ナノホール構造体及びその製造方法、並びに、磁気記録媒体及びその製造方法
【課題】 磁気記録媒体、DNAチップ、触媒基板等に好適なナノホール構造体の効率的で低コストな製造方法、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適であり、大容量で高速記録が可能な磁気記録媒体の効率的で低コストな製造方法等の提供。
【解決手段】 金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行うナノホール構造体の製造方法である。基板上に、請求項1から3のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程と、該ナノホール構造体におけるナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【解決手段】 金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行うナノホール構造体の製造方法である。基板上に、請求項1から3のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程と、該ナノホール構造体におけるナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体、DNAチップ、触媒基板等に好適なナノホール構造体及びその効率的で低コストな製造方法、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適であり、大容量で高速記録が可能な磁気記録媒体及びその効率的で低コストな製造方法、並びに、該磁気記録媒体を用いた磁気記録装置及び磁気記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IT産業等における技術革新に伴い、磁気記録媒体の大容量化・高速化・低コスト化の研究開発が盛んに行われてきている。該磁気記録媒体の大容量化・高速化・低コスト化のためには、該磁気記録媒体における記録密度の向上が必須である。従来より、該磁気記録媒体における連続磁性膜の水平記録により、該磁気記録媒体の記録密度を向上させる試みがなされてきたが、技術的には限界を迎えつつある。その理由は、第一に、前記連続磁性膜を形成する磁性粒子の結晶粒が大きいと複雑磁区を生じてノイズが大きくなってしまう一方、これを避けるために前記結晶粒を小さくすると熱揺らぎにより、磁化が経時的に減少してエラーが生じてしまうからである。第二に、前記磁気記録媒体の記録密度を高めると相対的に記録減磁界が大きくなるため、該磁気記録媒体の保磁力を大きくする必要がある一方、記録ヘッドの書込み能力が不足してオーバーライト特性が確保できなくなるからである。
【0003】
最近では、前記水平記録に代わる新しい記録方式に関する研究が盛んに行われてきている。その一つが、前記磁気記録媒体における磁性膜を、連続膜とせずにドット、バー、ピラー等のパターン状とし、そのサイズをナノメートルスケールにすることにより複雑磁区ではなく単磁区構造としたパターンドメディアを用いる記録方式である(非特許文献1参照)。他の一つが、前記水平記録に比し、記録減磁界が小さいため高密度化が可能で、記録層を極端に薄くする必要がないため記録磁化の熱揺らぎに対する耐性向上が可能である垂直記録による記録方式である(特許文献1参照)。該垂直記録による記録方式については、軟磁性膜と垂直磁化膜とを併用する提案などがなされているが(特許文献2参照)、単磁極ヘッドによる書込み性が十分でない等の点で、軟磁性下地層を形成する提案(特許文献3参照)などが更になされている。前記垂直記録による記録方式にて磁気記録媒体に対し、磁気記録を行う一例としては、図1に示すように、垂直磁気記録方式の書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100の主磁極102を、磁気記録媒体の記録層30に対向させる。該磁気記録媒体は、基板上に、軟磁性層10と中間層(非磁性層)20と記録層(垂直磁化膜)30とをこの順に有している。書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100の主磁極102から記録層(垂直磁化膜)30側へと高い磁束密度で入力された記録磁界は、記録層(垂直磁化膜)30から軟磁性層10へと、軟磁性層10から書込兼読取用ヘッド(ライト&リードヘッド)100の後半部104へと流れ、磁気回路が形成される。後半部104における記録層(垂直磁化膜)30との対向する部分は、大面積に形成されているので、記録層(垂直磁化膜)30に与える磁化の影響はない。該磁気記録媒体における軟磁性層10は、書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100の機能までも担っている。
【0004】
しかし、この場合、軟磁性層10が、書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100から入力された記録磁界以外に、外部から漏洩してくる浮遊磁界までも記録層(垂直磁化膜)30に対し集中させ磁化させてしまい、記録ノイズが大きくなってしまうという問題がある。一方、上述の磁性膜をパターン状にする場合には、該パターニングが容易でなく高コスト等の問題がある。他方、上述の軟磁性下地層を形成する場合には、磁気記録の際に前記単磁極ヘッドと該軟磁性層下地層との間の距離を短くしなければならず、該距離が大きいと、図2A及びBに示すように書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100から軟磁性下地層10に向かう磁束が距離と共に発散してしまい、軟磁性下地層10上に設けられた記録層(垂直磁化膜)30の下部では広がった磁界での記録しかできず、大きなビットしか書けないという問題がある。この場合、書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100による書込み電流も増やさなくてはならず、また、大きなビットを書いた後で小さなビットを書くと、大きなビットの消し残りが大きくなり、オーバーライト特性が悪化してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、前記パターンドメディアを用いる記録方式と、前記垂直記録による記録方式とを併せた新しい磁気記録媒体として、陽極酸化アルミニウムナポアのポア中に磁性金属を充填してなる磁気記録媒体も提案されている(特許文献4参照)。該磁気記録媒体は、図3に示すように、基板110上に、下地電極層120と陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)とをこの順に有してなり、陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)には多数のアルミニウムナポアが秩序配列して形成されており、該アルミニウムナポア中に強磁性金属が充填されて強磁性層140が形成されている。
【0006】
しかしながら、この場合、陽極酸化アルミニウムナポア130を秩序配列させるためには、通常500nmを超える厚みものアルミニウムナ層が必要となり、たとえ前記軟磁性下地層を設けたとしても高密度記録を行うことができないという問題がある。このため、陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)を研磨して厚みを薄くすることも検討されているが、該研磨は容易でない上に時間を要し高コストであり、品質劣化の原因となるという問題がある。実際、1Tb/in2をターゲットにした線記録密度1500kBPIで磁気記録を行うためには、前記単磁極ヘッドと前記軟磁性下地層との間の距離を25nm程度にし、陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)の厚みを20nm程度にする必要があり、陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)の研磨の手間等が大きな問題となる。
【0007】
なお、前記陽極酸化アルミニウムナポア中に磁性材料を充填してなる磁気記録媒体は、該陽極酸化アルミニウムナポアが露出面に対して垂直方向に細長く(高アスペクト比で)成長しているため、垂直方向に磁化し易く、この充填された磁性材料の形状異方性により、熱揺らぎに強いという利点がある。また、通常、前記陽極酸化アルミニウムナポアがハニカム型の六方最密格子状に自己組織化的に発生するため、リソグラフィ的手法で1ドットずつドット形成する方法に較べて低コストで製造することができるという利点がある。
【0008】
しかしながら、前記陽極酸化アルミニウムナポアは、六方最密格子等のような、あくまで2次元的に配列形成されるので、磁気記録的な観点からは、隣り合うビット列の間に間隙を設けることができないという問題がある。即ち、前記パターンドメディアにおいては、1ドットに1ビットを記録するのが理想であるが、線方向(円周方向)と同じピッチで半径方向にもドットが存在するため、隣り合うトラックへのクロスライト又はクロクリードが生じてしまうという致命的な問題がある。そこで、例えば、図4に示すように、1ビット(図4中の63)を数個から数10個又はそれ以上のドット(図4A及びB中の61)にせざるを得ないが、この場合でも、依然として、前記クロスライト又はクロスリードが生じてしまうという問題が存在する。
【0009】
そこで、前記陽極酸化アルミニウムナポアを理想配列の状態で得ることが望まれるが、従来においては、このような技術として、以下の2つの方法が知られている。
一つは、一旦、通常の陽極酸化法によってアルミニウム基板に対して十〜数百μmの厚みの陽極酸化アルマイト部を形成し、ポア下端部の配列を十分に自己組織化、秩序化させた後で該アルマイト部を剥離し、その後、剥離した該アルマイト部と前記アルミニウム基板との界面に残った、規則配列した微細な凹部を起点にして再度、陽極酸化法によって所望の深さの理想配列を有する陽極酸化アルマイトポアを得る「2段階陽極酸化法」である。即ち、この2段階陽極酸化法では、図5に示すように、まず、スパッタ法等によって、磁気ディスク用の表面が平滑な基板11上に軟磁性下地層(図中では省略)を形成し、厚めのアルミニウム層1を形成する。図6に示すように、アルミニウム層1を、陽極酸化法によってアルマイトポア2を形成し、アルマイトポア2の底を自己組織化によって秩序配列させる。アルマイトポア2の配列は、陽極酸化開始時は乱雑状態にあるものの、陽極酸化の進行に伴って秩序状態になるが、秩序状態にあるには最低でも10μm程度は陽極酸化を進行させることが必要となり、このため、アルミニウム層1の厚みも10μm又はそれ以上とすることが必要とされる。そして、図7に示すように、形成したアルマイトポア2部を、例えばクロム・リン酸等の酸性水溶液中で剥離除去することにより、表面に秩序配列した凹凸パターンを有するアルミニウム層1を作製し、図8に示すように、それを再び同条件で陽極酸化することによって所望の深さの秩序配列したアルマイトポア2を得ていた。この2段階陽極酸化法は、その原理として自己組織化のみを利用しているため、大面積化に適しているという利点がある。
【0010】
しかし、この場合、前記アルミニウム層を厚めに形成することが必要な上に、形成した該アルミニウム層を長時間かけて陽極酸化することが必要になり、スループットが非常に悪いという問題がある。例えば、HD膜に必要とされるような表面粗さRaがnmレベルの平滑性を有する、厚み10μm以上のアルミニウム層を、成長速度30nm/minでスパッタ法により形成する場合には、5時間もの時間が必要となる。一枚の基板から大量のチップが作製可能な半導体プロセスと異なり、一枚の基板から一枚の磁気記録媒体しか作製できないHDにおいては、このような長時間プロセスを量産に対応させることは現実的でない。また、得られる理想配列にも制限があり、個々のドメイン内では理想配列が得られるもののそのドメインサイズはμmサイズレベル(図9C)までであり、例えば、HD基板サイズでシングルドメイン構造となるようなもの(図9B)を得ることは不可能であるという問題がある。また、現在公知の陽極酸化条件の場合、アルマイトポアのピッチも、電圧25V、40V、195Vの時の60nm、100nm、500nmの3種類に限定され、超高密度記録HDで期待されるような20〜30nmピッチのものを作製することはできないという問題がある(非特許文献2参照)。
【0011】
他の一つは、電子線リソグラフィ、近接場光リソグラフィ等のナノサイズ加工の可能なパターンニング技術を用いて、電着NiやSiC等の高硬度材料を使った理想配列のモールドパターンを形成しておき、これを直接、アルミニウム層の表面にプレス転写する「ダイレクトプリント法」、あるいは、アルミニウム層の表面に塗布したポリマー等にプレス転写した後、ポリマーごとアルミニウム表面をエッチングすることで、2段階陽極酸化法と同様に、起点となる凹凸を形成し、これを陽極酸化することにより、所望の深さのアルマイトポアを得るという「インプリント法」である。
即ち、前記ダイレクトプリント法を用いたパターンドメディア用アルマイトの作製プロセスにおいては、図10に示すように、まず、スパッタ法等によって、磁気ディスク用の表面が平滑な基板11上に軟磁性下地層(図中では省略)を形成し、厚みが100nm程度のアルミニウム層1を形成し、図11に示すように、アルミニウム層1にNi、SiC等の高硬度材料で作製したナノパターンモールドを1〜4ton/cm2等の圧力でプレス転写した後で、図12に示すように、陽極酸化することによって秩序配列したアルマイトポアを得る(図13参照)。また、前記インプリント法を用いたパターンドメディア用アルマイトの作製プロセスにおいては、図14に示すように、まず、スパッタ法等によって、磁気ディスク用の表面が平滑な基板11上に軟磁性下地層(図中では省略)を形成し、厚みが100nm程度のアルミニウム層1を形成し、図15に示すように、アルミニウム層1にレジスト層6を積層する。そして、図16に示すように、レジスト層6に、Ni、SiC等の高硬度材料で作製したナノパターンモールドをプレス転写した後(図17参照)、図18に示すように、残レジスト層6を剥離除去した後、図19に示すように、陽極酸化することによって秩序配列したアルマイトポアを得る。
このダイレクトプリント法又はインプリント法においては、前記2段階陽極酸化と異なり、ピッチはリソグラフィの限界の中で自由であり、また、モールドサイズ内ではシングルドメイン構造が保証されるという利点がある。
【0012】
しかし、前記ダイレクトプリント法の場合、秩序配列したアルマイトポアを実際に1〜2.5インチハードディスク媒体サイズで実現しようとすると、前記アルミニウム層に直接、凹凸をプレス転写する際に極めて大きな圧力が必要になるため、前記アルミニウム層が設けられた基板乃至モールドそのものに割れが生じたり、歪んだりしてHD磁気記録媒体に要求される面精度が得られなくなるという問題がある。また、前記インプリント法の場合、プレス転写前後でポリマーを塗布し、パターンを転写し、エッチングし、残ポリマーを剥離除去することが必要になり、3工程増となり、コスト高となり、生産性が低いという問題がある。
【0013】
【非特許文献1】S.Y.Chou Proc.IEEE 85(4),652(1997)
【非特許文献2】Masuda et al.,J.Vac.Sci.Tec.B Vol.19(2),p569(2001)
【特許文献1】特開平6−180834号公報
【特許文献2】特開昭52−134706号公報
【特許文献3】特開2001−283419号公報
【特許文献4】特開2002−175621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、磁気記録媒体をはじめ、DNAチップ、触媒基板等の各種分野に好適なナノホール構造体及び該ナノホール構造体を破損等が生ずることがなく効率的かつ低コストに製造することが可能な製造方法、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適であり、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質な磁気記録媒体及び該磁気記録媒体を基板等に破損等が生ずることがなく効率的かつ低コストに製造することが可能な製造方法、並びに、該磁気記録媒体を用い、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性に優れた磁気記録装置及び磁気記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行うことを特徴とするナノホール構造体の製造方法である。
該ナノホール構造体の製造方法においては、金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いて前記金属層にナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行う。このため、前記ナノホール形成用起点を形成する際に前記金属層に割れ、破損等が生ずることがない。
【0016】
<2> 本発明の前記ナノホール構造体の製造方法により製造されることを特徴とするナノホール構造体である。
該ナノホール構造体は、前記ナノホールに磁性材料を充填しておけばハードディスク装置等の磁気記録媒体とすることができ、また、前記ナノホールにDNA等を配しておけばDNAチップ等とすることができ、前記ナノホールに抗体等を配しておけば蛋白質検出装置、診断装置等をすることができ、前記ナノホールに例えばカーボンナノチューブ形成用等の触媒金属を充填しておけば、カーボンナノチューブ等の形成基板、電界放出装置等とすることができる。
【0017】
<3> 基板上に、本発明の前記ナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程と、該ナノホール構造体におけるナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
該磁気記録媒体の製造方法では、前記ナノホール構造体形成工程において、基板上に、上述した本発明のナノホール構造体を形成する。即ち、前記基板上に金属層を形成し、該金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いて前記金属層にナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行う。その結果、前記基板上に本発明の前記ナノホール構造体が形成される。このとき、前記ナノホール形成用起点は、前記特定のブリネル硬度を有する前記導電性材料に形成されるため、前記ナノホール形成用起点の形成の際に前記基板に割れ、破損等が生ずることがない。次に、前記磁性材料充填工程において、前記ナノホールの内部に磁性材料を充填する。その結果、前記ナノホールに前記磁性材料が充填されてなる磁気記録媒体が、効率よく製造される。
前記磁気記録媒体の製造方法の一態様においては、前記ナノホール形成用起点が、前記導電性材料に形成した凹部であり、例えば、前記ナノホール形成用起点が、前記モールドを用いて導電性材料に刻印により形成されてなる。このとき、前記導電性材料は、前記特定のブリネル硬度を有するので、前記モールドに加える圧力が大きくなくとも、前記基板上に形成した前記金属層上に配された前記導電性材料に容易に前記ナノホール形成用起点を刻印することができ、該ナノホール形成用起点を形成する際に、従来におけるように、前記基板に割れ、破損等が生ずることがない。
前記磁気記録媒体の製造方法の他の態様においては、前記ナノホール形成用起点が、導電性材料と金属層の金属との合金であり、例えば、前記導電性材料と前記金属層の金属との合金が、該導電性材料と該金属層とが接触した状態で加熱することにより形成されてなる。このとき、前記ナノホール形成用起点を形成する時に、前記基板に大きな圧力を印加することがないため、従来におけるように、前記基板に割れ、破損等が生ずることがない。
【0018】
<4> 本発明の前記磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成されたナノホール構造体に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録体である。
該磁気記録媒体においては、前記磁性材料が充填されたナノホールが規則的に配列してなるナノホール列が一定間隔で配列しているので、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質である。そして、該磁気記録媒体は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適である。
【0019】
<5> 前記<4>に記載の磁気記録媒体と、垂直磁気記録用ヘッドとを有することを特徴とする磁気記録装置である。該磁気記録媒体においては、前記磁気記録媒体に対し、前記垂直磁気記録用ヘッドが記録を行うので、該磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質である。また、前記磁気記録媒体に対し、単磁極ヘッド等の前記垂直磁気記録用ヘッドを用いて磁気記録を行うと、該垂直磁気記録用ヘッドと前記軟磁性層との間の距離が、前記多孔質層の厚みよりも短く、前記強磁性層の厚みと略等しくなるため、前記多孔質層の厚みに拘らず前記強磁性層の厚みだけで、前記垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。この場合、図20に示すように、前記単磁極ヘッド(書込兼読取用ヘッド100)からの磁束が前記強磁性層(垂直磁化膜)30に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
<6> 前記<4>に記載の磁気記録媒体に対し、垂直磁気記録用ヘッドを用いて記録を行うことを含むことを特徴とする磁気記録方法である。該磁気記録方法においては、前記磁気記録媒体に対し、前記垂直磁気記録用ヘッドが記録を行うので、該磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がない。また、前記磁気記録媒体に対し、単磁極ヘッド等の前記垂直磁気記録用ヘッドを用いて磁気記録を行うと、該垂直磁気記録用ヘッドと前記軟磁性層との間の距離が、前記多孔質層の厚みよりも短く、前記強磁性層の厚みと略等しくなるため、前記多孔質層の厚みに拘らず前記強磁性層の厚みだけで、前記垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。この場合、図20に示すように、前記単磁極ヘッド(書込兼読取用ヘッド100)からの磁束が前記強磁性層(垂直磁化膜)30に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、磁気記録媒体をはじめ、DNAチップ、触媒基板等の各種分野に好適なナノホール構造体及び該ナノホール構造体を破損等が生ずることがなく効率的かつ低コストに製造することが可能な製造方法、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適であり、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質な磁気記録媒体及び該磁気記録媒体を基板等に破損等が生ずることがなく効率的かつ低コストに製造することが可能な製造方法、並びに、該磁気記録媒体を用い、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性に優れた磁気記録装置及び磁気記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(ナノホール構造体及びその製造方法)
本発明のナノホールの製造方法は、ナノホール形成用起点形成工程と、ナノホール形成処理工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
【0022】
−ナノホール形成用起点形成工程−
前記ナノホール形成用起点形成工程は、金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成する工程である。
【0023】
−−金属層−−
前記金属層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属単体、合金などのいずれであってもよく、その中でも、例えば、アルミニウムが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記金属層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、前記金属層の材料をスパッタ法(スパッタリング)、蒸着法などにより好適に行うことができる。該金属層の形成条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記スパッタ法の場合、前記金属層の材料で形成されたターゲットを用いてスパッタリングを行うことができる。この場合に用いる前記ターゲットは、高純度であるのが好ましく、前記金属層の材料がアルミニウムである場合には、99.990%以上であるのが好ましい。
【0025】
前記金属層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、500nm以下が好ましく、5〜200nmがより好ましい。
前記金属層の厚みが、500nmを超えると、ナノホール内に他の材料等を充填するのが困難になることがある。
【0026】
前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、円板状(ディスク状)、などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、円板状(ディスク状)であるのが好ましい。
なお、前記形状が前記板状、円板状等である場合には、前記ナノホール(細孔)は、これらの一の露出面(板面)に対し、略直交する方向に形成するのが好ましい。
【0027】
−−導電性材料−−
前記導電性材料としては、前記金属層の材料よりも低硬度のものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、そのブリネル硬度が、前記金属層の金属のブリネル硬度未満であるものが好ましく、前記金属層の金属のブリネル硬度の1/5以下であるものがより好ましく、前記金属層の金属のブリネル硬度の1/10以下であるものが特に好ましい。
前記導電性材料のブリネル硬度が、前記金属層の金属のブリネル硬度以上であると、該導電性材料に前記ナノホール形成用起点を形成する際に前記金属層の硬度が高すぎるため、該金属層に割れ、破損等が生じるおそれがある。
なお、前記ブリネル硬度としては、例えば、Inでは0.9、Snでは5.3、Biでは7であり、なお、前記金属層の材料として好適なAlでは17とされている(日本金属学会編「金属データブック」参照)。
【0028】
前記導電性材料の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、金属が好適に挙げられ、In、Sn、Bi、及びこれらの合金から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、Inが特に好ましい。
前記導電性材料が前記材料で形成されている場合には、該導電性材料に前記ナノホール形成用起点を形成するのが容易であり、かつ大きな力を前記金属層に印加することが必要なく、前記ナノホール形成用起点を形成する際に前記金属層等に割れ、破損等の問題が生じない点で有利である。
【0029】
また、前記導電性材料としては、前記金属層の金属の融点未満の温度で該金属と共晶化可能であるものが好ましく、100〜700℃で前記金属層の金属と共晶化可能であるものがより好ましい。なお、このような導電性材料としては、例えば、In、Sn、Bi、これらの合金が好ましく、Inが特に好ましい。
前記導電性材料が前記金属層の金属の融点未満の温度で該金属と共晶化不能である場合には、前記ナノホール形成用起点を形成する際に前記導電性材料と前記金属層の金属との合金を形成することができず、効率よく前記ナノホール形成用起点を形成することができないことがある。
【0030】
−−ナノホール形成用起点−−
前記ナノホール形成用起点としては、前記ナノホールを形成するための起点として機能するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記導電性材料に形成した凹部、前記導電性材料と前記金属層の金属とで形成した合金、などが好適に挙げられる。
【0031】
前記凹部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、その深さが、前記金属基板の表面の表面粗さRaの10倍以上であるのが好ましく、10〜20nmであるのがより好ましい。
前記凹部の深さが、前記金属層の金属の表面粗さRaの10倍未満であると、前記ナノホール形成用起点として十分に機能しないことがあり、前記ナノホールの形成効率に劣ることがある。
【0032】
前記凹部の径(開口径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、形成する前記ナノホールの径の1/3以上であるのが好ましく、該ナノホールの径の1/2以上であるのがより好ましい。
前記凹部の径(開口径)が、形成する前記ナノホールの径(開口径)の1/3未満であると、前記ナノホール形成用起点として十分に機能しないことがある。
【0033】
前記ナノホール形成用起点が前記凹部である場合、該ナノホール形成用起点の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モールドを用いて前記導電性材料を押圧して刻印により形成する方法、などが好適に挙げられる。
この場合、前記導電性材料は、前記金属層上に層状に形成されているのが好ましい。また、この場合、前記モールドにおけるパターンが前記導電性材料に刻印、即ちダイレクトプリント法により形成されるが、該導電性材料のブリネル硬度が、前記金属層の金属のブリネル硬度未満であるので、前記刻印(ダイレクトプリント)時におけるプレス圧を下げることができ、レジスト等を使用した場合に比し工程数を減らすことができ、また、高プレス圧印加による前記基板に歪みや割れ等の欠陥が生ずるのを効果的に抑制することができる。
【0034】
前記モールドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記導電性材料に、前記凹部を刻印により形成するための凸部を有するものが好ましい。
前記凸部の形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、角錐形状、円錐形状、半円形状(半球形状)、山形状などが挙げられる。
前記モールドの材質としては、特に制限はなく、高硬度の材料として知られているものの中から適宜選択することができ、例えば、Ni、SiCなどが特に好適に挙げられる。
前記モールドにより前記導電性材料に刻印を行う場合の圧力としては、前記金属層に割れ、破損等が生じない限り、特に制限はなく、例えば、直径2.5インチの円形当り、10トン以下の圧力であるのが好ましく、5トン以下の圧力であるのがより好ましく、1トン以下の圧力であるのが特に好ましい。
前記圧力が、直径2.5インチの円形当り、10トン超であると、刻印の際に反り、割れ、変形等が生じることがある。
【0035】
前記合金の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)スルーホール型のマスク、通常のリソグラフィ等を利用して、前記金属層(アルミニウム層)上に、該金属層の材料(アルミニウム)と共晶化可能な前記導電性材料(金属)によるパターンを形成し、該パターン部を昇温して該導電性材料(金属)と前記金属層の材料とを合金化させる方法、(2)スルーホール型のマスク、通常のリソグラフィ等を利用して、一旦、平滑な表面の部材(基板)上に、前記金属層の材料と共晶化可能な前記導電性材料(金属)によるパターンを形成し、該パターンと前記金属層(アルミニウム層)とを密着させた状態で昇温することにより、該パターン部と接触した前記金属層の材料を合金化させる方法、(3)スルーホール型のマスク、通常のリソグラフィ等を利用して、一旦、平滑な表面の熱収縮フィルム上に、前記金属層の材料と共晶化可能な前記導電性材料(金属)によるパターンを形成し、該熱収縮フィルムを熱収縮させてから、該熱収縮フィルム上に形成した前記パターンと前記金属層(アルミニウム層)とを密着させた状態で昇温することにより、該パターンと接触した前記金属層(アルミニウム層)を合金化させる方法、などが好適に挙げられる。
前記(1)から(3)の方法の場合、前記ナノホール形成用起点を形成するに際し、前記金属層に高プレス圧を印加する必要がないので、レジスト等を使用した場合に比し工程数を減らすことができ、また、高プレス圧印加による前記基板に歪みや割れ等の欠陥が生ずるのを効果的に抑制することができる。
【0036】
なお、前記(2)の方法において用いる前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、セラミックス、などが挙げられる。前記(3)の方法の場合、前記導電性材料によるパターンを微細に形成しておく必要がないため、前記ナノホール形成用起点の形成が容易である点で好ましい。また、前記熱収縮フィルムを収縮させるのに必要な温度と、前記導電性材料(金属)が軟化する温度とが近くなるようにしておくと、該熱収縮フィルムの収縮時に該熱収縮フィルムにストレスがかかって前記導電性材料(金属)によるパターンがくずれるのを防止することができる。
【0037】
この場合、前記導電性材料としては、上述した、前記金属層の金属の融点未満の温度で該金属と共晶化可能であるものが好ましく、100〜700℃で前記金属層の金属と共晶化可能であるものがより好ましい。なお、このような導電性材料としては、例えば、In、Ga、Sn、Bi、これらの合金などが好ましく、Inが特に好ましい。
また、前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100〜700℃が好ましく、400〜600℃がより好ましい。
前記加熱の温度が、100℃未満であると、前記導電性材料が前記金属層の材料と共晶化せず、合金が形成されないことがあり、一方、700℃を超えると、前記金属層の材料がアルミニウム等である場合には該金属層自体が溶融してしまうことがある。
【0038】
前記ナノホール形成用起点の前記金属層上での位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ナノホール構造体を磁気記録媒体に適用する場合には、前記ナノホール形成用起点が規則的に配列してなる列(ナノホール形成用起点列)が一定間隔で配列しているのが好ましく、また、前記ナノホール形成用起点が、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに位置するのが好ましく、前記金属層が円形である場合には、隣接するナノホール形成用起点列におけるナノホール形成用起点が、前記金属層の半径方向に配列しているのがより好ましい。
これらの場合、得られる磁気記録媒体を、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録を可能とし、大容量化でき、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質なものとすることができる点で有利である。
【0039】
前記ナノホール形成用起点の隣接するものどうしの間隔としては、5〜500nmが好ましく、10〜60nmがより好ましい。
【0040】
−ナノホール形成工程−
前記ナノホール形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陽極酸化処理、エッチング処理、などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記金属層の板面に略直交する方向に多数のナノホールを略等間隔にかつ均等に配列形成することができる等の点で、陽極酸化処理が特に好ましい。
前記陽極酸化処理の場合、硫酸、リン酸あるいはシュウ酸の水溶液中で、前記金属層に接する電極を陽極として電気分解エッチングさせることにより行うことができる。該電極としては、前記金属層を形成するのに先立って形成した、後述の軟磁性下地層、電極層などが挙げられる。前記陽極酸化処理を行うと、前記ナノホール形成用起点上にのみ、効率的に前記ナノホールを一定間隔で形成することができる点で有利である。
【0041】
なお、前記陽極酸化処理における電解液の種類、濃度、温度、時間等としては、特に制限はなく、形成するナノホールの数、大きさ、アスペクト比等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記電解液の種類としては、隣接する前記ナノホール列の間隔(ピッチ)が、150nm〜500nmである場合は、希釈リン酸溶液が好適に挙げられ、80nm〜200nmである場合は、希釈蓚酸溶液が好適に挙げられ、10nm〜150nmである場合は、希釈硫酸溶液が好適に挙げられる。いずれの場合も、前記ナノホールのアスペクト比の調整は、陽極酸化処理後にリン酸溶液に浸漬させて前記ナノホール(アルミニウムナポア)の直径を増加させることにより行うことができる。
【0042】
前記陽極酸化処理における印加電圧としては、例えば、次式、ナノホール(列)の間隔(nm)÷A(nm/V) (ただし、A=1.0〜4.0)、で与えられる値の電圧を選択するのが好ましい。
前記電圧が、前記式で与えられる範囲から選択される値であると、ライン状に前記ナノホールを配列させることができる等の点で有利である。
【0043】
前記ナノホール形成においては、前記ナノホール形成用起点が前記凹凸である場合には、前記陽極酸化処理等は該凹部に選択的に生じ、該凹部にナノホールが形成される。また、前記ナノホール形成用起点が前記合金である場合には、前記陽極酸化処理等は該合金部に優先的に生じ、該合金部にナノホールが形成される。
【0044】
本発明のナノホール構造体の製造方法により製造される本発明のナノホール構造体は、前記ナノホール形成処理により、前記金属層(アルミニウム)から変化した絶縁層(アルミニウムナ)に、前記ナノホールが規則的に配列してなるナノホール列が一定間隔で配列してなるものが好ましく(図21及び図22参照)、その材料、形状、構造、大きさ等について目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
前記ナノホールとしては、前記ナノホール構造体を貫通して孔として形成されていてもよいし、前記ナノホール構造体を貫通せず穴(窪み)として形成されていてもよいが、例えば、前記ナノホール構造体を前記磁気記録媒体として使用する場合には、前記ナノホールが前記ナノホール構造体を貫通する貫通孔として形成されているのが好ましい。
【0046】
前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、既存のハードディスク等の大きさに対応した大きさが好ましく、前記ナノホール構造体をDNAチップ等に適用する場合には、既存のDNAチップ等の大きさに対応した大きさが好ましく、前記ナノホール構造体を電界放出装置用のカーボンナノチューブ等の触媒基板に適用する場合には、電界放出装置に対応した大きさが好ましい。
【0047】
前記ナノホール列の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一方向に平行に配列していてもよいし、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに配列していてもよい。前記ナノホール構造体をDNAチップ等に適用する場合には前者の配列が好ましく、前記ナノホール構造体をハードディスク、ビデオディスク等の前記磁気記録媒体に適用する場合には後者の配列が好ましく、特に、ハードディスク用途の場合にはアクセスの容易性の観点から同心円状が好ましく、ビデオディスク用途の場合には連続再生の容易性の観点から螺旋状が好ましい。
なお、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、隣接するナノホール列におけるナノホールが、半径方向に配列しているのが好ましい。この場合、該磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質となる。
【0048】
隣接する前記ナノホール(列)の間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体がハードディスク等の前記磁気記録媒体に適当する場合、5〜500nmが好ましく、10nm〜200nmnmがより好ましい。
前記間隔が、5nm未満であると、ナノホールの形成が困難であり、500nmを超えると、ナノホールの規則的配列が困難である。
【0049】
隣接するナノホール(列)の間隔と、ナノホール(列)の幅との比(間隔/幅)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.1〜1.9が好ましく、1.2〜1.8がより好ましい。
前記比(間隔/幅)が、0.1未満であると、隣接するナノホール同士が融合してしまい、独立したナノホールが得られないことがあり、1.9を超えると、前記陽極酸化処理の際に凹状ライン部分以外の部分にもナノホールが形成されてしまうことがある。
【0050】
前記ナノホール(列)の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、連続的に形成されていてもよいし(図21及び図22参照)、一定間隔に仕切られていてもよい(図23参照)。
前記ナノホール(列)の幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体がハードディスク等の前記磁気記録媒体に適当する場合、5〜450nmが好ましく、8〜200nmがより好ましい。
前記ナノホール列の幅が、5nm未満であると、ナノホールの形成が困難であり、450nmを超えると、ナノホールの規則配列が困難である。
また、前記ナノホール(列)の幅としては、一定であってもよいし、前記ナノホール列の長さ方向において一定間隔(一定周期)で変化(広く又は狭く)するもの、などであってもよい。この場合、該ナノホール列における幅が広くなっている箇所に、図24に示すように、前記ナノホールが形成され易くなる点で好ましい。
【0051】
前記ナノホールにおける開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合、その強磁性層を単磁区とすることができる大きさが好ましく、具体的には、200nm以下が好ましく、5〜100nmがより好ましい。
前記ナノホールにおける開口径が、200nmを超えると前記ナノホール構造体を適用した磁気記録媒体が単磁区構造にならないことがある。
【0052】
前記ナノホールにおける深さと開口径とのアスペクト比(深さ/開口径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高アスペクト比であると、形状異方性が大きくなり、磁気記録媒体の保持力を向上させることができる点で好ましく、例えば、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、2以上であるのが好ましく、3〜15であるのがより好ましい。
前記アスペクト比が、2未満であると、磁気記録媒体の保持力を十分に向上させることができないことがある。
【0053】
前記ナノホール構造体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、20〜200nmが特に好ましい。
前記ナノホール構造体の厚みが、500nmを超えると、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合、該磁気記録媒体に前記軟磁性下地層を設けたとしても高密度記録を行うことができないことがあり、該ナノホール構造体の研磨が必要になり、この場合、時間を要し高コストであり、品質劣化の原因となることがある。
【0054】
ここで、本発明のナノホール構造体の製造方法(第一の例)について、図面を参照しながら説明する。例えば、3.5インチ、2.5インチ、1.8インチ、1インチ径の4種の大きさのハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板(Al合金、シリコン、強化ガラスで形成された3種)に、図25に示すように、通常のスパッタ法を用いて、軟磁性下地層(例えば厚み100nmのパーマロイ膜、図示せず)、酸化停止層(例えば厚み5nmのNb膜、図示せず)、高純度のアルミニウム層1(例えば厚み100nm)をこの順に形成する。次に、図26に示すように、アルミニウム層1上に軟硬度金属層7(厚み30nm、In)を形成する。これら層の形成は、マルチターゲットのスパッタ装置又はシングルターゲットのマルチチャンバースパッタ装置を用い、全て真空一環処理で行うことができ、ロードロックへの出し入れ等に伴うスループットの低下を最低限に抑えることが可能である。
【0055】
次に、図27に示すように、プレス圧力及びストロークの精密制御が可能なプレス装置(一般にナノインプリント装置として知られている)を用いて、モールド5に設けられたパターン5aを軟硬度金属層7に転写する。モールド5は、例えばNi、SiC等の高硬度材料で作製されており、EB又はDEEP−UV等の手法でパターン5aを形成したものなのが挙げられる。モールド5におけるパターン5aのピッチは、所望のナノホールパターン(ポアパターン)のピッチに合わせた六方最密パターンなどが挙げられるが、所望のナノホールパターン(ポアパターン)の整数倍のピッチを持つラインパターンや六方最密パターンなども挙げられる。
【0056】
この時の転写圧力は、例えば0.1トン/cm2(1.8インチ基板で約1.9トン)となる。これをアルミニウム層1に直接プレス転写(ダイレクトプリント)する際に必要な圧力である約2トン/cm2(1.8インチ基板で約38トン)と比較すると、1/10以下に低減されている(図29参照)。このため、アルミニウム層1のアルミニウムのブリネル硬度25よりも、軟硬度金属層7のInのブリネル硬度0.9の方が大幅に小さいため、モールド5を用いた転写の際に軟硬度金属層7が選択的にかつ容易にパターニングされる。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に刻印されたパターン5aの凹部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
なお、このとき、基板11の材料が、Si、ガラス、Al合金のいずれの場合であっても、基板11及びモールド5にかけ、割れ、歪み等は観られない。
【0057】
一方、従来のように、Si製基板や強化ガラス製の基板11に、例えば2トン/cm2もの圧力を加えた場合には、基板11の内部にマイクロクラックが多数発生し、転写後の陽極酸化処理や、実際にスピンドルに組み込んだ後の高速回転時において、基板11にかけ、割れ等が発生することが多く、また、Al合金製の基板11の場合には、かけ、割れ等は発生しないものの、同様に基板11の内部に歪み等が発生し、基板11の平坦性が劣化し、基板11に割れが発生するような条件では、モールド5そのものにも傷が入ってしまう(図29参照)。
【0058】
ここでは、室温で軟硬度金属層7に対しモールド5をプレス(インプリント)した例であるが(図30参照)、より圧力を下げるためには、軟硬度金属層7の材料であるInの融点である156℃以下の温度近傍までプレス温度を上げることも有効である。即ち、例えば、140℃まで温度を上げれば必要圧力は更に一桁以上低下する(ただし、プロセス中に昇温、降温工程が入るためにスループットは低下する)。また、一般に軟磁性層の再結晶化による特性劣化を防ぐため、総てのプロセスは350℃以下とすることが好ましい。逆に、モールド5からの剥がれ性を改善するために、Inではなく、より硬いIn−Alの合金を利用しても同様な結果が得られ、その他、低硬度の金属の例としてSn、Pb、In−Ga合金、ウッドメタル等の金属を用いても同様の効果が得られる。
【0059】
次に、モールド5のパターン5aを軟硬度金属層7に転写した後の基板11を、陽極酸化浴中に保持する。例えば、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)を用いた場合、In、Alともに、エッチングレートは、ほぼ0.3nm/sとなるので、図28に示すように、浴中に約2分程度保持するだけでパターン5aが刻印された軟硬度金属層7は完全に溶解し、アルミニウム層1の表面に転写される。これをそのまま、25V(直径60nmのナノホールを得るための電圧条件)で陽極酸化することにより、直径60nmの理想配列のナノホール構造体(アルマイトポア)が得られる。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0060】
その後、例えば、CoやFeのような強磁性体金属をナノホール(アルマイトポア)中にメッキにより充填する。以上が、磁性材料充填工程に相当する。
【0061】
次に、表面をCMP研磨、潤滑剤塗布という従来のHD媒体と同じ工程を行うことにより、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体におけるナノホールに強磁性体が充填された磁気記録媒体を製造することができる。
【0062】
ここで、本発明のナノホール構造体の製造方法(第二の例)について、図面を参照しながら説明する。図31に示すように、上記第一の製造方法と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成する。
【0063】
次に、図32に示すように、スルーホールパターン10を用い、アルミニウム層1上に、該アルミニウムと低温で共晶化可能な金属としてのInのパターン1b(例えば厚み10nm)を形成する。スルーホールパターン10の形成方法としては、2段階陽極酸化法を用いたアルマイトメンブレン、Si基板と通常のリソグラフィーを用いた方法などが挙げられる。
【0064】
次に、Inのパターン1bが形成された基板11を昇温すると、図33及び図34に示すように、InとAlとはその総ての組成範囲で共晶化可能であるため、Inの融点である156℃を超えた時点でInとAlとの接触部は、合金化反応が生じ、図35に示すように、In−Alの合金となって再度固化し、図36に示すように、アルミニウム層1の表面にパターン1cが転写される。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0065】
この基板11を上記第一の例と同様にして、図37に示すように、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写される。
ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去される。その後は、上記第一の例と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図38に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体が得られる。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0066】
そして、得られたナノホール構造体におけるナノホールに上記第一の例と同様にして強磁性材料を充填する。以上により、前記ナノホールに強磁性体が充填された磁気記録媒体を製造する。以上が、前記磁性材料充填工程に相当する。
【0067】
ここでは、Inを使った例を示したが、外にIn−Al合金、In−Ga合金、Sb、Pbなど、Alと低温で共晶化する金属を用いても同様のプロセスが可能である。
【0068】
ここで、本発明のナノホール構造体の製造方法(第三の例)について、図面を参照しながら説明する。図39に示すように、上記第一の製造方法と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成する。
【0069】
次に、図40に示すように、平滑基板20上に、アルミニウムと低温で共晶化可能な金属(In)でパターン21を形成した後、パターン21をアルミニウム層に転写する。平滑基板20としては、Si、プラスチック等の十分な平滑性を持ち、かつプロセス温度内でInと反応しないものであればよく、ここでは、Si基板を用いた。該Si基板に、スルーホール基板を用いてInを蒸着、あるいは、通常のリソグラフィーを用いてInをパターニングした。パターン21が形成された平滑基板20を、図41に示すように、アルミニウム層1の表面に密着させた状態でこれを融点以上に昇温し、Al層の表面とInとを合金化反応させて、図42に示すように、AlとInとの合金パターン21aを転写する。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0070】
この基板11を上記第一の例と同様にして、図43に示すように、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、図44に示すように、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写される。ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去された。その後は、上記第一の例と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図45に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体が得られる。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0071】
そして、得られたナノホール構造体におけるナノホールに上記第一の例と同様にして強磁性材料を充填した。以上により、前記ナノホールに強磁性体が充填された磁気記録媒体を製造することができる。以上が、前記磁性材料充填工程に相当する。
【0072】
ここで、本発明のナノホール構造体の製造方法(第四の例)について、図面を参照しながら説明する。図46に示すように、上記第一の製造方法と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成する。
【0073】
次に、平滑基板20として熱収縮フィルムを用いた。該熱収縮フィルム(特開2001−155386(P2001−155386A)号公報参照)を用い、パターン20aの材料として該熱収縮フィルムが収縮する温度近傍で軟化する金属(In)を用いることで、該熱収縮フィルムにストレスをかけることなく該熱収縮フィルムを収縮させることができる。また、図47に示すように、加熱時に静電チャック100付きのホットプレートを用いることで該熱収縮フィルムが反ったり皺になってパターンがくずれることを防止することができる。ここでは、例えば、50%収縮の熱収縮フィルムを用いて収縮温度160℃、静電チャック電圧200Vで熱収縮を行う。元々のパターンには、2段階陽極酸化で作製した直径60nmの理想配列アルマイトメンブレンを用いたため、縮小後のパターンは30nmピッチとなる。
パターン20aが形成された平滑基板20(熱収縮フィルム)を、図48に示すように、アルミニウム層1の表面に密着させた状態でこれを融点以上に昇温し、Al層の表面とInとを合金化反応させて、図49に示すように、AlとInとの合金パターン21aを転写する。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0074】
この基板11を上記第一の例と同様にして、図50に示すように、直径30nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に、酸化電圧12.5Vにて保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、図51に示すように、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写される。ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去される。その後は、上記第一の例と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図52に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体(ナノホールの直径30nm)が得られる。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0075】
そして、得られたナノホール構造体におけるナノホールに上記第一の例と同様にして強磁性材料を充填した。以上により、前記ナノホールに強磁性体が充填された磁気記録媒体を製造した。以上が、前記磁性材料充填工程に相当する。
なお、本発明においては、以上の第一の例から第四の例では、一面ずつ2度に分けてナノホール(アルマイトポア)を形成するプロセスを示したが、前記第二の方法以外は、モールド又はパターンをつけた平滑基板で両面にAl層を有するHD磁気記録媒体用基板をサンドイッチしてプロセスを行うことで、両面を同時に処理することも可能である。
【0076】
本発明のナノホール構造体は、磁気記録媒体をはじめ、DNAチップ、触媒基板等の各種分野に好適な、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適に使用することができる。
【0077】
(磁気記録媒体及びその製造方法)
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、ナノホール構造体形成工程と、磁性材料充填工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択した、軟磁性下地層形成工程、電極層形成工程、非磁性層形成工程、保護層形成工程、研磨工程、などのその他の工程を含む。
本発明の磁気記録媒体は、本発明の前記磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成された金属層に、該基板面に対し略直交する方向に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなる。
以下、本発明の磁気記録媒体の製造方法について説明すると共に、その説明を通じて、前記磁気記録媒体の内容をも明らかにする。
なお、本発明の磁気記録媒体の製造方法における、前記ナノホール形成用起点形成工程及び前記ナノホール構造体形成工程としては、本発明の前記ナノホール構造体の製造方法を好適に適用することができる。
【0078】
−ナノホール構造体形成工程−
前記ナノホール構造体形成工程は、本発明の上述したナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成する工程である。
なお、前記ナノホール構造体の製造方法は、上述した通りであり、該ナノホール構造体の製造方法により、前記基板上に本発明の前記ナノホール構造体が形成される。
なお、前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ディスク等の基材として使用されているものなどが好適に挙げられる。該基材としては、該磁気記録媒体をHDD等に応用する場合には、ディスク状であるのが好ましい。
【0079】
−磁性材料充填工程−
前記磁性材料充填工程は、前記ナノホール構造体における前記ナノホールの内部に磁性材料を充填する工程である。
前記磁性材料充填工程が、ナノホールの内部に軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程、及び、該軟磁性層上に強磁性層を形成する強磁性層形成工程を含むのが好ましい。
【0080】
前記軟磁性層形成工程は、前記ナノホールの内部に軟磁性層を形成する工程である。
前記軟磁性層の形成は、後述の軟磁性材料をメッキ法、電着法等により前記ナノホールの内部に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記メッキ法としては、例えば、無電解メッキ法、電界メッキ法、などが好適に挙げられる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層を電極として、前記軟磁性材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記電極上に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記軟磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部であって、前記基板上、前記軟磁性下地層上又は前記電極層上に前記軟磁性層が形成される。
【0081】
前記強磁性層形成工程は、前記軟磁性層上(又は該軟磁性層上に前記非磁性層が形成されている場合には該非磁性層上に)に強磁性層を形成する工程である。
前記強磁性層の形成は、上述した強磁性層の材料をメッキ法、電着法等により前記ナノホールの内部に形成した前記軟磁性層上に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層(シード層)を電極として、前記強磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記ナノホール内に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記強磁性層形成工程により、前記ナノホール構造体におけるナノホールの内部であって、前記軟磁性層上又は前記非磁性層上に前記強磁性層が形成される。
【0082】
−軟磁性下地層形成工程−
本発明においては、前記軟磁性層形成工程の前に前記軟磁性下地層形成工程を好適に行うことができる。
前記軟磁性下地層形成工程は、必要に応じて選択され、基板上に軟磁性下地層を形成する工程である。
前記基板としては、上述したものが挙げられる。
前記軟磁性下地層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法等の真空成膜法、メッキ法(無電解メッキ、電界メッキ)、電着(電着法)などで形成してもよい。
前記軟磁性下地層形成工程により、前記基板上に所望の厚みの前記軟磁性下地層が形成される。
【0083】
−電極層形成工程−
前記電極層形成工程は、前記ナノホール構造体と前記軟磁性下地層との間に電極層を形成する工程である。
前記電極層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法などにより好適に行うことができる。該電極層の形成条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記電極層形成工程により形成された前記電極層は、軟磁性層、非磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかを電着により形成する際の電極として使用される。
【0084】
−非磁性層形成工程−
前記非磁性層形成工程は、前記軟磁性層上に非磁性層を形成する工程である。
前記非磁性層の形成は、上述した非磁性層の材料を電着等により前記ナノホールの内部に形成した前記軟磁性層上に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層を電極として、前記非磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記ナノホール内に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記非磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部であって、前記軟磁性層上等に前記非磁性層が形成される。
【0085】
−研磨工程−
前記研磨工程は、前記磁性層形成工程(前記強磁性層形成工程、前記軟磁性層形成工程を含む)の後、前記ナノホール構造体の表面を研磨し、平坦化する工程である。
前記研磨工程における研磨の方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。該研磨工程により、前記磁気記録媒体の表面が平滑化されると、垂直磁気記録ヘッド等の磁気ヘッドの安定浮上が可能となり、低浮上化による高密度記録と信頼性確保の双方を達成することができる点で有利である。
【0086】
以上の本発明の磁気記録媒体の製造方法により、本発明の前記磁気記録媒体を効率よく低コストで製造することができる。
本発明の磁気記録媒体は、本発明の前記磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成されたナノホール構造体に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の層等を有してなる。
【0087】
前記ナノホール構造体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、500nm以下が好ましく、5〜200nmがより好ましい。
前記ナノホール構造体の厚みが、500nmを超えると、ナノホール内への磁性材料の充填が困難になることがある。
【0088】
前記多孔質層(ナノホール構造体)における前記ナノホールは、該多孔質層を貫通して貫通孔として形成されていもよいし、貫通せず穴として形成されていてもよいが、該ナノホールに磁性材料を充填して磁性層を形成し、更にその下方にも磁性層を形成する場合等を考慮すると、該ナノホールが貫通孔として形成されているのが好ましい。
【0089】
前記ナノホールの内部に、磁性材料が充填されて磁性層が形成されているのが好ましい。
前記磁性層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、強磁性層、軟磁性層、などが挙げられる。本発明においては、前記ナノホールの内部に、前記軟磁性層と前記強磁性層とが前記基板側からこの順に積層されており、更に必要に応じて非磁性層(中間層)が形成されているのが好ましい。
【0090】
前記基板としては、その形状、構造、大きさ、材質等について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記形状としては、前記磁気記録媒体がハードディスク等の磁気ディスクである場合には、円板状であり、また、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、前記材質としては、磁気記録媒体の基材材料として公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ガラス、シリコン、石英、シリコン表面に熱酸化膜を形成してなるSiO2/Si、等が挙げられる。これらの基板材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記基板は、適宜製造したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0091】
前記強磁性層は、前記磁気記録媒体において記録層として機能し、前記軟磁性層と共に磁性層を構成する。
前記強磁性層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Fe、Co、Ni、FeCo、FeNi、CoNi、CoNiP、FePt、CoPt及びNiPtから選択される少なくとも1種、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記強磁性層は、前記材料により垂直磁化膜として形成されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、Ll0規則構造を有し、C軸が前記基板と垂直方向に配向しているもの、fcc構造あるいはbcc構造を有し、C軸が前記基板と垂直方向に配列しているもの、などが好適に挙げられる。
【0092】
前記強磁性層の厚みとしては、本発明の効果を害さない限り特に制限はなく、記録時に使用される線記録密度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記軟磁性層の厚み以下である態様、(2)記録時に使用される線記録密度で決まる最小ビット長の1/3倍〜3倍である態様、(3)前記軟磁性層及び前記軟磁性下地層の厚みの合計以下である態様、などが好ましく、例えば、通常5〜100nm程度が好ましく、5〜50nmがより好ましく、1Tb/in2をターゲットにした線記録密度1500kBPIで磁気記録を行う場合には、50nm以下(20nm程度)であるのが好ましい。
なお、ここでの前記「強磁性層」の厚みは、該強磁性層が、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各強磁性層の厚みの合計を意味する。また、前記「軟磁性層」の厚みは、該軟磁性層が、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各軟磁性層の厚みの合計を意味する。また、前記「軟磁性層及び軟磁性下地層の厚みの合計」は、該軟磁性層及び該軟磁性下地層の少なくともいずれかが、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各軟磁性層の厚みの合計を意味する。
【0093】
本発明の磁気記録媒体の場合、磁気記録の際に使用する単磁極ヘッドと前記軟磁性層との間の距離を、前記多孔質層の厚みよりも短く、該強磁性層の厚みと略等しくすることができるため、前記多孔質層の厚みに拘らず該強磁性層の厚みだけで、前記単磁極ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。その結果、該磁気記録媒体においては、従来の磁気記録媒体に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性を著しく向上させることができる。
前記強磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0094】
前記軟磁性層としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、NiFe、FeSiAl、FeC、FeCoB、FeCoNiB及びCoZrNbから選択される少なくとも1種、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
前記軟磁性層の厚みとしては、本発明の効果を害さない限り特に制限はなく、前記多孔質層における前記ナノホールの深さ、前記強磁性層の厚み等に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記強磁性層の厚み超である態様、(2)前記軟磁性下地層の厚みとの合計が前記強磁性層の厚み超である態様、などが挙げられる。
【0096】
前記軟磁性層は、磁気記録に使用する磁気ヘッドからの磁束を効果的に前記強磁性層に収束させることができ、該磁気ヘッドの磁界の垂直成分を大きくさせることができる点で有利である。また、前記軟磁性層は、軟磁性下地膜とともに前記磁気ヘッドと共に該磁気ヘッドから入力させる記録磁界の磁気回路を形成可能であるのが好ましい。
前記軟磁性層としては、前記基板面に略直交する方向に磁化容易軸を有しているのが好ましい。この場合、垂直磁気記録用ヘッドで記録を行うと、該垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となり、磁束が前記強磁性層に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
前記軟磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0097】
前記多孔質層における前記ナノホール中には、前記強磁性層と前記軟磁性層との間に非磁性層(中間層)を有していてもよい。該非磁性層(中間層)が存在すると、前記強磁性層と前記軟磁性層との間の交換結合力の作用を弱める結果、予想とは異なる磁気記録の再生特性となってしまう場合に、それを所望の再生特性に制御することができる。
前記非磁性層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Cu、Al、Cr、Pt、W、Nb、Ru、Ta及びTiから選択される少なくとも1種、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
前記非磁性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記非磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0099】
本発明の磁気記録媒体においては、前記基板と前記多孔質層との間に、軟磁性下地層を有していてもよい。
前記軟磁性下地層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、前記軟磁性層の材料として上述したものが好適に挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、前記軟磁性層の材料と互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0100】
前記軟磁性下地層は、前記基板面の面内方向に磁化容易軸を有しているのが好ましい。この場合、磁気記録に使用する磁気ヘッドからの磁束が効果的に閉じた磁気回路を形成し、該磁気ヘッドの磁界の垂直成分を大きくさせることができる。該軟磁性下地層は、ビットサイズ(前記ナノホールの開口径)が100nm以下の単磁区記録においても有効である。
前記軟磁性下地層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)や無電界メッキ等により行うことができる。
【0101】
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電極層、保護層、などが挙げられる。
【0102】
前記電極層は、磁性層(前記強磁性層及び前記軟磁性層)を電着等により形成する際の電極として機能する層であり、一般に、前記基板上であって前記強磁性層の下方に設けられる。なお、前記磁性層を電着により形成する場合、該電極層を電極として使用してもよいが、前記軟磁性下地層等を電極として使用してもよい。
前記電極層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cr、Co、Pt、Cu、Ir、Rh、これらの合金、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、該電極層は、これらの材料以外に、W、Nb、Ti、Ta、Si、Oなどを更に含有していてもよい。
【0103】
前記電極層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。該電極層は、1層のみ設けられていてもよいし、2層以上設けられていてもよい。
前記電極層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法、蒸着法等により行うことができる。
【0104】
前記保護層は、前記強磁性層を保護する機能を有する層であり、前記強磁性層の表面乃至上方に設けられる。該保護層は、1層のみ設けられていてもよいし、2層以上設けられていてもよく、また、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記保護層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、などが挙げられる。
【0105】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記保護層の形成は、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法に従って行うことができるが、例えば、プラズマCVD法、塗布法、などにより行うことができる。
【0106】
本発明の磁気記録媒体は、磁気ヘッドを用いた各種の磁気記録に使用することができるが、単磁極ヘッドによる磁気記録に好適に使用することができ、後述する本発明の磁気記録装置及び磁気記録方法に好適に特に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、高品質である。このため、該磁気記録媒体は、各種の磁気記録媒体として設計し使用することができ、例えば、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置、などに設計し使用することができ、ハードディスク等の磁気ディスクに特に好適に設計し使用することができる。
【0107】
(磁気記録装置及び磁気記録方法)
本発明の磁気記録装置は、本発明の前記磁気記録媒体と、垂直磁気記録用ヘッドとを有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段乃至部材等を有してなる。
本発明の磁気記録方法は、本発明の前記磁気記録媒体に対し、垂直磁気記録用ヘッドを用いて記録を行うことを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の処理乃至工程を含む。本発明の磁気記録方法は、本発明の前記磁気記録装置を用いて好適に実施することができる。なお、前記その他の処理乃至工程は、前記その他の手段乃至部材等により行うことができる。以下、本発明の磁気記録装置の説明と共に、本発明の磁気記録方法について説明する。
【0108】
前記垂直磁気記録用ヘッドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、単磁極ヘッド等が好適に挙げられる。また、該垂直磁気記録用ヘッドは、書込専用であってもよいし、GMRヘッド等の読取用ヘッドと一体の書込兼読込用であってもよい。
【0109】
本発明の磁気記録装置による磁気記録、又は本発明の磁気記録方法による磁気記録においては、本発明の前記磁気記録媒体を用いるので、前記垂直磁気記録用ヘッドと前記磁気記録媒体における前記軟磁性層との間の距離が、前記多孔質層の厚みよりも短く、前記強磁性層の厚みと略等しくなるため、前記多孔質層の厚みに拘らず前記強磁性層の厚みだけで、該垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。このため、図20に示すように、前記垂直磁気記録用ヘッド(書込兼読取用ヘッド)100の主磁極からの磁束が前記強磁性層(垂直磁化膜)30に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
なお、前記磁気記録媒体に前記軟磁性下地層が形成されている場合には、前記垂直磁気記録用ヘッドと、該軟磁性下地層との間で磁気回路が形成されるので好ましい。この場合、高密度記録が可能となる点で有利である。
【0110】
本発明の磁気記録装置による磁気記録、又は本発明の磁気記録方法による磁気記録においては、前記磁気記録媒体における前記強磁性層に前記垂直磁気記録用ヘッドからの磁束が、該強磁性層の下面、即ち前記軟磁性層又は前記非磁性層との界面付近でも、集中したままで拡散しないため、小さなビットを書くことができる。
なお、該強磁性層における前記磁束の収束の程度(拡散の程度)としては、本発明の効果を害さない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例は、本発明のナノホール構造体を備えた本発明の磁気記録媒体を、本発明の磁気記録媒体の製造方法により製造し、本発明の磁気記録装置により磁気記録を行い、本発明の磁気記録方法を実施するものである。
【0112】
(実施例1)
−ナノホール構造体の作製−
図25に示すように、2.5インチのハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板(Si製)に、通常のスパッタ法を用いて、軟磁性下地層(厚み100nmのパーマロイ膜、図示せず)、酸化停止層(厚み5nmのNb膜、図示せず)、高純度のアルミニウム層1(厚み100nm)をこの順に形成した。次に、図26に示すように、アルミニウム層1上に軟硬度金属層7(厚み30nm、In)を形成した。これら層の形成は、マルチターゲットのスパッタ装置を用いて真空一環処理で行った。
【0113】
次に、図27に示すように、プレス圧力及びストロークの精密制御が可能なプレス装置(ナノインプリント装置、スウェーデン Obduct社製、NILシリーズ)を用いて、モールド5に設けられたパターン5aを軟硬度金属層7に転写した。モールド5は、Ni製であり、EBリソグラフィ法によりパターン5aを形成したものである。モールド5におけるパターン5aは、同心円状に配列され、その直径は50nmであり、隣接するパターン5aどうしの間隔は100nmであった。
【0114】
この時の転写圧力は、0.1トン/cm2(1.8インチ基板で約1.9トン)であった。これをアルミニウム層1に直接プレス転写(ダイレクトプリント)する際に必要な圧力である約2トン/cm2(1.8インチ基板で約38トン)と比較すると、1/10以下に低減されることができた(図29参照)。アルミニウム層1のアルミニウムのブリネル硬度25よりも、軟硬度金属層7のInのブリネル硬度0.9の方が大幅に小さいため、モールド5を用いた転写の際に軟硬度金属層7が選択的にかつ容易にパターニングされた。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に刻印されたパターン5aの凹部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
なお、このとき、基板11及びモールド5にかけ、割れ、歪み等は観られなかった。
【0115】
一方、従来のように、Si製の基板11に、例えば2トン/cm2もの圧力を加えた場合には、基板11の内部にマイクロクラックが多数発生し、転写後の陽極酸化処理や、実際にスピンドルに組み込んだ後の高速回転時において、基板11にかけ、割れ等が発生した(図29参照)。
【0116】
次に、モールド5のパターン5aを軟硬度金属層7に転写した後の基板11を、陽極酸化浴中に保持した。例えば、60nmピッチのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)を用いた場合、In、Alともに、エッチングレートは、ほぼ0.3nm/sであるので、図28に示すように、浴中に約2分程度保持するだけでパターン5aが刻印された軟硬度金属層7は完全に溶解し、アルミニウム層1の表面に転写された。これをそのまま、25V(直径60nmのナノホールを得るための電圧条件)で陽極酸化することにより、直径60nmの理想配列のナノホール構造体(アルマイトポア)が得られた。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0117】
(実施例2)
−ナノホール構造体の作製−
図31に示すように、実施例1と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成した。次に、図32に示すように、スルーホールパターン10を用い、アルミニウム層1上に、該アルミニウムと低温で共晶化可能な金属としてのInのパターン1b(厚み10nm)を形成した。なお、パターン1bの大きさ、間隔は、実施例1と同様である。
次に、Inのパターン1bが形成された基板11を昇温すると、図33及び図34に示すように、InとAlとはその総ての組成範囲で共晶化可能であるため、Inの融点である156℃を超えた時点でInとAlとの接触部は、合金化反応が生じ、図35に示すように、In−Alの合金となって再度固化し、図36に示すように、アルミニウム層1の表面にパターン1cが転写された。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0118】
この基板11を実施例1と同様にして、図37に示すように、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写された。
ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去された。その後は、実施例1と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図38に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体が得られた。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0119】
(実施例3)
−ナノホール構造体の作製−
図39に示すように、実施例1と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成した。次に、図40に示すように、平滑基板20上に、アルミニウムと低温で共晶化可能な金属(In)でパターン21を形成した後、パターン21をアルミニウム層に転写した。平滑基板20としては、Si、プラスチック等の十分な平滑性を持ち、かつプロセス温度内でInと反応しないものであればよく、ここでは、Si基板を用いた。該Si基板に、スルーホール基板を用いてInを蒸着、あるいは、通常のリソグラフィーを用いてInをパターニングした。パターン21が形成された平滑基板20を、図41に示すように、アルミニウム層1の表面に密着させた状態でこれを融点以上に昇温し、Al層の表面とInとを合金化反応させて、図42に示すように、AlとInとの合金パターン21aを転写した。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0120】
この基板11を実施例1と同様にして、図43に示すように、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、図44に示すように、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写された。ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去された。その後は、実施例1と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図45に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体が得られた。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0121】
(実施例4)
−ナノホール構造体の作製−
図46に示すように、実施例1と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成した。次に、平滑基板20として熱収縮フィルムを用いた。該熱収縮フィルム(特開2001−155386(P2001−155386A)号公報参照)を用い、パターン20aの材料として該熱収縮フィルムが収縮する温度近傍で軟化する金属(In)を用い、図47に示すように、加熱時に静電チャック100付きのホットプレートを用いることにより、該熱収縮フィルムが反ったり皺になってパターンがくずれることを防止した。ここでは、50%収縮の熱収縮フィルムを用いて収縮温度160℃、静電チャック電圧200Vで熱収縮を行った。元々のパターンには、2段階陽極酸化で作製した60nmピッチの理想配列アルマイトメンブレンを用いたため、縮小後のパターンは直径30nmとなった。
パターン20aが形成された平滑基板20(熱収縮フィルム)を、図48に示すように、アルミニウム層1の表面に密着させた状態でこれを融点以上に昇温し、Al層の表面とInとを合金化反応させて、図49に示すように、AlとInとの合金パターン21aを転写した。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0122】
この基板11を実施例1と同様にして、図50に示すように、直径30nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に、酸化電圧12.5Vにて保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、図51に示すように、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写される。ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去された。その後は、実施例1と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図52に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体(ナノホールの直径30nm)が得られた。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0123】
(実施例5)
−磁気記録媒体の作製−
実施例1〜4において作製した、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に形成したナノホール構造体における各ナノホールに、5質量%硫酸銅溶液と、2質量%ホウ酸とを含有するメッキ浴(浴温:35℃)を用い、電着を行うことにより、前記強磁性材料としてのコバルト(Co)を充填させて強磁性層を形成することにより、前記磁性材料充填工程を行った。
−研磨工程−
前記研磨工程を以下のようにして行った。即ち、磁気ヘッドを浮上させる目的で、ラッピングテープを用いて表面研磨を行った。前記ラッピングテープとしては、アルミニウムナ3μm粒度のテープを用いて、前記ナノホールが開口する面に存在する凸部のアルミニウムナを荒研磨した後、アルミニウムナ0.3μm粒度のテープを用いて、仕上げ研磨を行った。この研磨工程後の多孔質層(アルミニウムナ層)の厚みは、約100nmであり、前記コバルト(Co)が充填されたナノホール(アルミニウムナポア)のアスペクト比は、約2.5であった。
【0124】
その後、潤滑剤としてパーフルオロポリエーテル(ソルベイソレクシス社製、AM3001)を、研磨した磁気ディスクの表面にディップ法により塗布し、磁気記録媒体(磁気ディスク)を作製した。
【0125】
次に、作製した磁気記録媒体において、磁性ドットが1列に配置されたナノホール列が、非磁性の領域で分離されていることの効果を確認するために、作製した磁気記録媒体(磁気ディスク)について、リード状態でオフトラックさせながら信号振幅を測定した。その結果を図53に示した。
図53より、1トラック上に磁性ドットが1列に配列し、かつトラック間が非磁性の領域で分離されている本発明の磁気記録媒体(サンプルディスクC)では、オフトラックすると急激に振幅が減少し、ほぼ完全にトラック間の信号が分離できていることが確認された。
一方、磁性ドットが2次元配列している比較例の磁気記録媒体(サンプルディスクD)では、オフトラックしても信号振幅の減少が殆ど観られず、トラック間の信号が分離できていないことが確認された。
以上より、本発明の磁気記録媒体(磁気ディスク)は、高トラック密度化が可能であると同時に、円周方向の磁性ドットも綺麗に分離して読出し可能であるので、1ドットに1ビットの記録再生が可能であり、高密度記録が可能であることが判った。
【0126】
(実施例6)
−磁気記録媒体の作製−
実施例5において、ナノホール内にコバルト(Co)のみを充填させて強磁性層のみを形成したことに代えて、まず、ナノホール内にNiFeを充填させて軟磁性層(厚み60nm)を形成した後、該軟磁性層上に前記強磁性層としてのFeCoを充填させた以外は、実施例5と同様にして、磁気記録媒体(サンプルディスクE)を作製した。なお、該サンプルディスクEにおける前記強磁性層の厚みは40nmであった。
【0127】
ここで、比較のために、前記サンプルディスクEにおいて、前記軟磁性層を形成せず、前記多孔質層(ナノホール構造体)における前記ナノホール中に前記強磁性層のみを形成(前記サンプルディスクEにおける前記強磁性層及び軟磁性層の厚みの合計の厚み(100nm)に形成)した以外は、該サンプルディスクEと同様にしてサンプルディスクF(比較)を製造した。
【0128】
製造したサンプルディスクE及びFにつき、書込み用の磁気ヘッドとしての単磁極ヘッド及び読出用の磁気ヘッドとしてのGMRヘッドを備えた磁気記録装置を用いて、該単磁極ヘッドによる書込み、及び該GMRヘッドの読み出しによる磁気記録を行い、記録再生特性を評価した。
その結果を図54に示した。図54の上の部分(a)は、60nmピッチに相当する400kBPIでの書込電流と再生信号S/Nとの関係を示したグラフである。図54の横軸よりも下の部分(b)は、200kBPIの信号を書いた後(大きなビットで書き込んだ後)、400kBPIの信号を重書きし(小さなビットで書き込みし)、200kBPI信号の消え残り(大きなビットの消え残り)の程度を評価したオーバーライト特性を、書込電流の関数として示したグラフである。
図54に示されるように、サンプルディスクEは、S/N及びオーバーライト特性がいずれも、サンプルディスクFよりも優れていた。
【0129】
ここで、本発明の好ましい形態について、以下に付記する。
(付記1) 金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行うことを特徴とするナノホール構造体の製造方法。
(付記2) 導電性材料が、ブリネル硬度が金属層の金属のブリネル硬度の1/10以下である付記1に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記3) 導電性材料が、金属層の金属の融点未満の温度で該金属と共晶化可能である付記1から2のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記4) 導電性材料が、100〜700℃で金属層の金属と共晶化可能である付記1から3のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記5) 導電性材料が、金属である付記1から4のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記6) 導電性材料が、In、Sn、Bi、及びこれらの合金から選択される付記1から5のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記7) ナノホール形成用起点が、導電性材料に形成した凹部である付記1から6のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記8) ナノホール形成用起点が、金属層の表面の表面粗さRaの10倍以上の凹部である付記1から7のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記9) ナノホール形成用起点が、深さが10〜20nmの凹部である付記1から8のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記10) ナノホール形成用起点が、ナノホールの径の1/3以上の径を有する凹部である付記1から9のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記11) ナノホール形成用起点が、モールドを用いて導電性材料に刻印することにより形成された付記1から9のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記12) モールドが、導電性材料に凹部を刻印により形成可能な凸部を有する付記11に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記13) モールドが、Ni及びSiCから選択された少なくとも1種で形成された付記11から12のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記14) 刻印が、直径2.5インチの円形当り10トン以下の圧力でモールドを導電性材料に押圧することにより行われる付記11から13のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記15) ナノホール形成用起点が、導電性材料と金属層の金属との合金である付記1から14に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記16) 導電性材料と金属層の金属との合金が、導電性材料と金属層とが接触した状態で加熱することにより形成された付記15に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記17) 加熱が、100〜700℃で行われる付記16に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記18) 導電性材料が、熱収縮されて形成された熱収縮性フィルムの表面に配された付記1から17のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記19) ナノホール形成用起点が、規則的に配列してなるナノホール形成用起点列が一定間隔で配列してなる付記1から18に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記20) ナノホール形成用起点が、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに位置する付記1から19に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記21) 金属層が円形であり、隣接するナノホール形成用起点列におけるナノホール形成用起点が、前記金属層の半径方向に配列した付記19から20のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記22) 隣接するナノホール形成用起点列の間隔が、5〜500nmである付記19から21のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記23) ナノホール形成処理が、陽極酸化処理及びエッチング処理の少なくともいずれかである付記1から22のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記24) 陽極酸化処理における電圧が、次式、ナノホールの間隔(nm)÷A(nm/V) (ただし、A=1.0〜4.0)、で与えられる付記23に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記25) 金属層が、アルミニウムで形成された付記1から24のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記26) 付記1から25のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法により製造されることを特徴とするナノホール構造体。
(付記27) 基板上に、付記1から25のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程と、該ナノホール構造体におけるナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(付記28) 磁性材料充填工程が、ナノホールの内部に軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程、及び、該軟磁性層上に強磁性層を形成する強磁性層形成工程を含む付記27から27のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記29) 軟磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかが、電着及び無電界メッキの少なくともいずれかにより形成される付記28に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記30) 金属層がアルミニウムで形成された付記27から29のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記31) 金属層がスパッタリングにより形成された付記27から30のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記32) 基板が、ディスク状である付記27から31のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記33) 基板上に軟磁性下地層を形成する軟磁性下地層形成工程を含み、該軟磁性下地層上に金属層が形成される付記27から32のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記34) 軟磁性層上に非磁性層を形成する非磁性層形成工程を含み、該非磁性層上に強磁性層が形成される付記28から33のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記35) 軟磁性層、非磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかが、電着及び無電界メッキの少なくともいずれかにより形成され、軟磁性下地層が該電着の際に電極として用いられる付記34に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記36) ナノホール構造体と軟磁性下地層との間に電極層を形成する電極層形成工程を含み、該電極層を電極として用いて電着により、軟磁性層、非磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかを形成する付記34から35のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記37) 付記27から36のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成されたナノホール構造体に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録体。
(付記38) ナノホールの内部に、軟磁性層と強磁性層とを前記基板側からこの順に有し、該強磁性層の厚みが該軟磁性層の厚み以下である付記37に記載の磁気記録媒体。
(付記39) 基板とナノホール構造体との間に軟磁性下地層を有する付記37から38のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(付記40) 強磁性層の厚みが、軟磁性層及び軟磁性下地層の厚みの合計以下である付記38から39のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(付記41) 強磁性層と軟磁性層との間に非磁性層を有する付記38から40のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(付記42) 付記37から41のいずれかに記載の磁気記録媒体と、垂直磁気記録用ヘッドとを有することを特徴とする磁気記録装置。
(付記43) 付記37から41のいずれかに記載の磁気記録媒体に対し、垂直磁気記録用ヘッドを用いて記録を行うことを含むことを特徴とする磁気記録方法。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明のナノホール構造体は、磁気記録媒体をはじめ、DNAチップ、診断装置、検出センサー、触媒基板、電界放出ディスプレイ等の各種分野に好適に使用することができ、特に、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適に使用することができる。
本発明のナノホール構造体の製造方法は、本発明のナノホール構造体の製造に好適に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、本発明の磁気記録媒体の製造に好適に使用することができる。
本発明の磁気記録装置は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等として好適に使用することができる。
本発明の磁気記録方法は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質な記録に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、垂直記録方式による磁気記録を行っている一例を示す概念図である。
【図2A】図2Aは、垂直記録方式による磁気記録の際に、磁束が拡散してしまう状態の一例を説明するための概念図である。
【図2B】図2Bは、垂直記録方式による磁気記録の際に、磁束が拡散してしまう状態の一例を説明するための概念図である。
【図3】図3は、陽極酸化アルミニウムナポアのポア中に磁性金属を充填してなり、パターンドメディアと垂直記録方式とを併せた磁気記録媒体の一例を示す概略説明図である。
【図4A】図4Aは、二次元的に配列した陽極酸化アルミニウムナポアに磁性金属を充填してなる磁気記録媒体の一例を示す概略説明図である。
【図4B】図4Bは、図4AのB−B’断面図である。
【図5】図5は、従来における2段階陽極酸化法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その1)である。
【図6】図6は、従来における2段階陽極酸化法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その2)である。
【図7】図7は、従来における2段階陽極酸化法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その3)である。
【図8】図8は、従来における2段階陽極酸化法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その4)である。
【図9】図9は、アルマイトポアの表面の開口状態の一例を示す概略説明図である。
【図10】図10は、従来におけるダイレクトプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その1)である。
【図11】図11は、従来におけるダイレクトプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その2)である。
【図12】図12は、従来におけるダイレクトプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その3)である。
【図13】図13は、従来におけるダイレクトプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その4)である。
【図14】図14は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その1)である。
【図15】図15は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その2)である。
【図16】図16は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その3)である。
【図17】図17は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その4)である。
【図18】図18は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その5)である。
【図19】図19は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その6)である。
【図20】図20は、磁気記録媒体に対し、単磁極ヘッドを用いて垂直磁気記録方式により磁気記録を行っている状態の一例を示す一部断面概略説明図である。
【図21】図21は、ナノホール形成用起点を形成してから陽極酸化処理を行い、ナノホール列を形成した状態の一例を示す写真である。
【図22】図22は、ナノホール形成用起点を形成してから陽極酸化処理を行い、ナノホール列を形成した状態の一例を示す写真(拡大)である。
【図23】図23は、本発明の磁気記録媒体におけるナノホール列(一定間隔で区切られた態様)が形成された後の状態を示す概略説明図である。
【図24】図24は、本発明の磁気記録媒体におけるナノホール列(一定間隔で幅が変化する態様)が形成された後の状態を示す概略説明図である。
【図25】図25は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その1)である。
【図26】図26は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その2)である。
【図27】図27は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その3)である。
【図28】図28は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その4)である。
【図29】図29は、プレス圧とナノホール形成用起点の形成との関係を示すグラフである。
【図30】図30は、ナノホール形成用起点の拡大図である。
【図31】図31は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その1)である。
【図32】図32は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その2)である。
【図33】図33は、アルミニウムとインジウムとの合金形成に関するグラフである。
【図34】図34は、アルミニウムとインジウムとの合金形成に関するグラフである。
【図35】図35は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その3)である。
【図36】図36は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その4)である。
【図37】図37は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その5)である。
【図38】図38は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その6)である。
【図39】図39は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その1)である。
【図40】図40は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その2)である。
【図41】図41は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その3)である。
【図42】図42は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その4)である。
【図43】図43は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その5)である。
【図44】図44は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その6)である。
【図45】図45は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その7)である。
【図46】図46は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その1)である。
【図47】図47は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その2)である。
【図48】図48は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その3)である。
【図49】図49は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その4)である。
【図50】図50は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その5)である。
【図51】図51は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その6)である。
【図52】図52は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その7)である。
【図53】図53は、リード状態でオフトラックさせながら信号振幅を測定した結果を示すグラフである。
【図54】図54は、本発明の磁気記録媒体と従来の磁気記録媒体とにおけるS/N比及びオーバーライト特性の比較実験データを示すグラフである。
【符号の説明】
【0132】
1・・・・アルミニウム層
1a・・・合金(ナノホール形成用起点)
1b・・・パターン(加熱前)
1c・・・パターン(加熱後)
2・・・・ナノホール
2a・・・ナノホール形成用起点
5・・・・モールド
5a・・・パターン
6・・・・レジスト層
6a・・・パターン
8・・・・平滑基板
9・・・・パターン(In)
10・・・・軟磁性下地層
11・・・・基板
15・・・・熱収縮フィルム
15a・・・パターン
16・・・・静電チャック付ヒーター
20・・・・中間層(非磁性層)
30・・・・記録層(強磁性層)
100・・・書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)
102・・・主磁極
104・・・後半部
110・・・基板
120・・・下地電極層
130・・・陽極酸化アルミニウムナポア
140・・・強磁性層
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体、DNAチップ、触媒基板等に好適なナノホール構造体及びその効率的で低コストな製造方法、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適であり、大容量で高速記録が可能な磁気記録媒体及びその効率的で低コストな製造方法、並びに、該磁気記録媒体を用いた磁気記録装置及び磁気記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IT産業等における技術革新に伴い、磁気記録媒体の大容量化・高速化・低コスト化の研究開発が盛んに行われてきている。該磁気記録媒体の大容量化・高速化・低コスト化のためには、該磁気記録媒体における記録密度の向上が必須である。従来より、該磁気記録媒体における連続磁性膜の水平記録により、該磁気記録媒体の記録密度を向上させる試みがなされてきたが、技術的には限界を迎えつつある。その理由は、第一に、前記連続磁性膜を形成する磁性粒子の結晶粒が大きいと複雑磁区を生じてノイズが大きくなってしまう一方、これを避けるために前記結晶粒を小さくすると熱揺らぎにより、磁化が経時的に減少してエラーが生じてしまうからである。第二に、前記磁気記録媒体の記録密度を高めると相対的に記録減磁界が大きくなるため、該磁気記録媒体の保磁力を大きくする必要がある一方、記録ヘッドの書込み能力が不足してオーバーライト特性が確保できなくなるからである。
【0003】
最近では、前記水平記録に代わる新しい記録方式に関する研究が盛んに行われてきている。その一つが、前記磁気記録媒体における磁性膜を、連続膜とせずにドット、バー、ピラー等のパターン状とし、そのサイズをナノメートルスケールにすることにより複雑磁区ではなく単磁区構造としたパターンドメディアを用いる記録方式である(非特許文献1参照)。他の一つが、前記水平記録に比し、記録減磁界が小さいため高密度化が可能で、記録層を極端に薄くする必要がないため記録磁化の熱揺らぎに対する耐性向上が可能である垂直記録による記録方式である(特許文献1参照)。該垂直記録による記録方式については、軟磁性膜と垂直磁化膜とを併用する提案などがなされているが(特許文献2参照)、単磁極ヘッドによる書込み性が十分でない等の点で、軟磁性下地層を形成する提案(特許文献3参照)などが更になされている。前記垂直記録による記録方式にて磁気記録媒体に対し、磁気記録を行う一例としては、図1に示すように、垂直磁気記録方式の書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100の主磁極102を、磁気記録媒体の記録層30に対向させる。該磁気記録媒体は、基板上に、軟磁性層10と中間層(非磁性層)20と記録層(垂直磁化膜)30とをこの順に有している。書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100の主磁極102から記録層(垂直磁化膜)30側へと高い磁束密度で入力された記録磁界は、記録層(垂直磁化膜)30から軟磁性層10へと、軟磁性層10から書込兼読取用ヘッド(ライト&リードヘッド)100の後半部104へと流れ、磁気回路が形成される。後半部104における記録層(垂直磁化膜)30との対向する部分は、大面積に形成されているので、記録層(垂直磁化膜)30に与える磁化の影響はない。該磁気記録媒体における軟磁性層10は、書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100の機能までも担っている。
【0004】
しかし、この場合、軟磁性層10が、書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100から入力された記録磁界以外に、外部から漏洩してくる浮遊磁界までも記録層(垂直磁化膜)30に対し集中させ磁化させてしまい、記録ノイズが大きくなってしまうという問題がある。一方、上述の磁性膜をパターン状にする場合には、該パターニングが容易でなく高コスト等の問題がある。他方、上述の軟磁性下地層を形成する場合には、磁気記録の際に前記単磁極ヘッドと該軟磁性層下地層との間の距離を短くしなければならず、該距離が大きいと、図2A及びBに示すように書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100から軟磁性下地層10に向かう磁束が距離と共に発散してしまい、軟磁性下地層10上に設けられた記録層(垂直磁化膜)30の下部では広がった磁界での記録しかできず、大きなビットしか書けないという問題がある。この場合、書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)100による書込み電流も増やさなくてはならず、また、大きなビットを書いた後で小さなビットを書くと、大きなビットの消し残りが大きくなり、オーバーライト特性が悪化してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、前記パターンドメディアを用いる記録方式と、前記垂直記録による記録方式とを併せた新しい磁気記録媒体として、陽極酸化アルミニウムナポアのポア中に磁性金属を充填してなる磁気記録媒体も提案されている(特許文献4参照)。該磁気記録媒体は、図3に示すように、基板110上に、下地電極層120と陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)とをこの順に有してなり、陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)には多数のアルミニウムナポアが秩序配列して形成されており、該アルミニウムナポア中に強磁性金属が充填されて強磁性層140が形成されている。
【0006】
しかしながら、この場合、陽極酸化アルミニウムナポア130を秩序配列させるためには、通常500nmを超える厚みものアルミニウムナ層が必要となり、たとえ前記軟磁性下地層を設けたとしても高密度記録を行うことができないという問題がある。このため、陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)を研磨して厚みを薄くすることも検討されているが、該研磨は容易でない上に時間を要し高コストであり、品質劣化の原因となるという問題がある。実際、1Tb/in2をターゲットにした線記録密度1500kBPIで磁気記録を行うためには、前記単磁極ヘッドと前記軟磁性下地層との間の距離を25nm程度にし、陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)の厚みを20nm程度にする必要があり、陽極酸化アルミニウムナポア130(アルミニウムナ層)の研磨の手間等が大きな問題となる。
【0007】
なお、前記陽極酸化アルミニウムナポア中に磁性材料を充填してなる磁気記録媒体は、該陽極酸化アルミニウムナポアが露出面に対して垂直方向に細長く(高アスペクト比で)成長しているため、垂直方向に磁化し易く、この充填された磁性材料の形状異方性により、熱揺らぎに強いという利点がある。また、通常、前記陽極酸化アルミニウムナポアがハニカム型の六方最密格子状に自己組織化的に発生するため、リソグラフィ的手法で1ドットずつドット形成する方法に較べて低コストで製造することができるという利点がある。
【0008】
しかしながら、前記陽極酸化アルミニウムナポアは、六方最密格子等のような、あくまで2次元的に配列形成されるので、磁気記録的な観点からは、隣り合うビット列の間に間隙を設けることができないという問題がある。即ち、前記パターンドメディアにおいては、1ドットに1ビットを記録するのが理想であるが、線方向(円周方向)と同じピッチで半径方向にもドットが存在するため、隣り合うトラックへのクロスライト又はクロクリードが生じてしまうという致命的な問題がある。そこで、例えば、図4に示すように、1ビット(図4中の63)を数個から数10個又はそれ以上のドット(図4A及びB中の61)にせざるを得ないが、この場合でも、依然として、前記クロスライト又はクロスリードが生じてしまうという問題が存在する。
【0009】
そこで、前記陽極酸化アルミニウムナポアを理想配列の状態で得ることが望まれるが、従来においては、このような技術として、以下の2つの方法が知られている。
一つは、一旦、通常の陽極酸化法によってアルミニウム基板に対して十〜数百μmの厚みの陽極酸化アルマイト部を形成し、ポア下端部の配列を十分に自己組織化、秩序化させた後で該アルマイト部を剥離し、その後、剥離した該アルマイト部と前記アルミニウム基板との界面に残った、規則配列した微細な凹部を起点にして再度、陽極酸化法によって所望の深さの理想配列を有する陽極酸化アルマイトポアを得る「2段階陽極酸化法」である。即ち、この2段階陽極酸化法では、図5に示すように、まず、スパッタ法等によって、磁気ディスク用の表面が平滑な基板11上に軟磁性下地層(図中では省略)を形成し、厚めのアルミニウム層1を形成する。図6に示すように、アルミニウム層1を、陽極酸化法によってアルマイトポア2を形成し、アルマイトポア2の底を自己組織化によって秩序配列させる。アルマイトポア2の配列は、陽極酸化開始時は乱雑状態にあるものの、陽極酸化の進行に伴って秩序状態になるが、秩序状態にあるには最低でも10μm程度は陽極酸化を進行させることが必要となり、このため、アルミニウム層1の厚みも10μm又はそれ以上とすることが必要とされる。そして、図7に示すように、形成したアルマイトポア2部を、例えばクロム・リン酸等の酸性水溶液中で剥離除去することにより、表面に秩序配列した凹凸パターンを有するアルミニウム層1を作製し、図8に示すように、それを再び同条件で陽極酸化することによって所望の深さの秩序配列したアルマイトポア2を得ていた。この2段階陽極酸化法は、その原理として自己組織化のみを利用しているため、大面積化に適しているという利点がある。
【0010】
しかし、この場合、前記アルミニウム層を厚めに形成することが必要な上に、形成した該アルミニウム層を長時間かけて陽極酸化することが必要になり、スループットが非常に悪いという問題がある。例えば、HD膜に必要とされるような表面粗さRaがnmレベルの平滑性を有する、厚み10μm以上のアルミニウム層を、成長速度30nm/minでスパッタ法により形成する場合には、5時間もの時間が必要となる。一枚の基板から大量のチップが作製可能な半導体プロセスと異なり、一枚の基板から一枚の磁気記録媒体しか作製できないHDにおいては、このような長時間プロセスを量産に対応させることは現実的でない。また、得られる理想配列にも制限があり、個々のドメイン内では理想配列が得られるもののそのドメインサイズはμmサイズレベル(図9C)までであり、例えば、HD基板サイズでシングルドメイン構造となるようなもの(図9B)を得ることは不可能であるという問題がある。また、現在公知の陽極酸化条件の場合、アルマイトポアのピッチも、電圧25V、40V、195Vの時の60nm、100nm、500nmの3種類に限定され、超高密度記録HDで期待されるような20〜30nmピッチのものを作製することはできないという問題がある(非特許文献2参照)。
【0011】
他の一つは、電子線リソグラフィ、近接場光リソグラフィ等のナノサイズ加工の可能なパターンニング技術を用いて、電着NiやSiC等の高硬度材料を使った理想配列のモールドパターンを形成しておき、これを直接、アルミニウム層の表面にプレス転写する「ダイレクトプリント法」、あるいは、アルミニウム層の表面に塗布したポリマー等にプレス転写した後、ポリマーごとアルミニウム表面をエッチングすることで、2段階陽極酸化法と同様に、起点となる凹凸を形成し、これを陽極酸化することにより、所望の深さのアルマイトポアを得るという「インプリント法」である。
即ち、前記ダイレクトプリント法を用いたパターンドメディア用アルマイトの作製プロセスにおいては、図10に示すように、まず、スパッタ法等によって、磁気ディスク用の表面が平滑な基板11上に軟磁性下地層(図中では省略)を形成し、厚みが100nm程度のアルミニウム層1を形成し、図11に示すように、アルミニウム層1にNi、SiC等の高硬度材料で作製したナノパターンモールドを1〜4ton/cm2等の圧力でプレス転写した後で、図12に示すように、陽極酸化することによって秩序配列したアルマイトポアを得る(図13参照)。また、前記インプリント法を用いたパターンドメディア用アルマイトの作製プロセスにおいては、図14に示すように、まず、スパッタ法等によって、磁気ディスク用の表面が平滑な基板11上に軟磁性下地層(図中では省略)を形成し、厚みが100nm程度のアルミニウム層1を形成し、図15に示すように、アルミニウム層1にレジスト層6を積層する。そして、図16に示すように、レジスト層6に、Ni、SiC等の高硬度材料で作製したナノパターンモールドをプレス転写した後(図17参照)、図18に示すように、残レジスト層6を剥離除去した後、図19に示すように、陽極酸化することによって秩序配列したアルマイトポアを得る。
このダイレクトプリント法又はインプリント法においては、前記2段階陽極酸化と異なり、ピッチはリソグラフィの限界の中で自由であり、また、モールドサイズ内ではシングルドメイン構造が保証されるという利点がある。
【0012】
しかし、前記ダイレクトプリント法の場合、秩序配列したアルマイトポアを実際に1〜2.5インチハードディスク媒体サイズで実現しようとすると、前記アルミニウム層に直接、凹凸をプレス転写する際に極めて大きな圧力が必要になるため、前記アルミニウム層が設けられた基板乃至モールドそのものに割れが生じたり、歪んだりしてHD磁気記録媒体に要求される面精度が得られなくなるという問題がある。また、前記インプリント法の場合、プレス転写前後でポリマーを塗布し、パターンを転写し、エッチングし、残ポリマーを剥離除去することが必要になり、3工程増となり、コスト高となり、生産性が低いという問題がある。
【0013】
【非特許文献1】S.Y.Chou Proc.IEEE 85(4),652(1997)
【非特許文献2】Masuda et al.,J.Vac.Sci.Tec.B Vol.19(2),p569(2001)
【特許文献1】特開平6−180834号公報
【特許文献2】特開昭52−134706号公報
【特許文献3】特開2001−283419号公報
【特許文献4】特開2002−175621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、磁気記録媒体をはじめ、DNAチップ、触媒基板等の各種分野に好適なナノホール構造体及び該ナノホール構造体を破損等が生ずることがなく効率的かつ低コストに製造することが可能な製造方法、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適であり、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質な磁気記録媒体及び該磁気記録媒体を基板等に破損等が生ずることがなく効率的かつ低コストに製造することが可能な製造方法、並びに、該磁気記録媒体を用い、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性に優れた磁気記録装置及び磁気記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行うことを特徴とするナノホール構造体の製造方法である。
該ナノホール構造体の製造方法においては、金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いて前記金属層にナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行う。このため、前記ナノホール形成用起点を形成する際に前記金属層に割れ、破損等が生ずることがない。
【0016】
<2> 本発明の前記ナノホール構造体の製造方法により製造されることを特徴とするナノホール構造体である。
該ナノホール構造体は、前記ナノホールに磁性材料を充填しておけばハードディスク装置等の磁気記録媒体とすることができ、また、前記ナノホールにDNA等を配しておけばDNAチップ等とすることができ、前記ナノホールに抗体等を配しておけば蛋白質検出装置、診断装置等をすることができ、前記ナノホールに例えばカーボンナノチューブ形成用等の触媒金属を充填しておけば、カーボンナノチューブ等の形成基板、電界放出装置等とすることができる。
【0017】
<3> 基板上に、本発明の前記ナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程と、該ナノホール構造体におけるナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法である。
該磁気記録媒体の製造方法では、前記ナノホール構造体形成工程において、基板上に、上述した本発明のナノホール構造体を形成する。即ち、前記基板上に金属層を形成し、該金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いて前記金属層にナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行う。その結果、前記基板上に本発明の前記ナノホール構造体が形成される。このとき、前記ナノホール形成用起点は、前記特定のブリネル硬度を有する前記導電性材料に形成されるため、前記ナノホール形成用起点の形成の際に前記基板に割れ、破損等が生ずることがない。次に、前記磁性材料充填工程において、前記ナノホールの内部に磁性材料を充填する。その結果、前記ナノホールに前記磁性材料が充填されてなる磁気記録媒体が、効率よく製造される。
前記磁気記録媒体の製造方法の一態様においては、前記ナノホール形成用起点が、前記導電性材料に形成した凹部であり、例えば、前記ナノホール形成用起点が、前記モールドを用いて導電性材料に刻印により形成されてなる。このとき、前記導電性材料は、前記特定のブリネル硬度を有するので、前記モールドに加える圧力が大きくなくとも、前記基板上に形成した前記金属層上に配された前記導電性材料に容易に前記ナノホール形成用起点を刻印することができ、該ナノホール形成用起点を形成する際に、従来におけるように、前記基板に割れ、破損等が生ずることがない。
前記磁気記録媒体の製造方法の他の態様においては、前記ナノホール形成用起点が、導電性材料と金属層の金属との合金であり、例えば、前記導電性材料と前記金属層の金属との合金が、該導電性材料と該金属層とが接触した状態で加熱することにより形成されてなる。このとき、前記ナノホール形成用起点を形成する時に、前記基板に大きな圧力を印加することがないため、従来におけるように、前記基板に割れ、破損等が生ずることがない。
【0018】
<4> 本発明の前記磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成されたナノホール構造体に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録体である。
該磁気記録媒体においては、前記磁性材料が充填されたナノホールが規則的に配列してなるナノホール列が一定間隔で配列しているので、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質である。そして、該磁気記録媒体は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適である。
【0019】
<5> 前記<4>に記載の磁気記録媒体と、垂直磁気記録用ヘッドとを有することを特徴とする磁気記録装置である。該磁気記録媒体においては、前記磁気記録媒体に対し、前記垂直磁気記録用ヘッドが記録を行うので、該磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質である。また、前記磁気記録媒体に対し、単磁極ヘッド等の前記垂直磁気記録用ヘッドを用いて磁気記録を行うと、該垂直磁気記録用ヘッドと前記軟磁性層との間の距離が、前記多孔質層の厚みよりも短く、前記強磁性層の厚みと略等しくなるため、前記多孔質層の厚みに拘らず前記強磁性層の厚みだけで、前記垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。この場合、図20に示すように、前記単磁極ヘッド(書込兼読取用ヘッド100)からの磁束が前記強磁性層(垂直磁化膜)30に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
<6> 前記<4>に記載の磁気記録媒体に対し、垂直磁気記録用ヘッドを用いて記録を行うことを含むことを特徴とする磁気記録方法である。該磁気記録方法においては、前記磁気記録媒体に対し、前記垂直磁気記録用ヘッドが記録を行うので、該磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がない。また、前記磁気記録媒体に対し、単磁極ヘッド等の前記垂直磁気記録用ヘッドを用いて磁気記録を行うと、該垂直磁気記録用ヘッドと前記軟磁性層との間の距離が、前記多孔質層の厚みよりも短く、前記強磁性層の厚みと略等しくなるため、前記多孔質層の厚みに拘らず前記強磁性層の厚みだけで、前記垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。この場合、図20に示すように、前記単磁極ヘッド(書込兼読取用ヘッド100)からの磁束が前記強磁性層(垂直磁化膜)30に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、磁気記録媒体をはじめ、DNAチップ、触媒基板等の各種分野に好適なナノホール構造体及び該ナノホール構造体を破損等が生ずることがなく効率的かつ低コストに製造することが可能な製造方法、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適であり、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質な磁気記録媒体及び該磁気記録媒体を基板等に破損等が生ずることがなく効率的かつ低コストに製造することが可能な製造方法、並びに、該磁気記録媒体を用い、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性に優れた磁気記録装置及び磁気記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(ナノホール構造体及びその製造方法)
本発明のナノホールの製造方法は、ナノホール形成用起点形成工程と、ナノホール形成処理工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
【0022】
−ナノホール形成用起点形成工程−
前記ナノホール形成用起点形成工程は、金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成する工程である。
【0023】
−−金属層−−
前記金属層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属単体、合金などのいずれであってもよく、その中でも、例えば、アルミニウムが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記金属層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、前記金属層の材料をスパッタ法(スパッタリング)、蒸着法などにより好適に行うことができる。該金属層の形成条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記スパッタ法の場合、前記金属層の材料で形成されたターゲットを用いてスパッタリングを行うことができる。この場合に用いる前記ターゲットは、高純度であるのが好ましく、前記金属層の材料がアルミニウムである場合には、99.990%以上であるのが好ましい。
【0025】
前記金属層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、500nm以下が好ましく、5〜200nmがより好ましい。
前記金属層の厚みが、500nmを超えると、ナノホール内に他の材料等を充填するのが困難になることがある。
【0026】
前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、円板状(ディスク状)、などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、円板状(ディスク状)であるのが好ましい。
なお、前記形状が前記板状、円板状等である場合には、前記ナノホール(細孔)は、これらの一の露出面(板面)に対し、略直交する方向に形成するのが好ましい。
【0027】
−−導電性材料−−
前記導電性材料としては、前記金属層の材料よりも低硬度のものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、そのブリネル硬度が、前記金属層の金属のブリネル硬度未満であるものが好ましく、前記金属層の金属のブリネル硬度の1/5以下であるものがより好ましく、前記金属層の金属のブリネル硬度の1/10以下であるものが特に好ましい。
前記導電性材料のブリネル硬度が、前記金属層の金属のブリネル硬度以上であると、該導電性材料に前記ナノホール形成用起点を形成する際に前記金属層の硬度が高すぎるため、該金属層に割れ、破損等が生じるおそれがある。
なお、前記ブリネル硬度としては、例えば、Inでは0.9、Snでは5.3、Biでは7であり、なお、前記金属層の材料として好適なAlでは17とされている(日本金属学会編「金属データブック」参照)。
【0028】
前記導電性材料の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、金属が好適に挙げられ、In、Sn、Bi、及びこれらの合金から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、Inが特に好ましい。
前記導電性材料が前記材料で形成されている場合には、該導電性材料に前記ナノホール形成用起点を形成するのが容易であり、かつ大きな力を前記金属層に印加することが必要なく、前記ナノホール形成用起点を形成する際に前記金属層等に割れ、破損等の問題が生じない点で有利である。
【0029】
また、前記導電性材料としては、前記金属層の金属の融点未満の温度で該金属と共晶化可能であるものが好ましく、100〜700℃で前記金属層の金属と共晶化可能であるものがより好ましい。なお、このような導電性材料としては、例えば、In、Sn、Bi、これらの合金が好ましく、Inが特に好ましい。
前記導電性材料が前記金属層の金属の融点未満の温度で該金属と共晶化不能である場合には、前記ナノホール形成用起点を形成する際に前記導電性材料と前記金属層の金属との合金を形成することができず、効率よく前記ナノホール形成用起点を形成することができないことがある。
【0030】
−−ナノホール形成用起点−−
前記ナノホール形成用起点としては、前記ナノホールを形成するための起点として機能するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記導電性材料に形成した凹部、前記導電性材料と前記金属層の金属とで形成した合金、などが好適に挙げられる。
【0031】
前記凹部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、その深さが、前記金属基板の表面の表面粗さRaの10倍以上であるのが好ましく、10〜20nmであるのがより好ましい。
前記凹部の深さが、前記金属層の金属の表面粗さRaの10倍未満であると、前記ナノホール形成用起点として十分に機能しないことがあり、前記ナノホールの形成効率に劣ることがある。
【0032】
前記凹部の径(開口径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、形成する前記ナノホールの径の1/3以上であるのが好ましく、該ナノホールの径の1/2以上であるのがより好ましい。
前記凹部の径(開口径)が、形成する前記ナノホールの径(開口径)の1/3未満であると、前記ナノホール形成用起点として十分に機能しないことがある。
【0033】
前記ナノホール形成用起点が前記凹部である場合、該ナノホール形成用起点の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モールドを用いて前記導電性材料を押圧して刻印により形成する方法、などが好適に挙げられる。
この場合、前記導電性材料は、前記金属層上に層状に形成されているのが好ましい。また、この場合、前記モールドにおけるパターンが前記導電性材料に刻印、即ちダイレクトプリント法により形成されるが、該導電性材料のブリネル硬度が、前記金属層の金属のブリネル硬度未満であるので、前記刻印(ダイレクトプリント)時におけるプレス圧を下げることができ、レジスト等を使用した場合に比し工程数を減らすことができ、また、高プレス圧印加による前記基板に歪みや割れ等の欠陥が生ずるのを効果的に抑制することができる。
【0034】
前記モールドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記導電性材料に、前記凹部を刻印により形成するための凸部を有するものが好ましい。
前記凸部の形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、角錐形状、円錐形状、半円形状(半球形状)、山形状などが挙げられる。
前記モールドの材質としては、特に制限はなく、高硬度の材料として知られているものの中から適宜選択することができ、例えば、Ni、SiCなどが特に好適に挙げられる。
前記モールドにより前記導電性材料に刻印を行う場合の圧力としては、前記金属層に割れ、破損等が生じない限り、特に制限はなく、例えば、直径2.5インチの円形当り、10トン以下の圧力であるのが好ましく、5トン以下の圧力であるのがより好ましく、1トン以下の圧力であるのが特に好ましい。
前記圧力が、直径2.5インチの円形当り、10トン超であると、刻印の際に反り、割れ、変形等が生じることがある。
【0035】
前記合金の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)スルーホール型のマスク、通常のリソグラフィ等を利用して、前記金属層(アルミニウム層)上に、該金属層の材料(アルミニウム)と共晶化可能な前記導電性材料(金属)によるパターンを形成し、該パターン部を昇温して該導電性材料(金属)と前記金属層の材料とを合金化させる方法、(2)スルーホール型のマスク、通常のリソグラフィ等を利用して、一旦、平滑な表面の部材(基板)上に、前記金属層の材料と共晶化可能な前記導電性材料(金属)によるパターンを形成し、該パターンと前記金属層(アルミニウム層)とを密着させた状態で昇温することにより、該パターン部と接触した前記金属層の材料を合金化させる方法、(3)スルーホール型のマスク、通常のリソグラフィ等を利用して、一旦、平滑な表面の熱収縮フィルム上に、前記金属層の材料と共晶化可能な前記導電性材料(金属)によるパターンを形成し、該熱収縮フィルムを熱収縮させてから、該熱収縮フィルム上に形成した前記パターンと前記金属層(アルミニウム層)とを密着させた状態で昇温することにより、該パターンと接触した前記金属層(アルミニウム層)を合金化させる方法、などが好適に挙げられる。
前記(1)から(3)の方法の場合、前記ナノホール形成用起点を形成するに際し、前記金属層に高プレス圧を印加する必要がないので、レジスト等を使用した場合に比し工程数を減らすことができ、また、高プレス圧印加による前記基板に歪みや割れ等の欠陥が生ずるのを効果的に抑制することができる。
【0036】
なお、前記(2)の方法において用いる前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、セラミックス、などが挙げられる。前記(3)の方法の場合、前記導電性材料によるパターンを微細に形成しておく必要がないため、前記ナノホール形成用起点の形成が容易である点で好ましい。また、前記熱収縮フィルムを収縮させるのに必要な温度と、前記導電性材料(金属)が軟化する温度とが近くなるようにしておくと、該熱収縮フィルムの収縮時に該熱収縮フィルムにストレスがかかって前記導電性材料(金属)によるパターンがくずれるのを防止することができる。
【0037】
この場合、前記導電性材料としては、上述した、前記金属層の金属の融点未満の温度で該金属と共晶化可能であるものが好ましく、100〜700℃で前記金属層の金属と共晶化可能であるものがより好ましい。なお、このような導電性材料としては、例えば、In、Ga、Sn、Bi、これらの合金などが好ましく、Inが特に好ましい。
また、前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100〜700℃が好ましく、400〜600℃がより好ましい。
前記加熱の温度が、100℃未満であると、前記導電性材料が前記金属層の材料と共晶化せず、合金が形成されないことがあり、一方、700℃を超えると、前記金属層の材料がアルミニウム等である場合には該金属層自体が溶融してしまうことがある。
【0038】
前記ナノホール形成用起点の前記金属層上での位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ナノホール構造体を磁気記録媒体に適用する場合には、前記ナノホール形成用起点が規則的に配列してなる列(ナノホール形成用起点列)が一定間隔で配列しているのが好ましく、また、前記ナノホール形成用起点が、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに位置するのが好ましく、前記金属層が円形である場合には、隣接するナノホール形成用起点列におけるナノホール形成用起点が、前記金属層の半径方向に配列しているのがより好ましい。
これらの場合、得られる磁気記録媒体を、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録を可能とし、大容量化でき、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質なものとすることができる点で有利である。
【0039】
前記ナノホール形成用起点の隣接するものどうしの間隔としては、5〜500nmが好ましく、10〜60nmがより好ましい。
【0040】
−ナノホール形成工程−
前記ナノホール形成工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陽極酸化処理、エッチング処理、などが好適に挙げられる。これらの中でも、前記金属層の板面に略直交する方向に多数のナノホールを略等間隔にかつ均等に配列形成することができる等の点で、陽極酸化処理が特に好ましい。
前記陽極酸化処理の場合、硫酸、リン酸あるいはシュウ酸の水溶液中で、前記金属層に接する電極を陽極として電気分解エッチングさせることにより行うことができる。該電極としては、前記金属層を形成するのに先立って形成した、後述の軟磁性下地層、電極層などが挙げられる。前記陽極酸化処理を行うと、前記ナノホール形成用起点上にのみ、効率的に前記ナノホールを一定間隔で形成することができる点で有利である。
【0041】
なお、前記陽極酸化処理における電解液の種類、濃度、温度、時間等としては、特に制限はなく、形成するナノホールの数、大きさ、アスペクト比等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記電解液の種類としては、隣接する前記ナノホール列の間隔(ピッチ)が、150nm〜500nmである場合は、希釈リン酸溶液が好適に挙げられ、80nm〜200nmである場合は、希釈蓚酸溶液が好適に挙げられ、10nm〜150nmである場合は、希釈硫酸溶液が好適に挙げられる。いずれの場合も、前記ナノホールのアスペクト比の調整は、陽極酸化処理後にリン酸溶液に浸漬させて前記ナノホール(アルミニウムナポア)の直径を増加させることにより行うことができる。
【0042】
前記陽極酸化処理における印加電圧としては、例えば、次式、ナノホール(列)の間隔(nm)÷A(nm/V) (ただし、A=1.0〜4.0)、で与えられる値の電圧を選択するのが好ましい。
前記電圧が、前記式で与えられる範囲から選択される値であると、ライン状に前記ナノホールを配列させることができる等の点で有利である。
【0043】
前記ナノホール形成においては、前記ナノホール形成用起点が前記凹凸である場合には、前記陽極酸化処理等は該凹部に選択的に生じ、該凹部にナノホールが形成される。また、前記ナノホール形成用起点が前記合金である場合には、前記陽極酸化処理等は該合金部に優先的に生じ、該合金部にナノホールが形成される。
【0044】
本発明のナノホール構造体の製造方法により製造される本発明のナノホール構造体は、前記ナノホール形成処理により、前記金属層(アルミニウム)から変化した絶縁層(アルミニウムナ)に、前記ナノホールが規則的に配列してなるナノホール列が一定間隔で配列してなるものが好ましく(図21及び図22参照)、その材料、形状、構造、大きさ等について目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
前記ナノホールとしては、前記ナノホール構造体を貫通して孔として形成されていてもよいし、前記ナノホール構造体を貫通せず穴(窪み)として形成されていてもよいが、例えば、前記ナノホール構造体を前記磁気記録媒体として使用する場合には、前記ナノホールが前記ナノホール構造体を貫通する貫通孔として形成されているのが好ましい。
【0046】
前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、既存のハードディスク等の大きさに対応した大きさが好ましく、前記ナノホール構造体をDNAチップ等に適用する場合には、既存のDNAチップ等の大きさに対応した大きさが好ましく、前記ナノホール構造体を電界放出装置用のカーボンナノチューブ等の触媒基板に適用する場合には、電界放出装置に対応した大きさが好ましい。
【0047】
前記ナノホール列の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一方向に平行に配列していてもよいし、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに配列していてもよい。前記ナノホール構造体をDNAチップ等に適用する場合には前者の配列が好ましく、前記ナノホール構造体をハードディスク、ビデオディスク等の前記磁気記録媒体に適用する場合には後者の配列が好ましく、特に、ハードディスク用途の場合にはアクセスの容易性の観点から同心円状が好ましく、ビデオディスク用途の場合には連続再生の容易性の観点から螺旋状が好ましい。
なお、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、隣接するナノホール列におけるナノホールが、半径方向に配列しているのが好ましい。この場合、該磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質となる。
【0048】
隣接する前記ナノホール(列)の間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体がハードディスク等の前記磁気記録媒体に適当する場合、5〜500nmが好ましく、10nm〜200nmnmがより好ましい。
前記間隔が、5nm未満であると、ナノホールの形成が困難であり、500nmを超えると、ナノホールの規則的配列が困難である。
【0049】
隣接するナノホール(列)の間隔と、ナノホール(列)の幅との比(間隔/幅)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1.1〜1.9が好ましく、1.2〜1.8がより好ましい。
前記比(間隔/幅)が、0.1未満であると、隣接するナノホール同士が融合してしまい、独立したナノホールが得られないことがあり、1.9を超えると、前記陽極酸化処理の際に凹状ライン部分以外の部分にもナノホールが形成されてしまうことがある。
【0050】
前記ナノホール(列)の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、連続的に形成されていてもよいし(図21及び図22参照)、一定間隔に仕切られていてもよい(図23参照)。
前記ナノホール(列)の幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体がハードディスク等の前記磁気記録媒体に適当する場合、5〜450nmが好ましく、8〜200nmがより好ましい。
前記ナノホール列の幅が、5nm未満であると、ナノホールの形成が困難であり、450nmを超えると、ナノホールの規則配列が困難である。
また、前記ナノホール(列)の幅としては、一定であってもよいし、前記ナノホール列の長さ方向において一定間隔(一定周期)で変化(広く又は狭く)するもの、などであってもよい。この場合、該ナノホール列における幅が広くなっている箇所に、図24に示すように、前記ナノホールが形成され易くなる点で好ましい。
【0051】
前記ナノホールにおける開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合、その強磁性層を単磁区とすることができる大きさが好ましく、具体的には、200nm以下が好ましく、5〜100nmがより好ましい。
前記ナノホールにおける開口径が、200nmを超えると前記ナノホール構造体を適用した磁気記録媒体が単磁区構造にならないことがある。
【0052】
前記ナノホールにおける深さと開口径とのアスペクト比(深さ/開口径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高アスペクト比であると、形状異方性が大きくなり、磁気記録媒体の保持力を向上させることができる点で好ましく、例えば、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、2以上であるのが好ましく、3〜15であるのがより好ましい。
前記アスペクト比が、2未満であると、磁気記録媒体の保持力を十分に向上させることができないことがある。
【0053】
前記ナノホール構造体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合には、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、20〜200nmが特に好ましい。
前記ナノホール構造体の厚みが、500nmを超えると、前記ナノホール構造体をハードディスク等の磁気記録媒体に適用する場合、該磁気記録媒体に前記軟磁性下地層を設けたとしても高密度記録を行うことができないことがあり、該ナノホール構造体の研磨が必要になり、この場合、時間を要し高コストであり、品質劣化の原因となることがある。
【0054】
ここで、本発明のナノホール構造体の製造方法(第一の例)について、図面を参照しながら説明する。例えば、3.5インチ、2.5インチ、1.8インチ、1インチ径の4種の大きさのハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板(Al合金、シリコン、強化ガラスで形成された3種)に、図25に示すように、通常のスパッタ法を用いて、軟磁性下地層(例えば厚み100nmのパーマロイ膜、図示せず)、酸化停止層(例えば厚み5nmのNb膜、図示せず)、高純度のアルミニウム層1(例えば厚み100nm)をこの順に形成する。次に、図26に示すように、アルミニウム層1上に軟硬度金属層7(厚み30nm、In)を形成する。これら層の形成は、マルチターゲットのスパッタ装置又はシングルターゲットのマルチチャンバースパッタ装置を用い、全て真空一環処理で行うことができ、ロードロックへの出し入れ等に伴うスループットの低下を最低限に抑えることが可能である。
【0055】
次に、図27に示すように、プレス圧力及びストロークの精密制御が可能なプレス装置(一般にナノインプリント装置として知られている)を用いて、モールド5に設けられたパターン5aを軟硬度金属層7に転写する。モールド5は、例えばNi、SiC等の高硬度材料で作製されており、EB又はDEEP−UV等の手法でパターン5aを形成したものなのが挙げられる。モールド5におけるパターン5aのピッチは、所望のナノホールパターン(ポアパターン)のピッチに合わせた六方最密パターンなどが挙げられるが、所望のナノホールパターン(ポアパターン)の整数倍のピッチを持つラインパターンや六方最密パターンなども挙げられる。
【0056】
この時の転写圧力は、例えば0.1トン/cm2(1.8インチ基板で約1.9トン)となる。これをアルミニウム層1に直接プレス転写(ダイレクトプリント)する際に必要な圧力である約2トン/cm2(1.8インチ基板で約38トン)と比較すると、1/10以下に低減されている(図29参照)。このため、アルミニウム層1のアルミニウムのブリネル硬度25よりも、軟硬度金属層7のInのブリネル硬度0.9の方が大幅に小さいため、モールド5を用いた転写の際に軟硬度金属層7が選択的にかつ容易にパターニングされる。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に刻印されたパターン5aの凹部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
なお、このとき、基板11の材料が、Si、ガラス、Al合金のいずれの場合であっても、基板11及びモールド5にかけ、割れ、歪み等は観られない。
【0057】
一方、従来のように、Si製基板や強化ガラス製の基板11に、例えば2トン/cm2もの圧力を加えた場合には、基板11の内部にマイクロクラックが多数発生し、転写後の陽極酸化処理や、実際にスピンドルに組み込んだ後の高速回転時において、基板11にかけ、割れ等が発生することが多く、また、Al合金製の基板11の場合には、かけ、割れ等は発生しないものの、同様に基板11の内部に歪み等が発生し、基板11の平坦性が劣化し、基板11に割れが発生するような条件では、モールド5そのものにも傷が入ってしまう(図29参照)。
【0058】
ここでは、室温で軟硬度金属層7に対しモールド5をプレス(インプリント)した例であるが(図30参照)、より圧力を下げるためには、軟硬度金属層7の材料であるInの融点である156℃以下の温度近傍までプレス温度を上げることも有効である。即ち、例えば、140℃まで温度を上げれば必要圧力は更に一桁以上低下する(ただし、プロセス中に昇温、降温工程が入るためにスループットは低下する)。また、一般に軟磁性層の再結晶化による特性劣化を防ぐため、総てのプロセスは350℃以下とすることが好ましい。逆に、モールド5からの剥がれ性を改善するために、Inではなく、より硬いIn−Alの合金を利用しても同様な結果が得られ、その他、低硬度の金属の例としてSn、Pb、In−Ga合金、ウッドメタル等の金属を用いても同様の効果が得られる。
【0059】
次に、モールド5のパターン5aを軟硬度金属層7に転写した後の基板11を、陽極酸化浴中に保持する。例えば、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)を用いた場合、In、Alともに、エッチングレートは、ほぼ0.3nm/sとなるので、図28に示すように、浴中に約2分程度保持するだけでパターン5aが刻印された軟硬度金属層7は完全に溶解し、アルミニウム層1の表面に転写される。これをそのまま、25V(直径60nmのナノホールを得るための電圧条件)で陽極酸化することにより、直径60nmの理想配列のナノホール構造体(アルマイトポア)が得られる。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0060】
その後、例えば、CoやFeのような強磁性体金属をナノホール(アルマイトポア)中にメッキにより充填する。以上が、磁性材料充填工程に相当する。
【0061】
次に、表面をCMP研磨、潤滑剤塗布という従来のHD媒体と同じ工程を行うことにより、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体におけるナノホールに強磁性体が充填された磁気記録媒体を製造することができる。
【0062】
ここで、本発明のナノホール構造体の製造方法(第二の例)について、図面を参照しながら説明する。図31に示すように、上記第一の製造方法と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成する。
【0063】
次に、図32に示すように、スルーホールパターン10を用い、アルミニウム層1上に、該アルミニウムと低温で共晶化可能な金属としてのInのパターン1b(例えば厚み10nm)を形成する。スルーホールパターン10の形成方法としては、2段階陽極酸化法を用いたアルマイトメンブレン、Si基板と通常のリソグラフィーを用いた方法などが挙げられる。
【0064】
次に、Inのパターン1bが形成された基板11を昇温すると、図33及び図34に示すように、InとAlとはその総ての組成範囲で共晶化可能であるため、Inの融点である156℃を超えた時点でInとAlとの接触部は、合金化反応が生じ、図35に示すように、In−Alの合金となって再度固化し、図36に示すように、アルミニウム層1の表面にパターン1cが転写される。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0065】
この基板11を上記第一の例と同様にして、図37に示すように、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写される。
ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去される。その後は、上記第一の例と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図38に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体が得られる。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0066】
そして、得られたナノホール構造体におけるナノホールに上記第一の例と同様にして強磁性材料を充填する。以上により、前記ナノホールに強磁性体が充填された磁気記録媒体を製造する。以上が、前記磁性材料充填工程に相当する。
【0067】
ここでは、Inを使った例を示したが、外にIn−Al合金、In−Ga合金、Sb、Pbなど、Alと低温で共晶化する金属を用いても同様のプロセスが可能である。
【0068】
ここで、本発明のナノホール構造体の製造方法(第三の例)について、図面を参照しながら説明する。図39に示すように、上記第一の製造方法と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成する。
【0069】
次に、図40に示すように、平滑基板20上に、アルミニウムと低温で共晶化可能な金属(In)でパターン21を形成した後、パターン21をアルミニウム層に転写する。平滑基板20としては、Si、プラスチック等の十分な平滑性を持ち、かつプロセス温度内でInと反応しないものであればよく、ここでは、Si基板を用いた。該Si基板に、スルーホール基板を用いてInを蒸着、あるいは、通常のリソグラフィーを用いてInをパターニングした。パターン21が形成された平滑基板20を、図41に示すように、アルミニウム層1の表面に密着させた状態でこれを融点以上に昇温し、Al層の表面とInとを合金化反応させて、図42に示すように、AlとInとの合金パターン21aを転写する。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0070】
この基板11を上記第一の例と同様にして、図43に示すように、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、図44に示すように、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写される。ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去された。その後は、上記第一の例と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図45に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体が得られる。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0071】
そして、得られたナノホール構造体におけるナノホールに上記第一の例と同様にして強磁性材料を充填した。以上により、前記ナノホールに強磁性体が充填された磁気記録媒体を製造することができる。以上が、前記磁性材料充填工程に相当する。
【0072】
ここで、本発明のナノホール構造体の製造方法(第四の例)について、図面を参照しながら説明する。図46に示すように、上記第一の製造方法と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成する。
【0073】
次に、平滑基板20として熱収縮フィルムを用いた。該熱収縮フィルム(特開2001−155386(P2001−155386A)号公報参照)を用い、パターン20aの材料として該熱収縮フィルムが収縮する温度近傍で軟化する金属(In)を用いることで、該熱収縮フィルムにストレスをかけることなく該熱収縮フィルムを収縮させることができる。また、図47に示すように、加熱時に静電チャック100付きのホットプレートを用いることで該熱収縮フィルムが反ったり皺になってパターンがくずれることを防止することができる。ここでは、例えば、50%収縮の熱収縮フィルムを用いて収縮温度160℃、静電チャック電圧200Vで熱収縮を行う。元々のパターンには、2段階陽極酸化で作製した直径60nmの理想配列アルマイトメンブレンを用いたため、縮小後のパターンは30nmピッチとなる。
パターン20aが形成された平滑基板20(熱収縮フィルム)を、図48に示すように、アルミニウム層1の表面に密着させた状態でこれを融点以上に昇温し、Al層の表面とInとを合金化反応させて、図49に示すように、AlとInとの合金パターン21aを転写する。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0074】
この基板11を上記第一の例と同様にして、図50に示すように、直径30nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に、酸化電圧12.5Vにて保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、図51に示すように、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写される。ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去される。その後は、上記第一の例と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図52に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体(ナノホールの直径30nm)が得られる。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0075】
そして、得られたナノホール構造体におけるナノホールに上記第一の例と同様にして強磁性材料を充填した。以上により、前記ナノホールに強磁性体が充填された磁気記録媒体を製造した。以上が、前記磁性材料充填工程に相当する。
なお、本発明においては、以上の第一の例から第四の例では、一面ずつ2度に分けてナノホール(アルマイトポア)を形成するプロセスを示したが、前記第二の方法以外は、モールド又はパターンをつけた平滑基板で両面にAl層を有するHD磁気記録媒体用基板をサンドイッチしてプロセスを行うことで、両面を同時に処理することも可能である。
【0076】
本発明のナノホール構造体は、磁気記録媒体をはじめ、DNAチップ、触媒基板等の各種分野に好適な、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適に使用することができる。
【0077】
(磁気記録媒体及びその製造方法)
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、ナノホール構造体形成工程と、磁性材料充填工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択した、軟磁性下地層形成工程、電極層形成工程、非磁性層形成工程、保護層形成工程、研磨工程、などのその他の工程を含む。
本発明の磁気記録媒体は、本発明の前記磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成された金属層に、該基板面に対し略直交する方向に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなる。
以下、本発明の磁気記録媒体の製造方法について説明すると共に、その説明を通じて、前記磁気記録媒体の内容をも明らかにする。
なお、本発明の磁気記録媒体の製造方法における、前記ナノホール形成用起点形成工程及び前記ナノホール構造体形成工程としては、本発明の前記ナノホール構造体の製造方法を好適に適用することができる。
【0078】
−ナノホール構造体形成工程−
前記ナノホール構造体形成工程は、本発明の上述したナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成する工程である。
なお、前記ナノホール構造体の製造方法は、上述した通りであり、該ナノホール構造体の製造方法により、前記基板上に本発明の前記ナノホール構造体が形成される。
なお、前記基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ディスク等の基材として使用されているものなどが好適に挙げられる。該基材としては、該磁気記録媒体をHDD等に応用する場合には、ディスク状であるのが好ましい。
【0079】
−磁性材料充填工程−
前記磁性材料充填工程は、前記ナノホール構造体における前記ナノホールの内部に磁性材料を充填する工程である。
前記磁性材料充填工程が、ナノホールの内部に軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程、及び、該軟磁性層上に強磁性層を形成する強磁性層形成工程を含むのが好ましい。
【0080】
前記軟磁性層形成工程は、前記ナノホールの内部に軟磁性層を形成する工程である。
前記軟磁性層の形成は、後述の軟磁性材料をメッキ法、電着法等により前記ナノホールの内部に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記メッキ法としては、例えば、無電解メッキ法、電界メッキ法、などが好適に挙げられる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層を電極として、前記軟磁性材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記電極上に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記軟磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部であって、前記基板上、前記軟磁性下地層上又は前記電極層上に前記軟磁性層が形成される。
【0081】
前記強磁性層形成工程は、前記軟磁性層上(又は該軟磁性層上に前記非磁性層が形成されている場合には該非磁性層上に)に強磁性層を形成する工程である。
前記強磁性層の形成は、上述した強磁性層の材料をメッキ法、電着法等により前記ナノホールの内部に形成した前記軟磁性層上に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層(シード層)を電極として、前記強磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記ナノホール内に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記強磁性層形成工程により、前記ナノホール構造体におけるナノホールの内部であって、前記軟磁性層上又は前記非磁性層上に前記強磁性層が形成される。
【0082】
−軟磁性下地層形成工程−
本発明においては、前記軟磁性層形成工程の前に前記軟磁性下地層形成工程を好適に行うことができる。
前記軟磁性下地層形成工程は、必要に応じて選択され、基板上に軟磁性下地層を形成する工程である。
前記基板としては、上述したものが挙げられる。
前記軟磁性下地層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法等の真空成膜法、メッキ法(無電解メッキ、電界メッキ)、電着(電着法)などで形成してもよい。
前記軟磁性下地層形成工程により、前記基板上に所望の厚みの前記軟磁性下地層が形成される。
【0083】
−電極層形成工程−
前記電極層形成工程は、前記ナノホール構造体と前記軟磁性下地層との間に電極層を形成する工程である。
前記電極層の形成は、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法(スパッタリング)、蒸着法などにより好適に行うことができる。該電極層の形成条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記電極層形成工程により形成された前記電極層は、軟磁性層、非磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかを電着により形成する際の電極として使用される。
【0084】
−非磁性層形成工程−
前記非磁性層形成工程は、前記軟磁性層上に非磁性層を形成する工程である。
前記非磁性層の形成は、上述した非磁性層の材料を電着等により前記ナノホールの内部に形成した前記軟磁性層上に堆積乃至充填させることにより行うことができる。
前記電着の方法、条件等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記軟磁性下地層又は前記電極層を電極として、前記非磁性層の材料を含む溶液を1種又は2種以上用い、電圧を印加させることにより、前記ナノホール内に析出乃至堆積させる方法、などが好適に挙げられる。
前記非磁性層形成工程により、前記多孔質層におけるナノホールの内部であって、前記軟磁性層上等に前記非磁性層が形成される。
【0085】
−研磨工程−
前記研磨工程は、前記磁性層形成工程(前記強磁性層形成工程、前記軟磁性層形成工程を含む)の後、前記ナノホール構造体の表面を研磨し、平坦化する工程である。
前記研磨工程における研磨の方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。該研磨工程により、前記磁気記録媒体の表面が平滑化されると、垂直磁気記録ヘッド等の磁気ヘッドの安定浮上が可能となり、低浮上化による高密度記録と信頼性確保の双方を達成することができる点で有利である。
【0086】
以上の本発明の磁気記録媒体の製造方法により、本発明の前記磁気記録媒体を効率よく低コストで製造することができる。
本発明の磁気記録媒体は、本発明の前記磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成されたナノホール構造体に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の層等を有してなる。
【0087】
前記ナノホール構造体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、500nm以下が好ましく、5〜200nmがより好ましい。
前記ナノホール構造体の厚みが、500nmを超えると、ナノホール内への磁性材料の充填が困難になることがある。
【0088】
前記多孔質層(ナノホール構造体)における前記ナノホールは、該多孔質層を貫通して貫通孔として形成されていもよいし、貫通せず穴として形成されていてもよいが、該ナノホールに磁性材料を充填して磁性層を形成し、更にその下方にも磁性層を形成する場合等を考慮すると、該ナノホールが貫通孔として形成されているのが好ましい。
【0089】
前記ナノホールの内部に、磁性材料が充填されて磁性層が形成されているのが好ましい。
前記磁性層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、強磁性層、軟磁性層、などが挙げられる。本発明においては、前記ナノホールの内部に、前記軟磁性層と前記強磁性層とが前記基板側からこの順に積層されており、更に必要に応じて非磁性層(中間層)が形成されているのが好ましい。
【0090】
前記基板としては、その形状、構造、大きさ、材質等について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記形状としては、前記磁気記録媒体がハードディスク等の磁気ディスクである場合には、円板状であり、また、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、前記材質としては、磁気記録媒体の基材材料として公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ガラス、シリコン、石英、シリコン表面に熱酸化膜を形成してなるSiO2/Si、等が挙げられる。これらの基板材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記基板は、適宜製造したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0091】
前記強磁性層は、前記磁気記録媒体において記録層として機能し、前記軟磁性層と共に磁性層を構成する。
前記強磁性層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Fe、Co、Ni、FeCo、FeNi、CoNi、CoNiP、FePt、CoPt及びNiPtから選択される少なくとも1種、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記強磁性層は、前記材料により垂直磁化膜として形成されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、Ll0規則構造を有し、C軸が前記基板と垂直方向に配向しているもの、fcc構造あるいはbcc構造を有し、C軸が前記基板と垂直方向に配列しているもの、などが好適に挙げられる。
【0092】
前記強磁性層の厚みとしては、本発明の効果を害さない限り特に制限はなく、記録時に使用される線記録密度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記軟磁性層の厚み以下である態様、(2)記録時に使用される線記録密度で決まる最小ビット長の1/3倍〜3倍である態様、(3)前記軟磁性層及び前記軟磁性下地層の厚みの合計以下である態様、などが好ましく、例えば、通常5〜100nm程度が好ましく、5〜50nmがより好ましく、1Tb/in2をターゲットにした線記録密度1500kBPIで磁気記録を行う場合には、50nm以下(20nm程度)であるのが好ましい。
なお、ここでの前記「強磁性層」の厚みは、該強磁性層が、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各強磁性層の厚みの合計を意味する。また、前記「軟磁性層」の厚みは、該軟磁性層が、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各軟磁性層の厚みの合計を意味する。また、前記「軟磁性層及び軟磁性下地層の厚みの合計」は、該軟磁性層及び該軟磁性下地層の少なくともいずれかが、積層構造、又は複数層に分割された構造(例えば、非磁性層等の中間層により分割され連続層になっていない構造)を有する場合には、各軟磁性層の厚みの合計を意味する。
【0093】
本発明の磁気記録媒体の場合、磁気記録の際に使用する単磁極ヘッドと前記軟磁性層との間の距離を、前記多孔質層の厚みよりも短く、該強磁性層の厚みと略等しくすることができるため、前記多孔質層の厚みに拘らず該強磁性層の厚みだけで、前記単磁極ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。その結果、該磁気記録媒体においては、従来の磁気記録媒体に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性を著しく向上させることができる。
前記強磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0094】
前記軟磁性層としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、NiFe、FeSiAl、FeC、FeCoB、FeCoNiB及びCoZrNbから選択される少なくとも1種、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
前記軟磁性層の厚みとしては、本発明の効果を害さない限り特に制限はなく、前記多孔質層における前記ナノホールの深さ、前記強磁性層の厚み等に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記強磁性層の厚み超である態様、(2)前記軟磁性下地層の厚みとの合計が前記強磁性層の厚み超である態様、などが挙げられる。
【0096】
前記軟磁性層は、磁気記録に使用する磁気ヘッドからの磁束を効果的に前記強磁性層に収束させることができ、該磁気ヘッドの磁界の垂直成分を大きくさせることができる点で有利である。また、前記軟磁性層は、軟磁性下地膜とともに前記磁気ヘッドと共に該磁気ヘッドから入力させる記録磁界の磁気回路を形成可能であるのが好ましい。
前記軟磁性層としては、前記基板面に略直交する方向に磁化容易軸を有しているのが好ましい。この場合、垂直磁気記録用ヘッドで記録を行うと、該垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となり、磁束が前記強磁性層に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
前記軟磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0097】
前記多孔質層における前記ナノホール中には、前記強磁性層と前記軟磁性層との間に非磁性層(中間層)を有していてもよい。該非磁性層(中間層)が存在すると、前記強磁性層と前記軟磁性層との間の交換結合力の作用を弱める結果、予想とは異なる磁気記録の再生特性となってしまう場合に、それを所望の再生特性に制御することができる。
前記非磁性層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、Cu、Al、Cr、Pt、W、Nb、Ru、Ta及びTiから選択される少なくとも1種、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
前記非磁性層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記非磁性層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)等により行うことができる。
【0099】
本発明の磁気記録媒体においては、前記基板と前記多孔質層との間に、軟磁性下地層を有していてもよい。
前記軟磁性下地層の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、前記軟磁性層の材料として上述したものが好適に挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、前記軟磁性層の材料と互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0100】
前記軟磁性下地層は、前記基板面の面内方向に磁化容易軸を有しているのが好ましい。この場合、磁気記録に使用する磁気ヘッドからの磁束が効果的に閉じた磁気回路を形成し、該磁気ヘッドの磁界の垂直成分を大きくさせることができる。該軟磁性下地層は、ビットサイズ(前記ナノホールの開口径)が100nm以下の単磁区記録においても有効である。
前記軟磁性下地層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、電着(電着法)や無電界メッキ等により行うことができる。
【0101】
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電極層、保護層、などが挙げられる。
【0102】
前記電極層は、磁性層(前記強磁性層及び前記軟磁性層)を電着等により形成する際の電極として機能する層であり、一般に、前記基板上であって前記強磁性層の下方に設けられる。なお、前記磁性層を電着により形成する場合、該電極層を電極として使用してもよいが、前記軟磁性下地層等を電極として使用してもよい。
前記電極層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Cr、Co、Pt、Cu、Ir、Rh、これらの合金、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、該電極層は、これらの材料以外に、W、Nb、Ti、Ta、Si、Oなどを更に含有していてもよい。
【0103】
前記電極層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。該電極層は、1層のみ設けられていてもよいし、2層以上設けられていてもよい。
前記電極層の形成は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、例えば、スパッタ法、蒸着法等により行うことができる。
【0104】
前記保護層は、前記強磁性層を保護する機能を有する層であり、前記強磁性層の表面乃至上方に設けられる。該保護層は、1層のみ設けられていてもよいし、2層以上設けられていてもよく、また、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記保護層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、などが挙げられる。
【0105】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記保護層の形成は、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法に従って行うことができるが、例えば、プラズマCVD法、塗布法、などにより行うことができる。
【0106】
本発明の磁気記録媒体は、磁気ヘッドを用いた各種の磁気記録に使用することができるが、単磁極ヘッドによる磁気記録に好適に使用することができ、後述する本発明の磁気記録装置及び磁気記録方法に好適に特に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、高品質である。このため、該磁気記録媒体は、各種の磁気記録媒体として設計し使用することができ、例えば、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置、などに設計し使用することができ、ハードディスク等の磁気ディスクに特に好適に設計し使用することができる。
【0107】
(磁気記録装置及び磁気記録方法)
本発明の磁気記録装置は、本発明の前記磁気記録媒体と、垂直磁気記録用ヘッドとを有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段乃至部材等を有してなる。
本発明の磁気記録方法は、本発明の前記磁気記録媒体に対し、垂直磁気記録用ヘッドを用いて記録を行うことを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の処理乃至工程を含む。本発明の磁気記録方法は、本発明の前記磁気記録装置を用いて好適に実施することができる。なお、前記その他の処理乃至工程は、前記その他の手段乃至部材等により行うことができる。以下、本発明の磁気記録装置の説明と共に、本発明の磁気記録方法について説明する。
【0108】
前記垂直磁気記録用ヘッドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、単磁極ヘッド等が好適に挙げられる。また、該垂直磁気記録用ヘッドは、書込専用であってもよいし、GMRヘッド等の読取用ヘッドと一体の書込兼読込用であってもよい。
【0109】
本発明の磁気記録装置による磁気記録、又は本発明の磁気記録方法による磁気記録においては、本発明の前記磁気記録媒体を用いるので、前記垂直磁気記録用ヘッドと前記磁気記録媒体における前記軟磁性層との間の距離が、前記多孔質層の厚みよりも短く、前記強磁性層の厚みと略等しくなるため、前記多孔質層の厚みに拘らず前記強磁性層の厚みだけで、該垂直磁気記録用ヘッドからの磁束の集中、使用される記録密度での最適な磁気記録再生特性などが制御可能となる。このため、図20に示すように、前記垂直磁気記録用ヘッド(書込兼読取用ヘッド)100の主磁極からの磁束が前記強磁性層(垂直磁化膜)30に集中する結果、従来の磁気記録装置に比し、書込み効率が大幅に向上し、書込み電流が小さくて済み、オーバーライト特性が著しく向上する。
なお、前記磁気記録媒体に前記軟磁性下地層が形成されている場合には、前記垂直磁気記録用ヘッドと、該軟磁性下地層との間で磁気回路が形成されるので好ましい。この場合、高密度記録が可能となる点で有利である。
【0110】
本発明の磁気記録装置による磁気記録、又は本発明の磁気記録方法による磁気記録においては、前記磁気記録媒体における前記強磁性層に前記垂直磁気記録用ヘッドからの磁束が、該強磁性層の下面、即ち前記軟磁性層又は前記非磁性層との界面付近でも、集中したままで拡散しないため、小さなビットを書くことができる。
なお、該強磁性層における前記磁束の収束の程度(拡散の程度)としては、本発明の効果を害さない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例は、本発明のナノホール構造体を備えた本発明の磁気記録媒体を、本発明の磁気記録媒体の製造方法により製造し、本発明の磁気記録装置により磁気記録を行い、本発明の磁気記録方法を実施するものである。
【0112】
(実施例1)
−ナノホール構造体の作製−
図25に示すように、2.5インチのハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板(Si製)に、通常のスパッタ法を用いて、軟磁性下地層(厚み100nmのパーマロイ膜、図示せず)、酸化停止層(厚み5nmのNb膜、図示せず)、高純度のアルミニウム層1(厚み100nm)をこの順に形成した。次に、図26に示すように、アルミニウム層1上に軟硬度金属層7(厚み30nm、In)を形成した。これら層の形成は、マルチターゲットのスパッタ装置を用いて真空一環処理で行った。
【0113】
次に、図27に示すように、プレス圧力及びストロークの精密制御が可能なプレス装置(ナノインプリント装置、スウェーデン Obduct社製、NILシリーズ)を用いて、モールド5に設けられたパターン5aを軟硬度金属層7に転写した。モールド5は、Ni製であり、EBリソグラフィ法によりパターン5aを形成したものである。モールド5におけるパターン5aは、同心円状に配列され、その直径は50nmであり、隣接するパターン5aどうしの間隔は100nmであった。
【0114】
この時の転写圧力は、0.1トン/cm2(1.8インチ基板で約1.9トン)であった。これをアルミニウム層1に直接プレス転写(ダイレクトプリント)する際に必要な圧力である約2トン/cm2(1.8インチ基板で約38トン)と比較すると、1/10以下に低減されることができた(図29参照)。アルミニウム層1のアルミニウムのブリネル硬度25よりも、軟硬度金属層7のInのブリネル硬度0.9の方が大幅に小さいため、モールド5を用いた転写の際に軟硬度金属層7が選択的にかつ容易にパターニングされた。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に刻印されたパターン5aの凹部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
なお、このとき、基板11及びモールド5にかけ、割れ、歪み等は観られなかった。
【0115】
一方、従来のように、Si製の基板11に、例えば2トン/cm2もの圧力を加えた場合には、基板11の内部にマイクロクラックが多数発生し、転写後の陽極酸化処理や、実際にスピンドルに組み込んだ後の高速回転時において、基板11にかけ、割れ等が発生した(図29参照)。
【0116】
次に、モールド5のパターン5aを軟硬度金属層7に転写した後の基板11を、陽極酸化浴中に保持した。例えば、60nmピッチのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)を用いた場合、In、Alともに、エッチングレートは、ほぼ0.3nm/sであるので、図28に示すように、浴中に約2分程度保持するだけでパターン5aが刻印された軟硬度金属層7は完全に溶解し、アルミニウム層1の表面に転写された。これをそのまま、25V(直径60nmのナノホールを得るための電圧条件)で陽極酸化することにより、直径60nmの理想配列のナノホール構造体(アルマイトポア)が得られた。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0117】
(実施例2)
−ナノホール構造体の作製−
図31に示すように、実施例1と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成した。次に、図32に示すように、スルーホールパターン10を用い、アルミニウム層1上に、該アルミニウムと低温で共晶化可能な金属としてのInのパターン1b(厚み10nm)を形成した。なお、パターン1bの大きさ、間隔は、実施例1と同様である。
次に、Inのパターン1bが形成された基板11を昇温すると、図33及び図34に示すように、InとAlとはその総ての組成範囲で共晶化可能であるため、Inの融点である156℃を超えた時点でInとAlとの接触部は、合金化反応が生じ、図35に示すように、In−Alの合金となって再度固化し、図36に示すように、アルミニウム層1の表面にパターン1cが転写された。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0118】
この基板11を実施例1と同様にして、図37に示すように、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写された。
ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去された。その後は、実施例1と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図38に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体が得られた。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0119】
(実施例3)
−ナノホール構造体の作製−
図39に示すように、実施例1と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成した。次に、図40に示すように、平滑基板20上に、アルミニウムと低温で共晶化可能な金属(In)でパターン21を形成した後、パターン21をアルミニウム層に転写した。平滑基板20としては、Si、プラスチック等の十分な平滑性を持ち、かつプロセス温度内でInと反応しないものであればよく、ここでは、Si基板を用いた。該Si基板に、スルーホール基板を用いてInを蒸着、あるいは、通常のリソグラフィーを用いてInをパターニングした。パターン21が形成された平滑基板20を、図41に示すように、アルミニウム層1の表面に密着させた状態でこれを融点以上に昇温し、Al層の表面とInとを合金化反応させて、図42に示すように、AlとInとの合金パターン21aを転写した。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0120】
この基板11を実施例1と同様にして、図43に示すように、直径60nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、図44に示すように、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写された。ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去された。その後は、実施例1と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図45に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体が得られた。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0121】
(実施例4)
−ナノホール構造体の作製−
図46に示すように、実施例1と同様にして、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に、軟磁性下地層、酸化停止層、高純度のアルミニウム層1をこの順に形成した。次に、平滑基板20として熱収縮フィルムを用いた。該熱収縮フィルム(特開2001−155386(P2001−155386A)号公報参照)を用い、パターン20aの材料として該熱収縮フィルムが収縮する温度近傍で軟化する金属(In)を用い、図47に示すように、加熱時に静電チャック100付きのホットプレートを用いることにより、該熱収縮フィルムが反ったり皺になってパターンがくずれることを防止した。ここでは、50%収縮の熱収縮フィルムを用いて収縮温度160℃、静電チャック電圧200Vで熱収縮を行った。元々のパターンには、2段階陽極酸化で作製した60nmピッチの理想配列アルマイトメンブレンを用いたため、縮小後のパターンは直径30nmとなった。
パターン20aが形成された平滑基板20(熱収縮フィルム)を、図48に示すように、アルミニウム層1の表面に密着させた状態でこれを融点以上に昇温し、Al層の表面とInとを合金化反応させて、図49に示すように、AlとInとの合金パターン21aを転写した。以上が、前記ナノホール形成用起点形成工程に相当し、軟硬度金属層7に形成されたIn−Alの合金部が前記ナノホール形成用起点に相当する。
【0122】
この基板11を実施例1と同様にして、図50に示すように、直径30nmのナノホール(アルマイトポア)が得られる条件である希硫酸浴(0.3M/L)内に、酸化電圧12.5Vにて保持した場合、高純度のAlと、Al合金とでは、Al合金の方が数倍もエッチングレートが早いため、図51に示すように、Inと合金化した部分が優先的にエッチングされ、溶解除去され、アルミニウム層1の表面に所望の凹凸パターン1aが転写される。ここでの条件では、希硫酸浴中に一分間保持するだけで前記Al合金部は完全に溶解除去された。その後は、実施例1と同様にして陽極酸化処理を行い、後工程を行うことにより、図52に示すように、従来のダイレクトプレス法に比し、基板11にダメージを与えることなくナノホール構造体(ナノホールの直径30nm)が得られた。以上が、前記ナノホール形成工程に相当する。
【0123】
(実施例5)
−磁気記録媒体の作製−
実施例1〜4において作製した、ハードディスク(HD)磁気記録媒体用基板11上に形成したナノホール構造体における各ナノホールに、5質量%硫酸銅溶液と、2質量%ホウ酸とを含有するメッキ浴(浴温:35℃)を用い、電着を行うことにより、前記強磁性材料としてのコバルト(Co)を充填させて強磁性層を形成することにより、前記磁性材料充填工程を行った。
−研磨工程−
前記研磨工程を以下のようにして行った。即ち、磁気ヘッドを浮上させる目的で、ラッピングテープを用いて表面研磨を行った。前記ラッピングテープとしては、アルミニウムナ3μm粒度のテープを用いて、前記ナノホールが開口する面に存在する凸部のアルミニウムナを荒研磨した後、アルミニウムナ0.3μm粒度のテープを用いて、仕上げ研磨を行った。この研磨工程後の多孔質層(アルミニウムナ層)の厚みは、約100nmであり、前記コバルト(Co)が充填されたナノホール(アルミニウムナポア)のアスペクト比は、約2.5であった。
【0124】
その後、潤滑剤としてパーフルオロポリエーテル(ソルベイソレクシス社製、AM3001)を、研磨した磁気ディスクの表面にディップ法により塗布し、磁気記録媒体(磁気ディスク)を作製した。
【0125】
次に、作製した磁気記録媒体において、磁性ドットが1列に配置されたナノホール列が、非磁性の領域で分離されていることの効果を確認するために、作製した磁気記録媒体(磁気ディスク)について、リード状態でオフトラックさせながら信号振幅を測定した。その結果を図53に示した。
図53より、1トラック上に磁性ドットが1列に配列し、かつトラック間が非磁性の領域で分離されている本発明の磁気記録媒体(サンプルディスクC)では、オフトラックすると急激に振幅が減少し、ほぼ完全にトラック間の信号が分離できていることが確認された。
一方、磁性ドットが2次元配列している比較例の磁気記録媒体(サンプルディスクD)では、オフトラックしても信号振幅の減少が殆ど観られず、トラック間の信号が分離できていないことが確認された。
以上より、本発明の磁気記録媒体(磁気ディスク)は、高トラック密度化が可能であると同時に、円周方向の磁性ドットも綺麗に分離して読出し可能であるので、1ドットに1ビットの記録再生が可能であり、高密度記録が可能であることが判った。
【0126】
(実施例6)
−磁気記録媒体の作製−
実施例5において、ナノホール内にコバルト(Co)のみを充填させて強磁性層のみを形成したことに代えて、まず、ナノホール内にNiFeを充填させて軟磁性層(厚み60nm)を形成した後、該軟磁性層上に前記強磁性層としてのFeCoを充填させた以外は、実施例5と同様にして、磁気記録媒体(サンプルディスクE)を作製した。なお、該サンプルディスクEにおける前記強磁性層の厚みは40nmであった。
【0127】
ここで、比較のために、前記サンプルディスクEにおいて、前記軟磁性層を形成せず、前記多孔質層(ナノホール構造体)における前記ナノホール中に前記強磁性層のみを形成(前記サンプルディスクEにおける前記強磁性層及び軟磁性層の厚みの合計の厚み(100nm)に形成)した以外は、該サンプルディスクEと同様にしてサンプルディスクF(比較)を製造した。
【0128】
製造したサンプルディスクE及びFにつき、書込み用の磁気ヘッドとしての単磁極ヘッド及び読出用の磁気ヘッドとしてのGMRヘッドを備えた磁気記録装置を用いて、該単磁極ヘッドによる書込み、及び該GMRヘッドの読み出しによる磁気記録を行い、記録再生特性を評価した。
その結果を図54に示した。図54の上の部分(a)は、60nmピッチに相当する400kBPIでの書込電流と再生信号S/Nとの関係を示したグラフである。図54の横軸よりも下の部分(b)は、200kBPIの信号を書いた後(大きなビットで書き込んだ後)、400kBPIの信号を重書きし(小さなビットで書き込みし)、200kBPI信号の消え残り(大きなビットの消え残り)の程度を評価したオーバーライト特性を、書込電流の関数として示したグラフである。
図54に示されるように、サンプルディスクEは、S/N及びオーバーライト特性がいずれも、サンプルディスクFよりも優れていた。
【0129】
ここで、本発明の好ましい形態について、以下に付記する。
(付記1) 金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行うことを特徴とするナノホール構造体の製造方法。
(付記2) 導電性材料が、ブリネル硬度が金属層の金属のブリネル硬度の1/10以下である付記1に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記3) 導電性材料が、金属層の金属の融点未満の温度で該金属と共晶化可能である付記1から2のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記4) 導電性材料が、100〜700℃で金属層の金属と共晶化可能である付記1から3のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記5) 導電性材料が、金属である付記1から4のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記6) 導電性材料が、In、Sn、Bi、及びこれらの合金から選択される付記1から5のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記7) ナノホール形成用起点が、導電性材料に形成した凹部である付記1から6のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記8) ナノホール形成用起点が、金属層の表面の表面粗さRaの10倍以上の凹部である付記1から7のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記9) ナノホール形成用起点が、深さが10〜20nmの凹部である付記1から8のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記10) ナノホール形成用起点が、ナノホールの径の1/3以上の径を有する凹部である付記1から9のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記11) ナノホール形成用起点が、モールドを用いて導電性材料に刻印することにより形成された付記1から9のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記12) モールドが、導電性材料に凹部を刻印により形成可能な凸部を有する付記11に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記13) モールドが、Ni及びSiCから選択された少なくとも1種で形成された付記11から12のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記14) 刻印が、直径2.5インチの円形当り10トン以下の圧力でモールドを導電性材料に押圧することにより行われる付記11から13のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記15) ナノホール形成用起点が、導電性材料と金属層の金属との合金である付記1から14に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記16) 導電性材料と金属層の金属との合金が、導電性材料と金属層とが接触した状態で加熱することにより形成された付記15に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記17) 加熱が、100〜700℃で行われる付記16に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記18) 導電性材料が、熱収縮されて形成された熱収縮性フィルムの表面に配された付記1から17のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記19) ナノホール形成用起点が、規則的に配列してなるナノホール形成用起点列が一定間隔で配列してなる付記1から18に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記20) ナノホール形成用起点が、同心円状及び螺旋状の少なくともいずれかに位置する付記1から19に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記21) 金属層が円形であり、隣接するナノホール形成用起点列におけるナノホール形成用起点が、前記金属層の半径方向に配列した付記19から20のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記22) 隣接するナノホール形成用起点列の間隔が、5〜500nmである付記19から21のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記23) ナノホール形成処理が、陽極酸化処理及びエッチング処理の少なくともいずれかである付記1から22のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記24) 陽極酸化処理における電圧が、次式、ナノホールの間隔(nm)÷A(nm/V) (ただし、A=1.0〜4.0)、で与えられる付記23に記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記25) 金属層が、アルミニウムで形成された付記1から24のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法。
(付記26) 付記1から25のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法により製造されることを特徴とするナノホール構造体。
(付記27) 基板上に、付記1から25のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程と、該ナノホール構造体におけるナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(付記28) 磁性材料充填工程が、ナノホールの内部に軟磁性層を形成する軟磁性層形成工程、及び、該軟磁性層上に強磁性層を形成する強磁性層形成工程を含む付記27から27のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記29) 軟磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかが、電着及び無電界メッキの少なくともいずれかにより形成される付記28に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記30) 金属層がアルミニウムで形成された付記27から29のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記31) 金属層がスパッタリングにより形成された付記27から30のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記32) 基板が、ディスク状である付記27から31のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記33) 基板上に軟磁性下地層を形成する軟磁性下地層形成工程を含み、該軟磁性下地層上に金属層が形成される付記27から32のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記34) 軟磁性層上に非磁性層を形成する非磁性層形成工程を含み、該非磁性層上に強磁性層が形成される付記28から33のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記35) 軟磁性層、非磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかが、電着及び無電界メッキの少なくともいずれかにより形成され、軟磁性下地層が該電着の際に電極として用いられる付記34に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記36) ナノホール構造体と軟磁性下地層との間に電極層を形成する電極層形成工程を含み、該電極層を電極として用いて電着により、軟磁性層、非磁性層及び強磁性層の少なくともいずれかを形成する付記34から35のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記37) 付記27から36のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成されたナノホール構造体に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録体。
(付記38) ナノホールの内部に、軟磁性層と強磁性層とを前記基板側からこの順に有し、該強磁性層の厚みが該軟磁性層の厚み以下である付記37に記載の磁気記録媒体。
(付記39) 基板とナノホール構造体との間に軟磁性下地層を有する付記37から38のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(付記40) 強磁性層の厚みが、軟磁性層及び軟磁性下地層の厚みの合計以下である付記38から39のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(付記41) 強磁性層と軟磁性層との間に非磁性層を有する付記38から40のいずれかに記載の磁気記録媒体。
(付記42) 付記37から41のいずれかに記載の磁気記録媒体と、垂直磁気記録用ヘッドとを有することを特徴とする磁気記録装置。
(付記43) 付記37から41のいずれかに記載の磁気記録媒体に対し、垂直磁気記録用ヘッドを用いて記録を行うことを含むことを特徴とする磁気記録方法。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明のナノホール構造体は、磁気記録媒体をはじめ、DNAチップ、診断装置、検出センサー、触媒基板、電界放出ディスプレイ等の各種分野に好適に使用することができ、特に、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適に使用することができる。
本発明のナノホール構造体の製造方法は、本発明のナノホール構造体の製造に好適に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等に好適に使用することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、本発明の磁気記録媒体の製造に好適に使用することができる。
本発明の磁気記録装置は、コンピュータの外部記憶装置、民生用ビデオ記録装置等として広く使用されているハードディスク装置等として好適に使用することができる。
本発明の磁気記録方法は、磁気ヘッドの書込み電流を増やすことなく高密度記録・高速記録が可能で大容量であり、オーバーライト特性に優れ、均一な特性を有し、特にクロスリードやクロスライト等の問題がなく、極めて高品質な記録に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、垂直記録方式による磁気記録を行っている一例を示す概念図である。
【図2A】図2Aは、垂直記録方式による磁気記録の際に、磁束が拡散してしまう状態の一例を説明するための概念図である。
【図2B】図2Bは、垂直記録方式による磁気記録の際に、磁束が拡散してしまう状態の一例を説明するための概念図である。
【図3】図3は、陽極酸化アルミニウムナポアのポア中に磁性金属を充填してなり、パターンドメディアと垂直記録方式とを併せた磁気記録媒体の一例を示す概略説明図である。
【図4A】図4Aは、二次元的に配列した陽極酸化アルミニウムナポアに磁性金属を充填してなる磁気記録媒体の一例を示す概略説明図である。
【図4B】図4Bは、図4AのB−B’断面図である。
【図5】図5は、従来における2段階陽極酸化法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その1)である。
【図6】図6は、従来における2段階陽極酸化法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その2)である。
【図7】図7は、従来における2段階陽極酸化法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その3)である。
【図8】図8は、従来における2段階陽極酸化法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その4)である。
【図9】図9は、アルマイトポアの表面の開口状態の一例を示す概略説明図である。
【図10】図10は、従来におけるダイレクトプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その1)である。
【図11】図11は、従来におけるダイレクトプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その2)である。
【図12】図12は、従来におけるダイレクトプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その3)である。
【図13】図13は、従来におけるダイレクトプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その4)である。
【図14】図14は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その1)である。
【図15】図15は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その2)である。
【図16】図16は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その3)である。
【図17】図17は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その4)である。
【図18】図18は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その5)である。
【図19】図19は、従来におけるインプリント法によりナノホール構造体を製造する工程を説明するための工程図(その6)である。
【図20】図20は、磁気記録媒体に対し、単磁極ヘッドを用いて垂直磁気記録方式により磁気記録を行っている状態の一例を示す一部断面概略説明図である。
【図21】図21は、ナノホール形成用起点を形成してから陽極酸化処理を行い、ナノホール列を形成した状態の一例を示す写真である。
【図22】図22は、ナノホール形成用起点を形成してから陽極酸化処理を行い、ナノホール列を形成した状態の一例を示す写真(拡大)である。
【図23】図23は、本発明の磁気記録媒体におけるナノホール列(一定間隔で区切られた態様)が形成された後の状態を示す概略説明図である。
【図24】図24は、本発明の磁気記録媒体におけるナノホール列(一定間隔で幅が変化する態様)が形成された後の状態を示す概略説明図である。
【図25】図25は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その1)である。
【図26】図26は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その2)である。
【図27】図27は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その3)である。
【図28】図28は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その4)である。
【図29】図29は、プレス圧とナノホール形成用起点の形成との関係を示すグラフである。
【図30】図30は、ナノホール形成用起点の拡大図である。
【図31】図31は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その1)である。
【図32】図32は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その2)である。
【図33】図33は、アルミニウムとインジウムとの合金形成に関するグラフである。
【図34】図34は、アルミニウムとインジウムとの合金形成に関するグラフである。
【図35】図35は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その3)である。
【図36】図36は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その4)である。
【図37】図37は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その5)である。
【図38】図38は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その6)である。
【図39】図39は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その1)である。
【図40】図40は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その2)である。
【図41】図41は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その3)である。
【図42】図42は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その4)である。
【図43】図43は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その5)である。
【図44】図44は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その6)である。
【図45】図45は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その7)である。
【図46】図46は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その1)である。
【図47】図47は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その2)である。
【図48】図48は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その3)である。
【図49】図49は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その4)である。
【図50】図50は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その5)である。
【図51】図51は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その6)である。
【図52】図52は、本発明のナノホール構造体を製造方法の工程を説明するための工程図(その7)である。
【図53】図53は、リード状態でオフトラックさせながら信号振幅を測定した結果を示すグラフである。
【図54】図54は、本発明の磁気記録媒体と従来の磁気記録媒体とにおけるS/N比及びオーバーライト特性の比較実験データを示すグラフである。
【符号の説明】
【0132】
1・・・・アルミニウム層
1a・・・合金(ナノホール形成用起点)
1b・・・パターン(加熱前)
1c・・・パターン(加熱後)
2・・・・ナノホール
2a・・・ナノホール形成用起点
5・・・・モールド
5a・・・パターン
6・・・・レジスト層
6a・・・パターン
8・・・・平滑基板
9・・・・パターン(In)
10・・・・軟磁性下地層
11・・・・基板
15・・・・熱収縮フィルム
15a・・・パターン
16・・・・静電チャック付ヒーター
20・・・・中間層(非磁性層)
30・・・・記録層(強磁性層)
100・・・書込兼読取用ヘッド(単磁極ヘッド)
102・・・主磁極
104・・・後半部
110・・・基板
120・・・下地電極層
130・・・陽極酸化アルミニウムナポア
140・・・強磁性層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行うことを特徴とするナノホール構造体の製造方法。
【請求項2】
ナノホール形成用起点が、導電性材料に形成した凹部である請求項1に記載のナノホール構造体の製造方法。
【請求項3】
ナノホール形成用起点が、導電性材料と金属層の金属との合金である請求項1に記載のナノホール構造体の製造方法。
【請求項4】
基板上に、請求項1から3のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程と、該ナノホール構造体におけるナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成されたナノホール構造体に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録体。
【請求項1】
金属層上に、ブリネル硬度が該金属層の金属のブリネル硬度未満である導電性材料を配し、該導電性材料を用いてナノホール形成用起点を形成した後、前記金属層にナノホール形成処理を行うことを特徴とするナノホール構造体の製造方法。
【請求項2】
ナノホール形成用起点が、導電性材料に形成した凹部である請求項1に記載のナノホール構造体の製造方法。
【請求項3】
ナノホール形成用起点が、導電性材料と金属層の金属との合金である請求項1に記載のナノホール構造体の製造方法。
【請求項4】
基板上に、請求項1から3のいずれかに記載のナノホール構造体の製造方法によりナノホール構造体を形成するナノホール構造体形成工程と、該ナノホール構造体におけるナノホールの内部に磁性材料を充填する磁性材料充填工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気記録媒体の製造方法により得られ、基板上に形成されたナノホール構造体に複数形成されたナノホールの内部に磁性材料を有してなることを特徴とする磁気記録体。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【図31】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図48】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図15】
【図16】
【図17】
【図22】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図32】
【図33】
【図34】
【図40】
【図41】
【図47】
【図49】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【図31】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図48】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図15】
【図16】
【図17】
【図22】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図32】
【図33】
【図34】
【図40】
【図41】
【図47】
【図49】
【公開番号】特開2006−75946(P2006−75946A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263122(P2004−263122)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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