説明

ドライブレコーダ及びドライブレコーダ用解析装置

【課題】ドライブレコーダの利便性を低下させることなく、記憶した車両状況情報の信頼性を向上させる。
【解決手段】走行時における車両の車両状況情報を収集する車両状況情報収集手段21aと、前記車両に生じた予め定められた衝撃を検出する衝撃検出手段27と、衝撃検出手段27が衝撃を検出した際に車両状況情報収集手段21aが収集した車両状況情報を記憶する車両状況情報記憶手段24と、を有するドライブレコーダにおいて、車両状況情報記憶手段24が記憶している車両状況情報のデータサイズを算出するデータサイズ算出手段21bと、前記算出したデータサイズを暗号化する暗号化手段21cと、前記車両状況情報記憶手段24が記憶している車両状況情報と前記暗号化手段21cが暗号化した暗号化データサイズとを有する暗号済情報を記憶する暗号済情報記憶手段Cと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダ及びドライブレコーダ用解析装置に関し、より詳細には、走行中の車両に生じる衝撃の検出に対応する車両状況情報を記憶するドライブレコーダと、該ドライブレコーダの車両状況情報を解析するドライブレコーダ用解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、事故発生時の前後の車両状況情報(前方映像、車両速度、急加減速など)を記憶するドライブレコーダが、自動車事故を未然に防止する有効な手段になり得るとして、運送事業者が導入を開始している。そして、例えば、タクシー、バス等の営業用車両に搭載されるドライブレコーダは、事故時及び急制動時等の前方映像とドライバーの運転操作(ブレーキ操作、ウインカー操作、走行経路等)状況を示す走行データとを記憶可能な構成となっている。また、上述した機能に加えて、車内を記憶する映像チャンネルを追加した高機能型のドライブレコーダも知られている。
【0003】
上述したドライブレコーダは、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、加速度センサ、カード状記憶媒体(以下、カードともいう)を内蔵している。そして、常時、運転者の視点(視野)から自車と周辺状況を撮像した前方映像等の映像情報を記憶しており、事故や急ブレーキ・急ハンドルなどの衝撃(0.4G以上)を受けると、例えば、衝撃前12秒間と衝撃後6秒間の計18秒間等の衝撃前及び衝撃後の所定時間にわたる映像と前記走行データ等をカードに保存する。
【0004】
そして、事故が発生したときには、カードに保存されている自車の前記車両状況情報に基づいて、運転者の正当性を明確に証言することを可能としている。また、ドライブレコーダは、急ハンドル、急ブレーキ等の乱暴で危険な運転操作を検出すると、警告音等を発して運転者に注意を促すことで、運転者にある種の緊張感を与えることもできる。
【0005】
このようなドライブレコーダとしては、撮像手段の撮像情報と運行情報を同時に記憶手段に記憶しておき、事故発生による衝突センサの作動によりそれらの情報を保存する方法が提案されている。そして、保存した撮像情報を再生することで、例えば、脇見運転や居眠り運転等があったかなどの検証を可能としてきた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−6854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したドライブレコーダに記憶した車両状況情報は、他の装置やソフトウェアを用いることで、例えば信号の色を変えたり、データ内容を変更する等の改竄が行われる可能性があったため、交通事故等の証拠としての信頼性を得るには不十分であるという問題があった。
【0007】
そこで、ドライブレコーダに封印、鍵などを設ける等のデータの取り出し規制方法も考えられるが、ドライブレコーダのコストアップになるとともに、証拠資料以外の例えばヒヤリ、ハット等の事故防止分析、運転者の運転状況解析を行うために車両状況情報をドライブレコーダから取得するのが困難になり、利便性を低下させてしまうという問題があった。
【0008】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、ドライブレコーダの利便性を低下させることなく、記憶した車両状況情報の信頼性を向上させることができるドライブレコーダ及びドライブレコーダ用解析装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載のドライブレコーダは、図1の基本構成図に示すように、走行時における車両の車両状況情報を収集する車両状況情報収集手段21aと、前記車両に生じた予め定められた衝撃を検出する衝撃検出手段27と、前記衝撃検出手段27が衝撃を検出した際に前記車両状況情報収集手段21aが収集した車両状況情報を記憶する車両状況情報記憶手段24と、を有するドライブレコーダにおいて、前記車両状況情報記憶手段24が記憶している車両状況情報のデータサイズを算出するデータサイズ算出手段21bと、前記データサイズ算出手段21bが算出したデータサイズを暗号化する暗号化手段21cと、前記車両状況情報記憶手段24が記憶している車両状況情報と前記暗号化手段21cが暗号化した暗号化データサイズとを有する暗号済情報を記憶する暗号済情報記憶手段Cと、を有することを特徴とする。
【0010】
上記請求項1に記載した本発明のドライブレコーダ2によれば、衝撃検出手段27によって衝撃が検出されると、このときに車両状況情報収集手段21aによって収集された車両状況情報が車両状況情報記憶手段24に記憶される。そして、データサイズ算出手段21bによってその車両状況情報のデータサイズが算出されると、そのデータサイズは暗号化手段21cによって暗号化される。そして、暗号化した暗号化データサイズと車両状況情報を有する暗号済情報が暗号済情報記憶手段Cに記憶される。
【0011】
請求項2記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載のドライブレコーダ2において、暗証コードを取得する暗証コード取得手段21dを有し、前記暗号化手段21cは、前記暗証コード取得手段21dが取得した暗証コードに基づいて前記データサイズを暗号化する手段であることを特徴とする。
【0012】
上記請求項2に記載した本発明のドライブレコーダ2によれば、暗証コード取得手段21dによって暗証コードが取得されると、該暗証コードに基づいてデータサイズが暗号化手段21cによって暗号化される。
【0013】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項3記載のドライブレコーダ用解析装置は、図1の基本構成図に示すように、請求項1又は2に記載のドライブレコーダから取得した車両状況情報を解析するドライブレコーダ用解析装置において、前記ドライブレコーダの暗号済情報記憶手段Cから暗号済情報を取り込む暗号済情報取込手段50a1と、前記暗号済情報取込手段50a1が取り込んだ暗号済情報の前記暗号化データサイズを復号する復号手段50a2と、前記復号手段50a2が復号した前記暗号化データサイズと前記暗号済情報が有する車両状況情報のデータサイズとを比較してデータ改竄の発生を検出するデータ改竄検出手段50a3と、前記データ改竄検出手段50a3が検出したデータ改竄の発生を警報するデータ改竄警報手段50a4と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記請求項3に記載した本発明のドライブレコーダ用解析装置によれば、暗号済情報取込手段50a1によってドライブレコーダ2の暗号済情報記憶手段Cから暗号済情報が取り込まれると、該暗号済情報の暗号化データサイズは復号手段50a2によって復号される。そして、データ改竄検出手段50a3によって復号された暗号化データサイズとこれに対応する車両状況情報のデータサイズとの比較結果に基づいてデータ改竄の発生が検出されると、データ改竄警報手段50a4によってデータ改竄の発生が警報される。
【0015】
請求項4記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項3に記載のドライブレコーダ用解析装置において、予め定められた判定用暗証コードを記憶する判定用暗証コード記憶手段50dと、前記ドライブレコーダの暗号化手段21cが暗号化に用いた暗証コードを取り込む暗証コード取込手段50a5と、を有し、前記復号手段50a2は、前記暗証コード取込手段50a5が取得した前記ドライブレコーダ側の暗証コードと前記判定用暗証コード記憶手段50dが記憶している判定用暗証コードが一致したときに前記暗号済情報の復号を行う手段であることを特徴とする。
【0016】
上記請求項4に記載した本発明のドライブレコーダ用解析装置によれば、判定用暗証コード記憶手段50dには、車両状況情報の暗号化等のために予め定められた判定用暗証コードが記憶される。そして、暗証コード取込手段50aによってドライブレコーダの暗号化手段21cが暗号化に用いた暗証コードが取り込まれ、該取り込んだ暗証コードが判定用暗証コード記憶手段50dの判定用暗証コードと一致しているときに、復号手段50a2によって暗号済情報が復号される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように請求項1に記載した本発明のドライブレコーダによれば、車両状況情報のデータサイズを算出し、該データサイズを暗号化した暗号化データサイズと車両状況情報を有する暗号済情報を記憶するようにしたことから、暗号済情報の複合化した暗号化データサイズと車両状況情報の実際のデータサイズとを比較することで、データ改竄の有無を検出することができるため、記憶した車両状況情報の信頼性を向上することができ且つ装置のコストアップも回避することができる。従って、ドライブレコーダの利便性を低下させることなく、車両状況情報を車両事故の証拠として用いることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、取得した暗証コードに基づいて車両状況情報のデータサイズを暗号化するようにしたことから、暗証コードを撮像確認の1つの手段として用いることができるため、データ改竄を確実に防止して、車両状況情報の信頼性をより一層向上させることができる。
【0019】
以上説明したように請求項3に記載した本発明のドライブレコーダ用解析装置によれば、ドライブレコーダから取り込んだ暗号済情報の暗号化データサイズを復号し、暗号済情報が有する車両状況情報の実際のデータサイズとの比較結果からデータ改竄の発生を検出して警報を行うようにしたことから、ドライブレコーダで記憶した車両状況情報の信頼性を向上することができ且つドライブレコーダのコストアップも回避することができる。従って、ドライブレコーダの利便性を低下させることなく、車両状況情報を車両事故の証拠として用いることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、車両状況情報の暗号化等のための判定用暗証コードを予め記憶しておき、ドライブレコーダが暗号化に用いた暗証コードと判定用暗証コードが一致したときに、ドライブレコーダから取り込んだ暗号済情報を復号するようにしたことから、判定用暗唱コードと同一の暗唱コードを用いずに車両状況情報を暗号化していても復号されないため、データ改竄を確実に防止して、車両状況情報の信頼性をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るドライブレコーダを用いたドライブレコーダシステムの一実施の形態を、図2〜図7の図面を参照して説明する。
【0022】
図2において、ドライブレコーダシステム1は、貨物輸送用トラック、タクシー、乗用車等の車両に搭載されるドライブレコーダ2と、前記車両を所有する会社、営業所、警察署等に設けられて、前記ドライブレコーダ2によってカード状記憶媒体(カード)Cに保存された記憶内容の解析を支援するドライブレコーダ用解析装置としてのドライブレコーダ解析ユニット5と、を有して構成している。
【0023】
カードCは、例えばCompact Flash等のメモリカードを用いており、周知であるように、通電しなくても記憶内容が消えないメモリと、外部との入出力を受け持つコントローラ回路と、を有している。なお、カードCについては、システム構成に応じて種々異なるタイプのメモリカード等を用いることができる。
【0024】
なお、本最良の形態では、ドライブレコーダ2からドライブレコーダ解析装置5にカードCを用いて記憶内容を転送する場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、ドライブレコーダ2とドライブレコーダ解析装置5をUSB(Universal Serial Bus)ケーブル、無線通信装置等を用いてドライブレコーダ2の記憶内容を転送するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0025】
次に、ドライブレコーダ2は、車両のフロントガラス3の内面に対し、運転者の視界を妨げないように、バックミラーとほぼ同一の位置等に取り付けられる。ドライブレコーダ2は、図3に示すように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)21、CPU21のためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM22、各種のデータを格納するとともにCPU21の処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM23等を有して構成している。
【0026】
CPU21には、装置本体がオフ状態の間も記憶内容の保持が可能な電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリ24を接続しており、このメモリ24は、撮像手段であるカメラ25a〜nによって撮像した撮像データなどが予め定められた所望の範囲にわたって時系列的に記憶する一時格納エリアなどを有している。
【0027】
ドライブレコーダ2はさらに、カメラ25a〜n、加速度センサ27a〜n、カード挿入部28等を有する構成となっている。そして、カメラ25a〜nの各々は、インタフェース回路(I/F)25iを介してCPU21に接続されている。
【0028】
カメラ25a〜nは、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、赤外線カメラ等の各種カメラを用いることができる。そして、カメラ25a〜nの各々は、車両の前方映像を常時撮像しており、この撮像した画像信号は、インタフェース回路25iによって変換、圧縮処理等が行われ、撮像データとしてCPU21に入力される。なお、撮像データは、動画、静止画などドライブレコーダ2の構成、仕様等に応じて任意に定められるものである。
【0029】
また、本最良の形態では、車両の前方を撮像するようにカメラ25aを筐体20Aの内部に設け、それ以外のカメラ25b〜nをサブカメラとして車両の任意の箇所に設けるようにしている。そして、カメラ25b〜nは、例えば、車両の後方、周辺、車両の運転者、営業用の車両の運転者、乗客、車内、乗降用のドア等を撮像するように、車両の任意の箇所に設けられている。このように複数のカメラ25b〜nを車両における所望の箇所に配置することで、衝撃の原因解析等に貢献することができる撮像データを収集することができる。
【0030】
加速度センサ27a〜nは、請求項中の衝撃検出手段に相当し、3軸(X、Y、Z)方向の加速度・傾き・衝撃等を検出する3軸加速度センサを用いている。なお、3軸加速度センサは、周知であるように、薄いシリコンの梁(ビーム)によって錘を支え、加速度によって錘が動くことで梁が歪み、この歪みを梁上に形成したピエゾ抵抗素子等の抵抗変化で加速度を検出するようにしたものである。そして、加速度センサ27a〜nの各々は、検出した加速度を示す加速度信号をCPU21に出力する。
【0031】
また、本最良の形態では、加速度センサ27a〜nを、上述したカメラ25a〜nに対応させて設けており、加速度センサ27aを筐体20Aの内部に設け、加速度センサ27b〜nの各々を、カメラ25b〜nを設置した箇所の近傍に設けている。このように加速度センサ27a〜nを設置することで、カメラ25a〜nを設置した箇所に生じた衝撃に応じた撮像データを収集することができるため、車両に生じる衝撃の原因解析等により一層貢献することができる。
【0032】
さらに、本最良の形態では、特許請求の範囲に記載の衝撃検出手段を加速度センサ27a〜nによって実現する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、カメラ25b〜nで撮像した撮像データの画像解析によって衝撃を検出するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0033】
カード挿入部28は、装着されたカードCに対してCPU21から指定された各種データの書き込み、読み込みを行うもので、カードCの挿入部28に対する挿入は手動で行い、カードCの排出は、排出キーの操作に応じてカード挿入部20内の排出機構(図示せず)が自動で行う。
【0034】
なお、本最良の形態では、カード挿入部28に挿入されるカードCを請求項中の暗号済情報記憶手段とする場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、暗号化記憶手段をメモリ24とするなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0035】
ドライブレコーダ2はさらに、インタフェース部29を有しており、インタフェース部29はCPU21に接続されている。そして、このインタフェース部29には、車両の速度センサ31を接続しており、この速度センサ31が出力した車両の速度に応じた速度信号はCPU21に入力される。そして、この速度信号がCPU21によって車両状況情報を構成する中の1項目として検出されて記憶される。なお、カードCに記憶する車両状況情報の構成内容によっては、車両のブレーキ、ターン、舵角等の各種信号を車両からインタフェース部29を介してCPU21に入力させることもできる。
【0036】
上述したROM22には、特許請求の範囲に記載の車両状況情報収集手段、データサイズ算出手段、暗号化手段、暗証コード取得手段等の各種手段としてCPU21(コンピュータ)を機能させるためのプログラムを記憶している。つまり、CPU21は、それらのプログラムを実行することで、上述した各種手段として機能する。
【0037】
また、ROM22は、車両状況情報を暗号化する際に必要な暗証コードを予め記憶している。暗証コードとしては、例えば、通常のRSA暗号化で用いられる公開キーに相当するデータが設定される。なお、暗証コードについては、予め定められた所定タイミングで解析装置、管理装置カードC等の取得先から取得する、撮像認定者に入力させて取得するなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0038】
メモリ24は、特許請求の範囲に記載の車両状況情報記憶手段として機能しており、CPU21によってカメラ25a〜nや加速度センサ27a〜n等から収集された車両の走行状況等を解析するための各種データを有する車両状況情報として時系列的に複数記憶する。なお、前記車両状況情報記憶手段は、RAM23やカードCの記憶媒体など種々異なる実施形態とすることができる。
【0039】
また、本最良の形態では、車両状況情報が、カメラ25a〜nからの撮像データと該撮像データに対応して3軸(X、Y、Z)方向に生じる加速度・傾き・衝撃等を示す加速度データとを有する場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、撮像データのみや、撮像データと加速度データと速度データを有するなど製品の仕様等に応じた任意の構成とすることができる。
【0040】
そして、CPU21は、加速度センサ27a〜nから入力される加速度信号等に基づいて予め定められた衝撃を検出すると、該検出時の前後等に収集した車両状況情報をメモリ24から抽出して、車両状況情報を暗号化することになる。
【0041】
次に、ドライブレコーダ2のCPU21が実行する本発明に係る処理概要の一例を、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
電源ケーブルを介して外部から電力が供給されてCPU21が起動され、ステップS1において、初期処理が実行されると、RAM23の各種エリアに予め定められた初期値が設定され、加速度センサ27a〜nからの加速度信号によって衝撃を判定するための判定用設定値等が設定され、その後ステップS2に進む。
【0043】
ステップS2において、カメラ25a〜nから車両の前方を撮像した撮像情報が取り込まれると、その撮像情報は撮像したカメラ25a〜nの識別が可能なようにメモリ24に時系列的に記憶され、その後ステップS3に進む。なお、カメラ25a〜nを識別する方法としては、例えば、メモリ24にカメラ25a〜nに対応した記憶領域を予め割り振り、その該当する領域に記憶する方法や、撮像情報にカメラ25a〜nの識別データを関連付ける方法など、種々異なる形態とすることができる。
【0044】
ステップS3において、加速度センサ27a〜nから入力された加速度信号が、3軸(X、Y、Z)方向の加速度・傾き・衝撃等を示す加速度データとして取り込んで、ステップS2と同様に、その加速度データを取り込んだ加速度センサ27a〜nが識別可能なようにメモリ24に時系列的に記憶され、その後ステップS4に進む。
【0045】
ステップS4において、メモリ24の加速度情報に基づいて、加速度レベルが判定用設定値以上であるか否かが判定される。判定用設定値以上ではないと判定された場合(S4でN)、ステップS2に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、判定用設定値以上であると判定された場合(S4でY)、ステップS5に進む。
【0046】
ステップS5(車両状況情報収集手段)において、車両状況情報として記憶する衝撃を検出した少なくとも直前の撮像データ及び加速度データがメモリ24に記憶されている複数の撮像データ及び加速度データの中から収集されて車両状況情報としてメモリ24に記憶され、その後ステップS6に進む。なお、ステップS5では、車両状況情報を構成する各種データを収集することから、車両状況情報の構成に応じて収集すべきデータ項目も異なる。
【0047】
ステップS6(データサイズ算出手段)において、メモリ24に記憶された暗号化すべき車両状況情報のデータサイズが算出されてRAM23に記憶され、その後ステップS7に進む。なお、本最良の形態では、複数の撮像データと加速度データの総和がデータサイズとなるが、本発明はこれに限定するものではなく、車両状況情報が撮像データのみである場合はその撮像データのサイズがデータサイズとなるというように、種々異なる実施形態とすることができる。
【0048】
ステップS7(暗証コード取得手段)において、暗号化に用いる暗証コードがROM22から抽出されてRAM23に記憶され、その後ステップS8に進む。なお、本発明は暗証コードが存在しなくても、本発明の効果を大きく損なうものではなく、本最良の形態は、撮像確認を特定の人のみが実施できる運用を示しており、暗証コードを用いない場合はこの処理を省略することもできる。
【0049】
ステップS8(暗号化手段)において、RAM23のデータサイズが暗証コードに基づいて暗号化され、その暗号化データサイズとメモリ24の車両状況情報とに基づいた暗号済情報がRAM23等に生成され、その後ステップS9に進む。なお、暗号化法については、画像の暗号化に用いられる周知のRSA暗号方式等の各種暗号方式を用いることができる。また、暗号化については、車両状況情報についても暗号化する実施形態としてもよい。
【0050】
ステップS9において、該暗号済情報のカードCへの書き込みがカード挿入部28に要求されることで、カード挿入部28によって暗号済情報がカードCに書き込まれて記憶され、処理を終了する。
【0051】
次に、上述したドライブレコーダ解析ユニット5は、周知であるように、パーソナル・コンピュータ(パソコン)50と、入力装置51と、表示装置52と、リーダライタ53と、プリンタ54とを有して構成している。
【0052】
パソコン50は、図4に示すように、予め定めたプログラムに従って装置全体の動作の制御などを行う中央演算処理装置(CPU)50aを有している。このCPU50aには、バスBを介してCPU50aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM50b、CPU50aの処理作業に必要な各種データを格納する作業エリア等を有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM50cが接続されている。
【0053】
CPU50aにはさらに、記憶装置50dがバスBを介して接続されており、この記憶装置50dにはハードディスク装置などを用いている。そして、記憶装置50dは、ドライブレコーダ2が記憶した暗号済情報をカードCから読み込み、その暗号化情報を複合化して得られる車両状況情報を解析するための解析プログラム等を格納する各種ファイルやデータベース、予め定められた判定用暗証コード、各種カウンタ等を記憶している。
【0054】
このように本最良の形態では、記憶装置50dが判定用暗証コードを記憶していることから、記憶装置50dが判定用暗証コード記憶手段として機能している。そして、この判定用暗証コードをドライブレコーダ2に記憶させることで、暗号化された暗号済情報の正当性、つまり、データ改竄の有無の判定に利用することができる。なお、暗証コードを用いない実施形態の場合は、構成から削除される。
【0055】
CPU50aにはさらに、入力装置インタフェース(I/F)50e、表示装置インタフェース(I/F)50f、リーダライタインタフェース(I/F)50g、プリンタインタフェース(I/F)50hがバスBを介して接続されている。
【0056】
入力装置I/F50eに、キーボードやマウスを有して構成する入力装置51が接続されると、入力装置51が出力した各種入力データは、バスBに供給されてCPU50aに入力される。
【0057】
表示装置I/F50fには、液晶ディスプレイ、CRTなどを用いて構成される表示装置52が接続されている。そして、この表示装置I/F50fは、表示装置52の表示内容をCPU50aからの指示に基づいて制御するものである。
【0058】
リーダライタI/F50gには、リーダライタ53が接続されており、該リーダライタ53は、筐体の正面に設けられたスロット53aから挿入されたカードCに対し、CPU50aから指定された各種情報の書き込み、読み込みを行う。そして、プリンタI/F50hには、周知であるプリンタ54が接続されており、該プリンタ54は、CPU50aから指定された各種情報の用紙に対する印字を行う。
【0059】
上述したパソコン50は、記憶装置50dに記憶しているドライブレコーダ解析用のアプリケーションプログラムを実行することで、上述したように暗号化情報を複合化して車両状況情報とデータサイズを得ると、車両状況情報の正当性を判定する。そして、正当である場合は、車両状況情報に基づいて事故発生時等の車両の走行状況を解析し、その解析結果を表示装置52に表示させたり、取得した撮像データを表示装置52に表示させる。
【0060】
次に、パソコン50のCPU50aが実行する情報解析処理の一例を、図6に示すフローチャートを参照して以下に説明する。
【0061】
利用者からの要求に応じてCPU50aによって情報解析処理が実行されると、ステップT11において、リーダライタ53にカードCが挿入されているか否かが判定される。挿入されていないと判定された場合(T11でN)、この判定処理を繰り返すことで、カードCが挿入されるのを待つ。一方、カードCが挿入されていると判定された場合(T11でY)、ステップT12に進む。
【0062】
ステップT12(暗号済情報取込手段)において、カードCからの暗号済情報の読み取りがリーダライタ53に要求され、読み取られた暗号済情報が記憶装置50dに取り込まれて記憶され、その後ステップT13に進む。
【0063】
ステップT13(暗証コード取込手段)において、利用者による入力等によって車両側で暗号化に用いられた暗証コードが取り込まれ、暗号済情報と関連付けられて記憶装置50dに記憶され、その後ステップT14に進む。なお、暗証コードの取込方法としては、ドライブレコーダ2がカードCに書き込んだ暗証コードを読み取るなど種々異なる実施形態とすることができる。
【0064】
ステップT14において、取り込んだ暗証コードと記憶装置50dに予め記憶している判定用暗証コードと一致しているか否かが判定される。一致していないと判定された場合(T14でN)、ステップT15において、記憶装置50dのエラーカウンタがインクリメントされ、その後ステップT16に進む。
【0065】
ステップT16において、エラーカウンタが予め設定された設定回数(例えば、3回など)以上となったか否かが判定される。設定回数以上ではないと判定された場合(T16でN)、ステップT13に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、設定回数以上であると判定された場合(T16でY)、ステップT21に進む。
【0066】
また、ステップT14で判定用の暗証コードと一致していないと判定された場合(T14でY)、ステップT17(復号手段)において、取り込んだ暗号済情報の暗号化データサイズが周知である復号方法によって復号されて記憶装置50dに記憶され、ステップT18において、暗号済情報が有する車両状況情報のデータサイズが算出されてRAM50cに記憶され、その後ステップT19に進む。
【0067】
ステップT19(データ改竄検出手段)において、RAM50cの車両状況情報の実データサイズと復号した暗号化データサイズが一致しているか否かが判定される。つまり、データ改竄が発生しているか否かが判定される。一致していると判定された場合(T19でY)、データ改竄は発生していないと見なされ、ステップT20において、通常表示処理が実行されることで、復号された車両状況情報、その解析結果等が表示装置52等から出力され、その処理終了に応じて処理を終了する。
【0068】
また、ステップT19で暗号化データサイズが一致していないと判定された場合(T19でN)、ステップT21(データ改竄警報手段)において、データ改竄の発生を検出、不当な暗証コードの利用を検出等を警報するための警報情報が生成され、該警報情報が表示装置52等から出力されて、その後処理を終了する。
【0069】
次に、上述したドライブレコーダシステム1における動作(作用)の一例を、図8のデータフロー等を参照して以下に説明する。
【0070】
ドライブレコーダ2は、電力供給に応じて起動されると、カメラ25a〜nの各々が常時撮像した撮像対象領域を示す撮像データと加速度センサ27a〜nが検出した加速度データとを車両状況情報として収集してメモリ24に時系列的に記憶する。そして、メモリ24の加速度データが所定の衝撃を示していると、それに対応する車両状況情報を収集し、そのデータサイズを算出して、該データサイズを暗証コードに基づいて暗号化し、該暗号化データサイズと車両状況情報に基づいて生成した暗号済情報をカードCに書き込むことで記憶する。
【0071】
一方、ドライブレコーダ解析ユニット5は、カードCがリーダライタ53に装着されると、そのカードCから暗号済情報とその暗号化に用いられた暗証コードを取り込む。そして、その暗証コードが判定用暗証コードと一致しているか否かを判定し、一致している場合のみ、暗号済情報の暗号化データサイズを復号する。また、一致していない場合は、不正な暗号済情報であることを警報する。
【0072】
暗号済情報の暗号化データサイズに復号すると、その暗号済情報が有する車両状況情報の実データサイズを算出し、該実データサイズと暗号化データサイズが一致するか否かを判定し、一致していると、正当な車両状況情報と見なして解析、表示等を行う。また、一致していない場合は、データ改竄の発生を警報する。
【0073】
以上説明した本発明に係るドライブレコーダ2によれば、車両状況情報のデータサイズを算出し、該データサイズを暗号化した暗号化データサイズと車両状況情報を有する暗号済情報を記憶するようにしたことから、暗号済情報の複合化した暗号化データサイズと車両状況情報の実際のデータサイズとを比較することで、データ改竄の有無を検出することができるため、記憶した車両状況情報の信頼性を向上することができ且つ装置のコストアップも回避することができる。従って、ドライブレコーダの利便性を低下させることなく、車両状況情報を車両事故の証拠として用いることができる。
【0074】
また、取得した暗証コードに基づいて車両状況情報のデータサイズを暗号化するようにしたことから、暗証コードを撮像確認の1つの手段として用いることができるため、データ改竄を確実に防止して、車両状況情報の信頼性をより一層向上させることができる。
【0075】
上述したドライブレコーダ解析ユニット5によれば、ドライブレコーダ2から取り込んだ暗号済情報の暗号化データサイズを復号し、暗号済情報が有する車両状況情報の実際のデータサイズとの比較結果からデータ改竄の発生を検出して警報を行うようにしたことから、ドライブレコーダ2で記憶した車両状況情報の信頼性を向上することができ且つドライブレコーダ2のコストアップも回避することができる。従って、ドライブレコーダ2の利便性を低下させることなく、車両状況情報を車両事故の証拠として用いることができる。
【0076】
また、車両状況情報の暗号化等のための判定用暗証コードを予め記憶しておき、ドライブレコーダ2が暗号化に用いた暗証コードと判定用暗証コードが一致したときに、ドライブレコーダ2から取り込んだ暗号済情報を復号するようにしたことから、判定用暗唱コードと同一の暗唱コードを用いずに車両状況情報を暗号化していても復号されないため、データ改竄を確実に防止して、車両状況情報の信頼性をより一層向上させることができる。
【0077】
なお、上述した本最良の形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係るドライブレコーダ及びドライブレコーダ解析装置の基本構成を示す図である。
【図2】ドライブレコーダシステムの構成の一例を示すシステム構成図である。
【図3】図2のドライブレコーダの概略構成の一例を示す構成図である。
【図4】図2のドライブレコーダ解析ユニットの概略構成の一例を示す構成図である。
【図5】図3のCPUが実行する本発明に係る処理概要の一例を示すフローチャートである。
【図6】図4のCPUが実行するドライブレコーダ解析処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】ドライブレコーダシステムにおける本発明のデータフローの一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
1 ドライブレコーダシステム
2 ドライブレコーダ
5 ドライブレコーダ解析装置(ドライブレコーダ解析ユニット)
21a 車両状況情報収集手段(ドライブレコーダのCPU)
21b データサイズ算出手段(ドライブレコーダのCPU)
21c 暗号化手段(ドライブレコーダのCPU)
21d 暗証コード取得手段(ドライブレコーダのCPU)
24 車両状況情報記憶手段(メモリ)
27 衝撃検出手段(加速度センサ)
50a1 暗号済情報取込手段
50a2 復号手段
50a3 データ改竄検出手段
50a4 データ改竄警報手段
50a5 暗証コード取込手段
50d 判定用暗証コード記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行時における車両の車両状況情報を収集する車両状況情報収集手段と、前記車両に生じた予め定められた衝撃を検出する衝撃検出手段と、前記衝撃検出手段が衝撃を検出した際に前記車両状況情報収集手段が収集した車両状況情報を記憶する車両状況情報記憶手段と、を有するドライブレコーダにおいて、
前記車両状況情報記憶手段が記憶している車両状況情報のデータサイズを算出するデータサイズ算出手段と、
前記データサイズ算出手段が算出したデータサイズを暗号化する暗号化手段と、
前記車両状況情報記憶手段が記憶している車両状況情報と前記暗号化手段が暗号化した暗号化データサイズとを有する暗号済情報を記憶する暗号済情報記憶手段と、
を有することを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
暗証コードを取得する暗証コード取得手段を有し、
前記暗号化手段は、前記暗証コード取得手段が取得した暗証コードに基づいて前記データサイズを暗号化する手段であることを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドライブレコーダから取得した車両状況情報を解析するドライブレコーダ用解析装置において、
前記ドライブレコーダの暗号済情報記憶手段Cから暗号済情報を取り込む暗号済情報取込手段と、
前記暗号済情報取込手段が取り込んだ暗号済情報の前記暗号化データサイズを復号する復号手段と、
前記復号手段が復号した前記暗号化データサイズと前記暗号済情報が有する車両状況情報のデータサイズとを比較してデータ改竄の発生を検出するデータ改竄検出手段と、
前記データ改竄検出手段が検出したデータ改竄の発生を警報するデータ改竄警報手段と、
を有することを特徴とするドライブレコーダ用解析装置。
【請求項4】
予め定められた判定用暗証コードを記憶する判定用暗証コード記憶手段と、
前記ドライブレコーダの暗号化手段が暗号化に用いた暗証コードを取り込む暗証コード取込手段と、
を有し、
前記復号手段は、前記暗証コード取込手段が取得した前記ドライブレコーダ側の暗証コードと前記判定用暗証コード記憶手段が記憶している判定用暗証コードが一致したときに前記暗号済情報の復号を行う手段である
ことを特徴とする請求項3に記載のドライブレコーダ用解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−117137(P2008−117137A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299235(P2006−299235)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】