説明

ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜、その製造法及び同粉末又は薄膜を用いる各種デバイス並びに二次電池及びリチウム貯蔵デバイス

【要約書】
【課題】(1)高い比表面積を有する三次元構造を持つ微結晶金属酸化物−ガラス有する複合メソポーラス粉末又は薄膜を製造すること、(2)ポーラス構造のフレームワークは、ナノサイズ微結晶金属酸化物微結晶と僅かなガラス相(SiO2或いはP2O5, B2O3)によって構築されていること、(3)僅かなガラス相(SiO2或いはP2O5, B2O3)によって金属酸化物の結晶成長が制御されること、(4)製造プロセスが簡単化されること、(5)リチウムインタカレーション電気デバイス、光触媒デバイス、太陽電池、エネルギー貯蔵デバイスの製造に使用できること。
【解決手段】規則的に配列したメソ細孔を有する三次元構造を備えていることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスからなる粉末又は薄膜及び二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規則正しく整列したメソ細孔を有する三次元構造を備え、ポーラス構造のフレームワークの中にナノサイズ微結晶金属酸化物−ガラス有する複合メソポーラス粉末又は薄膜及びその製造法並びにリチウム電池又はリチウムインタカレーション電気デバイス、光触媒デバイス、太陽電池、エネルギー貯蔵デバイス、さらに具体的な用途としての、充電型電池、特にリチウム電池の電極として用いるためのナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス電極材料を備えた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物メソポーラス材料は、三次元的に規則正しく整列したナノサイズ細孔や、高比表面積などを有することで、電子材料、触媒材料、機能性セラミックス材料、電極材料への応用が期待されているが、フレームワークの中の金属酸化物はアモルファスなので、結晶に属した機能を引き出せないのが現状である。
また、世界中のグループが、色々な方法を試しているが、ナノオーダーのフレームワークの中で金属酸化物を結晶成長させた場合に、三次元的に規則正しく整列したナノ構造が潰されてしまうので、今まで成功した例がない。
表面活性剤を鋳型としてMCM41(ヘキサゴナル)やMCM48(キュービック)のメソポーラスシリカ(SiO2)粉末の合成が成功されている(文献1、2参照)。しかし、それ以上の技術的進展がないのが現状である。
【0003】
また、現在、世界で10兆円規模のリチウム電池、特に充電型(2次)リチウム電池の正極、負極ともに、活物質として、金属酸化物が良く使われている。
従来型の活物質とした金属酸化物系は、粒子のサイズが大きくて、高速2次電池に要求されて電子電導パスとイオン電導パスが共存していないため、ハイレートの充・放電の達成は難しい。
電池の性能をアップするためには、粒子或いは細孔の微細化及び高比表面積化が要求されるが、しかしながら、今日まで提案されている色々な微細化方法は、ハイレートの充・放電条件で、安定な高容量までには至っていないのが、現状である。
【0004】
このようなことから、高い充電又は放電レートにしても高可逆容量と優れたサイクル特性を有する金属酸化物の合成が望まれている。
金属酸化物材料の中に、メソポーラス金属酸化物が挙げられる。この規則配列した空孔を持つメソポーラス金属酸化物は、Stucky等により1998年に報告されたものである(非特許文献3参照)。
【0005】
しかし、これらのメソポーラス金属酸化物はアモルファスであるため、電極材料として安定性に欠けているという問題があった。我々は2004年ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスの合成に成功した(非特許文献4と特許文献1参照)。
このナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスは多くの注目を集め、触媒の担体又は色素増感型太陽電池、リチウム貯蔵材料、電気化学2層キャパシタ(EDLCs)としての用途が提案された。
【0006】
【非特許文献1】C. T. Kresge, M. E. Leonowicz, W. J. Roth, J. C. Vartuli, J. S. Beck, Nature 1992, 359, 710.
【非特許文献2】J. S. Beck, J. C. Vartuli, W. J. Roth, M. E. Leonowicz, C. T. Kresge, K. D. Schmitt, C. T.-W. Chu, D. H. Olson, E. W. Sheppard, S. B. McCullen, J. B. Higgins, J. L. Schlenker, Journal American Chemical Society. 1992, 114, 10834.
【非特許文献3】P.Yang, D.Zhao, D.I.Margolese, B.F.Chmelka, G.D.Stucky, Nature, 1998, 396, 152
【非特許文献4】D.Li, H.Zhou, I.Honma, Nature Materials, 2004, 3, 65
【特許文献1】特願2003−386694
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明で解決しようとする課題は、(1)高い比表面積を有する三次元構造を持つ微結晶金属酸化物−ガラス有する複合メソポーラス粉末又は薄膜を製造すること、(2)ポーラス構造のフレームワークは、ナノサイズ微結晶金属酸化物微結晶と僅かなガラス相(SiO2或いはP2O5, B2O3)によって構築されていること、(3)僅かなガラス相(SiO2或いはP2O5, B2O3)によって金属酸化物の結晶成長が制御されること、(4)その製造プロセスが簡単化されること、(5)これらの材料を、リチウムインタカレーション電気デバイス、光触媒デバイス、太陽電池、エネルギー貯蔵デバイスの製造に使用できることである。
【0008】
さらに、二次電池用として、(6)ナノポーラス構造のフレームワークの中に活物質金属酸化物のナノ微結晶を有する三次元構造を持つメソポーラス金属酸化物を製造すること、(7)ナノポーラス構造のフレームワークの中に電子電導パスとイオン電導パスを有すること、(8)10A/gハイ充・放電レートでも、容量には、数百サイクル後にも高い可逆容量 (例えば:LixTiO2: x=0.5〜0.8)を維持させること、(9)充・放電レートが0.1A/gから0.5A/g、2.0A/g、10A/gまで上げても、高い可逆充・放電容量(例えば:LixTiO2: x=0.5〜0.8)を維持することができる金属酸化物系電極材料を備えた二次電池の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1)規則的に配列したメソ細孔を有する三次元構造を備えていることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜、2)六方(ヘキサゴナル)又は立方(キュービック)型の三次元構造を備えていることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜、3)ポーラス構造のフレームワークの中に、均一なナノサイズ微結晶酸化物を備えていることを特徴とする1又は2記載のナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜、4)50から400m/g範囲の高い比表面積を備えていることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜を提供する。
【0010】
本発明は、また5)ブロック高分子又は界面活性化剤を鋳型とし、金属アルコキシド又は金属の塩化物、PO(OC2H5)3又はSi(OC2H5)4(TEOS)の水溶液又はこれらをエターノール等のアルコールに溶かした溶液に、塩酸(HCl)を加える工程、ソルーゲル法によってガラス相の金属酸化物−無機酸化物複合メソストラクチャ構造を有する粉末を製造する工程、室温〜90°Cで熟成させゲル化させる工程、これを空気中350-400°Cで加熱処理することによってブロック高分子又は界面活性化剤を除去しガラス相の金属酸化物−ガラス相複合メソポーラス粉末を製造する工程、更にこれを400-700°Cで熱処理することによってガラス相の金属酸化物を微結晶に相転移させる工程からなることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また6)ブロック高分子又は界面活性化剤を鋳型とし、金属アルコキシド又は金属の塩化物、PO(OC2H5)3又はSi(OC2H5)4(TEOS)のエターノール等のアルコールに溶かした溶液に、塩酸(HCl)を加え、pHを調整しながら加水分解を行ってゾル溶液とする工程、基板にゾル溶液を滴下し、基板を高速回転させ、溶剤を蒸発させ、ゲル化させることにより基板上にガラス相の金属酸化物−無機酸化物−ブロック高分子(又は界面活性化剤)複合メソストラクチャ構造を有する薄膜を形成する工程、室温〜90°Cで熟成させゲル化させる工程、これを空気中350-400°Cで加熱処理することによってブロック高分子又は界面活性化剤を除去しガラス相の金属酸化物−ガラス相複合メソポーラス薄膜を形成する工程、更にこれを400-700°Cで熱処理することによってガラス相の金属酸化物を微結晶に相転移させる工程からなることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス薄膜の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、また7)安定なガラス相の無機酸化物が、SiO2、P2O5又はB2O3であることを特徴とする5記載のナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜の製造方法を提供する。
【0013】
本発明は、また8)合成段階でMnO2, NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2などの異種金属酸化物を微量添加し、多元ガラス相を有するナノサイズ微結晶酸化物−無機酸化物のガラス相−異種金属酸化物(−MnO2,−NiO, −Fe2O3, −CuO, −Li2O, −WO3, −SnO2など)からなることを特徴とする5又は6記載のメソポーラス粉末又は薄膜の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、また9)金属アルコキシド又は金属の塩化物が、Ti(OC3H7)3, Zr(OC4H9)4, NbCl5, LiCl, NiCl2, FeCl3, CuCl2, MnCl2, SnCl4又はWCl5であることを特徴とする5〜7のいずれかに記載のナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜の製造方法を提供する。
【0015】
本発明は、また10)上記5〜8によって製造されたナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜を用いることを特徴とするリチウム電池又はリチウムインタカレーション電気デバイス、光触媒デバイス、太陽電池、エネルギー貯蔵デバイスを提供する。
【0016】
さらに、本発明は上記微結晶性メソポーラス金属酸化物の特性を活かし、二次電池への適用が可能であることの知見を得た。
本発明は、この知見にもとづいて、
11)規則的に配列したメソ細孔を有する三次元構造を備えているナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスからなる電極で構成されていることを特徴とする二次電池、12)細孔の平均直径が2nm〜10nmであることを特徴とする上記11記載の二次電池、13)六方体又は立方体構造を持つナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスのフレームワークの中に、数ナノオーダーの均一な微結晶酸化物を備えていることを特徴とする上記11又は12記載の二次電池、14)フレームワークの壁の厚さが2〜9nmであることを特徴とする上記11〜13のいずれかに記載の二次電池、15)ナノサイズ微結晶酸化物が、TiO2、NiO、MnO2, FeO, Fe2O3, Fe3O4, CoO, CoO2, CrO2, Co3O4, WO3, SnO, SnO2から選択した1種以上の金属酸化物であることを特徴とする上記11〜14のいずれかに記載の二次電池、を提供する。
【0017】
本発明はまた、
16)ガラス相が、P2O5、SiO2又はB2O3から選択した1種以上の無機酸化物であることを特徴とする上記11〜15のいずれかに記載の二次電池、17)ガラス相は、MnO2, NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2から選択した1種以上の異種金属酸化物を、前記ガラス相に対してモル比で2%〜60%を含む多元系ガラス相であることを特徴とする上記11〜16のいずれかに記載の二次電池、18)ネットワーク状ガラス相の中に、イオン導電性或いは電子導電性の異種金属酸化物を、ガラス相に対してモル比で2%〜60%を添加することにより、フレームワークの中にイオン電導パスと電子電導パスの両方を有することを特徴とする上記11〜16のいずれかに記載の二次電池、19)ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスをリチウム2次電池の電極として利用し、充電(或いは放電)レートを0.1A/gより10倍(1.0A/g)、さらには100倍(10A/g)まで高くしても、充電(或いは放電)のエネルギー密度はレートが0.1A/g時の6〜7割以上を保つことを特徴とする上記11〜18のいずれかに記載の二次電池、を提供する。
【0018】
本発明はまた、
20)ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスをリチウム2次電池の電極として利用し、表面積の増加により、活物質の酸化物に対して、充電・放電容量が最大理論容量の1.0倍から5.0倍の大容量を有することを特徴とする上記11〜19のいずれかに記載の二次電池、21)ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスをリチウム2次電池の電極として利用し、充電・放電レートを0.1A/gより10倍(1.0A/g)、さらには100倍(10A/g)まで高くしても、高可逆率が95%以上を有していることを特徴とする請求項11〜20のいずれかに記載の二次電池、22)ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスをリチウムの電極として利用し、充電・放電レートを0.1A/gより10倍(1.0A/g)、さらには100倍(10A/g)まで高くしても、数百サイクルの充・放電サイクル後に、初期容量の6から7割以上の高可逆容量を有していることを特徴とする上記11〜21のいずれかに記載の二次電池を提供する。
【0019】
また、本発明は、23)異種金属酸化物を微量添加したナノサイズ微結晶金属酸化物−無機酸化物のガラス相−異種金属酸化物は、充電・放電レートを0.1A/gより100倍、500倍、1000倍のレートにした場合においても、レートが0.1A/g時の4割から7割以上の高可逆容量を有していることを特徴とする上記11〜21のいずれかに記載の二次電池、24) 高可逆率 (r>95%)を有していることを特徴とする上記11〜23のいずれかに記載の二次電池、25)リチウムイオンの酸化・還元を利用したことを特徴とする上記11〜24のいずれかに記載のキャパシタ、スーパーキャパシタ等リチウム貯蔵デバイス、を提供する。
【0020】
また、本発明は、
26)ブロック高分子又は界面活性化剤を鋳型とし、金属アルコキシド又は金属の塩化物、PO(OC2H5)3又はSi(OC2H5)4(TEOS)の水溶液又はこれらをエターノール等のアルコールに溶かした溶液に、塩酸(HCl)を加える工程、ソルーゲル法によってガラス相の金属酸化物−無機酸化物複合メソストラクチャ構造を有する粉末を製造する工程、室温〜90°Cで熟成させゲル化させる工程、これを空気中350-400°Cで加熱処理することによってブロック高分子又は界面活性化剤を除去しガラス相の金属酸化物−ガラス相複合メソポーラス粉末を製造する工程、更にこれを400-700°Cで熱処理することによってガラス相の金属酸化物を微結晶に相転移させる工程からなることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスからなる電極で構成された二次電池の製造方法。27)合成段階でMnO2, NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2などの異種金属酸化物を微量添加し、多元ガラス相を有するナノサイズ微結晶酸化物−無機酸化物のガラス相−異種金属酸化物(−MnO2,−NiO, −Fe2O3, −CuO, −Li2O, −WO3, −SnO2など)からなることを特徴とする前記26記載のナノサイズ微結晶金属酸化物−無機酸化物のガラス相−異種金属酸化物メソポーラスからなる電極で構成された二次電池の製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0021】
三次元構造を有するナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜の製造方法は、極めて簡便な方法であるばかりでなく、ポーラス細孔のサイズと構造を制御することが可能であり、表面積が大きく、規則正しく整列した六方(ヘキサゴナル)又は立方(キュービック)型構造を備え、ポーラス構造のフレームワークはナノサイズ微結晶金属酸化物微結晶と僅かなガラス相(SiO2或いはP2O5)により構築される。以上によるナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜、及びさらに電子電導パスとイオン電導パスを有するナノサイズ微結晶金属酸化物−無機酸化物のガラス相−異種金属酸化物メソポーラスを得ることができるという優れた効果を有する。
また、これによって、早い充・放電レート(例えば、10A/g、20A/g、50A/g)にもかかわらず、容量が大きく、充放電サイクル特性に優れた二次電池を得ることができる。数百サイクルをした後にも高可逆率 (r>96%)を維持しているという著しい効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】三次元構造を有するナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスの構造のイメージを示す図である。
【図2(a)】加熱処理する前後及び複数の異なる温度で再熱処理したナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末の小角度X線回折結果を示す図である。
【図2(b)】加熱処理する前後及び複数の異なる温度で再熱処理したナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末の高角度X線回折結果を示す図である
【図2(c)】ナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5−MnO2(−NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2など)複合メソポーラス粉末の小角度X線回折結果を示す図である。
【図2(d)】ナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5−MnO2(−NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2など)複合メソポーラス粉末の高角度X線回折結果を示す図である。
【図3(a)】400°Cで6時間程度加熱処理してブロック高分子P123を除去したTiO2(アモルファス相)-P2O5(ガラス相)であるメソポーラス複合材料の透過電子顕微鏡写真である。
【図3(b)】500°Cで2時間程度加熱処理したナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末の透過電子顕微鏡写真である。
【図3(c)】ナノサイズTiO2微結晶と僅かガラス相(P2O5)による構築されているフレームワークの透過電子顕微鏡写真である。
【図3(d)】フレームワークの中のナノサイズTiO2微結晶とガラス相(P2O5)の透過電子顕微鏡写真である。
【図3(e)】500°Cで熱処理したナノサイズTiO2微結晶とガラス相(P2O5−MnO2)複合メソポーラス粉末の透過電子顕微鏡写真である。
【図3(f)】フレームワークの中のナノサイズTiO2微結晶とガラス相(P2O5−MnO2)の透過電子顕微鏡写真である。
【図4】ナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末窒素ガス吸着等温曲線と細孔サイズ分布を示す図である。
【図5(a)】ナノサイズ微結晶TiO2−ガラスSiO2複合メソポーラス粉末の小角度X線回折と高角度X線回折結果を示す図である。
【図5(b)】ナノサイズ微結晶TiO2−ガラスSiO2複合メソポーラス粉末の透過電子顕微鏡写真である。
【図5(c)】ナノサイズ微結晶ZrO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末の小角度X線回折と高角度X線回折結果を示す図である。
【図5(d)】ナノサイズ微結晶ZrO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末の透過電子顕微鏡写真である。
【図6】3次元的に細孔のサイズと構造が制御された微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスの小角X線回折パターンと広角X線回折パターンを示す図である。
【図7】3次元的に細孔のサイズと構造が制御された微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスの透過型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【図8】3次元的に細孔のサイズと構造が制御された微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスのサイクリックボルタモグラムである。
【図9】3次元的に細孔のサイズと構造が制御された微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスの定電流充・放電特性を示す図である。
【図10】3次元的に細孔のサイズと構造が制御された微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスのサイクル特性を示す図である。
【図11】3次元的に細孔のサイズと構造が制御された微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)−異種金属酸化物(CuOとSnO2)メソポーラスの定電流充・放電特性を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例になんら拘束されるものではない。すなわち本願発明の技術思想に基づく変形、他の実施態様及び実施例は、全て本願発明に含まれるものである。
本発明のナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜は比表面積が大きく、通常数十m/g以上、特に数百m/gに達する比表面積を得ることができる。これは窒素ガス吸着等温曲線で確認することができた。本発明の酸化物微結晶の平均サイズ(径)は、通常3〜6ナノ(nm)程度となる。
【0024】
また、後述するように、いずれの三次元構造であっても、ポーラス構造のフレームワークは、ナノサイズ微結晶金属酸化物微結晶と僅かな量のガラス相(SiO2、P2O5又はB2O3など)により構築することができる。
ガラス相は通常、2〜10wt%程度の量とする。特に、その量に上限を設ける必要はないが、必要に応じてその量を増やし、例えば10〜20wt%とすることができる。必要に応じて、さらに35wt%程度にすることもできる。
図1は、三次元構造を有するナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスの構造のイメージを示す図である。
図1に示すように、ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合層は、メソポーラス構造のフレームワーク、すなわちメソポーラス構造の壁を構成しており、そのフレームワークの中で、ガラス相を介在してナノ微細結晶が整列している様子が示されている。
【0025】
比表面積が大きく、六方(ヘキサゴナル)又は立方(キュービック)型三次元構造を有するナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末(例として、TiO2-P2O5, ZrO2-P2O5, Nb2O5-P2O5, Nb2O5-SiO2, WO3-P2O5, TiO2-SiO2, WO3-SiO2, ZrO2-SiO2, ZrO2-B2O3, ZrO2-P2O5SiO2, TiO2-P2O5SiO2, TiO2-P2O5B2O3)を製造する。
鋳型としてブロック高分子(例えば:(EO)20(PO)70(EO)20 =Pluronic123, BASF))を使用した。0.8-1.2gの(EO)20(PO)70(EO)20を8-10gのエタノール溶液の中に入れる。水溶液を使用しても良い。
【0026】
次に、2.5g のTi(OC3H7)3(他の金属酸化物としては、Zr(OC4H9)4, NbCl5, LiCl, NiCl2, FeCl3, CuCl2, MnCl2, SnCl4又はWCl5などを使用することができる)を加え、攪拌しながら、1g 0.5Nの塩酸(HCl)を滴下し、さらに1gのPO(C2H5)3を加えて20時間攪拌し、室温〜90°Cで五日間程度熟成させる。この熟成期間は温度との関連による。これによってゲル化させ、メソストラクチャ構造を有するTiO2(アモルファス相)-P2O5(ガラス相)-P123を合成した。
【0027】
これらのサンプルを空気中350−400°Cで6時間程度、加熱処理することによってブロック高分子P123 =(EO)20(PO)70(EO)20を除去し、フレームワークがTiO2(アモルファス相)-P2O5(ガラス相)であるメソポーラス複合材料を合成した。
次に、更に高い温度領域400−600°Cの温度で、2時間程度加熱処理することによって、アモルファス相のTiO2を成核し、クラスタのTiO2から微結晶TiO2に成長させながら、ナノオーダーで複合化させる。
【0028】
高い温度領域でも安定なガラス相であるP2O5を使用することによって、微結晶TiO2がフレームワークを壊すほど大きな微粒子TiO2に成長させることなく、3-6nmオーダーの均一なTiO2がフレームワークに留まることによって、均一なサイズを有するナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末が得られた。
上記TiO2-P2O5と同様の方法を用いて、ZrO2-P2O5, Nb2O5-P2O5, Nb2O5-SiO2, WO3-P2O5, TiO2-SiO2, WO3-SiO2, ZrO2-SiO2, ZrO2-B2O3, ZrO2-P2O5SiO2, TiO2-P2O5SiO2, TiO2-P2O5B2O3などの三次元構造を有するナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末を得ることができた。
【0029】
(ナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末の構造の制御因子と性質)
ナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末のキャラクタリゼーションは、X線回折、透過電子顕微鏡と窒素ガス吸着等温曲線を用いて行った。
加熱処理(焼結する)前後及び複数の異なる温度で再熱処理したナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末の小角度X線回折(図2(a))と高角度X線回折(図2(b))から、450°C−650°Cまでの再熱処理下のサンプルが、三次元構造を有するナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスであること確認できた。
【0030】
複数の異なる温度で再熱処理した微量な異種金属酸化物(MnO2, NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2など)を添加したナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5−MnO2(−NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2など)複合メソポーラス粉末の小角度X線回折(図2(c))と高角度X線回折(図2(d))から、450°C−650°Cまでの再熱処理下サンプルが、三次元構造を有するナノサイズ微結晶酸化物−多元ガラス複合メソポーラスであること確認できた。
【0031】
また、同様に400°Cで6時間ぐらい加熱処理してブロック高分子P123を除去したTiO2(アモルファス相)-P2O5(ガラス相)であるメソポーラス複合材料の透過電子顕微鏡の写真を図3(a)に示す。これは六方晶(ヘキサゴナル)の構造を示した。
500°Cで2時間程度加熱処理したナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末の透過電子顕微鏡の写真を図3(b)に示す。これも同様に六方晶(ヘキサゴナル)の構造を示した。
ポーラス構造のフレームワークはナノサイズTiO2微結晶と僅かなガラス相(P2O5)により構築されていることが透過電子顕微鏡の写真(図3(c)と図3(d))で確認された。
【0032】
更に、ポーラス構造のフレームワークはナノサイズTiO2微結晶と微量な異種金属酸化物MnO2を添加したガラス相(P2O5−MnO2)による構築されていることが透過電子顕微鏡写真(図3(e)と図3(f))で確認された。
【0033】
窒素ガス吸着等温曲線により、BETプロットによって確認した結果、450°Cで再熱処理したナノサイズ微結晶TiO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末比表面積は約290m/gであった。窒素ガス吸着等温曲線と細孔のサイズ(半径)を図4に示す。本発明においては、50から400m/g範囲の高い比表面積を得ることができる。
【0034】
ガラス相が変わって、ナノサイズ微結晶TiO2−ガラスSiO2複合メソポーラス粉末の小角度X線回折と高角度X線回折結果を図5(a)に、透過電子顕微鏡の写真を図5(b)に示した。
微結晶相の金属酸化物が変わって、ナノサイズ微結晶ZrO2−ガラスP2O5複合メソポーラス粉末の小角度X線回折と高角度X線回折結果を図5(c)に、透過電子顕微鏡の写真を図5(d)に示した。
【0035】
次に、本願発明の二次電池及びリチウム貯蔵デバイスについて説明する。なお、上記メソ細孔を有する三次元構造を備えているナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス材料及びその製造方法については、全て二次電池及びリチウム貯蔵デバイスに適用できるものである。
本発明の3次元的に均一な細孔(ポア)が規則的に配列ナノサイズ微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスからなる電極は、充電又は放電0.1A/gのレートで320〜380mAh/g、10A/gのレートで220〜280mAh/gなどの高可逆容量を有している。
細孔の平均直径は2nm〜6nmであり、六方体又は立方体構造を持つメソポーラスTiO2−P2O5のフレームワークの中に、数ナノオーダー(2〜7nm)のアナタゼTiO2の微細結晶が沢山詰まっている。
【0036】
図6に、本発明のナノサイズ微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスの小角X線回折(XRD)パターンと広角X線回折パターンを示す。
小角X線回折(XRD)パターンでは、六方晶構造の(100)、(110)及び(200)の回折ピークが見られる。
また、広角X線回折パターンでは、アナタゼTiO2構造の(101)、(004)、(200)、(211)と(204)の5個の回折ピークがはっきり見られる。このようなブロードな回折ピークは、アナタゼTiO2の微細結晶のサイズが大体4−5ナノであることを示唆している。
【0037】
図7に、本発明の3次元的に均一な細孔(ポア)が規則的に配列した微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスの透過型電子顕微鏡で観察した結果を示す。約4nmの均一な細孔(ポア)を有する整列した六方体構造を有する微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスが確認できる。
本発明の3次元的に均一な細孔(ポア)が規則的に配列した微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスの1.0V〜4.0V(vs.Li/Li)の電位におけるサイクリックボルタンメトリーを図8に示す。スキャン速度は0.1mV/sである。
【0038】
また、3次元的に規則的に配列した均一な細孔(ポア)を有する微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスの定電流充・放電特性を図9に示す。充・放電の電流密度は0.1A/g、0.5A/g、2A/g、10A/gである。定電流充放電することにより、アナタゼTiO2へリチウムのインターカレーション容量を測定することが出来る。
放電(還元)プロセスでは、電流密度は0.1A/g、0.5A/g、2A/gと10A/gに対して、放電容量はそれぞれ382mAh/g、373mAh/g、347mAh/gと257mAh/gである。また、電流密度は0.1A/g、0.5A/g、2A/gと10A/gに対して、充電容量はそれぞれ347mAh/g、342mAh/g、333mAh/gと243mAh/gである。
【0039】
図10に、3次元的に細孔のサイズと構造が制御された微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスのサイクル特性(充・放電の電流密度=10A/g)を示す。
2回目の放電容量(リチウムのインターカレーション)と充電容量(リチウムのデインターカレーション)は、ほぼ240mAh/g(LixTiO2, x=0.7)前後であり、充放電の数百サイクル後でも約180mAh/g(LixTiO2, x=0.5-0.6) 前後で安定している。
【0040】
以上、微結晶金属酸化物については、代表的なTiO2を用いた場合について説明したが、他の微結晶金属酸化物であるTiO2、NiO、MnO2, FeO, Fe2O3, Fe3O4, CoO, CoO2, CrO2, Co3O4, WO3, SnO, SnO2についても、またこれらの混合物についても、同様な結果を得ることができた。
ガラス相については(P2O5)を用いて説明したが、他の材料すなわちSiO2又はB2O3の無機酸化物でも同様の結果が得られた。
【0041】
図11に、3次元的に細孔のサイズと構造が制御された微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)−異種金属酸化物(CuOとSnO2)メソポーラスの定電流充・放電特性を示す。
放電の電流密度が20A/gの時に、TiO2-P2O5、TiO2-P2O5-SnO2とTiO2-P2O5-CuOの放電容量密度は、それぞれ65mAh/g、195mAh/gと270mAh/gである。
また、TiO2-P2O5-SnO2に対して、放電(還元)プロセスでは、電流密度は10A/g、20A/g、50A/gに対して、放電容量はそれぞれ、230mAh/g、195mAh/g、178mAh/gである。
【0042】
電子電導性を有する異種金属酸化物を微量添加することによって、微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスのフレームワーク中のガラスネットワークにおいて、電子電導性金属酸化物による電子電導パスが構築された。
それによって、さらなる高速定電流充・放電特性が良くなる。図11のTiO2-P2O5-SnO2とTiO2-P2O5-CuOの結果はそれを示唆している。
この他、MnO2, NiO, Fe2O3, Li2O, WO3から選択した1成分以上を添加しても、同様の効果が得られた。
【0043】
本発明の3次元的に均一な細孔(ポア)が規則的に配列した微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)メソポーラスと微結晶金属酸化物(TiO2)−無機酸化物のガラス相(P2O5)−異種金属酸化物(CuOとSnO2)メソポーラスの大電流充・放電の容量から求めたエネルギー密度とパワー密度は、電気自動車に要求されるスーパーキャパシタの目標値を超えている。
つまり、微結晶金属酸化物−無機酸化物のガラス相−異種金属酸化物メソポーラスは、スーパーキャパシタとして、電気自動車への応用も可能であることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、三次元構造を有するナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスの製造方法は極めて簡便な方法であるばかりでなく、ポーラス構造のフレームワークはナノサイズ微結晶と僅かなガラス相により構築されているという特徴を有する。
この特性に基づき、リチウムインタカレーション電気デバイス、光触媒デバイス、太陽電池、エネルギー貯蔵デバイス技術に適用できる。
そしてまた、本発明の、微結晶金属酸化物(TiO2、NiO、MnO2, FeO, Fe2O3, Fe3O4, CoO, CoO2, CrO2, Co3O4, WO3, SnO, SnO2から選択した1種以上の金属酸化物)−無機酸化物のガラス相(P2O5、SiO2、B2O3から選択した1種以上)−異種金属酸化物(MnO2, NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2から選択した1種以上)からなるメソポーラスは、2次電池(リチウム2次電池を含む)、電気化学キャパシタ、表面擬似容量キャパシタ、スーパーキャパシタ等エネルギー貯蔵デバイスへの応用が可能である。
本発明の、三次元構造を有する3次元的に細孔のサイズと構造が制御された微結晶金属酸化物−無機酸化物のガラス相−異種金属酸化物メソポーラスは、製造工程が極めて簡便であるばかりでなく、ポーラス細孔のサイズと構造を制御することが可能である。
また、表面積が大きく、規則正しく整列した六方晶(ヘキサゴナル)又は立方晶(キュービック)構造を備えており、特に、フレームワークの中に、数ナノオーダー(2〜7nm)の活物質である金属酸化物の微細結晶が、多数詰まっている構造を有する。
ナノ細孔の中に、電解液とリチウムイオンが簡単に入れるので、ナノ細孔がイオン電導パスとなり、またガラス相に添付した異種金属酸化物が電子電導ガスとなる特徴を備えている。これらの特徴を利用して、さらに高速充・放電の二次電池用電極材料への応用が可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則的に配列したメソ細孔を有する三次元構造を備えていることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜。
【請求項2】
六方(ヘキサゴナル)又は立方(キュービック)型の三次元構造を備えていることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜。
【請求項3】
ポーラス構造のフレームワークの中に、均一なナノサイズ微結晶酸化物を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜。
【請求項4】
50から400m/g範囲の高い比表面積を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜。
【請求項5】
ブロック高分子又は界面活性化剤を鋳型とし、金属アルコキシド又は金属の塩化物、PO(OC2H5)3又はSi(OC2H5)4(TEOS)の水溶液又はこれらをエターノール等のアルコールに溶かした溶液に、塩酸(HCl)を加える工程、ソルーゲル法によってガラス相の金属酸化物−無機酸化物複合メソストラクチャ構造を有する粉末を製造する工程、室温〜90°Cで熟成させゲル化させる工程、これを空気中350-400°Cで加熱処理することによってブロック高分子又は界面活性化剤を除去しガラス相の金属酸化物−ガラス相複合メソポーラス粉末を製造する工程、更にこれを400-700°Cで熱処理することによってガラス相の金属酸化物を微結晶に相転移させる工程からなることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜の製造方法。
【請求項6】
ブロック高分子又は界面活性化剤を鋳型とし、金属アルコキシド又は金属の塩化物、PO(OC2H5)3又はSi(OC2H5)4(TEOS)の水溶液又はこれらをエターノール等のアルコールに溶かした溶液に、塩酸(HCl)を加え、pHを調整しながら加水分解を行ってゾル溶液とする工程、基板に該ゾル溶液を滴下し、基板を高速回転させ、溶剤を蒸発させ、ゲル化させることにより基板上に、ガラス相の金属酸化物−無機酸化物−ブロック高分子(又は界面活性化剤)複合メソストラクチャ構造を有する薄膜を形成する工程、室温〜90°Cで熟成させゲル化させる工程、これを空気中350-400°Cで加熱処理することによってブロック高分子又は界面活性化剤を除去しガラス相の金属酸化物−ガラス相複合メソポーラス薄膜を形成する工程、更にこれを400-700°Cで熱処理することによってガラス相の金属酸化物を微結晶に相転移させる工程からなることを特徴とするナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス薄膜の製造方法。
【請求項7】
安定なガラス相の無機酸化物が、SiO2、P2O5又はB2O3であることを特徴とする請求項5又は6記載のナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜の製造方法。
【請求項8】
合成段階でMnO2, NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2などの異種金属酸化物を微量添加し、多元ガラス相を有するナノサイズ微結晶酸化物−無機酸化物のガラス相−異種金属酸化物(−MnO2,−NiO, −Fe2O3, −CuO, −Li2O, −WO3, −SnO2など)からなることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のメソポーラス粉末又は薄膜の製造方法。
【請求項9】
金属アルコキシド又は金属の塩化物が、Ti(OC3H7)3, Zr(OC4H9)4, NbCl5, LiCl, NiCl2, FeCl3, CuCl2, MnCl2, SnCl4又はWCl5であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜の製造方法。
【請求項10】
請求項5〜9によって製造されたナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラス粉末又は薄膜を用いることを特徴とするリチウム電池又はリチウムインタカレーション電気デバイス、光触媒デバイス、太陽電池、エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項11】
規則的に配列したメソ細孔を有する三次元構造を備えているナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスからなる電極で構成されていることを特徴とする二次電池。
【請求項12】
細孔の平均直径が2nm〜10nmであることを特徴とする請求項11記載の二次電池。
【請求項13】
六方体又は立方体構造を持つナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスのフレームワークの中に、数ナノオーダーの均一な微結晶酸化物を備えていることを特徴とする請求項11又は12記載の二次電池。
【請求項14】
フレームワークの壁の厚さが2〜9nmであることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の二次電池。
【請求項15】
ナノサイズ微結晶酸化物が、TiO2、NiO、MnO2, FeO, Fe2O3, Fe3O4, CoO, CoO2, CrO2, Co3O4, WO3, SnO, SnO2から選択した1種以上の金属酸化物であることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の二次電池。
【請求項16】
ガラス相が、P2O5、SiO2又はB2O3から選択した1種以上の無機酸化物であることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の二次電池。
【請求項17】
ガラス相は、MnO2, NiO, Fe2O3, CuO, Li2O, WO3, SnO2から選択した1種以上の異種金属酸化物を、前記ガラス相に対してモル比で2%〜60%を含む多元系ガラス相であることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の二次電池。
【請求項18】
ネットワーク状ガラス相の中に、イオン導電性或いは電子導電性の異種金属酸化物を、ガラス相に対してモル比で2%〜60%を添加することにより、フレームワークの中にイオン電導パスと電子電導パスの両方を有することを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の二次電池。
【請求項19】
ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスを二次電池の電極として利用し、充電(或いは放電)レートを0.1A/gより10倍(1.0A/g)、さらには100倍(10A/g)まで高くしても、充電(或いは放電)のエネルギー密度はレートが0.1A/g時の6〜7割以上を保つことを特徴とする請求項11〜18のいずれかに記載の二次電池。
【請求項20】
ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスを二次電池の電極として利用し、表面積の増加により、活物質の酸化物に対して、充電・放電容量が最大理論容量の1.0倍から5.0倍の大容量を有することを特徴とする請求項11〜19のいずれかに記載の二次電池。
【請求項21】
ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスを二次電池の電極として利用し、充電・放電レートを0.1A/gより10倍(1.0A/g)、さらには100倍(10A/g)まで高くしても、高可逆率が95%以上を有していることを特徴とする請求項11〜20のいずれかに記載の二次電池。
【請求項22】
ナノサイズ微結晶酸化物−ガラス複合メソポーラスをリチウムの電極として利用し、充電・放電レートを0.1A/gより10倍(1.0A/g)、さらには100倍(10A/g)まで高くしても、数百サイクルの充・放電サイクル後に、初期容量の6から7割以上の高可逆容量を有していることを特徴とする請求項11〜21のいずれかに記載の二次電池。
【請求項23】
異種金属酸化物を微量添加したナノサイズ微結晶金属酸化物−無機酸化物のガラス相−異種金属酸化物は、充電・放電レートを0.1A/gより100倍、500倍、1000倍のレートにした場合においても、レートが0.1A/g時の4割から7割以上の高可逆容量を有していることを特徴とする請求項11〜21のいずれかに記載の二次電池。
【請求項24】
高可逆率 (r>95%)を有していることを特徴とする請求項11〜23のいずれかに記載の二次電池。
【請求項25】
リチウムイオンの酸化・還元を利用したことを特徴とする請求項11〜24のいずれかに記載のキャパシタ、スーパーキャパシタ等リチウム貯蔵デバイス。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図3(e)】
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【図3(f)】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【国際公開番号】WO2005/047199
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515482(P2005−515482)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016981
【国際出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】