説明

ドリル形状測定装置

【課題】ドリルの刃先形状を、迅速且つ正確に測定することができると共に、安価な構成で測定することができるドリル形状測定装置を提供する。
【解決手段】ドリル12の刃先形状を測定するためのドリル形状測定装置であって、ドリル12を軸線13周りに回転可能に保持する保持手段14と、ドリル12の軸線方向に沿って移動可能で且つドリル12の軸線13と直交する軸25廻りに回動可能で、ドリル12先端部の切れ刃24に接触する測定ブロック23と、ドリル12の軸線13と直交する軸25廻りの測定ブロック23の回動角度に基づいて、ドリル12先端部の切れ刃24の角度θを検出する角度検出手段28と、ドリル12の軸線方向に対する測定ブロック23の位置に基づいて、ドリル12先端部の切れ刃24の位置hを検出する位置検出手段29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルの刃先形状を測定するためのドリル形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
穴明け加工に使用されるドリルは、使用時間の増加に伴って、加工物(ワーク)に接触する先端部の切れ刃が摩耗するので、切れ刃を修正・研削しながら使用される。この研削作業は再研削と称されるが、再研削したドリルの刃先形状、特にドリル先端部の切れ刃の形状(先端角度、リップハイト及びチゼル偏心等)は加工精度に大きな影響を及ぼすので、ドリルの再研削において、先端角度、リップハイト及びチゼル偏心等の管理は、品質を確保する上で重要である。従って、再研削の後には、ドリルの刃先(切れ刃)が所定の形状となっているか否かについての検査を行っている。
【0003】
例えば、ドリルの刃先形状の測定方法としては、ドリル刃先ゲージによる測定、非接触測定器(レーザ等)による測定(特許文献1参照)、光学式測定器(測定顕微鏡、投影器等)による測定等がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−207318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特にドリルの再研削においては、ドリル毎に異なる仕様或いは長さで研削されるため、ドリルの刃先形状を作業現場で迅速且つ正確に測定する必要がある。ドリルの刃先形状を迅速且つ正確に測定するためには、段取り作業及び測定作業が簡単であることが求められる。また、ドリルの再研削に関連するコストを削減するために、測定装置のコストが安価であることも求められる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ドリルの刃先形状を、迅速且つ正確に測定することができると共に、安価な構成で測定することができるドリル形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、ドリルの刃先形状を測定するためのドリル形状測定装置であって、上記ドリルを軸線周りに回転可能に保持する保持手段と、上記ドリルの軸線方向に沿って移動可能で且つ上記ドリルの軸線と直交する軸廻りに回動可能で、上記ドリル先端部の切れ刃に接触する測定ブロックと、上記ドリルの軸線と直交する軸廻りの上記測定ブロックの回動角度に基づいて、上記ドリル先端部の切れ刃の角度を検出する角度検出手段と、上記ドリルの軸線方向に対する上記測定ブロックの位置に基づいて、上記ドリル先端部の切れ刃の位置を検出する位置検出手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドリルの刃先形状を、迅速且つ正確に測定することができると共に、安価な構成で測定することができるドリル形状測定装置を提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るドリル形状測定装置の側面図である。図2は、図1の実施形態に係るドリル形状測定装置の平面図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、ドリル形状測定装置10の基台(定盤)11には、測定対象であるドリル12を軸線13周りに回転可能に保持する保持手段14が設けられる。保持手段14は、基台11に回転可能に設けられた回転テーブル15と、回転テーブル15上に設けられ、ドリル12を刃先が上方に向いた状態で保持するチャック16とを有する。回転テーブル15の下部に円筒状の回転軸17が一体に形成され、回転軸17が基台11の貫通孔18に装着された軸受19によって支持される。本実施形態では、手動で回転テーブル15を回転させるようにしているが、ギヤ及びモータ等を有する駆動手段を用いて回転テーブル15を回転させるようにしても良い。チャック16は、コレットチャックや精密チャック等、チャッキングによる振れの小さいものであるのが好ましい。
【0012】
基台11上には、支柱20が鉛直に立設されており、支柱20には、アーム21が支柱20の長手方向に沿って摺動自在(図示例では、上下方向に昇降自在)に設けられる。アーム21は、摺動機構22を用いて、支柱20の長手方向に沿って摺動される。摺動機構22に関して移動精度(真直度)は重要ではないが、後述する測定ブロック23が小さな測定力でドリル12に接触できるように、摺動機構22として摩擦抵抗の小さいものを用いている。本実施形態では、手動でアーム21を上下方向に昇降させるようにしているが、ラック・ピニオン及びモータ等を有する駆動手段を用いてアーム21を上下方向に昇降させるようにしても良い。
【0013】
アーム21の先端部には、ブラケット21aがドリル12の半径方向(図示例では、左右方向)に移動自在に設けられ、ブラケット21aの先端部に、ドリル12先端部の切れ刃24に接触(面接触)する測定ブロック23が設けられる。本実施形態では、測定ブロック23の側部に円柱状の回転軸25が取り付けられており、回転軸25がブラケット21aの貫通孔26に装着された軸受27によって支持される。アーム21を上下方向に摺動させることで、測定ブロック23がドリル12の軸線方向に沿って移動され、ブラケット21aをアーム21に対してドリル12の半径方向に沿って移動させることで、測定ブロック23がドリル12の半径方向に沿って移動される。
【0014】
本実施形態に係る形状測定装置10は、ドリル12の軸線13と直交する軸(回転軸25)廻りの測定ブロック23の回動角度に基づいて、ドリル12先端部の切れ刃24の角度(図3の符号θ)を検出する角度検出手段28と、ドリル12の軸線方向に対する測定ブロック23の位置(高さ)に基づいて、ドリル12先端部の切れ刃24の位置(高さ;図3の符号h)を検出する位置検出手段29とを備える。
【0015】
本実施形態では、角度検出手段28として、回転軸25廻りの測定ブロック23の回動角度を検出するロータリーエンコーダを用いている。また、位置検出手段29として、上下方向に対する測定ブロック23の高さを検出するダイヤルゲージを用いている。変位検出手段29として、ダイヤルゲージに代えて、電気マイクロ等を用いても良い。
【0016】
次に、本実施形態に係るドリルの刃先形状の測定方法を説明する。
【0017】
測定対象であるドリル12をチャック16にて保持し、変位測定器(ダイヤルゲージ)30を用いてドリル12のマージン部31の最高部を見つけ出し、位相調整プレート32を用いてセンタリングを行い、チャック16及び位相調整プレート32を回転テーブル15に対して固定する。ドリル12の再研削に用いる研削盤によっては、その研削盤のツーリング(モールステーパ、ジャコブステーパ、マシニングセンタ用のテーパ等)ごと、ドリル12をチャック16にて保持することも考えられる。
【0018】
ブラケット21aをアーム21に対してドリル12の半径方向に移動させ、測定ブロック23の回転軸25がドリル12の先端24aと外周コーナー24bとの間(好ましくは、ドリル12の軸線13からドリル12の半径1/2)の上方に位置するように、測定ブロック23をドリル12の半径方向に移動させて、その状態で、インデックスプランジャ33により回転テーブル15を基台11に対して固定する。
【0019】
アーム21を下方に移動させ、測定ブロック23をドリル12先端に接触させる(図3中に一点鎖線で示す)。本実施形態では、測定ブロック23とドリル12との接触の検知は、測定ブロック23に所定の電圧をかけておき、測定ブロック23とドリル12とが導通したことを検出することにより行う。
【0020】
また、本実施形態では、測定力調整手段(定荷重ばね34或いは低摩擦シリンダ35等)を用いて、測定ブロック23がドリル12先端部に接触する際に生じる測定力を調整するようになっている。測定力調整手段として定荷重ばね34を用いる場合、定荷重ばね34によりアーム21を上方から引っ張ってアーム21に一定の荷重を与えて、測定ブロック23がドリル12先端部に接触する際に生じる測定力を調整する。測定力調整手段として低摩擦シリンダ35を用いる場合、低摩擦シリンダ35によりアーム21を下方から押し上げてアーム21に一定の荷重を与えて、測定ブロック23がドリル12先端部に接触する際に生じる測定力を調整する。これにより、測定力(接触力)によってドリル刃先が破損することを防止できる。
【0021】
逃げ加工が二段平面研削である場合、測定ブロック23を刃先逃げ角と同じにすることで、測定ブロック23とドリル12との接触面積を増加させ、ドリル12の刃先に集中的に測定力がかからないようにできる。
【0022】
また、逃げ加工が円錐研削である場合、測定ブロック23をドリル12の刃先以外の点に接触させることで、ドリル12の刃先に集中的に測定力がかからないようにできる。
【0023】
測定ブロック23をドリル12先端に接触させた状態で、アーム21をさらに下方に移動させ、ドリル12からの反力によって測定ブロック23を回転軸25廻りに回動させて、測定ブロック23をドリル12先端部の切れ刃24に接触させる(図3中に実線で示す)。測定ブロック23をドリル12先端部の切れ刃24に接触させた状態で、ロータリーエンコーダ28より切れ刃24の角度θ(図3参照)の測定値を読み取ると共に、ダイヤルゲージ29より切れ刃24の高さh(図3参照)を読み取る。
【0024】
ドリル12の一方の切れ刃24について角度θ及び高さhの測定が終了したならば、回転テーブル15によりドリル12を180度回転させて、他方の刃先24についても同様に角度θ及び高さhの測定を行い、これら両方の切れ刃24についての角度θ及び高さhの測定値に基づいて、ドリル12の刃先形状(先端角度、リップハイト及びチゼル偏心等)を評価する。
【0025】
以上要するに、本実施形態によれば、回転テーブル15上のチャック16にてドリル12を保持し、そのドリル12の切れ刃24に測定ブロック23を接触させ、その測定ブロック23の回動角度及び位置から、ドリル12の切れ刃24の角度θ及び高さhを求めることとしたので、ドリル12の刃先形状を迅速且つ正確に測定することができると共に、ドリル12の刃先形状を測定する際に、レーザ等を用いていないので、ドリル12の刃先形状を安価な構成で測定することができる。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るドリル形状測定装置の側面図である。
【図2】図2は、図1の実施形態に係るドリル形状測定装置の平面図である。
【図3】本実施形態に係るドリルの刃先形状の測定方法を示す説明図である。
【図4】先端角度を示す説明図である。
【図5】リップハイトを示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ドリル形状測定装置
12 ドリル
13 軸線
14 保持手段
23 測定ブロック
24 切れ刃
25 回転軸(軸)
28 ロータリーエンコーダ(角度検出手段)
29 ダイヤルゲージ(位置検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルの刃先形状を測定するためのドリル形状測定装置であって、上記ドリルを軸線周りに回転可能に保持する保持手段と、上記ドリルの軸線方向に沿って移動可能で且つ上記ドリルの軸線と直交する軸廻りに回動可能で、上記ドリル先端部の切れ刃に接触する測定ブロックと、上記ドリルの軸線と直交する軸廻りの上記測定ブロックの回動角度に基づいて、上記ドリル先端部の切れ刃の角度を検出する角度検出手段と、上記ドリルの軸線方向に対する上記測定ブロックの位置に基づいて、上記ドリル先端部の切れ刃の位置を検出する位置検出手段とを備えたことを特徴とするドリル形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−192254(P2009−192254A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30626(P2008−30626)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】