説明

ナノ構造を有する発光ダイオードおよびその製造方法

【課題】望ましい光抽出効率を有すると同時に、p電極の接触領域を増大させ、これによりオーム接触抵抗を改善するLEDを提供する。
【解決手段】発光ダイオード(LED)が、その製造方法とともに提供される。上記LEDは、基板1上に形成される導電性のn型領域2と、上記n型領域上に形成される活性領域3と、上記活性領域上に形成される第1のp型領域4と、上記活性領域からの光抽出を行うように上記第1のp型領域上に形成される複数のナノ構造であって、500nm未満の直径を有するナノ構造5と、上記第1のp型領域上に、上記ナノ構造との組み合わせによって非平面の表面を形成するように再成長した第2のp型領域6と、上記非平面の表面上に形成されるp型電極と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:light emitting diode)装置およびその製造方法に関し、特に、周期的ナノ構造と、より高い光抽出効率およびより低いp電極のオーム接触抵抗を目的として、接触領域を増大させるために再成長したp型領域とを有するLED装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高品質窒化ガリウムを基板とした結晶成長が利用され始めて以降、発光ダイオード(LED)の全般照明や背景照明への適用は年々人気が高まっており、白熱電球、ハロゲン電球、冷陰極蛍光灯(CCFL:cold cathode fluorescent lamp)、および電球型蛍光灯
ランプ(CFL:compact fluorescent lamp)等の従来型の光源に取って代わるほどである。これらの適用においては、白色光を作る蛍光体層を励起するために、インジウムガリウム窒化物を基板とした、〜450nmの光を発する青色LEDチップが一般的に使用される。ガリウム窒化物の成長法および装置構造の最適化は過去10年で急速な進歩を遂げてきたが、p電極のオーム接触抵抗および光抽出効率(LEE:light extraction efficiency)は、これらの装置のパフォーマンスを制限する主要な障害として未だ残っている
。上記p電極の接触抵抗の低減は、元々バンドギャップが広く(3.4eV)、正孔移動度が低い(μ〜10cm/Vs)というガリウム窒化物の性質のために本質的に困難である。上記接触抵抗は、金属電極と半導体インターフェースとの間の接触の質、および接触領域によって決定される。小型のLEDチップの製造においては、上記LEDチップのサイズは一般的に〜200×600umしかなく、高い接触抵抗は該装置の電力変換効率の主要な制限要因となるため、p電極の接触抵抗は特に大きな問題となる。
【0003】
ガリウム窒化物と大気とでは屈折率が大きく異なるため、活性領域において生成された光の大半は、上記半導体の層に閉じ込められ導波されており、よって大気に放出されえない。その結果、導波された光は最終的に吸収され、LEEは低くなる。従来型の平面的なLEDチップに関する上記光抽出効率は、一般的に僅か〜25−30%である。LEEを向上させるために様々な方法がこれまで用いられており、例えば、粗面処理、光結晶、フリップ・チップ、チップ成形、およびパターンドサファイア基板などがある。抽出構造としてのパターンドサファイア基板の利用は、市販の青色LEDチップにおいてLEEを向上させる一般的な方法であり、LEE値を〜60%まで向上させることができる(山田、外8名,Japanese Journal of Applied Physics,2002年,第41巻,p.L1431-1433)。
しかしながら、パターンドサファイア基板上での成長は容易ではなく、大きな(例えば6インチの)基板においては均一性が特に問題となる。
【0004】
一般に、最良のLEEを得るためには、抽出構造は、活性領域に可能な限り近い位置に設けられていることが好ましい。Matioliら(Applied Physics Letters,2010年
,第96巻,p.031108)は、埋め込み型エアギャップ光結晶構造を用いて、非カプセル化状態では〜73%、カプセル化状態では94%の抽出効率を達成している。
【0005】
Horngら(Applied Physics Letters,2005年,第86巻,p.221101)によって、
粗面化したITO層を用いたLEEの増大が報告されているが、抽出構造が活性領域から遠く離れて(〜500nm)設けられており、光抽出効率は低下する。さらに、多くの場合、粗面は大量生産での制御が難しい。
【0006】
図1は、米国特許第5955749号明細書(1999年9月21日公開)に記載の、LEE
の増大に用いられる誘電体の一定構造512の2次元の周期的変化の概略図である。この
例では、周期的構造512はLEEを向上させるためにp型GaAs506層にエッチングによって形成されている。この構造はLEEを向上させるが、同時にドライエッチング処理によるp層へのエッチング損傷によって横方向電流拡散抵抗およびp電極オーム接触抵抗の増大を引き起こす。
【0007】
図2は、米国特許出願公開第2010/0059779号明細書(2010年3月11日公開
)に記載のLED装置構造の実施形態である。LEEを向上させるため、誘電体層602は活性領域108の近傍に埋め込まれている。p型層610は、埋め込まれた誘電体層602の上に再成長し、表面を平らにする。この表面によってLEEは向上するが、上記p電極接触領域は従来型の平面的LEDと同じであり、p接触抵抗は依然高いままである。
【0008】
図3は、米国特許出願公開第2008/0279242号明細書(2008年11月13日公開)において開示されているLED装置構造50を示す図である。p−GaN領域59にSiO構造58を埋め込むために再成長法が用いられている。最終的な装置構造は平面となる。先に述べた例と類似して、上記接触領域は従来型の平面LEDと類似しているため、p接触抵抗は依然高いままである。
【0009】
図4は、米国特許第7244957号明細書(2007年7月17日公開)において開示され
ているLED装置構造300を示す図である。GaN物質からなるマイクロメートル規模の光投射領域150が、光抽出効率を向上させるように、ITO層のエッチングまたはSiO2層のパターニングによってp表面上に形成されている。マイクロメートル規模の構造において電流拡散は問題となる場合があり、上記光抽出構造は、上記活性領域からさらに遠く離れて設けられているため、上記光抽出構造の効果は低下する。
【0010】
図5は、米国特許第6091085号明細書(2000年7月18日公開)において開示され
ているLED装置の実施形態を示す図である。該文献において、光抽出効率を増大させる手段として、従来のリソグラフィー技術を用いてGaNをパターン形成されたSiO層上に再成長させて光投射領域24を形成する構成が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、LED装置に係る技術には、望ましい光抽出効率を得るとともに、p電極接触抵抗を向上させる必要がある。本発明の目的は、望ましい光抽出効率を有すると同時に、p電極の接触領域を増大させ、これによりオーム接触抵抗を改善するLEDを提供することにある。これらの特徴は、いずれも高効率窒化物LEDの実現の鍵となる特徴である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、望ましい光抽出と、接触抵抗を低減するために増大した電極領域とを有するLED装置構造を提供する。本発明はp−GaN領域の周期的ナノパターン表面上における再成長を含む。上記再成長処理は上記表面が平面とならず、よってp電極の接触領域の増大を生じさせるように実行される。
【0013】
本発明の一態様は、ナノ構造からなる上記LED構造に関するものであり、上記ナノ構造は好ましくは直径500nm未満である。この大きさは、電流拡散が上記ナノ構造の下で生じるように選択されている。電流拡散が上記ナノ構造の下で生じない場合、上記LEDの活動領域の減少は避けられず、特定の駆動電流における電流密度の増大を引き起こし、窒化物青色LEDにおいては“効率ドループ”効果によってLED効率が低減される(例えば、Applied Physics Letters,第91巻,第18号,p.183507を参照されたい)。次
に、再成長ステップがナノ構造表面上で実行される。上記再成長ステップは、表面が平面
にならず、且つ、p電極の表面接触領域を増大させるために孔隙や間隙の形成を許容するように実行される。本稿で用いる“再成長”とは、p型領域が、表面にナノ構造が形成された下層のp型領域の上に成長することを意味しており、好ましくは上記ナノ構造を部分的にのみ覆うことを意味する。
【0014】
本発明の一態様において、上記再成長ステップは、エピタキシャル横方向成長(ELOG:epitaxial lateral overgrowth)等の横方向成長技術を用いた有機金属気相成長法(MOCVD:metal organic vapour deposition)によって実行される。
【0015】
本発明の別の態様において、再成長ステップは、分子線エピタキシーによって実行され、この方法は、ナノ構造を有さない領域上に単結晶物質を形成し、ナノ構造を有する領域上に非晶質を形成する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、Ag、Al、およびAu等の金属層は、プラズモン効果によって光抽出を向上させる手段として上記周期的ナノ構造の最上層に形成される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、基板上に形成される導電性のn型領域と、上記n型領域上に形成される活性領域と、上記活性領域上に形成される第1のp型領域と、上記活性領域からの光抽出を行うように上記第1のp型領域上に形成される複数のナノ構造であって、500nm未満の直径を有するナノ構造と、上記第1のp型領域上に、上記ナノ構造との組み合わせによって非平面の表面を形成するように再成長した第2のp型領域と、上記非平面の表面上に形成されるp型電極と、を備える発光ダイオード(LED)が提供される。
【0018】
別の態様によれば、上記第2のp型領域は、上記ナノ構造付近に隆起した側壁を含む。
【0019】
別の態様によれば、上記側壁は、上記ナノ構造の上面に部分的に拡張された横方向成長領域を含む。
【0020】
別の態様によれば、上記ナノ構造の形状は、四角形、円形、三角形、およびこれらの組み合わせのうち少なくとも1つである。
【0021】
さらに別の態様によれば、上記LEDはさらに、プラズモン効果を得るために上記ナノ構造のそれぞれの上に形成される金属層を備える。
【0022】
さらに別の態様によれば、上記ナノ構造は400nm未満の直径を有する。
【0023】
別の態様によれば、上記ナノ構造は300nm未満の直径を有する。
【0024】
さらに別の態様によれば、上記第1のp型領域は10nmと80nmとの間の厚みを有する。
【0025】
別の態様によれば、上記ナノ構造は10nmと100nmとの間の高さを有する。
【0026】
別の態様によれば、上記ナノ構造は誘電性物質より形成される。
【0027】
別の態様によれば、上記誘電性物質は、SiO、SiN、TiO、ZnO、MgO、ScO、およびSrFのいずれか1つまたはそれ以上である。
【0028】
別の態様によれば、上記p型電極は、インジウムスズ酸化物よりなる。
【0029】
さらに別の態様によれば、上記p型電極は、Ni、Ti、Au、Ag、Pt、Hf、Pd、およびAlのいずれか1つまたはそれ以上より形成される。
【0030】
さらに別の態様では、上記金属層は、Ag、Au、およびAlのいずれか1つまたはそれ以上よりなる。
【0031】
別の態様によれば、上記金属層は、各々がナノ構造を形成する2つの層に挟まれている。
【0032】
別の態様によれば、発光ダイオード(LED)の製造方法が提供される。上記方法は、基板上に導電性のn型領域を形成する工程と、上記n型領域上に活性領域を形成する工程と、上記活性領域上に第1のp型領域を形成する工程と、複数のナノ構造であって、500nm未満の直径を有するナノ構造を、上記活性領域からの光抽出を行うように上記第1のp型領域上に形成する工程と、上記第1のp型領域上に、上記ナノ構造との組み合わせによって非平面の表面を形成するように第2のp型領域を再成長させる工程と、上記非平面の表面上にp型電極を形成する工程と、を含む。
【0033】
さらに別の態様によれば、上記ナノ構造は、上記第1のp型領域上にパターン形成される。
【0034】
さらに別の態様によれば、上記第2のp型領域は、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて再成長する。
【0035】
さらに別の態様において、上記MOCVDは、上記ナノ構造の上面に部分的に拡張された横方向成長を提供するために、エピタキシャル横方向成長技術(ELOG)を使用する工程を含む。
【0036】
さらに別の態様によれば、上記第2のp型領域は分子線エピタキシーを用いて再成長する。
【0037】
別の態様によれば、上記方法は、プラズモン効果を得るために上記ナノ構造のそれぞれの上に金属層を形成する工程を含む。
【0038】
さらに別の態様では、上記金属層は、各々がナノ構造を形成する2つの層に挟まれている。
【0039】
上述の目的、およびこれに関連する目的を達成するために、本発明は、後述にて全体を記載し、特に請求項で指摘する特徴を含む。後述の説明および添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明し得るであろう。しかしながら、これらの実施形態は本発明の原理の様々な利用方法のほんの数例を表すものである。本発明のその他の目的、利点および新規の特徴は、後述する本発明の詳細な説明を上記図面と合わせて検討することで明らかとなるであろう。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、望ましい光抽出効率と、p電極のオーム接触抵抗を改善するために増大した接触領域との両方を得るために、ナノ構造と再成長したp型領域とを有するLED装置を提供する。本発明はさらに、上記構造の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
添付の図面において、類似の参照番号は類似の部材または特徴を表す。
【図1】上記p型領域に形成された空孔を有する公知のLED構造である。
【図2】埋め込み型の特徴を有する公知のLED構造である。
【図3】埋め込み型の特徴を有する別の公知のLED構造である。
【図4】等角にマウントされたLEDを有する公知のLED電球である。
【図5】横向きに発光するように設計された別の公知のLED装置である。
【図6】本発明に基づくLED装置構造の一般的な概略図である。
【図7】図6に示すLED上に形成されるナノ構造の上面の概略図である。
【図8A】本発明の第1の実施形態に基づくLED装置構造の一例の概略図である。
【図8B】本発明の第1の実施形態に基づくLED装置構造の一例の概略図である。
【図8C】本発明の第1の実施形態に基づくLED装置構造の一例の概略図である。
【図8D】本発明の第1の実施形態に基づくLED装置構造の一例の概略図である。
【図8E】本発明の第1の実施形態に基づくLED装置構造の一例の概略図である。
【図8F】本発明の第1の実施形態に基づくLED装置構造の一例の概略図である。
【図9A】本発明の第2の実施形態に基づくLED装置の概略図である。
【図9B】本発明の第2の実施形態に基づくLED装置の概略図である。
【図10A】本発明の第3の実施形態に基づくLED装置の概略図である。
【図10B】本発明の第3の実施形態に基づくLED装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、望ましい光抽出効率と、p電極のオーム接触抵抗を低減するためのより広い接触領域とを有するLED装置構造を提供する。上記LED構造は、上記活性領域の近傍に形成される周期的ナノ構造と、上記ナノ構造上を覆うように再成長したp型領域とを備える。上記再成長したp型領域は、上記ナノ構造との組み合わせによって、上記p型領域の表面が完全な平面とならないように、すなわち非平面となるように形成される。これにより、側壁領域との接触によって上記p電極に関してより広い接触領域を実現する。以下に、実施形態の記載を通して本発明を詳細に説明する。全体を通し、類似の要素に対しては類似の参照番号を用いる。
【0043】
本発明によれば、望ましい光抽出効率とp電極の抵抗とを有するLEDが得られる。図6に示すように、上記LED構造は、基板1と、導電性のn型領域2と、活性領域3と、第1の導電性のp型領域4と、第1のp型領域4上に形成されるナノ構造5と、第2の導電性のp型領域6と、を備える。第1のp型領域4は、好ましくは厚み10nm−80nmの薄く成長した層である。ナノ構造5の横方向の大きさまたは幅Wは、本明細書ではナノ構造5の直径とも称し、p型領域4における電流拡散がナノ構造5の直下を流れるようにするため、好ましくは500nm未満である。上記ナノ構造の直径は、より好ましくは400nm未満であり、さらに好ましくは300nm未満である。ナノ構造5はどのような特定の形状および配列を有していてもよく、例えば四角形、円形、三角形等であってもよいし、これらの形状構造の任意の組み合わせであってもよい。また、ナノ構造5は、様々なタイプの周期的配列であることが好ましいが、ランダムに設けられてもよい。例えば、図7は、図6に示した上記LED構造であって、円形の形状を有するナノ構造5を利用した実施形態の上面を示す図である。ナノ構造5の高さHは、好ましくは10nm−100nmであるが、これより高くてもよい。また、ナノ構造5は、SiO、SiN、TiO、ZnO、MgO、ScO、SrF、またはその他の誘電性物質、あるいはそれらの組み合わせよりなってもよい。薄い層である第1のp型領域4は、ナノ構造5が活性領域3の近傍に設けられることで、望ましい光抽出効率を実現するためのものである。第2のp型領域6は、金属電極(不図示)のp型領域6との接触を可能にするためのものである。
〔第1の実施形態〕
本発明に基づくLED装置の第1の特定の実施形態を図6に示す。上記LED装置は、
誘電性物質からなるナノ構造5と、上記構造を完成させるために再成長した第2のp型領域6とを備える。n型領域2、活性領域3、および第1のp型領域4が、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて基板1上に成長する。図8Aは、上記の段階における装置の構造を示す概略図である。続いてのステップで、第1のp型領域4上にナノ構造5が形成される。例として、図8Bに示すように、酸化ケイ素層5aが、プラズマCVD(PECVD:plasma enhanced chemical vapour deposition)を用いて窒化物(例えばGaN)よりなる第1のp型領域4上に溶着される。図8Cにおいて、マスク層8が酸化ケイ素層5a上に形成され、このマスク層8は、上記ナノ構造の範囲を規定するためにパターン化されている。マスク層8の生成に用いられ得る公知の方法は様々に存在し、例えば、ナノインプリントリソグラフィー、ステッパーリソグラフィー、インターフェアレンスリソグラフィー、イマージョンリソグラフィー、電子線リソグラフィー、極紫外線リソグラフィー、および/またはその他の手法が適用され得る。次に、ウェットまたはドライエッチングによって、図8Dに示すように、酸化ケイ素層5aをナノ構造5へとパターン形成する。続いて、マスク層8が除去される。本実施形態によれば、続いて第2のp型領域6が、MOCVDによって上記構造上に再成長する。MOCVDによる成長中、第2のp型領域6を形成するGaNよりなる上記窒化物層は、ナノ構造5を形成する残存している酸化ケイ素層5a上ではエピタキシャル成長を行わないが、SiOの存在しない領域上でのみエピタキシャル成長を行う。これは、SiO物質の非結晶特性による。しかしながら、MOCVDによる成長中のこのGaN層の成長状態を調整することで、横方向成長の拡張によってGaNをSiO層上に形成することができる。これは、横方向エピタキシャル成長処理と呼ばれ、当該分野における公知技術である。好ましい実施形態では、第2のp型領域6はナノ構造5の高さを超える厚みまで成長し、ナノ構造付近に隆起した側壁を生成する。上記側壁によって第2のp型領域6の表面は非平面となり、これによって、第2のp型領域6とナノ構造5とが平面に構成される場合よりも広いp型領域6の接触領域が実現される。しかしながら、MOCVDに本来備わっているエピタキシャル横方向成長技術(ELOG)の使用は、上記酸化ケイ素層上で生じる横方向成長をも許容しており、図8Eに示す6aを形成する。これらの成長領域6aは、ナノ構造5の上面に部分的に拡張されており、その結果、上記横方向成長がない場合よりも広いp型領域6の接触領域を実現する。
【0044】
p電極7は、一般的にはインジウムスズ酸化物(ITO)であるが、Ni、Ti、Au、Ag、Pt、Hf、Pd、およびAl等の他の金属層のうち1つまたはそれ以上よりなっていてもよい。続く段階では、このp電極7が、図8Eに示した構造の上に形成され、図8Fに示すように、側壁接触領域7aによって接触領域の増大が実現される。電極7は、望ましい等角の側壁被膜を形成するため、好ましくはスパッタコーティングシステムを用いて溶着される。これに対し、図2に示した例のような従来技術における平面の表面を有する構造では接触領域が小さくなる。ここで、p接触抵抗値を6×10−3Ωcm−2、p接触領域を200×500umと想定した場合、ある発明において、ナノ構造5の大きさに関し、幅が200nm、ピッチP(図7)が400nm、横方向成長の厚みOG(図6)が50nm、および第2のp型領域6の厚みが200nmであるとき、本発明の場合は2.76×10−3Ωcmの接触領域が得られるが、従来の平面構造の場合は1.0×10−3Ωcmの接触領域しか得られない。これを電圧降下に換算すると、本発明では60mAの出力に当たりわずか0.13Vであり、これに対して従来の構造では0.36Vの電圧降下を生じる。この計算は一例に過ぎない。第2のp型領域6の厚みおよび横方向成長の厚みOGは任意に組み合わせ可能であり、ナノ構造5の配置の様々な設計およびピッチPとともに用いられてもよい。
【0045】
図8Fにおいて、ナノ構造5の存在は、領域7bにおいて、金属電極7が隣接する活性領域3に拡散することを防ぐ機能をも有している。これは、LEDの信頼性の問題にとって有用であると考えられる。何故なら、これらの装置は一般に少なくとも30,000時
間の寿命を有するとされており、時間の経過による金属電極の上記活性領域への緩やかな拡散は問題となり得るためである。
〔第2の実施形態〕
本実施形態によれば、図6に示した一般的な構造は、図9Aに示す構造に変更されてもよい。この構造では、第2のp型領域6は横方向成長を伴わずに再成長する。これは、例として第2のp型領域に対して分子線エピタキシー成長法を用いることで行われてもよく、上記成長法では、結晶質が第1のp型領域4と接する領域上で成長し、非晶質が酸化ケイ素ナノ構造5と接する領域上で成長する。次に、上記非晶質は、該サンプルを薄い水酸化カリウム溶液に浸すことで、図9Aに示す最終的な構造を残して容易に除去されてもよい。続いて、p接触電極7が該サンプル上に溶着され、側壁接触領域7aによって増大した接触領域が得られる。
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態によれば、図6および/または図9Bに示した構造は、プラズモン効果を利用して光抽出を改善する(例として、Kao、外3名,IEE Photonics Technology Letters,2010年7月1日,第22巻,第13号を参照されたい)ために、図10Aに示す
構造に変更されてもよい。プラズモン効果を生じさせるために、一般にAg、Al、およびAu等の金属層が可能な限り上記活性領域の近傍に設けられている。また上記金属層直下において半導体との間には電流を伝導させるべきでなく、従って薄い酸化物層は通常それらの間に位置する。図10Aにおいて、金属層9は、プラズモン効果を得る手段として、ナノ構造5を形成する酸化物層の直上に設けられている。これに応じて、上記金属層Ag、Al、およびAuを上記活性領域に近づけるために、上記ナノ構造酸化物層はウェットまたはドライエッチング等の手段によって薄く加工されてもよい。また上記LED構造は、図10Bに示すように、プラズモン金属層9bが2つの酸化物層5bに挟まれてナノ構造5を形成するように構成されてもよい。
【0046】
本稿において、本発明はいくつかの好ましい実施形態に関して図示および記載されているが、これらと同等のもの、あるいは変更を加えたものは、当該分野において技術を有する者が本明細書を読み理解することで想到し得るものであることは明らかである。本発明はそれらの同等物および変更例を含み、その範囲は後述の特許請求の範囲に限定される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によって、望ましい光抽出効率と、オーム接触抵抗を向上するために増大した接触領域とを得るために、ナノ構造と再成長したp型領域を有するLED装置が提供される。本発明はさらに、上記構造の製造方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される導電性のn型領域と、
上記n型領域上に形成される活性領域と、
上記活性領域上に形成される第1のp型領域と、
上記活性領域からの光抽出を行うように上記第1のp型領域上に形成される複数のナノ構造であって、500nm未満の直径を有するナノ構造と、
上記第1のp型領域上に、上記ナノ構造との組み合わせによって非平面の表面を形成するように再成長した第2のp型領域と、
上記非平面の表面上に形成されるp型電極と、
を備えることを特徴とする発光ダイオード(LED)。
【請求項2】
上記第2のp型領域は、上記ナノ構造付近に隆起した側壁を含むことを特徴とする請求項1に記載のLED。
【請求項3】
上記側壁は、上記ナノ構造の上面に部分的に拡張された横方向成長領域を含むことを特徴とする請求項2に記載のLED。
【請求項4】
上記ナノ構造の形状は、四角形、円形、三角形、およびこれらの組み合わせのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のLED。
【請求項5】
プラズモン効果を得るために上記ナノ構造のそれぞれの上に形成される金属層をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のLED。
【請求項6】
上記ナノ構造は400nm未満の直径を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のLED。
【請求項7】
上記ナノ構造は300nm未満の直径を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のLED。
【請求項8】
上記第1のp型領域は10nmと80nmとの間の厚みを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のLED。
【請求項9】
上記ナノ構造は10nmと100nmとの間の高さを有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のLED。
【請求項10】
上記ナノ構造は誘電性物質より形成されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のLED。
【請求項11】
上記誘電性物質は、SiO、SiN、TiO、ZnO、MgO、ScO、およびSrFのいずれか1つまたはそれ以上であることを特徴とする請求項10に記載のLED。
【請求項12】
上記p型電極は、インジウムスズ酸化物よりなることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のLED。
【請求項13】
上記p型電極は、Ni、Ti、Au、Ag、Pt、Hf、Pd、およびAlのいずれか1つまたはそれ以上より形成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のLED。
【請求項14】
上記金属層は、Ag、Au、およびAlのいずれか1つまたはそれ以上よりなることを特徴とする請求項5に記載のLED。
【請求項15】
上記金属層は、各々がナノ構造を形成する2つの層に挟まれていることを特徴とする請求項5または14に記載のLED。
【請求項16】
発光ダイオード(LED)の製造方法であって、
基板上に導電性のn型領域を形成する工程と、
上記n型領域上に活性領域を形成する工程と、
上記活性領域上に第1のp型領域を形成する工程と、
複数のナノ構造であって、500nm未満の直径を有するナノ構造を、上記活性領域からの光抽出を行うように上記第1のp型領域上に形成する工程と、
上記第1のp型領域上に、上記ナノ構造との組み合わせによって非平面の表面を形成するように第2のp型領域を再成長させる工程と、
上記非平面の表面上にp型電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
上記ナノ構造は、上記第1のp型領域上にパターン形成されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記第2のp型領域は、有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて再成長することを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
上記MOCVDは、上記ナノ構造の上面に部分的に拡張された横方向成長を提供するために、エピタキシャル横方向成長技術(ELOG)を使用する工程を含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記第2のp型領域は、分子線エピタキシーを用いて再成長することを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項21】
プラズモン効果を得るために上記ナノ構造のそれぞれの上に金属層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項16から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
上記金属層は、各々がナノ構造を形成する2つの層に挟まれていることを特徴とする請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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