ナノインプリント用モールド及びその製造方法
【課題】微細な転写用凹凸構造と、当該転写用凹凸構造の凹部の深さ(凸部の高さ)を正確に測定するための測定用凹凸構造とを備えているにもかかわらず、ステップ・アンド・リピート法により転写用凹凸構造のみを被加工物に転写することのできるナノインプリント用モールド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材の基部上及び凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成し、基部上のマスク材料膜に測定用凹部形成用の第1開口パターンを形成し、凸構造部上のマスク材料膜に転写用凹部形成用の第2開口パターンを形成し、第1及び第2開口パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、基部における凸構造部側の面への測定用凹部の形成及び凸構造部への転写用凹部の形成を行う。この測定用凹部の開口面の短手方向長さは、非破壊式測定装置を用いて測定用凹部の深さを測定可能な長さである。
【解決手段】基材の基部上及び凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成し、基部上のマスク材料膜に測定用凹部形成用の第1開口パターンを形成し、凸構造部上のマスク材料膜に転写用凹部形成用の第2開口パターンを形成し、第1及び第2開口パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、基部における凸構造部側の面への測定用凹部の形成及び凸構造部への転写用凹部の形成を行う。この測定用凹部の開口面の短手方向長さは、非破壊式測定装置を用いて測定用凹部の深さを測定可能な長さである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に所望の線、模様等の図形を転写形成するナノインプリント用モールド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術として、近年ナノインプリント技術に注目が集まっている。ナノインプリント技術は、基材の表面に微細な凹凸構造を形成した型部材(モールド)を用い、凹凸構造を被加工物に転写することで微細凹凸構造を等倍転写するパターン形成技術である(特許文献1)。
このような微細凹凸構造を被加工物に等倍転写するために用いられるモールドは、その凹凸構造における凹部の深さ(凸部の高さ)が所望とする深さ(高さ)であることが要求されるため、作製されたモールドの深さ(高さ)を評価する必要がある。そして、当該凹部の深さ(凸部の高さ)を評価する方法として、原子間力顕微鏡(AFM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる方法、位相差計測装置を用いる方法、スキャトロメトリ法などが知られている。
これらの方法のうち、AFMを用いる方法は、カンチレバーと称される、一端に探針が設けられたプローブでモールド表面を走査することにより凹部の深さ(凸部の高さ)を計測することのできる非破壊的な方法であるが、凹凸構造の微細化により、プローブの探針が凹部の底面(凸部と凸部との間の底面)に到達することができず、凹部の深さ(凸部の高さ)の正確な計測が困難であるという問題がある。
【0003】
また、位相差計測装置を用いる方法は、モールド表面の凹凸構造に伴い、モールド表面に照射され、透過したレーザ光又は反射したレーザ光の位相差に基づいて凹部の深さ(凸部の高さ)を計測することのできる非破壊的な方法であるが、AFMを用いる方法と同様に、凹凸構造の微細化により、レーザ光の波長よりも凹部の短手方向長さ(凸部と凸部との間隙の長さ)が短くなると、レーザ光が凹部内に入射することができず、凹部の深さ(凸部の高さ)の正確な計測が困難であるという問題がある。上述のように、ナノインプリントモールドにおいては、その表面の微細な凹部(凸部)の深さ(高さ)を測定することが困難であるという問題がある。
このような問題を解決すべく、従来、モールドの表面に形成された微細な機能パターン(凹部)と同一平面上における当該機能パターンに隣接する位置に、当該微細な機能パターンと同一の深さを有し、AFM等の非破壊式測定装置により測定可能な計測用パターンを形成し、当該計測用パターンの深さを計測することにより間接的に微細な機能パターンの深さを計測し得るナノインプリント用モールドが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号
【特許文献2】特開2009−143089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載のモールドは、微細な機能パターンと同一平面上における当該機能パターンに近接した位置に計測用パターンが形成されているため、このモールドを用いてステップ・アンド・リピート法により機能パターンを繋ぎ合わせるようにして被加工物に転写し、連続性を有する一の転写パターンを被加工物上に形成しようとすると、被加工物上に不要な計測用パターンまでもが転写されてしまう、あるいは、不要な計測用パターンの存在により機能パターンの繋ぎ合わせが不可能となる場合があるという問題がある。
また、ステップ・アンド・リピート法により一の被加工物上に複数の転写パターンを順次形成する場合、上記特許文献2に記載のモールドを用いると、被加工物上に機能パターンとともに不要な計測用パターンも転写されてしまうため、モールドの送りピッチが大きくなり、被加工物に無駄が生じてしまうという問題がある。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、微細な転写用凹凸構造と、当該転写用凹凸構造の凹部の深さ(凸部の高さ)を正確に測定するための測定用凹凸構造とを備えているにもかかわらず、ステップ・アンド・リピート法により転写用凹凸構造のみを被加工物に転写することのできるナノインプリント用モールド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、基部と、当該基部の一方の面から突出してなる凸構造部とを備える基材における前記凸構造部に転写用凹部が形成され、前記凸構造部の周囲の前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凹部が形成されてなり、前記転写用凹部の深さと前記測定用凹部の深さとが所定の相関性を有するナノインプリント用モールドを製造する方法であって、前記基材の前記基部上及び前記凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成するマスク材料膜形成工程と、前記基部上のマスク材料膜に前記測定用凹部形成用の第1開口パターンを形成するパターン形成、及び前記凸構造部上のマスク材料膜に前記転写用凹部形成用の第2開口パターンを形成するパターン形成を行うパターン形成工程と、前記第1及び第2開口パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、前記基部における凸構造部側の面への測定用凹部の形成及び前記凸構造部への転写用凹部の形成を行うエッチング工程とを含み、前記測定用凹部の開口面の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凹部の深さを測定可能な長さであることを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法を提供する(発明1)。
【0007】
上記発明(発明1)においては、前記エッチング工程において、前記測定用凹部が形成される前記基部と前記転写用凹部が形成される前記凸構造部とを同時にエッチングすることが好ましい(発明2)。
上記発明(発明1,2)においては、前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面周端部における当該凸構造部上面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記第1開口パターンまでの距離をd1とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部上面までの高さをh1としたとき、d1≧h1となる前記凸構造部側の面における位置に、前記第1開口パターンを形成することが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1〜3)においては、前記パターン形成工程において、前記第1開口パターンを含む所定領域に面積率調整用凹部形成用の第3開口パターンを形成することが好ましい(発明4)。
上記発明(発明4)においては、前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面における前記第2開口パターンの開口面積率と、前記所定領域における前記第1及び第3開口パターンの合計開口面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように、前記第3開口パターンを形成することが好ましい(発明5)。
【0008】
また、本発明は、基部と、当該基部の一方の面から突出してなる凸構造部とを備える基材における前記凸構造部に転写用凸部が形成され、前記凸構造部の周囲の前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凸部が形成されてなり、前記転写用凸部の高さと前記測定用凸部の高さとが所定の相関性を有するナノインプリント用モールドを製造する方法であって、前記基材の前記基部上及び前記凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成するマスク材料膜形成工程と、前記基部上のマスク材料膜に前記測定用凸部形成用の第1被覆パターンを形成するパターン形成、及び前記凸構造部上のマスク材料膜に前記転写用凸部形成用の第2被覆パターンを形成するパターン形成を行うパターン形成工程と、前記第1及び第2被覆パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、前記基部における凸構造部側の面への測定用凸部の形成及び前記凸構造部への転写用凸部の形成を行うエッチング工程とを含むことを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法を提供する(発明6)。
【0009】
上記発明(発明6)においては、前記エッチング工程において、前記測定用凸部が形成される前記基部と前記転写用凸部が形成される前記凸構造部とを同時にエッチングすることが好ましい(発明7)。
上記発明(発明6,7)においては、前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面周端部における当該凸構造部上面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記第1被覆パターンまでの距離をd2とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部上面までの高さをh2としたとき、d2≧h2となる前記凸構造部側の面における位置に、前記第1被覆パターンを形成することが好ましい(発明8)。
上記発明(発明6〜8)においては、前記パターン形成工程において、前記第1被覆パターンを含む所定領域に面積率調整用凸部形成用の第3被覆パターンを形成することが好ましい(発明9)。
【0010】
上記発明(発明9)においては、前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面における前記第2被覆パターンの被覆面積率と、前記所定領域における前記第1及び第3被覆パターンの合計被覆面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように、前記第3被覆パターンを形成することが好ましい(発明10)。
上記発明(発明9,10)においては、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能なように、前記所定領域に前記第3被覆パターンを形成することが好ましい(発明11)。
上記発明(発明9〜11)においては、前記第1被覆パターンの最近傍に位置する前記第3被覆パターンと、当該第1被覆パターンとの距離が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な距離であることが好ましい(発明12)。
【0011】
さらに、本発明は、基部と、当該基部の一方の面から突出する凸構造部とを備えるナノインプリント用モールドであって、前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凹部を有し、前記凸構造部の上面に転写用凹部を有しており、前記転写用凹部の深さと前記測定用凹部の深さとが、所定の相関性を有し、前記測定用凹部の開口面の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凹部の深さを測定可能な長さであることを特徴とするナノインプリント用モールドを提供する(発明13)。
【0012】
上記発明(発明13)においては、前記凸構造部の最上面を含む平面と当該凸構造部の側壁面との交線における当該凸構造部の最上面を含む平面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記測定用凹部までの距離をD1とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部の最上面を含む平面までの高さをH1としたとき、D1≧H1であることが好ましい(発明14)。
上記発明(発明13,14)においては、前記測定用凹部を含む所定領域に面積率調整用凹部を有することが好ましい(発明15)。
上記発明(発明15)においては、前記凸構造部上面における前記転写用凹部の開口面の面積率と、前記所定領域における前記測定用凹部及び前記面積率調整用凹部の開口面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1であることが好ましい(発明16)。
【0013】
さらにまた、本発明は、基部と、当該基部の一方の面から突出する凸構造部とを備えるナノインプリント用モールドであって、前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凸部を有し、前記凸構造部の上面に転写用凸部を有しており、前記転写用凸部の高さと前記測定用凸部の高さとが、所定の相関性を有することを特徴とするナノインプリント用モールドを提供する(発明17)。
【0014】
上記発明(発明17)においては、前記転写用凸部の上端面を含む平面と前記凸構造部の側壁面を含む平面との交線における当該転写用凸部の上端面を含む平面に対する垂線と前記測定用凸部の上端面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記測定用凸部までの距離をD2とし、前記測定用凸部の上端面を含む平面から前記転写用凸部の上端面を含む平面までの高さをH2としたとき、D2≧H2であることが好ましい(発明18)。
上記発明(発明17,18)においては、前記測定用凸部を含む所定領域に面積率調整用凸部を有していることが好ましい(発明19)。
上記発明(発明19)においては、前記凸構造部上面における前記転写用凸部の上端面の面積率と、前記所定領域における前記測定用凸部及び前記面積率調整用凸部の上端面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1であることが好ましい(発明20)。
上記発明(発明19,20)においては、前記面積率調整用凸部が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な箇所に位置していることが好ましい(発明21)。
上記発明(発明19〜21)においては、前記測定用凸部の最近傍に位置する前記面積率調整用凸部と、当該測定用凸部との距離が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な距離であることが好ましい(発明22)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、微細な転写用凹凸構造と、当該転写用凹凸構造の凹部の深さ(凸部の高さ)を正確に測定するための測定用凹凸構造とを備えているにもかかわらず、ステップ・アンド・リピート法により転写用凹凸構造のみを被加工物に転写することのできるナノインプリント用モールド及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す部分拡大断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造工程(その1)を示す工程フロー図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造過程における基材の部分拡大断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造工程(その2)を示す工程フロー図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す平面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す部分拡大断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造工程(その1)を示す工程フロー図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造過程における基材の部分拡大断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造工程(その2)を示す工程フロー図である。
【図13】実施例1において作成した検量線を示すグラフである。
【図14】実施例2において作成した検量線を示すグラフである。
【図15】実施例3において作成した検量線を示すグラフである。
【図16】実施例4において作成した検量線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔第1の実施形態〕
[ナノインプリント用モールド]
第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1の断面図を図1に示す。図1に示すように、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1は、基部2と、基部2の一方の面から突出してなる凸構造部3とを備える基材4からなる。
ナノインプリント用モールド1を構成する基材4の材料としては、例えば、シリコン等の半導体材料、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。また、基材4の厚みは、被加工物の材質、凸構造部3の高さ、基材4の強度、取り扱い適性等を考慮して設定されることができ、例えば、300μm〜7mm程度の範囲で適宜設定されることができる。
【0018】
基部2及び凸構造部3の形状としては、例えば、平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、両者の形状は、同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよく、例えば、基部2及び凸構造部3の形状がともに平面視略円形状であってもよいし、基部2の形状が平面視略円形状であって凸構造部3の形状が平面視略方形状であってもよい。
凸構造部3の高さ(基部2の凸構造部側平坦面21から凸構造部3の最上面31までの高さ)は、凸構造部3の最上面31に形成されている転写用凹部32の微細凹凸構造を被加工物に転写する際に、基部2の凸構造部側平坦面21が当該被加工物に接触しない程度に適宜設定されていればよく、一般に、凸構造部3の高さは、被加工物の樹脂層の膜厚よりも高く設定されていればよい。
【0019】
また、凸構造部3の高さは、基部2の高さが0.5mm以上となるように設定されるのが好ましい。基部2の高さが0.5mm未満となると、被加工物への転写用凹部32の微細凹凸構造の転写時に耐え得る十分な強度を確保するのが困難となるおそれがある。特に、凸構造部3の高さは25μm以下であるのが好ましい。凸構造部3の高さが25μm以下であれば、後述するナノインプリント用モールド1の製造工程において、測定用凹部22及び転写用凹部32のそれぞれを形成するための第1開口パターン53及び第2開口パターン54を電子線描画により形成する際に、基部2の凸構造部側平坦面21及び凸構造部3の双方において焦点をあわせやすくなるという効果を併せ持つ。
【0020】
このナノインプリント用モールド1において、凸構造部3の最上面31には転写用凹部32が形成されているとともに、凸構造部3の周囲の基部2における凸構造部側平坦面21には測定用凹部22が形成されている。転写用凹部32が形成されている面(凸構造部3の最上面31)よりも図1中における鉛直方向の高さの低い位置に測定用凹部22が形成されていることで、ナノインプリント用モールド1を用いてステップ・アンド・リピート法により転写用凹部32の凹凸構造を被加工物に連続して転写する際に、測定用凹部22の凹凸構造がともに転写されることがないため、被加工物上に不要な凹凸構造までもが転写されることがなく、また、ナノインプリント用モールド1の送りピッチを小さくすることができ、被加工物に無駄が生じることがない。
凸構造部3の最上面31に形成されている転写用凹部32の形状としては、スペース状凹部、ホール状凹部等を例示することができるが、これらに限定されるものではなく、平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等の形状を採用することができる。なお、スペース状凹部とは、凹部の開口面における長手方向長さが、短手方向長さの2倍以上の凹部を意味し、ホール状凹部とは、凹部の開口面における長手方向長さが、短手方向長さの2倍未満の凹部を意味するものとする。
【0021】
また、転写用凹部32の短手方向長さは、特に限定されるものではなく、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて当該転写用凹部32の深さを測定し得ない長さ(非破壊式測定装置の種類によって異なるが、例えば、100nm未満、50nm未満、30nm未満、20nm未満等)であってもよいし、当該転写用凹部32の深さを測定し得る長さであってもよい。なお、本実施形態において、転写用凹部32の形状が平面視円形状である場合の短手方向長さとは、当該円の直径を意味し、平面視略楕円形状である場合には当該略楕円の短径を意味する。
なお、転写用凹部32の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて当該転写用凹部32の深さを測定し得る長さである場合、ナノインプリント用モールド1に測定用凹部22を形成しなくても、転写用凹部32の深さを直接測定すればよいとも考えられるが、AFM等の非破壊式測定装置を用いて転写用凹部32の深さを直接測定すると、転写用凹部32表面に異物が付着したり、転写用凹部32表面に傷が付いたりするおそれがある。そのため、このような場合であっても、測定用凹部22の深さを測定するのが好ましい。
【0022】
測定用凹部22の形状としては、転写用凹部32と同様に平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等の形状を採用することができるが、凸構造部3上に形成されている転写用凹部32と略相似形状であるのが好ましく、相似形状であるのが特に好ましい。転写用凹部32と測定用凹部22とが略相似形状又は相似形状であれば、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの相関性が極めて高くなり、より高精度で転写用凹部32の深さを測定することができる。
【0023】
図2に示すように、測定用凹部22の短手方向長さWは、非破壊式測定装置を用いて当該測定用凹部22の深さを測定し得る長さである限り特に限定されるものではないが、100nm以上であるのが好ましい。また、測定用凹部22は、基部2における凸構造部側平坦面21に少なくとも1つ形成されていればよいが、複数の測定用凹部22が形成されているのが好ましい。複数の測定用凹部22が形成されていることで、測定用凹部22の深さに基づく転写用凹部32の深さの測定精度を向上させることができる。例えば、図2に示すように、測定用凹部22は、凸構造部3を略均等に取り囲むようにして4箇所に位置させることができる。
【0024】
測定用凹部22は、基部2における凸構造部側平坦面21に形成されていればよいが、図3に示すように、凸構造部3の最上面31を含む平面33と凸構造部3の側壁面34との交線35における上記平面33に対する垂線L1と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点P1から当該交点P1の最近傍に位置する測定用凹部22までの距離をD1とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の最上面31を含む平面33までの高さをH1としたとき、D1≧H1となる位置に形成されているのが好ましい。
上記測定用凹部22を含む所定領域には、面積率調整用凹部23がさらに形成されているのが好ましい。具体的には、基部2における一の測定用凹部22の開口面周縁部から外側に向かう方向であって、当該開口面周縁部の接線に対する垂直方向10μm〜5mm以内、好ましくは100μm〜1mm以内の所定領域S1に面積率調整用凹部23が形成されているのが好ましい(図2参照)。
【0025】
この面積率調整用凹部23は、凸構造部3の上面全体の面積に対する全転写用凹部32の開口面の面積率と上記所定領域S1の面積に対する測定用凹部22及び面積率調整用凹部23の開口面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1となるように、上記所定領域S1に形成されているのが好ましい。両者の面積率の比が上記範囲内であれば、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの相関性を極めて高くすることができ、より高精度で転写用凹部32の深さを測定することができる。なお、所定領域S1における面積率調整用凹部23の数は特に限定されるものではない。
なお、基部2における凸構造部側平坦面21に複数の測定用凹部22が形成されている場合、一の測定用凹部22の所定領域S1に他の測定用凹部22が形成されない限り、一の測定用凹部22の所定領域S1と他の測定用凹部22の所定領域S1とが重なり合うように設定されていてもよい。
【0026】
上記第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1によれば、転写用凹部32が形成されている凸構造部3と異なる面(基部2)上に測定用凹部22が形成されているため、当該モールド1を被加工物に押圧して転写用凹部32の微細凹凸構造を転写する際に、測定用凹部22の凹凸構造が転写されることがない。そのため、ステップ・アンド・リピート法により転写用凹部32の微細凹凸構造を繋ぎ合わせるようにして被加工物に転写し、連続性を有する一の転写パターンを被加工物上に形成する際に、被加工物上に不要な測定用凹部22の凹凸構造までもが転写されることがなく、また、ステップ・アンド・リピート法により一の被加工物上に複数の転写パターンを順次形成する場合、被加工物上に転写用凹部32の微細凹凸構造のみが転写され、不要な測定用凹部22の凹凸構造は転写されないため、ナノインプリント用モールド1の送りピッチを小さくすることができ、被加工物に無駄が生じることがない。
【0027】
[ナノインプリント用モールドの製造方法(その1)]
次に、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1の製造方法について説明する。図4は、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)を示す工程フロー図である。
まず、平板状の基材4を用意し、当該基材4の一方の面に感光性レジスト膜(ポジ型レジスト膜又はネガ型レジスト膜)5を形成する(図4(A))。基材4への感光性レジスト膜5の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、スプレーコーター、スピンコーター等の塗工機を用いた従来公知の塗布(塗工)方法等が挙げられる。
このようにして基材4上に形成された感光性レジスト膜(図示例ではネガ型レジスト膜)5に対して所望のマスクを介して露光し(図4(B))、その後現像して凸構造部3に対応する部位にのみ感光性レジスト膜5が残存するレジスト層51を形成する(図4(C))。
【0028】
このようにして形成されたレジスト層51をマスクとして異方性エッチングを行い(図4(D))、残存するレジスト層51を剥離することにより、基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を得ることができる(図4(E))。レジスト層51の剥離方法としては、レジスト剥離液を噴霧する方法、レジスト剥離液に浸漬する方法、酸素プラズマによりアッシングする方法等を用いることができ、レジスト剥離液としては、例えば、アセトン等の溶剤、硫酸過水、レジスト専用の剥離液等を使用することができる。なお、レジスト層51を形成した後の工程において、レジスト層51の硬化が進行した場合、レジスト剥離液を用いた剥離を行う前に、レジスト層51に対して加熱処理、超音波処理を施すことが好ましい。
続いて、凸構造部3側の基材4上にポジ型電子線レジスト膜52を形成し(図4(F))、電子線描画により測定用凹部22、転写用凹部32及び面積率調整用凹部23のそれぞれを形成するための第1開口パターン53、第2開口パターン54及び第3開口パターン55の潜像を形成し(図4(G))、現像してエッチングレジスト層56を形成する(図4(H))。
【0029】
第1開口パターン53は、測定用凹部22が形成される所望の位置に対応するようにして形成される。具体的には、図5に示すように、凸構造部3の上面周端部35における凸構造部3の上面31に対する垂線l1と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点p1から当該交点p1の最近傍に位置する第1開口パターン53までの距離をd1とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の上面31までの高さをh1としたとき、d1≧h1となる凸構造部側平坦面21における位置に、第1開口パターン53を形成するのが好ましい。当該位置よりも凸構造部3側に近づいた位置に第1開口パターン53を形成すると、凸構造部3の存在が、測定用凹部22を形成する際のエッチングに影響を与え、測定用凹部22の深さと転写用凹部32の深さとの相関性を低下させるおそれがある。
また、第3開口パターン55は、第1開口パターン53を含む所定領域に形成されているのが好ましく、凸構造部3上面全体の面積に対する第2開口パターン54の開口面積率と、当該所定領域の面積に対する第1開口パターン53及び第3開口パターン55の合計開口面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように形成されているのがより好ましい。両者の開口面積率の比を上記範囲内とすれば、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとを極めて相関性の高いものとすることができる。なお、第1開口パターン53及び第3開口パターン55が形成される所定領域とは、測定用凹部22及び面積率調整用凹部23が形成される所定領域S1(図2参照)に対応するエッチングレジスト層56における領域を意味する。
【0030】
このようにして形成されたエッチングレジスト層56をマスクとして基部2と凸構造部3とを同時にドライエッチングする(図4(I))。このドライエッチングは、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等の公知のドライエッチングから、基材4の材質を考慮して、使用するエッチングガスとともに適宜選択することができ、例えば、基材4がシリコンやガラスの場合、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチングによりドライエッチングすることができる。かかるドライエッチング後、エッチングレジスト層56を除去することにより、凸構造部3上に転写用凹部32が形成され、基部2の所定領域S1に測定用凹部22及び面積率調整用凹部23が形成されてなるナノインプリント用モールド1を得ることができる(図4(J))。
【0031】
上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)によれば、転写用凹部32と測定用凹部22とが同時にエッチングされることで形成されるため、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの相関性を極めて高いものとすることができる。そのため、得られたナノインプリント用モールド1の測定用凹部22の深さを、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて実測することにより、高精度で転写用凹部32の深さを測定することができる。
上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)においては(図4)、基部2の一方の面から突出してなる凸構造部3を備える基材4を作製した後(図4(E))、当該基材4の凸構造部側表面にハードマスクを成膜し、ハードマスク上にポジ型電子線レジスト膜を形成し、電子線描画により測定用凹部22、転写用凹部32及び面積率調整用凹部23のそれぞれを形成するための第1開口パターン、第2開口パターン及び第3開口パターンの潜像を形成し、現像してエッチングレジスト層を形成し、形成されたエッチングレジスト層をマスクとしてハードマスクをドライエッチングし、エッチングされたハードマスクを介して基部2及び凸構造部3を同時にエッチングするようにしてもよい。
【0032】
[ナノインプリント用モールドの製造方法(その2)]
第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1は、後述する方法により製造することもできる。図6は、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)を示す工程フロー図である。
まず、図4(A)〜(E)に示すようにして基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を作製する。平板状の基材4を用意し、当該基材4の一方の面に感光性レジスト膜(ポジ型レジスト膜又はネガ型レジスト膜)5を形成する(図4(A))。基材4への感光性レジスト膜5の形成は、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。
【0033】
このようにして基材4上に形成された感光性レジスト膜(図示例ではネガ型レジスト膜)5に対して所望のマスクを介して露光し(図4(B))、その後現像して凸構造部3に対応する部位にのみ感光性レジスト膜5が残存するレジスト層51を形成する(図4(C))。このようにして形成されるレジスト層51の厚みは、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)と同様にすればよい。
このようにして形成されたレジスト層51をマスクとしてエッチングし(図4(D))、残存するレジスト層51を剥離することにより、基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を得ることができる(図4(E))。レジスト層51の剥離は、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。なお、レジスト層51を形成した後の工程において、レジスト層51の硬化が進行した場合、レジスト剥離液を用いた剥離を行う前に、レジスト層51に対して加熱処理、超音波処理を施すことが好ましい。
【0034】
続いて、図6に示すように、凸構造部3側の基材4上にポジ型電子線レジスト膜52を形成し(図6(F))、電子線描画により測定用凹部22及び面積率調整用凹部23のそれぞれを形成するための第1開口パターン53及び第3開口パターン55の潜像を形成し(図6(G))、現像して第1のエッチングレジスト層57を形成するとともに、凸構造部3を露出させる(図6(H))。
【0035】
第1開口パターン53は、測定用凹部22が形成される所望の位置に対応するようにして形成される。具体的には、図5を参照して説明した上述の製造方法(その1)と同様であり、凸構造部3の上面周端部35における凸構造部3の上面31に対する垂線l1と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点p1から、当該交点p1の最近傍に位置する第1開口パターン53までの距離をd1とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の上面31までの高さをh1としたとき、d1≧h1となる凸構造部側平坦面21における位置に、第1開口パターン53を形成するのが好ましい。当該位置よりも凸構造部3側に近づいた位置に第1開口パターン53を形成すると、後述するように基部2及び凸構造部3を同時にエッチングして測定用凹部22及び転写用凹部32を形成したとしても、凸構造部3の存在が、測定用凹部22を形成する際のエッチングに影響を与え、測定用凹部22の深さと転写用凹部32の深さとの相関性を低下させるおそれがある。
【0036】
また、第3開口パターン55は、第1開口パターン53を含む所定領域に形成されているのが好ましく、凸構造部3上面全体の面積に対する第2開口パターン54の開口面積率と、当該所定領域の面積に対する第1開口パターン53及び第3開口パターン55の合計開口面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように形成されているのがより好ましい。両者の開口面積率の比を上記範囲内とすれば、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとを極めて相関性の高いものとすることができる。なお、第1開口パターン53及び第3開口パターン55が形成される所定領域とは、測定用凹部22及び面積率調整用凹部23が形成される所定領域S1(図2参照)に対応する第1のエッチングレジスト層57における領域を意味する。
そして、基部2上の第1のエッチングレジスト層57及び凸構造部3上を被覆するようにしてネガ型電子線レジスト膜58を形成し(図6(I))、電子線描画により転写用凹部32を形成するための第2開口パターン54の潜像を形成し(図6(J))、現像して第2のエッチングレジスト層59を形成する(図6(K))。
このようにして形成された第1及び第2のエッチングレジスト層57,59をマスクとして基部2及び凸構造部3を同時にドライエッチングする(図6(L))。このドライエッチングは、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。かかるドライエッチング後、第1及び第2のエッチングレジスト層57,59を除去することにより、凸構造部3上に転写用凹部32が形成され、基部2の所定領域S1に測定用凹部22及び面積率調整用凹部23が形成されてなるナノインプリント用モールド1を得ることができる(図6(M))。
【0037】
上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)によれば、転写用凹部32と測定用凹部22とが同時にエッチングされることで形成されるため、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの相関性を極めて高いものとすることができる。そのため、得られたナノインプリント用モールド1の測定用凹部22の深さを、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて実測することにより、高精度で転写用凹部32の深さを測定することができる。
上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)において、第1のエッチングレジスト層57をポジ型電子線レジストにて形成し、第2のエッチングレジスト層59をネガ型電子線レジストにて形成しているが、これに限定されるものではなく、第1のエッチングレジスト層57をネガ型電子線レジストにて形成し、第2のエッチングレジスト層59をポジ型電子線レジストにて形成してもよい。
また、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)において、電子線描画により第1開口パターン53及び第3開口パターン55の潜像を形成し、第1のエッチングレジスト層57を形成しているが(図6(F)〜(H))、ポジ型感光性レジスト又はネガ型感光性レジストを用い、所望のフォトマスクを介したプロキシミティ露光を行い、その後現像して第1のエッチングレジスト層57を形成してもよい。
【0038】
さらに、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)において、電子線描画により転写用凹部32を形成するための第2開口パターン54の潜像を形成し、第2のエッチングレジスト層59を設けているが、凸構造部3上面に自己組織化膜を形成することにより転写用凹部32を形成するための第2開口パターン54を形成し、第2のエッチングレジスト層59を設けてもよい。具体的には、以下のようにして第2開口パターン54を形成することができる。
基部2の凸構造部側平坦面21上に形成された第1のエッチングレジスト層57上に保護膜を形成した後、凸構造部3の上面31にポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロックコポリマーを含む組成物膜を形成し、熱又は溶媒雰囲気等でアニール処理する。これにより、PMMAがシリンダー状に相分離した自己組織化膜が凸構造部3上に形成される。その後、O2プラズマ処理等を施してPMMA相をエッチングすることにより、転写用凹部32を形成するための第2開口パターン54を有する自己組織化マスクを第2のエッチングレジスト層59として凸構造部3上面31に形成することができる。
【0039】
[ナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さ測定]
上述のようにして製造されたナノインプリント用モールド1は、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとが極めて高い相関性を有するものとなっている。そのため、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの関係を示す検量線を予め作成しておけば、転写用凹部32の深さの測定対象たるナノインプリント用モールド1における測定用凹部22の深さを非破壊式測定装置(AFM、位相差計測装置等)にて実測することで、予め作成された検量線に基づいて転写用凹部32の深さを正確に測定することができる。
具体的には、ドライエッチング条件(ドライエッチング時間等)を変更することにより転写用凹部32(測定用凹部22)の深さがそれぞれ異なる複数の検量線作成用モールドをすべて同一の方法(例えば、上述したいずれか1つの製造方法)により作製し、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとをSEM等にて測定し、得られた各測定値に基づいて予め検量線を作成する。そして、所望の深さの転写用凹部32を設けるための所定のドライエッチング条件で作製したナノインプリント用モールド1について、当該モールド1の測定用凹部22の深さをAFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置にて実測する。そして当該実測値と検量線とから、当該モールド1の転写用凹部32の深さを算出する。このようにして、ナノインプリント用モールド1の転写用凹部32の深さを高精度で測定することができ、したがって、高精度のモールドを作製することができるとともに、何らかの理由で転写用凹部32の深さが設定値から外れた場合には、そのようなモールドを確実に検出することができる。
【0040】
〔第2の実施形態〕
[ナノインプリント用モールド]
第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10の断面図を図7に示す。なお、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10において、凸構造部3の高さ(基部2における測定用凸部221の上端面を含む平面から凸構造部3における転写用凸部321の上端面を含む平面までの高さ)は、凸構造部3の上面311に形成されている転写用凸部321の微細凹凸構造を被加工物に転写する際に、基部2の凸構造部側平坦面211に形成されている測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が当該被加工物に接触しない程度に適宜設定されていればよく、一般に、凸構造部3の高さは、被加工物の樹脂層の膜厚よりも高く設定されていればよい。
【0041】
また、凸構造部3の高さは、基部2の高さが0.5mm以上となるように設定されるのが好ましい。基部2の高さが0.5mm未満となると、被加工物への転写用凸部321の微細凹凸構造の転写時に耐え得る十分な強度を確保するのが困難となるおそれがある。特に、凸構造部3の高さは25μm以下であるのが好ましい。凸構造部3の高さが25μm以下であれば、後述するナノインプリント用モールド10の製造工程において、測定用凸部221及び転写用凸部321のそれぞれを形成するための第1被覆パターン531及び第2被覆パターン541を電子線描画により形成する際に、基部2の凸構造部側平坦面211及び凸構造部3の双方において焦点をあわせやすくなるという効果を併せ持つ。
図7に示すように、第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10において、凸構造部3の上面311に転写用凸部321が形成されているとともに、凸構造部3の周囲の基部2における凸構造部側平坦面211に測定用凸部221が形成されている。転写用凸部321が形成されている面(凸構造部3の上面311)よりも図7中における鉛直方向の高さの低い位置に測定用凸部221が形成されていることで、ナノインプリント用モールド10を用いてステップ・アンド・リピート法により転写用凸部321の凹凸構造を被加工物に連続して転写する際に、測定用凸部221の凹凸構造がともに転写されることがないため、被加工物上に不要な凹凸構造までもが転写されることがなく、また、ナノインプリント用モールド1の送りピッチを小さくすることができ、被加工物に無駄が生じることがない。
【0042】
凸構造部3の上面311に形成されている転写用凸部321の形状としては、ライン状凸部、ピラー状凸部等を例示することができるが、これらに限定されるものではなく、平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等の形状を採用することができる。なお、ライン状凸部とは、凸部の上端面における長手方向長さが、短手方向長さの2倍以上の凸部を意味し、ピラー状凸部とは、凸部の上端面における長手方向長さが、短手方向長さの2倍未満の凸部を意味するものとする。
凸構造部3の上面311に転写用凸部321が複数形成される場合、当該複数の転写用凸部321間の距離は特に限定されるものではなく、各転写用凸部321間の距離が、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて当該転写用凸部321の高さを測定し得ない距離(すなわち、一の転写用凸部321の周囲の凸構造部3上の面311にAFMの探針が接触し得ない程度に、又は一の転写用凸部321の周囲の凸構造部3上の面311にレーザ光が到達し得ない程度に他の転写用凸部321が近接している場合、非破壊式測定装置の種類によって異なるが、例えば、100nm未満、50nm未満、30nm未満、20nm未満等)であってもよいし、当該転写用凸部321の高さを測定し得る距離であってもよい。
【0043】
なお、各転写用凸部321間の距離が、非破壊式測定装置を用いて当該転写用凸部321の高さを測定し得る距離である場合、ナノインプリント用モールド10に測定用凸部221を形成しなくても、転写用凸部321の高さを直接測定すればよいとも考えられるが、AFM等の非破壊式測定装置を用いて転写用凸部321の高さを直接測定すると、転写用凸部321表面に異物が付着したり、転写用凸部321表面に傷が付いたりするおそれがある。そのため、このような場合であっても、測定用凸部221にて高さを測定するのが好ましい。
測定用凸部221の形状としては、転写用凸部321と同様に平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等の形状を採用することができるが、凸構造部3上に形成されている転写用凸部321と略相似形状であるのが好ましく、相似形状であるのが特に好ましい。転写用凸部321と測定用凸部221とが略相似形状又は相似形状であれば、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとの相関性が極めて高くなり、より高精度で転写用凸部321の高さを測定することができる。
【0044】
また、測定用凸部221は、基部2における凸構造部側平坦面211に少なくとも1つ形成されていればよいが、複数の測定用凸部221が形成されているのが好ましい。複数の測定用凸部221が形成されていることで、測定用凸部221の高さに基づく転写用凸部321の高さの測定精度を向上させることができる。例えば、図8に示すように、測定用凸部221は、凸構造部3を略均等に取り囲むようにして4箇所に位置することができる。
測定用凸部221は、基部2における凸構造部側平坦面211に形成されていればよいが、図9に示すように、転写用凸部321の上端面を含む平面331と凸構造部3の側壁面34を含む平面341との交線351における上記平面331に対する垂線L4と測定用凸部221の上端面を含む平面241との交点P2から当該交点P2の最近傍に位置する測定用凸部221までの距離をD2とし、測定用凸部221の上端面を含む平面241から転写用凸部321の上端面を含む平面331までの高さをH2としたとき、D2≧H2となる位置に形成されているのが好ましい。
【0045】
上記測定用凸部221を含む所定領域には、面積率調整用凸部231がさらに形成されているのが好ましい。具体的には、基部2における一の測定用凸部221の上端面周縁部から外側に向かう方向であって、当該周縁部の接線に対する垂直方向10μm〜5mm以内、好ましくは100μm〜1mm以内の所定領域S2に面積率調整用凸部231が形成されているのが好ましい(図8参照)。
この面積率調整用凸部231は、凸構造部3の上面全体の面積に対する全転写用凸部321の上端面の面積率と上記所定領域S2の面積に対する測定用凸部221及び面積率調整用凸部231の上端面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1となるように、上記所定領域S2に形成されているのが好ましい。両者の面積率の比が上記範囲内であれば、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとの相関性を極めて高くすることができる。なお、所定領域S2における面積率調整用凸部231の数は特に限定されるものではない。
なお、基部2における凸構造部側平坦面211に複数の測定用凸部221が形成されている場合、一の測定用凸部221の所定領域S2に他の測定用凸部221が形成されない限り、一の測定用凸部221の所定領域S2と他の測定用凸部221の所定領域S2とが重なり合うように設定されていてもよい。
【0046】
上記第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10によれば、転写用凸部321が形成されている凸構造部3と異なる面(基部2)上に測定用凸部221が形成されているため、当該モールド10を被加工物に押圧して転写用凸部321の微細凹凸構造を転写する際に、測定用凸部221の凹凸構造が転写されることがない。そのため、ステップ・アンド・リピート法により転写用凸部321の微細凹凸構造を繋ぎ合わせるようにして被加工物に転写し、連続性を有する一の転写パターンを被加工物上に形成する際に、被加工物上に不要な測定用凸部221の凹凸構造までもが転写されることがなく、また、ステップ・アンド・リピート法により一の被加工物上に複数の転写パターンを順次形成する場合、被加工物上に転写用凸部321の微細凹凸構造のみが転写され、不要な測定用凸部221の凹凸構造が転写されないため、ナノインプリント用モールド10の送りピッチを小さくすることができ、被加工物に無駄が生じることがない。
【0047】
[ナノインプリント用モールドの製造方法(その1)]
次に、第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10の製造方法について説明する。図10は、第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)を示す工程フロー図である。
まず、図4(A)〜(E)に示すようにして基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を作製する。平板状の基材4を用意し、当該基材4の一方の面に感光性レジスト膜(ポジ型レジスト膜又はネガ型レジスト膜)5を形成する(図4(A))。基材4への感光性レジスト膜5の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スプレーコーター、スピンコーター等の塗工機を用いた従来公知の塗布(塗工)方法等が挙げられる。
このようにして基材4上に形成された感光性レジスト膜(図示例ではネガ型レジスト膜)5に対して所望のマスクを介して露光し(図4(B))、その後現像して凸構造部3に対応する部位にのみ感光性レジスト膜5が残存するレジスト層51を形成する(図4(C))。
【0048】
このようにして形成されたレジスト層51をマスクとして異方性エッチングを行い(図4(D))、残存するレジスト層51を剥離することにより、基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を得ることができる(図4(E))。レジスト層51の剥離方法としては、レジスト剥離液を噴霧する方法、レジスト剥離液に浸漬する方法、酸素プラズマによりアッシングする方法等を用いることができ、レジスト剥離液としては、例えば、アセトン等の溶剤、硫酸過水、レジスト専用の剥離液等を使用することができる。なお、レジスト層51を形成した後の工程において、レジスト層51の硬化が進行した場合、レジスト剥離液を用いた剥離を行う前に、レジスト層51に対して加熱処理、超音波処理を施すことが好ましい。
【0049】
続いて、図10に示すように、凸構造部3側の基材4上にネガ型電子線レジスト膜521を形成し(図10(F))、電子線描画により測定用凸部221、転写用凸部321及び面積率調整用凸部231のそれぞれを形成するための第1被覆パターン531、第2被覆パターン541及び第3被覆パターン551の潜像を形成し(図10(G))、現像してエッチングレジスト層561を形成する(図10(H))。
第1被覆パターン531は、測定用凸部221が形成される所望の位置に対応するようにして形成される。具体的には、図11に示すように、凸構造部3の上面周端部35における凸構造部3の上面31に対する垂線l2と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点p2から、当該交点p2の最近傍に位置する第1被覆パターン531までの距離をd2とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の上面31までの高さをh2としたとき、d2≧h2となる凸構造部側平坦面21における位置に、第1被覆パターン531を形成するのが好ましい。当該位置よりも凸構造部3側に近づいた位置に第1被覆パターン531を形成すると、凸構造部3の存在が、測定用凸部221を形成する際のエッチングに影響を与え、測定用凸部221の高さと転写用凸部321の高さとの相関性を低下させるおそれがある。
【0050】
また、第3被覆パターン551は、第1被覆パターン531を含む所定領域に形成されているのが好ましく、凸構造部3上面全体の面積に対する第2被覆パターン541の被覆面積率と、当該所定領域の面積に対する第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551の合計被覆面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように形成されているのがより好ましい。両者の被覆面積率の比を上記範囲内とすれば、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとを極めて相関性の高いものとすることができる。なお、第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551が形成される所定領域とは、測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が形成される所定領域S2(図8参照)に対応するエッチングレジスト層561における領域を意味する。
【0051】
このようにして形成されたエッチングレジスト層561をマスクとして基部2と凸構造部3とを同時にドライエッチングする(図10(I))。このドライエッチングは、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等の公知のドライエッチングから、基材4の材質を考慮して、使用するエッチングガスとともに適宜選択することができ、例えば、基材4がシリコンやガラスの場合、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチングによりドライエッチングすることができる。かかるドライエッチング後、エッチングレジスト層561を除去することにより、凸構造部3上に転写用凸部321が形成され、基部2の所定領域S2に測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が形成されてなるナノインプリント用モールド10を得ることができる(図10(J))。
上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)によれば、転写用凸部321と測定用凸部221とが同時エッチングにより形成されるため、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとが極めて高い相関性を有することになる。そのため、得られたナノインプリント用モールド10の測定用凸部221の高さを、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて実測することにより、高精度で転写用凸部321の高さを測定することができる。
【0052】
上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)においては(図10)、基部2の一方の面から突出してなる凸構造部3を備える基材4を作製した後(図10(E))、当該基材4の凸構造部側表面にハードマスクを成膜し、ハードマスク上にネガ型電子線レジスト膜を形成し、電子線描画により測定用凸部221、転写用凸部321及び面積率調整用凸部231のそれぞれを形成するための第1被覆パターン、第2被覆パターン及び第3被覆パターンの潜像を形成し、現像してエッチングレジスト層を形成し、形成されたエッチングレジスト層をマスクとしてハードマスクをドライエッチングし、エッチングされたハードマスクを介して基部2及び凸構造部3を同時にエッチングするようにしてもよい。
【0053】
[ナノインプリント用モールドの製造方法(その2)]
第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10は、後述する方法により製造することもできる。図12は、第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10の製造方法(その2)を示す工程フロー図である。
まず、図4(A)〜(E)に示すようにして基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を作製する。平板状の基材4を用意し、当該基材4の一方の面に感光性レジスト膜(ポジ型レジスト膜又はネガ型レジスト膜)5を形成する(図4(A))。基材4への感光性レジスト膜5の形成は、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。
このようにして基材4上に形成された感光性レジスト膜(図示例ではネガ型レジスト膜)5に対して所望のマスクを介して露光し(図4(B))、その後現像して凸構造部3に対応する部位にのみ感光性レジスト膜5が残存するレジスト層51を形成する(図4(C))。このようにして形成されるレジスト層51の厚みは、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)と同様にすればよい。
【0054】
このようにして形成されたレジスト層51をマスクとしてエッチングし(図4(D))、残存するレジスト層51を剥離することにより、基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を得ることができる(図4(E))。レジスト層51の剥離は、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。なお、レジスト層51を形成した後の工程において、レジスト層51の硬化が進行した場合、レジスト剥離液を用いた剥離を行う前に、レジスト層51に対して加熱処理、超音波処理を施すことが好ましい。
続いて、図12に示すように、凸構造部3側の基材4上にポジ型電子線レジスト膜521を形成し(図12(F))、電子線描画により測定用凸部221及び面積率調整用凸部231のそれぞれを形成するための第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551の潜像を形成し(図12(G))、現像して第1のエッチングレジスト層571を形成するとともに、凸構造部3を露出させる(図12(H))。
【0055】
第1被覆パターン531は、測定用凸部221が形成される所望の位置に対応するようにして形成される。具体的には、図11を参照して説明した上述の製造方法(その1)と同様であり、凸構造部3の上面周端部35における凸構造部3の上面31に対する垂線l2と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点p2から当該交点p2の最近傍に位置する第1被覆パターン531までの距離をd2とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の上面31までの高さをh2としたとき、d2≧h2となる凸構造部側平坦面21における位置に、第1被覆パターン531を形成するのが好ましい。当該位置よりも凸構造部3側に近づいた位置に第1被覆パターン531を形成すると、凸構造部3の存在が、測定用凸部221を形成する際のエッチングに影響を与え、測定用凸部221の高さと転写用凸部321の高さとの相関性を低下させるおそれがある。
また、第3被覆パターン551は、第1被覆パターン531を含む所定領域に形成されているのが好ましく、凸構造部3上面全体の面積に対する第2被覆パターン541の被覆面積率と、当該所定領域の面積に対する第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551の合計被覆面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように形成されているのがより好ましい。両者の被覆面積率の比を上記範囲内とすれば、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとを極めて相関性の高いものとすることができる。なお、第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551が形成される所定領域とは、測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が形成される所定領域S2(図8参照)に対応する第1のエッチングレジスト層571における領域を意味する。
【0056】
そして、基部2上の第1のエッチングレジスト層571及び凸構造部3上を被覆するようにしてネガ型電子線レジスト膜581を形成し(図12(I))、電子線描画により転写用凸部321を形成するための第2被覆パターン541の潜像を形成し(図12(J))、現像して第2のエッチングレジスト層591を形成する(図12(K))。
このようにして形成された第1及び第2のエッチングレジスト層571,591をマスクとして基部2及び凸構造部3を同時にドライエッチングする(図12(L))。このドライエッチングは、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。かかるドライエッチング後、第1及び第2のエッチングレジスト層571,591を除去することにより、凸構造部3上に転写用凸部321が形成され、基部2の所定領域S2に測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が形成されてなるナノインプリント用モールド10を得ることができる(図12(M))。
【0057】
上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その2)によれば、転写用凸部321と測定用凸部221とが同時にエッチングされることで形成されるため、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとが極めて高い相関性を有することになる。そのため、得られたナノインプリント用モールド10の測定用凸部221の高さを、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて実測することにより、高精度で転写用凸部321の高さを測定することができる。
上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その2)において、第1のエッチングレジスト層571をポジ型電子線レジストにて形成し、第2のエッチングレジスト層591をネガ型電子線レジストにて形成しているが、これに限定されるものではなく、第1のエッチングレジスト層571をネガ型電子線レジストにて形成し、第2のエッチングレジスト層591をポジ型電子線レジストにて形成してもよい。
また、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その2)において、電子線描画により第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551を形成し、第1のエッチングレジスト層571を形成しているが(図12(F)〜(H))、ポジ型感光性レジスト又はネガ型感光性レジストを用い、所望のフォトマスクを介したプロキシミティ露光を行い、その後現像して第1のエッチングレジスト層571を形成してもよい。
【0058】
さらに、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)において、電子線描画により転写用凸部321に対応する第2被覆パターン541を形成して第2のエッチングレジスト層591を設けているが、凸構造部3上面に自己組織化膜を形成することにより転写用凸部321に対応する第2被覆パターン541を形成して第2のエッチングレジスト層591を設けてもよい。具体的には、以下のようにして転写用凸部321に対応する第2被覆パターン541を形成することができる。
基部2の凸構造部側平坦面21上に形成された第1のエッチングレジスト層571上に保護膜を形成した後、凸構造部3の上面にポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロックコポリマーを含む組成物膜を形成し、熱又は溶媒雰囲気等でアニール処理する。これにより、PMMAがシリンダー状に相分離した自己組織化膜が凸構造部3上に形成される。その後、O2プラズマ処理等を施してPMMA相をエッチングすることにより、転写用凸部321に対応する第2被覆パターン541を有する自己組織化マスクを第2のエッチングレジスト層591として凸構造部3上面31に形成することができる。
【0059】
[ナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さ測定]
上述のようにして製造されたナノインプリント用モールド10は、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとが極めて高い相関性を有するものとなっている。そのため、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとの関係を示す検量線を予め作成しておけば、転写用凸部321の高さの測定対象たるナノインプリント用モールド10における測定用凸部221の高さを非破壊式測定装置(AFM、位相差計測装置等)にて実測することで、予め作成された検量線に基づいて転写用凸部321の高さを正確に測定することができる。
具体的には、ドライエッチング条件(ドライエッチング時間等)を変更することにより転写用凸部321(測定用凸部221)の高さがそれぞれ異なる複数の検量線作成用モールドをすべて同一の方法(例えば、上述したいずれか1つの製造方法)により作製し、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとをSEM等にて測定し、得られた各測定値に基づいて予め検量線を作成する。そして、所望の高さの転写用凸部321を設けるための所定のドライエッチング条件で作製したナノインプリント用モールド10について、当該モールド10の測定用凸部221の高さをAFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置にて実測する。そして当該実測値と検量線とから、当該モールド10の転写用凸部321の高さを算出する。このようにして、ナノインプリント用モールド10の転写用凸部321の高さを高精度で測定することができ、したがって、高精度のモールドを作製することができるとともに、何らかの理由で転写用凸部321の高さが設定値から外れた場合には、そのようなモールドを確実に検出することができる。
【0060】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、第1の実施形態において、ナノインプリント用モールド1の基部2に測定用凹部22とともに、面積率調整用凹部23が形成されているが、面積率調整用凹部23の短手方向の長さが非破壊式測定装置を用いて当該面積率調整用凹部23の深さを測定し得る程度の長さであれば、面積率調整用凹部23の深さの測定値に基づいて転写用凹部32の深さを測定するようにしてもよい。また、第2の実施形態においても同様に、面積率調整用凸部231の高さを測定し、その測定値に基づいて転写用凸部321の高さを測定するようにしてもよい。この場合において、深さを測定する面積率調整用凹部23は、転写用凹部32と略相似形状又は相似形状のものであるのが好ましく、高さを測定する面積率調整用凸部231は、転写用凸部321と略相似形状又は相似形状のものであるのが好ましい。
【実施例】
【0061】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕
(検量線作成用ナノインプリント用モールドの製造)
厚み0.725mmのシリコン製基板(直径8インチ(200mm))をナノインプリント用モールド用基材として準備し、基材の一方の面にレジスト(SU−8 3000,化薬マイクロケム社製)を塗布した。次に、所望のマスクを介して露光し現像して、凸構造部に対応する部分にレジスト層(40mm角)を形成した。そして、このレジスト層をマスクとして基材をエッチングして、厚み0.705mmの基部と、この基部から突出した高さ20μmの凸構造部を形成した後、レジスト層を除去した。形成した凸構造部の壁面は、凸構造部の上面に対して垂直となっていた。
【0062】
このようにして得られた凸構造部及び基部を備える基材の凸構造部側表面にポジ型電子線レジスト(ZEP520A,日本ゼオン社製)を塗布し、電子線描画装置(JBX9300,日本電子社製)内のステージ上に基材の裏面(凸構造部側と反対側の面)がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、第1開口パターン、第2開口パターン及び第3開口パターンの潜像を形成し、レジストを現像してレジスト層を形成した。すなわち、転写用凹部を形成するための第2開口パターンは、ライン/スペースが40nmのライン状の開口を有するものとした。また、測定用凹部を形成するための第1開口パターンは、4個の50μm×100μmの平面視長方形からなり、各パターンは凸構造部の4方向に均等に位置し(図2参照)、各パターンの中心から凸構造部の壁面までの距離は500μmであり、凸構造部の最近傍に位置する第1開口パターンまでの距離は450μmであった。さらに、面積率調整用凹部を形成するための第3開口パターンは、5μm×10μmの平面視長方形とした。そして、図2に示されるように、250μm×300μmの平面視長方形からなる所定領域を、第1開口パターンの短辺及び長辺のそれぞれから第1開口パターンの外側に向かう方向であって、当該第1開口パターンの短辺及び長辺のそれぞれに対して垂直方向に100μm離間した位置に所定領域の短辺及び長辺のそれぞれが位置するように設定し、当該所定領域に375個の第3開口パターンを配した。これにより、凸構造部の上面全体の面積に対する第2開口パターンの開口面積率(50%)と、上記の所定領域に対する第1開口パターン及び第3開口パターンの合計開口面積率(50%)との比は、1:1であった。
【0063】
次に、このレジスト層をマスクとして下記の条件でドライエッチングを行い、基材の凸構造部上面に転写用凹部が、基部の所定領域に測定用凹部及び面積率調整用凹部が形成された検量線作成用ナノインプリント用モールドを得た。
<ドライエッチング条件>
・CF4ガス流量:40sccm
・RIEパワー :400W
・圧力 :4Pa
【0064】
ドライエッチングの条件(エッチング時間)を変更して、形成される転写用凹部の深さがそれぞれ異なる5個の検量線作成用ナノインプリント用モールドを作製し、得られたナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さと測定用凹部の深さとをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定し、転写用凹部及び測定用凹部の深さの関係を示す検量線を最小二乗法により予め作成した。当該検量線を図13に示す。
【0065】
(深さ測定用ナノインプリント用モールドの製造)
目標とする転写用凹部の深さが40nmとなるようにドライエッチングの時間を30sに設定した以外は、上記検量線作成用ナノインプリント用モールドと同様にして、深さ測定用ナノインプリント用モールドを5個作製した。
【0066】
(深さ測定用ナノインプリント用モールドの凹部深さの測定)
上述のようにして得られた5個の深さ測定用ナノインプリント用モールドにおける測定用凹部の深さをAFM(L−Trace,エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)にて実測し、当該実測値及び図13に示す検量線に基づいて、転写用凹部の深さを測定した。その結果、転写用凹部の深さは、39〜41nmと測定された。一方、この測定が完了した後、5個すべての深さ測定用ナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定したところ、検量線に基づいて測定した転写用凹部の深さとSEMにより測定した転写用凹部の深さとの差(絶対値)は、1nm以下であった。この結果、本実施例のようにして製造したナノインプリント用モールドによれば、測定用凹部の深さを測定することで、転写用凹部の深さを高精度で測定可能であることが判明した。
【0067】
〔実施例2〕
(検量線作成用ナノインプリント用モールドの製造)
厚み0.725mmのシリコン製基板(直径8インチ(200mm))をナノインプリント用モールド用基材として準備し、基材の一方の面にレジスト(SU−8 3000,化薬マイクロケム社製)を塗布した。次に、所望のマスクを介して露光し現像して、凸構造部に対応する部分にレジスト層(40mm角)を形成した。そして、このレジスト層をマスクとして基材をエッチングして、厚み0.705mmの基部と、この基部から突出した高さ20μmの凸構造部を形成した後、レジスト層を除去した。形成した凸構造部の壁面は、凸構造部の上面に対して垂直となっていた。
【0068】
このようにして得られた凸構造部及び基部を備える基材の凸構造部側表面にネガ型電子線レジスト(HSQ)を塗布し、電子線描画装置(JBX9300,日本電子社製)内のステージ上に基材の裏面(凸構造部側と反対側の面)がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、第1被覆パターン、第2被覆パターン及び第3被覆パターンの潜像を形成し、レジストを現像してレジスト層を形成した。すなわち、転写用凸部を形成するための第2被覆パターンは、ライン/スペースが40nmのライン状のレジスト層を有するものとした。また、測定用凸部を形成するための第1被覆パターンは、4個の50μm×100μmの平面視長方形からなり、各パターンは凸構造部の4方向に均等に位置し(図8参照)、各パターンの中心から凸構造部の壁面までの距離は500μmであり、凸構造部の最近傍に位置する第1被覆パターンまでの距離は450μmであった。さらに、面積率調整用凸部を形成するための第3被覆パターンは、5μm×10μmの平面視長方形とした。そして、図8に示されるように、250μm×300μmの平面視長方形からなる所定領域を、第1被覆パターンの短辺及び長辺のそれぞれから第1被覆パターンの外側に向かう方向であって、当該第1被覆パターンの短辺及び長辺のそれぞれに対して垂直方向に100μm離間した位置に所定領域の短辺及び長辺のそれぞれが位置するように設定し、当該所定領域に375個の第3被覆パターンを配した。これにより、凸構造部の上面全体の面積に対する第2被覆パターンの被覆面積率(50%)と、上記の所定領域に対する第1被覆パターン及び第3被覆パターンの合計被覆面積率(50%)との比は、1:1であった。
【0069】
次に、このレジスト層をマスクとして下記の条件でドライエッチングを行い、基材の凸構造部上面に転写用凸部が、基部の所定領域に測定用凸部及び面積率調整用凸部が形成された検量線作成用ナノインプリント用モールドを得た。
<ドライエッチング条件>
・CF4ガス流量:40sccm
・RIEパワー :400W
・圧力 :4Pa
【0070】
ドライエッチングの条件(エッチング時間)を変更して、形成される転写用凸部の高さがそれぞれ異なる5個の検量線作成用ナノインプリント用モールドを作製し、得られたナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さと測定用凸部の高さとをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定し、転写用凸部及び測定用凸部の高さの関係を示す検量線を最小二乗法により予め作成した。当該検量線を図14に示す。
【0071】
(高さ測定用ナノインプリント用モールドの製造)
目標とする転写用凸部の高さが40nmとなるようにドライエッチングの時間を38sに設定した以外は、上記検量線作成用ナノインプリント用モールドと同様にして、高さ測定用ナノインプリント用モールドを5個作製した。
【0072】
(高さ測定用ナノインプリント用モールドの凸部高さの測定)
上述のようにして得られた高さ測定用ナノインプリント用モールドにおける測定用凸部の高さをAFM(L−Trace,エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)にて測定し、当該測定値及び図14に示す検量線に基づいて、転写用凸部の高さを測定した。その結果、転写用凸部の高さは、39〜41nmと測定された。一方、この測定が完了した後、5個すべての高さ測定用ナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定したところ、検量線に基づいて測定した転写用凸部の高さとSEMにより測定した転写用凸部の高さとの差(絶対値)は、1nm以下であった。この結果、本実施例のようにして製造したナノインプリント用モールドによれば、測定用凸部の高さを測定することで、転写用凸部の高さを高精度で測定可能であることが判明した。
【0073】
〔実施例3〕
(検量線作成用ナノインプリント用モールドの製造)
厚み6.35mmの石英ガラス(65mm角)を検量線作成用ナノインプリント用モールド用基材として準備し、基材の一方の面にレジスト(SU−8 3000,化薬マイクロケム社製)を塗布した。次に、所望のマスクを介して露光し現像して、凸構造部に対応する部分にレジスト層(20mm角)を形成した。そして、このレジスト層をマスクとして基材をエッチングして、厚み6.33mmの基部と、この基部から突出した高さ20μmの凸構造部を形成した後、レジスト層を除去した。形成した凸構造部の壁面は、凸構造部の上面に対して垂直となっていた。
【0074】
このようにして得られた凸構造部及び基部を備える基材の凸構造部側表面にポジ型電子線レジスト(ZEP520A,日本ゼオン社製)を塗布し、電子線描画装置(JBX9300,日本電子社製)内のステージ上に基材の裏面(凸構造部側と反対側の面)がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、第1開口パターン、第2開口パターン及び第3開口パターンの潜像を形成し、レジストを現像してレジスト層を形成した。すなわち、転写用凹部を形成するための第2開口パターンは、ライン/スペースが40nmのライン状の開口を有するものとした。また、測定用凹部を形成するための第1開口パターンは、4個の50μm×100μmの平面視長方形からなり、各パターンは凸構造部の4方向に均等に位置し(図2参照)、各パターンの中心から凸構造部の壁面までの距離は500μmであり、凸構造部の最近傍に位置する第1開口パターンまでの距離は450μmであった。さらに、面積率調整用凹部を形成するための第3開口パターンは、5μm×10μmの平面視長方形とした。そして、図2に示されるように、250μm×300μmの平面視長方形からなる所定領域を、第1開口パターンの短辺及び長辺のそれぞれから第1開口パターンの外側に向かう方向であって、当該第1開口パターンの短辺及び長辺のそれぞれに対して垂直方向に100μm離間した位置に所定領域の短辺及び長辺のそれぞれが位置するように設定し、当該所定領域に375個の第3開口パターンを配した。これにより、凸構造部の上面全体の面積に対する第2開口パターンの開口面積率(50%)と、上記の所定領域に対する第1開口パターン及び第3開口パターンの合計開口面積率(50%)との比は、1:1であった。
【0075】
次に、このレジスト層をマスクとして下記の条件でドライエッチングを行い、基材の凸構造部上面に転写用凹部が、基部の所定領域に測定用凹部及び面積率調整用凹部が形成された検量線作成用ナノインプリント用モールドを得た。
<ドライエッチング条件>
・CF4ガス流量:40sccm
・RIEパワー :400W
・圧力 :4Pa
【0076】
ドライエッチングの条件(エッチング時間)を変更して、形成される転写用凹部の深さがそれぞれ異なる5個の検量線作成用ナノインプリント用モールドを作製し、得られたナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さと測定用凹部の深さとをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定し、転写用凹部及び測定用凹部の深さの関係を示す検量線を最小二乗法により予め作成した。当該検量線を図15に示す。
【0077】
(深さ測定用ナノインプリント用モールドの製造)
目標とする転写用凹部の深さが40nmとなるようにドライエッチングの時間を80sに設定した以外は、上記検量線作成用ナノインプリント用モールドと同様にして、深さ測定用ナノインプリント用モールドを5個作製した。
【0078】
(深さ測定用ナノインプリント用モールドの凹部深さの測定)
上述のようにして得られた5個の深さ測定用ナノインプリント用モールドにおける測定用凹部の深さを位相差計測装置にて実測し、当該測定値及び図15に示す検量線に基づいて、転写用凹部の深さを測定した。その結果、転写用凹部の深さは、39〜41nmと測定された。一方、この測定が完了した後、5個すべての深さ測定用ナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定したところ、検量線に基づいて測定した転写用凹部の深さとSEMにより測定した転写用凹部の深さとの差(絶対値)は、1nm以下であった。この結果、本実施例のようにして製造したナノインプリント用モールドによれば、測定用凹部の深さを測定することで、転写用凹部の深さを高精度で測定可能であることが判明した。
【0079】
〔実施例4〕
(検量線作成用ナノインプリント用モールドの製造)
厚み6.35mmの石英ガラス(65mm角)を検量線作成用ナノインプリント用モールド用基材として準備し、基材の一方の面にレジスト(SU−8 3000,化薬マイクロケム社製)を塗布した。次に、所望のマスクを介して露光し現像して、凸構造部に対応する部分にレジスト層(20mm角)を形成した。そして、このレジスト層をマスクとして基材をハーフエッチングして、厚み6.33mmの基部と、この基部から突出した高さ20μmの凸構造部を形成した後、レジスト層を除去した。形成した凸構造部の壁面は、凸構造部の上面に対して垂直となっていた。
【0080】
このようにして得られた凸構造部及び基部を備える基材の凸構造部側表面にネガ型電子線レジスト(HSQ)を塗布し、電子線描画装置(JBX9300,日本電子社製)内のステージ上に基材の裏面(凸構造部側と反対側の面)がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、第1被覆パターン、第2被覆パターン及び第3被覆パターンの潜像を形成し、レジストを現像してレジスト層を形成した。すなわち、転写用凸部を形成するための第2被覆パターンは、ライン/スペースが40nmのライン状のレジスト層を有するものとした。また、測定用凸部を形成するための第1被覆パターンは、4個の50μm×100μmの平面視長方形からなり、各パターンは凸構造部の4方向に均等に位置し(図8参照)、各パターンの中心から凸構造部の壁面までの距離は500μmであり、凸構造部の最近傍に位置する第1被覆パターンまでの距離は450μmであった。さらに、面積率調整用凸部を形成するための第3被覆パターンは、5μm×10μmの平面視長方形とした。そして、図8に示されるように、250μm×300μmの平面視長方形からなる所定領域を、第1被覆パターンの短辺及び長辺のそれぞれから第1被覆パターンの外側に向かう方向であって、当該第1被覆パターンの短辺及び長辺のそれぞれに対して垂直方向に100μm離間した位置に所定領域の短辺及び長辺のそれぞれが位置するように設定し、当該所定領域に375個の第3被覆パターンを配した。これにより、凸構造部の上面全体の面積に対する第2被覆パターンの被覆面積率(50%)と、上記の所定領域に対する第1被覆パターン及び第3被覆パターンの合計被覆面積率(50%)との比は、1:1であった。
【0081】
次に、このレジスト層をマスクとして下記の条件でドライエッチングを行い、基材の凸構造部上面に転写用凸部が、基部の所定領域に測定用凸部及び面積率調整用凸部が形成された検量線作成用ナノインプリント用モールドを得た。
<ドライエッチング条件>
・CF4ガス流量:40sccm
・RIEパワー :400W
・圧力 :4Pa
【0082】
ドライエッチングの条件(エッチング時間)を変更して、形成される転写用凸部の高さがそれぞれ異なる5個の検量線作成用ナノインプリント用モールドを作製し、得られたナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さと測定用凸部の高さとをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定し、転写用凸部及び測定用凸部の高さの関係を示す検量線を最小二乗法により予め作成した。当該検量線を図16に示す。
【0083】
(高さ測定用ナノインプリント用モールドの製造)
目標とする転写用凸部の高さが40nmとなるようにドライエッチングの時間を100sに設定した以外は、上記検量線作成用ナノインプリント用モールドと同様にして、高さ測定用ナノインプリント用モールドを5個作製した。
【0084】
(高さ測定用ナノインプリント用モールドの凸部高さの測定)
上述のようにして得られた5個の高さ測定用ナノインプリント用モールドにおける測定用凸部の高さを位相差計測装置にて実測し、当該実測値及び図16に示す検量線に基づいて、転写用凸部の高さを測定した。その結果、転写用凸部の高さは、39〜41nmと測定された。一方、この測定が完了した後、5個すべての高さ測定用ナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定したところ、検量線に基づいて測定した転写用凸部の高さとSEMにより測定した転写用凸部の高さとの差(絶対値)は、1nm以下であった。この結果、本実施例のようにして製造したナノインプリント用モールドによれば、測定用凸部の高さを測定することで、転写用凸部の高さを高精度で測定可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、ナノインプリント技術を用いた微細加工に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1,10…ナノインプリント用モールド
2…基部
21,211…凸構造部側平坦面
22…測定用凹部
221…測定用凸部
23…面積率調整用凹部
231…面積率調整用凸部
3…凸構造部
32…転写用凹部
321…転写用凸部
4…基材
S1,S2…所定領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に所望の線、模様等の図形を転写形成するナノインプリント用モールド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術として、近年ナノインプリント技術に注目が集まっている。ナノインプリント技術は、基材の表面に微細な凹凸構造を形成した型部材(モールド)を用い、凹凸構造を被加工物に転写することで微細凹凸構造を等倍転写するパターン形成技術である(特許文献1)。
このような微細凹凸構造を被加工物に等倍転写するために用いられるモールドは、その凹凸構造における凹部の深さ(凸部の高さ)が所望とする深さ(高さ)であることが要求されるため、作製されたモールドの深さ(高さ)を評価する必要がある。そして、当該凹部の深さ(凸部の高さ)を評価する方法として、原子間力顕微鏡(AFM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる方法、位相差計測装置を用いる方法、スキャトロメトリ法などが知られている。
これらの方法のうち、AFMを用いる方法は、カンチレバーと称される、一端に探針が設けられたプローブでモールド表面を走査することにより凹部の深さ(凸部の高さ)を計測することのできる非破壊的な方法であるが、凹凸構造の微細化により、プローブの探針が凹部の底面(凸部と凸部との間の底面)に到達することができず、凹部の深さ(凸部の高さ)の正確な計測が困難であるという問題がある。
【0003】
また、位相差計測装置を用いる方法は、モールド表面の凹凸構造に伴い、モールド表面に照射され、透過したレーザ光又は反射したレーザ光の位相差に基づいて凹部の深さ(凸部の高さ)を計測することのできる非破壊的な方法であるが、AFMを用いる方法と同様に、凹凸構造の微細化により、レーザ光の波長よりも凹部の短手方向長さ(凸部と凸部との間隙の長さ)が短くなると、レーザ光が凹部内に入射することができず、凹部の深さ(凸部の高さ)の正確な計測が困難であるという問題がある。上述のように、ナノインプリントモールドにおいては、その表面の微細な凹部(凸部)の深さ(高さ)を測定することが困難であるという問題がある。
このような問題を解決すべく、従来、モールドの表面に形成された微細な機能パターン(凹部)と同一平面上における当該機能パターンに隣接する位置に、当該微細な機能パターンと同一の深さを有し、AFM等の非破壊式測定装置により測定可能な計測用パターンを形成し、当該計測用パターンの深さを計測することにより間接的に微細な機能パターンの深さを計測し得るナノインプリント用モールドが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号
【特許文献2】特開2009−143089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載のモールドは、微細な機能パターンと同一平面上における当該機能パターンに近接した位置に計測用パターンが形成されているため、このモールドを用いてステップ・アンド・リピート法により機能パターンを繋ぎ合わせるようにして被加工物に転写し、連続性を有する一の転写パターンを被加工物上に形成しようとすると、被加工物上に不要な計測用パターンまでもが転写されてしまう、あるいは、不要な計測用パターンの存在により機能パターンの繋ぎ合わせが不可能となる場合があるという問題がある。
また、ステップ・アンド・リピート法により一の被加工物上に複数の転写パターンを順次形成する場合、上記特許文献2に記載のモールドを用いると、被加工物上に機能パターンとともに不要な計測用パターンも転写されてしまうため、モールドの送りピッチが大きくなり、被加工物に無駄が生じてしまうという問題がある。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、微細な転写用凹凸構造と、当該転写用凹凸構造の凹部の深さ(凸部の高さ)を正確に測定するための測定用凹凸構造とを備えているにもかかわらず、ステップ・アンド・リピート法により転写用凹凸構造のみを被加工物に転写することのできるナノインプリント用モールド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、基部と、当該基部の一方の面から突出してなる凸構造部とを備える基材における前記凸構造部に転写用凹部が形成され、前記凸構造部の周囲の前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凹部が形成されてなり、前記転写用凹部の深さと前記測定用凹部の深さとが所定の相関性を有するナノインプリント用モールドを製造する方法であって、前記基材の前記基部上及び前記凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成するマスク材料膜形成工程と、前記基部上のマスク材料膜に前記測定用凹部形成用の第1開口パターンを形成するパターン形成、及び前記凸構造部上のマスク材料膜に前記転写用凹部形成用の第2開口パターンを形成するパターン形成を行うパターン形成工程と、前記第1及び第2開口パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、前記基部における凸構造部側の面への測定用凹部の形成及び前記凸構造部への転写用凹部の形成を行うエッチング工程とを含み、前記測定用凹部の開口面の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凹部の深さを測定可能な長さであることを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法を提供する(発明1)。
【0007】
上記発明(発明1)においては、前記エッチング工程において、前記測定用凹部が形成される前記基部と前記転写用凹部が形成される前記凸構造部とを同時にエッチングすることが好ましい(発明2)。
上記発明(発明1,2)においては、前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面周端部における当該凸構造部上面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記第1開口パターンまでの距離をd1とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部上面までの高さをh1としたとき、d1≧h1となる前記凸構造部側の面における位置に、前記第1開口パターンを形成することが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1〜3)においては、前記パターン形成工程において、前記第1開口パターンを含む所定領域に面積率調整用凹部形成用の第3開口パターンを形成することが好ましい(発明4)。
上記発明(発明4)においては、前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面における前記第2開口パターンの開口面積率と、前記所定領域における前記第1及び第3開口パターンの合計開口面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように、前記第3開口パターンを形成することが好ましい(発明5)。
【0008】
また、本発明は、基部と、当該基部の一方の面から突出してなる凸構造部とを備える基材における前記凸構造部に転写用凸部が形成され、前記凸構造部の周囲の前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凸部が形成されてなり、前記転写用凸部の高さと前記測定用凸部の高さとが所定の相関性を有するナノインプリント用モールドを製造する方法であって、前記基材の前記基部上及び前記凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成するマスク材料膜形成工程と、前記基部上のマスク材料膜に前記測定用凸部形成用の第1被覆パターンを形成するパターン形成、及び前記凸構造部上のマスク材料膜に前記転写用凸部形成用の第2被覆パターンを形成するパターン形成を行うパターン形成工程と、前記第1及び第2被覆パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、前記基部における凸構造部側の面への測定用凸部の形成及び前記凸構造部への転写用凸部の形成を行うエッチング工程とを含むことを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法を提供する(発明6)。
【0009】
上記発明(発明6)においては、前記エッチング工程において、前記測定用凸部が形成される前記基部と前記転写用凸部が形成される前記凸構造部とを同時にエッチングすることが好ましい(発明7)。
上記発明(発明6,7)においては、前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面周端部における当該凸構造部上面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記第1被覆パターンまでの距離をd2とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部上面までの高さをh2としたとき、d2≧h2となる前記凸構造部側の面における位置に、前記第1被覆パターンを形成することが好ましい(発明8)。
上記発明(発明6〜8)においては、前記パターン形成工程において、前記第1被覆パターンを含む所定領域に面積率調整用凸部形成用の第3被覆パターンを形成することが好ましい(発明9)。
【0010】
上記発明(発明9)においては、前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面における前記第2被覆パターンの被覆面積率と、前記所定領域における前記第1及び第3被覆パターンの合計被覆面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように、前記第3被覆パターンを形成することが好ましい(発明10)。
上記発明(発明9,10)においては、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能なように、前記所定領域に前記第3被覆パターンを形成することが好ましい(発明11)。
上記発明(発明9〜11)においては、前記第1被覆パターンの最近傍に位置する前記第3被覆パターンと、当該第1被覆パターンとの距離が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な距離であることが好ましい(発明12)。
【0011】
さらに、本発明は、基部と、当該基部の一方の面から突出する凸構造部とを備えるナノインプリント用モールドであって、前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凹部を有し、前記凸構造部の上面に転写用凹部を有しており、前記転写用凹部の深さと前記測定用凹部の深さとが、所定の相関性を有し、前記測定用凹部の開口面の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凹部の深さを測定可能な長さであることを特徴とするナノインプリント用モールドを提供する(発明13)。
【0012】
上記発明(発明13)においては、前記凸構造部の最上面を含む平面と当該凸構造部の側壁面との交線における当該凸構造部の最上面を含む平面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記測定用凹部までの距離をD1とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部の最上面を含む平面までの高さをH1としたとき、D1≧H1であることが好ましい(発明14)。
上記発明(発明13,14)においては、前記測定用凹部を含む所定領域に面積率調整用凹部を有することが好ましい(発明15)。
上記発明(発明15)においては、前記凸構造部上面における前記転写用凹部の開口面の面積率と、前記所定領域における前記測定用凹部及び前記面積率調整用凹部の開口面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1であることが好ましい(発明16)。
【0013】
さらにまた、本発明は、基部と、当該基部の一方の面から突出する凸構造部とを備えるナノインプリント用モールドであって、前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凸部を有し、前記凸構造部の上面に転写用凸部を有しており、前記転写用凸部の高さと前記測定用凸部の高さとが、所定の相関性を有することを特徴とするナノインプリント用モールドを提供する(発明17)。
【0014】
上記発明(発明17)においては、前記転写用凸部の上端面を含む平面と前記凸構造部の側壁面を含む平面との交線における当該転写用凸部の上端面を含む平面に対する垂線と前記測定用凸部の上端面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記測定用凸部までの距離をD2とし、前記測定用凸部の上端面を含む平面から前記転写用凸部の上端面を含む平面までの高さをH2としたとき、D2≧H2であることが好ましい(発明18)。
上記発明(発明17,18)においては、前記測定用凸部を含む所定領域に面積率調整用凸部を有していることが好ましい(発明19)。
上記発明(発明19)においては、前記凸構造部上面における前記転写用凸部の上端面の面積率と、前記所定領域における前記測定用凸部及び前記面積率調整用凸部の上端面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1であることが好ましい(発明20)。
上記発明(発明19,20)においては、前記面積率調整用凸部が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な箇所に位置していることが好ましい(発明21)。
上記発明(発明19〜21)においては、前記測定用凸部の最近傍に位置する前記面積率調整用凸部と、当該測定用凸部との距離が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な距離であることが好ましい(発明22)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、微細な転写用凹凸構造と、当該転写用凹凸構造の凹部の深さ(凸部の高さ)を正確に測定するための測定用凹凸構造とを備えているにもかかわらず、ステップ・アンド・リピート法により転写用凹凸構造のみを被加工物に転写することのできるナノインプリント用モールド及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す部分拡大断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造工程(その1)を示す工程フロー図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造過程における基材の部分拡大断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造工程(その2)を示す工程フロー図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す平面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドを示す部分拡大断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造工程(その1)を示す工程フロー図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造過程における基材の部分拡大断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用モールドの製造工程(その2)を示す工程フロー図である。
【図13】実施例1において作成した検量線を示すグラフである。
【図14】実施例2において作成した検量線を示すグラフである。
【図15】実施例3において作成した検量線を示すグラフである。
【図16】実施例4において作成した検量線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔第1の実施形態〕
[ナノインプリント用モールド]
第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1の断面図を図1に示す。図1に示すように、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1は、基部2と、基部2の一方の面から突出してなる凸構造部3とを備える基材4からなる。
ナノインプリント用モールド1を構成する基材4の材料としては、例えば、シリコン等の半導体材料、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。また、基材4の厚みは、被加工物の材質、凸構造部3の高さ、基材4の強度、取り扱い適性等を考慮して設定されることができ、例えば、300μm〜7mm程度の範囲で適宜設定されることができる。
【0018】
基部2及び凸構造部3の形状としては、例えば、平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、両者の形状は、同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよく、例えば、基部2及び凸構造部3の形状がともに平面視略円形状であってもよいし、基部2の形状が平面視略円形状であって凸構造部3の形状が平面視略方形状であってもよい。
凸構造部3の高さ(基部2の凸構造部側平坦面21から凸構造部3の最上面31までの高さ)は、凸構造部3の最上面31に形成されている転写用凹部32の微細凹凸構造を被加工物に転写する際に、基部2の凸構造部側平坦面21が当該被加工物に接触しない程度に適宜設定されていればよく、一般に、凸構造部3の高さは、被加工物の樹脂層の膜厚よりも高く設定されていればよい。
【0019】
また、凸構造部3の高さは、基部2の高さが0.5mm以上となるように設定されるのが好ましい。基部2の高さが0.5mm未満となると、被加工物への転写用凹部32の微細凹凸構造の転写時に耐え得る十分な強度を確保するのが困難となるおそれがある。特に、凸構造部3の高さは25μm以下であるのが好ましい。凸構造部3の高さが25μm以下であれば、後述するナノインプリント用モールド1の製造工程において、測定用凹部22及び転写用凹部32のそれぞれを形成するための第1開口パターン53及び第2開口パターン54を電子線描画により形成する際に、基部2の凸構造部側平坦面21及び凸構造部3の双方において焦点をあわせやすくなるという効果を併せ持つ。
【0020】
このナノインプリント用モールド1において、凸構造部3の最上面31には転写用凹部32が形成されているとともに、凸構造部3の周囲の基部2における凸構造部側平坦面21には測定用凹部22が形成されている。転写用凹部32が形成されている面(凸構造部3の最上面31)よりも図1中における鉛直方向の高さの低い位置に測定用凹部22が形成されていることで、ナノインプリント用モールド1を用いてステップ・アンド・リピート法により転写用凹部32の凹凸構造を被加工物に連続して転写する際に、測定用凹部22の凹凸構造がともに転写されることがないため、被加工物上に不要な凹凸構造までもが転写されることがなく、また、ナノインプリント用モールド1の送りピッチを小さくすることができ、被加工物に無駄が生じることがない。
凸構造部3の最上面31に形成されている転写用凹部32の形状としては、スペース状凹部、ホール状凹部等を例示することができるが、これらに限定されるものではなく、平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等の形状を採用することができる。なお、スペース状凹部とは、凹部の開口面における長手方向長さが、短手方向長さの2倍以上の凹部を意味し、ホール状凹部とは、凹部の開口面における長手方向長さが、短手方向長さの2倍未満の凹部を意味するものとする。
【0021】
また、転写用凹部32の短手方向長さは、特に限定されるものではなく、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて当該転写用凹部32の深さを測定し得ない長さ(非破壊式測定装置の種類によって異なるが、例えば、100nm未満、50nm未満、30nm未満、20nm未満等)であってもよいし、当該転写用凹部32の深さを測定し得る長さであってもよい。なお、本実施形態において、転写用凹部32の形状が平面視円形状である場合の短手方向長さとは、当該円の直径を意味し、平面視略楕円形状である場合には当該略楕円の短径を意味する。
なお、転写用凹部32の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて当該転写用凹部32の深さを測定し得る長さである場合、ナノインプリント用モールド1に測定用凹部22を形成しなくても、転写用凹部32の深さを直接測定すればよいとも考えられるが、AFM等の非破壊式測定装置を用いて転写用凹部32の深さを直接測定すると、転写用凹部32表面に異物が付着したり、転写用凹部32表面に傷が付いたりするおそれがある。そのため、このような場合であっても、測定用凹部22の深さを測定するのが好ましい。
【0022】
測定用凹部22の形状としては、転写用凹部32と同様に平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等の形状を採用することができるが、凸構造部3上に形成されている転写用凹部32と略相似形状であるのが好ましく、相似形状であるのが特に好ましい。転写用凹部32と測定用凹部22とが略相似形状又は相似形状であれば、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの相関性が極めて高くなり、より高精度で転写用凹部32の深さを測定することができる。
【0023】
図2に示すように、測定用凹部22の短手方向長さWは、非破壊式測定装置を用いて当該測定用凹部22の深さを測定し得る長さである限り特に限定されるものではないが、100nm以上であるのが好ましい。また、測定用凹部22は、基部2における凸構造部側平坦面21に少なくとも1つ形成されていればよいが、複数の測定用凹部22が形成されているのが好ましい。複数の測定用凹部22が形成されていることで、測定用凹部22の深さに基づく転写用凹部32の深さの測定精度を向上させることができる。例えば、図2に示すように、測定用凹部22は、凸構造部3を略均等に取り囲むようにして4箇所に位置させることができる。
【0024】
測定用凹部22は、基部2における凸構造部側平坦面21に形成されていればよいが、図3に示すように、凸構造部3の最上面31を含む平面33と凸構造部3の側壁面34との交線35における上記平面33に対する垂線L1と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点P1から当該交点P1の最近傍に位置する測定用凹部22までの距離をD1とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の最上面31を含む平面33までの高さをH1としたとき、D1≧H1となる位置に形成されているのが好ましい。
上記測定用凹部22を含む所定領域には、面積率調整用凹部23がさらに形成されているのが好ましい。具体的には、基部2における一の測定用凹部22の開口面周縁部から外側に向かう方向であって、当該開口面周縁部の接線に対する垂直方向10μm〜5mm以内、好ましくは100μm〜1mm以内の所定領域S1に面積率調整用凹部23が形成されているのが好ましい(図2参照)。
【0025】
この面積率調整用凹部23は、凸構造部3の上面全体の面積に対する全転写用凹部32の開口面の面積率と上記所定領域S1の面積に対する測定用凹部22及び面積率調整用凹部23の開口面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1となるように、上記所定領域S1に形成されているのが好ましい。両者の面積率の比が上記範囲内であれば、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの相関性を極めて高くすることができ、より高精度で転写用凹部32の深さを測定することができる。なお、所定領域S1における面積率調整用凹部23の数は特に限定されるものではない。
なお、基部2における凸構造部側平坦面21に複数の測定用凹部22が形成されている場合、一の測定用凹部22の所定領域S1に他の測定用凹部22が形成されない限り、一の測定用凹部22の所定領域S1と他の測定用凹部22の所定領域S1とが重なり合うように設定されていてもよい。
【0026】
上記第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1によれば、転写用凹部32が形成されている凸構造部3と異なる面(基部2)上に測定用凹部22が形成されているため、当該モールド1を被加工物に押圧して転写用凹部32の微細凹凸構造を転写する際に、測定用凹部22の凹凸構造が転写されることがない。そのため、ステップ・アンド・リピート法により転写用凹部32の微細凹凸構造を繋ぎ合わせるようにして被加工物に転写し、連続性を有する一の転写パターンを被加工物上に形成する際に、被加工物上に不要な測定用凹部22の凹凸構造までもが転写されることがなく、また、ステップ・アンド・リピート法により一の被加工物上に複数の転写パターンを順次形成する場合、被加工物上に転写用凹部32の微細凹凸構造のみが転写され、不要な測定用凹部22の凹凸構造は転写されないため、ナノインプリント用モールド1の送りピッチを小さくすることができ、被加工物に無駄が生じることがない。
【0027】
[ナノインプリント用モールドの製造方法(その1)]
次に、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1の製造方法について説明する。図4は、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)を示す工程フロー図である。
まず、平板状の基材4を用意し、当該基材4の一方の面に感光性レジスト膜(ポジ型レジスト膜又はネガ型レジスト膜)5を形成する(図4(A))。基材4への感光性レジスト膜5の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、スプレーコーター、スピンコーター等の塗工機を用いた従来公知の塗布(塗工)方法等が挙げられる。
このようにして基材4上に形成された感光性レジスト膜(図示例ではネガ型レジスト膜)5に対して所望のマスクを介して露光し(図4(B))、その後現像して凸構造部3に対応する部位にのみ感光性レジスト膜5が残存するレジスト層51を形成する(図4(C))。
【0028】
このようにして形成されたレジスト層51をマスクとして異方性エッチングを行い(図4(D))、残存するレジスト層51を剥離することにより、基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を得ることができる(図4(E))。レジスト層51の剥離方法としては、レジスト剥離液を噴霧する方法、レジスト剥離液に浸漬する方法、酸素プラズマによりアッシングする方法等を用いることができ、レジスト剥離液としては、例えば、アセトン等の溶剤、硫酸過水、レジスト専用の剥離液等を使用することができる。なお、レジスト層51を形成した後の工程において、レジスト層51の硬化が進行した場合、レジスト剥離液を用いた剥離を行う前に、レジスト層51に対して加熱処理、超音波処理を施すことが好ましい。
続いて、凸構造部3側の基材4上にポジ型電子線レジスト膜52を形成し(図4(F))、電子線描画により測定用凹部22、転写用凹部32及び面積率調整用凹部23のそれぞれを形成するための第1開口パターン53、第2開口パターン54及び第3開口パターン55の潜像を形成し(図4(G))、現像してエッチングレジスト層56を形成する(図4(H))。
【0029】
第1開口パターン53は、測定用凹部22が形成される所望の位置に対応するようにして形成される。具体的には、図5に示すように、凸構造部3の上面周端部35における凸構造部3の上面31に対する垂線l1と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点p1から当該交点p1の最近傍に位置する第1開口パターン53までの距離をd1とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の上面31までの高さをh1としたとき、d1≧h1となる凸構造部側平坦面21における位置に、第1開口パターン53を形成するのが好ましい。当該位置よりも凸構造部3側に近づいた位置に第1開口パターン53を形成すると、凸構造部3の存在が、測定用凹部22を形成する際のエッチングに影響を与え、測定用凹部22の深さと転写用凹部32の深さとの相関性を低下させるおそれがある。
また、第3開口パターン55は、第1開口パターン53を含む所定領域に形成されているのが好ましく、凸構造部3上面全体の面積に対する第2開口パターン54の開口面積率と、当該所定領域の面積に対する第1開口パターン53及び第3開口パターン55の合計開口面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように形成されているのがより好ましい。両者の開口面積率の比を上記範囲内とすれば、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとを極めて相関性の高いものとすることができる。なお、第1開口パターン53及び第3開口パターン55が形成される所定領域とは、測定用凹部22及び面積率調整用凹部23が形成される所定領域S1(図2参照)に対応するエッチングレジスト層56における領域を意味する。
【0030】
このようにして形成されたエッチングレジスト層56をマスクとして基部2と凸構造部3とを同時にドライエッチングする(図4(I))。このドライエッチングは、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等の公知のドライエッチングから、基材4の材質を考慮して、使用するエッチングガスとともに適宜選択することができ、例えば、基材4がシリコンやガラスの場合、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチングによりドライエッチングすることができる。かかるドライエッチング後、エッチングレジスト層56を除去することにより、凸構造部3上に転写用凹部32が形成され、基部2の所定領域S1に測定用凹部22及び面積率調整用凹部23が形成されてなるナノインプリント用モールド1を得ることができる(図4(J))。
【0031】
上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)によれば、転写用凹部32と測定用凹部22とが同時にエッチングされることで形成されるため、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの相関性を極めて高いものとすることができる。そのため、得られたナノインプリント用モールド1の測定用凹部22の深さを、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて実測することにより、高精度で転写用凹部32の深さを測定することができる。
上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)においては(図4)、基部2の一方の面から突出してなる凸構造部3を備える基材4を作製した後(図4(E))、当該基材4の凸構造部側表面にハードマスクを成膜し、ハードマスク上にポジ型電子線レジスト膜を形成し、電子線描画により測定用凹部22、転写用凹部32及び面積率調整用凹部23のそれぞれを形成するための第1開口パターン、第2開口パターン及び第3開口パターンの潜像を形成し、現像してエッチングレジスト層を形成し、形成されたエッチングレジスト層をマスクとしてハードマスクをドライエッチングし、エッチングされたハードマスクを介して基部2及び凸構造部3を同時にエッチングするようにしてもよい。
【0032】
[ナノインプリント用モールドの製造方法(その2)]
第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1は、後述する方法により製造することもできる。図6は、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)を示す工程フロー図である。
まず、図4(A)〜(E)に示すようにして基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を作製する。平板状の基材4を用意し、当該基材4の一方の面に感光性レジスト膜(ポジ型レジスト膜又はネガ型レジスト膜)5を形成する(図4(A))。基材4への感光性レジスト膜5の形成は、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。
【0033】
このようにして基材4上に形成された感光性レジスト膜(図示例ではネガ型レジスト膜)5に対して所望のマスクを介して露光し(図4(B))、その後現像して凸構造部3に対応する部位にのみ感光性レジスト膜5が残存するレジスト層51を形成する(図4(C))。このようにして形成されるレジスト層51の厚みは、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)と同様にすればよい。
このようにして形成されたレジスト層51をマスクとしてエッチングし(図4(D))、残存するレジスト層51を剥離することにより、基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を得ることができる(図4(E))。レジスト層51の剥離は、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。なお、レジスト層51を形成した後の工程において、レジスト層51の硬化が進行した場合、レジスト剥離液を用いた剥離を行う前に、レジスト層51に対して加熱処理、超音波処理を施すことが好ましい。
【0034】
続いて、図6に示すように、凸構造部3側の基材4上にポジ型電子線レジスト膜52を形成し(図6(F))、電子線描画により測定用凹部22及び面積率調整用凹部23のそれぞれを形成するための第1開口パターン53及び第3開口パターン55の潜像を形成し(図6(G))、現像して第1のエッチングレジスト層57を形成するとともに、凸構造部3を露出させる(図6(H))。
【0035】
第1開口パターン53は、測定用凹部22が形成される所望の位置に対応するようにして形成される。具体的には、図5を参照して説明した上述の製造方法(その1)と同様であり、凸構造部3の上面周端部35における凸構造部3の上面31に対する垂線l1と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点p1から、当該交点p1の最近傍に位置する第1開口パターン53までの距離をd1とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の上面31までの高さをh1としたとき、d1≧h1となる凸構造部側平坦面21における位置に、第1開口パターン53を形成するのが好ましい。当該位置よりも凸構造部3側に近づいた位置に第1開口パターン53を形成すると、後述するように基部2及び凸構造部3を同時にエッチングして測定用凹部22及び転写用凹部32を形成したとしても、凸構造部3の存在が、測定用凹部22を形成する際のエッチングに影響を与え、測定用凹部22の深さと転写用凹部32の深さとの相関性を低下させるおそれがある。
【0036】
また、第3開口パターン55は、第1開口パターン53を含む所定領域に形成されているのが好ましく、凸構造部3上面全体の面積に対する第2開口パターン54の開口面積率と、当該所定領域の面積に対する第1開口パターン53及び第3開口パターン55の合計開口面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように形成されているのがより好ましい。両者の開口面積率の比を上記範囲内とすれば、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとを極めて相関性の高いものとすることができる。なお、第1開口パターン53及び第3開口パターン55が形成される所定領域とは、測定用凹部22及び面積率調整用凹部23が形成される所定領域S1(図2参照)に対応する第1のエッチングレジスト層57における領域を意味する。
そして、基部2上の第1のエッチングレジスト層57及び凸構造部3上を被覆するようにしてネガ型電子線レジスト膜58を形成し(図6(I))、電子線描画により転写用凹部32を形成するための第2開口パターン54の潜像を形成し(図6(J))、現像して第2のエッチングレジスト層59を形成する(図6(K))。
このようにして形成された第1及び第2のエッチングレジスト層57,59をマスクとして基部2及び凸構造部3を同時にドライエッチングする(図6(L))。このドライエッチングは、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。かかるドライエッチング後、第1及び第2のエッチングレジスト層57,59を除去することにより、凸構造部3上に転写用凹部32が形成され、基部2の所定領域S1に測定用凹部22及び面積率調整用凹部23が形成されてなるナノインプリント用モールド1を得ることができる(図6(M))。
【0037】
上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)によれば、転写用凹部32と測定用凹部22とが同時にエッチングされることで形成されるため、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの相関性を極めて高いものとすることができる。そのため、得られたナノインプリント用モールド1の測定用凹部22の深さを、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて実測することにより、高精度で転写用凹部32の深さを測定することができる。
上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)において、第1のエッチングレジスト層57をポジ型電子線レジストにて形成し、第2のエッチングレジスト層59をネガ型電子線レジストにて形成しているが、これに限定されるものではなく、第1のエッチングレジスト層57をネガ型電子線レジストにて形成し、第2のエッチングレジスト層59をポジ型電子線レジストにて形成してもよい。
また、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)において、電子線描画により第1開口パターン53及び第3開口パターン55の潜像を形成し、第1のエッチングレジスト層57を形成しているが(図6(F)〜(H))、ポジ型感光性レジスト又はネガ型感光性レジストを用い、所望のフォトマスクを介したプロキシミティ露光を行い、その後現像して第1のエッチングレジスト層57を形成してもよい。
【0038】
さらに、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)において、電子線描画により転写用凹部32を形成するための第2開口パターン54の潜像を形成し、第2のエッチングレジスト層59を設けているが、凸構造部3上面に自己組織化膜を形成することにより転写用凹部32を形成するための第2開口パターン54を形成し、第2のエッチングレジスト層59を設けてもよい。具体的には、以下のようにして第2開口パターン54を形成することができる。
基部2の凸構造部側平坦面21上に形成された第1のエッチングレジスト層57上に保護膜を形成した後、凸構造部3の上面31にポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロックコポリマーを含む組成物膜を形成し、熱又は溶媒雰囲気等でアニール処理する。これにより、PMMAがシリンダー状に相分離した自己組織化膜が凸構造部3上に形成される。その後、O2プラズマ処理等を施してPMMA相をエッチングすることにより、転写用凹部32を形成するための第2開口パターン54を有する自己組織化マスクを第2のエッチングレジスト層59として凸構造部3上面31に形成することができる。
【0039】
[ナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さ測定]
上述のようにして製造されたナノインプリント用モールド1は、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとが極めて高い相関性を有するものとなっている。そのため、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとの関係を示す検量線を予め作成しておけば、転写用凹部32の深さの測定対象たるナノインプリント用モールド1における測定用凹部22の深さを非破壊式測定装置(AFM、位相差計測装置等)にて実測することで、予め作成された検量線に基づいて転写用凹部32の深さを正確に測定することができる。
具体的には、ドライエッチング条件(ドライエッチング時間等)を変更することにより転写用凹部32(測定用凹部22)の深さがそれぞれ異なる複数の検量線作成用モールドをすべて同一の方法(例えば、上述したいずれか1つの製造方法)により作製し、転写用凹部32の深さと測定用凹部22の深さとをSEM等にて測定し、得られた各測定値に基づいて予め検量線を作成する。そして、所望の深さの転写用凹部32を設けるための所定のドライエッチング条件で作製したナノインプリント用モールド1について、当該モールド1の測定用凹部22の深さをAFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置にて実測する。そして当該実測値と検量線とから、当該モールド1の転写用凹部32の深さを算出する。このようにして、ナノインプリント用モールド1の転写用凹部32の深さを高精度で測定することができ、したがって、高精度のモールドを作製することができるとともに、何らかの理由で転写用凹部32の深さが設定値から外れた場合には、そのようなモールドを確実に検出することができる。
【0040】
〔第2の実施形態〕
[ナノインプリント用モールド]
第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10の断面図を図7に示す。なお、第1の実施形態に係るナノインプリント用モールド1と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10において、凸構造部3の高さ(基部2における測定用凸部221の上端面を含む平面から凸構造部3における転写用凸部321の上端面を含む平面までの高さ)は、凸構造部3の上面311に形成されている転写用凸部321の微細凹凸構造を被加工物に転写する際に、基部2の凸構造部側平坦面211に形成されている測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が当該被加工物に接触しない程度に適宜設定されていればよく、一般に、凸構造部3の高さは、被加工物の樹脂層の膜厚よりも高く設定されていればよい。
【0041】
また、凸構造部3の高さは、基部2の高さが0.5mm以上となるように設定されるのが好ましい。基部2の高さが0.5mm未満となると、被加工物への転写用凸部321の微細凹凸構造の転写時に耐え得る十分な強度を確保するのが困難となるおそれがある。特に、凸構造部3の高さは25μm以下であるのが好ましい。凸構造部3の高さが25μm以下であれば、後述するナノインプリント用モールド10の製造工程において、測定用凸部221及び転写用凸部321のそれぞれを形成するための第1被覆パターン531及び第2被覆パターン541を電子線描画により形成する際に、基部2の凸構造部側平坦面211及び凸構造部3の双方において焦点をあわせやすくなるという効果を併せ持つ。
図7に示すように、第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10において、凸構造部3の上面311に転写用凸部321が形成されているとともに、凸構造部3の周囲の基部2における凸構造部側平坦面211に測定用凸部221が形成されている。転写用凸部321が形成されている面(凸構造部3の上面311)よりも図7中における鉛直方向の高さの低い位置に測定用凸部221が形成されていることで、ナノインプリント用モールド10を用いてステップ・アンド・リピート法により転写用凸部321の凹凸構造を被加工物に連続して転写する際に、測定用凸部221の凹凸構造がともに転写されることがないため、被加工物上に不要な凹凸構造までもが転写されることがなく、また、ナノインプリント用モールド1の送りピッチを小さくすることができ、被加工物に無駄が生じることがない。
【0042】
凸構造部3の上面311に形成されている転写用凸部321の形状としては、ライン状凸部、ピラー状凸部等を例示することができるが、これらに限定されるものではなく、平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等の形状を採用することができる。なお、ライン状凸部とは、凸部の上端面における長手方向長さが、短手方向長さの2倍以上の凸部を意味し、ピラー状凸部とは、凸部の上端面における長手方向長さが、短手方向長さの2倍未満の凸部を意味するものとする。
凸構造部3の上面311に転写用凸部321が複数形成される場合、当該複数の転写用凸部321間の距離は特に限定されるものではなく、各転写用凸部321間の距離が、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて当該転写用凸部321の高さを測定し得ない距離(すなわち、一の転写用凸部321の周囲の凸構造部3上の面311にAFMの探針が接触し得ない程度に、又は一の転写用凸部321の周囲の凸構造部3上の面311にレーザ光が到達し得ない程度に他の転写用凸部321が近接している場合、非破壊式測定装置の種類によって異なるが、例えば、100nm未満、50nm未満、30nm未満、20nm未満等)であってもよいし、当該転写用凸部321の高さを測定し得る距離であってもよい。
【0043】
なお、各転写用凸部321間の距離が、非破壊式測定装置を用いて当該転写用凸部321の高さを測定し得る距離である場合、ナノインプリント用モールド10に測定用凸部221を形成しなくても、転写用凸部321の高さを直接測定すればよいとも考えられるが、AFM等の非破壊式測定装置を用いて転写用凸部321の高さを直接測定すると、転写用凸部321表面に異物が付着したり、転写用凸部321表面に傷が付いたりするおそれがある。そのため、このような場合であっても、測定用凸部221にて高さを測定するのが好ましい。
測定用凸部221の形状としては、転写用凸部321と同様に平面視略円形状、平面視略楕円形状、平面視略方形状(正方形、長方形等)等の形状を採用することができるが、凸構造部3上に形成されている転写用凸部321と略相似形状であるのが好ましく、相似形状であるのが特に好ましい。転写用凸部321と測定用凸部221とが略相似形状又は相似形状であれば、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとの相関性が極めて高くなり、より高精度で転写用凸部321の高さを測定することができる。
【0044】
また、測定用凸部221は、基部2における凸構造部側平坦面211に少なくとも1つ形成されていればよいが、複数の測定用凸部221が形成されているのが好ましい。複数の測定用凸部221が形成されていることで、測定用凸部221の高さに基づく転写用凸部321の高さの測定精度を向上させることができる。例えば、図8に示すように、測定用凸部221は、凸構造部3を略均等に取り囲むようにして4箇所に位置することができる。
測定用凸部221は、基部2における凸構造部側平坦面211に形成されていればよいが、図9に示すように、転写用凸部321の上端面を含む平面331と凸構造部3の側壁面34を含む平面341との交線351における上記平面331に対する垂線L4と測定用凸部221の上端面を含む平面241との交点P2から当該交点P2の最近傍に位置する測定用凸部221までの距離をD2とし、測定用凸部221の上端面を含む平面241から転写用凸部321の上端面を含む平面331までの高さをH2としたとき、D2≧H2となる位置に形成されているのが好ましい。
【0045】
上記測定用凸部221を含む所定領域には、面積率調整用凸部231がさらに形成されているのが好ましい。具体的には、基部2における一の測定用凸部221の上端面周縁部から外側に向かう方向であって、当該周縁部の接線に対する垂直方向10μm〜5mm以内、好ましくは100μm〜1mm以内の所定領域S2に面積率調整用凸部231が形成されているのが好ましい(図8参照)。
この面積率調整用凸部231は、凸構造部3の上面全体の面積に対する全転写用凸部321の上端面の面積率と上記所定領域S2の面積に対する測定用凸部221及び面積率調整用凸部231の上端面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1となるように、上記所定領域S2に形成されているのが好ましい。両者の面積率の比が上記範囲内であれば、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとの相関性を極めて高くすることができる。なお、所定領域S2における面積率調整用凸部231の数は特に限定されるものではない。
なお、基部2における凸構造部側平坦面211に複数の測定用凸部221が形成されている場合、一の測定用凸部221の所定領域S2に他の測定用凸部221が形成されない限り、一の測定用凸部221の所定領域S2と他の測定用凸部221の所定領域S2とが重なり合うように設定されていてもよい。
【0046】
上記第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10によれば、転写用凸部321が形成されている凸構造部3と異なる面(基部2)上に測定用凸部221が形成されているため、当該モールド10を被加工物に押圧して転写用凸部321の微細凹凸構造を転写する際に、測定用凸部221の凹凸構造が転写されることがない。そのため、ステップ・アンド・リピート法により転写用凸部321の微細凹凸構造を繋ぎ合わせるようにして被加工物に転写し、連続性を有する一の転写パターンを被加工物上に形成する際に、被加工物上に不要な測定用凸部221の凹凸構造までもが転写されることがなく、また、ステップ・アンド・リピート法により一の被加工物上に複数の転写パターンを順次形成する場合、被加工物上に転写用凸部321の微細凹凸構造のみが転写され、不要な測定用凸部221の凹凸構造が転写されないため、ナノインプリント用モールド10の送りピッチを小さくすることができ、被加工物に無駄が生じることがない。
【0047】
[ナノインプリント用モールドの製造方法(その1)]
次に、第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10の製造方法について説明する。図10は、第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)を示す工程フロー図である。
まず、図4(A)〜(E)に示すようにして基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を作製する。平板状の基材4を用意し、当該基材4の一方の面に感光性レジスト膜(ポジ型レジスト膜又はネガ型レジスト膜)5を形成する(図4(A))。基材4への感光性レジスト膜5の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スプレーコーター、スピンコーター等の塗工機を用いた従来公知の塗布(塗工)方法等が挙げられる。
このようにして基材4上に形成された感光性レジスト膜(図示例ではネガ型レジスト膜)5に対して所望のマスクを介して露光し(図4(B))、その後現像して凸構造部3に対応する部位にのみ感光性レジスト膜5が残存するレジスト層51を形成する(図4(C))。
【0048】
このようにして形成されたレジスト層51をマスクとして異方性エッチングを行い(図4(D))、残存するレジスト層51を剥離することにより、基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を得ることができる(図4(E))。レジスト層51の剥離方法としては、レジスト剥離液を噴霧する方法、レジスト剥離液に浸漬する方法、酸素プラズマによりアッシングする方法等を用いることができ、レジスト剥離液としては、例えば、アセトン等の溶剤、硫酸過水、レジスト専用の剥離液等を使用することができる。なお、レジスト層51を形成した後の工程において、レジスト層51の硬化が進行した場合、レジスト剥離液を用いた剥離を行う前に、レジスト層51に対して加熱処理、超音波処理を施すことが好ましい。
【0049】
続いて、図10に示すように、凸構造部3側の基材4上にネガ型電子線レジスト膜521を形成し(図10(F))、電子線描画により測定用凸部221、転写用凸部321及び面積率調整用凸部231のそれぞれを形成するための第1被覆パターン531、第2被覆パターン541及び第3被覆パターン551の潜像を形成し(図10(G))、現像してエッチングレジスト層561を形成する(図10(H))。
第1被覆パターン531は、測定用凸部221が形成される所望の位置に対応するようにして形成される。具体的には、図11に示すように、凸構造部3の上面周端部35における凸構造部3の上面31に対する垂線l2と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点p2から、当該交点p2の最近傍に位置する第1被覆パターン531までの距離をd2とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の上面31までの高さをh2としたとき、d2≧h2となる凸構造部側平坦面21における位置に、第1被覆パターン531を形成するのが好ましい。当該位置よりも凸構造部3側に近づいた位置に第1被覆パターン531を形成すると、凸構造部3の存在が、測定用凸部221を形成する際のエッチングに影響を与え、測定用凸部221の高さと転写用凸部321の高さとの相関性を低下させるおそれがある。
【0050】
また、第3被覆パターン551は、第1被覆パターン531を含む所定領域に形成されているのが好ましく、凸構造部3上面全体の面積に対する第2被覆パターン541の被覆面積率と、当該所定領域の面積に対する第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551の合計被覆面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように形成されているのがより好ましい。両者の被覆面積率の比を上記範囲内とすれば、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとを極めて相関性の高いものとすることができる。なお、第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551が形成される所定領域とは、測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が形成される所定領域S2(図8参照)に対応するエッチングレジスト層561における領域を意味する。
【0051】
このようにして形成されたエッチングレジスト層561をマスクとして基部2と凸構造部3とを同時にドライエッチングする(図10(I))。このドライエッチングは、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等の公知のドライエッチングから、基材4の材質を考慮して、使用するエッチングガスとともに適宜選択することができ、例えば、基材4がシリコンやガラスの場合、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチングによりドライエッチングすることができる。かかるドライエッチング後、エッチングレジスト層561を除去することにより、凸構造部3上に転写用凸部321が形成され、基部2の所定領域S2に測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が形成されてなるナノインプリント用モールド10を得ることができる(図10(J))。
上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)によれば、転写用凸部321と測定用凸部221とが同時エッチングにより形成されるため、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとが極めて高い相関性を有することになる。そのため、得られたナノインプリント用モールド10の測定用凸部221の高さを、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて実測することにより、高精度で転写用凸部321の高さを測定することができる。
【0052】
上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)においては(図10)、基部2の一方の面から突出してなる凸構造部3を備える基材4を作製した後(図10(E))、当該基材4の凸構造部側表面にハードマスクを成膜し、ハードマスク上にネガ型電子線レジスト膜を形成し、電子線描画により測定用凸部221、転写用凸部321及び面積率調整用凸部231のそれぞれを形成するための第1被覆パターン、第2被覆パターン及び第3被覆パターンの潜像を形成し、現像してエッチングレジスト層を形成し、形成されたエッチングレジスト層をマスクとしてハードマスクをドライエッチングし、エッチングされたハードマスクを介して基部2及び凸構造部3を同時にエッチングするようにしてもよい。
【0053】
[ナノインプリント用モールドの製造方法(その2)]
第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10は、後述する方法により製造することもできる。図12は、第2の実施形態に係るナノインプリント用モールド10の製造方法(その2)を示す工程フロー図である。
まず、図4(A)〜(E)に示すようにして基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を作製する。平板状の基材4を用意し、当該基材4の一方の面に感光性レジスト膜(ポジ型レジスト膜又はネガ型レジスト膜)5を形成する(図4(A))。基材4への感光性レジスト膜5の形成は、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。
このようにして基材4上に形成された感光性レジスト膜(図示例ではネガ型レジスト膜)5に対して所望のマスクを介して露光し(図4(B))、その後現像して凸構造部3に対応する部位にのみ感光性レジスト膜5が残存するレジスト層51を形成する(図4(C))。このようにして形成されるレジスト層51の厚みは、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)と同様にすればよい。
【0054】
このようにして形成されたレジスト層51をマスクとしてエッチングし(図4(D))、残存するレジスト層51を剥離することにより、基部2の一方の面から突出する凸構造部3を備える基材4を得ることができる(図4(E))。レジスト層51の剥離は、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。なお、レジスト層51を形成した後の工程において、レジスト層51の硬化が進行した場合、レジスト剥離液を用いた剥離を行う前に、レジスト層51に対して加熱処理、超音波処理を施すことが好ましい。
続いて、図12に示すように、凸構造部3側の基材4上にポジ型電子線レジスト膜521を形成し(図12(F))、電子線描画により測定用凸部221及び面積率調整用凸部231のそれぞれを形成するための第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551の潜像を形成し(図12(G))、現像して第1のエッチングレジスト層571を形成するとともに、凸構造部3を露出させる(図12(H))。
【0055】
第1被覆パターン531は、測定用凸部221が形成される所望の位置に対応するようにして形成される。具体的には、図11を参照して説明した上述の製造方法(その1)と同様であり、凸構造部3の上面周端部35における凸構造部3の上面31に対する垂線l2と基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24との交点p2から当該交点p2の最近傍に位置する第1被覆パターン531までの距離をd2とし、基部2における凸構造部側平坦面21を含む平面24から凸構造部3の上面31までの高さをh2としたとき、d2≧h2となる凸構造部側平坦面21における位置に、第1被覆パターン531を形成するのが好ましい。当該位置よりも凸構造部3側に近づいた位置に第1被覆パターン531を形成すると、凸構造部3の存在が、測定用凸部221を形成する際のエッチングに影響を与え、測定用凸部221の高さと転写用凸部321の高さとの相関性を低下させるおそれがある。
また、第3被覆パターン551は、第1被覆パターン531を含む所定領域に形成されているのが好ましく、凸構造部3上面全体の面積に対する第2被覆パターン541の被覆面積率と、当該所定領域の面積に対する第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551の合計被覆面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように形成されているのがより好ましい。両者の被覆面積率の比を上記範囲内とすれば、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとを極めて相関性の高いものとすることができる。なお、第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551が形成される所定領域とは、測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が形成される所定領域S2(図8参照)に対応する第1のエッチングレジスト層571における領域を意味する。
【0056】
そして、基部2上の第1のエッチングレジスト層571及び凸構造部3上を被覆するようにしてネガ型電子線レジスト膜581を形成し(図12(I))、電子線描画により転写用凸部321を形成するための第2被覆パターン541の潜像を形成し(図12(J))、現像して第2のエッチングレジスト層591を形成する(図12(K))。
このようにして形成された第1及び第2のエッチングレジスト層571,591をマスクとして基部2及び凸構造部3を同時にドライエッチングする(図12(L))。このドライエッチングは、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その1)と同様にして行えばよい。かかるドライエッチング後、第1及び第2のエッチングレジスト層571,591を除去することにより、凸構造部3上に転写用凸部321が形成され、基部2の所定領域S2に測定用凸部221及び面積率調整用凸部231が形成されてなるナノインプリント用モールド10を得ることができる(図12(M))。
【0057】
上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その2)によれば、転写用凸部321と測定用凸部221とが同時にエッチングされることで形成されるため、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとが極めて高い相関性を有することになる。そのため、得られたナノインプリント用モールド10の測定用凸部221の高さを、AFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置を用いて実測することにより、高精度で転写用凸部321の高さを測定することができる。
上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その2)において、第1のエッチングレジスト層571をポジ型電子線レジストにて形成し、第2のエッチングレジスト層591をネガ型電子線レジストにて形成しているが、これに限定されるものではなく、第1のエッチングレジスト層571をネガ型電子線レジストにて形成し、第2のエッチングレジスト層591をポジ型電子線レジストにて形成してもよい。
また、上述したナノインプリント用モールド10の製造方法(その2)において、電子線描画により第1被覆パターン531及び第3被覆パターン551を形成し、第1のエッチングレジスト層571を形成しているが(図12(F)〜(H))、ポジ型感光性レジスト又はネガ型感光性レジストを用い、所望のフォトマスクを介したプロキシミティ露光を行い、その後現像して第1のエッチングレジスト層571を形成してもよい。
【0058】
さらに、上述したナノインプリント用モールド1の製造方法(その2)において、電子線描画により転写用凸部321に対応する第2被覆パターン541を形成して第2のエッチングレジスト層591を設けているが、凸構造部3上面に自己組織化膜を形成することにより転写用凸部321に対応する第2被覆パターン541を形成して第2のエッチングレジスト層591を設けてもよい。具体的には、以下のようにして転写用凸部321に対応する第2被覆パターン541を形成することができる。
基部2の凸構造部側平坦面21上に形成された第1のエッチングレジスト層571上に保護膜を形成した後、凸構造部3の上面にポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロックコポリマーを含む組成物膜を形成し、熱又は溶媒雰囲気等でアニール処理する。これにより、PMMAがシリンダー状に相分離した自己組織化膜が凸構造部3上に形成される。その後、O2プラズマ処理等を施してPMMA相をエッチングすることにより、転写用凸部321に対応する第2被覆パターン541を有する自己組織化マスクを第2のエッチングレジスト層591として凸構造部3上面31に形成することができる。
【0059】
[ナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さ測定]
上述のようにして製造されたナノインプリント用モールド10は、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとが極めて高い相関性を有するものとなっている。そのため、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとの関係を示す検量線を予め作成しておけば、転写用凸部321の高さの測定対象たるナノインプリント用モールド10における測定用凸部221の高さを非破壊式測定装置(AFM、位相差計測装置等)にて実測することで、予め作成された検量線に基づいて転写用凸部321の高さを正確に測定することができる。
具体的には、ドライエッチング条件(ドライエッチング時間等)を変更することにより転写用凸部321(測定用凸部221)の高さがそれぞれ異なる複数の検量線作成用モールドをすべて同一の方法(例えば、上述したいずれか1つの製造方法)により作製し、転写用凸部321の高さと測定用凸部221の高さとをSEM等にて測定し、得られた各測定値に基づいて予め検量線を作成する。そして、所望の高さの転写用凸部321を設けるための所定のドライエッチング条件で作製したナノインプリント用モールド10について、当該モールド10の測定用凸部221の高さをAFM、位相差計測装置等の非破壊式測定装置にて実測する。そして当該実測値と検量線とから、当該モールド10の転写用凸部321の高さを算出する。このようにして、ナノインプリント用モールド10の転写用凸部321の高さを高精度で測定することができ、したがって、高精度のモールドを作製することができるとともに、何らかの理由で転写用凸部321の高さが設定値から外れた場合には、そのようなモールドを確実に検出することができる。
【0060】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、第1の実施形態において、ナノインプリント用モールド1の基部2に測定用凹部22とともに、面積率調整用凹部23が形成されているが、面積率調整用凹部23の短手方向の長さが非破壊式測定装置を用いて当該面積率調整用凹部23の深さを測定し得る程度の長さであれば、面積率調整用凹部23の深さの測定値に基づいて転写用凹部32の深さを測定するようにしてもよい。また、第2の実施形態においても同様に、面積率調整用凸部231の高さを測定し、その測定値に基づいて転写用凸部321の高さを測定するようにしてもよい。この場合において、深さを測定する面積率調整用凹部23は、転写用凹部32と略相似形状又は相似形状のものであるのが好ましく、高さを測定する面積率調整用凸部231は、転写用凸部321と略相似形状又は相似形状のものであるのが好ましい。
【実施例】
【0061】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕
(検量線作成用ナノインプリント用モールドの製造)
厚み0.725mmのシリコン製基板(直径8インチ(200mm))をナノインプリント用モールド用基材として準備し、基材の一方の面にレジスト(SU−8 3000,化薬マイクロケム社製)を塗布した。次に、所望のマスクを介して露光し現像して、凸構造部に対応する部分にレジスト層(40mm角)を形成した。そして、このレジスト層をマスクとして基材をエッチングして、厚み0.705mmの基部と、この基部から突出した高さ20μmの凸構造部を形成した後、レジスト層を除去した。形成した凸構造部の壁面は、凸構造部の上面に対して垂直となっていた。
【0062】
このようにして得られた凸構造部及び基部を備える基材の凸構造部側表面にポジ型電子線レジスト(ZEP520A,日本ゼオン社製)を塗布し、電子線描画装置(JBX9300,日本電子社製)内のステージ上に基材の裏面(凸構造部側と反対側の面)がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、第1開口パターン、第2開口パターン及び第3開口パターンの潜像を形成し、レジストを現像してレジスト層を形成した。すなわち、転写用凹部を形成するための第2開口パターンは、ライン/スペースが40nmのライン状の開口を有するものとした。また、測定用凹部を形成するための第1開口パターンは、4個の50μm×100μmの平面視長方形からなり、各パターンは凸構造部の4方向に均等に位置し(図2参照)、各パターンの中心から凸構造部の壁面までの距離は500μmであり、凸構造部の最近傍に位置する第1開口パターンまでの距離は450μmであった。さらに、面積率調整用凹部を形成するための第3開口パターンは、5μm×10μmの平面視長方形とした。そして、図2に示されるように、250μm×300μmの平面視長方形からなる所定領域を、第1開口パターンの短辺及び長辺のそれぞれから第1開口パターンの外側に向かう方向であって、当該第1開口パターンの短辺及び長辺のそれぞれに対して垂直方向に100μm離間した位置に所定領域の短辺及び長辺のそれぞれが位置するように設定し、当該所定領域に375個の第3開口パターンを配した。これにより、凸構造部の上面全体の面積に対する第2開口パターンの開口面積率(50%)と、上記の所定領域に対する第1開口パターン及び第3開口パターンの合計開口面積率(50%)との比は、1:1であった。
【0063】
次に、このレジスト層をマスクとして下記の条件でドライエッチングを行い、基材の凸構造部上面に転写用凹部が、基部の所定領域に測定用凹部及び面積率調整用凹部が形成された検量線作成用ナノインプリント用モールドを得た。
<ドライエッチング条件>
・CF4ガス流量:40sccm
・RIEパワー :400W
・圧力 :4Pa
【0064】
ドライエッチングの条件(エッチング時間)を変更して、形成される転写用凹部の深さがそれぞれ異なる5個の検量線作成用ナノインプリント用モールドを作製し、得られたナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さと測定用凹部の深さとをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定し、転写用凹部及び測定用凹部の深さの関係を示す検量線を最小二乗法により予め作成した。当該検量線を図13に示す。
【0065】
(深さ測定用ナノインプリント用モールドの製造)
目標とする転写用凹部の深さが40nmとなるようにドライエッチングの時間を30sに設定した以外は、上記検量線作成用ナノインプリント用モールドと同様にして、深さ測定用ナノインプリント用モールドを5個作製した。
【0066】
(深さ測定用ナノインプリント用モールドの凹部深さの測定)
上述のようにして得られた5個の深さ測定用ナノインプリント用モールドにおける測定用凹部の深さをAFM(L−Trace,エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)にて実測し、当該実測値及び図13に示す検量線に基づいて、転写用凹部の深さを測定した。その結果、転写用凹部の深さは、39〜41nmと測定された。一方、この測定が完了した後、5個すべての深さ測定用ナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定したところ、検量線に基づいて測定した転写用凹部の深さとSEMにより測定した転写用凹部の深さとの差(絶対値)は、1nm以下であった。この結果、本実施例のようにして製造したナノインプリント用モールドによれば、測定用凹部の深さを測定することで、転写用凹部の深さを高精度で測定可能であることが判明した。
【0067】
〔実施例2〕
(検量線作成用ナノインプリント用モールドの製造)
厚み0.725mmのシリコン製基板(直径8インチ(200mm))をナノインプリント用モールド用基材として準備し、基材の一方の面にレジスト(SU−8 3000,化薬マイクロケム社製)を塗布した。次に、所望のマスクを介して露光し現像して、凸構造部に対応する部分にレジスト層(40mm角)を形成した。そして、このレジスト層をマスクとして基材をエッチングして、厚み0.705mmの基部と、この基部から突出した高さ20μmの凸構造部を形成した後、レジスト層を除去した。形成した凸構造部の壁面は、凸構造部の上面に対して垂直となっていた。
【0068】
このようにして得られた凸構造部及び基部を備える基材の凸構造部側表面にネガ型電子線レジスト(HSQ)を塗布し、電子線描画装置(JBX9300,日本電子社製)内のステージ上に基材の裏面(凸構造部側と反対側の面)がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、第1被覆パターン、第2被覆パターン及び第3被覆パターンの潜像を形成し、レジストを現像してレジスト層を形成した。すなわち、転写用凸部を形成するための第2被覆パターンは、ライン/スペースが40nmのライン状のレジスト層を有するものとした。また、測定用凸部を形成するための第1被覆パターンは、4個の50μm×100μmの平面視長方形からなり、各パターンは凸構造部の4方向に均等に位置し(図8参照)、各パターンの中心から凸構造部の壁面までの距離は500μmであり、凸構造部の最近傍に位置する第1被覆パターンまでの距離は450μmであった。さらに、面積率調整用凸部を形成するための第3被覆パターンは、5μm×10μmの平面視長方形とした。そして、図8に示されるように、250μm×300μmの平面視長方形からなる所定領域を、第1被覆パターンの短辺及び長辺のそれぞれから第1被覆パターンの外側に向かう方向であって、当該第1被覆パターンの短辺及び長辺のそれぞれに対して垂直方向に100μm離間した位置に所定領域の短辺及び長辺のそれぞれが位置するように設定し、当該所定領域に375個の第3被覆パターンを配した。これにより、凸構造部の上面全体の面積に対する第2被覆パターンの被覆面積率(50%)と、上記の所定領域に対する第1被覆パターン及び第3被覆パターンの合計被覆面積率(50%)との比は、1:1であった。
【0069】
次に、このレジスト層をマスクとして下記の条件でドライエッチングを行い、基材の凸構造部上面に転写用凸部が、基部の所定領域に測定用凸部及び面積率調整用凸部が形成された検量線作成用ナノインプリント用モールドを得た。
<ドライエッチング条件>
・CF4ガス流量:40sccm
・RIEパワー :400W
・圧力 :4Pa
【0070】
ドライエッチングの条件(エッチング時間)を変更して、形成される転写用凸部の高さがそれぞれ異なる5個の検量線作成用ナノインプリント用モールドを作製し、得られたナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さと測定用凸部の高さとをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定し、転写用凸部及び測定用凸部の高さの関係を示す検量線を最小二乗法により予め作成した。当該検量線を図14に示す。
【0071】
(高さ測定用ナノインプリント用モールドの製造)
目標とする転写用凸部の高さが40nmとなるようにドライエッチングの時間を38sに設定した以外は、上記検量線作成用ナノインプリント用モールドと同様にして、高さ測定用ナノインプリント用モールドを5個作製した。
【0072】
(高さ測定用ナノインプリント用モールドの凸部高さの測定)
上述のようにして得られた高さ測定用ナノインプリント用モールドにおける測定用凸部の高さをAFM(L−Trace,エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)にて測定し、当該測定値及び図14に示す検量線に基づいて、転写用凸部の高さを測定した。その結果、転写用凸部の高さは、39〜41nmと測定された。一方、この測定が完了した後、5個すべての高さ測定用ナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定したところ、検量線に基づいて測定した転写用凸部の高さとSEMにより測定した転写用凸部の高さとの差(絶対値)は、1nm以下であった。この結果、本実施例のようにして製造したナノインプリント用モールドによれば、測定用凸部の高さを測定することで、転写用凸部の高さを高精度で測定可能であることが判明した。
【0073】
〔実施例3〕
(検量線作成用ナノインプリント用モールドの製造)
厚み6.35mmの石英ガラス(65mm角)を検量線作成用ナノインプリント用モールド用基材として準備し、基材の一方の面にレジスト(SU−8 3000,化薬マイクロケム社製)を塗布した。次に、所望のマスクを介して露光し現像して、凸構造部に対応する部分にレジスト層(20mm角)を形成した。そして、このレジスト層をマスクとして基材をエッチングして、厚み6.33mmの基部と、この基部から突出した高さ20μmの凸構造部を形成した後、レジスト層を除去した。形成した凸構造部の壁面は、凸構造部の上面に対して垂直となっていた。
【0074】
このようにして得られた凸構造部及び基部を備える基材の凸構造部側表面にポジ型電子線レジスト(ZEP520A,日本ゼオン社製)を塗布し、電子線描画装置(JBX9300,日本電子社製)内のステージ上に基材の裏面(凸構造部側と反対側の面)がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、第1開口パターン、第2開口パターン及び第3開口パターンの潜像を形成し、レジストを現像してレジスト層を形成した。すなわち、転写用凹部を形成するための第2開口パターンは、ライン/スペースが40nmのライン状の開口を有するものとした。また、測定用凹部を形成するための第1開口パターンは、4個の50μm×100μmの平面視長方形からなり、各パターンは凸構造部の4方向に均等に位置し(図2参照)、各パターンの中心から凸構造部の壁面までの距離は500μmであり、凸構造部の最近傍に位置する第1開口パターンまでの距離は450μmであった。さらに、面積率調整用凹部を形成するための第3開口パターンは、5μm×10μmの平面視長方形とした。そして、図2に示されるように、250μm×300μmの平面視長方形からなる所定領域を、第1開口パターンの短辺及び長辺のそれぞれから第1開口パターンの外側に向かう方向であって、当該第1開口パターンの短辺及び長辺のそれぞれに対して垂直方向に100μm離間した位置に所定領域の短辺及び長辺のそれぞれが位置するように設定し、当該所定領域に375個の第3開口パターンを配した。これにより、凸構造部の上面全体の面積に対する第2開口パターンの開口面積率(50%)と、上記の所定領域に対する第1開口パターン及び第3開口パターンの合計開口面積率(50%)との比は、1:1であった。
【0075】
次に、このレジスト層をマスクとして下記の条件でドライエッチングを行い、基材の凸構造部上面に転写用凹部が、基部の所定領域に測定用凹部及び面積率調整用凹部が形成された検量線作成用ナノインプリント用モールドを得た。
<ドライエッチング条件>
・CF4ガス流量:40sccm
・RIEパワー :400W
・圧力 :4Pa
【0076】
ドライエッチングの条件(エッチング時間)を変更して、形成される転写用凹部の深さがそれぞれ異なる5個の検量線作成用ナノインプリント用モールドを作製し、得られたナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さと測定用凹部の深さとをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定し、転写用凹部及び測定用凹部の深さの関係を示す検量線を最小二乗法により予め作成した。当該検量線を図15に示す。
【0077】
(深さ測定用ナノインプリント用モールドの製造)
目標とする転写用凹部の深さが40nmとなるようにドライエッチングの時間を80sに設定した以外は、上記検量線作成用ナノインプリント用モールドと同様にして、深さ測定用ナノインプリント用モールドを5個作製した。
【0078】
(深さ測定用ナノインプリント用モールドの凹部深さの測定)
上述のようにして得られた5個の深さ測定用ナノインプリント用モールドにおける測定用凹部の深さを位相差計測装置にて実測し、当該測定値及び図15に示す検量線に基づいて、転写用凹部の深さを測定した。その結果、転写用凹部の深さは、39〜41nmと測定された。一方、この測定が完了した後、5個すべての深さ測定用ナノインプリント用モールドの転写用凹部の深さをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定したところ、検量線に基づいて測定した転写用凹部の深さとSEMにより測定した転写用凹部の深さとの差(絶対値)は、1nm以下であった。この結果、本実施例のようにして製造したナノインプリント用モールドによれば、測定用凹部の深さを測定することで、転写用凹部の深さを高精度で測定可能であることが判明した。
【0079】
〔実施例4〕
(検量線作成用ナノインプリント用モールドの製造)
厚み6.35mmの石英ガラス(65mm角)を検量線作成用ナノインプリント用モールド用基材として準備し、基材の一方の面にレジスト(SU−8 3000,化薬マイクロケム社製)を塗布した。次に、所望のマスクを介して露光し現像して、凸構造部に対応する部分にレジスト層(20mm角)を形成した。そして、このレジスト層をマスクとして基材をハーフエッチングして、厚み6.33mmの基部と、この基部から突出した高さ20μmの凸構造部を形成した後、レジスト層を除去した。形成した凸構造部の壁面は、凸構造部の上面に対して垂直となっていた。
【0080】
このようにして得られた凸構造部及び基部を備える基材の凸構造部側表面にネガ型電子線レジスト(HSQ)を塗布し、電子線描画装置(JBX9300,日本電子社製)内のステージ上に基材の裏面(凸構造部側と反対側の面)がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、第1被覆パターン、第2被覆パターン及び第3被覆パターンの潜像を形成し、レジストを現像してレジスト層を形成した。すなわち、転写用凸部を形成するための第2被覆パターンは、ライン/スペースが40nmのライン状のレジスト層を有するものとした。また、測定用凸部を形成するための第1被覆パターンは、4個の50μm×100μmの平面視長方形からなり、各パターンは凸構造部の4方向に均等に位置し(図8参照)、各パターンの中心から凸構造部の壁面までの距離は500μmであり、凸構造部の最近傍に位置する第1被覆パターンまでの距離は450μmであった。さらに、面積率調整用凸部を形成するための第3被覆パターンは、5μm×10μmの平面視長方形とした。そして、図8に示されるように、250μm×300μmの平面視長方形からなる所定領域を、第1被覆パターンの短辺及び長辺のそれぞれから第1被覆パターンの外側に向かう方向であって、当該第1被覆パターンの短辺及び長辺のそれぞれに対して垂直方向に100μm離間した位置に所定領域の短辺及び長辺のそれぞれが位置するように設定し、当該所定領域に375個の第3被覆パターンを配した。これにより、凸構造部の上面全体の面積に対する第2被覆パターンの被覆面積率(50%)と、上記の所定領域に対する第1被覆パターン及び第3被覆パターンの合計被覆面積率(50%)との比は、1:1であった。
【0081】
次に、このレジスト層をマスクとして下記の条件でドライエッチングを行い、基材の凸構造部上面に転写用凸部が、基部の所定領域に測定用凸部及び面積率調整用凸部が形成された検量線作成用ナノインプリント用モールドを得た。
<ドライエッチング条件>
・CF4ガス流量:40sccm
・RIEパワー :400W
・圧力 :4Pa
【0082】
ドライエッチングの条件(エッチング時間)を変更して、形成される転写用凸部の高さがそれぞれ異なる5個の検量線作成用ナノインプリント用モールドを作製し、得られたナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さと測定用凸部の高さとをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定し、転写用凸部及び測定用凸部の高さの関係を示す検量線を最小二乗法により予め作成した。当該検量線を図16に示す。
【0083】
(高さ測定用ナノインプリント用モールドの製造)
目標とする転写用凸部の高さが40nmとなるようにドライエッチングの時間を100sに設定した以外は、上記検量線作成用ナノインプリント用モールドと同様にして、高さ測定用ナノインプリント用モールドを5個作製した。
【0084】
(高さ測定用ナノインプリント用モールドの凸部高さの測定)
上述のようにして得られた5個の高さ測定用ナノインプリント用モールドにおける測定用凸部の高さを位相差計測装置にて実測し、当該実測値及び図16に示す検量線に基づいて、転写用凸部の高さを測定した。その結果、転写用凸部の高さは、39〜41nmと測定された。一方、この測定が完了した後、5個すべての高さ測定用ナノインプリント用モールドの転写用凸部の高さをSEM(ULTRA55,ZEISS社製)にて測定したところ、検量線に基づいて測定した転写用凸部の高さとSEMにより測定した転写用凸部の高さとの差(絶対値)は、1nm以下であった。この結果、本実施例のようにして製造したナノインプリント用モールドによれば、測定用凸部の高さを測定することで、転写用凸部の高さを高精度で測定可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、ナノインプリント技術を用いた微細加工に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1,10…ナノインプリント用モールド
2…基部
21,211…凸構造部側平坦面
22…測定用凹部
221…測定用凸部
23…面積率調整用凹部
231…面積率調整用凸部
3…凸構造部
32…転写用凹部
321…転写用凸部
4…基材
S1,S2…所定領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、当該基部の一方の面から突出してなる凸構造部とを備える基材における前記凸構造部に転写用凹部が形成され、前記凸構造部の周囲の前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凹部が形成されてなり、前記転写用凹部の深さと前記測定用凹部の深さとが所定の相関性を有するナノインプリント用モールドを製造する方法であって、
前記基材の前記基部上及び前記凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成するマスク材料膜形成工程と、
前記基部上のマスク材料膜に前記測定用凹部形成用の第1開口パターンを形成するパターン形成、及び前記凸構造部上のマスク材料膜に前記転写用凹部形成用の第2開口パターンを形成するパターン形成を行うパターン形成工程と、
前記第1及び第2開口パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、前記基部における凸構造部側の面への測定用凹部の形成及び前記凸構造部への転写用凹部の形成を行うエッチング工程と
を含み、
前記測定用凹部の開口面の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凹部の深さを測定可能な長さであることを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項2】
前記エッチング工程において、前記測定用凹部が形成される前記基部と前記転写用凹部が形成される前記凸構造部とを同時にエッチングすることを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項3】
前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面周端部における当該凸構造部上面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記第1開口パターンまでの距離をd1とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部上面までの高さをh1としたとき、d1≧h1となる前記凸構造部側の面における位置に、前記第1開口パターンを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項4】
前記パターン形成工程において、前記第1開口パターンを含む所定領域に面積率調整用凹部形成用の第3開口パターンを形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項5】
前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面における前記第2開口パターンの開口面積率と、前記所定領域における前記第1及び第3開口パターンの合計開口面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように、前記第3開口パターンを形成することを特徴とする請求項4に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項6】
基部と、当該基部の一方の面から突出してなる凸構造部とを備える基材における前記凸構造部に転写用凸部が形成され、前記凸構造部の周囲の前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凸部が形成されてなり、前記転写用凸部の高さと前記測定用凸部の高さとが所定の相関性を有するナノインプリント用モールドを製造する方法であって、
前記基材の前記基部上及び前記凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成するマスク材料膜形成工程と、
前記基部上のマスク材料膜に前記測定用凸部形成用の第1被覆パターンを形成するパターン形成、及び前記凸構造部上のマスク材料膜に前記転写用凸部形成用の第2被覆パターンを形成するパターン形成を行うパターン形成工程と、
前記第1及び第2被覆パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、前記基部における凸構造部側の面への測定用凸部の形成及び前記凸構造部への転写用凸部の形成を行うエッチング工程と
を含むことを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項7】
前記エッチング工程において、前記測定用凸部が形成される前記基部と前記転写用凸部が形成される前記凸構造部とを同時にエッチングすることを特徴とする請求項6に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項8】
前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面周端部における当該凸構造部上面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記第1被覆パターンまでの距離をd2とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部上面までの高さをh2としたとき、d2≧h2となる前記凸構造部側の面における位置に、前記第1被覆パターンを形成することを特徴とする請求項6又は7に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項9】
前記パターン形成工程において、前記第1被覆パターンを含む所定領域に面積率調整用凸部形成用の第3被覆パターンを形成することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項10】
前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面における前記第2被覆パターンの被覆面積率と、前記所定領域における前記第1及び第3被覆パターンの合計被覆面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように、前記第3被覆パターンを形成することを特徴とする請求項9に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項11】
非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能なように、前記所定領域に前記第3被覆パターンを形成することを特徴とする請求項9又は10に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項12】
前記第1被覆パターンの最近傍に位置する前記第3被覆パターンと、当該第1被覆パターンとの距離が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な距離であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項13】
基部と、当該基部の一方の面から突出する凸構造部とを備えるナノインプリント用モールドであって、
前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凹部を有し、前記凸構造部の上面に転写用凹部を有しており、
前記転写用凹部の深さと前記測定用凹部の深さとが、所定の相関性を有し、
前記測定用凹部の開口面の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凹部の深さを測定可能な長さであることを特徴とするナノインプリント用モールド。
【請求項14】
前記凸構造部の最上面を含む平面と当該凸構造部の側壁面との交線における当該凸構造部の最上面を含む平面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記測定用凹部までの距離をD1とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部の最上面を含む平面までの高さをH1としたとき、D1≧H1であることを特徴とする請求項13に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項15】
前記測定用凹部を含む所定領域に面積率調整用凹部を有することを特徴とする請求項13又は14に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項16】
前記凸構造部上面における前記転写用凹部の開口面の面積率と、前記所定領域における前記測定用凹部及び前記面積率調整用凹部の開口面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1であることを特徴とする請求項15に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項17】
基部と、当該基部の一方の面から突出する凸構造部とを備えるナノインプリント用モールドであって、
前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凸部を有し、前記凸構造部の上面に転写用凸部を有しており、
前記転写用凸部の高さと前記測定用凸部の高さとが、所定の相関性を有することを特徴とするナノインプリント用モールド。
【請求項18】
前記転写用凸部の上端面を含む平面と前記凸構造部の側壁面を含む平面との交線における当該転写用凸部の上端面を含む平面に対する垂線と前記測定用凸部の上端面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記測定用凸部までの距離をD2とし、前記測定用凸部の上端面を含む平面から前記転写用凸部の上端面を含む平面までの高さをH2としたとき、D2≧H2であることを特徴とする請求項17に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項19】
前記測定用凸部を含む所定領域に面積率調整用凸部を有していることを特徴とする請求項17又は18に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項20】
前記凸構造部上面における前記転写用凸部の上端面の面積率と、前記所定領域における前記測定用凸部及び前記面積率調整用凸部の上端面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1であることを特徴とする請求項19に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項21】
前記面積率調整用凸部が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な箇所に位置していることを特徴とする請求項19又は20に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項22】
前記測定用凸部の最近傍に位置する前記面積率調整用凸部と、当該測定用凸部との距離が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な距離であることを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載のナノインプリント用モールド。
【請求項1】
基部と、当該基部の一方の面から突出してなる凸構造部とを備える基材における前記凸構造部に転写用凹部が形成され、前記凸構造部の周囲の前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凹部が形成されてなり、前記転写用凹部の深さと前記測定用凹部の深さとが所定の相関性を有するナノインプリント用モールドを製造する方法であって、
前記基材の前記基部上及び前記凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成するマスク材料膜形成工程と、
前記基部上のマスク材料膜に前記測定用凹部形成用の第1開口パターンを形成するパターン形成、及び前記凸構造部上のマスク材料膜に前記転写用凹部形成用の第2開口パターンを形成するパターン形成を行うパターン形成工程と、
前記第1及び第2開口パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、前記基部における凸構造部側の面への測定用凹部の形成及び前記凸構造部への転写用凹部の形成を行うエッチング工程と
を含み、
前記測定用凹部の開口面の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凹部の深さを測定可能な長さであることを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項2】
前記エッチング工程において、前記測定用凹部が形成される前記基部と前記転写用凹部が形成される前記凸構造部とを同時にエッチングすることを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項3】
前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面周端部における当該凸構造部上面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記第1開口パターンまでの距離をd1とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部上面までの高さをh1としたとき、d1≧h1となる前記凸構造部側の面における位置に、前記第1開口パターンを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項4】
前記パターン形成工程において、前記第1開口パターンを含む所定領域に面積率調整用凹部形成用の第3開口パターンを形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項5】
前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面における前記第2開口パターンの開口面積率と、前記所定領域における前記第1及び第3開口パターンの合計開口面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように、前記第3開口パターンを形成することを特徴とする請求項4に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項6】
基部と、当該基部の一方の面から突出してなる凸構造部とを備える基材における前記凸構造部に転写用凸部が形成され、前記凸構造部の周囲の前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凸部が形成されてなり、前記転写用凸部の高さと前記測定用凸部の高さとが所定の相関性を有するナノインプリント用モールドを製造する方法であって、
前記基材の前記基部上及び前記凸構造部上にエッチング用マスク材料膜を形成するマスク材料膜形成工程と、
前記基部上のマスク材料膜に前記測定用凸部形成用の第1被覆パターンを形成するパターン形成、及び前記凸構造部上のマスク材料膜に前記転写用凸部形成用の第2被覆パターンを形成するパターン形成を行うパターン形成工程と、
前記第1及び第2被覆パターンが形成されたマスク材料膜をマスクとしてエッチングして、前記基部における凸構造部側の面への測定用凸部の形成及び前記凸構造部への転写用凸部の形成を行うエッチング工程と
を含むことを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項7】
前記エッチング工程において、前記測定用凸部が形成される前記基部と前記転写用凸部が形成される前記凸構造部とを同時にエッチングすることを特徴とする請求項6に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項8】
前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面周端部における当該凸構造部上面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記第1被覆パターンまでの距離をd2とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部上面までの高さをh2としたとき、d2≧h2となる前記凸構造部側の面における位置に、前記第1被覆パターンを形成することを特徴とする請求項6又は7に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項9】
前記パターン形成工程において、前記第1被覆パターンを含む所定領域に面積率調整用凸部形成用の第3被覆パターンを形成することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項10】
前記パターン形成工程において、前記凸構造部上面における前記第2被覆パターンの被覆面積率と、前記所定領域における前記第1及び第3被覆パターンの合計被覆面積率との比が1:0.9〜1:1.1になるように、前記第3被覆パターンを形成することを特徴とする請求項9に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項11】
非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能なように、前記所定領域に前記第3被覆パターンを形成することを特徴とする請求項9又は10に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項12】
前記第1被覆パターンの最近傍に位置する前記第3被覆パターンと、当該第1被覆パターンとの距離が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な距離であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項13】
基部と、当該基部の一方の面から突出する凸構造部とを備えるナノインプリント用モールドであって、
前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凹部を有し、前記凸構造部の上面に転写用凹部を有しており、
前記転写用凹部の深さと前記測定用凹部の深さとが、所定の相関性を有し、
前記測定用凹部の開口面の短手方向長さが、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凹部の深さを測定可能な長さであることを特徴とするナノインプリント用モールド。
【請求項14】
前記凸構造部の最上面を含む平面と当該凸構造部の側壁面との交線における当該凸構造部の最上面を含む平面に対する垂線と前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記測定用凹部までの距離をD1とし、前記基部における前記凸構造部側の面を含む平面から前記凸構造部の最上面を含む平面までの高さをH1としたとき、D1≧H1であることを特徴とする請求項13に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項15】
前記測定用凹部を含む所定領域に面積率調整用凹部を有することを特徴とする請求項13又は14に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項16】
前記凸構造部上面における前記転写用凹部の開口面の面積率と、前記所定領域における前記測定用凹部及び前記面積率調整用凹部の開口面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1であることを特徴とする請求項15に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項17】
基部と、当該基部の一方の面から突出する凸構造部とを備えるナノインプリント用モールドであって、
前記基部における凸構造部側の面に少なくとも1つの測定用凸部を有し、前記凸構造部の上面に転写用凸部を有しており、
前記転写用凸部の高さと前記測定用凸部の高さとが、所定の相関性を有することを特徴とするナノインプリント用モールド。
【請求項18】
前記転写用凸部の上端面を含む平面と前記凸構造部の側壁面を含む平面との交線における当該転写用凸部の上端面を含む平面に対する垂線と前記測定用凸部の上端面を含む平面との交点から前記交点の最近傍に位置する前記測定用凸部までの距離をD2とし、前記測定用凸部の上端面を含む平面から前記転写用凸部の上端面を含む平面までの高さをH2としたとき、D2≧H2であることを特徴とする請求項17に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項19】
前記測定用凸部を含む所定領域に面積率調整用凸部を有していることを特徴とする請求項17又は18に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項20】
前記凸構造部上面における前記転写用凸部の上端面の面積率と、前記所定領域における前記測定用凸部及び前記面積率調整用凸部の上端面の合計面積率との比が、1:0.9〜1:1.1であることを特徴とする請求項19に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項21】
前記面積率調整用凸部が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な箇所に位置していることを特徴とする請求項19又は20に記載のナノインプリント用モールド。
【請求項22】
前記測定用凸部の最近傍に位置する前記面積率調整用凸部と、当該測定用凸部との距離が、非破壊式測定装置を用いて前記測定用凸部の高さを測定可能な距離であることを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載のナノインプリント用モールド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−76237(P2012−76237A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220606(P2010−220606)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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