説明

ドライブレコーダおよびコンピュータプログラム

【課題】車両の走行状況に関する必要な画像データを確実に記録することができるドライブレコーダを提供する。
【解決手段】撮像用のカメラ1と、このカメラ1で撮影した複数の画像データを記録する記録装置23とを備えた車両搭載用のドライブレコーダAは、車両の状態を判定する車両状態判定手段20と、カメラ1からの複数の画像データを一旦保持した後、記録装置23へと画像データを順次出力する画像データ保持手段21と、車両状態判定手段20によって車両停止状態と判定された場合、画像データ保持手段21から記録装置23へと転送される画像データ、あるいはカメラ1から画像データ保持手段21へと転送される画像データを間引く記録制御手段22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載用のドライブレコーダ、およびそのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のドライブレコーダとしては、たとえば特許文献1に開示されたものがある。この文献に開示されたドライブレコーダは、たとえばハードディスクドライブ(HDD)などといった大容量のストレージデバイスを有し、デジタル放送の受信データをHDDに順次記録するように構成されている。具体的には、HDDは衝撃などの振動に弱いため、車両の走行に伴う振動を検出し、その振動の影響が収まるまでバッファメモリからHDDへのデータ転送を禁止している。これにより、HDDに対するデータの書き込みエラーが防止される。
【0003】
【特許文献1】特開2006−277812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のドライブレコーダでは、車両停止中で振動が無い状況であってもバッファメモリにデータが蓄えられ、そのデータが順次HDDに記録される。そのような記録制御では、たとえば車外の走行状況をカメラで撮像して得られた画像データを記録するような場合、車両停止時に変化の少ない画像データが多く記録される事となり、バッファメモリやHDDを無駄に消費してしまう。また、車両が停止状態から再び動き始める際に振動があると、HDDへの書き込みエラーによってデータ転送レートが低下することもあり、そのため、本来記録されるべき走行中の画像データがいわゆるバッファオーバフローによってHDDに記録できなくなるおそれもあった。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、車両の走行状況に関する必要な画像データを確実に記録することができるドライブレコーダ、およびそのコンピュータプログラムを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明の第1の側面により提供されるドライブレコーダは、撮像用のカメラと、このカメラで撮影した複数の画像データを記録する記録装置とを備えた車両搭載用のドライブレコーダであって、車両の状態を判定する車両状態判定手段と、上記カメラからの複数の画像データを一旦保持した後、上記記録装置へと上記画像データを順次出力する画像データ保持手段と、上記車両状態判定手段によって車両停止状態と判定された場合、上記画像データ保持手段から上記記録装置へと転送される画像データ、あるいは上記カメラから上記画像データ保持手段へと転送される画像データを間引く記録制御手段とを備えていることを要件としている。
【0008】
好ましくは、上記記録制御手段は、車両停止状態と判定された上で、かつ、上記カメラから上記画像データ保持手段へと転送された複数の画像データの変化量が所定レベル以下の場合、上記画像データ保持手段から上記記録装置へと転送される画像データを間引く。
【0009】
好ましくは、上記記録制御手段は、上記カメラのフレームレートを低減させる。
【0010】
好ましくは、上記記録制御手段は、車両停止状態と判定された上で、かつ、上記画像データ保持手段に保持された画像データのデータ量が所定量を超えた場合、上記カメラのフレームレートを低減させる。
【0011】
好ましくは、上記記録制御手段は、車両が衝撃を受けて車両停止状態になったと判定された場合、上記画像データ保持手段に所定時間が経過するまで画像データを保持させ、その画像データの全てを上記記録装置へと転送させる。
【0012】
本発明の第2の側面により提供されるコンピュータプログラムは、撮像用のカメラと、このカメラで撮影した複数の画像データを一旦保持するメモリと、このメモリを介して上記画像データを記録する記録装置とを備えた車両搭載用のドライブレコーダを制御するコンピュータプログラムであって、上記ドライブレコーダに、車両の状態を判定する車両状態判定処理と、上記カメラからの複数の画像データを上記メモリに一旦保持させる画像データ保持処理と、上記メモリに保持された上記画像データを上記記録装置へと順次出力させる画像データ転送処理と、上記車両状態判定処理によって車両停止状態と判定された場合、上記メモリから上記記録装置へと転送する画像データを間引く記録制御処理と、
を実行させることを要件としている。
【0013】
このような構成によれば、車両停止時には、画像データ保持手段(メモリ)から記録装置へと転送される画像データが間引かれ、あるいはカメラから画像データ保持手段へと転送される画像データが間引かれるので、記録装置の無駄な消費が少なくなり、また、本来記録されるべき走行状況に関する画像データがバッファオーバフローによって記録されないといったエラー状態も少なくなる。これにより、走行状況に関する必要な画像データを確実に記録することができる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1〜3は、本発明に係るドライブレコーダの一実施形態を示している。図1に示すように、本実施形態のドライブレコーダAは、車両の走行状況を記録するためのものであって、撮像用のカメラ1、速度センサ10、加速度センサ11、ジャイロセンサ12、車両状態判定部20、バッファメモリ(画像データ保持手段)21、記録制御部22、および記録装置としてのハードディスクドライブ(以下、「HDD」と記す)23を有して構成されている。車両状態判定部20、バッファメモリ(画像データ保持手段)21、および記録制御部22はマイクロコンピュータを含む回路からなる。
【0017】
カメラ1は、たとえばフレームレートが標準30fpsで連続的に画像データを取り込み可能なものであり、搭載された車両の前方などの状景を捉えるように設置されている。このカメラ1は、取り込んだ画像データをバッファメモリ21に順次出力するように接続されている。カメラ1のフレームレートは、記録制御部22からの命令に応じて可変制御される。
【0018】
速度センサ10は、車両の速度を検出し、その速度に応じた信号を車両状態判定部20に出力する。
【0019】
加速度センサ11は、車両走行時の加速度を検出するほか、車両衝突時などの衝撃に伴う大きな加速度も検出し、その加速度に応じた信号を車両状態判定部20に出力する。
【0020】
ジャイロセンサ12は、車両の角速度を検出し、角速度に応じた信号を車両状態判定部20に出力する。
【0021】
車両状態判定部20は、速度センサ10からの速度信号に基づき、車両の速度(Vt)があらかじめ設定された所定の速度レベル(Vc)未満になると車両停止状態と判定し、その判定結果を記録制御部22に伝える。すなわち、車両停止状態には、実際に車両が停止している状態に限らず、低速走行や減速中の状態も含まれる。また、車両状態判定部20は、車両停止状態と判定した時、加速度センサ11からの加速度信号に基づき、車両の加速度(αt)があらかじめ設定された所定の加速度レベル(αc)より大きい場合には車両が何らかの衝撃を受けて停止状態になったと判定し、その判定結果を記録制御部22に伝える。これは、事故などによって車両が停止した場合、ブレーキ操作により車両が停止する場合よりも大きな加速度が生じることから判定可能である。
【0022】
バッファメモリ21は、いわゆるFIFO方式のフィールド画像メモリであり、カメラ1からの画像データを一時的に保持し、最初に取り込んだ画像データから順にHDD23へと出力する。このバッファメモリ21は、デュアルポートSRAMからなり、同時かつ高速にアクセス可能である。このようなバッファメモリ21は、リードポインタやライトポインタに基づいて読み書きが制御され、バッファメモリ21に保持されたデータ量は、記録制御部22がリードポインタおよびライトポインタを読み取ることで確認される。
【0023】
記録制御部22は、車両状態判定部20によって車両停止状態と判定された場合、HDD23へと転送される画像データの間引き処理を行う。具体的には、車両が大きな衝撃を受けることなく停止した状態でバッファメモリ21のデータ量に応じて、記録制御部22は、画像データの間引き転送処理としてカメラ1のフレームレートを低減させる。また、記録制御部22は、バッファメモリ21に保持された複数の画像データの差分を算出し、その差分の合計値が所定のレベルPx未満の場合、すなわちほとんど変化の無い画像データがカメラ1から送られてくる場合、バッファメモリ21からHDD23へと転送される画像データについて間引き転送処理を行う。
【0024】
図2に示すように、たとえばカメラ1は、一定のフレームレート(30fps)で画像を撮像しており、バッファメモリ21には順次画像データが格納される。その際、速度Vtが所定の速度レベルVc未満になると、記録制御部22によって画像の変化が差分に基づいて判定され、差分の合計値が所定のレベルMx未満になると、破線で示す画像データがバッファメモリ21から間引かれ、その余の画像データがHDD23へと転送される。
【0025】
HDD23は、ドライブレコーダAの記録装置として用いられ、このHDD23にバッファメモリ21から転送されてきた画像データが順に書き込まれる。なお、HDD23には、その他、たとえばGPS情報やオーディオ情報、さらにはデジタル放送の受信データも保存可能である。そのため、ドライブレコーダAとしての画像データは、できる限り少ないデータ量をもって有用なものだけを保存するのが望まれる。このようなHDD23は、比較的衝撃などの振動に弱いため、車両の走行に伴ってある程度の振動がある場合、書き込みエラーが生じる。書き込みエラーが生じると、リトライ処理によって繰り返し書き込みが行われる。
【0026】
画像データの記録処理は、以下のようにして行われる。
【0027】
図3に示すように、記録制御部22は、まず車両の速度Vtが所定の速度レベルVc未満であるか否か判定する(S1)。
【0028】
速度Vtが所定の速度レベルVc未満の場合(S1:YES)、記録制御部22は車両停止状態と判断した上でさらに、車両の加速度αtが所定の加速度レベルαcより大きいか否か判定する(S2)。なお、この際、ジャイロセンサ12からの車両の角速度が所定のレベルより大きいか否かについても判定してもよい。
【0029】
加速度αtが所定の加速度レベルαc以下の場合(S2:NO)、記録制御部22は、その時点でバッファメモリ21に保持されているデータ量が所定のレベルMxより大きいか否か判定する(S3)。
【0030】
バッファメモリ21のデータ量が所定のレベルMxより大きい場合(S3:YES)、記録制御部22は、カメラ1のフレームレートを低減させる(S4)。これにより、カメラ1からバッファメモリ21へのデータ転送速度が低下し、バッファメモリ21におけるバッファオーバフローが速やかに回避される。
【0031】
さらに、記録制御部22は、その時点でバッファメモリ21に保持されている複数の画像データの画素値からそれらの差分を算出する(S5)。
【0032】
上記画像データの差分の合計値が所定のレベルMx未満の場合(S6:YES)、記録制御部22は、バッファメモリ21に保持されている複数の画像データが変化に乏しいものと判断し、そのような画像データをバッファメモリ21から間引いた上でHDD23へと転送させる(S7)。
【0033】
HDD23では、バッファメモリ21から転送されてきた画像データが順次記録される(S8)。これにより、車両が一時停止した場合などといった、それほど必要性のない画像データがHDD23に必要以上に多く記録されることなく、バッファメモリ21やHDD23の空き容量をできる限り大きく確保することができる。
【0034】
S6において、画像データの差分の合計値が所定のレベルMx以上の場合(S6:NO)、記録制御部22は、車両の前方を人が横切っているなどといった変化に富む画像データであると判断し、そのままS8のステップに移行してその画像データをHDD23に記録させる。
【0035】
S3において、バッファメモリ21のデータ量が所定のレベルMx未満の場合(S3:NO)、記録制御部22は、カメラ1のフレームレートを低減させることなく、そのままS5に移行して画像データの差分を算出する。すなわち、バッファメモリ21の空き容量にある程度余裕がある場合には、カメラ1から多くの画像データが送られる。
【0036】
S2において、加速度αtが所定の加速度レベルαcより大きい場合(S2:YES)、記録制御部22は、車両が何らかの衝撃を受けて事故などがあった状態と判断し、所定時間が経過するまでバッファメモリ21に画像データを保持させる(S9)。その後、S8のステップに移行し、バッファメモリ21からは、保持された画像データがHDD23へと送られ、HDD23に所定時間が経過するまでの画像データが記録される。このような画像エータは、事故解析に際して有効に活用される。
【0037】
S1において、速度Vtが所定の速度レベルVc以上の場合(S1:NO)、記録制御部22は、車両が走行中の状態であると判断し、そのままS8のステップに移行してHDD23に画像データの記録を続行させる。
【0038】
したがって、本実施形態のドライブレコーダAによれば、車両停止時には、バッファメモリ21からHDD23へと転送される画像データが間引かれ、また、カメラ1からバッファメモリ21へと転送される画像データもフレームレート低減によってさらに間引かれるので、HDD23の無駄な消費が少なくなり、また、本来記録されるべき走行状況に関する画像データがバッファオーバフローによって記録されないといったエラー状態も少なくなる。これにより、走行状況に関する必要な画像データをHDD23に対して確実に記録することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0040】
たとえば、速度に基づいて車両停止状態と判定された場合には、即時にHDDへと転送される画像データの間引き処理や、カメラのフレームレート低減を行うようにしてもよい。
【0041】
上記実施形態では、ストレージデバイスとしてHDDを用いているが、代わりに半導体メモリ、たとえばソリッドステートディスクを用いてもよい。このような構成でも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、上記実施形態のような処理を実行させるコンピュータプログラムをドライブレコーダのコンピュータに組み込むことにより、同様の機能を有するドライブレコーダを実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、ドライブレコーダに、車両の状態を判定する車両状態判定処理と、カメラからの複数の画像データをバッファメモリに一旦保持させる画像データ保持処理と、バッファメモリに保持された画像データをHDDへと順次出力させる画像データ転送処理と、車両状態判定処理によって車両停止状態と判定された場合、バッファメモリからHDDへと転送する画像データを間引く記録制御処理とを実行させるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るドライブレコーダの一実施形態を示す構成図である。
【図2】画像データの転送処理を説明するための説明図である。
【図3】画像データの記録処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
A ドライブレコーダ
1 カメラ
10 速度センサ
11 加速度センサ
20 車両状態判定部(車両状態判定手段)
21 バッファメモリ(画像データ保持手段)
22 記録制御部(記録制御手段)
23 HDD(記録装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用のカメラと、このカメラで撮影した複数の画像データを記録する記録装置とを備えた車両搭載用のドライブレコーダであって、
車両の状態を判定する車両状態判定手段と、
上記カメラからの複数の画像データを一旦保持した後、上記記録装置へと上記画像データを順次出力する画像データ保持手段と、
上記車両状態判定手段によって車両停止状態と判定された場合、上記画像データ保持手段から上記記録装置へと転送される画像データ、あるいは上記カメラから上記画像データ保持手段へと転送される画像データを間引く記録制御手段と、
を備えていることを特徴とする、ドライブレコーダ。
【請求項2】
上記記録制御手段は、車両停止状態と判定された上で、かつ、上記カメラから上記画像データ保持手段へと転送された複数の画像データの変化量が所定レベル以下の場合、上記画像データ保持手段から上記記録装置へと転送される画像データを間引く、請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項3】
上記記録制御手段は、上記カメラのフレームレートを低減させる、請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項4】
上記記録制御手段は、車両停止状態と判定された上で、かつ、上記画像データ保持手段に保持された画像データのデータ量が所定量を超えた場合、上記カメラのフレームレートを低減させる、請求項3に記載のドライブレコーダ。
【請求項5】
上記記録制御手段は、車両が衝撃を受けて車両停止状態になったと判定された場合、上記画像データ保持手段に所定時間が経過するまで画像データを保持させ、その画像データの全てを上記記録装置へと転送させる、請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項6】
撮像用のカメラと、このカメラで撮影した複数の画像データを一旦保持するメモリと、このメモリを介して上記画像データを記録する記録装置とを備えた車両搭載用のドライブレコーダを制御するコンピュータプログラムであって、
上記ドライブレコーダに、
車両の状態を判定する車両状態判定処理と、
上記カメラからの複数の画像データを上記メモリに一旦保持させる画像データ保持処理と、
上記メモリに保持された上記画像データを上記記録装置へと順次出力させる画像データ転送処理と、
上記車両状態判定処理によって車両停止状態と判定された場合、上記メモリから上記記録装置へと転送する画像データを間引く記録制御処理と、
を実行させることを特徴とする、コンピュータプログラム。
.

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−217526(P2009−217526A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60384(P2008−60384)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】