説明

ドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルム

【課題】高解像度化に対応した、ドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、長手方向のF−5値が70〜150MPaで、幅方向のF−5値が80〜160MPaであり、ヘイズ値が1%以下であり、150℃30分間の熱収縮率が長手方向で1.5〜3.5%、幅方向で0.5〜2.5%であることを特徴とするドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムによって達成でき出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、具体的には透明性に優れ、滑り性にすぐれ、とくに、片面に感光性樹脂組成物を積層して使用されるドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線基板、半導体パッケージ、フレキシブル基板などの製造法として、ドライフィルムレジスト(以下、DFRと略記することがある)が多く用いられるようになっている。
【0003】
通常のDFRは感光層(フォトレジスト層)が、支持体としてのポリエステルフィルムとLDPEフィルムなどからなる保護フィルム(カバーフィルム)でとの間に挟まれたサンドイッチ構造をしている。このDFRを用いて導体回路を作製するには、一般的に次のような操作が行われる。
【0004】
すなわち、DFRから保護フィルムを剥離し、露出したレジスト層の表面と、基板上の例えば銅箔などの導電性基材層の表面とが密着するように、基板・導電性基材層とラミネートする。次に、導体回路パターンを焼き付けたレチクルを、ポリエステルフィルムからなる支持体上に置き、その上から、感光性樹脂を主体としたレジスト層に紫外線(例えば365nmにピークを有するI線)を照射して、露光させる。その後、レクチルおよびポリエステルフィルムを剥離した後、溶剤によってレジスト層中の未反応分を溶解、除去する。次いで、酸などでエッチングを行い、導電性基材層中の露出した部分を溶解、除去する。この結果、レジスト層中の光反応部分とこの光反応部分に対応する導電性基材層部分がそのまま残ることになる。その後、残ったレジスト層を除去すれば、基板上の導体回路が形成されることになる。
【0005】
このような方法により導体回路が形成されるので、支持体としてポリエステルフィルムには、紫外線を邪魔なく透過できることが要求され、この結果、レクチルに焼き付けられた回路パターンが正確にレジスト層上に反映される。
【0006】
とくに、近年、OA機器、IT機器など小型化、軽量化などに伴い、透過性に優れ、ヘイズが低く、高解像化を達成できるドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムが要求されている。
【0007】
しかしながら、ポリエステルフィルムには、通常、走行性や巻き特性を付与するために易滑材としての粒子を含有させているため、露光工程時の紫外線照射の際、粒子による光散乱が引き起こされ、レジストの解像度を低下させてしまうという問題が生じていた。
【0008】
そこで、フィルムのヘイズ値を低くすること(例えば、特許文献1,2,3,5)、あるいは、波長365nmの透過率を一定範囲内とすることを特徴とするドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムが提案されている。また、これらの課題を達成する手法として、複合フィルムとすること、特定の粒子、粒子平均径、粒子含有量とすることが提案されている。
【0009】
さらに、特許文献4では、フィルム加工時のシワの発生の抑制および露光時のパターン欠点の発生のためモース硬度8以上の平均粒径0.001〜0.5μmの粒子を添加することが提案されている。
【特許文献1】特開平7−333853号公報
【特許文献2】特開2001−264971号公報
【特許文献3】特開2002−043691号公報
【特許文献4】特開2002−341546号公報
【特許文献5】特開2005−059285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記した提案でも、近年における一層の高解像度化の要求を満足することは難しく、現像後のレジストのパターニングにゆがみや、抜けなどの欠点が十分に解消できず、依然として、高改造度化への品質向上、収率などの生産性向上の要求が続いている上記事情に鑑み、本発明はレジストの高解像度を達成するとも、欠点が少なく、品質向上、生産性向上に対応できるドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討の結果、レジストの解像度の低下は、フィルムの透過率、ヘイズに加え、フィルムの長手方向および幅方向の強度バランスが重要で、併せて、熱収縮率を特定範囲内にすることが必要であり、さらに、現像後のレジストのパターニングにゆがみや、抜けなどの欠点は、ドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムの表面に存在する窪み欠点が要因の一部であることを見出し、さらにまた、三層複合の構造とし、表層部に特定の粒子を含有させることが好ましいことを見出した。
すなわち、本発明は、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、長手方向のF−5値が70〜150MPaで、幅方向のF−5値が80〜160MPaであり、ヘイズ値が1%以下であり、150℃30分間の熱収縮率が長手方向で1.5〜3.5%、幅方向で0.5〜2.5%であることを特徴とするドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムによって達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、レジストの高解像度を達成するとも、欠点が少なく、品質向上、生産性向上に対応できるドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、長手方向のF−5値が70〜150MPaで、幅方向のF−5値が80〜160MPaであり、ヘイズ値が1%以下であり、150℃30分間の熱収縮率が長手方向で1.5〜3.5%、幅方向で0.5〜2.5%であることを特徴とするドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムである。
【0014】
ここで、二軸配向ポリエステルに用いられるポリエステルとは、少なくとも70モル%以上が、芳香族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルである。
【0015】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、などであり、とくにはテレフタル酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、イソフタル酸など他の芳香族ジカルボン酸、あるいは脂肪酸を一部共重合してもよい。
【0016】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、などを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0017】
本発明の積層ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとして、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体等を挙げることができ、とくに、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0018】
本発明に使用するポリエステルは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法や、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることによって製造する方法などが採用できる。この際、必要に応じて、反応触媒として従来公知のアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることもできる。
【0019】
本発明のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムは、全フィルム厚みが10〜25μmが好ましい。とくに好ましくは12μmから20μmである。厚みが10μm以下では、強度が不足し加工工程での取り扱いが難しくなり、逆に25μmを越えると、光線透過率およびヘイズ値を本発明範囲内にすることが難しくなる。
【0020】
また、長手方向のF−5値が70〜150MPaであることが必要である。長手方向のF−5値が70MPa未満では強度不足により傷の発生などにより加工特性が悪くなり、160MPaを越えると幅方向のF−5値との両立が困難となる。好ましくは、70〜140MPa、さらに好ましくは80〜130MPaである。
【0021】
さらに、幅方向のF−5値が80〜160MPaであることが必要である。幅方向のF−5値が80MPa未満では強度不足による傷の発生などによる加工特性が悪くなり、160MPaを越えると長手方向のF−5値との両立が難しくなる。好ましくは80〜150MPaであり、さらに好ましくは90〜140MPaである
また、縦方向のF−5値と長手方向のF−5値の和は200〜270MPaであることが好ましく、とくに220〜250MPaが好ましい。また幅方向のF−5値が長手方向のF−5値よりも同等以上が好ましく、その差が10〜20MPaの場合がさらに好ましい。
【0022】
また、長手方向の破断強度は200〜360MPaであるのが好ましく、220〜304MPaの場合がさらに好ましい。幅方向の破断強度については260〜420MPaであるのが好ましく、とくに好ましくは280〜400MPaである。
【0023】
上記、F−5値および破断強度は縦方向および横方向の延伸温度、延伸倍率を適宜調整することで達成できる。
【0024】
本発明のフィルムは、150℃30分間の熱収縮率が長手方向で1.5〜3.5%、幅方向で0.5〜2.5%である。長手方向および幅方向の熱収縮値がこの範囲内であるとDFR加工工程での熱収縮による歪みやシワの発生を抑制でき好ましく、150℃30分の熱収縮値が長手方向で2〜3%、幅方向で0.8〜2.3%であるとさらに好ましい。
熱収縮値は、製膜条件における弛緩熱処理の条件などを適宜調整することにより達成できる。
【0025】
さらに、本発明のフィルムの光線透過率は85%以上であることが必要である。85%未満では露光にあたって紫外光線を邪魔なく透過させるには不十分であり、好ましくは86%以上、さらに好ましくは88%以上である。
【0026】
また、フィルムのヘイズ値は1%以下であることが必要である。1%を越えると露光にあたっての紫外光線の散乱が大きくなり、また透過率を阻害し好ましくない。好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.6%以下である。
【0027】
光線透過率およびヘイズ値を本発明範囲内に達成するためには、含有する粒子などによる光線透過の阻害を抑制し、さらにフィルム表面の粗さ・凹凸による散乱を抑制することが必要である。このためには、フィルム中に含有する粒子の粒径を小さくし、含有量を減少することが有効であるが、このようにすると、フィルム表面が平滑化し過ぎ、易滑性、走行性が悪くなり、加工特性が劣ることになる。全光透過率、ヘイズ値を悪化させないで加工特性を保持するという相反する機能の両立が必要である。
【0028】
上記課題を達成するため、三層構造からなり、表層に平均粒径が0.2〜0.7μmの有機粒子を表層に対して0.01〜0.1重量%含有し、表面粗さ(Ra)が3〜10nmであることが好ましい。
【0029】
ここで、三層構造とはA/B/AまたはA/B/Cの層からなるものが好ましく、表層部であるA層およびC層に含有する粒子種、平均粒子径、含有量が異なっても良い。さらにA/B/Aの構成において、両側の積層厚さが異なっても良い。さらに好ましくは、A/B/Aの構成とし、実質的に、両側の積層厚さを同一とし、同一の粒子組成とすることが、フィルムの生産にあたって設備構成も簡易で生産性も期待できる。
上記構成において、好ましくはB層には実質的に粒子を含有せず、A層に粒子を含有することが好ましく、A層の積層厚さは0.1〜2μm、好ましくは0.2〜1.0μm、さらに好ましくは0.4〜0.8μmである。0.1μm未満の場合には積層部への含有粒子の脱落が大きくなり、2μmを越えるとA層に添加している粒子の平均径および添加量をさらに減少することが必要になり、加工特性との両立が難しくなる。
【0030】
表層部A層に含有する粒子としては、有機、無機の粒子を用いることができるが、例えば、酸化珪素、炭酸カルシウム、アルミナ、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウムなどを、有機系としては、例えば、ポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができる。これらの粒子の採用にあたっては、光線透過率およびヘイズ値の上昇を抑制するため、粒子表面を界面活性剤などで表面改質し、ポリエステルとの親和性を改善すること方法が添加粒子周辺でのボイド発生を抑制する点で好ましく採用できる。また、粒子形状が球状に近く、さらに、ポリエステルとの屈折率の差が少ない方が、フィルム層内を紫外線が通過時の散乱光を抑制することができ好ましく、コロイダルシリカ、有機粒子がとくに好ましく、さらに、シリコーン粒子、架橋ポリスチレン粒子が好適である。
【0031】
中でも、乳化重合で調整された、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる架橋ポリスチレン粒子は粒子形状が真球に近く、粒径分布が均一であり、均一な突起形成を図ることが可能で好ましい。
【0032】
さらに具体的には、表層部A層に平均粒径が0.2〜0.7μmの有機粒子を表層に対して0.01〜0.1重量%させ、表面粗さ(Ra)が3〜10nmに調整することが好ましい。表面粗さが3nm未満であると走行性が悪く加工特性に劣り、10nmを越えると表面凹凸による光散乱にとるヘイズ値の上昇が無視出来なくなる。表面粗さ(Ra)が4〜8nmであるとさらに好ましい。
【0033】
表面粗さは、表層A層に添加する有機粒子の平均粒径と添加量によって適宜調整できるが、好ましい範囲は平均粒径が0.2〜0.7μm、添加量が表層に対して0.01〜0.1重量%である。平均粒径がこの範囲を外れると、添加量の関係で、上記表面粗さを達成した場合のヘイズ値および光線透過率を悪化させ好ましくない。平均粒径0.3〜0.5μmの有機粒子を0.01〜0.05重量%添加することがとくに好ましい。
【0034】
本発明のフィルムは、フィルムの両面において、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下である。窪み欠点数が5個/mを越えると窪みによる露光時に透過紫外線の異常屈折が起こり、レジストパターンの乱れを発生させることがあり、さらに局所的にヘイズ値を高めることにもなり好ましくない。
【0035】
本発明において窪み欠点とは、フィルム表面の微細な凹部を意味し、深さとは、フィルム表面から厚み方向への最大深さとし、窪み欠点の周りに盛り上がりを生じている場合は、盛り上がり部の頂部から窪みの底部までの最大深さを意味する。
【0036】
窪み欠点数を限りなく少なくすることは望ましいことであるが、実質的に障害となるのは、深さ0.5μm以上の窪みであり、0.5μm以上の窪み欠点数を5個/m以下とすることにより達成される。好ましくは3個/m以下であり、さらに好ましくは1個/m以下である。
【0037】
窪み欠点数は、延伸時にロール延伸に伴うフィルムとロールとの接触場所での速度差を少なくし、ロールの微少傷の転写などを抑制することで達成できる。とくに延伸ロールからの傷の転写を抑制するため、ロールへのオリゴマーなどの付着物を減少させることが必要であり、ロールの頻繁な清浄化作業、オリゴマーの付着抑制のための延伸ゾーンの清浄化が効果的である。
【0038】
さらに、前記粒子とともに、凝集アルミナを添加することが好ましい。ここで、凝集アルミナは平均一次粒子径が5〜30nm、好ましくは8〜15nmの平均一次粒子径が数個から数百個凝集したものであり、無水塩化アルミニウムを原料として火焔加水分解法、あるいはアルコシドアルミナの加水分解などによって製造されたものが採用できる。これ結晶型としてδ型、θ型、γ型などが知られているが、とくにδ型アルミナが好適に使用できる。これらの凝集アルミナについて、ポリエステル重合時に添加することで使用に供せるが、例えば、ポリエステル重合時の原料の一部であるエチレングリコールのスラリーとして、サンドグラインダーなどの粉砕、分散を行い、精密濾過を行うことによって、平均二次粒子径が0.01〜0.2μmの凝集アルミナを得ることができる。このようにして得られた凝集アルミナをフィルム中に添加した場合、二軸延伸によって、面方向に配置され、前述の突起形成粒子と異なり、実質的突起を形成せず、表面粗さへの影響が少なく、また、透過性が良いため、光線透過率およびヘイズ値の劣化を抑制できる。
【0039】
凝集アルミナの添加により、フィルム表面の地肌補強効果が大きく、耐摩耗性が向上し、延伸時のロールとの接触時に発生する窪み欠点の抑制に効果的である。凝集アルミナは表層に添加することが好ましく、その含有量は表層に対して0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.9重量%、0.6〜0.8重量%がさらに好ましい。
【0040】
次に本発明のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。ポリエステルに不活性粒子を含有せしめる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散せしめ、例えば3μm以上の粗大粒子を95%以上捕集できる高精度濾過を行った後、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、粗大突起の発生を抑制でき好ましい。また粒子の水スラリーを直接、所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の2軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も本発明の効果に有効である。
【0041】
このようにして準備した、粒子含有マスターペレットと粒子などを実質的に含有しないペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、ポリマーをフィルターにより濾過する。
【0042】
また、ごく小さな異物もフィルム欠陥となるため、フィルターには例えば5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。続いてスリット状のスリットダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。
【0043】
すなわち、1から3台の押出機、1から3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて必要に応じて積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にスタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は有効である。
【0044】
延伸方法は同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であってもよい。
逐次延伸の場合、最初の長手方向の延伸が重要であり延伸温度は90〜130℃、好ましくは105〜120℃である。延伸温度が90℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなるとフィルム表面が熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。また、延伸ムラ、およびキズを防止する観点からは延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましく、トータル倍率は長さ方向に3〜4.5倍、好ましくは3.2〜4.2倍であり、幅方向に3.2〜5倍、好ましくは3.9〜4.5倍である。目標とするフィルムの破断強度を達成するため、適時倍率を選択できるが、幅方向の破断強度を高くするため、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高めに設定することがさらに好ましい。かかる温度、倍率範囲をはずれると延伸ムラあるいはフィルム破断などの問題を引き起こし、本発明の特徴とするフィルムが得られにくいため好ましくない。再縦または横延伸した後、200〜230℃、好ましくは210〜230℃で0.5〜20秒、好ましくは1〜15秒熱固定を行う。とくに熱固定温度が200℃よりも低くなるとフィルムの結晶化が進まないために構造が安定せず、目標とする熱収縮率などの特性が得られず好ましくない。その後、長手及び/又は幅方向に0.5〜7.0%の弛緩処理を施すことが好ましい。
【0045】
延伸過程では、フィルムとロールの接触が避けられず、ロールの周速とフィルムの速度差を極力抑えるようにするとともに、延伸ロールとしては、表面の粗さなどを制御しやすい非粘着性のシリコーンロールが好ましい。従来技術のようにセラミックスやテフロン(登録商標)さらには金属のロールを用いても可能であるが、フィルム表面のみが局所的に加熱されて粘着が発生し、フィルム表面に傷を発生する場合があり、好ましくない。
【0046】
さらに延伸ロールの表面粗さRaは、0.005〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.6μmである。Raが1.0μmよりも大きいと延伸時ロール表面の凸凹がフィルム表面に転写するため好ましくなく、一方0.005μmよりも小さいとロールとフィルム地肌が粘着し、フィルムが熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。表面粗さを制御するためには研磨剤の粒度、研磨回数などを適宜調整することが有効であるが、とくに延伸ロールについては、フィルム表面の窪み欠点の原因と懸念されるポリエステルの分解物、オリゴマーの付着、蓄積を回避するため、頻度の高いロール研磨が好ましい。
【0047】
さらに、延伸部におけるロールとフィルムのトータルの接触時間は0.1秒以下、好ましくは0.08秒以下にすることがフィルムを製造する上で特に有効である。ロールとフィルムの接触時間が0.1秒よりも大きくなると、延伸ロールの熱によりフィルム表面のみが局所的に加熱され、引いては熱負荷時の微小平面性悪化を引き起こすこともあり、あるいは、フィルムに傷を発生する場合もあり、好ましくない。接触時間を短くする方法としては、例えばフィルムを延伸ロールに巻き付けず、ニップロール間で平行に延伸する方法が有効である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。
【0049】
本発明の特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0050】
(1)粒子の平均粒径
フィルムからポリマーをプラズマ低温灰化処理法で除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。その粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子画像をイメージアナライザで処理する。SEMの倍率はおよそ5000〜20000倍から適宜選択する。観察箇所をかえて粒子数500個以上で粒径とその体積分率から、次式で体積平均径dを得る。粒径の異なる2種類以上の粒子を含有している場合には、それぞれの粒子について同様の測定を行い、粒径を求めた。
d=Σ(di・Nvi)
ここで、diは粒径、Nviはその体積分率である。粒子がプラズマ低温灰化処理法で大幅にダメージを受ける場合には、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、3000〜100000倍で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所をかえて100視野以上測定し、上記式から体積平均径dを求める。
【0051】
凝集アルミナの粒径は上記と同様に、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で用いて、10000〜100000倍で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所をかえて100視野以上測定し、観察される凝集アルミナの円相当径の平均径dを求める。
【0052】
(2)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。すなわち、
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは溶媒100mlあたりの溶
解ポリマー重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。
【0053】
(3)フィルム積層厚み
表面からエッチングしながらXPS(X線光電子光法)、IR(赤外分光法)あるいはコンフォーカル顕微鏡などで、その粒子濃度のデプスプロファイルを測定する。片面に積層したフィルムにおける表層では、表面という空気−樹脂の界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の片面に積層したフィルムの場合は、深さ[I]で一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに極大値の粒子濃度の1/2になる深さ[II](ここで、II>I)を積層厚さとした。さらに、無機粒子などが含有されている場合には、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、フィルム中の粒子のうち最も高濃度の粒子の起因する元素とポリエステルの炭素元素の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、層(A)の表面からの深さ(厚さ)方向の分析を行う。そして上記同様の手法から積層厚さを得る。
【0054】
(4)F−5値および破断強度
インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロン”万能試験機RTC−1210)を用いて測定した。幅10mmの試料フィルムを、試長間100mm、引張り速度200mm/分の条件で引っ張り試験を行い、フフィルムが5%伸長時の応力をF−5値とし、破断した時の応力を求めて破断強度とした。測定は23℃、湿度65%RHで行った。
【0055】
(5)熱収縮率:
フィルム表面に、幅10mm、測定長約100mmとなるように2本のラインを引き、この2本のライン間の距離を23℃で正確に測定しこれをL0とする。このフィルムサンプルを100℃および150℃のオーブン中に30分間、1.5gの荷重下で放置した後、再び2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL1とし、下式により熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(L0−L1)/L0]×100。
【0056】
(6)フィルム表面粗さ(Ra値)
表面粗さ測定器(小坂研究所(株)製SE−3500)を用いて測定した。測定条件は下記のとおり。
触芯先端半径:5μm、針圧:0.7mN、測定長:4mm、カットオフ:0.25mm。
【0057】
(7)窪み欠点数
フィルム10m(例えば、1m幅で10m長)の両面について、スポットライトを光源とし、反射光及び透過光を用いて、光の散乱に基づく輝点に注目しフィルムの表面を肉眼で検査し、欠点箇所にペンでマークを付ける。さらに、偏光光源を用いて、クロスニコルによる偏向乱れ輝点を検出する方法も併用する。マークした欠点箇所について、実体顕微鏡で窪みの最大径を測定し、最大径3mm以上の窪みについて、ミロー型二光束干渉検鏡装置付実体顕微鏡(Nikon製SMZ−10)を用いで窪み深さを測定し、深さ0.5μm以上で、最大径3mm以上の窪み欠点個数を測定した。窪みの深さは得られるλ/2ピッチで得られる干渉縞の乱れを測微接眼レンズで読みとり、下記により求めた。深さはフィルム表面から厚み方向への最大深さであり、窪み欠点の周りに盛り上がりを生じている場合は、盛り上がりの頂部から窪みの底部までの最大深さを求める。
深さ=λ/2×(B/A)
λ:546nm
A:接眼レンズによるλ/2の読みとり値
B:干渉縞の乱れ量。
【0058】
(8)延伸ロールの表面粗さ
Mitutoyo(株)製の表面粗さ計サーフテスト301を使用して、カットオフ0.25mmにてロール幅方向3点において中心面平均粗さを測定し、その平均値を採用した。
【0059】
(9)光線透過率およびヘイズ値
スガ試験機(株)製HZ−1型を用い、JIS K7105−1981に準じ測定した。
【0060】
(10)レジスト解像度の目視検査
ドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムによるレジストの解像度の目視評価方法は、以下のような手順で行った。
【0061】
(i)片面鏡面研磨した6インチSiウエハー上に、東京応化(株)製のネガレジスト“PMERN−HC600”を塗布し、大型スピナーで回転させることによって厚み7μmのレジスト層を作製した。次いで、窒素循環の通風オーブンを用いて70℃の温度条件で、約20分間の前熱処理を行った。
【0062】
(ii)ポリエステルフィルムをレジスト層と接触するように重ね、ゴム製のローラーを用いて、レジスト層上にポリエステルフィルムをラミネートし、その上に、クロム金属でパターニングされたレチクルを配置し、そのレクチル上からI線ステッパーを用いて露光を行った。
【0063】
(iii)レジスト層からポリエステルフィルムを剥離した後、現像液N−A5が入った容器にレジスト層を入れ約1分間の現像を行った。その後、現像液から取り出し、水で約1分間の洗浄を行った。
【0064】
(iv)現像後に作成されたレジストパターンのL/S(μm)(Line and Space )の状態を走査型電子顕微鏡SEMを用いて約800〜3000倍率で観察した。レジストの解像度の評価は、以下の基準に従った。
【0065】
○:L/S=10/10μmが明確に確認できる。
【0066】
△:L/S=10/10μmは明確に確認できないが、L/S=15/15μmは明確に確認できる。
【0067】
×:L/S=15/15μmが明確に確認できない。
【0068】
(11)易滑性
フィルム同士の摩擦係数をASTM−D−1894−63に準じ、動摩擦係数μdを新東科学(株)製表面測定機HEIDON−14DRを用いて、サンプル移動速度200mm/分、荷重200g、接触面積63.5mm×63.5mmの条件で測定し、アンラライジングレコーダーTYPE・HEIDON3655E−99で記録評価し、以下の基準で判定した。○と△が使用可能であり、×は加工特性に劣り不合格である。
【0069】
○:μdが0.7未満
△:μdが0.7〜1.0未満
×:μdが1.0以上。
【0070】
実施例1
ジメチルテレフタレート(DMT)に、DMT・1モルに対し1.9モルのエチレングリコールおよび酢酸マグネシウム・4水塩をDMTに100重量部対し0.05重量部、リン酸を0.015重量部加え加熱エステル交換を行い、引き続き三酸化アンチモンを0.025重量部加え、加熱昇温し真空化で重縮合反応を行い、粒子を実質的に含有しない、固有粘度0.62のホモポリエステルペレットを得た。
【0071】
さらに、凝集アルミナとしてδ型−アルミナを10重量%含むエチレングリコールスラリーとし、サンドグラインダーを用い、粉砕、分散処理を行い、さらに捕集効率95%の3μmフィルターを用いて濾過し、これを前記と同様に調整したエステル交換反応物に添加し、引き続き三酸化アンチモンを加え、重縮合反応を行い、凝集アルミナを2重量%含有する、固有粘度0.62のマスターペレットを得た。
【0072】
さらに別に、平均粒径0.45μmのビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、0.45μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1重量%含有するマスターペレットを得た。
【0073】
次に、A/B/Aの構成にすべく、B層の原料として、粒子を実質的に含有しないホモポリエステルを準備した(ポリエステルB)。さらに、A層の原料として、ホモポリエステル、凝集アルミナ含有マスターペレットおよびジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子含有マスターペレットを混合し、凝集アルミナ0.7重量%、0.45μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を0.03重量%含有するポリマーを準備した(ポリエステルA)。
【0074】
これらのポリエステルA、Bをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して5μmのフィルターで高精度濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステルA/ポリエステルB/ポリエステルAからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。この未延伸積層フィルムを逐次二軸延伸機により、110℃で長手方向に3.7倍、および幅方向にそれぞれ4.1倍、トータルで15.2倍延伸しその後、再度180℃で1.05倍幅方向に延伸し、定長下、220℃で3秒間熱処理した。その後長手方向に1%、幅方向に2%の弛緩処理を施し、総厚み16μm、両面のポリエステルA層の厚みがそれぞれ0.6μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
なお、延伸工程には、表面粗さ0.2μmのシリコーンロールを用い、延伸部におけるロールとフィルムのトータルの接触時間は0.06秒とした。
本フィルムの評価結果を表1,表2示した。
【0075】
実施例2〜5、比較例1〜4
添加する粒子の粒径、添加量、およびA層に添加する粒子の添加量、さらにA層の厚み、延伸条件を変更する以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
製造条件、評価結果について、表1,表2に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、
長手方向のF−5値が70〜150MPaで、
幅方向のF−5値が80〜160MPaであり、
ヘイズ値が1%以下であり、
150℃30分間の熱収縮率が長手方向で1.5〜3.5%、幅方向で0.5〜2.5%であるドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
三層構造からなり、表層部に平均粒径が0.2〜0.7μmの有機粒子を表層に対して0.01〜0.1重量%含有し、
表面粗さ(Ra)が3〜10nmである請求項1記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
表層に凝集アルミナ粒子を0.1〜1重量%含有する請求項2記載のドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2008−239743(P2008−239743A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80995(P2007−80995)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】