説明

ナノ粒子放出型医療デバイス

マトリックス又はシェル材料及び生物活性剤を含むナノ粒子、及び前記ナノ粒子を含有する医療デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は一般に、薬剤放出型血管ステントなどのナノ粒子放出型医療デバイスに関する。
【0002】
[先端技術の説明]
ステントは、血管疾患への機械的介入としてのみならず、生物学的療法を施すための媒体としても使用される。機械的介入の場合、ステントは足場の役目を果たし、管路の壁を物理的に開いた状態に保ち、必要に応じて拡張する働きをする。一般にステントを圧縮することが可能であり、カテーテル経由で小血管まで挿入した後、所望の部位に一旦到達すれば拡張して直径を大きくすることができるようになっている。PTCA(経皮経管冠動脈形成術)手法に適用されているステントを開示している特許文献の例としては、Palmazに発行された米国特許第4733665号明細書、Gianturcoに発行された米国特許第4800882号明細書、及びWiktorに発行された米国特許第4886062号明細書に例証されているステントが挙げられる。
【0003】
生物学的療法は、ステントに薬剤を塗布することにより達成できる。薬剤塗布ステントにより、患部において治療剤を局所投与できるようになる。治療部位に有効濃度を提供するためにそのような薬剤を全身投与すると、しばしば患者に有害又は有毒な副作用をきたす。局所送達は、全身的な用量と比較して低い総濃度の薬剤が投与されるが、特定の部位に集中するという点で好ましい治療方法である。そのため、局所送達は副作用をきたすことが少なく、より望ましい結果を達成する。
【0004】
多くの患者、特に糖尿病患者においては、ステントを使用できる病変部は、広範性血管疾患の焦点的発現部である。薬剤溶出ステントの出現により治療病変部の再狭窄の軽減がもたらされたが、限局性血管疾患の進行については未対処のままである。
【0005】
以下に記載する実施形態は、上で明らかにした問題に対処するものである。
【0006】
[概要]
本発明は、ナノ粒子、及びナノ粒子を含有する医療デバイス(例えば、ステントなど)を提供する。前記ナノ粒子は生物活性剤を含むことができ、マトリックス材料をさらに含むことができる。ナノ粒子を医療デバイス(例えば、ステント)上に担持させ、そこから多孔質マトリックス、チャネルを有する表面、貯蔵部構造、又はナノ多孔質表面若しくは微小貯蔵部表面を有するステントを経由して放出することができる。或いは、ナノ粒子を医療デバイス上のコーティング(例えば、薬剤送達ステントのコーティング)中に含有させ、医療デバイスを移植した際にコーティングから放出することもできる。一部の構成では、ナノ粒子はある容積を内包するシェルを有してもよく、又は、ナノ粒子は生物活性剤(例えば、小分子薬剤、タンパク質、又はペプチド)を担持することができる多孔質材料を含んでもよい。
【0007】
ナノ粒子は、例えばステントから、いくつかの機序により放出することができる。例えば、ナノ粒子はポリマー粒子とすることができ、ステント上にコーティングした場合、ステントのポリマーコーティングがポリマーナノ粒子より速い時間スケールで分解する場所で、ステントのポリマーコーティングから放出することができる。ナノ粒子は、配置前にステントの表面、例えば、カーボン、金属、セラミック、プラスチック、又はポリマー製の多孔質表面上のナノ、ミクロ、又はマクロ多孔質構造中に担持させ、配置後にそこから放出し得る。或いは、ナノ粒子はステント表面の微小貯蔵部から放出することができ、この場合のステント表面はカーボン、金属、セラミック、プラスチック、又はポリマー製の表面であってよい。このような貯蔵部は、前記表面中にレーザードリル加工で設け得る。
【0008】
一部の実施形態では、前記デバイス(例えば、ステント)又はその一部分を生分解性とすることができる。ナノ粒子をデバイスのマトリックス(例えば、ステントの生分解性ポリマーマトリックス)内に包埋し、デバイスの分解時に放出し得る。これらの実施形態では、ナノ粒子はポリマーマトリックスより長い分解時間スケールを有するか、マトリックスから放出されるまで分解を開始しないかのいずれかである。このようなナノ粒子分解パターンには、ナノ粒子は酵素分解により分解されるが、放出時まではマトリックスがナノ粒子を分解から保護することになるという一例がある。
【0009】
前記ナノ粒子中の生物活性剤の例をいくつか挙げると、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−l−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)ラパマイシン(ABT−578)、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、生物活性RGD、CD−34抗体、アブシキシマブ(REOPRO)、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進剤、そのプロドラッグ、その補助薬、又はそれらの組合せなどがあるが、これらに限定されない。
【0010】
本明細書に記載のナノ粒子を含む医療デバイスは、血管の病状を治療、予防、又は改善するために使用することができる。
【0011】
[詳細な説明]
本発明は、ナノ粒子、及びナノ粒子を含有する医療デバイス(例えば、ステントなど)を提供する。前記ナノ粒子は生物活性剤を含むことができ、マトリックス材料をさらに含むことができる。前記ナノ粒子を医療デバイス上に担持させ、そこから多孔質マトリックス、チャネルを有する表面、貯蔵部構造、又は多孔質表面若しくは微小貯蔵部表面でコーティングされたステントを経由して放出することができる。或いは、前記ナノ粒子を医療デバイス上のコーティング(例えば、薬剤送達ステントのコーティング)中に含ませ、医療デバイスを移植した際にコーティングから放出することもできる。以下に意図する医療デバイスにはヒト又は動物の患者に移植し得る任意の適切な医療基材を備える移植式デバイスを含むがこれに限定する意図はない、ということは理解されるべきである。
【0012】
ナノ粒子は、ステント表面からいくつかの機序により放出することができる。例えば、ナノ粒子はポリマー粒子とすることができ、ステントのポリマーコーティングがポリマーナノ粒子より速い時間スケールで分解する場所で、ステントのポリマーコーティングから放出することができる。ナノ粒子は、配置前にステント表面、例えば、カーボン、金属、セラミック、プラスチック又はポリマー製の多孔質表面上の多孔質構造中に担持させ、配置後にそこから放出し得る。多孔度は、ナノスケール又はそれより大きいスケールとすることができる。一部の実施形態では、ナノ粒子はステント表面の微小貯蔵部から放出することができ、この場合の表面はカーボン、金属、セラミック、プラスチック、又はポリマー製の表面であってよい。このような貯蔵部は、前記表面中にレーザードリル加工で設け得る。
【0013】
一部の実施形態では、前記デバイス(例えば、ステント)又はその一部分を生分解性とすることができる。ナノ粒子は、デバイスの少なくとも一部分を構成するマトリックス(例えば、ステントの生分解性ポリマーマトリックス)内に包埋し、デバイス又はその一部が生分解、吸収、又は浸食される際に放出され得る。生分解、吸収、又は浸食は、特に指示がない限り互換的に使用される用語である。これらの実施形態では、ナノ粒子は、ポリマーマトリックスより長い分解時間スケールを有するか、マトリックスから放出されるまで分解を開始しないかのいずれかであり、このことはマトリックスが前記粒子を分解から保護する場合に達成可能である。このようなナノ粒子分解パターンには、ナノ粒子が酵素分解により分解されても、放出時まではマトリックスがナノ粒子を分解から保護することができるという一例がある。一部の実施形態では、分解時間スケールは等しいか、又は概ね等しい可能性がある。さらに別の実施形態では、ナノ粒子はポリマーマトリックスより短い分解時間スケールを有する。このような実施形態では、ナノ粒子は、強度、弾性などといった機械的機能性又は材料機能性をデバイスに賦与することができる。
【0014】
一部の実施形態では、ナノ粒子をポリマーコーティング中に含ませることができる。前記コーティングは生分解性とすることができ、ナノ粒子はコーティングより長い分解時間スケールを有するか、又は、コーティングから放出されるまで分解を開始しない。一部の実施形態では、コーティングは非生分解性又は生体安定性とすることができ、ナノ粒子はコーティングから放出されるまで分解を開始しない。さらに別の実施形態では、前記粒子の分解時間スケールはコーティングの分解速度より遅いか、又は短い。一部の実施形態では、コーティングと粒子の分解速度は等しいか、又は概ね等しい可能性がある。
【0015】
ナノ粒子
一実施形態では、ナノ粒子は、例えば薬剤、タンパク質、ペプチド、及び同様の物質で、本明細書中で使用する場合、その含有量を「有効担持量(payload)」と呼ぶことがある以下に記載の生物活性剤、並びにマトリックス材料を含む。マトリックス材料は多孔質であってもよい。或いは、ナノ粒子は、薬剤を含有するためのある容積を内包するシェルを含み得る。マトリックス又はシェル材料は、ポリマー、セラミック、金属、若しくはバイオガラス材料、又はそれらの組合せを含むことができる。マトリックス又はシェルは生分解性又は非分解性であってよく、本明細書に記載の1種又は複数種の生体適合性材料、例えばポリマーを含むことができる。生体適合性ポリマーは、ランダム又はブロックコポリマーとすることができる。
【0016】
一部の実施形態では、放出速度を特定の用途に合わせるため、これらの材料を層状に重ねてもよい。例えば、薬剤を担持したポリマーマトリックスを有するナノ粒子は、薬剤の遅発放出及び時限放出を可能にするため、又は移植後ある程度の期間ポリマーマトリックスを分解から保護するために、生分解性金属でスパッタコーティングしてもよい。
【0017】
一部の実施形態では、機械的及び生物学的特性を賦与するために前記粒子を修飾することができる。例えば、ポリマー、ペプチド、又はタンパク質をグラフトすることにより粒子表面を修飾して、粒子の生体適合性を向上させることができる。一実施形態では、免疫反応を逃れるため、又は有効担持量を有する担体(例えば、血管構造の表面分子に対して親和性を有するペプチド)を目指すために、グラフト分子(例えば、ポリエチレングリコール)を役立てることができる。
【0018】
一部の実施形態では、前記粒子は、血管壁及び病変部中への取込み率及び分配率の向上、又は血管組織への粒子の接着を目的として、バイオポリマーを含むことができる。このようなバイオポリマーは、例えば、キトサン、絹エラスチン、ポリ(アクリル酸)(PAA)、レクチン複合ポリマー、脂質若しくはコレステロール複合ポリマー又はコポリマー、及びそれらの組合せとすることができる。一部の実施形態では、前記粒子は、内皮細胞などの血管細胞上に見られる受容体に対する抗体、又は内皮下マトリックスのタンパク質に対する抗体、又はその組合せを含むことができる。一実施形態では、前記粒子はポリ(エステルアミド)(PEA)を含む。ポリマーへのレクチン、コレステロール、又は脂質の結合は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、及びアルデヒド基などレクチン、コレステロール、及びポリマー分子上の反応基/官能基を介し、リンカーを使用し又は使用せずに、従来のカップリング化学、例えば、Sharma et al,J.Antimicrob.Chemother,2004;54:761−766を用いて容易に達成できる。
【0019】
その他一部の実施形態では、前記粒子は金属マトリックス又はシェルを含むことができる。このようなマトリックス又はシェルは、例えば、マンガン(Mn)、金(Au)、鉄、酸化鉄、希土類材料、又はそれらの組合せを含むことができる。一部の実施形態では、前記粒子はセラミック及び/又は生分解性ガラスのマトリックス材料又はシェルを含むこともできる。例えばバイオガラスは、酸化リン、酸化ケイ素、酸化カルシウム又はその他の無機材料などの生体適合性及び/又は無機の材料で形成することができる。生分解性ガラスで形成されるナノ粒子又はナノスフェア(nanospere)の例は、米国特許第6328990号明細書及びQiu et al.,Annals of the New York Academy of Sciences 974:556−564(2002)に記載されている。セラミックナノ粒子及びセラミックナノ粒子形成法の例は、Roy,I.,et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,7860−7865にいくつか記載されている。金属ナノ粒子及び金属ナノ粒子形成法の例は、Sakai and Alexandridis,“Single−Step Synthesis and Stabilization of Metal Nanoparticles in Aqueous Pluronic Block Copolymer Solutions at Ambient Temperature”in Langmuir,2004;Rao,C.N.R.,et al.,“Metal nanoparticles,nanowires,and carbon nanotubes”in Pure Appl.Chem.,Vol.72,Nos.1−2:21−33(2000);及び、Kim,et al.,“Size−monodisperse metal nanoparticles via hydrogen−free spray pyrolysis”in Advanced Materials,14(7):528−521(2002)にいくつか記載されている。
【0020】
一部の実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子は、ミセル(例えば、ポリマーミセル)、リポソーム、ポリリポソーム、ポリメロソーム、又はポリメロソームを含む膜を有する膜小胞とすることができる。「ポリメロソーム」という用語は、両親媒性のブロックコポリマーを指す。
【0021】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、薬剤を封入しているポリマーで形成された球状又は準球状のナノ粒子である。通常、特徴的な長さ(例えば、直径)が約0.001μm(1nm)〜約500μm(例えば、約0.12μm〜5.0μm)であるナノ粒子を利用することができる。ステントが体液と接触すると、ポリマーが膨張及び/又は加水分解するため薬剤を放出することができる。
【0022】
一部の実施形態では、1種又は複数種の生体適合性ポリマーを使用し又は使用せずに、これらのナノ粒子を医療デバイス(例えば、ステント)の表面上にコーティングした後、1種又は複数種の生体適合性ポリマーで上塗りすることができる。一部の実施形態では、1種又は複数種の生体適合性ポリマーの下塗層は、ナノ粒子層とデバイス表面の間にコーティングすることができる。
【0023】
ポリマーマトリックスを含むナノ粒子を別手法で形成した後に、有機溶媒、例えばメタノールなどの有機相中、又はポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(EVAL)などの生体適合性ポリマー溶液中に前記ナノ粒子を懸濁させることができる。その後、前記懸濁液をステント上に塗布して薬剤層又は薬剤−ポリマー層をそれぞれ形成することができる。懸濁液中のナノ粒子−ポリマー間の質量比は、約1:2〜1:10の範囲内とすることができる。
【0024】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、以下に記載する方法の1つに従って作製することができるポリマー材料で形成される。
【0025】
1.ダブルエマルジョン法
本発明の一実施形態に従ってナノ粒子を作製する一方法は、ダブルエマルジョン法である。この手法は、水溶性の薬剤、ペプチド、又はタンパク質を封入することが望ましいときに使用することができる。本発明においては、「水溶性の」という用語は、約3〜20質量%の範囲内の濃度を有する水溶液を作製することができる小分子薬剤、ペプチド、オリゴヌクレオチド、プラスミド、又はタンパク質として定義される。使用できる薬剤の例としては、ヘパリン、ヒアルロン酸、L−アルギニン、D−アルギニン、L−アルギニン又はD−アルギニンのポリマー及び/又はオリゴマー、血管内皮増殖因子(VEGF)をコードしている遺伝子及びそのアイソフォーム、並びに、一酸化窒素合成酵素(NOS)をコードしている遺伝子及びそのアイソフォームが挙げられる。
【0026】
ナノ粒子中への組込みに適したペプチドの例は、ポリ(L−アルギニン)、ポリ(D−アルギニン)、又はその組合せである。一部の実施形態では、前記ペプチドはポリ(D,L−アルギニン)、ポリ(L−リジン)、ポリ(D−リジン)、ポリ(δ−グアニジノ−α−アミノ酪酸)、又はその組合せである。当業者は、必要に応じその他適切な薬剤、ペプチド、又はタンパク質を使用することを選択してよい。
【0027】
第1ステップでは、適切な有機溶媒中に封入ポリマーが溶解している溶液を調製することができる(溶液I)。溶液I中の封入ポリマー濃度は、約2.0%w/v〜約20%w/vとすることができる。適切な封入ポリマーの一例は、ポリ(L−グリコール酸)(PLGA)である。一部の実施形態では、前記ポリマーは、ポリ(D−乳酸)(PDLA)、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(ブチレンテレフタレート−co−エチレングリコール)(PBT−PEG)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(EVAL)、ポリ(酢酸ビニル)(PVA)などその他のビニルポリマー、ポリ(メタクリル酸ブチル)(PBMA)又はポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)などのアクリルポリマー、ポリウレタン、ポリ(カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリジアキサノン、ポリオルトエステル、ポリアミノ酸、ポリ(トリメチレンカーボネート)、及びそれらの組合せとすることができる。使用できる有機溶媒の例としては、塩化メチレン、シクロオクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、パラキシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジメチルアセトアミド、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0028】
第2ステップでは、脱イオン水中に薬剤を溶解させることにより、薬剤水溶液を調製することができる(溶液II)。前記溶液はそのままでもよいし、緩衝化してもよい。任意選択的に、ポリ(ビニルピロリドン)又はカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤及び/又は薬剤安定化剤を約0.01%w/v〜約0.5%w/vの量で溶液IIに加えることができる。溶液IIに、賦形剤(薬剤の希釈剤又は基剤として使用される不活性物質)及び薬剤安定化剤を任意選択的に加えてもよい。
【0029】
第3ステップでは、有機相(溶液I)を水相(溶液II)と合わせることができ、前記2種類の溶液の混合物を当業者に公知の方法に従って超音波により処理(超音波処理)すると超微粒の油中水(water−in−oil、W−O)エマルジョンを得る。標準的な超音波処理機を使用することができる。或いは、溶液IIを溶液Iにゆっくり加えながら溶液Iを激しく攪拌するかボルテックスすることによってもW−Oエマルジョンが得られる。前記エマルジョンは、有機相2の中に水相1が分散して構成されている。
【0030】
第4ステップでは、乳化剤(界面活性剤)水溶液を、乳化剤を脱イオン水中に溶解させることにより調製することができる(溶液III)。乳化剤の濃度は、0.01%w/v〜0.5%w/vの範囲内とすることができる。適切な乳化剤の一例は、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)である。代わりに使用できる乳化剤の例としては、アルブミン(ウシ又はヒトいずれかの血清)、ゼラチン、PLURONIC又はTETRONICなどの親油性乳化剤、又はそれらの組合せが挙げられる。PLURONICは、ポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)の商品名である。TETRONOCは、非イオン性の四官能性ブロックコポリマー界面活性剤シリーズの商品名である。PLURONIC及びTETRONICは、例えば、BASF Corp.of Parsippany,New Jerseyから入手できる。
【0031】
前記W−Oエマルジョンを溶液IIIにゆっくり加えながら溶液IIIを激しく攪拌するとダブルエマルジョンを作製することができ、これを水中油中水(water−oil−water、W−O−W)エマルジョンと呼ぶ。ダブルエマルジョンは、水相中に分散したナノ粒子を含んでいる。ナノ粒子は、封入ポリマー、及び封入ポリマー内に封入された物質(例えば、薬剤)を含んでいる。
【0032】
第5ステップでは、続いて前記ダブルエマルジョンを過量の水の中で攪拌してナノ粒子内部の有機相中に存在する有機溶媒を抽出することができる。水の代わりに、イソプロパノールなど水溶性有機物質の水溶液を使うこともできる。一部の実施形態では蒸発によって有機相から有機溶媒を除去することができるが、任意選択的に適切な減圧下で行うことができる。その後、硬化したナノ粒子を濾過、ふるい、又は遠心分離により回収し凍結乾燥して、ナノ粒子の自由流動性乾燥粉末を形成することができる。
【0033】
2.油中水エマルジョン法
本発明の一実施形態に従ってナノ粒子を作製する別の方法は、油中水エマルジョンの調製に続き溶媒の蒸発プロセスを含む。
【0034】
第1ステップでは、有機溶媒中に約10質量%の封入ポリマーを含有する溶液を調製することができる。この方法に従い使用できる封入ポリマーの一例は酢酸フタル酸セルロース(CAP)で、例えば、FMC Biopolymers Co.of Philadelphia,PennsylvaniaからAQUACOATの商品名で市販されている。必要に応じ、当業者はその他適切な封入ポリマーを選択するだろう。薬剤、例えばエベロリムス、トラピジル、又はシスプラチンをCAP溶液中に分散させ、約5質量%の薬剤を含有できる薬剤−ポリマー分散液を作製することができる。エベロリムスは40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンの商品名であり、Novartisから入手できる。
【0035】
第2ステップでは、流動パラフィンを適切な界面活性剤と混合することができ、その混合物を激しく攪拌することができる。前記パラフィン−界面活性剤組成物は、約1質量%の界面活性剤を含むことができる。オレイン酸ソルビタンは適切な界面活性剤の一例であるが、当業者は、必要に応じその他適切な界面活性剤を選択することができる。オレイン酸ソルビタンは、ICI Americas,Inc.of Bridgewater,New JerseyからSPAN80の商品名で市販されている。
【0036】
第3ステップでは、前記薬剤−ポリマー溶液をパラフィンベースの前記組成物に加えることができ、溶媒を約24時間約30℃の温度で蒸発させることができる。その結果ナノ粒子が形成され、これを回収し、例えばエーテルで洗浄し、室温で約24時間乾燥させる。
【0037】
3.噴霧乾燥法
本発明の一実施形態に従ってナノ粒子を作製するさらに別の方法は、噴霧乾燥法である。この手法は、有機溶媒中で溶解する薬剤を封入することが望ましいときに使用できる。この方法に従えば、薬剤及び封入ポリマーを含有する溶液を、薬剤及び封入ポリマーの両方が可溶性を示す適切な有機溶媒中に溶解させることができる。適切な溶媒の一例は塩化メチレンでもよい。続いて、当業者に公知の方法に従い前記溶液を噴霧乾燥させることができる。結果として、ポリマー中に封入された薬剤を含むナノ粒子が形成される。
【0038】
水溶性であっても通常の有機溶媒中では溶解しない薬剤の場合には、噴霧乾燥法の一変法を使用できる。このような薬剤は、最初に凍結乾燥粉末として処方することができる。前記薬剤粉末は、塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒中に溶解している適切な封入ポリマーを含むポリマー相の中に懸濁させることができる。次に前記懸濁液を噴霧乾燥させ、薬剤を含有するナノ粒子を作製することができる。
【0039】
4.極低温法
本発明の一実施形態に従ってナノ粒子を作製する別の方法は、極低温法である。この手法は、タンパク質などの不安定な薬剤の処理に使用できる。凍結乾燥粉末として処方した前記薬剤を、塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒中に溶解している適切な封入ポリマーを含むポリマー相の中に懸濁させることができる。前記懸濁液は、凍結エタノールを入れ液体窒素で覆った容器の中に噴霧することにより微粒化することができる。次に、この系を約−80℃に温めてエタノールを液化し、微粒子から有機溶媒を抽出することができる。硬化した微粒子を濾過又は遠心分離により回収し、凍結乾燥する。
【0040】
5.架橋法
本発明の一実施形態に従ってナノ粒子を作製する別の方法は、架橋法である。この手法は、選択された封入ポリマーが熱硬化性ポリマーであるため架橋により硬化させることが可能な場合に使用できる。架橋法は少なくとも2種類の不飽和化合物を使用し、その1つが架橋剤として働く。
【0041】
水溶性の不飽和モノマー、例えば、ビニルピロリドン(VP)の水溶液を調製することができる。前記溶液中のVP濃度は、約5.0〜20.0質量%とすることができる。別のモノマー、例えばメタクリル酸ヒドロキシエチルを、VPに追加して、又はVPの代わりに使用することができる。次に、水溶性の架橋剤、例えば重量平均分子量が約1000ダルトンのポリ(エチレングリコールジアクリレート)(PEG−DA)をVP溶液に加え、VP/PEG−DA水溶液(溶液IV)を作製することができる。溶液IV中のPEG−DA濃度は、約5.0〜20.0質量%とすることができる。当業者は、PEG−DAに追加して、又はその代わりとして使用するために、その他のジアクリレート又はジメタクリレートなどの代替架橋剤を選択することができる。疎水性の薬剤、例えばエベロリムスを、溶液IVの約5.0〜20.0質量%の量で溶液IVに加え、溶液IV中に薬剤が懸濁している液(「薬剤懸濁液」)を作製することができる。
【0042】
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの光開始剤のVP溶液を別に作製することができるが、前記溶液は約5.0〜20.0質量%の間の光開始剤を含有する。その他の光開始剤、例えば、ジチオカーボネート又は過ヨウ化物を代わりに使用することができる。光開始剤溶液を前記薬剤懸濁液に加え、最終混合物を作製することができる。光開始剤溶液−薬剤懸濁液間の割合は、当業者により決定できる。
【0043】
前記最終混合物を粘稠性の鉱油又はシリコーン油中に加え、強力にボルテックスを続けると、W−Oエマルジョンを形成することができる。次に、前記エマルジョンは、暗光線UVランプを使って約15〜45秒間、360nm波長で照射することができる。その結果、VPとPEG−DAが共重合し、VPがPEG−DAで架橋され、薬剤を含有するVP/PEG−DAナノ粒子を形成する。次に、油相をデカントすることにより前記粒子を分離し、例えばアセトン中などで洗浄し乾燥させることができる。
【0044】
必要に応じ、無機架橋剤を使用することもできる。例えば、約10質量%のポリ(アルギン酸)を含有する水溶液及びエベロリムスを混合することにより、封入ポリマー/薬剤懸濁液を作製することができる。薬剤の量は、ポリ(アルギン酸)溶液の約5質量%とすることができる。次に、前記ポリマー/薬剤懸濁液を、塩化カルシウム(CaCl)などの架橋剤の脱イオン水の溶液と合わせる。CaClの量は、ポリマー/薬剤懸濁液の約10質量%とすることができる。前記ポリマー/薬剤/CaCl系を激しく攪拌する結果ポリ(アルギン酸)が架橋され、薬剤を含有するポリ(アルギン酸)の架橋ナノ粒子を形成することができる。続いて、デカントにより前記粒子を分離し、脱イオン水中で洗浄し乾燥させる。
【0045】
コーティング構造体
本明細書に記載のナノ粒子は、バインダーポリマーを使用し又は使用せずに、医療デバイス上にコーティング又は堆積させることができる。本明細書で使用する場合、バインダーポリマーは生体適合性ポリマー又はポリマーブレンドを指し、これらはナノ粒子中に含まれ得るポリマーと同じであっても異なっていてもよい。
【0046】
一実施形態では、ナノ粒子は医療デバイス上のコーティング(即ち、薬剤送達用コーティング)中に含ませることができる。対象(例えば、患者)に移植した際に、血管又は病変部に治療を施すためにナノ粒子をコーティングから放出し、血管又は病変部中に浸透させることができる。
【0047】
その他の一部実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子を含むコーティングは、デバイス上にナノ粒子を堆積させた後、バインダーによりナノ粒子をデバイス表面に結合することによって形成できる。ナノ粒子(例えば、PEA中のエベロリムス)は、改良光造形法によりデバイス(例えば、ステント)上に堆積させることができる。この方法では、ナノ粒子及び光反応性バインダーの両方を含む溶液中にデバイスを置く。光反応性バインダーを架橋させることが可能な波長の光又は不可視電磁放射線で溶液を局所照射するとバインダーが架橋し、そのマトリックス中にナノ粒子が捕捉される。放射線の中心がデバイスの選択箇所上にナノ粒子含有マトリックスの堆積を開始するように、ナノ粒子とバインダーの槽内でデバイスを回転させたり移動させたりしてよい。或いは、ナノ粒子は、前記粒子を保持及び放出することが可能なチャネル、貯蔵部、又はその他の構造改変部に堆積させることもできる。一部の実施形態では、血液適合性のバインダー(例えば、D,L−PLA及び高分子量PEG(Mが約25000〜約40000ダルトンの範囲内)の混合物又はPEAと高分子量PEG(Mが約25000〜約40000ダルトンの範囲内)の混合物)を加えることによりナノ粒子同士を結合させることができる。一旦デバイスが配置されると、高分子量PEGなどの親水性成分はコーティング中のナノ粒子を解放することができる。
【0048】
前記薬剤は、患者に治療的又は予防的効果を及ぼすことが可能な任意の物質を含むことができる。前記薬剤は、小分子薬剤、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、及びそれらの組合せを含み得る。前記薬剤は、例えば、血管の平滑筋細胞の活動を抑制するように設計することができ得る。例えば前記薬剤は、再狭窄を抑制するため、平滑筋細胞の異常又は不適切な遊走及び/又は増殖を阻害することを目的とすることができる。或いは、前記薬剤は、内皮、例えば炎症を起こした内皮の機能性を向上又は回復するように設計し得る。別の用途では、前記薬剤は、不安定プラークなどのアテローム硬化性疾患におけるマクロファージ又は泡沫細胞の負荷量を軽減するように設計し得る。
【0049】
生体適合性ポリマー
任意の生体適合性ポリマーを上述のナノ粒子中及び/又はデバイス上のコーティング中に含ませることができる。生体適合性ポリマーは生分解性(生体浸食性若しくは生体吸収性のいずれか又は両方)又は非分解性であってよく、親水性又は疎水性であってもよい。
【0050】
代表的な生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エステルアミド)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリ(3−ヒドロキシプロパン酸)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサン酸)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタン酸)及びポリ(3−ヒドロキシオクタン酸)などのポリ(3−ヒドロキシアルカン酸)、ポリ(4−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサン酸)、ポリ(4−ヒドロキシヘプタン酸)、ポリ(4−ヒドロキシオクタン酸)などのポリ(4−ヒドロキシアルカン酸)、及び上記の3−ヒドロキシアルカン酸モノマー若しくは4−ヒドロキシアルカン酸モノマーのいずれかを含むコポリマー又はその混合物、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(酸無水物)、ポリ(チロシンカーボネート)及びその誘導体、ポリ(チロシンエステル)及びその誘導体、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリシアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリホスファゼン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、及びエチレンとα−オレフィンのコポリマー、アクリルポリマー及びコポリマー、ポリ塩化ビニルなどハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ポリビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのビニルモノマー同士及びオレフィンとのコポリマー、Nylon66及びポリカプロラクタムなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(セバシン酸グリセリル)、ポリ(フマル酸プロピレン)、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)、ポリ(メタクリル酸sec−ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸tert−ブチル)、ポリ(メタクリル酸n−プロピル)、ポリ(メタクリル酸イソプロピル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン、レーヨントリアセテート、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリエーテル、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、ポリ(酸化エチレン−co−乳酸)(PEO/PLA))、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)などのポリアルキレンオキシド、ポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、2−メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、PEGアクリレート(PEGA)、メタクリル酸PEG、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、n−ビニルピロリドン(VP)などのヒドロキシル含有モノマーのポリマー及びコポリマー、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)などのカルボキシル酸含有モノマーのポリマー及びコポリマー、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メタクリル酸メチル)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−co−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、コラーゲン、キトサン、アルギン酸、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の断片及び誘導体、ヘパリン、ヘパリンの断片及び誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖類、エラスチンなどの生体分子、又はそれらの組合せが挙げられるが、限定しない。一部の実施形態では、ナノ粒子は上述のポリマーを一切含まないことがある。
【0051】
本明細書で使用する場合、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、及びポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)の用語は、それぞれポリ(D,L−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)、又はポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)の用語と互換的に使われることがある。
【0052】
生体有益性材料
一部の実施形態では、ナノ粒子及び/又はコーティングは生体有益性材料をさらに含むことができる。生体有益性材料は、ポリマー材料でも非ポリマー材料でもよい。生体有益性材料は、好ましくは非毒性、非抗原性及び非免疫原性である。生体有益性材料は、非汚染性、血液適合性、能動的に非血栓形成性、又は抗炎症性であることにより、いずれも医薬活性剤の放出に依存することなく、前記粒子又はデバイスの生体適合性を向上させる材料である。
【0053】
代表的な生体有益性材料には、ポリ(エチレングリコール)などのポリエーテル、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)などのポリアルキレンオキシド、ポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ポリ(アスピリン)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート(PEGA)、メタクリル酸PEG、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、及びn−ビニルピロリドン(VP)などのヒドロキシル含有モノマーのポリマー及びコポリマー、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、及び3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)などのカルボキシル酸含有モノマーのポリマー及びコポリマー、ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)−PEG(SIS−PEG)、ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メタクリル酸メチル)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−co−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(酸化ポリプロピレン−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能性ポリ(ビニルピロリドン)、生体分子、例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の断片及び誘導体、ヘパリン、ヘパリンの断片及び誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖類、エラスチン、キトサン、アルギン酸、シリコーン、PolyActive(商標)、及びそれらの組合せが挙げられるが、限定しない。一部の実施形態では、ナノ粒子及び/又はコーティングは、上述のポリマーを一切含まないことがある。
【0054】
PolyActive(商標)の用語は、可撓性のポリ(エチレングリコール)及びポリ(ブチレンテレフタレート)のブロック(PEGT/PBT)を有するブロックコポリマーを指す。PolyActive(商標)は、AB、ABA、BABのような型のPEG及びPBTセグメント(例えば、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PBT−PEG))を有するコポリマーを含むことを意図している。
【0055】
好ましい一実施形態では、生体有益性材料は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)又はポリアルキレンオキシドなどのポリエーテルとすることができる。
【0056】
生物活性剤
マトリックス材料と共にナノ粒子を形成する生物活性剤は、治療剤、予防剤、又は診断剤である任意の生物活性剤とすることができる。これらの物質は、抗増殖性又は抗炎症性を有し得るか、又は抗悪性腫瘍性、抗血小板性、抗凝血性、抗フィブリン性、抗血栓性、抗有糸分裂性、抗生性、抗アレルギー性、及び抗酸化性などその他の特性を有し得る。前記物質は、細胞増殖抑制剤、NO放出剤又は発生剤など内皮の治癒を促進する物質、内皮前駆細胞を誘引する物質、又は平滑筋細胞の増殖を抑制する一方で内皮細胞の付着、遊走、及び増殖を促進する物質(例えば、CNP、ANP、若しくはBNPペプチドなどのナトリウム利尿ペプチド、又はRGD若しくは環状RGDペプチド)とすることができる。適切な治療剤及び予防剤の例としては、治療、予防、又は診断作用を有する無機及び有機の合成化合物、タンパク質及びペプチド、多糖類及びその他の糖類、脂質、並びにDNA及びRNA核酸配列が挙げられる。生物活性剤のその他いくつかの例としては、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲンアクチベーターなどの阻害剤又は血栓溶解剤、免疫化用抗原、ホルモン及び成長因子、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムなどのオリゴヌクレオチド、並びに遺伝子治療で使用するためのレトロウイルスベクターが挙げられる。抗増殖剤の例としては、ラパマイシン及びその機能的誘導体又は構造的誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン(エベロリムス)、及びその機能的誘導体又は構造的誘導体、パクリタキセル及びその機能的誘導体並びに構造的誘導体が挙げられる。ラパマイシン誘導体の例としては、40−エピ−(N1−テトラゾリル)ラパマイシン(ABT−578)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシンが挙げられる。パクリタキセル誘導体の例としては、ドセタキセルが挙げられる。抗悪性腫瘍剤及び/又は抗有糸分裂剤の例としては、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、Pharmacia&Upjohn,Peapack N.J.製のAdriamycin(登録商標))、及びマイトマイシン(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.製のMutamycin(登録商標))が挙げられる。前述の抗血小板剤、抗凝血剤、抗フィブリン剤、及び抗トロンビン剤の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリンアナログ、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、ジピリダモール、糖タンパクIIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、Angiomax(Biogen,Inc.,Cambridge,Mass.)などのトロンビン阻害剤、カルシウムチャネル遮断剤(ニフェジピンなど)、コルヒチン、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω−3脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素阻害剤、コレステロール低下剤、Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJ製の商品名Mevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的な抗体など)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断剤、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、一酸化窒素又は一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、多様なビタミンなどの栄養補助食品、及びそれらの組合せが挙げられる。ステロイド系及び非ステロイド系抗炎症剤を含む抗炎症剤の例としては、タクロリムス、デキサメタゾン、クロベタゾール、又はそれらの組合せが挙げられる。細胞増殖抑制物質の例としては、アンジオペプチン、カプトプリル(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.製のCapoten(登録商標)及びCapozide(登録商標))などのアンジオテンシン変換酵素阻害剤、シラザプリル又はリシノプリル(例えば、Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJ製のPrinivil(登録商標)及びPrinzide(登録商標))が挙げられる。抗アレルギー剤の一例としては、ペミロラストカリウムがある。適切と考えられるその他の治療物質又は治療剤としては、α−インターフェロン、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、生物活性RGD、及び遺伝子操作された内皮細胞が挙げられる。前述の物質は、それらのプロドラッグ又は補助薬の形で使用することもできる。また、前述の物質には、それらの代謝産物及び/又は前記代謝産物のプロドラッグも含まれる。前述の物質は例として掲載するものであり、限定することを意図していない。現在入手できる、又は将来的に開発し得るその他の活性剤も、同様に適用可能である。
【0057】
望ましい治療効果を発揮するために必要な生物活性剤の用量又は濃度は、生物活性剤が毒性作用を発現するレベル未満で、且つ、非治療的な結果を得るレベルを超える必要がある。生物活性剤の用量又は濃度は、患者の特定の状況、外傷の性質、必要な療法の性質、投与成分が血管部位に滞留する時間、また、その他の活性剤が採用される場合には物質の性質及び種類又は物質間の組合せ、などの要因に依存することがある。治療有効量は、例えば適切な動物モデル系の血管に注入し、免疫組織化学法、蛍光法、若しくは電子顕微鏡法を用いて当該物質及びその効果を検出することにより、又は適切なin vitro試験を実施することにより、経験的に決定できる。用量を決定するための標準的な薬理試験手法は、当業者には理解されている。
【実施例】
【0058】
移植式デバイスの実施例
本発明において使用する場合、移植式デバイスは、ヒト又は動物の患者に移植することができる任意の適切な医療基材であってよい。このような移植式デバイスの例としては、自己拡張ステント、バルーン拡張ステント、ステントグラフト、グラフト(例えば、大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー電極、カテーテル、及び心内膜リード(例えば、Guidant Corporation,Santa Clara,CAから入手可能なFINELINE及びENDOTAK)、吻合デバイス及びコネクター、スクリューなどの整形外科用インプラント、脊椎インプラント、電気刺激デバイスが挙げられる。デバイスの基礎的な構造は、実質的に任意の設計が可能である。デバイスは、コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、例えばBIODUR108、コバルトクロム合金L−605、「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(Nitinol)、タンタル、ニッケル−チタン合金、プラチナ−イリジウム合金、金、マグネシウムなどの金属材料若しくは合金、又はそれらの組合せなどで作製することができるが、限定しない。「MP35N」及び「MP20N」は、Standard Press Steel Co.,Jenkintown,PAから入手できるコバルト、ニッケル、クロム及びモリブデンの合金の商品名である。「MP35N」は、コバルト35%、ニッケル35%、クロム20%、及びモリブデン10%から成る。「MP20N」は、コバルト50%、ニッケル20%、クロム20%、及びモリブデン10%から成る。生体吸収性又は生体安定性ポリマー製のデバイスも、本発明の実施形態と共に使用できよう。
【0059】
使用方法
本発明の実施形態に従い、ナノ粒子は、医療デバイス(例えば、ステント)の送達中及び(ステントの場合には)拡張中、又はその後に、移植部位において所望の速度で、及び所定の期間、前記デバイスから放出することができる。
【0060】
好ましくは、前記医療デバイスはステントである。本明細書に記載のステントは多様な医療手法にとって有用であり、例としては胆管、食道、気管/気管支及びその他の生体通路内で腫瘍により引き起こされる閉塞症の治療が挙げられる。上述のコーティングを有するステントは、脂質沈着、単球若しくはマクロファージの浸潤、又は内皮機能不全、又はそれらの組合せにより引き起こされる血管疾患部位、或いは、平滑筋細胞の異常若しくは不適切な遊走及び増殖、血栓症、及び再狭窄により引き起こされる血管閉塞部位の治療に特に有用である。ステントは、広範囲の血管、動脈及び静脈のいずれにも設置し得る。代表的な部位の例としては、腸骨動脈、腎動脈、頚動脈、及び冠動脈が挙げられる。
【0061】
ステントの移植に際し、ステント療法の適切な位置決めを確定するため、最初に血管造影図撮影を実施する。血管造影図撮影は通常、X線を照射しながら動脈又は静脈中に挿入したカテーテル経由で放射線不透過性の造影剤を注入することにより達成される。次に、ガイドワイヤーを患部又は治療予定部位まで進める。ガイドワイヤーの外側には、畳まれた形状のステントを管路中に挿入するための送達カテーテルが通っている。送達カテーテルは、経皮的手技又は手術のいずれかにより大腿動脈、上腕動脈、大腿静脈、又は上腕静脈中に挿入され、血管系経由で透視下にカテーテルを操作することにより適切な血管中に進められる。その後、上述の特徴を有するステントを所望の治療部位で拡張することができる。挿入後の血管造影図を利用して適切な位置決めを確認することもできる。
【0062】
本発明の特定の実施形態を示し説明してきたが、本発明のより広範な態様において、本発明から逸脱することなく変更及び修正ができることは当業者には自明であろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲内に含まれるものとしてそのような変更及び修正の全てをその範囲内で網羅することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を備える医療デバイスであって、
前記ナノ粒子が、マトリックス、シェル、ポリマーミセル、ポリメロソーム、又はそれらの組合せと、
生物活性剤とを含み、
前記マトリックス又はシェルがセラミック材料、バイオガラス、金属、及びそれらの組合せからなる群から選択される材料で形成されている、医療デバイス。
【請求項2】
前記ナノ粒子を含むポリマーコーティングを備える請求項1に記載の医療デバイスであって、
前記コーティングが生分解性であり、前記ナノ粒子は前記コーティングより長い分解時間スケールを有するか、
前記コーティングが生分解性であり、前記ナノ粒子は前記コーティングから放出されるまで分解を開始しないか、又は
前記コーティングが非生分解性であり、前記ナノ粒子は前記コーティングから放出されるまで分解を開始しない、医療デバイス。
【請求項3】
前記ナノ粒子がポリ(乳酸)、ポリ(エステルアミド)、又はその組合せを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記ナノ粒子が1種又は複数種のブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記ナノ粒子がポリマーシェル、ポリマーミセル、ポリメロソーム、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記ポリマーシェル、ポリマーミセル、ポリメロソーム、又はそれらの組合せが生分解性である、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、セラミック材料、バイオガラス、金属、及びそれらの組合せからなる群から選択される材料で形成されているマトリックス又はシェルを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記マトリックス又はシェルが生分解性である、請求項7に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記マトリックス又はシェルがマンガン(Mn)、金(Au)、鉄、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記ナノ粒子がバイオポリマーを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記バイオポリマーが、キトサン、絹エラスチン、ポリ(アクリル酸)(PAA)、レクチン複合ポリマー、脂質若しくはコレステロール複合ポリマー又はコポリマー、及びそれらの組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項10に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、ポリマー、ペプチド、タンパク質、又はそれらの組合せをグラフトすることにより修飾された表面を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、非免疫原性ポリマー、接着分子、又はその組合せにより修飾された表面を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記非免疫原性ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項13に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記接着分子がRGDペプチド、環状RGDペプチド、RGD模倣体、又はそれらの組合せである、請求項13に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記接着分子が、血管構造の表面分子に対し親和性を有するペプチドである、請求項13に記載の医療デバイス。
【請求項17】
血管又は病変部に治療を施すために、前記ナノ粒子が前記コーティングから放出されること、及び、前記血管又は病変部中に浸透することが可能である、前記ナノ粒子を含む薬剤送達用コーティングを備える、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記ナノ粒子が光造形法によって前記デバイス上に堆積される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記ナノ粒子が血液適合性バインダーにより互いに結合され、前記バインダーが生体適合性ポリマー及び高分子量PEGの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記ポリマーがポリ(D,L−乳酸)、ポリ(エステルアミド)、又はその組合せを含む、請求項12に記載の医療デバイス。
【請求項21】
前記ナノ粒子が前記デバイスのチャネル又は貯蔵部中に堆積されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項22】
前記ナノ粒子が血液適合性バインダーにより互いに結合され、前記バインダーが生体適合性ポリマー及び高分子量PEGの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の医療デバイス。
【請求項23】
前記生体適合性ポリマーがポリ(D,L−乳酸)、ポリ(エステルアミド)、又はその組合せである、請求項22に記載の医療デバイス。
【請求項24】
前記ナノ粒子を含むポリマーコーティングを備える請求項1に記載の医療デバイスであって、
前記ナノ粒子がポリマーシェル、ポリマーミセル、ポリメロソーム、又はそれらの組合せを含み、
前記ポリマーコーティングが前記ポリマーシェル、前記ポリマーミセル、前記ポリメロソーム、又はそれらの組合せより速く分解する、医療デバイス。
【請求項25】
請求項1に記載の医療デバイスであって、
前記医療デバイスは生分解性の本体部分を含み、
前記ナノ粒子が前記生分解性の本体部分内に包埋され、
前記ナノ粒子が前記生分解性の本体部分より長い分解時間スケールを有するか、前記生分解性の本体部分から放出されるまで分解を開始しないかのいずれかである、医療デバイス。
【請求項26】
前記医療デバイスがステントである、請求項25に記載の医療デバイス。
【請求項27】
前記生分解性の本体部分が前記ナノ粒子を分解から保護する、請求項25に記載の医療デバイス。
【請求項28】
前記ナノ粒子又は前記生分解性の本体部分の少なくとも一方が酵素分解可能である、請求項25に記載の医療デバイス。
【請求項29】
表面上に多孔質構造又は微小貯蔵部を有する請求項1に記載の医療デバイスであって、
前記構造又は表面が金属、セラミック、カーボン、プラスチック、ポリマー製、又はそれらの組合せであり、
前記ナノ粒子が、配置前に前記表面上の多孔質構造又は微小貯蔵部内に担持され、前記表面上の多孔質構造又は微小貯蔵部から放出される、医療デバイス。
【請求項30】
前記多孔質構造がナノ多孔質構造である、請求項29に記載の医療デバイス。
【請求項31】
前記医療デバイスがステントである、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項32】
前記生物活性剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)ラパマイシン(ABT−578)、クロベタゾール、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、それらのプロドラッグ、それらの補助薬、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項31に記載の医療デバイス。
【請求項33】
請求項32に記載の医療デバイスを患者に移植することを含む患者の疾患を治療する方法であって、前記疾患がアテローム硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管の解離又は穿孔、動脈瘤、不安定プラーク、慢性の完全閉塞、跛行、静脈及び人工移植片に対する吻合性増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、腫瘍閉塞、及びそれらの組合せからなる群から選択される、方法。


【公表番号】特表2009−521270(P2009−521270A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547367(P2008−547367)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/048051
【国際公開番号】WO2008/024131
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】