーニング用洗浄剤組成物及びドライクリーニング方法

【課題】 洗浄性と再汚染防止性に優れ、洗濯物に帯電防止性を付与することができ、また洗濯物を消臭することのできるドライクリーニング用洗浄剤組成物及びそれを用いたドライクリーニング方法を提供する。
【解決手段】 テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、該洗浄用溶剤に添加されるドライクリーニング用洗浄剤組成物であって、リン酸エステル化合物及びアルカノールアミンを含有するドライクリーニング用洗浄剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライクリーニング用洗浄剤組成物及びそれを用いたドライクリーニング方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、該洗浄用溶剤に添加して用いることができ、洗浄性と再汚染防止性に優れ、洗濯物に帯電防止性と消臭性とを付与することのできるドライクリーニング用洗浄剤組成物及びそれを用いたドライクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライクリーニングは、非親水性の溶剤を洗浄用溶剤として用いて行う洗濯方法である。非親水性の溶剤としては、従来テトラクロロエチレン等の合成溶剤が使用されてきたが、近年は環境への負荷の問題や安全性からこれらの合成溶剤の使用が規制されつつあり、代わって、HFC―365等のフッ素系溶剤、環状又は直鎖シリコーン等のシリコーン系溶剤、パラフィン、ナフテンや芳香族炭化水素等の石油系溶剤が主流となっている。さらに人体や環境への安全性が考慮され、リモネンが新たなドライクリーニング洗浄用溶剤として提案されている。
【0003】
ところで、ドライクリーニングにおいては、通常、洗浄用溶剤に洗浄剤が添加されている。このようなドライクリーニング用洗浄剤組成物に求められる性能として、洗浄性、再汚染防止性、帯電防止性などが挙げられる。洗浄性とは洗濯物の汚れを落とすこと、再汚染防止性とは一旦落ちた汚れが洗濯物に再付着するのを防ぐこと、帯電防止性とは衣類の帯電を防ぎ、乾燥工程での引火爆発を防ぐことであり、これらの性能を同時に満たすことが求められている。また、ドライクリーニングでは、人体由来の汚れや汚物由来の汚れが洗濯物に残留するため洗濯物に異臭が残ることがあるが、近年は臭気に対する関心が非常に高く、洗濯物を消臭することが新たに求められている。
【0004】
従来のドライクリーニング用洗浄剤組成物としては、例えば、特許文献1には、洗浄力、再汚染防止効果に優れ、安全性(すなわち乾燥工程において引火爆発の危険性の改善)の高いものとして、第四級アンモニウム塩と脂肪酸とを特定の比率で混合した洗浄剤組成物が開示されている。しかしながら、第四級アンモニウム塩のようなカチオン界面活性剤は帯電防止性には優れるものの、その強力な洗濯物への吸着性から、十分な再汚染防止性を付与することができない場合もある。そして、洗濯物の異臭の問題は解決されていない。
【0005】
また、テルペン系溶剤に添加して用いられるドライクリーニング用洗浄剤組成物としては、例えば、特許文献2が開示されているが、洗浄性及び再汚染防止性については優れた効果を発揮するものの、帯電防止性及び洗濯物の異臭の問題については不十分であった。
【0006】
このように、従来のドライクリーニング用洗浄剤組成物及びドライクリーニング方法では、洗浄性、再汚染防止性、帯電防止性、洗濯物の消臭の要望をすべてバランス良く満たすことが困難であった。
【特許文献1】特開平10−17891号公報
【特許文献2】特開2006−70168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、該洗浄用溶剤に添加して用いることができ、洗浄性と再汚染防止性に優れ、洗濯物に帯電防止性を付与することができ、また洗濯物を消臭することのできるドライクリーニング用洗浄剤組成物及びそれを用いたドライクリーニング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、特定のリン酸エステル化合物及びアルカノールアミンを添加すると、洗浄性、再汚染防止性に優れ、洗濯物に帯電防止性を付与することができ、また洗濯物を消臭することができることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、該洗浄用溶剤に添加されるドライクリーニング用洗浄剤組成物であって、下記一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物及び下記一般式[2]で表されるアルカノールアミンを含有するドライクリーニング用洗浄剤組成物、
【化1】

(一般式[1]において、R1は炭素数1〜22のアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立にヒドロキシル基又はR1O(R4O)n−基であり、R4は炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは0〜10の数である。)
[R5(OH)]mNH3-m [2]
(一般式[2]において、R5は炭素数2〜5のアルキル基であり、mは1〜3の整数である。)、
【0010】
(2)前記一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物の含有量が1〜50質量%であり、前記一般式[2]で表されるアルカノールアミンの含有量が1〜20質量%であるドライクリーニング用洗浄剤組成物、
【0011】
(3)前記一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物として、下記一般式[1a]で表されるリン酸エステル化合物と下記一般式[1b]で表されるリン酸エステル化合物とを、質量比が1:2〜1:4となるように含有するドライクリーニング用洗浄剤組成物、
【化2】

(一般式[1a]において、R1は炭素数4〜12のアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立にヒドロキシル基又はR1O−基である。)
【化3】

(一般式[1b]において、R1は炭素数8〜22のアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立にヒドロキシル基又はR1O(R4O)n−基であり、R4は、エチレン基であり、nは1〜10の数である。)
【0012】
(4)さらに、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有するドライクリーニング用洗浄剤組成物、及び、
【0013】
(5)テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、該洗浄用溶剤に請求項1〜3のいずれかに記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物を添加するドライクリーニング方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、洗濯物の汚れの洗浄性、再汚染防止性に優れるドライクリーニングが可能となり、洗濯物に優れた帯電防止性を付与し、さらには洗濯物の消臭を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、該洗浄用溶剤に添加されるドライクリーニング用洗浄剤組成物であって、下記一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物及び下記一般式[2]で表されるアルカノールアミンを含有するドライクリーニング用洗浄剤組成物を含むことを特徴とする。
【化4】

一般式[1]において、R1は炭素数1〜22のアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立にヒドロキシル基又はR1O(R4O)n−基であり、R4は炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは0〜10の数である。分子中に含まれるn個のR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、一般式[2]において、R5は炭素数2〜5のアルキル基であり、mは1〜3の整数である。
【0016】
本発明においては、一般式[1]におけるリン酸エステル化合物により、テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて洗浄性、再汚染防止性、帯電防止性を高めることができる。
【0017】
前記一般式[1]においては、R1は炭素数1〜22のアルキル基である。炭素数が23以上であると、リン酸エステル化合物の洗浄用溶剤への溶解性が悪くなり、その結果、再汚染防止性が低下する。また、nが10より大きい場合は、リン酸エステル化合物の帯
電防止性が低下し、性能が不十分となる。
【0018】
また、前記一般式[1]においては、nが0である場合は、R1は炭素数4〜12のアルキル基であることが好ましい。nが0であり、炭素数が3以下であると洗浄用溶剤への溶解性が低下するため再汚染防止性が低下する傾向があり、一方、炭素数が13以上となっても洗浄用溶剤への溶解性が低下するため再汚染防止性が低下する傾向がある。なお、前記一般式[1]においてnが0であるリン酸エステル化合物は、帯電防止性及び消臭性が特に良好なものである。
【0019】
一般式[1]において、nが1以上の場合は、洗浄用溶剤との相溶性の観点から、R1は炭素数8〜22のアルキル基であることが好ましく、nは2〜10であることが好ましい。そして、R4は、リン酸エステル化合物の洗浄用溶剤に対する溶解性が良好であるという点から、エチレン基であることが好ましい。なお、前記一般式[1]においてnが1以上であるリン酸エステル化合物は、洗浄性及び再汚染防止性が特に良好なものである。
このようなリン酸エステル化合物は、1種を単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0020】
なお、一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物は、モノエステル、ジエステル及びトリエステルが挙げられるが、モノエステルとジエステルの混合物として得られることがあり、モノエステルとジエステルの1:1(モル比)の混合物として用いると、洗浄用溶剤中に混入した水を可溶化する効果がそれぞれを単独で用いた場合よりも良好となり、混入した水による問題(例えば、洗濯物の収縮、型崩れ、色流れなど)を抑制することが可能となる。
【0021】
また、一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物において、上記のnが0である化合物とnが1以上である化合物とを混合して使用することにより、さらに洗浄性、再汚染防止性、帯電防止性、消臭性をバランス良く発現させることができる。
【0022】
本発明においては、前記一般式[2]で表されるアルカノールアミンにより、テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、洗濯物の消臭効果を高めることができる。
【0023】
一般式[2]で表されるアルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンが好ましく、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンがより好ましい。
このような一般式[2]で表されるアルカノールアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物においては、帯電防止性と洗濯物の消臭性をバランス良く発揮するために、前記一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物の含有量が1〜50質量%であり、前記一般式[2]で表されるアルカノールアミンの含有量が1〜20質量%であることが好ましい。
【0025】
一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物の含有量が50質量%を超える場合、及び、一般式[2]で表されるアルカノールアミンの含有量が20質量%を超える場合は、ドライクリーニング用洗浄用組成物の洗浄用溶剤への溶解性が悪くなり、その結果、再汚染防止性が低下することがある。一方、一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物の含有量が1質量%を未満であるとドライクリーニング用洗浄用組成物の帯電防止性が、一般式[2]で表されるアルカノールアミンの含有量が1質量%未満であると洗濯物を消臭する効果が、それぞれ低下することがある。
【0026】
特に、一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物において、上記のnが0である化合物(好ましくは、上記一般式[1a]で表される化合物)と、nが1以上である化合物(好ましくは、上記一般式[1b]で表される化合物)とを混合して使用する場合、nが0である化合物とnが1以上である化合物とを質量比で1:2〜1:4となるように使用することにより、洗浄性、再汚染防止性、帯電防止性、消臭性をより一層向上させることができ、これらの特性をバランス良く兼ね備えたドライクリーニング用洗浄剤組成物を得ることができる。
【0027】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、洗浄溶剤への水の可溶化を促進する目的で、さらに非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。このような非イオン界面活性剤としては、特に制限はないが、下記一般式[3]で表される化合物又は一般式[4]で表される化合物を用いることが好ましい。
6O(R7O)xH [3]
【0028】
一般式[3]において、R6は炭素数8〜22のアルキル基、アルケニル基又はアルキルアリール基であり、より好ましくは、炭素数10〜18のアルキル基、アルケニル基又はアルキルアリール基である。R7は炭素数2〜4のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。xは2〜15が好ましく、より好ましくは2〜10である。x個の(R7O)で示される繰り返し単位は、単独でもよく、それぞれ異なっていてもよい。また、x個の(R7O)の繰り返し単位はブロック体であってもランダム体であってもよい。
【0029】
このような一般式[3]で表される化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(4モル)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレン(5モル)デシルエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(2モル)ポリオキシプロピレン(5モル)デシルエーテルなどを挙げることができる。
【0030】
【化5】

一般式[4]において、R8は炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくは、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基である。−A=は−CON=又は−N=である。R9及びR10は、それぞれ炭素数2〜4のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。y及びzはそれぞれ1〜10であり、より好ましくは1〜4である。y個の(R9O)で示される繰り返し単位及びz個の(R9O)で示される繰り返し単位は、単独でもよく、それぞれ異なっていてもよい。また、繰り返し単位はブロック体であってもランダム体であってもよい。
【0031】
一般式[4]で表される非イオン界面活性剤としては、例えば、オクタデシルアミンプロピレンオキサイド(4モル)付加物、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミドのエチレンオキサイド(6モル)付加物などを挙げることができる。
このような非イオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0032】
また、本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物においては、洗浄性や再汚染防止性のさらなる性能向上のため、前記一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物以外のアニオン界面活性剤を含有させても良い。このようなアニオン界面活性剤としては、従来ドライクリーニング用洗浄剤組成物に使用されているものを特に制限無く使用することができるが、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩等の硫酸エステル型アニオン界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤などが挙げられる。これらのアニオン界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物において、これらの非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を含有させるときは、それぞれが5質量%以上とすることで、それぞれの化合物による性質が十分に発揮される。また、前記非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤は、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の取り扱いを容易にするための溶解助剤としての効果もあるため、含有量の上限を98質量%とすることができる。
【0034】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物には、溶解助剤を含有させることができる。溶解助剤としては、石油系溶剤、シリコーン系溶剤、テルペン系溶剤等の溶剤や、引火点が40℃以上であるアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等)やグリコールエーテル(例えば、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール等)が挙げられる。これらの溶解助剤は、1種を単独で使用することができ、あるいは2種以上を混合して使用することができるが、なかでも引火点が比較的高い3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールを好適に用いることができる。
【0035】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物においては、必要に応じて、ベンゾトリアゾール等の防腐剤、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、トリクロサン等の抗菌剤、香料等を適宜配合することができる。
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて該洗浄用溶剤に添加することができ、それによって、洗浄性及び再汚染防止性に優れ、洗濯物に帯電防止性を付与することができ、洗濯物を消臭することのできるドライクリーニングが可能となる。
【0036】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、洗浄用溶剤に0.01〜5容量%の範囲で添加して使用することができ、0.1〜3容量%の範囲で添加することがより好ましい。添加量が0.1容量%未満では十分な性能が発揮されず、3容量%を超えると洗濯物によっては風合いが柔らかくなり過ぎるケースが起こる。
【0037】
本発明を適用できるテルペン系溶剤としては、従来公知の炭素数10〜13の環式モノテルペン又はその誘導体を挙げることができ、リモネンが特に好ましい。リモネンは、柑橘系植物の果皮から抽出できるため、化石資源を原料とする石油系溶剤に比べ地球温暖化を促進させることがなく、しかも、脱脂力を示すカウリブタノール値(KB値)は約60と汎用の石油系溶剤に比べ約2〜3倍と高く溶剤自身の洗浄性が良好なうえに、抗菌性を有しているためである。このようなテルペン系溶剤の市販品としては、三菱重工産業機器(株)製、商品名:フルーツドライなどが挙げられる。
【0038】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物を適用できる洗浄用溶剤は、テルペン系溶剤の含有量が5容量%以上であり、20容量%以上とすることが好ましく、50容量%以上とすることが特に好ましい。テルペン系溶剤の含有量が5%容量未満であると、洗浄用溶剤の十分にKB値を上げることはできず、また、ドライクリーニング用洗浄剤組成物を添加しても洗濯物を消臭する効果が不十分となる。
【0039】
洗浄用溶剤において、テルペン系溶剤と混合するために用いられる溶剤としては、ドライクリーニングに用いられている公知の溶剤を特に制限なく使用できるが、石油系溶剤及びシリコーン系溶剤が好ましい。
【0040】
このような石油系溶剤としては、例えば、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族炭化水素等の、消防法の第4類第2石油類又は第4類第3石油類に該当する溶剤が望ましい。石油系溶剤の市販品としては、例えば、日石三菱(株)製、商品名:ニューソルデラックスハイソフト、ニューソルデラックス、(株)ジャパンエナジー製、商品名:ニッコーホワイト、出光興産(株)製、商品名:アイソールソフト等が挙げられる。
【0041】
シリコーン系溶剤としては、例えば、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができ、信越化学工業(株)製、商品名:KF96L−1.5CS、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:シリコーンプラスα等の市販品を用いることもできる。
なお、これらリモネン系溶剤に混合する溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用しても構わないが、乾燥性や臭気が少ない点でノルマルデカンの使用が好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
(1)油性汚染布の洗浄性及び再汚染防止性
容量500mlのステンレスポットを用いて、表1記載の洗浄用溶剤100mlに、ドライクリーニング用洗浄剤組成物を1容量%となるように添加して洗浄液を調製した。この洗浄液を用いて、40番綿ブロードとウールモスリンの4cm×8cmの大きさの白布と、日本油化学協会法に準じて作成した40番綿ブロードとウールモスリンの4cm×8cmの大きさの油性汚染布とを、ラウンダ・オ・メーター[大栄科学精器製作所(株)、L−20]で、温度20℃で10分間洗浄した。その後、遠心脱水機[英光産業(株)、H−120A]を用いて、1分間脱液し、60分間風乾した。
洗浄前後の白布及び汚染布について、色彩計[(株)村上色彩技術研究所、クリーンマスターCM−53D]を用いて、550nmにおける反射率を測定し、次式にしたがって洗浄率と再汚染率とを算出した。
洗浄率(%)={(S2−S1)/(W1−S1)}×100
再汚染率(%)={(W1−W2)/W1}×100
ただし、S1:洗浄前の汚染布反射率、S2:洗浄後の汚染布反射率、W1:洗浄前の白布反射率、W2:洗浄後の白布反射率である。
【0043】
(2)帯電防止性
容量500mlのステンレスポットを用いて、表1記載の洗浄用溶剤100mlに、ドライクリーニング用洗浄剤組成物を1容量%となるように添加して処理液を調製した。ラウンダ・オ・メーター[大栄科学精器製作所(株)、L−20]を用いて、アクリルメリヤス及びポリエステルジャージの試験布各10gを、処理液で20℃×10分間処理した。その後、遠心脱水機[英光産業(株)、H−120A]を用いて1分間脱液し、60℃に保った熱風循環式乾燥機で60分間乾燥し、取り出した直後の表面抵抗値を絶縁抵抗計[東亜電波(株)、SM−8210]を用いて測定した。
【0044】
(3)消臭性の確認
以下の方法で、評価布を作成し、洗浄後の臭気に関して、5人による官能評価を行った。
[臭気に使用したもの]
アンモニア、イソ吉草酸
【0045】
[評価布作成方法]
<アンモニア評価布>
アンモニア水(JIS試薬特級、ナカライテスク株式会社)をイオン交換水にて300倍(質量基準)に希釈し、これを、10cm×10cmの大きさのポリエステルジャージに0.05ml添加したものを使用した。
<イソ吉草酸評価布>
イソ吉草酸(ナカライ規格1級、ナカライテスク株式会社)をイオン交換水にて1,000,000倍(質量基準)に希釈し、これを、10cm×10cmの大きさのポリエステルジャージに0.05ml添加したものを使用した。
【0046】
[洗浄方法]
容量500mlのステンレスポットを用いて、表1記載の洗浄用溶剤100mlに、洗浄剤組成物を1容量%となるように添加して処理液を調製した。
ラウンダ・オ・メーター[大栄科学精器製作所(株)、L−20]を用いて、各試験布1枚ずつを、処理液で20℃×10分間洗浄した。その後、遠心脱水機[英光産業(株)、H−120A]を用いて1分間脱液し、60℃に保った熱風循環式乾燥機で60分間乾燥し、取り出した。
【0047】
[評価方法]
取り出し直後の布に残留した臭いの官能評価を5人で行い、平均値を最終評価とした。
【0048】
[評価基準]
○ 残留臭気が全くない
△ 残留臭気が少しある
× 残留臭気がある(臭気が未洗浄布と同等)
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル30質量部、トリエタノールアミン5質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル10質量部、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド10質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール45質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Aを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて42%、油性汚染布のウールモスリンについて78%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.8%、ウールモスリンについて2.2%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて3.5×1011Ω、ポリエステルジャージについて2.2×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について○であった。
【0051】
実施例2
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル30質量部、ドデシルリン酸エステル10質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム5質量部、トリエタノールアミン10質量部、トリイソプロパノールアミン5質量部、オレイン酸ジエタノールアミド5質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)35質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Aを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて41%、油性汚染布のウールモスリンについて77%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.5%、ウールモスリンについて2.1%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて0.5×1011Ω、ポリエステルジャージについて0.2×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0052】
実施例3
ポリオキシエチレン(6モル)デシルエーテルリン酸エステル20質量部、ブチルリン酸エステル5質量部、トリエタノールアミン10質量部、ポリオキシエチレン(4モル)ノニルフェニルエーテル10質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)55質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Aを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて42%、油性汚染布のウールモスリンについて75%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.7%、ウールモスリンについて1.9%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて2.5×1011Ω、ポリエステルジャージについて1.5×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0053】
実施例4
ポリオキシエチレン(2モル)オクタデシルエーテルリン酸エステル10質量部、トリイソプロパノールアミン5質量部、及びポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル85質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Aを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて40%、油性汚染布のウールモスリンについて75%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.6%、ウールモスリンについて2.4%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて5.0×1011Ω、ポリエステルジャージについて2.0×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0054】
実施例5
ブチルリン酸エステル5質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム10質量部、トリエタノールアミン5質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル10質量部、ポリオキシエチレン(2モル)ポリオキシプロピレン(5モル)デシルエーテル10質量部、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド5質量部、オレイン酸ジエタノールアミド5質量部、d−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)20質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール20質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Aを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて40%、油性汚染布のウールモスリンについて76%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.3%、ウールモスリンについて1.8%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて12×1011Ω、ポリエステルジャージについて8.0×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について○であった。
【0055】
実施例6
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル20質量部、ブチルリン酸エステル10質量部、トリエタノールアミン20質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール50質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Aを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて40%、油性汚染布のウールモスリンについて74%であり、再汚染率は、綿ブロードについて2.7%、ウールモスリンについて3.2%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて0.9×1011Ω、ポリエステルジャージについて1.2×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0056】
比較例1
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム20質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル20質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)40質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Aを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて38%、油性汚染布のウールモスリンについて75%であり、再汚染率は、綿ブロードについて2.2%、ウールモスリンについて2.5%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて200×1011Ω、ポリエステルジャージについて200×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて○〜△、イソ吉草酸について×であった。
【0057】
比較例2
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル20質量部、ステアリルジヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート30質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)50質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Aを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて39%、油性汚染布のウールモスリンについて72%であり、再汚染率は、綿ブロードについて5.3%、ウールモスリンについて7.5%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて1.5×1011Ω、ポリエステルジャージについて0.5×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて△〜×、イソ吉草酸について△であった。
実施例1〜6及び比較例1〜2の結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例7
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル30質量部、トリエタノールアミン5質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル10質量部、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド10質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール45質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Bを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて37%、油性汚染布のウールモスリンについて72%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.5%、ウールモスリンについて1.9%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて2.2×1011Ω、ポリエステルジャージについて1.9×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について○であった。
【0060】
実施例8
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル30質量部、ドデシルリン酸エステル10質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム5質量部、トリエタノールアミン10質量部、トリイソプロパノールアミン5質量部、オレイン酸ジエタノールアミド5質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)35質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Bを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて36%、油性汚染布のウールモスリンについて72%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.2%、ウールモスリンについて1.7%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて0.5×1011Ω、ポリエステルジャージについて0.4×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0061】
実施例9
ポリオキシエチレン(6モル)デシルエーテルリン酸エステル20質量部、ブチルリン酸エステル5質量部、トリエタノールアミン10質量部、ポリオキシエチレン(4モル)ノニルフェニルエーテル10質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)55質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Bを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて38%、油性汚染布のウールモスリンについて70%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.5%、ウールモスリンについて1.7%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて3.2×1011Ω、ポリエステルジャージについて2.2×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0062】
実施例10
ポリオキシエチレン(2モル)オクタデシルエーテルリン酸エステル10質量部、トリイソプロパノールアミン5質量部、及びポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル85質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Bを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて35%、油性汚染布のウールモスリンについて70%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.6%、ウールモスリンについて2.2%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて4.2×1011Ω、ポリエステルジャージについて2.8×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について○であった。
【0063】
実施例11
ブチルリン酸エステル5質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム10質量部、トリエタノールアミン5質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル10質量部、ポリオキシエチレン(2モル)ポリオキシプロピレン(5モル)デシルエーテル10質量部、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド5質量部、オレイン酸ジエタノールアミド5質量部、d−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)20質量部、及びシリコーン系溶剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:KF96L−1.5CS)20質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Bを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて36%、油性汚染布のウールモスリンについて71%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.3%、ウールモスリンについて1.6%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて15×1011Ω、ポリエステルジャージについて10×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて○、イソ吉草酸について○であった。
【0064】
実施例12
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル20質量部、ブチルリン酸エステル10質量部、トリエタノールアミン20質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール50質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Bを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて36%、油性汚染布のウールモスリンについて70%であり、再汚染率は、綿ブロードについて2.3%、ウールモスリンについて2.9%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて1.1×1011Ω、ポリエステルジャージについて1.5×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0065】
比較例3
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム20質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル20質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)40質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Bを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて35%、油性汚染布のウールモスリンについて70%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.8%、ウールモスリンについて2.1%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて200×1011Ω、ポリエステルジャージについて200×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて△、イソ吉草酸について×であった。
【0066】
比較例4
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル20質量部、ステアリルジヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート30質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)50質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Bを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて35%、油性汚染布のウールモスリンについて68%であり、再汚染率は、綿ブロードについて4.8%、ウールモスリンについて7.3%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて1.9×1011Ω、ポリエステルジャージについて0.5×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて△〜×、イソ吉草酸について△であった。
実施例7〜12及び比較例3〜4の結果を表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
実施例13
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル30質量部、トリエタノールアミン5質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル10質量部、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド10質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール45質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Cを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて32%、油性汚染布のウールモスリンについて65%であり、再汚染率は、綿ブロードについて0.9%、ウールモスリンについて2.1%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて3.9×1011Ω、ポリエステルジャージについて3.5×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について○であった。
【0069】
実施例14
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル30質量部、ドデシルリン酸エステル10質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム5質量部、トリエタノールアミン10質量部、トリイソプロパノールアミン5質量部、オレイン酸ジエタノールアミド5質量部、及びノルマルデカン((株)ジャパンエナジー(株)、商品名:ニッコーホワイト)35質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Cを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて33%、油性汚染布のウールモスリンについて67%であり、再汚染率は、綿ブロードについて0.8%、ウールモスリンについて1.9%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて0.8×1011Ω、ポリエステルジャージについて1.5×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0070】
実施例15
ポリオキシエチレン(6モル)デシルエーテルリン酸エステル20質量部、ブチルリン酸エステル5質量部、トリエタノールアミン10質量部、ポリオキシエチレン(4モル)ノニルフェニルエーテル10質量部、d−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)10質量部、ノルマルデカン((株)ジャパンエナジー、商品名:ニッコーホワイト)40質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール5質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Cを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて35%、油性汚染布のウールモスリンについて65%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.1%、ウールモスリンについて1.5%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて3.5×1011Ω、ポリエステルジャージについて2.1×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0071】
実施例16
ポリオキシエチレン(2モル)オクタデシルエーテルリン酸エステル10質量部、トリイソプロパノールアミン5質量部、及びポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル85質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Cを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて31%、油性汚染布のウールモスリンについて67%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.2%、ウールモスリンについて2.1%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて7.1×1011Ω、ポリエステルジャージについて5.4×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について○であった。
【0072】
実施例17
ブチルリン酸エステル5質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム10質量部、トリエタノールアミン5質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル10質量部、ポリオキシエチレン(2モル)ポリオキシプロピレン(5モル)デシルエーテル10質量部、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド5質量部、オレイン酸ジエタノールアミド5質量部、d−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)20質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール20質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Cを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて30%、油性汚染布のウールモスリンについて66%であり、再汚染率は、綿ブロードについて0.7%、ウールモスリンについて1.5%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて21×1011Ω、ポリエステルジャージについて11×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて○、イソ吉草酸について○であった。
【0073】
実施例18
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル20質量部、ブチルリン酸エステル10質量部、トリエタノールアミン20質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール50質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Cを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて31%、油性汚染布のウールモスリンについて65%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.7%、ウールモスリンについて2.8%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて1.0×1011Ω、ポリエステルジャージについて2.1×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について◎であった。
【0074】
比較例5
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム20質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル20質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)40質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Cを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて31%、油性汚染布のウールモスリンについて65%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.1%、ウールモスリンについて2.2%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて200×1011Ω、ポリエステルジャージについて200×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて△、イソ吉草酸について×であった。
【0075】
比較例6
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル20質量部、ステアリルジヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート30質量部、及びd−リモネン(三菱重工産業機器(株)、商品名:フルーツドライ、純度99%)50質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Cを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて30%、油性汚染布のウールモスリンについて64%であり、再汚染率は、綿ブロードについて4.2%、ウールモスリンについて6.2%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて2.5×1011Ω、ポリエステルジャージについて1.5×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて△、イソ吉草酸について△であった。
実施例13〜18及び比較例5〜6の結果を表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
実施例19
ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルリン酸エステル30質量部、トリエタノールアミン5質量部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル5質量部、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド10質量部、及び3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール50質量部を配合して、ドライクリーニング洗浄剤組成物を調製した。
表1記載の洗浄用溶剤Aを用いて、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の評価を行った。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて42%、油性汚染布のウールモスリンについて79%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.7%、ウールモスリンについて2.1%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて3.8×1011Ω、ポリエステルジャージについて2.5×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について○であった。
【0078】
実施例20
実施例19において、表1記載の洗浄用溶剤Aの代わりに、ドライクリーニング用洗浄溶剤Bを用いた以外は、実施例19と同様にして評価した。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて38%、油性汚染布のウールモスリンについて73%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.4%、ウールモスリンについて1.9%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて2.4×1011Ω、ポリエステルジャージについて2.1×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について○であった。
【0079】
実施例21
実施例19において、表1記載の洗浄用溶剤Aの代わりに、ドライクリーニング用洗浄溶剤Cを用いた以外は、実施例19と同様にして評価した。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて32%、油性汚染布のウールモスリンについて64%であり、再汚染率は、綿ブロードについて0.9%、ウールモスリンについて1.9%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて3.9×1011Ω、ポリエステルジャージについて3.7×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて◎、イソ吉草酸について○であった。
【0080】
比較例7
実施例19において、表1記載の洗浄用溶剤Aの代わりに、ドライクリーニング用洗浄溶剤Dを用いた以外は、実施例19と同様にして評価した。洗浄率は、油性汚染布の綿ブロードについて27%、油性汚染布のウールモスリンについて60%であり、再汚染率は、綿ブロードについて1.1%、ウールモスリンについて2.1%であり、帯電防止性は、アクリルメリヤスについて5.2×1011Ω、ポリエステルジャージについて4.5×1011Ωであり、消臭性は、アンモニアについて○〜△、イソ吉草酸について△であった。
実施例19〜21及び比較例7の結果を表5に示す。
【0081】
【表5】

【0082】
洗浄用溶剤として、テルペン系溶剤を5容量%以上含む洗浄溶剤を用いたドライクリーニングにおいて、一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物と一般式[2]で表されるアルカノールアミンとを含有する本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物を添加した実施例1〜18では、いずれも、洗浄性、再汚染防止性、帯電防止性、消臭性に優れる。これに対して、比較例1、3、5の従来のアニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤からなるドライクリーニング用洗浄剤は、帯電防止性に劣り、消臭性が低い。比較例2、4、6の従来のカチオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤からなるドライクリーニング用洗浄剤は、再汚染防止性に劣り、消臭性が低い。また、ドライクリーニング用洗浄剤組成物の組成が同じであっても、テルペン系溶剤を含まない洗浄用溶剤を用いた場合(比較例7)は、実施例19〜21と比較して消臭性が劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、該洗浄用溶剤に添加して用いることができ、それによって、洗浄性と再汚染防止性に優れ、洗濯物に帯電防止性と消臭性とを付与することのできるドライクリーニングが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、該洗浄用溶剤に添加されるドライクリーニング用洗浄剤組成物であって、下記一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物及び下記一般式[2]で表されるアルカノールアミンを含有するドライクリーニング用洗浄剤組成物。
【化1】

(一般式[1]において、R1は炭素数1〜22のアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立にヒドロキシル基又はR1O(R4O)n−基であり、R4は炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは0〜10の数である。)
[R5(OH)]mNH3-m [2]
(一般式[2]において、R5は炭素数2〜5のアルキル基であり、mは1〜3の整数である。)
【請求項2】
前記一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物の含有量が1〜50質量%であり、前記一般式[2]で表されるアルカノールアミンの含有量が1〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記一般式[1]で表されるリン酸エステル化合物として、下記一般式[1a]で表されるリン酸エステル化合物と下記一般式[1b]で表されるリン酸エステル化合物とを、質量比が1:2〜1:4となるように含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物。
【化2】

(一般式[1a]において、R1は炭素数4〜12のアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立にヒドロキシル基又はR1O−基である。)
【化3】

(一般式[1b]において、R1は炭素数8〜22のアルキル基であり、R2、R3はそれぞれ独立にヒドロキシル基又はR1O(R4O)n−基であり、R4は、エチレン基であり、nは1〜10の数である。)
【請求項4】
さらに、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物。
【請求項5】
テルペン系溶剤を5容量%以上含む溶剤を洗浄用溶剤として用いるドライクリーニングにおいて、該洗浄用溶剤に請求項1〜4のいずれかに記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物を添加するドライクリーニング方法。

【公開番号】特開2010−126561(P2010−126561A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300268(P2008−300268)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】