説明

ドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置

【課題】ドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧を、プレス状態からリリース状態に、並びにリリース状態からプレス状態に一斉に切り替え得るようになしたローラ接圧切替装置を提供することにある。
【解決手段】複数個のトップローラと、これに対応する複数個のボトムローラとを備え、前記各トップローラと各ボトムローラとを接圧付勢手段を介して接圧状態を維持してスライバをドラフトするドラフト装置において、前記接圧付勢手段によるローラ接圧をプレス状態からリリース状態に、並びにリリース状態からプレス状態に一斉に切替えるローラ接圧切替手段1を設けたことを特徴とするドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紡績機におけるドラフト装置に関係するものであって、特に、当該ドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧をプレス状態からリリース状態、 リリース状態からプレス状態に一斉に切替えるようにしたローラ接圧切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、紡績機におけるドラフト装置によれば、トップローラとボトムローラとからなる複数対のドラフトローラ群に対して、接圧をかけた状態で機械を運転しているが、機械が停止したときは、この接圧を外さなければならない。これは、ローラ群が回転せずに圧力がかかった状態を放置しておくと、ゴムの変形などの不都合をもたらすことによるものである。
【0003】
従来、このローラ接圧を外す場合、あるいは、ローラ接圧をかける場合のいずれにおいても人手により全ての錘のクレードルハンドルを上げ下げ操作していかなければならず、機械の運転を開始するとき、並びに、機械の運転を停止するときの作業者の負担が多大なものであった。
【0004】
【特許文献1】実開平3−74677号公報
【特許文献2】実開平5−37977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、紡績機におけるドラフト装置において、機械の運転開始時並びに機械の運転停止時に、当該ドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧を、プレス(加圧)状態からリリース (解除)状態に、並びに、リリース状態からプレス状態に一斉に切り替え得るようになしたドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、具体的には、複数個のトップローラと、これに対応する複数個のボトムローラとを備え、前記各トップローラと各ボトムローラとを接圧付勢手段を介して接圧状態を維持してスライバをドラフトするドラフト装置において、前記接圧付勢手段によるローラ接圧をプレス状態からリリース状態に、並びにリリース状態からプレス状態に一斉に切替えるローラ接圧切替手段を設けたことを特徴とするドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置を構成するものである。
【0007】
さらに、この発明において請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置であって、前記ローラ接圧切替手段が、各錘毎に設けたシリンダと、前記シリンダの出力に応答して前記接圧付勢手段によるローラ接圧をプレス状態からリリース状態に、並びにリリース状態からプレス状態に一斉に切替えるリンク機構とを含むものからなることを特徴とするものである。
【0008】
さらに、この発明において請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載のドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置であって、前記各錘毎に設けたシリンダを作動するためのバルブ機構を備え、前記バルブ機構の操作によって、全錘のシリンダを一斉に作動させるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明になるドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置によれば、複数個のトップローラと、これに対応する複数個のボトムローラとを備え、前記各トップローラと各ボトムローラとを接圧付勢手段を介して接圧状態を維持してスライバをドラフトするドラフト装置において、接圧付勢手段によるローラ接圧を一斉に切替えるローラ接圧切替手段を設けたことにより、機械の運転開始時並びに機械の運転停止時に、当該ドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧を、プレス状態からリリース状態に、並びに、リリース状態からプレス状態に一斉に切り替えることができ、作業の省力化という点において極めて有効に作用するものといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明になるドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明になるドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置の一例を示すものであって、各ドラフトローラ対間にローラ接圧をかけているプレス状態を示す概略的な側断面図であり、図2は、ローラ接圧を外したリリース状態を示す概略的な側断面図である。
【0011】
先ず、この発明が適用される紡績機について説明する。この紡績機は、図3および図4に示すように、 紡績ユニットUが、多数配列された構成となっており、スライバLがトランペットTを介してドラフト装置Dに送られ、空気紡績装置Spにより紡績糸Yに形成された後、該紡績糸YはニップローラRnおよびスラブキャッチャーZなどを経て巻き取り部Wに巻き取られる。参照符号Pは、糸継ぎを行なうピーシング装置であり、当該紡績装置の長手方向に沿って紡績装置の内部下方を走行するように構成されている。
【0012】
図3および図4により、スライバLが紡績糸Yとなってパッケージに形成されるまでの工程を説明する。この発明の適用になる紡績装置は、ドラフト装置Dおよび該ドラフト装置Dにおけるフロントローラ対Rf2、Rf3の下流側に設けた空気紡績装置Spとを含むものからなっている。
【0013】
紡績機におけるドラフト装置Dは、繊維送り手段となる複数対のドラフトローラによって構成されている。このドラフトローラは、スライバLをドラフトするためのもので、例えば、フロントローラRf、エプロンeを有するセカンドローラRs、サードローラRt、バックローラRbにより構成されており、そのいずれもがトップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2と、ボトムローラRf3、Rs3、Rt3、Rb3との組み合わせでなっている。
【0014】
このトップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2と、ボトムローラRf3、Rs3、Rt3、Rb3とは、互いに接触していて、互いに逆方向に回転するものである。したがって、スライバLをそのトップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2と、ボトムローラRf3、Rs3、Rt3、Rb3との間に導き、トップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2と、ボトムローラRf3、Rs3、Rt3、Rb3によってスライバLをドラフトすることができるようになっていて、ドラフトされた繊維束がドラフト装置Dのフロントローラ対Rf2、Rf3から空気紡績装置Spに供給される。
【0015】
前記上下一対のをなす各ローラのうち、上部のローラであるトップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2は、ドラフトクレードルDCに支持されており、このドラフトクレードルDCは、枢支軸31を中心に回動自在に構成されている。このドラフトクレードルDCは、その自由端側にクレードルハンドル32を備えている。このクレードルハンドル32は、枢支点33のまわりに回動可能であり、一端にフック34が設けてあり、 このフック34が機台に固定したストッパ35に係合することにより係止されている。前記ドラフトクレードルDCは、枢支軸31に捩りばねが装備されていて、フック34がストッパ35から外れると仮想線で示す位置に開くようになっている。
【0016】
前記ドラフトクレードルDCに関係して、各トップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2に対しては、当該各トップローラをそれぞれボトムローラRf3、Rs3、Rt3、Rb3に対して接圧状態に付勢する接圧付勢手段36が設けてある。この接圧付勢手段36は、スプリング37を内蔵するスプリングボックス38を含むものからなっている。
【0017】
前記接圧付勢手段36におけるスプリング37の一端37aは、スプリングボックス38の基部38aに固定されており、 他端37bには接圧ブロック39が取り付けられていて、当該接圧ブロック39は、前記各トップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2の軸受け部に当接していて、前記ドラフトクレードルDCが閉止状態位置 (図3において実線で示す状態位置)に位置するときに、前記各トップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2を前記各ボトムローラRf3、Rs3、Rt3、Rb3に対して適宜の接圧状態で接触するようになっている。
【0018】
前記ドラフト装置Dは、トランペットTを経て供給されるスライバLを所定の細さに引き延ばす装置であって、各ローラの回転速度を段々増加することによってドラフトを行う。所定の細さにドラフトされたスライバLは、後述する空気紡績装置Spに供給され、該空気紡績装置Spにおいて紡績糸Yに形成される。
【0019】
このドラフト装置Dの下流側には、空気紡績装置Spが配置されている。この空気紡績装置Spは、ドラフト装置Dから送り出される繊維束が内部を通過する際に、その内部において旋回気流の発生を可能とするノズルを内蔵する構造のものからなっている。
【0020】
このような構成のものにおいて、この発明では、前記接圧付勢手段36によるローラ接圧をプレス状態からリリース状態に、並びにリリース状態からプレス状態に一斉に切替えるローラ接圧切替手段1を設けたものからなっている。前記ローラ接圧切替手段1は、各錘毎に設けたシリンダ2と、前記シリンダ2の出力に応答して前記接圧付勢手段36によるローラ接圧をプレス状態からリリース状態に、並びにリリース状態からプレス状態に一斉に切替えるリンク機構3とを含むものからなっている。
【0021】
この発明において、前記ローラ接圧切替手段1は、具体的な実施例において、例えば、図1および図2に示すように、バルブ機構Vaによって作動するシリンダ2およびリンク機構3との組み合わせによって構成されており、前記シリンダ2の出力軸4には、少なくとも2対の第1および第2の接続リンク5、6が枢支軸7のまわりに回動可能に取り付けられている。前記各第1の接続リンク5の他端側は、枢支軸8を介してドラフトクレードルDCの機台に固定してある固定リンクバー9に接続されていて、前記各第2の接続リンク6の他端側は、枢支軸10を介して可動リンクバー11に接続されている。
【0022】
この発明では、前記可動リンクバー11には、ドラフトローラ対に対応する複数個の圧接付勢手段36が取り付けられている。 前記圧接付勢手段36は、図1Bに示すように、前記可動リンクバー11取り付けてあるスプリングボックス38と、その内部に軸方向に張装してあるスプリング37と、前記スプリング37の自由端側に取り付けられていて、前記ドラフトローラの軸受け部12に当接する圧接ブロック39とを含むものからなっている。
【0023】
前記接圧付勢手段36におけるスプリング37の一端37aは、スプリングボックス38の基部38aに固定されており、 他端37bには前記接圧ブロック39が取り付けられていて、当該接圧ブロック39は、前記各トップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2の軸受け部12に当接していて、前記ドラフトクレードルDCが閉止状態位置に位置するときに、前記各トップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2を前記各ボトムローラRf3、Rs3、Rt3、Rb3に対して適宜の接圧状態で接触するようになっている。
【0024】
上記する構成になるローラ接圧切替手段1によれば、前記バルブ機構Vaを作動することにより、前記シリンダ2、リンク機構3、圧接付勢手段36を介して、前記各ドラフトローラにおけるトップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2を前記各ボトムローラRf3、Rs3、Rt3、Rb3に対して、図1Aに示すように、接圧を付与したプレス状態に維持し、あるいは、図2に示すように、接圧を解除したリリース状態に維持することができるようになっている。
【0025】
この発明では、前記バルブ機構Vaの出力ラインOLを、各錘に設けたシリンダ2に対して並列接続しておくことにより、各錘について、前記各ドラフトローラにおけるトップローラRf2、Rs2、Rt2、Rb2を一斉に接圧切替え操作することができる。この場合、錘によっては、圧力をかける必要がないものもあるが、その錘については、今まで通りにクレードルハンドルをかけないことで、圧力がかからないようにしておくことができる。
【0026】
尚、この発明において、前記ローラ接圧切替手段1は、前記シリンダによる駆動方式のほか、モーターなどの回転運動を利用する構成のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、この発明になるドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置の一例を示すものであって、図1Aは、各ドラフトローラ対間にローラ接圧をかけているプレス状態を示す概略的な側断面図であり、図1Bは、圧接付勢手段の具体的な構成を示す概略的な側断面図である。
【図2】図2は、ドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置において、ローラ接圧を外したリリース状態を示す概略的な側断面図である。
【図3】図3は、従来の典型的なドラフト装置を組み合わせてなる紡績機の要部概要を示す概略的な側面図である。
【図4】図4は、この発明が適用されるを有する紡績機の全体を示す正面図である。
【符号の説明】
【0028】
D ドラフト装置
Sp 紡績装置
L スライバ
Rf フロントローラ
Rs セカンドローラ
Rt サードローラ
Rb バックローラ
Rf2、Rs2、Rt2、Rb2 トップローラ
Rf3、Rs3、Rt3、Rb3 ボトムローラ
1 ローラ接圧切替手段
Va バルブ機構
OL バルブ機構の出力ライン
2 シリンダ
3 リンク機構
4 シリンダの出力軸
5 第1の接続リンク
6 第2の接続リンク
7 枢支軸
8 枢支軸
DC ドラフトクレードル
9 固定リンクバー
10 枢支軸
11 可動リンクバー
12 ドラフトローラの軸受け部
36 接圧付勢手段
37 スプリング
38 スプリングボックス
39 圧接ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のトップローラと、これに対応する複数個のボトムローラとを備え、前記各トップローラと各ボトムローラとを接圧付勢手段を介して接圧状態を維持してスライバをドラフトするドラフト装置において、前記接圧付勢手段によるローラ接圧をプレス状態からリリース状態に、並びにリリース状態からプレス状態に一斉に切替えるローラ接圧切替手段を設けたことを特徴とするドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置。
【請求項2】
前記ローラ接圧切替手段が、各錘毎に設けたシリンダと、前記シリンダの出力に応答して前記接圧付勢手段によるローラ接圧をプレス状態からリリース状態に、並びにリリース状態からプレス状態に一斉に切替えるリンク機構とを含むものからなることを特徴とする請求項1に記載のドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置。
【請求項3】
前記各錘毎に設けたシリンダを作動するためのバルブ機構を備え、前記バルブ機構の操作によって、全錘のシリンダを一斉に作動させるようにしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のドラフト装置におけるクレードルのローラ接圧切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−316369(P2006−316369A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138379(P2005−138379)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】